特許第6687367号(P6687367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687367
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】押出成形機
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/22 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   B28B3/22
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-225108(P2015-225108)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-87704(P2017-87704A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸宏
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−044402(JP,A)
【文献】 特開2008−179054(JP,A)
【文献】 特開昭59−159328(JP,A)
【文献】 特開昭50−095364(JP,A)
【文献】 特開平11−077636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00− 5/12
B29C 48/00− 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケーシング内に配設された第1スクリューと、
連通管を介して前記第1ケーシングと連通する真空脱気可能に構成された第2ケーシングと、
前記第2ケーシング内に配設された第2スクリューと、を備え、
前記第1ケーシング内には前記第1スクリューで混練された成形材料を前記連通管に誘導するための誘導手段が設けられ、
前記第1スクリューの軸線上には、該第1スクリュー側から順に、前記誘導手段と、前記成形材料を前記誘導手段側に押し戻すための押し戻し手段と、を備え、
前記誘導手段は、一対の並列する回転軸と、該各回転軸の外周面に設けられた誘導羽根と、を備え、該誘導羽根は、前記押し戻し手段から押し戻された成形材料を受けるように前記押し戻し手段に向かう傾斜面を有している、
ことを特徴とする押出成形機。
【請求項2】
前記第1スクリューの先端部に前記成形材料を擦り潰すための擦り潰し機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の押出成形機。
【請求項3】
前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングの下側に設けられ、前記誘導羽根の前記押し戻し手段側の先端が回転時において前記連通管の中心線の上方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の押出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機に関する。詳しくは、セメントを主成分とする成形材料を押出成形するために用いられる押出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを主成分とする成形材料の硬化物が建材等として使用されている。成形材料は、セメントと、パルプや合成繊維などの補強繊維と、硅石粉や硅砂やフライアッシュ等のシリカ成分と、水とを混練して調製される。このような成形材料は押出成形機により押出成形されて板状などの所望の形状に成形される。
【0003】
特許文献1には、第1ケーシング内に配設された第1スクリューと、真空脱気可能に形成された第2ケーシング内に配設された第2スクリューとを備える押出成形機が記載されている。第1ケーシングと第2ケーシングとは筒状に形成された連通管で連通されている。そして、第1ケーシング内で第1スクリューにより成形材料が混練された後、この成形材料が連通管を通じて第2ケーシング内に供給され、第2スクリューにより第2ケーシングから口金に供給される。口金は第2ケーシングに取り付けられており、口金に供給された成形材料が口金の押出口から押し出されて所望の形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−44402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の押出成形機は真空押出成形を行うものである。すなわち、第2ケーシング内は真空脱気可能に形成されており、第2ケーシング内に供給された成形材料に含まれている気泡を脱気するようにしている。脱気を行なう理由としては、成形材料内に必要以上に気泡が含まれていることにより、硬化物の比重低下や強度低下を招いたり、養生硬化時に膨れが発生する原因となることなどを抑制するためである。このため、成形材料が第2ケーシングから口金に供給されているときには、連通管が成形材料で充満された状態にし、空気が連通管を通じて第1ケーシングから第2ケーシングへ引き込まれるのを防止する必要がある。従って、第1ケーシングから連通管への成形材料の供給が途切れないようにスムーズに行われる必要がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、連通管への成形材料の供給をスムーズに行うことができる押出成形機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る押出成形機は、第1ケーシング内に配設された第1スクリューと、連通管を介して前記第1ケーシングと連通する真空脱気可能に構成された第2ケーシングと、前記第2ケーシング内に配設された第2スクリューと、を備え、前記第1ケーシング内には前記第1スクリューで混練された成形材料を前記連通管に誘導するための誘導手段が設けられ、前記第1スクリューの軸線上には、該第1スクリュー側から順に、前記誘導手段と、前記成形材料を前記誘導手段側に押し戻すための押し戻し手段と、を備え、前記誘導手段は、一対の並列する回転軸と、該各回転軸の外周面に設けられた誘導羽根と、を備え、該誘導羽根は、前記押し戻し手段から押し戻された成形材料を受けるように前記押し戻し手段に向かう傾斜面を有している、ことを特徴とする。
【0008】
前記第1スクリューの先端部に前記成形材料を擦り潰すための擦り潰し機構を備えていることが好ましい。
【0011】
前記第2ケーシングは、前記第1ケーシングの下側に設けられ、前記誘導羽根の押し戻し手段側の先端が回転時において前記連通管の中心線の上方に位置するのが好ましい
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第1ケーシング内で混練された成形材料を誘導手段により連通管に誘導することができ、連通管への成形材料の供給がスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは本発明の実施の形態の押出成形機を前後方向に広がる鉛直面で切った概略の断面図、図1Bは本発明の実施の形態の押出成形機を左右方向に広がる鉛直面で切った概略の断面図である。
図2図2は本発明の実施の形態の押出成形機の第1ケーシングを水平面で切った断面図である。
図3図3は本発明の実施の形態の押出成形機の誘導手段周辺部を前後方向に広がる鉛直面で切った断面図である。
図4図4Aは本発明の実施の形態の外管を示す正面図、図4Bは本発明の実施の形態の外管をその筒中心を通る水平面で切った断面図である。
図5図5は本発明の実施の形態の連通管を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1に本実施形態の押出成形機1の一例を示す。以降、図1Aを基準として、図1Aにおける奥行き方向を「前後」、図1Aにおける横方向を「左右」、図1Aにおける縦方向を「上下」として説明する。押出成形機1は、前後方向に延伸する第1ケーシング21と、この第1ケーシング21内に設置された第1スクリュー31と、第1ケーシング21の下側に設置されて左右方向に延伸する第2ケーシング22と、この第2ケーシング22内に設置された第2スクリュー32とを備える。第1ケーシング21と第2ケーシング22とは上下に延びる連通管6を介して連通している。
【0016】
第1ケーシング21は、図1A及び図1Bに示すように、左右幅が上下幅よりも大きな筒状をなしており、図2及び図3に示すように、その後端から前後方向中央部に亘って左右に並ぶ平行な一対の上記第1スクリュー31,31が収容され、また、後端の上面に供給口4(ホッパー)を有し、前端中央寄りの下面に第1開口部71を有する。また、第1ケーシング21の内周面は、円滑面となっている。供給口4から成形材料を第1ケーシング21内に供給することができる。なお、本実施形態では、第1ケーシング21の内周面が上述の如く円滑面となっているが、該内周面に上記第1スクリュー31,31と平行に延びる溝を周方向に複数形成することにより、成形材料を前方に向かって効率良く搬送できるようにしてもよい。
【0017】
上記各第1スクリュー31は、回転駆動装置(図示省略)によりそれぞれ回転駆動されるように構成されている。左に位置する第1スクリュー31を時計回り、右に位置する第1スクリュー31を反時計回りとして、これら一対の第1スクリュー31を回転させることによって、供給口4から供給された成形材料を混練しながら、第1ケーシング21の後端側(上流側)から前端側(下流側)に送ることができる。なお、上流及び下流という用語は、成形材料が移動する向きに基づいて使用している。
【0018】
各第1スクリュー31は推進部310とテーパー部311とを備えている。また第1ケーシング21内の第1スクリュー31の軸線上には、第1スクリュー31側から即ち後側から順に、第1スクリュー31で混練された成形材料を連通管6に誘導するための誘導手段312と、この誘導手段312を越えて前側に押し出された成形材料を誘導手段312側に押し戻すための押し戻し手段313とを備えている。
【0019】
推進部310は円棒状の軸部314と軸部314の外周に螺旋状に設けられた前進羽根315とで構成されている。テーパー部311は軸部314の先端に設けられている。テーパー部311はその後端から先端に向かって徐々に外径が大きくなるようにテーパー状に形成されている。
【0020】
誘導手段312はテーパー部311よりも前側に設けられている。誘導手段312は上記第1スクリュー31の軸部314と一体の円棒状の一対の回転軸316と、各回転軸316の外周に周方向に180°間隔で設けられた一対の誘導羽根317とで構成されている。
【0021】
これら一対の回転軸316は、誘導羽根317の突出寸法よりもやや大きい間隔をあけて配設されており、一方の回転軸316の一対の誘導羽根317と他方の回転軸316の一対の誘導羽根317とは、これら一対の回転軸316が同軸上に配置され且つ軸線上から見た場合に周方向に90°ずれるように設けられている。上記一対の回転軸316は、上述のような間隔で配設され且つ同一速度で回転するため、一方の回転軸316の誘導羽根317と他方の回転軸316の誘導羽根317とが干渉する虞があるものの、上述の如く90°ずれるように設けられているため、これら誘導羽根317は互いに干渉することがない。
【0022】
また、各回転軸316に設けられた一対の誘導羽根317は回転軸316の軸方向に対して傾斜して設けられている。具体的には、仮に一方の回転軸316と他方の回転軸316とを上記の如く90°ずれないように回転した場合に、一方の回転軸316の誘導羽根317と他方の回転軸316の誘導羽根317とが平面視で前側に開く「ハ」の字を描くように配置されている。そして、各誘導羽根317は、押し戻し手段313から後方に押し戻された成形材料を受けるように押し戻し手段313に向かう傾斜面317aを有している。さらに、上記誘導羽根317の前端(押し戻し手段313側の先端)は、回転軸316の回転時において後述の連通管6の中心線の上方に位置している(図3の一点鎖線を参照)。
【0023】
押し戻し手段313は誘導手段312の前側に設けられている。押し戻し手段313は第1スクリュー31の推進部310の軸線上に設けられている。押し戻し手段313は上記第1スクリュー31の軸部314及び誘導手段312の回転軸316と一体の円棒状の軸部318と軸部318の外周に螺旋に設けられた後進羽根319とで形成されている。同軸線上に配される前進羽根315と後進羽根319とは旋回方向が逆向きになっている。
【0024】
また押出成形機1は擦り潰し機構11を備えている。擦り潰し機構11は第1スクリュー31のテーパー部311と外管111とで形成されている。図4Aのように、外管111は断面略8の字に形成されている。また図4Bのように、外管111は前後方向の略中央部から後端側に向かって内径が広がるように形成されている。また外管111の内面は複数の突条112と複数の溝部113とを交互に設けて凹凸面に形成されている。外管111は第1ケーシング内に設けられており、外管111内にテーパー部311が配置されている。テーパー部311の最大径の外面と外管111の内面との隙間は1.5〜5mmに形成されている。
【0025】
第1ケーシング21の下部に第2ケーシング22が設けられている。第2ケーシング22は、真空脱気室8と収容室9とで構成されている。収容室9は、左右方向に細長い筒状に形成されている。真空脱気室8は、収容室9の左端の上部に設けられ、収容室9の右端には口金部10が設けられている。
【0026】
真空脱気室8は上面に第2開口部72を有し、第2開口部72には連通管6が設けられている。連通管6は、第2開口部72の内周から真空脱気室8側に突出するように、円筒状等の筒状に形成されている。第2開口部72の位置は、第1ケーシング21の第1開口部71の位置と合致し、第1ケーシング21と第2ケーシング22とが連通管6で連通されている。口金部10は排出口(押出口)5を有する。第2ケーシング22の真空脱気室8は、真空ポンプ(図示省略)により真空脱気可能に形成されている。このように、第2ケーシング22は、排出口5を有し、真空脱気可能に形成されている。真空脱気室8内は、成形材料中の気泡を除去することができる程度の真空度に到達することができればよい。
【0027】
連通管6の第1ケーシング21側の開口61c付近の内面6aは、図3に示すように上側に向かって、即ち第1ケーシング21側に向かって拡径するテーパー面状に形成されていることが好ましい。これにより、第1スクリュー31で混練された後の成形材料を連通管6内に引き込みやすくなる。
【0028】
連通管6の第2ケーシング22側の開口63cが第1ケーシング21側の開口61cよりも狭いことが好ましい。例えば、図5に示すように、連通管6の第2ケーシング22側の開口63c付近において、この開口63cを塞ぐ方向に、即ち連通管6の筒中心線に向かう方向に突出する4つの突起6bを周方向に90°間隔で設けて開口63cを細くすることができる。このようにして連通管6の第2ケーシング22側の開口63cを第1ケーシング21側の開口61cよりも狭くすることができる。上記の突起6bは連通管6の第2ケーシング22側の開口63c付近の内周面の全部に設けてもよいし、図5のように一部に設けてもよい。このように突起6bが設けられていると、連通管6内の成形材料が真空脱気室8側に引き寄せられる際に、上記の突起6bによって、成形材料の真空脱気室8側の先端部が剪断されやすくなり、この先端部だけが真空脱気室8内に抜け落ちやすくなる。これにより、連通管6内の成形材料の全部が一度に第2ケーシング22の真空脱気室8内に抜け落ちることを抑制することができ、閉空間が形成されやすくなる。連通管6が円筒状であれば内径は10〜150mmである。この内径の箇所は、テーパー面状に形成されておらず、かつ突起6bが設けられていない箇所である。なお、上記突起6bは、1〜3つ又は5つ以上設けられていてもよい。
【0029】
第2スクリュー32(オーガスクリュー)は、第2ケーシング22の収容室9内に前後方向に平行に並んで一対配設されている。各第2スクリュー32は、平面視で上記第1スクリュー31と直交するように左右方向に延びるように設けられている。各第2スクリュー32は、回転駆動装置(図示省略)により回転駆動されるように構成されている。第2スクリュー32を回転させることによって、第2ケーシング22内の成形材料をさらに混練しながら、第2ケーシング22の左端側(上流側)の真空脱気室8から、収容室9を経て、右端側(下流側)の口金部10に送ることができる。なお、図1では第2スクリュー32を二軸異方向回転のものとして図示しているが、これ以外のスクリューを用いてもよい。
【0030】
次に本実施形態の押出成形機1を用いて押出成形を行って成形品を製造する方法について説明する。
【0031】
まずセメントを主成分とする成形材料の原料を材料混練ミキサー(図示省略)で混練する。成形材料としては、例えば、セメントを主成分とし、これに、ケイ酸質原料、パルプ、ポリプロピレン繊維やビニロン繊維等の有機繊維、ガラス繊維等の無機繊維、珪砂、珪石粉、フライアッシュ等のシリカ成分、マイカ、軽量化骨材などを適宜選択して加え、さらに水を混合して得ることができる。成形材料の硬さは、粘度硬度計(日本碍子株式会社製「CRAY HARDNESS TESTER」)で評価することができる。軟らかい成形材料は、粘度硬度計での針進入値が0以上3未満程度であり、硬い成形材料は、粘度硬度計での針進入値が3以上6以下程度であるが、成形材料としては、硬いものでも軟らかいものでも用いることができる。
【0032】
次に、この成形材料を押出成形機1の供給口4から第1ケーシング21内に供給する。第1ケーシング21内では、回転駆動装置により第1スクリュー31が回転駆動され、この第1スクリュー31によって、成形材料が均一に混練されながら、第1ケーシング21の後端側から前端側に送られる。一対の第1スクリュー31は互いに逆方向に回転駆動されている。各第1スクリュー31の回転方向を矢印Xで示す。
【0033】
第1ケーシング21内に供給された成形材料は、推進部310により第1ケーシング21内を前進し、擦り潰し機構11にまで送られる。擦り潰し機構11に達した成形材料は、テーパー部311と外管111との隙間を通過するが、このときに成形材料に含まれている原料のうち大きい物がテーパー部311の外面と外管111の内面とで挟まれてすり潰される。これにより、排出口5付近での詰まりを抑制することができる。成形材料の進行方向を矢印Yで示す。
【0034】
擦り潰し機構11を通過した成形材料は、順に第1開口部71、第2開口部72、連通管6に進入し、連通管6内に充填される。上述のように、連通管6の第1ケーシング21側の開口61c付近の内面6aがテーパー面状に形成されていると、成形材料を連通管6内に引き込みやすくなる。また擦り潰し機構11を通過した成形材料は、誘導手段312の誘導羽根317で下方に押し込まれて第1開口部71及び第2開口部72を通じて連通管6に誘導される。第2ケーシング22の真空脱気室8の内部は、真空ポンプにより排気されて減圧状態となっている。そのため、連通管6内の成形材料が第1スクリュー31による送りと真空脱気室8の減圧により真空脱気室8側に引き寄せられ、少しずつ真空脱気室8内に抜け落ちる。連通管6は筒状に形成されているので、連通管6内の成形材料は、軟らかいものであっても、連通管6の内面の摩擦抵抗を受けやすく、連通管6内の成形材料の全部が一度に真空脱気室8内には抜け落ちにくい。このように、成形材料が少しずつ安定して真空脱気室8内に供給されることで、第1スクリュー31及び第2スクリュー32の回転速度の調整が容易となる。
【0035】
そして、連通管6が用いられている場合、連通管6から真空脱気室8に成形材料が抜け落ちても、引き続き第1ケーシング21から成形材料が連通管6に進入するので、連通管6内はほぼ常に成形材料で塞がれていることとなる。そのため連通管6を塞いでいる成形材料によって、第1ケーシング21内の空気が真空脱気室8内に流入しにくくなり、真空脱気室8内の減圧状態を保持することができる。このように減圧状態が保持されることで、真空脱気室8内に送られた成形材料中の気泡を十分に除去することができる。
【0036】
第1ケーシング内に供給された成形材料の一部は第1開口部71に入り込まず、誘導手段312を越えてその前方に進行しようとすることがあるが、誘導手段312よりも前方の押し戻し手段313によって誘導手段312側に押し戻される。具体的には、成形材料は第1スクリュー31の回転駆動により第1開口部71の方に進行されている(矢印Y参照)。このとき、押し戻し手段313は第1スクリュー31及び誘導手段312と同じ回転方向(矢印Xの方向)に回転駆動しているが、この押し戻し手段313の後進羽根319により誘導手段312よりも前方に進行しようとする成形材料を後進させ(矢印Z参照)、第1開口部71、第2開口部72及び連通管6の方に押し戻すことができる。
【0037】
押し戻し手段313によって押し戻された成形材料は、誘導手段312の誘導羽根317の傾斜面317aに受け止められる。このとき、誘導羽根317は、上述の如く平面視で前側に開く「ハ」の字を描くように設けられているので、成形材料は傾斜面317aに効率良く受け止められる。その結果、押し戻された成形材料を連通管6に効率良く誘導することができる。
【0038】
真空脱気室8に供給された成形材料は第2ケーシング22の収容室9に落下する。収容室9内では、回転駆動装置により第2スクリュー32が回転駆動されている。上記のように真空脱気室8内で気泡が除去された成形材料は、その後、第2スクリュー32によって、さらに均一に混練されながら、収容室9の一端側から他端側に送られる。第2スクリュー32と収容室9との隙間はほぼ常に成形材料で塞がれているので、収容室9又は口金部10を介して外部の空気が真空脱気室8内に流入しにくくなり、真空脱気室8内の減圧状態を保持することができる。
【0039】
収容室9の他(右)端側に送られた成形材料は、口金部10の排出口5からグリーンシートとして連続的に押し出されて成形される。このようにして押出成形されたグリーンシートは切断装置(図示省略)により所定の長さに切断された後、養生硬化することによって、成形品として例えば無機質板等の建築部材を得ることができる。真空脱気室8内の減圧状態が保持されているので、成形材料中の気泡が十分に除去されることとなり、グリーンシートの比重を調整することができると共に、養生時に破裂による割れの発生を抑制することができる。なお、建築部材としては、例えば、外壁材、床材、天井材、屋根材、内装材、レンガブロック等を挙げることができる。
【0040】
本実施の形態では、第1ケーシング21内には第1スクリュー31で混練された成形材料を連通管6に誘導するための誘導手段312が設けられているので、成形材料を誘導手段312で連通管6に誘導することができ、連通管6への成形材料の供給をスムーズに行うことができる。
【0041】
また本実施の形態では、第1スクリュー31の先端部に成形材料の原料を擦り潰すための擦り潰し機構11を備えているので、成形材料中の原料のうち粒径等が大きな物を擦り潰し機構11で擦り潰すことができ、成形材料の目詰りを低減することができる。また、この狭小の擦り潰し機構11に成形材料が充填されることによって第1スクリュー31の先端部がシールされ、供給口4からの空気が該第1スクリュー31の前側のスペースに流入するのを抑制することができる。
【0042】
また本実施の形態では、第1スクリュー31の軸線上には、第1スクリュー31側から順に、誘導手段312と、成形材料を誘導手段312側に押し戻すための押し戻し手段313と、を備えているので、押し戻し手段313により成形材料を誘導手段312の方に押し戻すことができ、連通管6に供給されない成形材料を少なくすることができる。
【0043】
また本実施の形態では、誘導羽根317は、押し戻し手段313から押し戻された成形材料を受けるように押し戻し手段313に向かう傾斜面317aを有しているので、誘導羽根317により成形材料を誘導しやすくなって、連通管6への成形材料の供給をスムーズに行うことができる。
【0044】
また本実施の形態では、誘導羽根317の先端が回転時において連通管6の中心線の上方に位置するので、誘導羽根317により成形材料を連通管6に誘導しやすくなって、連通管6への成形材料の供給をスムーズに行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、誘導手段312及び押し戻し手段313が第1スクリュー31と一体に設けられているが、これに限定されず、これら誘導手段312及び押し戻し手段313が第1スクリュー31とは別に設けられていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、誘導羽根317が回転軸316の軸線に対して傾斜するように該回転軸316に設けられているが、これに限定されず、傾斜面317aが押し戻し手段313によって押し戻された成形材料を効率良く受け止められればよく、例えば断面楔形の誘導羽根317が回転軸316の軸線と平行に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 押出成形機
6 連通管
11 擦り潰し機構
21 第1ケーシング
22 第2ケーシング
31 第1スクリュー
32 第2スクリュー
312 誘導手段
313 押し戻し手段
317 誘導羽根
317a 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5