(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687387
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】拡張色域
(51)【国際特許分類】
B41J 2/525 20060101AFI20200413BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20200413BHJP
B41M 1/14 20060101ALI20200413BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20200413BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20200413BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20200413BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20200413BHJP
B41M 5/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
B41J2/525
B41J2/01 501
B41M1/14
C09D11/02
C09D11/101
C09D11/30
C09D11/40
!B41M5/00 100
!B41M5/00 120
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-521843(P2015-521843)
(86)(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公表番号】特表2015-530938(P2015-530938A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】US2013050285
(87)【国際公開番号】WO2014011995
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年4月14日
【審判番号】不服2019-1799(P2019-1799/J1)
【審判請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】61/671,152
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/774,006
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506165128
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シモニ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バットラー,ゲリー
(72)【発明者】
【氏名】デイトン,ロバート
【合議体】
【審判長】
吉村 尚
【審判官】
藤田 年彦
【審判官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−328140(JP,A)
【文献】
特開2009−227812(JP,A)
【文献】
国際公開第02/100959(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0202378(US,A1)
【文献】
特開2006−160924(JP,A)
【文献】
特開2009−24072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C09D 11/02-11/40
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック原色を有する、4色プロセス印刷インクセットの色域を拡張する方法であって、
前記シアン、マゼンタおよびイエロー原色をシフトすることと、
少なくとも1つの追加のプロセス原色を追加することと
を含み、
前記シアン原色が、234度に近い色相角から、220度を下回る色相角にシフトされ、
前記マゼンタ原色が、0度を数度上回る色相角から、355度を下回る色相角へシフトされ、
前記イエロー原色が、94度の色相角から、95度よりも大きい色相角にシフトされ、
前記シアン、マゼンタおよびイエロー原色を前記シフトすることが:
前記シアン原色を、220度未満のCIELABメトリック色相角で、シアンのさらにグリーン色調にシフトすること、
前記マゼンタ原色を、355度未満のCIELABメトリック色相角で、マゼンタのさらにブルー色調にシフトすること、および
前記イエロー原色を、95度より大きいCIELABメトリック色相角で、イエローのさらにグリーン色調にシフトすることを含む、
4色プロセス印刷インクセットの色域を拡張する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの追加のプロセス原色が、前記シフトするステップにおいて失われた色の取り戻しを追加するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの追加のプロセス原色が、49度と59度との間のCIELABメトリック色相角を有するレディッシュオレンジ色である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加のプロセス原色が、305度と315度との間のCIELABメトリック色相角を有するレディッシュブルー色である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記追加のプロセス原色は2つ追加される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記2つの追加のプロセス原色が、49度と59度との間のCIELABメトリック色相角を有するレディッシュオレンジ色および305度と315度との間のCIELABメトリック色相角を有するレディッシュブルー色を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の方法を使用して生成された印刷インクセットを使用する印刷プロセス。
【請求項8】
前記印刷プロセスが、フレキソ、グラビア、リソグラフィ、スクリーン、およびインクジェットのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の印刷プロセス。
【請求項9】
使用される前記インクが、溶剤系インク、水性インク、酸化乾燥インク、およびエネルギー硬化型インクのうちの1つまたは複数である、請求項7に記載の印刷プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年7月13日に出願された米国仮特許出願第61/671,152号、2013年3月7日に出願された米国仮特許出願第61/774,006号の利益を請求し、その開示が本明細書による参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の拡張色域印刷
IS &T−SPIE Symposium on Electronic Imaging,Science and Technology,SPIE vol.2170,February 1994で発表されたHarold Boll、A Color to Colorant Transformation for a Seven Ink Processは、CMYKRGB機器において所望の色を取得するための原色の選択を説明する。開示する技術は、7つの考えられる着色剤によって形成された色域をさらに小さいグループに細分する。CMYKRGBの7色インクの上位セットからの一連の4着色剤サブセットが個々に特性化され、個々のサブセットに対して比色変換が取得された。色空間において、4着色剤サブセットの各々は、7着色剤色域の隣接して重なり合うサブ色域を表す。
【0003】
色域拡張に対して、特に、インクジェット印刷に関して、現在の人気がある技術は、異なる濃度の原色インク(例えば、濃シアンインクおよび淡シアンインク)を使用すること、またはオレンジおよびグリーンの原色インクを追加すること(Pantone「Hexachrome(登録商標)」システムとして知られる)を含む。
【0004】
CMYKを使用した4色印刷プロセスの色域は、あまり大きくなく、それ故、いくつかの色はCMYKのみを使用して再現できない。従って、5色以上のインクを使用するプロセスが、色域を拡大するために開発されてきた。これらの追加のインクは、発光インクのような、特殊な効果を作成するために使用される「スポットカラー」ではなく、むしろ、高彩度、単色素(mono−pigmented)の従来型インクである。追加のインクは、本質的に、現実感を作り出すための色分解プロセスの一部である。
【0005】
少なくとも6色インクでの印刷例は、オレンジおよびグリーンのインクで補完された拡張CMYKインク(CMYKOG)から成る、米国ニュージャージー州Carlstadt所在のPANTONE,Inc.からのPANTONE’s Hexachrome(登録商標)システムである。シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックにPANTONE Hexachrome(登録商標)オレンジおよびPANTONE Hexachrome(登録商標)グリーンを追加した、拡張セットを提供することにより、印刷された写真画像およびシミュレートされたスポットカラーを再現するための色域が実質的に拡大されている。4色プロセス印刷と比べて、その大きな色域は、コンピュータモニター上で定義および表示できる、広範囲にわたる鮮やかで、かつ繊細な色をより正確に再現することを可能にし、それは、以前は、印刷で複製できなかった。より鮮明な連続階調画像を再現することに加えて、Hexachromeは、PANTONE MATCHING SYSTEM(登録商標)カラーの90%以上、従来の4色プロセス印刷を使用して取得できる数のほぼ2倍、を正確に再現することが可能であり、それは、
(http://th.pantone.com/pages/pantone/Pantone.aspx?pg=19303&ca=24)
に示されているとおりである。
【0006】
別の例は、CMYK、レッド、グリーン、およびブルーインク(CMYKRGB)を使用するKuppersのインクセットとしてとして知られている。H.KUppers:“Die Farbenlehre der Fernseh−,Foto−und Drucktechnik”,Du Mont Verlag.,KOln,1985。
【0007】
米国特許第5,309,246号は、様々な固体インク濃度でハーフトーンを印刷することにより、拡張色域を達成するための方法を説明する。かかる様々な濃度のCMYK原色(primary)は、バランスのとれた中性外観(neutral appearance)を生成するために使用されるのではなく、標準のCMYK刷り重ねに比べて、高い彩度または固有の色相で刷り重ねを生成するために使用され得る。
【0008】
米国特許第5,689,349号は、Pantone PMS(登録商標)カラーがどのように4つの標準プロセスカラー(CMYK)のうちの1つを置換できるかを説明するが、スポットカラーとプロセスカラーの組合せに関しては何も開示していない。
【0009】
米国特許第5,734,800号は、4つの標準プロセスカラー(CMYK)の色域が、Pantone Hexachrome(登録商標)(前述した)として商業的に知られている、2つの追加のプロセスカラー(OG)を追加することにより、どのように拡張できるかを説明する。
【0010】
米国特許第5,751,326号は、RGB空間内でスキャンされた画像を、CMYKRGBインクから成るプロセスインクセットのための印刷組版のセットに変換するための方法を説明する。しかし、拡張色域プロセスセットをスポットカラーにどのように変換するか、またはスポットカラーを拡張色域プロセスセットにどのように組み込むかに関しては言及されていない。プロセス原色(process primary)は特定のPantone(登録商標)PMS(登録商標)色見本を参照することにより定義される。
【0011】
米国特許第5,812,694号は、色再現装置のための着色剤選択アルゴリズムを説明する。そのアルゴリズムは、原色の範囲を調べ、それらの原色の全ての合理的なサブセットを選択して所与のスポットまたはラインカラーに最も安定した適合をもたらし、印刷組版の生成において使用されるステップは、プロセスセットを使用してスポットカラーを再現することに必要とされる。しかし、同様に、スポットカラーを、所与のプロセスカラーセットの代替または拡張としてどのように使用するかに関して説明がない。
【0012】
米国特許第5,870,530号は、追加のプロセスインクセットで刷り重ねることにより、CMYKインク原色の色域を拡張するために、拡張色域7色プロセスセットにおけるプロセス原色の二次セットの使用を説明する。システムは、CとYとの間の色空間のプロセス領域をGプロセス原色の刷り重ねで「埋める」印刷組版を作成するために使用される。それは、スポットカラーをプロセスカラーとどのように適合させるか、またはスポットカラーを拡張色域プロセスインクセットにどのように組み込むかを教示していない。好ましい実施形態はデジタル電子写真印刷装置用であるので、印刷組版は、仮想組版である。
【0013】
米国特許第5,892,891号、米国特許第5,870,530号(前述した)の継続は、6色または7色プロセス印刷のための厳密なアルゴリズムを説明する。追加として、この特許は、従来の色分解技術が印刷組版を作成するために適用され得るように、プロセス原色の数を6色または7色から4インクの複数のサブセットにどのように減らすかを説明する。この発明は、プロセスセット内でのスポットカラーの使用を説明していない。
【0014】
米国特許第6,307,645号は、6色または7色プロセスセットのためのハーフトーンスクリーンの作成方法を説明する、米国特許第5,870,530号の継続である。この発明は、5つ以上の原色インクを、追加のハーフトーンスクリーニング要件を必要とすることなく、4色インクと組み合わせて同時に使用される場合に、CMYKインクセットの1つまたは複数のスクリーニング特性を追加のインクに割り当てることにより、印刷する方法を教示する。同様に、これは、スポットカラーおよびスポットカラーのプロセスセットへの置換を説明していない。説明される方法は、スクリーン特性がデジタルコンピュータコードを介して変更できる、デジタル電子写真印刷で使用されるので、それが仮想印刷組版の使用に基づくという制約に悩まされる。オフセット印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷技術を使用した従来のパッケージ印刷用途では、印刷組版は、全ての印刷領域に対して固定される。従って、例えば、Oインクは、印刷されている画像の1つのエリア内でMスクリーンを使用し、同一の画像の異なるエリア内でCスクリーンを使用し得る。これは、デジタル印刷では達成可能であるが、従来の印刷では簡単に達成することはできない。
【0015】
米国特許第6,530,986号は、従来のCMYKインクセットに比べて改善された耐光堅牢度および拡張された色域を備えた顔料に基づく、インクジェット印刷用の6色インクのセットを開示する。
【0016】
米国特許第6,637,851号は、従来の連続階調画像データの代わりにデジタル画像データを使用した、色分解アルゴリズムの別の形式を説明する。説明される技術は、スーパーピクシレーションまたはディザリングとして知られているプロセスにおいて、対になったプロセスインクセットを使用し、画像の所定のエリア上に色を統計的に分配することに関する。これは、FMスクリーニングとして知られる従来のパッケージングで使用されるプロセスであり、例えば、FMsix(登録商標)などのブランドの付いたプロセスに組み込まれている。
【0017】
米国特許出願第2004/0114162号および欧州特許1364524は、FMsix(登録商標)印刷プロセスを説明し、その印刷プロセスでは、スポットカラーがハイファイプロセスセットに適合され、(i)写真画像データが従来のCMYKハーフトーン処理を使用して印刷され、(ii)ロゴおよびブランドカラーが拡張色域印刷セットおよびデジタル周波数変調ハーフトーン処理を使用して印刷される。この方法は、6 CIELAB色差単位の精度で全ての既知のスポットカラーの85%を再現すると言われている。それは、スポットカラーの拡張色域の二次セットとしての使用を教示していない。
【0018】
米国特許第7,123,380号は、3または4次元色空間(RGBまたはCMYK)内で定義された画像における色の、5以上の次元または着色剤によって定義される色空間への変換を説明する。これは、1つの色空間の色域を第2および第3の色空間の色域内への、または色域上へのマッピングに基づく色分解プロセスである。このアプローチは、従来のCMYK画像を取り、それを5つ以上の原色を使用するデジタル校正刷り装置に移して、校正刷り用により大きな色域を取得する。説明される方法は、スポットカラーの適合またはスポットカラーの拡張色域として使用については議論していない。
【0019】
米国特許第7,164,498号Color Matching for a Printing Process Using More than Four Colorants Using a Four−Colorant Color Management Systemは、RGB画像を取り、それを、ICCプロファイル法の変形を利用する複数の出力装置上にマッピングすることを説明する。それは主として、「仮想CMYK」プロファイルを伴うデジタル色分解のための方法である。この概念は、実際のCMYKOGまたはCMYKRGB拡張色域のいずれよりも大きい、理想的で、達成不可能なCMYK色域を備えた印刷システムを定義する。次いで、非現実的なCMYKを実際の拡張色域プロセス原色セットにマッピングするために、色域圧縮が使用される。スポットカラーまたはプロセスセット内でのスポットカラーの使用に関しては何の説明もない。
【0020】
米国特許第7,199,903号は、一連の刷り重ねられたプロセス原色の色および外観の数値予測のための方法を説明する。この教示は、印刷装置上で所望の色を再現するプロセスインクの範囲の組合せを生成する印刷組版の作成に適用される。その教示は、スポットカラーの適合またはスポットカラーのプロセスセット内での使用を開示または特定していない。
【0021】
米国特許第7,535,596号は、4つ以上の着色剤を有するカラー画像装置に対して着色剤制御値を判断するための方法を説明する。この方法は、3チャネル色空間を通る経路のセットに対してカラーマッピングを定義すること、3チャネル色空間値をカラー画像装置の4つ以上の着色剤に対する着色剤制御値に関連付ける3チャネル色空間に対するカラーマッピング機能を、経路のセットに対して定義されたカラーマッピング間を補間することにより定義すること、3チャネル色空間値を装置に依存しない色値に関連付ける順方向3チャネルカラーモデルを形成すること、装置に依存しない色値を3チャネル色空間値に関連付ける逆3チャネルカラーモデルを判断するために順方向3チャネルカラーモデルを反転すること、および逆装置カラーモデルを判断するために逆3チャネルカラーモデルとカラーマッピング機能を組み合わせることを含む。
【0022】
米国特許第7,898,692号は、最大で5色の画像分離を備えたモアレなしカラーハーフトーン印刷のための方法および装置を開示する。この方法および装置は、モアレがなく、ロゼットを形成する出力を生成するために、複数の非直交ハーフトーンスクリーンを利用する。この方法および装置は、ハーフトーンスクリーンセット出力がモアレのないロゼットを形成するように、第1および第2のカラーハーフトーンスクリーン基本周波数ベクトルを3つのハーフトーンスクリーンの各々に対して定義すること;次いで、第4のカラーハーフトーンスクリーンを定義することであって、その第4のスクリーンの第1の基本ベクトルが基本周波数ベクトルを前記3つのハーフトーンスクリーンのうちの1つと共有し、第4のスクリーンの第2の基本周波数ベクトルが基本周波数ベクトルを前記3つのカラーハーフトーンスクリーンのうちの異なる1つと共有する、第4のカラーハーフトーンスクリーンを定義すること;および第5のカラーハーフトーンスクリーンをさらに定義することであって、その第5のスクリーンの第1の基本ベクトルが基本周波数ベクトルを前記3つのハーフトーンスクリーンのうちの1つと共有し、第5のスクリーンの第2の基本周波数ベクトルが基本周波数ベクトルを前記3つのカラーハーフトーンスクリーンのうちの異なる1つと共有し、かつ、第5のスクリーンの基本周波数ベクトルのいずれも第4のスクリーンの基本周波数ベクトルのいずれとも等しくない、第5のカラーハーフトーンスクリーンをさらに定義すること、を提供する。
【0023】
米国特許第7,990,592号は、画像マーキング装置用にスポットカラーを管理するための方法、システムおよび機器を開示する。具体的には、開示されるのは、利得マトリックスKを複数の利得マトリックスから選択することを含むスポットカラー制御方法であり、利得マトリックスKが、対象とするスポットカラーのレンダリングと関連付けられた性能基準を満足するように選択され、性能基準は、対象とするカラーに対するレンダリングされたスポットカラーと関連付けられた許容可能なスポットカラー誤差を含み、許容可能なアクチュエータエネルギーが、許容可能なスポットカラー誤差およびスポットカラーをレンダリングするために許容可能な総トナー/インク使用を達成するために利用される。
【0024】
同様に、米国特許第5,734,800号は、6色の非標準インクを使用した印刷プロセスに言及し、その印刷プロセス内では、ブラックがPantone Process Blackであり、3〜5色のカラーインクが、所定の割合の蛍光性を有する標準Pantoneインクのセットから選択されている。この特許は、マゼンタ、オレンジおよびグリーン全てが有意水準の蛍光性を示す、好ましい実施形態を説明する。この非標準のインクセットは拡張色域を提供するが、当業者には、かかる着色剤は、照明の品質に対して不安定であり、異なる照明源下で著しく異なる外観を生じることが良く知られている。同様に、これは、グレーのレベルが印刷工場のある部分と別の部分で、または屋内と屋外で変わるので、中性に近いプレス校正を達成することを困難または不可能にする。
【0025】
米国特許第5,571,326号は、RGBカメラまたはスキャナ画像から、7原色(CMYKRGB)を有する色空間への色分解を作成するためのシステムおよび方法を開示する。請求項は、7原色の装置依存色空間による以外、任意の特定のインクセットを指定していない。これは、特定の7色の装置依存インクセットが特定されていないことを除いて、前述した米国特許第5,689,349号の狭い特化である。明細書では、Pantone Warm Red(オレンジ)、Pantone Green PMS 347(標準シアンと標準イエローの混合)およびPantone Blue PMS 293(標準シアンと反射性ブルー着色剤の混合)のような標準CMYKを超えた拡張インクのセットを利用し得る一実施形態が説明される。このシステムは、CMYK原色の標準セットを使用することにより中性に近いバランスを維持すると主張し、次いで、イエローシェードレッド(オレンジ)、グリーンおよびレッドシェードブルー原色を追加することによりそのセットの色域を拡張する。本発明では、5つの原色のみが必要とされ、4つの提案された原色の色域が、この特許における4つの標準原色を使用して達成可能なものを超えて拡張される。
【0026】
米国特許第5,892,891号は、2または3色を標準CMYKインクセットに追加することにより、拡張色域を印刷するためのシステムを説明する。それは、基板のマークにおいて4色を超えるインクが決して関与しないように、拡張インクのどれだけが、CMYKインクのうちの3色と一緒に印刷されるべきかを予測するための数学的プロセスを含む。そのため、基本的に、ここでの発明は、6または7つの色空間次元に分解された画像を取り、それらの7次元をわずか4次元に減らす機能である。同様に、この発明は、第1のセットのインクに関して、それらを標準CMYKとして言及する以外、何の要件も作っていない。その結果、その発明されたアルゴリズムを使用すると、印刷エンジン、インクジェットまたは電子写真エンジンなどのデジタル印刷システムは、決して4つ以上の印刷ステーションを同時に駆動しない。好ましい実施形態は、5つだけの印刷原色が関与するので、印刷ステーションの数を制限する必要がない。
【0027】
最後に、米国特許第6,530,986号は、5つの有彩色インクおよび1つのブラックインクから成る水性インクセットを説明する。インクは、それらの装置依存の色空間に関して分類されない。しかし、インクセットは、インクの色相名によって、およびインクで使用される着色剤によって定義される。そのため、それらは、CI Pigment Blue 15:3、15:4、16、76または79のうちのいずれかまたは混合物を使用したシアンインク;CI Pigment Red 122、202、207、209またはCI Pigment Violet 19を使用したマゼンタインク;CI Pigment Yellow 74、109、110、138または155を使用したイエローインク;CI Pigment Green 7または36のうちの一方または両方を使用したグリーンインク;およびCI Pigment Orange 34、36、43、61、64、または71を使用したオレンジインクを主張する。これらのインクは、インクジェット印刷システムでの使用を意図する。しかし、米国特許第6,530,986号で指定された着色剤の、全部ではないが、ほとんどが外国産であり、出版またはパッケージ印刷用途のいずれに対しても高価すぎる。
【0028】
要約すると、色域を拡張するための従来技術の方法およびシステムは、原色を調整しない。むしろ、それらは、単に追加のプロセス原色を追加する。これは、理論上は役に立つように見え得るが、実際には、多くの場合、追加のプロセス原色用に使用するために、容易に入手可能であって、有用な特性を有する、顔料を見つけることは困難である。さらに、多くのかかるシステムは、複数の追加のプロセス原色も追加し、従って、多すぎる印刷ステーションを占有する。
【0029】
当技術分野で必要とされるのは、従来技術のこれらおよび他の問題を回避する新規のプロセス印刷インクセットである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
標準の4色プロセス印刷の色域を拡張する方法を提示する。本方法は、このようにして、様々な新規のプロセス印刷インクセットをもたらす。例示的な実施形態によれば、第6または第7の原色インクを既存の4色インクセットに追加する必要なく、拡張色域が提供できる。いくつかの実施形態では、拡張色域は、4つの基本原色インクの色を変更して、第5の原色インクを追加するだけで、達成できる。このように、5色のプロセスインクだけを使用して、例えば、スポットカラー印刷のため、またはオーバープリントワニス用途のためにより多くの空いた印刷ステーションを備えた標準的なパッケージプリンタを提供する。別の例示的な実施形態では、第6のプロセスカラーが発明の5色インクセットに追加され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)の標準4色プロセス印刷セットを示し、CMYが、CIELAB色空間内の色相角として示されている。
【
図2】追加のRGB原色を追加することにより、
図1に示す標準CMY原色の色域を拡張する従来のアプローチを示し、図に示すように、RGB追加原色がCMY原色の各対間に位置付けられて、同一のCIELAB色空間内に示されている。
【
図3】プロセス4原色の標準CMYKセットのCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。
【
図4】(i)プロセス4原色の標準セット、および(ii)本発明の例示的な実施形態による新しいプロセス4原色の新規セットの各々のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。
【
図5】完全な色域投影に対して、および60単位投影のL
*に対して、標準CMYK原色インクにオレンジインクを加えたもの(暗い線)、ならびに発明のプロセス4原色に同じオレンジインクを加えたもの(明るい線)のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。
【
図6】新規のプロセス4原色ならびにオレンジ原色を追加した同じセットのCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示し、従って、オレンジ原色の追加がどのように、イエローおよびマゼンタ原色の新しい色相へのシフトを補うかを示す。
【
図7】新規のプロセス4原色、オレンジ原色およびバイオレット原色のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、拡張色域を提供するための新規のプロセスインクセットを含む。いくつかの例示的な実施形態では、拡張色域が、既存の4色インクセットに第6または第7の原色インクを追加する必要なく、提供できる。他の例示的な実施形態では、拡張色域は、4つの基本原色インクの色を変更して、第5の原色インクを追加するだけで、達成できる。本発明の例示的な実施形態のこれらおよび他の特徴を次に説明する。
【0033】
本発明の例示的な実施形態では、インクは好ましくは、安定した、非蛍光性着色剤から作られていて、安定した中性外観を提供すると予期され得、店舗、家庭および屋外ディスプレイにおいてさえ、通常の光レベルへの露出に対して耐光性があるように生成され得る。
【0034】
本発明の例示的な実施形態は、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷技術を使用するものなどの、従来のパッケージ印刷用途で利用できる。
【0035】
多くの商業用プリンタ(特にパッケージプリンタ)は、わずか6つの印刷ステーションしか備えていないプレスを有することに留意されたい。これは、標準プロセス原色が4つのステーションを占有し、2つのステーションが、一般に、カスタムブランドもしくはスポットカラーインクを印刷するため、または画像を透明な保護コーティングで刷り重ねするために、利用できるようにしておくためである。しかし、プリンタが6色プロセスセットを導入すると、スポットカラーまたは特殊コーティングを印刷するために残しておかれるステーションはない。本発明は、拡張色域を獲得するために、5つの印刷ステーションだけを必要とするので、1つの印刷ステーションを空けたままにしておく商業上の利点を有し、それは、その結果、特殊カラーを印刷するため、または透明なオーバープリントワニスをその下の画像保護のために適用するために利用できる。
【0036】
従来の方式で、4色プロセス印刷に対する最も一般的な原色のセットは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックである。これらの色は、国際協定によって文書化および標準化されている。これらの規格に従って、色の位置、特に原色の色相が固定されている。従って、シアンの色相は、CIELAB色相角(水平a
*軸から測定して)234°±5°として与えられ;マゼンタの色相角は356°±5°として与えられ;かつ、イエローの色相角は94°±5°として与えられる。原色のこのセットは、
図3に示すように、再現可能な妥当な色域を構成できるが、色域は、オレンジ(50°)、グリーン(180°)およびバイオレット(295°)が観察される領域内で幾分欠けていることが分かる。従って、これらの位置またはその近くにプロセス原色を追加すると、より大きい、すなわち拡張された色域を生じることが提案されている。
【0037】
しかし、かかる提案は、プロセス原色数を4色から7色に増やし得、それは、標準の6ステーションのセットアップに対して受け入れられず、空いている第6のステーションの考えられる使用を排除する。従って、原色数を7色からもっと少ない数に減らそうと試みることは、グラフィック複製産業の切望である。現在まで、唯一の成功した減少は、7原色から6原色までである。依然として、拡張色域原色の標準セットはない。いくつかの業務用セットは、Pantone(登録商標)Hexachrome(登録商標)6色セット、Halmark(登録商標)BigTop6色セット、Opaltone7色セットおよびM Y Carton’s FM6 7色セット(いわゆるブラック印刷ステーションを無視することによるFM6)を含むことに留意されたい。これらの技術の各々は、追加の2または3原色の近辺に色の範囲を生成するために、良好なレジストレーションを有するプロセス印刷が実行されるように、6または7つの印刷ステーションのいずれかを設定および調整することを必要とする。しかし、これらの事例の各々では、拡張インクセットの目的は、カスタムまたはスポットカラーインクに対する必要性を、標準プロセスカラーを追加の拡張色域プロセスカラーで刷り重ねることから、それらの特殊カラーを構築することにより、それらを再作成することによって置換または除去することであった。一般に、画像の再現は、このように、4色プロセスとして維持され、最初の4色インクは、4色プロセス印刷に対する国際規格に準拠する。
【0038】
本発明の例示的な実施形態では、4色プロセスカラーの色を再定義することにより、インクの数を6から5原色に減らすことが可能である。2色および3色の刷り重ねが、予期された二次色および三次色を生成したように、RGB画像のCMYKプレートへの分解を生じる技術は、国際規格色相角に近いインクに依存するので、歴史的に、かかる再定義は、受け入れられないと考えられていた。例えば、米国特許第5,689,349号は、プリンタが選択的な拡張色域で画像を実行するのを可能にすることを目的に、元のCMYK装置依存の色空間を新しい装置に依存しない色空間にマッピングし、次いで、それを第2の装置に依存しない色空間に変換して、最終的に第2の装置依存の色空間に変換するための方法および機器を開示する。特に、最終的な装置依存の色空間またはインクセットは、グリーンを再現することが全くできないが、ブラウンを再現する機能は拡張または強化され得る。
【0039】
しかし、本発明の例示的な実施形態では、色域は、少なくとも標準CMYK色空間と同じ大きさで、好ましくは、ずっと大規模で提供できる。中性に近い校正として知られている、プレス校正の方法があり、それは、ハーフトーン割合(50:40:40)での3色インク(CMY)の刷り重ねが、ブラックインクの50ハーフトーンと同一であるか、またはそれと同じ中性外観に非常に近いものを有する色となるはずであることをアサートする。かかるインクセットは、例えば、米国特許第5,689,349号によって定義されるように、明らかにこのプレスまたは印刷システム校正を達成することができないであろう。逆に、本発明の例示的な実施形態は、拡張色域を提供することが完全に可能であり、依然として、かかる中性に近い校正要件への適合を提供する。
【0040】
前述のように、従来の方式では、拡張色域プロセス印刷インクセットは、新しい原色インクをプロセスセットに追加することにより獲得される。これらのインクは、例えば、次のうちの2つまたは3つであり得る:(i)オレンジまたはイエローレッド、(ii)グリーン、(iii)レディッシュブルーおよび(iv)バイオレット。従って、従来の完全な拡張色域セットは、ブラック原色に加えて、5または6色の原色を必要とする。本発明の例示的な実施形態では、従来の拡張6色もしくは7色インク色域と均等であるか、または拡張された色域を提供するために、4つの基本原色の色が標準インク位置から離れてシフトでき、そして、1色または2色のインクが追加でき(計5〜6色)、このようにして、少なくとも1つ、可能であれば2つの、プレス上の印刷ステーションを他の使用のために確保する。これは、追加の印刷ステーションまたは完全に新しいプレスを購入する必要なく、プリンタまたは変換器が、既存の印刷室設備の有用性を拡張することを可能にする。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、マゼンタ原色は、0度を数度上回る色相角を有する、色空間内のその位置から、360度をはるかに下回る色相角へシフトでき、このようにして、ハーフトーン刷り重ねによって作成できるバイオレット色のボリュームを増やす。また、シアン原色は、その234度に近い位置から、例えば、220度を下回るなどの、ずっとグリーンの色相角にシフトでき、このようにして、ハーフトーン刷り重ねによって作成できるグリーン色のボリュームを増やす。最後に、イエロー原色は、任意選択で、わずかにグリーンの方にシフトされ得、このようにして、色相角を、94度のイエロー軸からちょっと離れた標準位置から、95度よりも大きい角度に移動する。これは、従来技術で説明されるグリーン原色を追加する必要なく、シアンおよびイエロー原色の刷り重ねによって再現できるグリーンの色域をさらに拡張する。
【0042】
次に説明する、
図1〜
図7は、本発明の例示的な実施形態のこれらおよび他の特徴を図示する。
【0043】
図1〜
図2は、CMYKプロセス印刷の色域を拡張しようと試みる従来技術を図示する。三刺激値から始まって、色を、la,b座標に数学的に変換して、例えば、CIELAB色空間内のポイントとして表示できる。
図1は、かかる2Dスライスを示し、最も普通に使用される原色がシアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(「CMYK」)であるプロセス印刷の方法を図示する。
図1に示すように、CMYは、CIELAB色空間内の色相角として示され得、ブラックは、
図1では、黒い円によって右側に表されている。CMY原色は、「C」、「M」および「Y」として適切にラベル付けされている。前述のように、標準の4色プロセス印刷に対して、色域は制限されており、さらに多くの色を追加することにより色域を拡張できる。問題は、それらをどこに追加するか、である。
【0044】
図2は、上で言及した、従来のOpaltone(商標)アプローチを図示し、それは、追加のRGB原色を、図のように、標準CMY色相の間に間隔を空けて追加することである。この従来のアプローチに関する問題は、論理上は魅力的に見え得るが、実際には、図のように、追加のRGB原色を実施するために容易に入手可能な顔料が多くの場合ないことである。例えば、
図2で追加のRGB原色に対して示されている色相では、グリーンに対して1つの選択肢しか存在せず(CとYとの間に配置するため)、それ、Pigment Green 7は、単位顔料重量あたり低い色の濃さしか有していない。これは、Pigment Green 7は、その4つの外側のベンゼン環の各々上に4つの塩素原子を有するためである。同様に、CとM原色の間に配置するきれいな反射性ブルーシェード顔料に対する明らかな選択肢がない。
【0045】
従って、本発明の例示的な実施形態では、色域を拡張するために追加のプロセス原色を追加するために、既存の原色がまず、色空間内でシフトされる必要があり、次いで、1つまたは2つの適切な追加のプロセス原色が追加でき、そのプロセス原色に対して、顔料が、容易に入手可能であって、標準のシフトされていないCMY色相および追加のプロセス原色に対して使用される様々な顔料と類似した特性などの、許容可能な特性を有する。
【0046】
図3は、プロセス4原色の同じ標準セット、CMYKのCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を同様に示す。シアン、マゼンタおよびイエロー原色の位置が、ブルーに見える、C&M、レッドに見える、M&Y、およびグリーンに見える、Y&C、の2色刷り重ねカラーと共に示されている。
図3は、従って、標準4色プロセス印刷インクの色域の2D投影を示す。
【0047】
図4は、プロセス4原色の標準セット、および新しいプロセス4原色の新規セットの両方のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。投影された色域の内側の小さい色域は、60単位のCIEメトリック明度L
*と同等な、中間明度レベルでの色域である。標準色域は暗い(黒)線で示され、新しい色域は明るい(白)線で示されている。
図4は、標準4色セットと比較した、4色プロセス印刷インクの好ましい実施形態セットの色域の2D投影を示す。図に示すように、イエロー原色のグリーンへのシフト、およびマゼンタ原色のブルーへのシフトは、レッドおよびオレンジ色のより小さい色域という結果になる。従って、本発明のいくつかの例示的な実施形態では、レッド色を取り戻すため、およびオレンジ色を拡張するために、レディッシュオレンジ原色をプロセス4色に追加することが好まれ、イエローイッシュオレンジ色がマゼンタおよびオレンジ原色のハーフトーン刷り重ねまたはオレンジおよびイエロー原色のハーフトーン刷り重ねによって生成される。
【0048】
図5は、完全な色域投影および60単位投影のL
*の各々について、標準CMYK原色インクにオレンジインクを加えたもの(暗い線)、ならびに発明のプロセス4原色に同じオレンジインクを加えたもの(明るい線)のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。
図5は、従って、5色プロセス印刷インクの好ましい例示的な実施形態セットの2D投影された色域を示す。
【0049】
図6は、新規のプロセス4原色およびオレンジ原色を追加した同じセットのCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。これは、前述のように、オレンジ原色の追加がどのように、イエローおよびマゼンタ原色の新しい色相へのシフトを補うかを示す。
【0050】
最後に、
図7は、新規のプロセス4原色、オレンジ原色およびバイオレット原色のCIE CIELAB(a
*,b
*)図上への2次元色域投影を示す。バイオレット原色の追加は、6つの印刷ステーションの要求を費やして、色域をさらに拡張できる。これは、バイオレット原色の色空間内における位置の周囲に色の小さい角を得る。
【0051】
好ましい例示的な実施形態では、本発明のインクセットは、フレキソ印刷、特に、フレキソ包装材料の印刷のために使用されるであろう。しかし、本発明のインクセットは、この適用エリアに限定されず、従って、実質的には、プロセス印刷が実施される任意のエリアで使用できることが理解される。これは、グラビア、リソグラフィ、インクジェット、スクリーンなどを含むが、それに限定されず、溶剤系インク、水性インク、酸化乾燥インク、エネルギー硬化型インクの処理などを包含することも意図する。
【0052】
さらに、本発明のインクセットが適用され得る順序に制限はなく、例示的な個々のインクは、ほぼ任意の順序で適用され得、依然として本発明の範囲内であることが理解される。
【0053】
本発明の様々な例示的実施形態はCIELAB色空間内で表現されてきたが、それらは、色相を指定して定量化するための任意のシステムでも同様に表現できることが理解される。従って、前述し、以下の例におけるように、CIELAB色空間を使用して説明された、原色の色相の新規シフト、および新たに追加されたプロセス原色は、例示であることが理解され、任意の他の既知のカラーシステムにおける、色相および色相のシフトの任意の同等な表現が、本発明の完全に範囲内であることが理解される。本発明は、従って、任意の1つのカラーシステムでの表現に限定されないことが理解される。
【0054】
例
以下は、本発明のいくつかの例示的な実施形態の特定の態様を強調する実例である。それらはその範囲を制限するのではなく、例示にすぎないことを理解されたい。
【0055】
標準インクセットを使用してANSI IT8/7.4テストチャートを印刷すると、プロセス印刷セットのボリュームが判断できる。CMYKインクは、トーンステップの単色の連続として、および2色または3色の刷り重ねトーンとしての両方で印刷され、CIELAB L
*a
*b
*座標が商業印刷特性化機器およびソフトウェアを使用して読み取られる。測定データに基づき、標準CMYKインクセットは、およそ308,702の3次元CIELAB単位のボリュームを包含する。同じチャートおよび分析プロセスを使用すると、本発明による好ましい例示的な実施形態は、315,995の3次元CIELAB単位の色域を生成し、色域において2.3%増である。レディッシュオレンジ原色を追加すると、新しい原色を有する色域は374,061の3次元CIELAB単位まで増加するが、他方、オレンジ原色を標準CMYKインクセットに追加すると、365,275だけの3次元CIELAB単位の色域をもたらす。このように、発明のインクセットは、10,000に近い3次元CIELAB単位の獲得を実現し、それは、2.4%の獲得と同じである。従って、原色の回転に起因した色域における拡大は、それがオレンジ、ブルーまたはバイオレットの第5または第6の追加の原色から生じているかにかかわらず、各続いて起こる原色セットを通して達成される。
【0056】
テスト目的で、印刷は以下のプロトコルを使用して準備された。CMYKインクが、フレキソ中央印象プレス上に印刷されて、水性インクが100m/分で、単色として、ならびに2色および3色刷り重ねとしての両方で、板紙上に印刷し、TC1860−CMYK_Eye−One_iO Gretag Macbethテストチャートのセットを印刷した。これらのチャートは、Xrite i1iO自動チャート読取り分光光度計を使用して読み取られた。出力データが、CoPrA ColorLogicソフトウェアを使用してICCプロファイルに変換された。異なるプロセス印刷セットに対するICCプロファイルが、DocBees Profile Managerソフトウェアを使用して比較された。これは、3次元CIELAB単位として測定された、総色域ボリュームに対する出力、および2次元(異なるL値におけるa
*,b
*プロット)または3次元L
*,a
*,b
*空間のいずれかにおいて、色域形状を比較する機能も与えた。同じタイプのチャートが生成されたが、5色および6色印刷用に適合されて、同じ分析プロセスが5色および6色プロセスセットに対する色域を生成した。
【0057】
前述のように、本発明の例示的な実施形態によるインクセットは、この(または任意の1つの)プロセスに限定されず、実質的には、プロセス印刷が実施される任意の印刷用途で使用できる。
【0058】
テスト目的で、標準4色プロセスセットとして使用されたCMYKインクは、顔料カラーインデックス番号:PB15:3、PR57:1、PY13およびPBk7であった。発明の4色プロセスセットの例は、顔料カラーインデックス番号:PB79、PR122、PY74、PBk7を使用する。新しい5色プロセスセットの例は、顔料カラーインデックス番号:PB79、PR122、PY74、PBk7およびPO34を使用する。新しい6色プロセスセットの例は、顔料カラーインデックス番号:PB79、PR122、PY74、PBk7、PO34およびPV23を使用する。標準4色プロセスセットの例ならびに本発明のインクセットの例は、これらの着色剤に限定されず、指示された色座標を満足する他の着色剤を組み込み得ることに留意されるべきである。着色剤は、顔料または染料であり得る。顔料は、有機または無機の顔料を含み、染料は、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、建染染料、アゾイック染料、食用色素および昇華性染料を含むが、それらに限定されず、天然および合成染料を含む。
【0059】
前述のように、
図6および
図7は、5色印刷が、より大きな色域を印刷することにより、印刷された画像において改善されたか、またはより現実的な外観をどのように生成できるかを示す。これは、多くの場合、基板が標準4色プロセスインクセットの達成可能な色域を減らし得る、紙上へのフレキソ印刷において非常に望ましい。
【0060】
本発明を、その様々な例示的および好ましい実施形態を含め、詳細に説明してきた。しかし、当業者は、本開示を考慮するとき、本発明の範囲および精神に含まれる、本発明の修正および/または改善を行い得ることが理解されるであろう。