(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687402
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】モデルベースおよびマップベーススロットル位置導出値ならびにモニタリングのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/02 20060101AFI20200413BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20200413BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20200413BHJP
F02D 41/22 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
F02D41/02
F02D45/00 366
F02D45/00 364G
F02D45/00 370
F02D45/00 369
F02D45/00 345
F02D9/02 341Z
F02D41/22
F02D9/02 351M
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-13886(P2016-13886)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-145573(P2016-145573A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】14/614,237
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319005659
【氏名又は名称】エーアイ アルパイン ユーエス ビドゥコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ピン・ゼン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エム・ランバーソン
【審査官】
丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−144565(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/132464(WO,A1)
【文献】
特開平11−148374(JP,A)
【文献】
特開平08−144820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00 − 11/10
F02D 41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンシステムであって、
スロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信し、
前記スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信し、
前記第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出し、前記第1の温度信号の表す第1の温度を導出し、
前記スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出し、
前記所望の空気−燃料混合流、前記第1の圧力、および前記第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出し、
マップ(61)を使用して第2のスロットル位置を導出し、
前記第1のスロットル位置を前記第2のスロットル位置と比較し、
前記第1のスロットル位置と前記第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合に前記スロットル弁を制御するために前記第1のスロットル位置を適用するよう構成される
エンジン制御システム
を備える、エンジンシステム。
【請求項2】
前記エンジン制御システムが、エンジン制御ユニット(ECU)を備え、前記ECUが、
前記スロットル弁から上流に配置される第2の圧力センサから送信される第2の圧力信号を受信し、
前記スロットル弁から上流に配置される第2の温度センサから送信される第2の温度信号を受信し、
前記第2の圧力信号の表す第2の圧力を導出し、
前記第2の温度信号の表す第2の温度を導出するよう構成され、
前記モデルが、入力として、前記第1の圧力および前記第2の圧力ならびに前記第1の温度および第2の温度を使用して、前記第1のスロットル位置を導出するよう構成される、
請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記モデルが、前記スロットル弁を有するスロットルシステムの流体力学的モデル(60)を備える、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記マップ(61)が、所望のエンジントルクおよびエンジン速度を、前記第2のスロットル位置にマッピングするルックアップテーブルを備える、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記エンジン制御システムが、所望の燃料量、所望の空気量、および所望の排気再循環量に基づいて、前記所望の空気−燃料混合流を導出するよう構成される、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項6】
前記エンジン制御システムが、所望のエンジントルク、燃料発熱量、燃料変換効率、またはそれらの何らかの組み合わせに基づいて、前記所望の燃料量を導出するよう構成される、請求項5に記載のエンジンシステム。
【請求項7】
前記燃料発熱量が、ユーザによって提供されるか、または燃料のサンプリングを介して自動的に導出される、請求項6に記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記1つまたは複数の較正閾値が、前記第1および前記第2のスロットル位置の間の閾値差、前記第1および前記第2のスロットル位置が逸脱する時間の閾値量、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項9】
前記エンジン制御システムが、前記第1および前記第2のスロットル位置が前記1つまたは複数の較正閾値内に無い場合に前記第1のスロットル位置または前記第2のスロットル位置のより小さい方を適用するよう構成される、請求項8に記載のエンジンシステム。
【請求項10】
前記エンジン制御システムが、空燃比および前記所望の燃料量に基づいて、前記所望の空気量を導出するよう構成され、前記エンジン制御システムが、前記所望の空気量をもたらすようアクチュエータ(116)を作動させるよう構成される、請求項5に記載のエンジンシステム。
【請求項11】
前記エンジン制御システムが、前記第1および前記第2のスロットル位置が前記1つまたは複数の較正閾値内に無い場合、前記第1および前記第2のスロットル位置の間の逸脱を報告し、前記スロットル弁を有するエンジンを停止し、警告もしくは警報を生じさせ、またはそれらの組み合わせを行うよう構成される、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項12】
方法であって、
プロセッサ(44)を介して、エンジンのスロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第1の温度信号の表す第1の温度を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記所望の空気−燃料混合流、前記第1の圧力、および前記第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、マップ(61)を使用して第2のスロットル位置を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第1のスロットル位置を前記第2のスロットル位置と比較するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第1のスロットル位置と前記第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合に前記スロットル弁を制御するために前記第1のスロットル位置を適用するステップと
を備える、方法。
【請求項13】
前記プロセッサ(44)を介して、前記スロットル弁から上流に配置される第2の圧力センサから送信される第2の圧力信号を受信するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記スロットル弁から上流に配置される第2の温度センサから送信される第2の温度信号を受信するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第2の圧力信号の表す第2の圧力を導出するステップと、
前記プロセッサ(44)を介して、前記第2の温度信号の表す第2の温度を導出するステップと
を備え、前記モデルが、モデル入力として、前記第1の圧力および前記第2の圧力ならびに前記第1の温度および前記第2の温度を使用し、前記第1のスロットル位置を導出するよう構成される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モデルが、前記スロットル弁を有するスロットルシステムの流体力学的モデル(60)を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
所望の燃料量、所望の空気量、および所望の排気再循環量に基づいて、前記所望の空気−燃料混合流を導出するステップを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
所望のエンジントルク、燃料発熱量、燃料変換効率、またはそれらの何らかの組み合わせに基づいて、前記所望の燃料量を導出するステップを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および前記第2のスロットル位置が前記1つまたは複数の較正閾値内に無い場合に、前記第1および前記第2のスロットル位置の間の逸脱を報告するステップ、前記スロットル弁を有するエンジンを停止するステップ、警告もしくは警報を生じさせるステップ、またはそれらの組み合わせを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
符号化された命令を備える有形の、非一時的、コンピュータ読込み可能媒体であって、前記命令が、プロセッサ(44)によって実行される場合、
エンジンのスロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信し、
前記スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信し、
前記第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出し、
前記第1の温度信号の表す第1の温度を導出し、
前記スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出し、
前記所望の空気−燃料混合流、前記第1の圧力、および前記第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出し、
マップ(61)を使用して第2のスロットル位置を導出し、
前記第1のスロットル位置を前記第2のスロットル位置と比較し、
前記第1のスロットル位置と前記第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合に前記スロットル弁を制御するために前記第1のスロットル位置を適用するよう構成される、
有形の、非一時的、コンピュータ読込み可能媒体。
【請求項19】
前記1つまたは複数の較正閾値が、前記第1および前記第2のスロットル位置の間の閾値量差、前記第1および前記第2のスロットル位置が異なる時間の閾値量、またはそれらの組み合わせを備え、前記エンジンのテストの間に設定される、請求項18に記載のコンピュータ読込み可能媒体。
【請求項20】
前記モデルが、前記空気−燃料混合流と、前記スロットルの表面、ならびに前記スロットルから上流および下流の圧力および温度との相互作用をシミュレートし、前記第1のスロットル位置を導出する前記スロットルの流体力学的モデル(60)である、請求項18に記載のコンピュータ読込み可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモデルベースおよびマップベーススロットル位置導出値ならびにモニタリングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で開示する発明の主題は、エンジンの制御に関し、より詳しくは、モデルベース技術を適用することによって、所望のエンジン負荷(例えば、トルク)を生成することに関する。
【0003】
本セクションは、以下で説明および/または請求する、本開示のさまざまな態様に関連する可能性のある技術のさまざまな態様を読者に紹介することを意図している。本説明は、本開示のさまざまな態様のより良好な理解を促すために、背景情報を読者に提供するのに有用であると考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から読まれるべきであり、先行技術の承認(admissions of prior art)として読まれるべきではない。
【0004】
エンジン(例えば、レシプロエンジンまたはガスタービンなどの内燃機関)は、燃料と空気の混合物を燃焼し、(例えば、ピストンを動かすため、またはタービンを駆動するため)そのエンジンの構成要素に駆動力を印加する燃焼ガスを生成する。トルク出力などの、所望のエンジン負荷を達成するために、エンジンは、スロットルを使用して、エンジンに入る空気および燃料の量を調節することができる。典型的に、スロットルの位置は、所望のトルクおよびエンジン速度が、所望のエンジン速度を生成する所望のトルクをもたらす既知のスロットル位置に基づくとして算出することができる。しかしながら、そのような方法でスロットル位置を判断することは、さまざまな要因を考慮に入れておらず、スロットル制御応答を遅くする可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
当初に特許請求される発明の主題に対応する実施形態について、以下で概要を説明する。これらの実施形態は、特許請求される発明の主題の範囲を限定するものではないが、これらの実施形態は、発明の主題の可能な形式の簡潔な概要を提供することのみを意図する。実際に、本発明の主題は、以下に記載する実施形態と同様か、または異なる可能性のある、さまざまな形式を包含することができる。
【0006】
一実施形態において、エンジンシステムは、スロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信し、スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信し、第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出し、第1の温度信号の表す第1の温度を導出し、スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出し、所望の空気−燃料混合流、第1の圧力、および第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出し、マップを使用して第2のスロットル位置を導出し、第1のスロットル位置を第2のスロットル位置と比較し、第1のスロットル位置と第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合にスロットル弁を制御するために第1のスロットル位置を適用するよう構成されるエンジン制御システムを含むことができる。
【0007】
一実施形態において、方法は、プロセッサを介して、スロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信するステップと、プロセッサを介して、スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信するステップと、プロセッサを介して、第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出するステップと、プロセッサを介して、第1の温度信号の表す第1の温度を導出するステップと、プロセッサを介して、スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出するステップと、プロセッサを介して、所望の空気−燃料混合流、第1の圧力、および第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出するステップと、プロセッサを介して、マップを使用して第2のスロットル位置を導出するステップと、プロセッサを介して、第1のスロットル位置を第2のスロットル位置と比較するステップと、第1のスロットル位置と第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合にスロットル弁を制御するために第1のスロットル位置を適用するステップとを含むことができる。
【0008】
一実施形態において、有形の、非一時的、コンピュータ読込み可能媒体が、符号化された命令を含むことができる。命令は、プロセッサによって実行される場合、スロットル弁から下流に配置される第1の圧力センサから送信される第1の圧力信号を受信し、スロットル弁から下流に配置される第1の温度センサから送信される第1の温度信号を受信し、第1の圧力信号の表す第1の圧力を導出し、第1の温度信号の表す第1の温度を導出し、スロットル弁を通る所望の空気−燃料混合流を導出し、所望の空気−燃料混合流、第1の圧力、および第1の温度をモデル入力として使用するよう構成されるモデルを使用して第1のスロットル位置を導出し、マップを使用して第2のスロットル位置を導出し、第1のスロットル位置を第2のスロットル位置と比較し、第1のスロットル位置と第2のスロットル位置とが1つまたは複数の較正閾値内にある場合にスロットル弁を制御するために第1のスロットル位置を適用するよう構成することができる。
【0009】
本開示のこれらの、および他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むと、より理解されるであろう。添付図面において、同様の参照符号は、図面を通じて、同様の項目を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による、モデルおよびマップベース制御を介してスロットル位置を制御する制御システムを含むエンジンの概略図である。
【
図2】一実施形態による、スロットルのすぐ上流および下流のスロットルおよび接続部のモデルの概略図である。
【
図3】一実施形態による、モデルベーススロットル位置を導出し、導出されたマップベーススロットル位置でモデルベーススロットル位置導出値をモニタリングするのに適切な処理のフロー図である。
【
図4A】一実施形態による、モデルベースおよびマップベーススロットル位置導出値を使用し、エンジン負荷を制御するようモニタリングするシステムの概略図である。
【
図4B】一実施形態による、モデルベースおよびマップベーススロットル位置導出値を使用し、エンジン負荷を制御するようモニタリングするシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の1つまたは複数の特定の実施形態について以下で説明する。これらの実施形態に関する簡潔な説明を提供するために、実際の実装態様に関する全ての特徴について本明細書に説明するわけではない。いずれのそのような実際の実装態様の開発において、任意のエンジニアリングもしくは設計プロジェクトの場合と同様に、多数の実装形態特有の決定を、ある実装態様から他の実装態様に変更するなどの、システム関連の制約およびビジネス関連の制約との適合などの、開発者の特定の目的を達成するために行わなければならないことを認識すべきである。さらに、そのような開発努力は、複雑であり、時間を消費するものであろうが、本開示の利点を有する当業者とって、設計、製作、および製造の日常的な仕事であろうことを認識すべきである。
【0012】
本開示のさまざまな実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、その要素が1つまたは複数存在することを意味することを意図する。「備える」、「含む」、および「有する」という用語は、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性を含む、および意味することを意図する。
【0013】
本開示は、所望のトルクを生成するためにエンジンにおけるスロットル位置をより正確に制御するためのシステムおよび方法に関する。スロットル位置は、スロットル本体内部のスロットルプレートの角度、またはスロットルスローもしくはスロットル移動の量に関することができることに留意されたい。本技術は、ブースト対吸気マニホールド圧力比、吸気マニホールド圧力、吸気温度、空気燃料比、燃料品質(燃料発熱量)およびエンジン動作効率などの、多数の要因を考慮するスロットルの1つまたは複数のモデルを用いてスロットル位置を導出することができる。いくつかの実施形態において、要因は、1つまたは複数のセンサを介して取得されるか、ユーザから入力されるか、自動的に導出されるか、または他の任意の技術により取得することができる。本明細書に記載する技術は、センサが望まない保守状態にある状況でも、スロットル制御をより確実にもたらすことができる。
【0014】
例えば、2次元(2D)マップベーススロットル位置導出値を使用して、モデルベーススロットル導出値をモニタリングすることができる。2Dマップベーススロットル位置導出値は、2Dマップが同量の(または、任意の)センサデータを使用しない可能性があるため、モデルベーススロットル位置導出値より堅実である可能性があるが、2Dマップは、モデルより正確さに欠けるスロットル位置を導出する可能性がある。したがって、2Dマップベーススロットル位置導出値を使用して、モデルを用いて導出したスロットル位置をクロスチェックすることができる。すなわち、2Dマップベーススロットル位置導出値およびモデルベーススロットル位置導出値は、連続的に、周期的に、または任意の望ましい割合で、比較することができる。導出値が、ある較正閾値内にある場合、モデルベーススロットル導出値を使用して、エンジン負荷(例えば、エンジントルク)を制御することができる。導出値が、較正閾値を超えるか、較正期間より長くなるか、またはそれらの何らかの組み合わせにより逸脱する場合、スロットルモニタ障害を設定することができ、1つまたは複数の障害応答手順を開始して、障害に対処することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の障害応答手順は、マップベーススロットル位置導出値とモデルベーススロットル位置導出値との間でより小さな値を使用すること、障害が較正期間より長く続く場合、および/またはマップベーススロットル位置導出値とモデルベーススロットル位置導出値とが較正閾値量を超えて逸脱する場合、エンジンを停止すること、ワークステーションに警報を送信すること、警告音を鳴らすこと、またはそれらの何らかの組み合わせを含むことができる。
【0015】
開示する技術の利点は、マップベーススロットル導出値のみを使用した場合よりも、スロットルの物理的モデルで含まれるセンサデータを使用することによって所望のトルクに対するスロットル位置のより正確な導出値をもたらすことを含むことができる。また、モデルベーススロットル位置導出値は、より迅速な制御応答、ターボチャージャ開始の間のより高い感度、ならびに動作条件および環境条件が変化した場合のより一様なエンジン性能をもたらすことができる。しかしながら、理解されるように、いくつかの場合において、データをモデルにもたらすセンサのいずれかが応答しない場合、またはいくつかのセンサはドリフトを有するが、依然として動作範囲内にある場合、モデルベーススロットル位置導出値は、望ましくない影響を及ぼす可能性がある。したがって、堅実なマップベーススロットル位置導出値を使用して、モデルベーススロットル位置導出値が適正であることをクロスチェックおよび検証することができる。このようにして、本技術は、モデルベーススロットル位置導出値からのより良好な制御を活用することができ、依然として、マップベーススロットル位置導出値の堅実さを維持することができる。
【0016】
ここで図面および
図1を参照すると、スロットル14の位置を制御する制御システム12を含むエンジン10の一実施形態の概略図が示される。エンジン10は、レシプロエンジンまたはタービンエンジン(例えば、内燃機関)を含むことができる。エンジン10は、火花点火エンジンまたは圧縮点火エンジンを含むことができる。エンジン10は、天然ガスエンジン、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、またはデュアル燃料エンジンを含むことができる。エンジン10は、2ストロークエンジン、3ストロークエンジン、4ストロークエンジン、5ストロークエンジン、または6ストロークエンジンとすることができる。エンジン10はまた、任意の数のシリンダ16(例えば、1から24個のシリンダまたは他の任意の数のシリンダ)ならびに関連するピストンおよびライナを含むことができる。エンジン10は、機関車、自動車、バス、またはボートなどの、乗物で使用することができる。あるいは、エンジン10は、発電機に結合された固定システムで使用してもよい。
【0017】
エンジン10は、吸気マニホールド18および排気マニホールド20を含むことができる。いくつかの実施形態において、エンジン10はまた、給気冷却器22(例えば、熱交換機)および吸気プレナム24を含むことができる。図示した給気冷却器22は、コンプレッサ26への流体接続を含む。エンジン10はまた、排気によって駆動するターボチャージャ28を含むことができる。コンプレッサ26は、給気冷却器22による冷却および吸気プレナム24での加圧のあとで吸気マニホールド18に取り入れるためにオキシダント(例えば、吸気)30を圧縮する。燃料32は、噴射され、マニュアルレギュレータ34を開くことによって、空気30と混合され得る。マニュアルレギュレータ34は、エンジン10に入る燃料32の量および流れを調節することができる。いくつかの実施形態において、エンジン10は、燃料32を空気30に加えるために2つのオプションを含むことができる。第1のオプションは、吸引オプション36を含むことができ、第2のオプションは、吹出オプション38を含むことができる。吸引オプション36を使用すると、燃料32と空気30とを、吸気マニホールド18に送られる前に、圧縮、冷却、および加圧以前に混合することができ、吹出オプション38を使用すると、燃料32を、吸気マニホールド18に入る直前に空気30と混合することができる。密封燃料遮断弁40により、要望通りに閉じられた場合、エンジン10への燃料32の流れを終わらせることができる。
【0018】
空気−燃料混合物は、エンジン10のある程度の速度を維持するために要求されるトルクの量に従って、制御システム12によって設定されたスロットル14の位置に基づいて、スロットル14を通って流れることが可能となる。空気−燃料混合物は、所望の流率でスロットル14を通り、吸気マニホールド18に流れる。吸気マニホールド18は、シリンダ16に空気−燃料混合物を一様に分散する。一旦、シリンダ16において、空気−燃料混合物が燃焼し、高温燃焼ガスが生成され、排気マニホールド20を通って、ターボチャージャ28に向けて下流に流れる。例えば、燃焼ガスが、ターボチャージャ28を通り、ターボチャージャ28を回転させ、例えば、コンプレッサ26に余分な空気を導入することによってエンジン10の効率および動力を増加することができる。コンプレッサ26は、吸気チャージを圧縮して、ブースト圧を生成することができる。ターボチャージャ28を通過すると、高温燃焼ガスは、排気41として排出することができる。また、示すように、エンジンは、ターボチャージャ28から離れて排気を迂回させて、ターボチャージャ28の速度を調節するウエイストゲート42弁を含むことができる。
【0019】
制御システム12は、エンジン10全体にわたる1つまたは複数のセンサ43およびデバイスに接続することができる。例えば、図示した制御システム12は、スロットル14ならびにスロットル14の上流および下流にあるセンサ43に少なくとも結合される。すなわち、センサ43は、スロットル14の入口および出口に(例えば、吸気プレナム24とスロットル14との間、およびスロットル14と吸気マニホールド18との間に)近接配置することができる。センサ43は、圧力センサ、温度センサ、および速度センサなどの、大気およびエンジンセンサを含むことができる。例えば、センサ43は、ノックセンサ、NO
xセンサ、酸素またはラムダセンサ、エンジン吸気温度センサ、エンジン吸気圧力センサ、ジャケット水温センサ、エンジン排気温度センサ、およびエンジン排気圧力センサなどを含むことができる。他のセンサ43はまた、温度および圧力に対する、コンプレッサ26吸気口および排気口センサ43を含むことができる。センサ43の配置によって、信号を制御システム12にもたらして、スロットル14から上流および下流の圧力および温度を示すことが可能になることを理解すべきである。
【0020】
いくつかの実施形態において、制御システム12は、1つまたは複数のプロセッサ44と、開示技術を実行するコンピュータ命令を格納する1つまたは複数の有形非一時的コンピュータ読込み可能媒体(メモリ45)とを含むことができる。また、制御システム12は、吸気制御器46、エンジントルク制御器(TQC)48、ならびにエンジン速度およびトルクリクエスタ(REQ)50などの、特定の機能を実行するさまざまなモジュールを含むことができる。吸気制御器46は、センサ43によって取得された圧力および/または温度データ、ならびにスロットル14を通る空気−燃料混合物の所望の総流量に基づいて、スロットル14の流体力学的モデル60(例えば、物理ベースモデル)を使用して、スロットル位置を導出するための機能を提供することができる。スロットル位置を導出するために使用するモデル60は、REQ50からのエンジン速度およびトルクリクエストを受信する際に導出することができる、所望のトルクなどの、TQC48からの入力を受け取ることができる。さらに、モデルは、燃料発熱量および燃料変換効率などを含む、他の入力を受け取ることができる。さらに、吸気制御器46はまた、上記したような、2次元(2D)マップ61を使用してスロットル位置を導出するための機能を提供することができる。2Dマップ61は、入力として所望のエンジン速度およびトルクを受け取り、関連するスロットル位置を出力することができる。いくつかの実施形態において、2Dマップ61は、所望のトルクおよびエンジン速度をもたらすスロットル位置を出力するルックアップテーブルを含むことができる。
【0021】
以下で詳細に説明するように、吸気制御器46は、マップ61ベーススロットル位置導出値と比較することによって、モデル60を使用して取得したスロットル位置導出値をモニタリングすることができる。モデル60ベーススロットル位置導出値およびマップ61ベーススロットル位置導出値が、閾値(例えば、1%、2%、5%、10%などの、任意の適切なパーセンテージ)内で整合した場合、モデル60ベーススロットル位置導出値は、スロットル14に適用され、所望のトルクを生成することができる。具体的には、スロットルプレートは、スロットル本体における決定角度(位置)に設定され、空気−燃料混合物の所望の流れが、スロットル14を通り、吸気マニホールド18および空気−燃料混合物が燃焼するシリンダ16に向かうことを可能にすることができる。閾値は、製造の品質保証段階の間のスロットル14のテスト中に、および/またはエンジン10の第1の始動の際に、較正され、(例えば、製造者から送信される)外部ソースを介して取得され得る。モデル60ベーススロットル位置導出値とマップ61ベーススロットル位置導出値とが較正閾値内に無く、較正された時間を逸脱し、またはそれらの何らかの組み合わせである場合、制御システム12は、障害値を設定することができ、1つまたは複数の障害応答手順を開始することができる。モデル60ベース制御とマップ61ベース制御とを組み合わせることによって、本明細書で説明する技術は、信頼性および制御の精度を高めることができる。
【0022】
図2は、一実施形態による、スロットル14のすぐ上流および下流のスロットル14(例えば、スロットル弁14)および接続部を有するスロットルシステムのモデル60の概略図を示す。上記したように、モデル60は、スロットル14の物理的(例えば、流体力学的)モデルとすることができる。モデル60は、スロットルプレート64の位置(角度)62を、空気−燃料混合物の所望の流れがスロットル14を通るようにするべきかを判断するのに有用なシミュレーションを実行することができる。モデル60は、空気−燃料混合物と、スロットル本体66およびスロットルプレート64などの、スロットル14の表面との相互作用、ならびにさまざまな上流および下流圧力および温度をシミュレートすることができる。さらに、モデル60は、空燃比、燃料の発熱量、および/またはエンジン動作効率を含むさまざまな要因を考慮することができる。
【0023】
図示したように、モデル60は、スロットル14の上流の圧力(P1)、吸気マニホールド18でのスロットル14の下流の圧力(P2)、スロットル14の上流の温度(T1)、吸気マニホールド18でのスロットル14の下流の温度(T2)、およびスロットル14を通る空気−燃料混合物の総流量(Q)に対する入力を含むことができる。モデル60は、スロットル14を通る所望の総流量Qを達成するよう、入力を用いて、シミュレーションを実行したあと、所望のスロットル位置62(θ)を出力することができる。
【0024】
上流圧力および下流圧力(P1およびP2)ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)は、センサ43から受信したデータから取得することができる。センサ43のデータを使用して、モデル60は上流圧力および下流圧力(P1およびP2)ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)に基づいて、スロットル位置62(θ)を調整することができる。例えば、上流圧力P1が高い場合、スロットル位置62(θ)は、より大きい角度に開くであろう。しかしながら、吸気圧力P1が低い場合、モデル60は、スロットル位置62(θ)がより小さい角度に開くであろうように導出することができる。さらに、モデル60は、エンジン10におけるある部品の劣化を考慮することができる。例えば、燃料アクチュエータが遅くなっている場合、圧力P1および/またはP2は形成されない可能性があり、センサ43は、圧力P1および/またはP2の低下を検出する可能性があり、モデル60は、それに応じて、スロットル位置62(θ)を調整することができる。このようにして、モデル60は、シミュレーションを実行している場合、より正確なスロットル位置62(θ)をもたらすよう変更するように、動作状態および環境条件を考慮することができる。
【0025】
所望の総流量Qは、所望の量の燃料、所望の量の空気、および所望のトルクを生成するのに必要な所望の量の排気再循環(EGR)に関する入力から導出することができる。燃料の量は、燃料発熱量を使用するモデル60およびTQC50によって入力されたトルクによって導出することができる。燃料発熱量は、燃料のエネルギに関係する。トルクおよび燃料発熱量に基づいて、モデル60は、燃料の量を導出することができる。例えば、燃料発熱量が高い場合、燃料がより早く燃焼する可能性があるため、所望のトルクを生成し続けるために、より多くの燃料が必要となる可能性があり、その逆も成り立つ。いくつかの実施形態において、燃料発熱量は、ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)でユーザによって入力してもよく、および/またはモデル60を使用して自動的に導出してもよい。
【0026】
次いで、必要な燃料の量と燃料発熱量とを使用して、必要な空気の量を導出することができる。例えば、規制排出要件を満たすために、空燃比(AFR)は、ある量(例えば、40/60、50/50、60/40など)にすることが必要である。したがって、必要な燃料の量に基づいて、吸気制御器46は、排出要件を満足するよう空燃比を満たすのに必要とされる空気の量を判断することができる。したがって、理解されるであろうように、空燃比は、燃料発熱量に依存する。さらに、EGRの量が、吸気システムに戻る排気の予期される排気および再循環を判断するために、空気および燃料の量に加えて使用される。燃料の量、空気の量、およびEGRの量を使用して、モデル60は、スロットル位置62(θ)を導出する場合に使用するための総流量Qを導出することができる。
【0027】
図3は、一実施形態による、モデルベーススロットル位置62(θ)を導出し、導出されたマップ61ベーススロットル位置でモデルベーススロットル位置62(θ)導出値をモニタリングするのに適切な処理70のフロー図を示す。処理70は、メモリ45に格納されて、プロセッサ44によって実行可能な、コンピュータ命令として実施することができる。処理70は、上流圧力および下流圧力(P1およびP2)、ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)、ならびに空気−燃料混合物の総流量Qに関する入力を受信するステップ(処理ブロック72)を含むことができる。次いで、処理70は、スロットル位置62(θ)を導出し(処理ブロック74)、マップ61を使用して導出されたスロットル位置と比較することによってモデルの導出されたスロットル位置62(θ)をモニタリングする(処理ブロック76)ことができる。次いで、処理70において、モデルの導出されたスロットル位置62(θ)およびマップ61の導出されたスロットル位置が、較正された閾値量、時間量を較正した閾値、またはそれらの何らかの組み合わせを超えるまで変化した場合に、障害が生じた可能性がある(処理ブロック78)。処理70において、モデルベーススロットル位置62(θ)導出値を使用して、マップベーススロットル位置導出値と共に閾値量内にある場合に、スロットル14の位置を制御することができる(処理ブロック80)。すなわち、処理70では、まず、モデルベース制御を使用し、次いで、モデル60ベース制御を介して導出された位置と、マップ61ベースの値とを比較し、信頼性を向上することができる。
【0028】
処理ブロック72を開始すると、モデル60は、上流圧力および下流圧力(P1およびP2)ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)をセンサ43のデータから受信することができ、総流量Qを、さまざまな要因に基づいて、導出することができる。より具体的には、総流量Qは、所望のトルクを生成するのに必要な、燃料の量、空気の量、および/またはEGRの量に基づいて導出することができる。以下により詳細に説明するように、燃料の量は、燃料発熱量と、TQC48から入力される所望のトルクに基づいて判断することができる。燃焼に必要な空気の量は、必要な燃料の量および空燃比(AFR)に基づいて導出することができ、放出要件に基づいて設定することができる。モデル60は、入力を受け取り、スロットル位置62(θ)を導出し、総流量Qがスロットル14を通ることを可能にするようスロットル14に適用することができる(処理ブロック74)。
【0029】
処理ブロック76では、処理70は、2Dマップ61(例えば、ルックアップテーブル)を使用して導出されたスロットル位置と比較することによってモデルベーススロットル位置62(θ)導出値をモニタリングするステップを含むことができる。2Dマップ61は、上記のように、TQC48によって送信されたトルクおよび所望のエンジン速度をもたらすスロットル位置を提供することができる。モデル60ベーススロットル位置導出値とマップベーススロットル位置導出値との間の逸脱が、較正閾値より大きくなる場合、または時間の較正閾値より長く生じる場合、またはその両方の場合、障害値を設定することができる(処理ブロック78)。障害値を設定されることで、1つまたは複数の障害応答手順を開始することができる。
【0030】
障害応答手順は、マップ61ベーススロットル位置導出値とモデル60ベーススロットル位置62(θ)導出値との間のスロットル位置に対するより小さな値を使用するステップ、導出値が較正閾値量より大きい場合および/または導出値が時間の較正量より長く続く場合に停止するステップ、警告をワークステーションに送信するステップ、スロットルが期待したように動作しない状況または位置が存在するかどうかを判断するために製造者に導出値を報告するステップ(遠隔モニタリング)、警告音を鳴らすステップ、またはそれらの何らかの組み合わせを含むことができる。上記したように、閾値は、エンジン10のテストの間に確立することができる。いくつかの実施形態において、閾値は、充分な余裕を伴い較正され、過度の感度のために非常に多くの障害が引き起こされないようにすることができる。
【0031】
モデル60ベーススロットル位置導出値およびマップ61ベーススロットル位置導出値が互いに較正閾値内にある場合、モデル60ベーススロットル位置62(θ)導出値を使用して、エンジン10の負荷(エンジン10のトルク)を制御することができる(処理ブロック80)。このようにして、本技術は、モデル60ベーススロットル位置62(θ)導出値のより正確な制御を活用し、一方、同時に、マップ61ベーススロットル位置導出値の堅実性を活用し、モデル60の結果をクロスチェックし、適度なスロットル位置62(θ)が、スロットル14に導出されたスロットル位置62(θ)を適用する前に導出されていることを確実にする。これにより、モデル60が、センサ43に障害が発生した場合にエンジン10の望まない保守状況に繋がる可能性があるスロットル位置62(θ)を導出し、不正確なデータをモデル60にもたらすことを抑制することができる。
【0032】
図4Aおよび
図4Bは、一実施形態による、モデル60ベーススロットル位置導出値およびマップ61ベーススロットル位置導出値を使用し、エンジン10の負荷を制御するようモニタリングする制御システム90の概略図を示す。システム90は、エンジン速度およびトルクリクエスタ(REQ)50、エンジントルク制御器(TQC)48、および吸気制御器46を含むことができ、マップ61ベーススロットル位置導出値およびモデル60ベーススロットル位置導出値を適用して、エンジンシステム10を制御することができる。REQ50は、エンジン10の速度およびトルク設定点を含むことができる。例えば、所望のエンジン10速度のために、REQ50は、各トルク設定点を提供して、所望のエンジン10速度を生成することができる。さらに、REQ50は、ある種類の負荷およびエンジン10に対するプロファイルをロードおよびディロードすることを含むことができる。システム90は、駆動されたアプリケーション(負荷)について把握する必要が無いことに留意されたい。実際に、負荷は、スワップアウトすることができ、システム90は、どの種類の負荷が駆動されているかを正確に把握することなく切り替えを判断することができる。すなわち、システム90を使用して、導出されたスロットル14の位置は、駆動されている特定のアプリケーションについての知識が無くても、独立して判断することができる。
【0033】
REQ50は、エンジン10の速度およびトルクリクエストをTQC48にもたらすことができる。TQC48は、トルクリクエストを受信し、トルクコマンド95を出力することができ、トルクコマンド95は、モデル60ベーススロットル位置導出値およびマップ61ベーススロットル位置導出値によって使用される。いくつかの実施形態において、TQC48は、トルク損失コンポーネント96を使用して、摩擦などを考慮することができる。トルクリクエストは、速度およびトルク調節コンポーネント98によって調整することができる。さらに、TQC48は、トリミングされたトルクリクエストがトルク率閾値100をパスするかどうかを判断することができる。高速トルクまたはアイドル速度は、燃料燃焼効率推定器104と点火モジュール106とに結合される点火制御器102に送信することができる。低速トルクは、指示されたトルクリミッタ107を通過し、トルクコマンド95として出力することができる。
【0034】
図示したように、モデルベーススロットル位置導出値は、燃料流制御器(FFC)108コンポーネント、空気流制御器(AFC)110コンポーネント、および総流量Q制御器112コンポーネントを含むことができる、さまざまなコンポーネントから取得される導出値などの、モデル60を適用することによって算出される導出値を含み、スロットル位置62(θ)を導出することができる。FFC108は、少なくとも3つの入力を、すなわち、各シリンダに対するTQC48からのトルクコマンド95と、ユーザによって入力される、および/または自動的に導出される、燃料発熱量114と、燃料変換効率推定104とを受け取ることができる。
【0035】
FFC108は、トルクコマンド95、燃料発熱量114、および燃料変換効率推定104を使用して、所望のトルクを生成するために各シリンダにおける燃焼の間に必要とされる可能性のある燃料の量を導出することができる。FFC108は、トルクおよび各シリンダで必要とされる燃料の導出された量を、AFC110、総流量Q制御器112、および燃料アクチュエータ116に出力することができる。燃料アクチュエータ116は、燃料を、要求されたようにエンジン10に噴射することができる。制御システム90は、アクチュエータ116からシリンダへの間の燃料搬送遅延117を考慮することができることに留意されたい。さらに、制御システム90は、ある放出要件に基づいて、エンジン10に噴射される燃料の量および/または流れを減らすことができる空燃比(AFR)燃料トリムコンポーネント118を含むことができる。
【0036】
要求された燃料の量および所望のトルクを使用して、AFC110は、空燃比(AFR)設定点119に基づいて、適切な燃焼のためにシリンダ内で必要とされる空気の量を導出することができる。例えば、AFR設定点119が50%である場合、AFC110は、空気−燃料混合物が燃料を50%、空気を50%含まなければならないと判断することができる。したがって、この例では、要求された量の燃料と同じ量の空気が、AFR設定点119を達成するために使用されなければならない。いくつかの実施形態において、AFR設定点119は、規制排出要件に従って設定してもよい。AFC110は、各シリンダでの空気の量および所望のトルクを、総流量Q制御器112に出力することができる。
【0037】
また、いくつかの実施形態において、総流量Q制御器112は、EGR流量制御器120からの入力を受け取ることができる。EGR流量制御器120は、予期される排気を判断し、吸気システムを通って戻るためのEGRの量を導出することができる。EGR流量制御器120は、EGRリクエストをEGR弁制御器122に送信し、判断されたようにEGRの量を制御することができる。
【0038】
FFC108から要求された燃料の量、AFC110から要求された空気の量、および/またはEGR流量制御器120から要求されたEGRの量を使用して、総流量Q制御器112は、スロットル14を通過するための所望の総流量Qを導出することができる。モデル60は、上流圧力および下流圧力(P1およびP2)ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)と共に、総流量Qを使用し、所望の総流量Qがスロットル14の物理的(流体力学的)モデル60をより最適に横断することを可能にするのはどの位置かを判断するためにシミュレーションを実行することによってスロットル位置62(θ)を導出することができる。
【0039】
図示したように、マップ61ベーススロットル位置導出値を使用して、モデル60ベーススロットル位置導出値をモニタリングすることができる。マップ61は、入力としてTQC48からのトルクコマンド95および所望のエンジン速度124を受信することができ、関連するスロットル位置を導出することができる。上記したように、マップ61は、スロットル位置を導出するためにセンサデータを使用しない可能性があり、関連したトルク、エンジン速度、およびスロットル位置を伴うルックアップテーブルを含むことができる。マップ61は、2つの入力、すなわち、トルク95およびエンジン速度124を受け取るので、2次元(2D)とすることができる。システム90は、連続的に、周期的に、またはその組み合わせで、マップ61ベーススロットル位置導出値を、モデル60ベーススロットル14位置導出値と比較し、導出値が、互いの較正閾値内にあるかどうかを確認することができる。導出値が較正閾値内に無い場合、システム90は、上記のように、1つまたは複数の障害応答手順を実行することができる。
【0040】
本開示の技術的効果は、モデル60ベースアプローチを使用してより正確なスロットル14位置を導出すること、および2Dマップ61を使用して導出されたスロットル位置を使用してモデル60の精度をクロスチェックすることを含む。スロットル14のモデル60は、上流圧力および下流圧力(P1およびP2)ならびに上流温度および下流温度(T1およびT2)、燃料発熱量114、およびエンジン動作効率(燃料変換効率104)などの、さまざまな要因を考慮することができる。圧力(P1およびP2)ならびに温度(T1およびT2)に関するデータは、1つまたは複数のセンサ43を介して取得することができ、したがって、モデル60が、環境状態および動作状態に対して、それらが変化した場合に調整することを可能にする。マップ61ベーススロットル14位置導出値を使用することによって、本技術は、モデル60ベーススロットル14位置導出値をクロスチェックし、ある較正閾値が満たされない場合に障害であると設定することができる。このようにして、本技術は、モデル60ベーススロットル14位置導出値から取得されたより良好な制御を活用し、一方、マップ61ベーススロットル14位置導出値の堅実さを維持する。
【0041】
本明細書は最良の形態を含む本開示の技術を開示するため、および、あらゆるデバイスまたはシステムを製作し、ならびに使用し、およびあらゆる組込方法を実行することを含む任意の当業者が本開示の技術を実施することを可能にするための例を用いる。開示の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言との差が無い構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言との実質的な差が無い等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジン、エンジンシステム
12 制御システム
14 スロットル、スロットル弁
16 シリンダ
18 吸気マニホールド
20 排気マニホールド
22 給気冷却器
24 吸気プレナム
26 コンプレッサ
28 ターボチャージャ
30 空気
32 燃料
34 マニュアルレギュレータ
36 吸引オプション
38 吹出オプション
40 燃料遮断弁
41 排気
42 ウエイストゲート
43 センサ
44 プロセッサ
45 メモリ
46 吸気制御器
48 エンジントルク制御器(TQC)
50 エンジン速度およびトルクリクエスタ(REQ)
60 流体力学的モデル
61 2次元(2D)マップ
62 モデルベーススロットル位置
64 スロットルプレート
66 スロットル本体
70 処理
72 処理ブロック
74 処理ブロック
76 処理ブロック
78 処理ブロック
80 処理ブロック
90 制御システム
95 トルクコマンド
96 トルク損失コンポーネント
98 速度およびトルク調節コンポーネント
100 トルク率閾値
102 点火制御器
104 燃料燃焼効率推定器、燃料変換効率推定、燃料変換効率
106 点火モジュール
107 トルクリミッタ
108 燃料流制御器(FFC)
110 空気流制御器(AFC)
112 総流量Q制御器
114 燃料発熱量
116 燃料アクチュエータ
117 燃料搬送遅延
118 空燃比(AFR)燃料トリムコンポーネント
119 空燃比(AFR)設定点
120 EGR流量制御器
122 EGR弁制御器
124 エンジン速度