特許第6687404号(P6687404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687404ワイヤハーネス巻取装置及びハーネス配索構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687404
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス巻取装置及びハーネス配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/02 20060101AFI20200413BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H02G11/02
   B60R16/02 620C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-18731(P2016-18731)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-139874(P2017-139874A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木暮 直人
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169093(JP,A)
【文献】 特開2013−151335(JP,A)
【文献】 特開2013−153556(JP,A)
【文献】 特開2014−177323(JP,A)
【文献】 特開2014−113019(JP,A)
【文献】 特開平11−166360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースにスライド自在に設けられたスライド構造体とに亘って配索されたワイヤハーネスを引き出し又は巻き取りするワイヤハーネス巻取装置であって、
前記ワイヤハーネスの一端が固定される固定部材と、
前記固定部材と同心上に形成されて、前記スライド構造体をスライド駆動する駆動部材の動きに同期して回転する回転部材、及び、前記回転部材の径方向にスライド自在に前記回転部材に設けられたスライダを備え、前記回転部材の回転によって前記ワイヤハーネスが前記スライダを囲むように巻き取り可能に設けられた巻取部材と、を有し、
前記ワイヤハーネスが、余長を持って前記スライダで折り返されて、その他端が前記巻取部材の外に導出され、
前記巻取部材が、前記ワイヤハーネスの折り返し部を押すように回転することで、前記ワイヤハーネスにおける、前記巻取部材の外に導出された部分が前記巻取部材に巻き取られるとともに、前記固定部材から引き出された部分から前記スライダに折り返されるまでの部分が前記固定部材に巻き付いた状態となるように構成されていることを特徴とするワイヤハーネス巻取装置。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスが複数設けられ、
前記スライダが、前記回転部材の回転方向に沿って複数設けられ、
前記複数のワイヤハーネスが、余長を持って前記複数のスライダに別々に折り返され、
その他端が前記巻取部材の外に導出されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス巻取装置。
【請求項3】
前記スライダが、前記径方向内側に付勢されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤハーネス巻取装置。
【請求項4】
前記スライダが、板状部材と、該板状部材と交差する板状の基部と、を備え、
前記回転部材が、前記基部の形状に対応して形成された前記径方向に延びる案内溝を備え、
前記基部が前記案内溝内にスライド自在に収容されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス巻取装置。
【請求項5】
前記スライダが、前記回転方向に沿うように湾曲して形成された板状部材と、該板状部材の前記回転方向の一端側の端部から、前記固定部材に向かって延びる案内部材と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス巻取装置。
【請求項6】
前記スライド構造体がスライドドアであり、
前記ベースが車両に設けられたステップ部材であり、
請求項1から請求項5のワイヤハーネス巻取装置と、前記駆動部材と、が、前記ステップ部材に一体に取り付けられたことを特徴とするハーネス配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの巻取装置及びハーネス配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンボックスカーやワゴン車等に用いられているスライドドア内には、パワーウィンドモータ等の電装部品が組み込まれている。これらの電装部品に給電を行うべく、車両ボディからスライドドアにワイヤハーネス(配線体)を配索するとともに、このワイヤハーネスがスライドドアの開閉に追従できるようにする必要がある。
【0003】
図9(a)は、従来のスライドドア用給電装置の一形態を示したものであり、(b)は、このスライドドア用給電装置に設けられた余長巻取り部10の分解図である(特許文献1参照)。このスライドドア用給電装置は、車両ボディに余長巻取り部10を設けて、スライドドア50(ブラケット51)の開閉に伴う配線体30の余長を、配線体30を巻取ることによって吸収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−030716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスライドドア用給電装置において余長巻取り部10は、配線体30の余長部分を巻き取って収納するローター13と、ローター13に回転力を与えて、配線体30に引っ張り力を加えるねじりバネ14と、ねじりバネ14を収納するためのロアケース15と、を含む複数の構成を有し、余長巻取り部としての部品点数は多いものとなっている。さらに、部品点数の多さに伴って、スライドドア用給電装置全体のコストアップ、重量化及び大型化という問題があった。
【0006】
さらに、上記特許文献1に記載の余長巻取り部10においては、配線体30を複数とした場合には、巻き取り及び引き出しに際して、配線体30同士が擦れて、ワイヤハーネスの劣化を早める可能性がある。
【0007】
本発明は、小型化、軽量化及びコストの削減を可能としたワイヤハーネス巻取装置及びハーネス配索構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイヤハーネス巻取装置は、ベースと、前記ベースにスライド自在に設けられたスライド構造体とに亘って配索されたワイヤハーネスを引き出し又は巻き取りするワイヤハーネス巻取装置であって、前記ワイヤハーネスの一端が固定される固定部材と、前記固定部材と同心上に形成されて、前記スライド構造体をスライド駆動する駆動部材の動きに同期して回転する回転部材、及び、前記回転部材の径方向にスライド自在に前記回転部材に設けられたスライダを備え、前記回転部材の回転によって前記ワイヤハーネスが前記スライダを囲むように巻き取り可能に設けられた巻取部材と、を有し、前記ワイヤハーネスが、余長を持って前記スライダで折り返されて、その他端が前記巻取部材の外に導出され、前記巻取部材が、前記ワイヤハーネスの折り返し部を押すように回転することで、前記ワイヤハーネスにおける、前記巻取部材の外に導出された部分が前記巻取部材に巻き取られるとともに、前記固定部材から引き出された部分から前記スライダに折り返されるまでの部分が前記固定部材に巻き付いた状態となるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の態様としては、前記ワイヤハーネスが複数設けられ、前記スライダが、前記回転部材の回転方向に沿って複数設けられ、前記複数のワイヤハーネスが、余長を持って前記複数のスライダに別々に折り返され、その他端が前記巻取部材の外に導出されることが挙げられる。
【0010】
本発明においては、前記スライダが、前記径方向内側に付勢されていることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記スライダが、板状部材と、該板状部材と交差する板状の基部と、を備え、前記回転部材が、前記基部の形状に対応して形成された前記径方向に延びる案内溝を備え、前記基部が前記案内溝内にスライド自在に収容されていることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記スライダが、前記回転方向に沿うように湾曲して形成された板状部材と、該板状部材の前記回転方向の一端側の端部から、前記固定部材に向かって延びる案内部材と、を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明のハーネス配索構造は、前記スライド構造体がスライドドアであり、前記ベースが車両に設けられたステップ部材であり、上記のワイヤハーネス巻取装置と、前記駆動部材と、が、前記ステップ部材に一体に取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイヤハーネス巻取装置は、ワイヤハーネスの一端が固定される固定部材と、固定部材と同心上に形成されて、スライド構造体をスライド駆動する駆動部材の動きに同期して回転する回転部材、及び、回転部材の径方向にスライド自在に回転部材に設けられたスライダを備え、回転部材の回転によってワイヤハーネスがスライダを囲むように巻き取り可能に設けられた巻取部材と、を有し、ワイヤハーネスが、余長を持ってスライダで折り返されて、その他端が巻取部材の外に導出され、巻取部材が、ワイヤハーネスの折り返し部を押すように回転することで、ワイヤハーネスにおける、巻取部材の外に導出された部分が巻取部材に巻き取られるとともに、固定部材から引き出された部分からスライダに折り返されるまでの部分が固定部材に巻き付いた状態となるように構成されている。
【0015】
このような構成により、ワイヤハーネスの固定部材への巻き付き乃至開放(弛緩)、及び、ワイヤハーネスの巻取部材への巻き取り乃至引き出しに伴ってスライダが回転部材の径方向内外にスライドするため、固定部材とスライダとの間のスペース、及び、ワイヤハーネスの巻き取りスペースを、ワイヤハーネスの固定部材への巻き付きの状態、及び、ワイヤハーネスの巻取部材への巻き取りの状態に応じて変化させることができる。そのため、スペース効率に優れ小型化を実現することができる。また、巻取部材を回転させるための別の部材を設ける必要がなく、部品点数を低減することができるため、コストの削減及び軽量化を図ることができる。
【0016】
本発明のハーネス配索構造は、上記のワイヤハーネス巻取装置と、前記駆動部材と、が、車両に設けられたステップ部材に一体に取り付けられているため、スペース効率に優れ小型化を実現することができる。また、巻取部材を回転させるための別の部材を設ける必要がなく、部品点数を低減することができるため、コストの削減及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置を備えたハーネス配索構造を示した斜視図である。
図2図1に示すワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを全閉にした時の上面図である。
図3図1に示すワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを半開にした時の上面図である。
図4図1に示すワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを全開にした時の上面図である。
図5】変形例に係るワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを全閉にした時の上面図である。
図6図5に示すワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを半開にした時の上面図である。
図7図5に示すワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを全開にした時の上面図である。
図8】他の実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置のスライドドアを全閉にした時の上面図である。
図9】従来のワイヤハーネス巻取装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5を備えたハーネス配索構造1を示した斜視図である。図2は、図1に示すワイヤハーネス巻取装置5においてスライドドアを全閉にした時の上面図である。
【0019】
図1に示すように、ハーネス配索構造1は、車両(ベース)2(一部のみを示している。)のボディに設けられたステップ部材(ベース)20と、車両2にスライド自在に設けられたスライドドア(スライド構造体。ドアアーム6のみ図示し、あとは省略。)を開閉駆動する駆動ベルト3と、車両2とスライドドアとに亘って設けられた複数のワイヤハーネス4(本実施形態においては6本)と、ワイヤハーネス4を巻き取るワイヤハーネス巻取装置5と、を備えている。ステップ部材20は、車両2の昇降口のステップ部分を構成する水平に設けられた板状部材であり、車両2の幅方向両側に設けられている。また、ステップ部材20には、ワイヤハーネス巻取装置5と、後述する回転駆動装置22(駆動部材)と、が、一体に取り付けられている。
【0020】
なお、図1においてステップ部材20の長さ方向が車両2の前後方向になっており、図の右側が前方になっている。図1は、スライドドアが、車両2の前方側と後方側の中間に位置して、半開の状態を示し、図2は、スライドドアが、車両2の前方側にスライドして、全閉した状態を示している。なお、図1の車両2及びステップ部材20並びに図2の車両2において、ワイヤハーネス4が配索された側を上面、その反対側(後述する回転駆動装置22が設けられた側)を下面という。ただし、実際の車両においては天地逆に配される。
【0021】
ハーネス配索構造1は、ステップ部材20の上面に配置され、固定されている。スライドドアは、ドアアーム6を介して車両2の前後方向にスライド可能に車両2に設けられている。スライドドアは、例えば、ドアロックユニット、スピーカ、スイッチユニット、パワーウィンドモータなどの各種の電装部品を備えている。スライドドアにおける電装部品には、車両2からワイヤハーネス4を介して、電力の供給、あるいは、電気信号の送受信がされている。
【0022】
駆動ベルト3は、図1に示すように、ステップ部材20の前方側の上面に設けられたプーリ21と、回転駆動装置(駆動部材)22のスプロケット(図示せず)との間に無端状に張り渡されている。また、駆動ベルト3は、車両2(ステップ部材20)の略前後方向に延びて張り渡されている。回転駆動装置22は、ステップ部材20の下面にステップ20と一体に取り付けられて設けられ、ステップ部材20を挟んでワイヤハーネス巻取装置5の下方に位置している。スプロケットは、ステップ部材20の上面とワイヤハーネス巻取装置5との間に設けられている。制御部(図示せず)により、回転駆動装置22が駆動すると、スプロケットが回転し、その回転力が駆動ベルト3に伝達され、駆動ベルト3が回転駆動する。
【0023】
駆動ベルト3は、開閉スイッチ(図示せず)からスライドドアを開閉作動する指示信号が制御部(図示せず)に入力されると、制御部が回転駆動装置22を駆動することにより、回転駆動される。駆動ベルト3の回転駆動力により、ドアアーム6を介してスライドドアをスライド(スライド駆動)させて開閉する。駆動ベルト3が、時計回りに回転すると、駆動ベルト3におけるスライドドア側は後方に移動する。また、駆動ベルト3が、反時計回りに回転すると、駆動ベルト3におけるスライドドア側は前方に移動する。
【0024】
ワイヤハーネス4は、可撓性を有しており、車両2とスライドドア(ドアアーム6)とに亘って配されている。ワイヤハーネス4は、車両2のバッテリ(図示せず)や他の電気部品、あるいは、制御装置等に電気的に接続され、車両2からスライドドアに備えられた電装部品に電力を供給し、あるいは、電気信号を送受信する。ワイヤハーネス4は、複数の電線(図示せず)と、電線の端部(ワイヤハーネス4の端部)に設けられた複数のコネクタ(図示せず)とを備えている。ワイヤハーネス4は、ワイヤハーネス4の一端に設けられたコネクタが、車両2のバッテリ等に接続されたコネクタと嵌合し、他端に設けられたコネクタが、スライドドアの各種電装部品に接続されたコネクタ等と嵌合する。
【0025】
ワイヤハーネス巻取装置5は、ハーネス配索構造1において配索される複数のワイヤハーネス4を、スライドドアの開閉動作に伴って巻き取ったり、また、引き出したりする装置であり、ステップ部材20の上面であってスプロケットの上方に設けられている。ワイヤハーネス巻取装置5は、複数のワイヤハーネス4の一端が固定された固定部材7と、複数のワイヤハーネス4を巻取可能に設けられた巻取部材8と、固定部材7及び巻取部材8を備えるケース9と、を備えている。固定部材7は、ケース9から略垂直方向上側に延びた円柱状の棒状の部材であり、その周面から円の直径方向内側に切り欠かれたスリット71が形成され、複数のワイヤハーネス4の一端が当該スリット71に挿通され固定されている(図2)。なお、スリット71に挿通された複数のワイヤハーネス4は、さらに延びて、車両2のバッテリ(図示せず)等に電気的に接続されている。
【0026】
巻取部材8は、後述する回転部材81が駆動ベルト3の動きに同期して回転し、複数のワイヤハーネス4の巻き取りや、引き出しを行う。具体的には、巻取部材8(回転部材81)は、回転駆動装置22の回転力を直接的に又は間接的に受けて、回転駆動装置22と同期して回転する。
【0027】
巻取部材8は、固定部材7と同心上に形成された略円盤状の回転部材81と、回転部材81の径方向にスライド自在に回転部材81に設けられた複数のスライダ82(本実施形態においては6個)と、を備えて形成され、その複数のスライダ82を内側に配して囲むように複数のワイヤハーネス4を巻取可能に形成されている。回転部材81の上面には、固定部材7を中心として放射状に、つまり、回転部材81の径方向に延びる複数の案内溝83(本実施形態においては6本)が、周方向に一定の間隔をあけて形成されている(図2)。案内溝83は、スライド方向に直交する断面形状が略長方形であり、上方が開口して形成されている。また、案内溝83は、径方向の端部が開口して形成されている。案内溝83は、スライダ82の後述する基部82bの形状に対応して形成されており、基部82bをスライド自在に収容している。
【0028】
スライダ82は、略四角形の板状部材82aと、略四角形の板状の基部82bと、を備え、板状部材82aと基部82bとが交差して略T字状に形成されている。基部82bが案内溝83内に収容されると、板状部材82aはその面が径方向と直交するように回転部材81から直立して配される。スライダ82は、基部82bが案内溝83を案内されることにより、固定部材7を中心として回転部材81上に周方向に一定の間隔をあけて複数設けられるとともに、径方向へスライド可能となっている。
【0029】
複数のワイヤハーネス4は、余長をもって複数のスライダ82に別々に折り返され(当該折り返された部分を、以後、「折り返し部41」と称する。)て、既述の通り、その一端が固定部材7に固定されるとともに、その他端が巻取部材8の外に導出されている。なお、巻取部材8の内とは、回転部材81が回転した際に、スライダ82の軌道により描かれる円の内側を言う。また、巻取部材8の外とは、回転部材81が回転した際に、スライダ82の軌道により描かれる円の外側を言う。
【0030】
ケース9は、板状部材91を備えており、ケース9の外形は、ステップ部材20の形状に沿うように形成され、当該ステップ部材20内に収まるように形成されている。
【0031】
板状部材91は、略円形状に形成された円形部94と、円形部94から先細りに突出した略三角形状の突出部95と、を備えており、ステップ部材20と略平行に配されている。円形部94から突出部95の先端に向かう辺のうち一辺の端部には、板状部材91から上側に立設する側壁96が設けられている。ケース9は、回転駆動装置22やスプロケットの略上方に円形部94が配されるように設けられ、図1及び図2において、側壁96が車両2の後方側に向かうに従ってスライドドア側に近づくように配されている。突出部95の先端部近傍には、突出部95の上側に立設した略円柱状の突起部99が設けられている。
【0032】
板状部材91における円形部94の上面には、巻取部材8を回転可能に収容するための収容部92が形成されている。収容部92は、円形部94を底部とし、円形部94の端部から円弧状に立設する収容壁93により形成された、有底の略円筒形状の空間である。収容された巻取部材8のスライダ82と収容壁93との間に形成された隙間Sには、各スライダ82に折り返されて巻取部材8の外に導出された複数のワイヤハーネス4が、複数のスライダ82を内側に配して囲むように巻取部材8に巻き取られる。なお、図2における収容壁93の反時計回り側の端部と側壁96とは連なって一連に形成されており、側壁96は、この収容壁93が描く円の接線の延長を成す。収容壁93の時計回り側の端部と側壁96との間には隙間が形成され、当該隙間は導出部98を構成している。巻取部材8に巻き取られた複数のワイヤハーネス4は、当該導出部98を経由して突出部95の先端に向かい、突起部99により駆動ベルト3と平行になって沿うように折り返されてワイヤハーネス巻取装置5の外に導出される。
【0033】
次に、ハーネス配索構造1及びワイヤハーネス巻取装置5における複数のワイヤハーネス4の配索について説明する。なお、ワイヤハーネス4としては、帯状のワイヤハーネスを好適に用いることができ、本件においても帯状のワイヤハーネスを例として説明する。なお、帯状のワイヤハーネス4は例えばフレキシブルフラットケーブルなどである。
【0034】
複数のワイヤハーネス4は重ねて束ねられて、その一端が固定部材7のスリット71に固定されている。複数のワイヤハーネス4は、スリット71から、固定部材7の軸方向に直交する方向に引き出され、重ねられた状態で固定部材7の周面に時計回りに複数回巻き付けられることにより余長を持って、複数のスライダ82に別々に折り返されて、巻取部材8の外(隙間S)に導出される(図2)。ここで、「余長」とは、ゆとりを持たせる長さのことであり、複数のワイヤハーネス4において、スリット71から引き出された部分からスライダ82に折り返されるまでの部分を余長部分とする。
【0035】
反時計回りに折り返された各ワイヤハーネス4は、巻取部材8の複数のスライダ82を内側に配して囲むように巻き付けられて、導出部98を介して突出部95の先端に導かれ、突起部99により折り返されてワイヤハーネス巻取装置5の外に導出される。ワイヤハーネス巻取装置5の外に導出された複数のワイヤハーネス4は、駆動ベルト3と略平行に延びて配される。複数のワイヤハーネス4の他端は、スライドドア(ドアアーム6)に固定され、スライドドアに備えられた電装部品に電気的に接続されて、電力の供給、あるいは、信号を送受信する。
【0036】
次に、上述したワイヤハーネス巻取装置5の動作の一例について、図2から図4を用いて、以下に説明する。まず、スライドドアが全閉の状態においては、複数のワイヤハーネス4は、巻取部材8から引き出されている。この時、余長部分は、固定部材7への巻き付きが最も弱くなり、固定部材7と巻取部材8との間で最も弛緩した状態となっている(図2)。つまり、複数のワイヤハーネス4の余長部分の巻き付きが弱く、弛緩の度合いが強くなっている。
【0037】
スライドドアが全閉の状態において、開閉スイッチからスライドドアを開ける指示信号が制御部に入力されると、制御部は、回転駆動装置22を駆動し、駆動ベルト3を時計回り方向に回転駆動させ、スライドドア(ドアアーム6)は後方へ移動を開始する。複数のワイヤハーネス4は、スライドドアに固定されているため、スライドドアの後方への移動に伴って後方側へ移動する。この時、巻取部材8は、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して時計回りに回転、つまり、折り返し部41が先頭となるように回転(折り返し部41を押すように回転)し、導出部98を介してワイヤハーネス巻取装置5の内に引き込んで、複数のスライダ82を囲むように巻取部材8の外に導出された複数のワイヤハーネス4を巻き取っていく。
【0038】
図3は、スライドドアが半開した時のワイヤハーネス巻取装置5の上面図であり、図4は、スライドドアが全開した時のワイヤハーネス巻取装置5の上面図である。なお、図3においては、駆動ベルト3及びドアアーム6の記載は省略した。巻取部材8が、折り返し部41が先頭となるように回転(時計回りの回転)することにより、弛緩した状態で時計回りに巻かれていた余長部分は、固定部材7への巻き付きを強くしていく(図3)。この巻き付きに伴い、複数のスライダ82には径方向内側(中心)へ引き寄せられる力が掛かり、複数のスライダ82は径方向内側(中心)に引き寄せられていく。複数のスライダ82は、径方向内側に少しずつスライドし、巻取部材8はその内径を縮小しながら、複数のワイヤハーネス4を、その周りに巻き取っていく。つまり、巻取部材8は、複数のワイヤハーネス4の巻き取りに従って巻取部材8の内側の径を小さくし、それに伴い隙間Sの幅が広がるように、複数のワイヤハーネス4を巻き取っていく(図3)。
【0039】
スライドドアが全開の状態となり、巻取部材8に複数のワイヤハーネス4が巻き取られると、余長部分は、固定部材7に巻き付いた状態となっている(図4)。この時、複数のスライダ82は、固定部材7に巻き付いた状態の余長部分に接するように周りを囲んで配され、巻取部材8の内側の径は最小となっており、巻き取られた複数のワイヤハーネス4が配される隙間Sの幅は最大となっている。
【0040】
また、スライドドアが全開の状態において、開閉スイッチからスライドドアを閉める指示信号が制御部に入力されると、巻取部材8は、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して反時計回りに回転、つまり、折り返し部41が最後尾となるように回転し、複数のスライダ82を囲むように巻取部材8の周りに巻き取られていた複数のワイヤハーネス4が引き出され、導出部98を介してワイヤハーネス巻取装置5の外に引き出されていく。
【0041】
巻取部材8の折り返し部41が最後尾となるように回転(反時計回りの回転)することにより、余長部分は固定部材7への巻き付きが弱くなり、固定部材7と巻取部材8との間で弛緩した状態となっていく(図3)。これに伴い、弛緩した余長部分が巻取部材8の内側で広がっていき、複数のスライダ82を径方向外側に押圧し、複数のスライダ82は径方向外側に押し広げられていく。巻取部材8は、巻き取られていた複数のワイヤハーネス4を引き出しながら、複数のスライダ82の径方向外側へのスライドにより、巻取部材8の内径を拡大していく。つまり、複数のワイヤハーネス4の引き出しに従って、巻取部材8の内側の径が大きくなり、それに伴い隙間Sの幅が狭くなるように、複数のワイヤハーネス4を引き出していく(図3)。そして、図2に示す全閉の状態に戻る(図2)。
【0042】
本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、巻取部材8が、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して折り返し部41が先頭となるように回転することで、複数のスライダ82を囲むように巻取部材8の外に導出された複数のワイヤハーネス4が巻取部材8に巻き取られるとともに、余長部分が固定部材7に巻き付いた状態となる。このような構成により、複数のワイヤハーネス4の巻き取りに際しては、余長部分が配されていたスペースを余長部分の巻き付きに応じて小さくし、その小さくしたスペースを、巻き取った複数のワイヤハーネス4が配されるスペース(隙間S)に充てることができる。従って、ワイヤハーネス巻取装置5内のスペースを有効に利用することができるため、スペース効率に優れ小型化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、巻取部材8が、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して折り返し部41が最後尾となるように回転することで、複数のスライダ82を囲むように巻取部材8に巻き取られていた複数のワイヤハーネス4が巻取部材8から引き出されるとともに、余長部分が固定部材7と巻取部材8との間で弛緩した状態となる。このような構成により、複数のワイヤハーネス4の引き出しに際しては、巻き取った複数のワイヤハーネス4が配されるスペース(隙間S)を、複数のワイヤハーネス4の引き出し量に応じて小さくし、その小さくしたスペースを、余長部分が配されるスペースに充てることができる。従って、ワイヤハーネス巻取装置5内のスペースを有効に利用することができるため、スペース効率に優れ小型化を実現することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、スライドドア(ドアアーム6)を駆動する回転駆動装置22の動きに同期して、巻取部材8が回転し、複数のワイヤハーネス4を引き出し又は巻き取りすることができる。そのため、スライドドアの開閉に伴って適切なタイミングで、複数のワイヤハーネス4の巻き取り及び引き出しを行うことができる。さらに、巻取部材8を回転させるための別の部材を設ける必要がなく、複数のワイヤハーネス4の巻き取りに要する部品点数を低減することができるため、コストの削減及び軽量化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、複数のワイヤハーネス4が、余長を持って複数のスライダ82に折り返されて、巻取部材8の外に導出され、複数のスライダ82を囲むように巻き取られている。このような構成により、各ワイヤハーネス4の巻き取り及び引き出しに際して生じる各ワイヤハーネス4同士の摩擦を、余長部分において低減することができる。従って、複数のワイヤハーネス4同士の摩擦による劣化を抑制することができ、そのため複数のワイヤハーネス4に負担が掛かりにくい。
【0046】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、固定部材7と同心上に形成された巻取部材8が回転して複数のワイヤハーネス4を巻き取り、複数のワイヤハーネス4を固定した固定部材7は動くことはない。このような構成により、複数のワイヤハーネス4を、バッテリ等につながる他のワイヤハーネスと摺動接点を介さず直接接続することができる。従って、ワイヤハーネス巻取装置5を備えるハーネス配索構造1の構成を簡易なものとすることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、複数のワイヤハーネス4が、各々の周方向の間隔が等しくなるように複数のスライダ82に折り返されている。このような構成により、複数のワイヤハーネス4の固定部材7への巻き付きが均等となり、余長部分を固定部材7にきれいに巻き付けることができる。そのため、巻取部材8の回転をスムーズなものとすることができ、その結果、ワイヤハーネス巻取装置5の複数のワイヤハーネス4の巻き取り性及び引き出し性を優れたものとすることができる。
【0048】
また、上記実施形態に係るワイヤハーネス巻取装置5は、スライダ82が略T字状に形成されている。このような構成により、スライダ82の板状部材82aが傾いたりすることなく、径方向へのスライドが安定したものとなる。
【0049】
本発明のワイヤハーネス巻取装置は、上記実施形態に限定されるものではないが、例えば、さらに以下のような構成とすることが好ましい。
【0050】
上記実施形態におけるスライダ82が、径方向内側に付勢されていることが好ましい。これにより、スライダ82の径方向内側へのスライドがよりスムーズとなる。例えば、案内溝83内に付勢手段を配して基部82bを径方向内側へ付勢することにより、スライダ82を径方向内側へ付勢する構成としてもよい。また、付勢手段は、特に限定されることはないが、例えば、圧縮ばねなどの弾性部材を挙げることができる。
【0051】
また、図8に示すように上記実施形態におけるスライダ82の板状部材82aを、回転部材81の回転方向に沿うように湾曲形状とすることが好ましい。このような構成により、ワイヤハーネス4をよりきれいに巻取部材8に巻き取ることが可能となる。
【0052】
また、図8に示すように、上記実施形態のスライダ82における板状部材82aの回転方向の一端側の端部から、固定部材7に向かって延びる案内部材84が設けられていることが好ましい(図8)。このような構成により、余長部分の固定部材7への巻き付き力をより効率的に、径方向内側(中心)に引き寄せる力に変換することが可能となる。また、折り返し部41におけるワイヤハーネス4の折り返し角度の変化を抑制することができる。そのため、複数のワイヤハーネス4にかかる折り返し角度が繰り返し変化することによる負担を軽減することができる。
【0053】
上記実施形態における案内溝83が、基部82bのスライドを阻害することなく、基部82bが案内溝83から外れることを抑制するような保持部材を備えていてもよい。保持部材としては、例えば、案内溝83の上方の開口近傍に、開口の一部を塞ぐように溝の左右方向から溝の中央部に向かって延びる一対の突起を設け、当該一対の突起の間隔を基部82bの大きさより小さく形成する構成が挙げられる。このような構成により、基部82bを案内溝83の径方向の端部の開口からスライドさせて挿入した後は、スライダ82を持ち上げるような方向に力がかかっても、基部82bが案内溝83から外れにくいため、スライダ82の保持力が高まる。
【0054】
前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、当該実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のワイヤハーネス巻取装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0055】
例を示すと、上記実施形態においてワイヤハーネス巻取装置5は、スライダ82の数が6個として説明したが、これに限定されることはない。略円状にスムーズに巻き取ることを考慮すれば3個以上とすることが好ましく、より多い個数とすることがより好ましいが、2個や1個とすることも可能である。例えば、1個の場合、複数のワイヤハーネス4が、1つのスライダ82により同時に折り返され、当該1つのスライダ82及び余長部分を内側に配して囲むように巻き取られる構成としてもよい。本変形例について、図5から図7を用いて、以下に、具体的に示す。
【0056】
図5は、本変形例において、スライドドアが、車両2の前方側にスライドして、全閉した状態を示している。複数のワイヤハーネス4は、スリット71から、固定部材7の軸方向に直交する方向に引き出され、重ねられた状態で固定部材7の周面に時計回りに複数回巻き付けられることにより余長を持って、1つのスライダ82で同時に折り返されて、巻取部材8の外(隙間S)に導出される(図5)。
【0057】
隙間Sに導出された複数のワイヤハーネス4は、1つのスライダ82で折り返されて、反時計回りに1つのスライダ82及び余長部分を内側に配して囲むように複数回巻き付けられて、導出部98を介して突出部95の先端に導かれ、突起部99により折り返されてワイヤハーネス巻取装置5の外に導出される。
【0058】
次に、上述した本変形例の動作の一例について、図5から図7を用いて、以下に説明する。まず、スライドドアが全閉の状態においては、複数のワイヤハーネス4は、巻取部材8から引き出されている。この時、余長部分は、固定部材7への巻き付きが最も弱くなり、固定部材7と巻取部材8との間で最も弛緩した状態となっている(図5)。つまり、複数のワイヤハーネス4の余長部分の巻き付きが弱く、反対に弛緩の度合いが強くなっている。
【0059】
スライドドアが全閉の状態において、開閉スイッチからスライドドアを開ける指示信号が制御部に入力されると、巻取部材8は、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して時計回りに回転、つまり、折り返し部41が先頭となるように回転(折り返し部41を押して連れ回すように回転)し、1つのスライダ82及び余長部分を内側に配して囲むように巻取部材8の外に導出された複数のワイヤハーネス4を巻き取り、導出部98を介してワイヤハーネス巻取装置5の内に引き込んでいく。
【0060】
図6は、スライドドアが半開した時の本変形例の上面図であり、図7は、スライドドアが全開した時の本変形例の上面図である。なお、図6においては、駆動ベルト3及びドアアーム6の記載は省略した。巻取部材8が、折り返し部41が先頭となるように回転(時計回りの回転)することにより、時計回りに弛緩した状態で巻かれていた余長部分は、固定部材7への巻き付きを強くしていく(図6)。この巻き付きに伴い、1つのスライダ82には径方向内側(中心)へ引き寄せられる力が掛かり、1つのスライダ82は径方向内側(中心)に引き寄せられていく。1つのスライダ82は、径方向内側に少しずつスライドし、巻取部材8はその内径を縮小しながら、複数のワイヤハーネス4を、その周りに巻き取っていく(図6)。つまり、巻取部材8は、複数のワイヤハーネス4の巻き取りに従って巻取部材8の内側の径を小さくし、それに伴い隙間Sの幅が広がるように、複数のワイヤハーネス4を巻き取っていく(図6)。
【0061】
スライドドアが全開の状態となり、巻取部材8に複数のワイヤハーネス4が巻き取られると、余長部分は、固定部材7に巻き付いた状態となっているとともに、巻取部材8の外に導出された複数のワイヤハーネス4に巻き付かれた状態となっている(図7)。この時、1つのスライダ82は、固定部材7に巻き付いた状態の余長部分に接するように配され、巻取部材8の内側の径は最小となっており、巻き取られた複数のワイヤハーネス4が配される隙間Sは最大となっている。
【0062】
また、スライドドアが全開の状態において、開閉スイッチからスライドドアを閉める指示信号が制御部に入力されると、巻取部材8は、回転駆動装置22の回転力を受け駆動ベルト3の動きに同期して反時計回りに回転、つまり、折り返し部41が最後尾となるように回転し、1つのスライダ82及び余長部分を内側に配して囲むように巻取部材8の周りに巻き取られていた複数のワイヤハーネス4が引き出され、導出部98を介してワイヤハーネス巻取装置5の外に引き出されていく。
【0063】
巻取部材8の折り返し部41が最後尾となるように回転(反時計回りの回転)することにより、余長部分は固定部材7への巻き付きが弱くなり、固定部材7と巻取部材8との間で弛緩した状態となっていく(図6)。これに伴い、弛緩した余長部分が巻取部材8の内側で広がっていき、1つのスライダ82を径方向外側に押圧し、1つのスライダ82は径方向外側に移動していく。巻取部材8は、巻き取られていた複数のワイヤハーネス4を、引き出しながら、1つのスライダ82の、径方向外側へのスライドにより、巻取部材8の内径を拡大していく。つまり、巻取部材8は、複数のワイヤハーネス4の引き出しに従って、巻取部材8の内側の径を大きくし、それに伴い隙間Sの幅が狭くなるように、複数のワイヤハーネス4を引き出していく(図6)。そして、図2に示す全閉の状態に戻る(図5)。
【0064】
また、上記実施形態においてワイヤハーネス巻取装置5は、ワイヤハーネス4が複数であるとして説明したが、これに限定されることはなく、ワイヤハーネス4は1枚でもよいし、2枚でも、3枚でもよい。さらに、上記実施形態においては、ワイヤハーネス4として、帯状のワイヤハーネスを好適に用いることができると説明したが、帯状以外の他のワイヤハーネスを用いることも可能である。
【0065】
また、上記実施形態においてワイヤハーネス巻取装置5は、スライダ82が、略四角形の板状部材82aと、板状部材82aと交差する略四角形の板状の基部82bと、を備え、板状部材82aと基部82bとが交差して略T字状に形成されている構成としたが、板状部材82aの周りにワイヤハーネス4を巻き取ることができ、回転部材81の径方向にスライド自在に回転部材81に設けられる構成であれば、これに限定されることはない。例えば、L字状に形成されていてもよく、その他の形状に形成されていてもよい。さらに、板状部材82aは、径方向と直交するように回転部材81から直立していれば板状でなくてもよく、円柱状でも、四角柱状でもよい。同様に基部82bの形状も、案内溝83内をスライド可能であれば特に限定されることはない。
【0066】
また、上記実施形態においてワイヤハーネス巻取装置5は、複数のスライダ82と複数のワイヤハーネス4の数が同じになるように設けられ、それぞれのワイヤハーネス4がそれぞれのスライダ82により別々に折り返される構成としたが、これに限定されることはない。例えば、ワイヤハーネス4の数を6、スライダ82の数を3として、ワイヤハーネス4を2枚一組として、3つのスライダ82を用いて折り返す構成としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、ワイヤハーネス巻取装置5は、ハーネス配索構造1の構成要素として、車両2のステップ部材20に設けられる構成としたが、これに限定されることはなく、車に搭載されていなくてもよく、車以外のスライドドアに設けられてもよい。その他、ワイヤハーネス巻取装置5は、車両2において、車両2と、例えばスライドシートとに亘って配索されていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、余長部分が固定部材7に時計回りに巻き付き、ワイヤハーネス4がスライダ82に反時計回りに折り返され、反時計回りに巻取部材8に巻き取られる構成としたが、これに限定されることはなく、余長部分が固定部材7に反時計回りに巻き付き、ワイヤハーネス4がスライダ82に反時計回りに折り返され、反時計回りに巻取部材8に巻き取られる構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、ワイヤハーネス巻取装置5と、回転駆動装置22と、が、ステップ部材20に一体に取り付けられている構成としたが、これに限定されることはない。例えば、ワイヤハーネス巻取装置5とステップ部材20とが一体に取り付けられ、回転駆動装置22が一体に取り付けられずに構成されていてもよく、回転駆動装置22とステップ部材20とが一体に取り付けられ、ワイヤハーネス巻取装置5が一体に取り付けられずに構成されていてもよく、ワイヤハーネス巻取装置5と、回転駆動装置22と、ステップ部材20と、がそれぞれ別々に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 ハーネス配索構造
2 車両(ベース)
20 ステップ部材(ベース)
22 回転駆動装置(駆動部材)
4 ワイヤハーネス
41 折り返し部
5 ワイヤハーネス巻取装置
6 ドアアーム,スライドドア(スライド構造体)
7 固定部材
8 巻取部材
81 回転部材
82 スライダ
82a 板状部材
82b 基部
83 案内溝
84 案内部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9