特許第6687415号(P6687415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687415部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687415
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/02 20060101AFI20200413BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20200413BHJP
   H05K 3/18 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   C25D5/02 G
   C25D17/10 A
   !H05K3/18 N
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-30635(P2016-30635)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-150000(P2017-150000A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】成澤 寛子
(72)【発明者】
【氏名】堤 秀人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太郎
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−212791(JP,A)
【文献】 特開2012−097322(JP,A)
【文献】 特開2013−100593(JP,A)
【文献】 特開2015−108186(JP,A)
【文献】 特開2014−080652(JP,A)
【文献】 特開2005−042170(JP,A)
【文献】 特開2002−054000(JP,A)
【文献】 特開平01−129999(JP,A)
【文献】 特開2009−242859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00−7/12
H05K 3/10−3/26
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有する略円筒形のマスク部材の外周面に帯板状の被めっき材を密着させて配置した後、マスク部材の各々の開口部を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の内周面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきする方法において、マスク部材の各々の開口部の内壁から突出し且つ被めっき材から離間して配置された遮蔽壁により、被めっき材上のマスク部材の各々の開口部に対向する部分の周縁部と電極との間の電気力線の量を低減させることを特徴とする、部分めっき方法。
【請求項2】
前記遮蔽壁が、前記マスク部材の各々の開口部の内壁の周方向に沿って延びていることを特徴とする、請求項1に記載の部分めっき方法。
【請求項3】
前記遮蔽壁が、前記マスク部材の各々の開口部の内壁の全周にわたって延びていることを特徴とする、請求項1または2に記載の部分めっき方法。
【請求項4】
前記マスク部材が円周方向に回転可能であり、前記被めっき材を前記マスク部材の外周面に密着させて搬送しながら、前記めっき材上の前記マスク部材の開口部に対向する部分をめっきすることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項5】
前記開口部が略矩形であり、前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁の対向する二対の面のうちの前記マスク部材の円周方向において対向する一対の面の各々から突出し、それぞれ他方の一対の面の各々の間の全長にわたって延びていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項6】
前記開口部が略矩形であり、前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁の4つの面から突出し、その内壁の全周にわたって周方向に延びていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項7】
前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁に対して略垂直に突出することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項8】
前記マスク部材が非導電性部材からなることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項9】
前記マスク部材の開口部の内壁から突出する遮蔽壁の高さが0.5〜2mmであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項10】
略円筒形のマスク部材本体に、このマスク部材本体の円周方向に互いに離間した複数の開口部が形成され、これらの開口部の各々の内壁から突出する遮蔽壁が、その開口部の外周面側の端部から離間して配置されていることを特徴とする、マスク部材。
【請求項11】
前記遮蔽壁が、前記開口部の各々の内壁の周方向に沿って延びていることを特徴とする、請求項10に記載のマスク部材。
【請求項12】
前記遮蔽壁が、前記開口部の各々の内壁の全周にわたって延びていることを特徴とする、請求項10または11に記載のマスク部材。
【請求項13】
前記開口部が略矩形であり、前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁の対向する二対の面のうちの前記マスク部材の円周方向において対向する一対の面の各々から突出し、それぞれ他方の一対の面の各々の間の全長にわたって延びていることを特徴とする、請求項10に記載のマスク部材。
【請求項14】
前記開口部が略矩形であり、前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁の4つの面から突出し、その内壁の全周にわたって周方向に延びていることを特徴とする、請求項10に記載のマスク部材。
【請求項15】
前記遮蔽壁が、前記開口部の内壁に対して略垂直に突出することを特徴とする、請求項10乃至14のいずれかに記載のマスク部材。
【請求項16】
前記マスク部材が非導電性部材からなることを特徴とする、請求項10乃至15のいずれかに記載のマスク部材。
【請求項17】
前記マスク部材の開口部の内壁から突出する遮蔽壁の高さが0.5〜2mmであることを特徴とする、請求項10乃至16のいずれかに記載のマスク部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材に関し、特に、帯板状の被めっき材上の所定の部分をめっきする、部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯板状の被めっき材の所定の部分をめっきする方法として、回転可能な略円筒形の非導電性部材からなるマスク部材の外周面に長尺の帯板状の被めっき材を密着させて搬送しながら、マスク部材に形成された複数の開口部の各々を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の内周面側に配置されたアノードとカソードとしての被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の各々の開口部に対向する部分をめっきする方法が知られている。
【0003】
このような部分めっき方法に使用するマスク部材として、めっき液を供給する所望部分にめっき穴が形成されたゴムシートを格子状のロールフレームの周面に設けたマスキング治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1のマスキング治具を使用して、被めっき材上の所望の部分に(Auめっき皮膜などの)めっき皮膜を形成すると、めっき皮膜が比較的大きい(例えば、6mm×6mm以上の大きさの)場合には、めっき皮膜の中央部よりも周縁部(エッジ)の膜厚が増大し、(Auなどの)高価な金属の付着量が増大して、コストが高くなる。
【0005】
このようなめっき皮膜の周縁部の膜厚の増大を防止するために、アノードとテープ状製品(被めっき材)との間の開口を調整する絶縁性の遮蔽板を設けて、被めっき材の幅方向の周縁部の膜厚の増大を防止してめっき厚の均一化を図る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−256680号公報(段落番号0015)
【特許文献2】特開2009−293114号公報(段落番号0014−0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の方法では、帯板状の被めっき材の長手方向に所定の間隔で離間した部分をめっきする場合に、各々のめっき皮膜の周縁部のうちの被めっき材の幅方向に延びる周縁部の膜厚の増大を防止することができない。
【0008】
例えば、帯板状の被めっき材の長手方向に所定の間隔で離間した略矩形の部分をめっきする場合に、各々の被めっき部分の(被めっき材の)長手方向の長さが10mm以上で(被めっき材の)幅方向の長さに比べて長いと、各々のめっき皮膜のうちの被めっき材の幅方向に延びる周縁部が厚くなり易いが、特許文献2の方法では、このような膜厚の増大を防止することができない。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、帯板状の被めっき材の長手方向に所定の間隔で離間した部分に形成するめっき皮膜の厚さを均一にすることができる、部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、複数の開口部を有するマスク部材の一方の面に帯板状の被めっき材を密着させて配置した後、マスク部材の各々の開口部を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の他方の面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきする方法において、マスク部材の各々の開口部の内壁から突出する遮蔽壁を被めっき材から離間して配置させることにより、被めっき材上のマスク部材の各々の開口部に対向する部分の周縁部と電極との間の電気力線の量を低減させれば、帯板状の被めっき材の長手方向に所定の間隔で離間した部分に形成するめっき皮膜の厚さを均一にすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明による部分めっき方法は、複数の開口部を有するマスク部材の一方の面に帯板状の被めっき材を密着させて配置した後、マスク部材の各々の開口部を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の他方の面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきする方法において、マスク部材の各々の開口部の内壁から突出する遮蔽壁を被めっき材から離間して配置させることにより、被めっき材上のマスク部材の各々の開口部に対向する部分の周縁部と電極との間の電気力線の量を低減させることを特徴とする。
【0012】
この部分めっき方法において、遮蔽壁が、マスク部材の各々の開口部の内壁の周方向に沿って延びているのが好ましく、マスク部材の各々の開口部の内壁の全周にわたって延びているのが好ましい。また、マスク部材が略円筒形の部材であり、マスク部材の一方の面および他方の面がそれぞれ外周面および内周面であるのが好ましい。この場合、マスク部材が円周方向に回転可能であり、被めっき材をマスク部材の外周面に密着させて搬送しながら、めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきするのが好ましい。また、開口部が略矩形であり、遮蔽壁が、開口部の内壁の対向する二対の面のうちのマスク部材の円周方向において対向する一対の面の各々から突出し、それぞれ他方の一対の面の各々の間の全長にわたって延びているのが好ましい。あるいは、開口部が略矩形であり、遮蔽壁が、開口部の内壁の4つの面から突出し、その内壁の全周にわたって周方向に延びているのが好ましい。また、遮蔽壁が、開口部の内壁に対して略垂直に突出するのが好ましい。また、マスク部材が非導電性部材からなるのが好ましく、マスク部材の開口部の内壁から突出する遮蔽壁の高さが0.5〜2mmであるのが好ましい。
【0013】
また、本発明によるマスク部材は、略円筒形のマスク部材本体に、このマスク部材本体の円周方向に互いに離間した複数の開口部が形成され、これらの開口部の各々の内壁から突出する遮蔽壁が、その開口部の一方の端部から離間して配置されていることを特徴とする。
【0014】
このマスク部材において、遮蔽壁が、開口部の各々の内壁の周方向に沿って延びているのが好ましく、開口部の各々の内壁の全周にわたって延びているのが好ましい。また、開口部が略矩形であり、遮蔽壁が、開口部の内壁の対向する二対の面のうちのマスク部材の円周方向において対向する一対の面の各々から突出し、それぞれ他方の一対の面の各々の間の全長にわたって延びているのが好ましい。あるいは、開口部が略矩形であり、遮蔽壁が、開口部の内壁の4つの面から突出し、その内壁の全周にわたって周方向に延びているのが好ましい。また、遮蔽壁が、開口部の内壁に対して略垂直に突出するのが好ましく、一方の端部がマスク部材の外周面側の端部であるのが好ましい。また、マスク部材が非導電性部材からなるのが好ましく、マスク部材の開口部の内壁から突出する遮蔽壁の高さが0.5〜2mmであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯板状の被めっき材の長手方向に所定の間隔で離間した部分に形成するめっき皮膜の厚さを均一にすることができる、部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による部分めっき方法の実施の形態に使用する部分めっき装置の側面を示す図である。
図2図1の部分めっき装置を水平面で切断して示す断面図である。
図3図2の部分めっき装置をIII−III線で切断して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明による部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明による部分めっき方法の実施の形態に使用する部分めっき装置の側面を示す図であり、図2図1の部分めっき装置を水平面で切断して示す断面図、図3図2の部分めっき装置をIII−III線で切断して示す拡大断面図である。なお、図1において、マスク部材上に配置される前後の被めっき材を見易くするために、被めっき材の方向を変える支持ロールをマスク部材の外側に示している。
【0019】
図1図3に示すように、本発明による部分めっき方法の実施の形態では、部分めっき装置10のマスク部材12の一方の面に長尺の帯板状の被めっき材14を密着させて配置した後、マスク部材12の複数の開口部12aの各々を介して、被めっき材14にめっき液を供給するとともに、マスク部材12の他方の面側に配置された電極(アノード)16と被めっき材14との間に電流を流して、被めっき材14上のマスク部材12の各々の開口部12aに対向する部分をめっきするようになっている。
【0020】
マスク部材12は、回転可能な略円筒形の(ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂などの)非導電性部材からなるマスク部材本体(ドラム形マスク部材本体)に、被めっき材支持部として上下方向略中央部に全周にわたって延びる凹部12bが形成され、この凹部12bの底面に被めっき材14が密着して配置されるようになっている。また、マスク部材12には、円周方向に所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間して所定の形状(図示した実施の形態では略矩形)の複数(図示した実施の形態では10個)の開口部12aが側面を貫通して形成されている。また、マスク部材12の外周面(一方の面)には、円周方向に所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間して所定の形状(図示した実施の形態では略円柱形)の複数の位置決めピン12cが突起しており、マスク部材12の外周面に被めっき材14が密着して配置される際に、被めっき材14に所定の間隔(位置決めピン12cと同一の間隔)で貫通して形成された所定の形状(図示した実施の形態では位置決めピン12cより僅かに大きい略円柱形)の複数の貫通孔14aと嵌合するようになっている。
【0021】
図2において矢印Aで示す方向に搬送された被めっき材14は、回転可能な入口側支持ロール20により方向を変えて、マスク部材12の外周面に密着すると、被めっき材14の貫通孔14aがマスク部材12の位置決めピン12cと嵌合して、マスク部材12を矢印Bで示す方向に回転させた後、回転可能な出口側支持ロール22により方向を変えて矢印Aで示す方向に搬送されるようになっている。
【0022】
このようにマスク部材12の外周面に被めっき材14を密着させて配置している間に、マスク部材12の各々の開口部12aを介して、マスク部材12の他方の面(内周面)側に配置されためっき液噴流部18のスリット18aから被めっき材14にめっき液が供給されるとともに、マスク部材12の内周面側に配置された電極(アノード)16とカソードとしての被めっき材14との間に電流が流れると、被めっき材14上のマスク部材12の各々の開口部12aに対向する部分にめっき皮膜が形成されるようになっている。
【0023】
めっき液噴流部18は、(断面が略扇形の)略半円筒形の非導電性部材からなり、マスク部材12の内周面の一部(被めっき材支持部12bの内周面の略半分)に対向するように配置されている。めっき液噴流部18のスリット18aは、めっき液噴流部18の内周面から外周面まで貫通しており、(図示しない)めっき液供給部により内周面側から外周面側にめっき液を噴射して供給することができるようになっている。
【0024】
アノード16は、断面が扇形の導電性部材からなり、めっき液噴流部18のスリット18aの内壁の上下の面に取り付けられている。
【0025】
マスク部材12には、各々の開口部12aの内壁から(好ましくは0.5〜2mmの高さで)内壁に対して略垂直に突出し且つその内壁の全周にわたって周方向(内壁の周囲を取り囲む方向)に沿って延びる(好ましくは0.5〜2mmの幅の)遮蔽壁12dが各々の開口部12aの一方の端部(被めっき材14が密着する外周面側の端部)から離間して一体に形成されている。なお、各々の開口部12aが略矩形である場合、遮蔽壁12dは、開口部12aの内壁の4つの面から突出し、その内壁の全周にわたって周方向に延びているのが好ましいが、開口部12aの内壁の対向する二対の面のうちのマスク部材12の円周方向において対向する一対の面の各々から突出し、それぞれ他方の一対の面の各々の間の全長にわたって延びているようにしてもよい。遮蔽壁12dの高さおよび幅は、各々の開口部12aの大きさによって適宜設定することができる。また、遮蔽壁12dは、マスク部材12と一体に形成するのが好ましいが、マスク部材12の各々の開口部12aの内壁に密着させて取り付けるようにしてもよい。これらの遮蔽壁12dにより、めっき液噴流部18のスリット18aから被めっき材14上のマスク部材12の各々の開口部12aに対向する部分の周縁部に向かって流れるめっき液の量を低減させるとともに、アノード16と被めっき材14との間の電気力線の量を低減させることができるようになっている。
【0026】
なお、上述した部分めっき方法の実施の形態では、開口部12aの(被めっき材の)長手方向の長さが10mm以上で(被めっき材の)幅方向の長さに比べて長い場合、(長手方向の長さ/幅方向の長さ)が1.5以上の場合でも、さらには1.8以上の場合でも、めっき皮膜の厚さを略均一にすることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明による部分めっき方法およびそれに用いるマスク部材の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
素材(被めっき材14)として長尺の帯板状の無酸素銅(C1020−1/2H)からなる圧延板を用意し、この被めっき材を前処理として脱脂し、水洗した後、酸洗した。
【0029】
次に、この前処理済みの被めっき材14の全面に、電気めっきにより、下地めっきとしてNiストライクめっきを行った後にNiめっきを行って厚さ1μmのNiめっき皮膜を形成した。
【0030】
次に、図1図3の部分めっき装置10と同様の部分めっき装置を用意し、マスク部材12として、(マスク部材の円周方向の長さ14mm×幅方向の長さ8mmの大きさの)略矩形の各々の開口部12aの内壁から0.5mmの高さで突出し且つその内壁の全周にわたって周方向に沿って延びる幅1mmの遮蔽壁12dが各々の開口部12aの外周側の端部から2mm離間して形成された略円筒形のPVCからなるマスク部材を使用して、被めっき材14上の各々の開口部12aに対向する部分に、電気めっきにより、被めっき材14のNiめっき皮膜上に厚さ0.7μmのAuめっき皮膜を形成するように(狙い膜厚を0.7μmとして)Auめっきを行った。
【0031】
このようにして得られた部分めっき材について、蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSFT−110A)により、コリメータ径を0.2mmとして、部分めっき材の幅方向中央部のAuめっき皮膜の膜厚を部分めっき材の長手方向に0.2mm間隔で測定したところ、Auめっき皮膜の平均厚さは0.726μm(標準偏差は0.050μm)、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の端部の厚さが最大厚さ0.772μm、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の中央部の厚さが最小厚さ0.653μmであり、Auめっき皮膜の周縁部が厚くなることがなく、Auめっき皮膜の厚さは略均一であった。
【0032】
[実施例2]
遮蔽壁12dの高さを1.0mmとし、厚さ0.65μmのAuめっき皮膜を形成するようにAuめっきを行った以外は、実施例1と同様の方法により得られた部分めっき材について、実施例1と同様の方法により部分めっき材の幅方向中央部のAuめっき皮膜の膜厚を測定したところ、Auめっき皮膜の平均厚さは0.646μm(標準偏差は0.069μm)、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の端部の厚さが最小厚さ0.418μm、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の中央部の厚さが最大厚さ0.691μmであり、Auめっき皮膜の周縁部が厚くなることがなく、Auめっき皮膜の厚さは略均一であった。
【0033】
[比較例]
遮蔽壁12dを設けないで、厚さ0.6μmのAuめっき皮膜を形成するようにAuめっきを行った以外は、実施例1と同様の方法により得られた部分めっき材について、実施例1と同様の方法により部分めっき材の幅方向中央部のAuめっき皮膜の膜厚分布を測定したところ、Auめっき皮膜の平均厚さは0.591μm(標準偏差は0.118μm)、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の端部の厚さが最大厚さ0.837μm、部分めっき材の長手方向のAuめっき皮膜の中央部の厚さが最小厚さ0.461μmであり、Auめっき皮膜の周縁部が厚くなり、Auめっき皮膜の厚さは略均一ではなかった。
【符号の説明】
【0034】
10 部分めっき装置
12 マスク部材
12a 開口部
12b 凹部(被めっき材支持部)
12c 位置決めピン
12d 遮蔽壁
14 被めっき材
14a 貫通孔
16 アノード
18 めっき液噴流部
18a スリット
20 入口側支持ロール
22 出口側支持ロール
図1
図2
図3