(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1実施形態>
1.集電電流監視装置1の構成
集電電流監視装置1の構成を
図1〜
図3に基づき説明する。集電電流監視装置1は鉄道車両に搭載される装置である。集電電流監視装置1は、
図1に示すように、CPU3とメモリ5とを有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。メモリ5としては、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。集電電流監視装置1の各種機能は、CPU3がメモリ5に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0012】
集電電流監視装置1は、CPU3がプログラムを実行することで実現される機能の構成として、
図2に示すように、変圧器電流取得ユニット7と、総集電電流算出ユニット9と、集電電流取得ユニット11と、集電電流算出ユニット13と、電流値判断ユニット15と、第1のRMS算出ユニット17と、第2のRMS算出ユニット19と、異常判断ユニット21と、異常発生信号出力ユニット23と、鉄道車両情報取得ユニット25と、設定ユニット27とを備える。
【0013】
鉄道車両は、
図1に示すように、集電電流監視装置1に加えて、速度センサ29、地上トランスポンダ31、ATC(自動列車停止装置)33、モニタ装置35、2個の集電装置37、39、4個の電流センサ41、43、45、47、制御伝送装置49、及び主変換装置群51を備える。2個の集電装置37、39は複数の集電装置に対応する。
【0014】
速度センサ29は鉄道車両の速度Vを検出し、検出した速度VをATC33に送る。ATC33は、速度Vを時間で積分し、鉄道車両の位置Pを常時推定する。地上トランスポンダ31は位置補正情報をATC33に送る。位置補正情報は、鉄道車両の正確な位置情報である。ATC33は、位置補正情報を用いて、上記のように推定した位置Pを適宜補正する。ATC33は、モニタ装置35を介して、速度V及び位置Pを集電電流監視装置1に送る。なお、速度V及び位置Pは鉄道車両情報に対応する。モニタ装置35は、速度V及び位置Pを表示する。
【0015】
集電装置37、39、電流センサ41、43、45、47、及びそれらに関連する構成の配置を
図3に基づき説明する。鉄道車両は、4個の主変圧器53、55、57、59を備えている。4個の主変圧器53、55、57、59は複数の変圧器に対応する。主変圧器53、55、57、59に接続する主変換装置の個数は、それぞれ、3個、4個、4個、3個である。
【0016】
主変圧器53は、3個の主変換装置51a、51b、51cに電流を供給する。主変圧器55は、4個の主変換装置51d、51e、51f、51gに電流を供給する。主変圧器57は、4個の主変換装置51h、51i、51j、51kに電流を供給する。主変圧器59は、3個の主変換装置51l、51m、51nに電流を供給する。前記主変換装置群51は、主変換装置51a〜51nから成る。
【0017】
鉄道車両は、電流供給経路60を備える。主変圧器53、55、57、59は、電流供給経路60に並列に接続している。集電装置37、39は、電流供給経路60を介して、主変圧器53、55、57、59に集電電流を供給する。
【0018】
電流供給経路60は、主経路61と、分岐経路63、65、67、69とから成る。分岐経路63は、主経路61から主変圧器53に至る。分岐経路65は、主経路61から主変圧器55に至る。分岐経路67は、主経路61から主変圧器57に至る。分岐経路69は、主経路61から主変圧器59に至る。
【0019】
集電装置37は、鉄道車両のうち、n号車に備えられ、集電装置39はm号車に備えられる。n、mは1〜16の範囲内の自然数であり、nはmより小さい。集電装置37は、主経路61のうち、分岐経路63に接続する点と、分岐経路65に接続する点との間にある電流供給点71に、集電電流を供給する。集電装置37が電流供給点71に供給する集電電流の電流値をI
1とする。
【0020】
集電装置39は、主経路61のうち、分岐経路67に接続する点と、分岐経路69に接続する点との間にある電流供給点73に、集電電流を供給する。集電装置39が電流供給点73に供給する集電電流の電流値をI
2とする。集電装置37、39が供給する全ての集電電流の電流値をI
allとする。電流値I
allは電流値I
1と電流値I
2との和である。
【0021】
電流センサ41は、主経路61のうち、電流供給点71と、分岐経路63に接続する点との間に設けられている。電流センサ43は、主経路61のうち、電流供給点71と、分岐経路65に接続する点との間に設けられている。電流センサ45は、主経路61のうち、電流供給点73と、分岐経路67に接続する点との間に設けられている。電流センサ47は、主経路61のうち、電流供給点73と、分岐経路69に接続する点との間に設けられている。
【0022】
電流センサ41で検出する電流値をI
1aとする。電流センサ43で検出する電流値をI
1bとする。電流センサ45で検出する電流値をI
2aとする。電流センサ47で検出する電流値をI
2bとする。電流値I
1aと電流値I
1bとの和は、電流値I
1に等しい。電流値I
2aと電流値I
2bとの和は、電流値I
2に等しい。電流センサ41、43、45、47は、それぞれ、検出した電流値を集電電流監視装置1に送る。
【0023】
分岐経路63を通り、主変圧器53に供給される電流の電流値をI
pαとする。分岐経路65を通り、主変圧器55に供給される電流の電流値をI
pβとする。分岐経路67を通り、主変圧器57に供給される電流の電流値をI
pγとする。分岐経路69を通り、主変圧器59に供給される電流の電流値をI
pδとする。電流値I
pα、I
pβ、I
pγ、I
pδは、一部の変圧器に流れる電流の電流値I
pに対応する。電流値I
pαは電流値I
1aに等しい。電流値I
pδは電流値I
2bに等しい。電流値I
pα、電流値I
pβ、電流値I
pγ、及び電流値I
pδの総和は、電流値I
1及び電流値I
2の和(すなわち電流値I
all)に等しい。
【0024】
図1に戻り、モニタ装置35と制御伝送装置49とは、集電電流監視装置1が出力する、後述する異常発生信号を受ける。制御伝送装置49は、異常発生信号を受けたとき、その異常発生信号を主変換装置群51に伝達する。モニタ装置35は運転席に備えられている。鉄道車両の運転士はモニタ装置35の表示画像を見ることができる。モニタ装置35は、異常発生信号を受けたとき、異常報知画像を表示する。異常報知画像は、異常発生信号を受けたときに特有の画像である。主変換装置群51は、異常発生信号が伝達されたとき、ノッチ制限を行う。ノッチ制限とは鉄道車両の速度又は加速を制限する制御である。
【0025】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を
図4〜
図7に基づき説明する。
図4のステップ1では、鉄道車両情報取得ユニット25がATC33から位置Pと速度Vとを取得する。
【0026】
ステップ2では、設定ユニット27が、前記ステップ1で取得した位置Pと速度Vとに応じて、ウインドウ幅Wと異常条件とを設定する。ウインドウ幅Wとは、
図5に示すように、後述するステップ8で二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2を算出するときにおける積分区間の長さを意味する。ウインドウ幅Wの単位はmsecである。ウインドウ幅Wは設定事項に対応する。ウインドウ幅Wが大きいほど、後述するステップ9において、二乗平均平方根RMS
1及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせは、異常条件を充足しにくくなる。
【0027】
異常条件とは、二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが、
図6に示す異常領域75又は異常領域77内にあるという条件である。
図6は、横軸が二乗平均平方根RMS
1の大きさであり、縦軸が二乗平均平方根RMS
2の大きさである二次元空間を表す。
【0028】
図6に示す二次元空間において、異常領域75は、二乗平均平方根RMS
1が閾値A
1以下であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値B
1以上である領域である。また、異常領域77は、二乗平均平方根RMS
1が閾値B
2以上であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値A
2以下である領域である。
【0029】
二乗平均平方根RMS
1が閾値A
1以下であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値B
1以上であるとき、異常条件が充足される。
また、二乗平均平方根RMS
1が閾値B
2以上であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値A
2以下であるとき、異常条件が充足される。
【0030】
閾値A
1、A
2、B
1、B
2はいずれも正の値である。閾値B
1は、閾値A
1、A
2より大きい。閾値B
2は、閾値A
1、A
2より大きい。閾値A
1と閾値A
2とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。閾値B
1と閾値B
2とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。異常条件は、設定事項に対応する。
【0031】
また、異常領域75、77は、
図7に示すように、横軸が二乗平均平方根RMS
1の大きさであり、縦軸が二乗平均平方根RMS
2の大きさである二次元空間において、矩形以外の形状を有する領域であってもよい。
【0032】
異常条件が厳しいほど(すなわち、異常領域75、77が狭いほど)、後述するステップ9において、二乗平均平方根RMS
1及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせは、異常条件を充足しにくくなる。
【0033】
設定ユニット27は予め、位置P及び速度Vと、ウインドウ幅W及び異常条件との対応関係を規定するテーブルを備える。設定ユニット27は、そのテーブルを用いて、前記ステップ1で取得した位置P及び速度Vに対応するウインドウ幅W及び異常条件を設定する。テーブルは、上記の対応関係を書き換えることができるものである。
【0034】
テーブルにおけるウインドウ幅Wの範囲は、例えば、10〜1000msecの範囲内である。テーブルは、例えば、ベースとなるテーブルを作成した後、テーブルの使用と、使用結果の検証と、検証結果に基づくテーブルの修正とのサイクルを繰り返すことで作成できる。テーブルにおけるウインドウ幅W及び異常条件のうち少なくとも一方は、位置P及び速度Vに応じて変化することが好ましい。
【0035】
異常条件が
図6に示される条件である場合、異常条件は、上述したように、閾値A
1、A
2、B
1、B
2により定まるものであるから、設定ユニット27が異常条件を設定することは、閾値A
1、A
2、B
1、B
2のいずれか1以上を設定することに等しい。
【0036】
図4に戻り、ステップ3では、集電電流取得ユニット11が、電流センサ41、43、45、47を用いて、電流値I
1a、I
1b、I
2a、I
2bを取得する。
ステップ4では、前記ステップ3で取得した電流値I
1a、I
1bが、予め設定された正常範囲内であるか否かを電流値判断ユニット15が判断する。正常範囲とは、電流センサ41、43が正常に機能しているときに、電流値I
1a、I
1bが取りえる値の範囲である。電流値I
1a、I
1bが正常範囲内である場合はステップ5に進み、電流値I
1a、I
1bが正常範囲内にない場合はステップ15に進む。
【0037】
ステップ5では、前記ステップ3で取得した電流値I
2a、I
2bが、予め設定された正常範囲内であるか否かを電流値判断ユニット15が判断する。正常範囲とは、電流センサ45、47が正常に機能しているときに、電流値I
2a、I
2bが取りえる値の範囲である。電流値I
2a、I
2bが正常範囲内である場合はステップ6に進み、電流値I
2a、I
2bが正常範囲内にない場合はステップ11に進む。
【0038】
ステップ6では、集電電流取得ユニット11が、前記ステップ3で取得した電流値I
1aと電流値I
1bとを合計することで、電流値I
1を算出する。
ステップ7では、集電電流取得ユニット11が、前記ステップ3で取得した電流値I
2aと電流値I
2bとを合計することで、電流値I
2を算出する。
【0039】
ステップ8では、第1のRMS算出ユニット17が、前記ステップ6、後述するステップ13、及び後述するステップ19のうちのいずれかで算出した電流値I
1のウインドウ幅Wにおける二乗平均平方根RMS
1を算出する。ここで用いるウインドウ幅Wは、前記ステップ2で設定したものである。
【0040】
また、本ステップでは、第2のRMS算出ユニット19が、前記ステップ7、後述するステップ14、及び後述するステップ18のうちのいずれかで算出した電流値I
2のウインドウ幅Wにおける二乗平均平方根RMS
2を算出する。ここで用いるウインドウ幅Wは、前記ステップ2で設定したものである。
【0041】
ステップ9では、前記ステップ8で算出した二乗平均平方根RMS
1及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが、異常条件を充足するか否かを異常判断ユニット21が判断する。すなわち、前記ステップ9で算出した二乗平均平方根RMS
1及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが、
図6又は
図7に示す異常領域75、77のうちのどちらかに属するか否かを異常判断ユニット21が判断する。ここで用いる異常条件は、前記ステップ2で設定したものである。
【0042】
異常条件を充足すると判断した場合はステップ10に進み、異常条件を充足しないと判断した場合は本処理を終了する。
ステップ10では、異常発生信号出力ユニット23が異常発生信号を出力する。
【0043】
一方、前記ステップ5で否定判断した場合、ステップ11に進む。ステップ11では、変圧器電流取得ユニット7が、電流センサ41を用いて、電流値I
pαを取得する。
ステップ12では、総集電電流算出ユニット9が、前記ステップ11で取得した電流値I
pαから、下記式(2)を用いて、電流値I
allを算出する。
【0044】
式(2) I
all=I
pα×(M
all/M
p)
前記式(2)においてM
pは主変圧器53に接続する主変換装置の個数であって、具体的には3個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0045】
ステップ13では、集電電流取得ユニット11が、前記ステップ3で取得した電流値I
1aと電流値I
1bとを合計することで、電流値I
1を算出する。
ステップ14では、集電電流算出ユニット13が、前記ステップ12で算出した電流値I
allから、前記ステップ13で算出した電流値I
1を差し引くことで、電流値I
2を算出する。
【0046】
また、前記ステップ4で否定判断した場合、ステップ15に進む。ステップ15では、前記ステップ5と同様の判断を行う。その判断の結果、電流値I
2a、I
2bが正常範囲内である場合はステップ16に進み、電流値I
2a、I
2bが正常範囲内にない場合は本処理を終了する。
【0047】
ステップ16では、変圧器電流取得ユニット7が、電流センサ47を用いて、電流値I
pδを取得する。
ステップ17では、総集電電流算出ユニット9が、前記ステップ16で取得した電流値I
pδから、下記式(3)を用いて、電流値I
allを算出する。
【0048】
式(3) I
all=I
pδ×(M
all/M
p)
前記式(3)においてM
pは主変圧器59に接続する主変換装置の個数であって、具体的には3個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0049】
ステップ18では、集電電流取得ユニット11が、前記ステップ3で取得した電流値I
2aと電流値I
2bとを合計することで、電流値I
2を算出する。
ステップ19では、集電電流算出ユニット13が、前記ステップ17で算出した電流値I
allから、前記ステップ18で算出した電流値I
2を差し引くことで、電流値I
1を算出する。
【0050】
なお、前記ステップ11〜14の処理を実行する場合、集電装置37は、「複数の集電装置のうち、1個の集電装置以外の集電装置」、及び集電装置Xに対応し、集電装置39は、「1個の集電装置」、及び集電装置Yに対応し、電流値I
1は電流値I
xに対応し、電流値I
2は電流値I
Yに対応する。また、前記ステップ16〜19の処理を実行する場合、集電装置37は、「1個の集電装置」、及び集電装置Yに対応し、集電装置39は、「複数の集電装置のうち、1個の集電装置以外の集電装置」、及び集電装置Xに対応し、電流値I
1は電流値I
Yに対応し、電流値I
2は電流値I
Xに対応する。
【0051】
3.集電電流監視装置1が奏する効果
(1A)集電電流監視装置1は、電流センサ45、47が故障し、電流値I
2a、I
2bを直接測定できない場合でも、前記ステップ11〜14の処理により、電流値I
1、I
2を算出することができる。また、集電電流監視装置1は、電流センサ41、43が故障し、電流値I
1a、I
1bを直接測定できない場合でも、前記ステップ16〜19の処理により、電流値I
1、I
2を算出することができる。集電電流監視装置1は、電流値I
1、I
2を用いて電気離線を検出することができる。
【0052】
(1B)集電電流監視装置1は、二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが異常条件を充足するか否かを判断する。その異常条件は、二乗平均平方根RMS
1と二乗平均平方根RMS
2とが不均衡であるときに充足する条件であり、電気離線が生じたときに充足する条件である。よって、集電電流監視装置1は、二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが異常条件を充足するか否かにより、電気離線が発生しているか否かを判断することができる。
【0053】
(1C)集電電流監視装置1は、鉄道車両の位置P及び速度Vに応じて、ウインドウ幅W及び異常条件を設定する。そのため、集電電流監視装置1は、ウインドウ幅W及び異常条件を、鉄道車両の位置P及び速度Vに応じて最適化することができる。その結果、電気離線に対する検出感度を向上させながら、電気離線の誤検出を抑制できる。なお、位置P及び速度Vは、それぞれ、二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2に影響を与える要因である。
【0054】
(1D)集電電流監視装置1は、異常条件として、二乗平均平方根RMS
1が閾値A
1以下であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値B
1以上であるか、あるいは、二乗平均平方根RMS
1が閾値B
2以上であり、且つ二乗平均平方根RMS
2が閾値A
2以下であるという条件を設定することができる。
【0055】
そのため、閾値A
1、A
2、B
1、B
2のうちのいずれか1以上を設定するだけで異常条件を設定することができる。その結果、異常条件の設定が容易になる。また、二乗平均平方根RMS
1、及び二乗平均平方根RMS
2の組み合わせが異常条件を充足するか否かの判断が容易になる。
【0056】
(1E)集電電流監視装置1は、位置P及び速度Vと、ウインドウ幅W及び異常条件との対応関係を規定するテーブルを備え、そのテーブルを用いて、ウインドウ幅W及び異常条件を設定する。そのため、ウインドウ幅W及び異常条件の設定が容易である。また、テーブルを交換又は書き換えすれば、位置P及び速度Vと、ウインドウ幅W及び異常条件との対応関係を容易に変更することができる。
<第2実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0057】
図8に示すように、鉄道車両は、第1実施形態と比べて、主変圧器57、4個の主変換装置51h、51i、51j、51k、及び分岐経路67を備えない点で相違する。電流値I
pα、電流値I
pβ、及び電流値I
pδの総和は、電流値I
1及び電流値I
2の和(すなわち電流値I
all)に等しい。
【0058】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1が実行する処理は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、式(2)、式(3)におけるM
allの値は、主変圧器53、55、
59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には10個である。
【0059】
3.集電電流監視装置1が奏する効果
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0060】
図9に示すように、鉄道車両は、第1実施形態と比べて、主変圧器57、59、4個の主変換装置51h、51i、51j、51k、3個の3個の主変換装置51l、51m、51n、電流センサ47、及び分岐経路67、69を備えない点で相違する。電流値I
pα、及び電流値I
pβの和は、電流値I
1及び電流値I
2の和(すなわち電流値I
all)に等しい。電流センサ45は、電流値I
2を検出する。
【0061】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1が実行する処理は、基本的には第1実施形態と同様である。ただし、前記ステップ3では、集電電流取得ユニット11が、電流センサ41、43、45を用いて、電流値I
1a、I
1b、I
2を取得する。また、前記ステップ5では、電流センサ45で検出した電流値I
2が予め設定された正常範囲内であるか否かを電流値判断ユニット15が判断する。また、前記ステップ4で否定判断した場合は、処理を終了する。
【0062】
また、式(2)におけるM
allの値は、主変圧器53、55のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には7個である。
3.集電電流監視装置1が奏する効果
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0063】
鉄道車両は、
図10に示すように、集電装置79、及び電流センサ83、85をさらに備える。集電装置79は、主経路61のうち、分岐経路65に接続する点と、分岐経路67に接続する点との間にある電流供給点81に、集電電流を供給する。集電装置79が電流供給点81に供給する集電電流の電流値をI
3とする。
【0064】
電流センサ83は、主経路61のうち、電流供給点81と、分岐経路65に接続する点との間に設けられている。電流センサ85は、主経路61のうち、電流供給点81と、分岐経路67に接続する点との間に設けられている。
【0065】
電流センサ83で検出する電流値をI
3aとする。電流センサ85で検出する電流値をI
3bとする。電流値I
3aと電流値I
3bとの和は、電流値I
3に等しい。
図11に示すように、電流センサ83、85は、それぞれ、検出した電流値を集電電流監視装置1に送る。
【0066】
本実施形態では、集電装置37、39、79が供給する全ての集電電流の電流値をI
allとする。電流値I
allは、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3の総和である。電流値I
pα、電流値I
pβ、電流値I
pγ、及び電流値I
pδの総和は、電流値I
allに等しい。
【0067】
2.集電電流監視装置1が実行する処理
集電電流監視装置1は、以下の方法で、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3を算出することができる。
【0068】
まず、電流センサ41を用いて、電流値I
pαを取得する。次に、前記式(2)を用いて、電流値I
allを算出する。次に、電流センサ41、43、45、47、83、85のいずれかを用いて、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3のうち、2つの電流値を検出する。
【0069】
例えば、電流センサ41で検出した電流値I
1aと電流センサ43で検出した電流値I
1bとを足し合わせて、電流値I
1を得ることができる。また、電流センサ45で検出した電流値I
2aと電流センサ47で検出した電流値I
2bとを足し合わせて、電流値I
2を得ることができる。また、電流センサ83で検出した電流値I
3aと電流センサ85で検出した電流値I
3bとを足し合わせて、電流値I
3を得ることができる。
【0070】
最後に、電流値I
allから、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3のうちの2つの電流値の和を差し引くことで、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3のうち、残りの1つの電流値を算出する。
【0071】
また、電流値I
allは、以下の方法で算出してもよい。まず、電流センサ47を用いて、電流値I
pδを取得する。次に、前記式(3)を用いて、電流値I
allを算出する。
また、電流値I
allは、以下の方法で算出してもよい。まず、電流センサ43、83を用いて、電流値I
pβを取得する。なお、電流センサ43で検出する電流値I
1bと、電流センサ83で検出する電流値I
3aとの和は、電流値I
pβに等しい。次に、以下の式(4)を用いて、電流値I
allを算出する。
【0072】
式(4) I
all=I
pβ×(M
all/M
p)
前記式(4)においてM
pは主変圧器55に接続する主変換装置の個数であって、具体的には4個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0073】
また、電流値I
allは、以下の方法で算出してもよい。まず、電流センサ45、85を用いて、電流値I
pγを取得する。なお、電流センサ45で検出する電流値I
2aと、電流センサ85で検出する電流値I
3bとの和は、電流値I
pγに等しい。次に、以下の式(5)を用いて、電流値I
allを算出する。
【0074】
式(5) I
all=I
pγ×(M
all/M
p)
前記式(5)においてM
pは主変圧器57に接続する主変換装置の個数であって、具体的には4個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0075】
3.集電電流監視装置1が奏する効果
(4A)集電電流監視装置1は、電流センサ41、43、45、47、83、85のうちの一部が故障し、電流値I
1、I
2、I
3のうちの一つを直接測定できない場合でも、電流値I
1、電流値I
2、及び電流値I
3をそれぞれ算出することができる。集電電流監視装置1は、電流値I
1、I
2、I
3を用いて電気離線を検出することができる。
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
【0076】
(1)鉄道車両が備える主変圧器の数は2〜4個には限定されず、適宜設定できる。例えば、5個、6個・・・とすることができる。
(2)前記ステップ11において、電流値I
pαの代わりに、電流値I
pβを取得してもよい。電流値I
pβは、例えば、分岐経路65に設けた電流センサを用いて取得することができる。前記ステップ11において電流値I
pβを取得した場合、前記ステップ12において、電流値I
pβから、下記式(6)を用いて、電流値I
allを算出することができる。
【0077】
式(6) I
all=I
pβ×(M
all/M
p)
前記式(6)においてM
pは主変圧器55に接続する主変換装置の個数であって、具体的には4個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0078】
(3)前記ステップ16において、電流値I
pδの代わりに、電流値I
pγを取得してもよい。電流値I
pγは、例えば、分岐経路67に設けた電流センサを用いて取得することができる。前記ステップ16において電流値I
pγを取得した場合、前記ステップ17において、電流値I
pγから、下記式(7)を用いて、電流値I
allを算出することができる。
【0079】
式(7) I
all=I
pγ×(M
all/M
p)
前記式(7)においてM
pは主変圧器57に接続する主変換装置の個数であって、具体的には4個である。M
allは、主変圧器53、55、57、59のいずれかに接続する主変換装置の個数の総和であって、具体的には14個である。
【0080】
(4)集電電流監視装置1は、前記ステップ8〜10の処理を行う機能を持たなくてもよい。この場合、集電電流監視装置1は、例えば、前記ステップ6、7、13、14、18、19のうちのいずれかで算出した電流値I
1、I
2を外部の装置に出力することができる。その外部の装置は、例えば、集電電流監視装置1から取得した電流値I
1、I
2を用いて、前記ステップ8〜10の処理を行うことができる。
【0081】
(5)鉄道車両情報取得ユニット25は、速度V及び位置Pのうち、一方を取得するものであってもよい。この場合、設定ユニット27は、その一方に応じて、ウインドウ幅W及び異常条件を設定することができる。
【0082】
また、鉄道車両情報取得ユニット25は、速度V及び位置Pに加えて、第3の情報を取得してもよい。この場合、設定ユニットは、速度V、位置P、及び第3の情報に応じて、ウインドウ幅W及び異常条件を設定することができる。
【0083】
(6)設定ユニット27は、ウインドウ幅Wは設定するが、異常条件は設定しないものであってもよい。この場合、異常条件は、常に一定の条件にすることができる。また、設定ユニット27は、異常条件は設定するが、ウインドウ幅Wは設定しないものであってもよい。この場合、ウインドウ幅Wは、例えば、固定値とすることができる。
【0084】
(7)設定ユニット27は、閾値A
1、A
2、B
1、B
2のうち、一部を設定するものでもよい。前記一部以外のものは、例えば、固定値とすることができる。
(8)異常条件は、他の条件であってもよい。例えば、異常条件は、以下の(式8)で表されるRが、閾値T
Xより大きいか、閾値T
Yより小さいという条件であってもよい。
【0085】
(式8) R=(二乗平均平方根RMS
2)/(二乗平均平方根RMS
1)
ここで、閾値T
Xは1より大きい値であり、閾値T
Yは0より大きく1より小さい値である。
【0086】
(9)集電電流監視装置1は、前記ステップ4、5、15の判断を行わず、前記ステップ3の後、常に前記ステップ11〜14の処理を行ってもよい。また、集電電流監視装置1は、前記ステップ4、5、15の判断を行わず、前記ステップ3の後、常に前記ステップ16〜19の処理を行ってもよい。
【0087】
(10)集電電流監視装置1は、前記ステップ4、5でともに肯定判断した場合、前記ステップ6、7の処理の代わりに、前記ステップ11〜14の処理を行ってもよい。また、集電電流監視装置1は、前記ステップ4、5でともに肯定判断した場合、前記ステップ6、7の処理の代わりに、前記ステップ16〜19の処理を行ってもよい。
【0088】
(11)鉄道車両は、電流センサ45、47を備えなくてもよい。この場合でも、前記ステップ11〜14の処理により、電流値I
2を算出することができる。また、鉄道車両は、電流センサ41、43を備えなくてもよい。この場合でも、前記ステップ16〜19の処理により、電流値I
1を算出することができる。