特許第6687382号(P6687382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687382車両用シート芯材の製造方法、及び車両用シート芯材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687382
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】車両用シート芯材の製造方法、及び車両用シート芯材
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20200413BHJP
   A47C 7/24 20060101ALI20200413BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20200413BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20200413BHJP
【FI】
   A47C27/14 A
   A47C7/24
   A47C7/18
   B60N2/90
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-248389(P2015-248389)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-113053(P2017-113053A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】高山 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】植栗 基晶
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭一
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−196015(JP,A)
【文献】 特開2015−174340(JP,A)
【文献】 特開2015−136851(JP,A)
【文献】 特開平10−249882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14 − A47C 27/20
A47C 7/18
A47C 7/24
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、上記本体の周囲に沿って埋設されたフレーム部材との一体成形体からなる車両用シート芯材の製造方法であって、
型内成形により上記一体成形体を形成する時、または型内成形により上記一体成形体を形成した後に、
上記フレーム部材が上記本体の収縮により相対移動できる空間を、上記フレーム部材に隣接して形成する、車両用シート芯材の製造方法。
【請求項2】
型内成形により上記一体成形体を形成する時に、
当該車両用シート芯材の前後方向後方側の幅方向両端に相当する位置に、上記本体から上記フレーム部材を露出させた一対の露出部を形成するとともに、
上記一対の露出部の間に上記本体に上記フレーム部材が係止される連結部を形成する、請求項1に記載の車両用シートの製造方法。
【請求項3】
型内成形により上記一体成形体を形成する時に、
上記フレーム部材の軸線方向に連続して少なくとも3つの凹部を形成させると共に、上記凹部の開口方向を隣り合う凹部の開口と逆方向とし、上記凹部の底部で上記フレーム部材を挟み込んで、上記空間を形成する、請求項1又は2に記載の車両用シート芯材の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、上記本体の周囲に沿って埋設されたフレーム部材との一体成形体からなる車両用シート芯材であって、
上記車両用シート芯材は、上記フレーム部材に隣接して上記本体の成形収縮方向側であり、且つ上記フレーム部材の内側に沿って、空間が形成されている、車両用シート芯材。
【請求項5】
上記熱可塑性樹脂は、
ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂、のいずれかを含有し、上記発泡粒子成形体の見かけ密度が20〔g/L〕〜200〔g/L〕である、請求項4に記載の、車両用シート芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用シート芯材の製造方法、及び車両用シート芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は車両用シートに用いる芯材として熱可塑性樹脂の発泡粒子成形体からなるシート芯材を用いることが多くなっている。
上記発泡粒子成形体は、ウレタンフォームに比べて、軽量化が可能なうえ、強度の高いシート芯材を形成しやすいというメリットがあるからである。
上記発泡粒子成形体は、成形金型の成形空間内に熱可塑性樹脂製の発泡粒子を充填し、この成形空間内に高温の水蒸気を導入して加熱し、型内成形して得られる。
【0003】
また、このようなシート芯材には、シート芯材の形状や強度を保持するためのフレーム部材や、車両に連結するための止め金具を、発泡粒子成形体に嵌め込んだり、発泡粒子成形体と一体的に成形したりして形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−036275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フレーム部材と発泡粒子成形体を一体的に成形して、発泡粒子成形体内にフレーム部材が埋め込まれた成形体を作製した場合には、成形後に作用する収縮力によって、フレーム部材が曲がってしまったり、発泡粒子成形体が反り返ったりすることがあった。
【0006】
このように、フレーム部材を一体成形したときに、フレーム部材や発泡樹脂成形体が変形してしまったものは、例えば、上記止め金具の相対位置がずれたり、シート芯材全体としての寸法が目的の寸法と合わなくなったりすることがあり、車両側へのシート芯材の取り付けが困難になることもあった。一方、フレーム部材を一体成形しないで、発泡粒子成形体を成形した後に、フレーム部材を嵌め込んでシート芯材を形成する場合には、上記の変形の問題は起こらないものの、後工程が必要となるので、コストや時間のかかるものであった。
【0007】
この発明の目的は、フレーム部材と発泡粒子成形体とが一体的に成形され、発泡粒子成形体内にフレーム部材が埋設されているシート芯材において、発泡粒子成形体の収縮による、フレーム部材やシート芯材の変形を防止して、目的の寸法や形状を有する、車両用シート芯材の製造方法、及び車両用シート芯材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
[1]熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、上記本体の周囲に沿って埋設されたフレーム部材との一体成形体からなる車両用シート芯材の製造方法であって、型内成形により上記一体成形体を形成する時、または型内成形により上記一体成形体を形成した後に、上記フレーム部材が上記本体の収縮により相対移動できる空間を、上記フレーム部材に隣接して形成する、車両用シート芯材の製造方法、
[2]型内成形により上記一体成形体を形成する時に、当該車両用シート芯材の前後方向後方側の幅方向両端に相当する位置に、上記本体から上記フレーム部材を露出させた一対の露出部を形成するとともに、上記一対の露出部の間に上記本体に上記フレーム部材が係止される連結部を形成する、上記[1]に記載の車両用シートの製造方法、
[3]型内成形により上記一体成形体を形成する時に、上記フレーム部材の軸線方向に連続して少なくとも3つの凹部を形成させると共に、上記凹部の開口方向を隣り合う凹部の開口と逆方向とし、上記凹部の底部で上記フレーム部材を挟み込んで、上記空間を形成する、上記[1]または[2]に記載の車両用シート芯材の製造方法、
[4]熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、上記本体の周囲に沿って埋設されたフレーム部材との一体成形体からなる車両用シート芯材であって、上記車両用シート芯材は、上記フレーム部材に隣接して上記本体の成形収縮方向側であり、且つ上記フレーム部材の内側に沿って、空間が形成されている、車両用シート芯材
[5]上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂のいずれかを含有し、上記発泡粒子成形体の見かけ密度が20〔g/L〕〜200〔g/L〕である、上記[4]に記載の、車両用シート芯材、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、発泡粒子成形体の型内成形後の収縮過程で、フレーム部材に隣接して形成された空間の範囲でフレーム部材が相対移動できるため、フレーム部材の折れ曲がりや、発泡粒子成形体の反り返りなどの過度の変形を抑制して、寸法精度のよい車両用シート芯材を提供できる。
【0010】
また、本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、上記本体の周囲に沿って埋設されたフレーム部材との一体成形体からなる車両用シート芯材であって、成形収縮後には、上記車両用シート芯材は、上記フレーム部材に隣接して上記発泡粒子成形体の収縮方向側に空間が形成されたものとなり、寸法精度に優れた車両用シート芯材となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のシート芯材の斜視図である。
図2】第1実施形態の平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】第2実施形態の斜視図である。
図6】第2実施形態の平面図である。
図7】第1実施形態の寸法誤差測定箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜4に示す第1実施形態は、車両の2人掛けのシート部材に用いられるシート芯材1であって、本発明の車両用シート芯材の製造方法によって製造されるものである。そして、このシート芯材1は、シート芯材1の上に、図示しないウレタンフォームなどのクッション材を載せてから、クッションカバーで覆ってシート部材を構成するものであることが好ましい。
このシート芯材1は、熱可塑性樹脂の発泡粒子成形体からなる本体2に、この本体2の周囲に沿ってループ状のフレーム部材3が埋設されるように一体成形されたものである。
【0013】
そして、この第1実施形態では、本体2はその幅方向の中心線Lを境に線対称に形成されている。
なお、以下には、上記シート芯材1を車両に設置したときに車両の幅方向となる方向を本体2の幅方向、車両の上下方向を本体2の上下方向あるいは厚み方向、車両の前後方向を本体2の前後方向とする。
また、上記フレーム部材3が埋設されるとは、発泡粒子成形体からなる本体2内に上記フレーム部材3が埋め込まれていることであり、上記フレーム部材3が本体2に密着して取り囲まれている場合のほか、フレーム部材3の周囲に形成された空間を介して上記フレーム部材3が本体2に取り囲まれているものも上記埋設に含まれる。
【0014】
また、上記フレーム部材3は、その軸方向の全周が埋設されている必要は無く、フレーム部材3の一部が外部に開放されていてもよい。さらに、「本体2の周囲に沿って埋設」とは、図1,2に示されるように、上記フレーム部材3の概ね3辺が本体2に埋設されているものが含まれる。そして、本体2に埋設されているフレーム部材3は、収縮方向とフレーム部材3の軸方向との両方に対して略垂直となる方向で、発泡粒子成形体により挟持されていることが好ましい。例えば、フレーム部材3にかかる収縮力が主に幅方向である場合には、この収縮力に直交するフレーム部材3の部分は、発泡粒子成形体により上下方向で狭持されるように形成されていることが好ましい。
【0015】
上記本体2を構成する熱可塑性樹脂は、適宜選択可能であるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などや、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂を用いることができる。
なお、一般に、非結晶性樹脂の成形収縮率は0.001〜0.009であるのに対して、結晶性樹脂の成形収縮率は0.003〜0.04である。特に、収縮が生じ易いポリオレフィン系樹脂のような結晶性樹脂を用いた場合には、本発明における変形防止の効果がより発揮される。
【0016】
上記樹脂の中でも、強度や耐衝撃性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との複合樹脂を用いることが好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、特定の圧縮弾性を有する発泡粒子成形体を形成することがより容易となる。
【0017】
さらに、上記本体2を形成する発泡粒子成形体の見かけ密度は、20〔g/L〕〜200〔g/L〕であることが好ましい。なお、発泡粒子成形体は、見かけ密度が上記範囲内であれば、車両用シート芯材としての強度や耐衝撃性に優れるとともに、フレーム部材33の保持性も優れたものとなる。上記観点から、発泡粒子成形体の見かけ密度は25〔g/L〕〜100〔g/L〕であることが好ましく、30〜80〔g/L〕であることがさらに好ましい。
また、異なる見かけ密度を有する発泡粒子成形体を複数組み合わせて、一つの発泡成形体とすることもできる。この場合には、発泡粒子成形体全体の平均の見かけ密度が上記範囲内であればよい。ここで、見かけ密度は発泡粒子成形体を水に水没させた際の体積増加分から算出される水没法によって求めることができる。
【0018】
この第1実施形態において、上記本体2の周囲に沿って埋設されているフレーム部材33は、主に、シート芯材1の強度を向上させるためのものであるが、その他にも、車体との連結金具などの固定や、クッションカバーなどの表皮材の固定などにも用いられる。
そして、上記フレーム部材3は、図1,2に示すように、本体2の前部に沿って埋設されている直線状の第1ワイヤー部4と、第1ワイヤー部4より後部側に設けられた略コ字状の第2ワイヤー部5と、これら第1,2ワイヤー部4,5が連結されたプレート部6,6とを備えている。
上記のように、フレーム部材3は、第1ワイヤー部4、第2ワイヤー部5及びプレート部6,6によって四角形のループ状に構成されている。
【0019】
また、上記プレート部6にはそれぞれ金属製のフック部7が結合されている。このフック部7は、本体2の底部からその先端側を突出させ、このシート芯材1を車両に取り付ける際に、図示していない車両側の止め部に固定する部分である。
さらに、第2ワイヤー部5の後部中央にはバックシートと連結するための金属製の連結凸部8を結合している。
ただし、上記フレーム部材3は、プレート部6,6などの部材を用いないで、第1,2ワイヤー部4,5を直接連結してループを形成してもよいし、1本のワイヤー材によってループ状に構成されたものでもよい。
【0020】
上記フレーム部材3の材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属、樹脂が挙げられるが、本体2を構成する発泡粒子成形体に対して収縮率が小さいものである。
なお、シート芯材1の強度の観点からは、特に金属製のフレーム部材3が好ましく、その中でも鋼材からなるものが好ましい。
【0021】
また、上記フレーム部材3としては、線状、管状、棒状等、任意の形状のものが用いられるが、ワイヤー材などが好適に使用できる。なお、従来、ウレタンフォームとフレーム材のみから座席シートを形成する場合には、強度保持のために、直径が太く重いワイヤー材からなるフレーム部材3が用いられていた。しかし、発泡粒子成形体からなる本体2を用いる場合には、発泡粒子成形体からなる本体2自体がある程度の強度を備えているので、フレーム部材3として比較的直径が細く軽いワイヤー材を用いても、シート芯材全体としての強度を高く保つことができる。
【0022】
シート芯材1の強度の観点からは、上記フレーム部材3に用いるワイヤー材として、直径2〔mm〕〜8〔mm〕の棒状または線状のものを用いることが好ましい。より好ましくは、上記ワイヤー材の直径は3〔mm〕〜7〔mm〕、さらに好ましくは3.5〔mm〕〜6〔mm〕である。
さらに、上記ワイヤー材の引張強さは、200〔N/mm〕以上であることが好ましい。シート芯材1の強度を向上させる観点からは、上記引張強さは250〔N/mm〕〜1300〔N/mm〕であることが好ましい。
また、上記ワイヤー材の降伏点は、400〔N/mm〕以上であることが好ましく、440〔N/mm〕以上であることがさらに好ましい。なお、上記ワイヤー材の物性は、JIS G3532に基づいて測定することができる。
【0023】
一方、シート芯材1の軽量化の観点から、直径の小さなワイヤー材からなるフレーム部材3を用いた場合には、フレーム部材3が、本体2の収縮の影響をさらに受けやすくなるので、本発明による効果がより発揮されることになる。
【0024】
上記シート芯材1は、本体2を成形する成形金型に、フレーム部材3を発泡粒子成形体の周囲に沿うように配置した状態で、発泡粒子を充填して加熱し、型内成形によって一体成形して得られる。上記シート芯材1においては、略四角形のループ状のフレーム部材3が本体2内に埋設されている。
なお、金属などのフレーム部材3と熱可塑性樹脂の発泡粒子成形体からなる本体2とが一体的に成形される場合には、両者の成形収縮率が大きく異なっていることから、フレーム部材3の折れ曲がりや、本体2の反り返りなどの変形が発生し易くなる。
【0025】
本発明の製造方法においては、上記本体2の周囲に沿って上記フレーム部材3が埋設された埋設部を形成させるように、型内成形により、上記本体2とフレーム部材3との一体成形体を形成する時、または上記一体成形体を形成した後に、上記フレーム部材3が上記発泡粒子成形体からなる本体2の収縮により相対移動できる空間を、上記フレーム部材3に隣接して形成することを特徴とする。
【0026】
この第1実施形態では、上記本体2に上記フレーム部材3が埋設されている埋設部分において、上記フレーム部材3に対して上記本体2の収縮方向とは逆方向の位置に、上記空間を上記フレーム部材3に隣接して形成する。
さらに具体的には、第1実施形態において、図2に示すように、本体2の前部に沿って埋設されている直線状の第1ワイヤー部4においては幅方向外側に空間が形成され、第1ワイヤー部4より後部側に設けられた略コ字状の第2ワイヤー部5においては、ワイヤー部5の外方側に空間が形成される。
【0027】
上記本体2とフレーム部材3との一体成形体を形成する時、または上記本体2とフレーム部材3との一体成形体を形成した後に、上記箇所に空間が形成されていると、本体2が収縮しても、その収縮過程において、上記空間がフレーム部材3に対する逃げ部として作用する。その結果、上記本体2におけるフレーム部材3の周辺部分が他の部分と同様に均一に収縮することができる。一方、上記空間が存在しない場合には、収縮過程において、本体2を形成する発泡粒子成形体とフレーム部材3とが突き当たり、フレームが曲がってしまったり、収縮が不均一に生じて発泡粒子成形体が変形したりするおそれがある。
【0028】
なお、上記一体成形体を形成した後とは、フレーム部材3を埋設する本体2が型内成形された後、本体2に大きな収縮が生じない間をいい、具体的にはフレーム部材3の弾性変形領域内で収縮が起こっているうちに遅滞なく、上記空間が形成されることが好ましい。さらに具体的には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の場合には、一体成形後60分程度の間に、上記空間を設けることが好ましい。なお、上記空間は、上記埋設部の全ての箇所に形成されている必要は無く、本体2やフレーム部材3の変形が抑制される範囲で設けられることが好ましい。
【0029】
収縮後のシート芯材1、すなわち本発明の製造方法によって得られたシート芯材1においては、発泡粒子成形体からなる本体2が収縮することによるフレーム部材3の相対移動によって、フレーム部材3に対して上記本体2の収縮方向側に空間が形成されたものとなる。
【0030】
上記本体2の収縮の方向は、別途発泡粒子成形体を成形して収縮の状態を観察したり、例えば、図2においては、収縮量が少ない、第1ワイヤー部4の長手方向中央付近を定着部Fと仮定し、本体2の収縮がこの定着部Fに向かって起こるとして、収縮の方向や移動量を予測したりすることができる。
すなわち、本体2の各部位における収縮による移動量は、上記定着部Fからの距離に比例するため、その距離と本体2の収縮率とによっておおよその予測は可能である。そして、予測した上記移動量に対応した大きさの空間を、フレーム部材3の周囲に設けるようにすれば、フレーム部材3が受ける収縮力を低減することができる。なお、フレーム部材3に隣接して形成される空間の大きさは、好ましくはフレーム部材3から5〜20〔mm〕の幅で、より好ましくは6〜15〔mm〕の幅で形成されることが好ましい。
【0031】
また、第1実施形態では、本体2に、その幅方向の両脇に沿って前部から後部に向かって連続する凹部2a,2b,2cが形成されている(図2,3参照)。これら凹部2a,2b,2cは、上記第2ワイヤー部5の一部を保持する係止部を構成する。
そして、これら凹部2a,2b,2cは、図3に示すように、隣り合う開口を逆方向に設け、各凹部2a,2b,2cの底部が、第2ワイヤー部5を境にして交互に上下に位置して、少なくとも3箇所で上記第2ワイヤー部5を挟むようにして組み合わされている。
これらの凹部2a,2b,2cにより形成された連続する貫通孔が形成されており、その貫通孔に第2ワイヤー部5が埋設されている。
【0032】
一方、上記凹部2a,2b,2cの幅方向の距離dは、図4に示すように、第2ワイヤー部5の太さよりも大きく形成されている。
したがって、図4に示すように、上記貫通孔において、右側のワイヤー部5に対して、図の右側、すなわち本体2の幅方向右端側に空間Sが形成されている。この空間Sは、他の凹部2b,2cに連続して形成されている。
【0033】
なお、図4は、図2におけるIV-IV線断面図で、図2において右側に位置する凹部2aの断面図である。そして、図2,4は、本体2の成形直後であって本体2の大きな収縮が生じていない状態を示している。
そのため、本体2の収縮方向を矢印A方向としたとき、第2ワイヤー部5を境に、少なくとも収縮方向である上記矢印A方向と逆方向には、上記空間Sが形成されている。
また、第2ワイヤー部5は、前後方向に傾斜して設けられているが、凹部2a,2b,2cの底部もこの傾斜に対応して、第2ワイヤー部5に接触して挟持するように形成されている。
【0034】
上記構成により、第2ワイヤー部5は、上記凹部2a,2b,2cの底部によって挟まれて上下方向の移動が規制されるが、上記空間Sの範囲内で相対移動することができる。そして、上記空間Sは、本体2が矢印A方向に収縮するとき、上記第2ワイヤー部5を収縮方向と逆方向に移動できるようにしている。
このように、本体2が図2,4の矢印A方向に収縮するときに、上記空間Sの範囲内でワイヤー部5が相対移動できるので、ワイヤー部5に作用する収縮力を低減して本体2の変形や、ワイヤー部5の変形を防止できる。
なお、本体2の収縮が終了した後には、ワイヤー部5は矢印A方向とは逆方向に相対的に移動しており、ワイヤー部5の矢印A方向側に空間が形成されることとなる。
【0035】
また、本体2の前部の第1ワイヤー部4の埋設部分においては、本体2は矢印B方向にほとんど移動しないが、幅方向である矢印A、A’方向に収縮すると考えられる。
上記プレート部6,6間の直線状の第1ワイヤー部4は、本体2の幅方向外側に空間Sが形成されており、上記幅方向、すなわち第1ワイヤー部4の軸線方向の収縮過程では、その収縮力によって軸線方向の相対移動が可能である。
ただし、この第1実施形態では、第1ワイヤー部4の両端にプレート部6,6を設けているので、このプレート部6,6が、第1ワイヤー部4の移動の障害にならないように、両プレート部6,6および上記フック部7,7の幅方向両外側にも、図示しない空間を形成することで、第1ワイヤー部4の相対移動も可能にしている。
なお、第1ワイヤー部4が屈曲部を有する場合には、屈曲部の長手方向外方側にも、空間を設けることが好ましい。
【0036】
また、図2に示す本体2の左側においても、上記図3,4と同様に凹部2a,2b,2cが形成されている。ただし、左側の凹部2a,2b,2c内では、支持される第2ワイヤー部5に対して外側に空間が形成され、本体2の中央に向かう(矢印A’方向)の収縮に応じてワイヤー部5が相対移動可能に構成されている。
【0037】
また、本体2の前後方向後方側の幅方向両端には、第2ワイヤー部5を露出させた露出部10a,10aが形成されている。第1実施形態において、上記露出部10a,10aに該当する箇所は、上記定着部Fからの距離が大きく寸法変化が比較的大きくなる箇所となる。この部分を切り欠くことによって、本体2が収縮したときに上記第2ワイヤー部5に作用する収縮力を低減させることができる。なお、上記露出部10aは車両のシートベルトの設置位置となることがある。その場合には、シートベルトの設置のために、事後的に本体2の一部を切り欠いたり、シートベルト用の孔を形成したりする必要がなくなる。
【0038】
さらに、本体2の後部には、図示しないバックシートに連続させる、わずかに立ち上がった一対の連結部9,9を備えている。各連結部9には、少なくとも3つの凹部9a,9b,9c部が開口方向を逆方向にして形成され、これらの凹部9a,9b,9cにより形成された連続する空間が貫通孔として形成されており、その貫通孔に第2ワイヤー部5が埋設されている。
また、上記第2ワイヤー部5の周囲には、本体2の収縮過程でワイヤー部5が相対移動できる空間S’(図3参照)が形成されている。この連結部9の凹部9a,9b,9cによる上記空間S’は、第2ワイヤー部5が全方向に移動できる大きさと位置を備えている。つまり、上記凹部9a,9b,9cにより形成された貫通孔内の第2ワイヤー部5は、本体2の前後方向及び厚み方向である上下方向、幅方向である左右方向に、相対移動できるようになっている。
【0039】
このように、連結部9において、少なくとも3つの凹部の、隣り合う凹部が開口方向を逆方向にして、上記凹部の底部で上記フレーム部材3を挟み込むようにする貫通孔が形成されているので、上記凹部によってフレーム部材3を支持しつつ、フレーム部材3の周囲には空間を形成することができる。そのため、本体2の収縮過程で、フレーム部材3の相対移動が可能となり、フレーム部材3や本体2の変形を防止できるとともに、連結部9によって本体2とフレーム部材3との一体性が増し、取り扱い性を向上させることができる。
【0040】
上記連結部9において、第2ワイヤー部5が全方向に相対移動可能な空間を形成した理由は、以下のとおりである。
図1,3にも示したように、上記連結部9は本体2の後部側で立ち上がるとともに、その厚みも一定ではない。そのため、連結部9の主な収縮方向は、前後方向である矢印B’方向と本体2の厚み方向とを合成した方向になる。このような、連結部9の収縮方向及び収縮量を正確に予測することは難しい。
連結部9において、本体2の収縮方向を精度よく予測できれば、第2ワイヤー部5が収縮方向と逆方向に相対移動可能にするために必要な空間だけを設け、空間の大きさを最小限にすることができる。ただし、上記連結部9のように形状が複雑な部分について、収縮方向や収縮量の正確な予測は難しいため、上記凹部9a,9b,9cのように、内部の空間を第2ワイヤー部5の全周に大きめに設定し、全方向への相対移動が可能な空間を設けているのである。
【0041】
また、本体2の後方側の幅方向中央部分には、連結部9,9間に、第2ワイヤー部5を露出させた露出部10bが形成されている。この露出部10bも本体2の収縮力を受けないため、フレーム部材3が受ける収縮力の影響を小さくするために寄与している。
さらに、この露出部10bには連結凸部8が形成されている。この連結凸部8の周囲を露出部10bとしているため、上記本体2の収縮の影響を受けにくく、連結凸部8の位置精度を保つことができる。また、露出部10a,10bを形成することによって、シート芯材自体を軽量化することも可能となる。
【0042】
さらに、この第1実施形態では、露出部10a,10a間に、連結部9,9を形成することで、フレーム部材3に対する収縮力の影響を低減させながら、フレーム部材3と本体2との一体性も維持できるようにしており、取り扱い性が向上する。
また、連結部9においても、上記本体2の収縮方向の逆方向に上記フレーム部材3が相対移動できる空間が形成されているので、本体2が収縮したときに、上記空間内で収縮方向の逆方向にフレーム部材3が相対移動可能になり、本体2の収縮によって連結部9やフレーム部材3が変形することを防止できる。
【0043】
また、上記フレーム部材3の相対移動を可能にするための上記空間を形成する凹部2a,2b,2cや9a,9b,9cは、その数は限定されない。ただし、フレーム部材3の軸線方向に沿って、逆方向に開口する凹部が交互に3つ以上連続すれば、上記空間を大きくしても、凹部の底部がフレーム部材3を両側から挟み込むことになり、フレーム部材3を安定して保持することができる。
【0044】
なお、上記本体2において、上記フレーム部材3の周囲に設けた凹部や空間は、本体2の成形直後に、カッターなどの工具で形成することもできるし、凹部や空間を形成可能な成形金型を利用して一体成形するようにしてもよい。
例えば、上記のような空間は、3つの開口部分を有する凹部が上述のように配置された形状となるような雄雌の成形金型を作成し、予めこの成形金型内において貫通孔を形成する位置にフレーム部材3を配置する。その後、成形金型を閉じて、成形金型内に発泡粒子を充填して型内成形することで、発泡粒子成形体からなる凹部の底部が上記フレーム部材3を挟み込んだ本体2が一体成形される。いずれにしても、成形後の本体2が大きく収縮する前に、フレーム部材3と本体2との相対移動を可能にする位置に、上記空間が形成されているようにしている。
【0045】
図5,6に示す第2実施形態は、一人用のシート部材に用いるシート芯材11の一例である。
このシート芯材11は、本体12の形状が上記本体2と異なるが、この本体12も、型内成形した発泡粒子成形体からなる。
また、この本体12にも、本発明のフレーム部材として、発泡粒子成形体からなる本体12の周囲に沿って金属製のフレーム部材13が埋設されている(図6参照)。
上記本体12、フレーム部材13の材質、及びシート芯材11の形成方法は、上記第1実施形態と同じである。
【0046】
この第2実施形態の本体12には、車両に取り付けたとき前方となる側の厚みを厚くし、腰かけた人の臀部に対応する位置に保持凹部12aが形成されている。
また、上記保持凹部12aの中央に厚み方向に貫通する孔12bが形成されている。
さらに、本体12の後部側は、図示しないバックシートに連続させる連結部12cを立ち上がらせている。
【0047】
上記フレーム部材13は、本体12の輪郭に沿って埋設されており、上記フレーム部材13において、本体12の前部側の中央に対応する位置には、車両側の止め部に引っ掛けるためのフック14部が連結され、このフック部14の先端側は本体12の底部から突出している。
また、フレーム部材13において本体12の後部側の中央に対応する位置には、連結凸部15を設け、この連結凸部15を本体12の連結部12cからさらに後方へ突出させている。この連結凸部15は、バックシートと連結するための部材である。
この第2実施形態のフレーム部材13は、図6に破線で示すように、1本のワイヤー材の端部を接合して略四角形としてループ状にした部材であり、上記フック部14を設けた前方部13aは幅方向両端に空間を設けて本体12に埋設されている。
【0048】
この第2実施形態のフレーム部材13における上記前方部13aの直線部分には、本体12の幅方向に空間が形成されており、本体12に埋設されている。
これに対し、両脇に埋設された一対の左右部13b,13bと上記連結部12cに埋設された後方部13cにおいては、これらフレーム部材13に沿って少なくとも外方に、図示しない一定の空間が形成されている。このような空間は、本体12が成形後に収縮する過程で、フレーム部材13の左右部13b,13b及び後方部13cが本体12に対して相対移動できるようにするもので、フレーム部材13に作用する本体12の収縮力を低減させるためのものである。
したがって、この第2実施形態においても、上記空間によってフレーム部材13に作用する収縮力を低減でき、本体12の反り返りやフレーム部材13の変形を防止できる。
【0049】
また、この第2実施形態では、本体12の臀部保持凹部12aの中央に孔12bを形成している。このような孔12bを形成したため、本体12において収縮する発泡粒子成形体の体積を少なくでき、本体12の各部分における収縮量を小さくできる。その結果、フレーム部材13に作用する収縮力を少なくして、本体12の収縮によって変形することをより防止できる。
そして、この孔12bは、座った人の臀部に相当する位置に形成されているが、クッション部材を載せることによって、このシート芯材11を組み込んだシート部材の形状やすわり心地に違和感を与えることはない。
なお、上記孔12bは貫通孔であってもよいし、底部を有する孔であってもよい。
【0050】
そして、上記孔12bの開口面積が大きくなればなるほど、フレーム部材13に対する収縮力の影響は低減されるとともに、シート芯材11は軽量化される。
例えば、本体12の外周で囲まれた面積に対する、上記孔12bの開口面積の比率が30〔%〕〜70〔%〕であることが好ましく、フレーム部材13に対する収縮力の影響を小さくできるとともに軽量化もでき、しかも強度的に優れたシート芯材11となる。
なお、上記孔12bのような孔は、第2実施形態のような一人用シート部材のシート芯材に限らず、上記第1実施形態のような二人あるいはそれ以上用のシート芯材に形成しても、同様の効果が得られる。
【0051】
本発明の車両用シート芯材は、熱可塑性樹脂からなる発泡粒子成形体で構成された本体と、フレーム部材とが一体成形された車両用シート芯材であって、上記車両用シート芯材は、上記本体の周囲に沿って上記フレーム部材が埋設されている埋設部を備えており、上記フレーム部材に隣接して上記本体の収縮方向側に空間が形成されている。
なお、本発明の製造方法により、上記本体の周囲に沿って上記フレーム部材が埋設され、上記本体とフレーム部材との一体成形体を形成する時、または一体成形体を形成した後に、上記フレーム部材に対して上記本体の収縮方向の反対側に上記空間を形成した場合には、収縮後には、上記フレーム部材が相対移動した結果、上記フレーム部材に対して上記本体が収縮した方向に空間が移動したものとなる。
【0052】
以下に、上記フレーム部材3,13の周囲に空間を形成した第1,2実施形態のシート芯材1,11の寸法誤差について行なった確認実験について説明する。
〈発明品サンプル〉
第1実施形態のシート芯材1を発明品サンプルとした。発明品サンプルの具体定構成は、以下の通りである。
【0053】
第1,第2ワイヤー部4,5は、長さ800〔mm〕、直径4.5〔mm〕、引張強さ(JIS G3532 SWM−B)500〔N/mm〕の鉄製ワイヤー材からなり、上記第1ワイヤー部4の長さを800〔mm〕としている(図2参照)。
第1,2ワイヤーに4,5の両端に結合したプレート部6,6は、厚み1.2〔mm〕、縦80〔mm〕、横170〔mm〕の鉄製の板状部材で形成され、このプレート部6,6には上記第1ワイヤー部4を構成したものと同様の鉄製ワイヤー材からなるフック部7を連結している。また、第2ワイヤー部5の中央にも、上記鉄製ワイヤー材からなる連結凸部8を固定している。
上記第1,2ワイヤー部4,5、プレート部6、フック部7、及び連結凸部8でフレーム部材3を構成している。
【0054】
上記フレーム部材3を、長手方向1230〔mm〕、前後方向560〔mm〕、最大厚み200〔mm〕(前側端部90mm)のシート芯材用の成形金型に、上記フック部7がシート芯材1の前方両端側に位置して埋設されるように配置し、上記成形金型内に、見かけ密度0.024〔g/cm〕のポリプロピレン発泡粒子を充填して、スチーム加熱し、発泡粒子同士を融着させて図1に示す形状のシート芯材1を成形した。スチーム加熱工程では、両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間、型内に供給して予備加熱(排気工程)を行なった後、成形スチーム圧である0.3〔MPa〕(G)で両面から本加熱を行なうが、その前に、上記成形スチーム圧より0.08〔MPa〕(G)低い圧力で一方から加熱を行ない、さらに上記成形スチーム圧より0.04〔MPa〕(G)低い圧力で他方から加熱を行なった。なお、Gはゲージ圧を示している。
【0055】
上記スチーム加熱工程の終了後に放圧し、30秒間空冷し、240秒間水冷してから成形型を開いてシート芯材1を取り出した。なお、図2に示されるような空間は、型内成形によって形成した。その後、60〔℃〕で12時間養生したものを発明品サンプルとした。
発明品サンプルの本体2の密度は、0.03〔g/cm〕であり、本体2の前方長手方向中心から左右500〔mm〕の位置(外方側柱部の位置)にフック部7,7が配置されている。なお、フック部7,7と、プレート部6の長手方向外方側にも型内成形により空間を形成した。
この発明品サンプルでは、上記フレーム部材3に沿って隣接して形成される空間の幅は、フレーム部材3から収縮方向の逆方向側に幅約10〔mm〕とした。
【0056】
〈比較サンプル〉
フレーム部材3の周囲に空間を形成しない以外は、上記発明品サンプルと同様にして形成したシート芯材を比較サンプルとした。
【0057】
〈誤差測定〉
上記発明品サンプル及び比較サンプルのそれぞれについて、図7に○印で示す、複数の測定部O1,L1〜L4,R1〜R4の移動量から、目的寸法に対する寸法誤差を測定した。なお、図において、車両の前方を進行方向としたとき、進行方向に向かって右側をR、進行方向に向かって左側をLとした。
測定部は、図2,7に示す本体2の前後方向の前方部分、後方部分及び中央部分に設定した。
【0058】
図7に示すように、本体2の前方部分では、本体2の長手方向の中心の前端部分を測定部O1、この測定部O1から進行方向左側に300〔mm〕離れた前端位置を測定部L1、進行方向左側端部において前端から60〔mm〕離れた位置を測定部L2とした。上記測定部O1から進行方向右側に300〔mm〕離れた前端位置を測定部R1とし、進行方向右側端部において前端から60〔mm〕離れた位置を測定部R2とした。一方、後方部分では本体2の長手方向の中心線Lから左右に300〔mm〕離れた後端位置をそれぞれ測定部L3,R3とした。
【0059】
また、本体2の前後方向の中央部分では、進行方向左端において、前端から200〔mm〕離れた位置を測定部L4とするとともに、進行方向右端において前端から200〔mm〕離れた位置を測定部R4とした。
なお、いずれの測定部も底部から20〔mm〕の位置である。
【0060】
上記各測定部において、目的の寸法との位置のずれ量を測定し寸法誤差とした。この測定結果を表1に示す。
測定値(単位;mm)は、目的の製品寸法よりも外方にずれた場合をプラス、目的の寸法よりも内方にずれた場合をマイナスとしている。
【表1】
【0061】
上記表1に示す結果から、上記第1実施形態に相当する発明品サンプルでは、全ての測定点における誤差の絶対値が2.5〔mm〕以下であり、寸法誤差が小さいことが確認できた。
なお、例えば、本体2の前後方向の中央部分においては、上記フレーム部材3に沿って隣接して、本体2の外方側に形成された空間は、収縮後には、収縮によって相対移動していた。そして、フレーム部材3に対して、本体2が収縮した方向である内側に、空間の幅約10〔mm〕として形成されていた。
【0062】
一方、比較サンプルでは、誤差がサンプル1よりも大きくなっている。
さらに、比較サンプルでは、本体2の後方部分では、目的寸法よりも内方にずれているのに対し、中央部分及び前方部分では成形金型よりも大きく外方にずれている。このように比較サンプルは、目的寸法からのずれ量が大きいことから、本体2の形状が大きく歪んでしまったことが分かる。つまり、本体2に、フレーム部材3の相対移動を可能にする空間を設けない場合には、目的の形状や寸法を達成しにくいということである。
【0063】
また、図5に示される第2実施形態のシート芯材11を、上記発明品サンプルと同様の工程によって成形した。フレーム部材13、本体12には、第1実施形態のフレーム部材3及び本体2に用いたのと同じワイヤー材及び樹脂を用いた。
成形されたシート芯材11の寸法誤差は、空間を形成していないシート芯材よりも小さくなり、完成したシート芯材11には反り返りなどの歪みもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
発泡粒子成形体を用いた様々な形状の車両用シート部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 シート芯材
2 (発泡粒子成形体からなる)本体
2a,2b,2c,9a,9b,9c, 凹部
3 (ループ状の)フレーム部材
4 第1ワイヤー部
5 第2ワイヤー部
6 プレート部
9 連結部
10a,10b 露出部
11 シート芯材
12 (発泡粒子成形体からなる)本体
12b 孔
13 (ループ状の)フレーム部材
13a 前方部
13b 左右部
13c 後方部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7