(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護回路は、前記コンバータの出力電圧が急激に低下したときに、前記オープン状態から前記正常状態への復帰と判定することを特徴とする請求項1に記載の点灯回路。
前記保護回路は、前記コンバータの出力端子がショート状態から前記正常状態に復帰したことを検出すると、停止時間の間、前記コンバータのスイッチングを停止することを特徴とする請求項1または2に記載の点灯回路。
前記保護回路は、前記コンバータの出力電圧が急激に上昇したときに、前記ショート状態から前記正常状態への復帰と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の点灯回路。
前記保護回路は、前記停止時間の経過後、前記コンバータのスイッチングのデューティ比を緩やかに上昇または下降させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の点灯回路。
前記オープン検出回路は、エミッタが前記コンバータの入力端子と接続され、ベースが前記コンバータの出力端子と接続されるPNP型バイポーラトランジスタを含むことを特徴とする請求項10に記載の点灯回路。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具、特に前照灯の光源としては、ハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプが主流であったが、近年それらに代えて、LED(発光ダイオード)やレーザダイオードなどの半導体光源を用いた車両用灯具の開発が進められている。
【0003】
半導体光源を用いた車両用灯具には、半導体光源のオープン破壊、ハーネス外れ、配線の断線などに起因するオープン異常を検出し、車両側に通知する機能が求められる。
図1(a)、(b)は、オープン異常検出機能を有する点灯回路を備える車両用灯具の回路図である。なおこれらは本発明者が事前に検討した回路であり、公知技術として認定してはならない。
図1(a)の点灯回路10rは、降圧コンバータ(Buckコンバータ)20およびオープン検出回路30rを備える。点灯回路10rには、スイッチ6を介してバッテリ4からの電圧V
BATが供給される。降圧コンバータ20は、電圧V
BATを降圧し、光源2に出力電圧V
OUTを供給する。降圧コンバータ20は、図示しないコンバータコントローラにより、光源2に流れる駆動電流I
DRVが、光源2の目標光量を規定する目標値I
REFに近づくようにフィードバック制御される。
【0004】
図1(a)のオープン検出回路30rは、電流検出用のセンス抵抗R
Sと、コンパレータ32rを備える。センス抵抗R
Sは、駆動電流I
DRVの経路上に挿入され、その両端間には駆動電流I
DRVに比例した電圧降下(電流検出信号)V
ISが発生する。コンパレータ32rは、電流検出信号V
ISを所定のしきい値電圧V
THと比較する。
図1(a)の車両用灯具1rが正常であるとき、センス抵抗R
Sには正常な駆動電流I
DRVが流れ、しきい値電圧V
THを超す電圧降下V
ISが発生する。反対に、オープン異常が発生すると、駆動電流I
DRVが流れなくなるため、電圧降下V
ISが実質的にゼロとなり、しきい値電圧V
THより低くなる。したがってコンパレータ32rの出力信号は、V
IS>V
THのとき正常を示す第1レベル(たとえばハイレベル)をとり、V
IS<V
THのときオープン異常を示す第2レベル(ローレベル)をとる。
【0005】
図1(b)のオープン検出回路30sは、抵抗R11,R12と、コンパレータ32sを備える。抵抗R11,R12は、降圧コンバータ20の出力電圧V
OUTを分圧する。コンパレータ32sは、分圧後の出力電圧(電圧検出信号)V
VSを、しきい値電圧V
THと比較する。
【0006】
図1(b)の車両用灯具1sが正常であるとき、出力電圧V
OUTは、光源2に目標電流I
REFが供給されるのに最適な電圧レベルにフィードバック制御される。オープン異常が発生すると、駆動電流I
DRVが流れなくなるが、降圧コンバータ20のコントローラは、駆動電流I
DRVを目標値I
REFに近づけるべく、スイッチングのデューティ比を増加させ、これにより出力電圧V
OUTが上昇する。その結果、電圧検出信号V
VSがしきい値電圧V
THを超える。
【0007】
したがってコンパレータ32sの出力信号は、V
VS<V
THのとき正常を示す第1レベル(たとえばハイレベル)をとり、V
VS>V
THのときオープン異常を示す第2レベル(ローレベル)をとる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
1. 本発明者は、
図1(a)、(b)の点灯回路10r,10sについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0010】
レーザダイオードが光源2である車両用灯具では、メンテナンスやテストのために、光源2を低輝度で発光させる低輝度モード(テストモード)が要求されうる。この場合、
図1(a)の点灯回路10rでは、しきい値電圧V
THを低輝度モードにおける電圧検出信号V
ISよりも低く設定する必要があるが、低輝度モードで光源2に流す駆動電流I
DRVは微弱であり電圧検出信号V
ISはきわめて小さいため、しきい値電圧V
THを非常に低く設定しなければならず、誤差の影響を受けやすくなる。
【0011】
光源2を直列に接続された複数のLEDと、いくつかのLEDと並列に設けられたいくつかのバイパススイッチで構成する場合がある。この光源2を用いると、バイパススイッチのオンオフに応じて、それと並列なLEDの点灯、消灯を制御することが可能となる。ここで降圧コンバータ20の出力電圧V
OUTは、点灯しているLEDの個数をNとするとき、
V
OUT≒V
F×N
で与えられるため、出力電圧V
OUTは点灯数Nに応じてダイナミックに変動する。
図1(b)の点灯回路10sでは、出力電圧V
OUTがダイナミックに変動する場合に、しきい値電圧V
THを適切に定めることが難しい。
【0012】
2. またオープン故障に関連して、本発明者は以下の課題を認識するに至った。
半導体光源は、過電流に弱く、特にレーザダイオードでは、過電流がCOD(Catastrophic optical damage)の故障を引き起こす可能性があるため、瞬時たりとも絶対最大定格を超える電流が流れるのを防止する必要があり、他の光源よりもシビアな過電流保護が求められる。
【0013】
点灯回路10r(あるいは10s)と光源2のコネクタ接点には、接触(正常状態)、非接触(オープン状態)を反復するチャタリングが生ずる場合がある。オープン状態では、点灯回路10r(10s)の電流検出信号V
ISがゼロとなるため、目標値に近づくようにデューティ比が増加する。その結果、出力キャパシタの電圧が増加する。その後、コネクタ接点が接触状態に復帰すると、出力キャパシタに余剰に蓄えられた電荷が光源2に流れ込み、過電流が発生してしまう。
【0014】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、オープン異常を適切に検出可能な点灯回路の提供にある。また本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、過電流を抑制可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1. 本発明のある態様は点灯回路に関する。点灯回路は、光源に駆動電流を供給し、駆動電流が目標電流に近づくようフィードバック制御される降圧コンバータと、降圧コンバータの入力電圧と出力電圧の電位差を所定のしきい値電圧と比較するオープン検出回路と、を備える。
【0016】
降圧コンバータの負荷がオープン異常となると駆動電流がゼロとなり、駆動電流を増加させるために出力電圧が上昇する方向にフィードバックがかかり、オープン異常が発生すると、降圧コンバータの入出力間の電位差がゼロに近づく。この態様によれば、降圧コンバータの入出力間の電位差にもとづいてオープン異常を検出できる。
【0017】
オープン検出回路は、エミッタが降圧コンバータの入力端子と接続され、ベースが降圧コンバータの出力端子と接続されるPNP型バイポーラトランジスタを含んでもよい。バイポーラトランジスタのオン、オフが、異常検出の結果に対応し、電圧コンパレータが不要となるため、コストを下げることができる。
【0018】
オープン検出回路は、バイポーラトランジスタのコレクタと接地の間に設けられた第1抵抗をさらに含んでもよい。
【0019】
オープン検出回路は、ソースが降圧コンバータの入力端子と接続され、ゲートが降圧コンバータの出力端子と接続されるPチャンネルFET(Field Effect Transistor)を含んでもよい。この場合、FETのオン、オフが、異常検出の結果に対応し、電圧コンパレータが不要となるため、コストを下げることができる。
【0020】
オープン検出回路は、FETのゲートソース間に設けられたクランプ素子をさらに含んでもよい。これによりゲートソース間電圧を、耐圧より小さく抑えることができる。
【0021】
オープン検出回路は、FETのドレインと接地の間に設けられた第2抵抗をさらに備えてもよい。
【0022】
2. 本発明の別の態様も、点灯回路に関する。点灯回路は、出力インダクタを有し、出力インダクタを介して光源に駆動電流を供給し、駆動電流が目標電流に近づくようフィードバック制御されるコンバータと、コンバータの出力端子がオープン状態から正常状態に復帰したことを検出すると、停止時間の間、コンバータのスイッチングを停止する保護回路と、を備える。
オープン状態となると、駆動電流の検出値がゼロとなるためコンバータのデューティ比が増加し、出力電圧が上昇する。そして正常状態に復帰すると、出力キャパシタに蓄えられた過剰な電荷は、出力インダクタを介して光源に供給される。出力インダクタは出力キャパシタとともに共振回路を形成しており、制限された共振電流が光源に流れることとなるため、過電流が抑制される。
この共振電流が、フィードバック制御により生成される駆動電流に重畳されると、過電流となりうるところ、オープン状態から正常状態への復帰時に、スイッチングコンバータのスイッチング動作の再開を遅延させることにより、共振回路の電流が小さくなった後に、駆動電流が発生するため、過電流を抑制できる。
【0023】
保護回路は、コンバータの出力電圧が急激に低下したときに、正常状態への復帰と判定してもよい。「出力電圧が急激に低下したこと」は、出力電圧の傾きが所定のしきい値を超えたこと、所定時間の出力電圧の変化幅が所定のしきい値を超えたこと、出力電圧が所定幅変化するのに要した時間が所定のしきい値より短いこと、などを含む。これにより、オープン状態から正常状態の復帰を検出できる。
【0024】
保護回路は、停止時間の経過後、コンバータのスイッチングのデューティ比を緩やかに上昇させてもよい。これによりスイッチングの再開後に、駆動電流が緩やかに増加するため、より一層、過電流を抑制できる。
【0025】
保護回路は、停止時間の間、目標電流をゼロとし、停止時間の経過後、目標電流を緩やかに上昇させてもよい。
【0026】
保護回路は、コンバータの出力端子がショート状態から正常状態に復帰したことを検出すると、停止時間の間、コンバータのスイッチングを停止してもよい。
これにより、ショート状態から正常状態への復帰時に、スイッチングコンバータのスイッチング動作の再開を遅延させることにより、共振回路の電流が小さくなった後に、駆動電流が発生するため、過電流を抑制できる。
【0027】
保護回路は、コンバータの出力電圧が急激に上昇したときに、ショート状態から正常状態への復帰と判定してもよい。これにより、ショート状態から正常状態の復帰を検出できる。
【0028】
保護回路は、出力電圧を受ける微分回路またはハイパスフィルタを含んでもよい。保護回路は、微分回路またはハイパスフィルタの出力信号が所定値を超えると、正常状態への復帰と判定してもよい。
【0029】
保護回路は、一端が接地されたキャパシタと、キャパシタの他端と接続され、正常状態における前記目標電流を規定する目標電圧を印加する充電抵抗と、キャパシタと並列に設けられた放電スイッチと、を含んでもよい。正常状態への復帰が検出されると、放電スイッチはオンしてもよい。
【0030】
コンバータは降圧型であってもよい。点灯回路は、コンバータの入力電圧と出力電圧の電位差を所定のしきい値電圧と比較するオープン検出回路をさらに備えてもよい。
【0031】
本発明の別の態様は車両用灯具に関する。車両用灯具は、光源と、光源を駆動する上述のいずれかの点灯回路と、を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明のある態様によれば、オープン異常を適切に検出できる。また本発明のある態様によれば、過電流を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0035】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0037】
また当業者によれば、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の置換、トランジスタのPチャンネル(PNP型)とNチャンネル(NPN型)の入れかえ、電源と接地の天地反転が可能であることが理解される。
【0038】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る車両用灯具1の回路図である。車両用灯具1は、光源2および点灯回路10を備える。点灯回路10は、降圧コンバータ20、コントローラ22およびオープン検出回路40を備える。
【0039】
点灯回路10には、スイッチ6を介してバッテリ4からの電圧V
BATが供給される。降圧コンバータ20は、バッテリ電圧V
BATに応じた入力電圧V
INを降圧し、光源2に出力電圧V
OUTを供給する。降圧コンバータ20は、コンバータコントローラ22により、光源2に流れる駆動電流I
DRVが、光源2の目標光量を規定する目標値I
REFに近づくようにフィードバック制御される。降圧コンバータ20は、入力キャパシタC1、出力キャパシタC2、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、インダクタL1を含む。コントローラ22は、駆動電流I
DRVが目標値I
REFに近づくようにデューティ比が変化するパルス信号S
PWMを生成し、スイッチングトランジスタM1を駆動する。コントローラ22の制御方式は特に限定されず、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)であってもよいし、エラーアンプを用いたフィードバック制御であってもよい。
【0040】
オープン検出回路40は、降圧コンバータ20の入力電圧V
INと出力電圧V
OUTの電位差ΔVを所定のしきい値電圧V
THと比較する。そして、ΔV>V
THのとき正常と判定し、異常検出信号S1を第1レベル(たとえばハイレベル)とし、ΔV<V
THのときオープン異常と判定し、異常検出信号S1を第2レベル(たとえばローレベル)とする。
【0041】
以上が点灯回路10の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、
図2の点灯回路10の動作波形図である。時刻t0より前において車両用灯具1は正常であり、駆動電流I
DRVは目標量I
REFに安定化されている。このとき、出力電圧V
OUTはとある電圧レベルに安定化されている。
【0042】
時刻t0にオープン異常が発生すると駆動電流I
DRVが遮断されゼロとなる。コントローラ22は、駆動電流I
DRVを目標値I
REFに近づけるためにパルス信号S
PWMのデューティ比を増加させる。これに応答して出力電圧V
OUTは上昇し、やがて入力電圧V
INに到達する。オープン検出回路40は、V
INとV
OUTとの電位差ΔV=V
IN−V
OUTを監視し、時刻t1にΔV<V
THとなると、異常検出信号S1をローレベルとする。
【0043】
以上が点灯回路10の動作である。この点灯回路10によれば、降圧コンバータ20の入出力間の電位差ΔVにもとづいてオープン異常を検出できる。
【0044】
この点灯回路10を、光源2がレーザダイオードである車両用灯具1に使用した場合に、点灯回路10を低輝度モードに設定し、駆動電流I
DRVを微小とした場合であっても、オープン異常を適切に検出できる。あるいは点灯回路10を、光源2が直列接続された複数のLEDを含み、バイパススイッチにより点消灯を制御する車両用灯具に使用した場合にも、出力電圧V
OUTのダイナミックな変動にかかわらず、オープン異常を適切に検出できる。
【0045】
本発明は、
図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0046】
図4(a)、(b)は、車両用灯具1の具体的な構成例を示す回路図である。
図4(a)のオープン検出回路40aは、PNP型のバイポーラトランジスタ42、第1抵抗R1、ベース抵抗R3を含む。バイポーラトランジスタ42のエミッタは降圧コンバータ20の入力端子と接続され、そのベースは、ベース抵抗R3を介して降圧コンバータ20の出力端子と接続される。第1抵抗R1は、バイポーラトランジスタ42のコレクタと接地の間に設けられる。なお、第1抵抗R1を省略し、オープンコレクタの出力としてもよい。またベース抵抗R3を省略してもよい。
【0047】
バイポーラトランジスタ42のベースエミッタ間には、降圧コンバータ20の入出力間の電位差ΔVが入力される。正常時には電位差ΔVは十分に大きいため、バイポーラトランジスタ42はオン状態となり、異常検出信号S1は、ハイレベル(V
IN)となる。オープン異常が発生し、入出力間の電位差ΔVが、バイポーラトランジスタ42のベースエミッタ間のしきい値電圧(0.6〜0.7V)より小さくなると、バイポーラトランジスタ42がオフとなり、異常検出信号S1はローレベルとなる。つまりバイポーラトランジスタ42のオン、オフが、異常検出の有無に対応する。
図4(a)の車両用灯具1aによれば、電圧コンパレータが不要であるため、回路コストを下げることができる。
【0048】
図4(b)のオープン検出回路40bは、
図4(a)のバイポーラトランジスタ42を、PチャンネルのFET44に置換した構成と把握される。FET44のソースは降圧コンバータ20の入力端子と接続され、そのゲートは、ゲート抵抗R4を介して降圧コンバータ20の出力端子と接続される。第2抵抗R2は、FET44のドレインと接地の間に設けられる。クランプ素子46は、FET44のゲートソース間に設けられ、所定値を超えないようにゲートソース間電圧をクランプする。たとえばクランプ素子46は、ツェナーダイオード、ショットキーダイオードなどで構成することができる。
【0049】
FET44のゲートソース間には、降圧コンバータ20の入出力間の電位差ΔVが入力される。正常時には電位差ΔVは十分に大きいため、FET44はオン状態となり、異常検出信号S1は、ハイレベル(V
IN)となる。オープン異常が発生し、入出力間の電位差ΔVが、FETのしきい値電圧V
GS(TH)(たとえば1.5V)より小さくなると、FET44がオフとなり、異常検出信号S1はローレベルとなる。つまりFET44のオン、オフが、異常の有無に対応する。
図4(b)の車両用灯具1bによれば、電圧コンパレータが不要であるため、回路コストを下げることができる。
【0050】
図5(a)、(b)は、別の構成例の車両用灯具1cを示す回路図である。
図5(a)の車両用灯具1cにおいて、オープン検出回路40cは、電圧コンパレータ48を用いて構成される。電圧コンパレータ48は、入力電圧V
INを低電位側にV
THシフトした電圧と、出力電圧V
OUTを比較してもよい。電圧シフトV
THは、レベルシフタ49により導入される。
図5(b)は、レベルシフタ49の構成例を示す回路図である。たとえばレベルシフタ49は、抵抗R5および電流源50を含む。抵抗R5の一端は降圧コンバータ20の入力端子と接続され、その他端に電流源50が接続される。電流源50は所定の定電流I
Cを生成する。抵抗R5と電流源50の接続点には、V
IN−R5×I
Cの電圧が発生する。つまり、R5×I
CがV
THとなる。
図5(a)の車両用灯具1cによれば、電圧コンパレータを用いるため、コスト増と引き替えに、正確な電圧比較が可能となる。また複数の電圧コンパレータを含むコンパレータ回路を使用しており、電圧コンパレータが余っている場合には、コスト増加は発生しない。
【0051】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係る車両用灯具1dの回路図である。たとえば光源2と点灯回路10dの間にはコネクタ12が設けられ、光源2と点灯回路10dは着脱可能に接続される。点灯回路10dは、降圧コンバータ20d、コントローラ22および保護回路60を備える。なお第2の実施の形態で説明する技術は、第1の実施の形態で説明した技術と組み合わせて用いることができ、したがって
図6では省略されているが、点灯回路10dは、上述のオープン検出回路40をさらに備えることができる。
【0052】
点灯回路10dは、
図2の点灯回路10に加えて、出力インダクタL2を備える。出力インダクタL2は、出力キャパシタC2と光源2の間に挿入される。保護回路60は、降圧コンバータ20dの出力端子がオープン状態から正常状態に復帰したことを検出すると、停止時間τ1の間、コンバータ20dのスイッチングを停止する。
【0053】
たとえば保護回路60は、降圧コンバータ20dの出力電圧V
OUTにもとづいて、オープン状態から正常状態への復帰を検出してもよい。保護回路60は、停止時間τ1の経過後、コンバータ20dのスイッチングのデューティ比をゼロから緩やかに上昇させてもよい(ソフトスタート)。
【0054】
以上が点灯回路10dの基本構成である。続いてその動作を説明する。
図7は、
図6の点灯回路10dの動作波形図である。時刻t1より前においてコネクタ12はオープン状態である。オープン状態では駆動電流I
DRVがゼロとなる。コントローラ22は、フィードバック制御により、ゼロの駆動電流I
DRVを目標電流I
REFに近づけるために、大きなデューティ比でスイッチングトランジスタM1を駆動する。その結果、インダクタL1の電流が出力キャパシタC2に流れ込み、出力電圧V
OUTは正常時よりも高い電圧レベルをとる。
【0055】
時刻t1に、コネクタ12の外れが解消され、接触状態(すなわち正常状態)に復帰する。これにより出力キャパシタC2に蓄えられた過剰な電荷が、出力インダクタL2を介して光源2に供給される。出力インダクタL2は出力キャパシタC2とともにLC共振回路14を形成しており、制限された共振電流I
RESが光源2に流れることとなるため、過電流が抑制される。なお、出力インダクタL2が存在しない場合には、一点鎖線で示すように光源2に流れるランプ電流I
LAMPは制限されずに上昇するため、過電流となることに留意されたい。
【0056】
ランプ電流I
LAMPは、降圧コンバータ20dがフィードバック制御にもとづいて生成する駆動電流I
DRVと、共振回路14に流れる共振電流I
RESの合計である。共振電流I
RESは、出力キャパシタC2および出力インダクタL2が形成するループに流れ、したがってコントローラ22への電流検出信号V
ISには、共振電流I
RESは含まれない。したがってもし仮に、保護回路60が、オープン状態から正常状態への復帰時に、停止時間τ1を省略してスイッチングコンバータ20dのスイッチング動作を直ちに再開すると、共振電流I
RESが、フィードバック制御により生成される駆動電流I
DRVに重畳され、光源2に流れるランプ電流I
LAMPは過電流となりうる。
【0057】
これに対して本実施の形態では、保護回路60は、オープン状態から正常状態への復帰時に、スイッチングコンバータ20dのスイッチング動作を、停止時間τ1の経過後に再開する。停止時間τ1は、共振電流I
RESが十分に小さくなる緩和時間を考慮して定めればよい。これにより、共振回路14の共振電流I
RESが小さくなった後に、駆動電流I
DRVが発生するため、過電流を抑制できる。
【0058】
また、停止時間τ1の経過後のスイッチング動作の再開時に、ソフトスタート制御を行わなければ、インダクタL1、出力キャパシタC2、出力インダクタL2の共振により、過電流が発生するおそれがある。これに対して本実施の形態では、ソフトスタートによってコンバータ20dの出力電流I
DRVを緩やかに増加させることで、このような過電流を抑制することができる。
【0059】
続いて、
図6の点灯回路10dの具体的な構成例を説明する。
図8は、
図6の点灯回路10dの具体的な回路図である。コントローラ22は、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)のコントローラであり、電流センスアンプ70、ヒステリシスコンパレータ72、ドライバ74を備える。たとえばコンバータ20dが生成する駆動電流I
DRVの経路上に、検出抵抗R
Sが挿入される。電流センスアンプ70は、検出抵抗R
Sに生ずる電圧降下V
ISを増幅する。ヒステリシスコンパレータ72は、電圧降下V
ISを、自身の出力に応じて2値で変化するしきい値電圧V
H,V
Lと比較し、変調された制御パルスを生成する。しきい値V
H,V
Lは、駆動電流I
DRVの目標値I
REFを指示する基準電圧V
REFにもとづいて規定される。ドライバ74は、ヒステリシスコンパレータ72が生成する制御パルスにもとづいてスイッチングトランジスタM1を駆動する。なおコントローラ22の制御方式は、エラーアンプを用いたフィードバック制御であってもよい。
【0060】
図7に示したように、時刻t1においてオープン状態から正常状態に復帰すると、出力電圧V
OUTが瞬時に低下する。保護回路60は、この現象を利用して、正常状態の復帰を検出してもよい。すなわち保護回路60は、出力電圧V
OUTが急激に低下したときに、オープン状態から正常状態への復帰と判定してもよい。
【0061】
たとえば保護回路60は、第1微分回路62あるいはローパスフィルタを含むことができる。たとえば第1微分回路62の出力信号V
Aは、出力電圧V
OUTの下りスロープの傾きが大きくなるほど増加する。その後、出力信号V
Aは、第1微分回路62の内部の時定数TC1に応じた傾きで0に戻る。この時定数TC1によって、上述の停止時間τ1が規定される。
【0062】
目標電流コントローラ64は、第1微分回路62の出力V
Aに応じて、駆動電流I
DRVの目標値I
REFを規定する基準電圧V
REFを調節する。具体的には目標電流コントローラ64は、第1微分回路62の出力V
Aが所定のしきい値V
Bより低いとき、基準電圧V
REFを通常値V
NORMにセットする。目標電流コントローラ64は、第1微分回路62の出力V
Aがしきい値V
Bを超える状態では、基準電圧V
REFすなわち目標電流I
REFをゼロとする。これにより降圧コンバータ20dのスイッチングは停止する。
【0063】
目標電流コントローラ64は、第1微分回路62の出力V
Aがしきい値V
Bを下回ると、基準電圧V
REFすなわち目標電流I
REFを通常値V
NORMに向かって緩やかに増加させる。これにより停止時間τ1の経過後のソフトスタート制御が可能となる。
【0064】
図9は、
図8の点灯回路10dの動作波形図である。
図9にはコネクタ12の接点の復帰時の動作が示される。時刻t1にコネクタ12の接点が復帰すると、出力電圧V
OUTが急激に低下し、第1微分回路62の出力V
Aが上昇し、しきい値V
Bを超える。これにより基準電圧V
REFが通常値V
NORMからゼロに低下し、降圧コンバータ20dのスイッチングが停止する。
【0065】
そして第1微分回路62の内部の時定数TC1にしたがって電圧V
Aが低下していき、時刻t2にしきい値V
Bより低くなる。そうすると目標電流コントローラ64は基準電圧V
REFを緩やかに上昇させる。つまり時刻t1〜t2の遅延時間が、停止期間τ1となる。
【0066】
図10は、保護回路60の具体的な構成例を示す回路図である。第1微分回路62は、主として、バイポーラトランジスタQ11、キャパシタC21、抵抗R21を含む。この構成により、出力電圧V
OUTの下りスロープの傾きに応じた信号V
Aが生成される。第1微分回路62の時定数TC1は、抵抗R21とキャパシタC21で規定される。この第1微分回路62は、ハイパスフィルタと把握することもできる。
【0067】
目標電流コントローラ64は、主としてキャパシタC22、充電抵抗R22、放電スイッチQ12を含む。キャパシタC22の一端は接地される。充電抵抗R22は、基準電圧V
REFの通常値V
NORMを規定する電圧V
CNTを、キャパシタC22に印加する。放電スイッチQ12がオフのとき、キャパシタC22の電圧V
C22は、電圧V
CNTと等しい。キャパシタC22の電圧V
C22は、バッファ66によって、分圧回路R23,R24に印加され、基準電圧V
REFが生成される。
【0068】
第1微分回路62の出力信号V
A’は、NPN型バイポーラトランジスタである放電スイッチQ12のベースに入力される。第1微分回路62におけるトランジスタQ11のベース電圧V
Aがトランジスタのオン/オフのしきい値電圧(上述のしきい値)V
Bを下回り、第1微分回路62の出力信号V
A’が、ベースエミッタ間のしきい値V
BEを超えると、放電スイッチQ12がオンとなり、キャパシタC22の電圧V
C22がゼロ、つまり基準電圧V
REFがゼロとなる。放電スイッチQ12は、電圧の比較手段であるとともに、基準電圧V
REFをゼロリセットする機能を有する。
【0069】
トランジスタQ11のベース電圧V
Aがしきい値V
Bを上回るとトランジスタQ11がオフし、放電スイッチQ12はオフとなる。そうすると、キャパシタC22は抵抗R22を介して充電される。このとき、キャパシタC22の電圧V
C22は、CR時定数TC1で上昇していく。これにより上述のソフトスタートが実現できる。なお、トランジスタQ11はPNP型バイポーラトランジスタであり、そのエミッタに入力電圧V
INが供給されるため、入力電圧V
INを基準として動作する。したがって電圧V
Aがしきい値電圧V
Bを下回るとトランジスタQ11がオン、上回るとオフとなることに留意されたい。
【0070】
バッファ66の応答遅延が大きい場合、トランジスタQ13が追加される。トランジスタQ13は、信号V
Aがしきい値V
BE(=V
B)を超えるとオンとなり、分圧回路R23,R24のノードに生ずる基準電圧V
REFを直接ゼロにプルダウンする。なお、バッファ66が高速である場合、トランジスタQ13は省略することができ、さらには抵抗R23,R24を省略してもよい。
【0071】
(第2の実施の形態の変形例)
(変形例2.1)
上述の説明では、オープン状態から正常状態への復帰における過電流を抑制する技術を説明したが、この技術は、ショート状態から正常状態の復帰時において生ずる過電流の抑制にも利用可能である。この場合、保護回路60は、降圧コンバータ20dの出力端子がショート状態から正常状態に復帰したことを検出すると、停止時間τ2の間、降圧コンバータ20dのスイッチングを停止すればよい。停止期間τ2は、停止期間τ1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
図11は、ショート状態から正常状態への復帰を示す波形図である。ショート状態では、出力電圧V
OUTはゼロ付近に固定される。降圧コンバータ20が生成する駆動電流I
DRVは、ショート状態においても目標値I
REFに安定化される。時刻t1にショート状態から正常状態に復帰すると、出力電圧V
OUTは大きく跳ね上がる。そこで保護回路60は、降圧コンバータ20dの出力電圧V
OUTが急激に上昇したときに、ショート状態から正常状態への復帰と判定すればよい。保護回路60は上述の第1微分回路62に代えて、第2微分回路62s(たとえば
図12に図示)あるいはローパスフィルタを含むことができる。第2微分回路62sの出力信号は、出力電圧V
OUTの上りスロープの傾きが大きくなるほど増加する。その後、この出力信号は、第2微分回路62sの内部の時定数TC2に応じた傾きで0に戻る。この変形例によれば、ショート状態からの復帰の際の過電流を抑制できる。
【0073】
(変形例2.2)
さらにはオープン状態からの復帰と、ショート状態からの復帰の両方に対応するように回路を構成することができる。たとえばオープン用とショート用に、二系統の保護回路60を設けてもよい。あるいは、
図8において、オープン用の第1微分回路62と、ショート用の第2微分回路62sを2系統設け、目標電流コントローラ64を共通化してもよい。
【0074】
図12は、変形例2.2に係る保護回路60eの回路図である。保護回路60eは、
図10の保護回路60に加えて、キャパシタC23をさらに備える。キャパシタC23は、トランジスタQ12のベース抵抗R12、トランジスタQ13のベース抵抗R13とともにショート用の第2微分回路62sを形成する。この第2微分回路62sは、出力電圧V
OUTのポジティブエッジの傾きに応じた電圧V
C1,V
C2を生成する。トランジスタQ12、Q13は、第2微分回路62sの出力信号V
C1,V
C2が所定値V
Bを超えるとターンオンする。
【0075】
第2微分回路62sの出力信号V
C1,V
C2は出力電圧V
OUTの上りスロープの傾きが大きくなるほど増加する。その後、出力信号V
C1,V
C2は第2微分回路62sの内部の時定数TC2に応じた傾きで0に戻る。この時定数TC2によって、ショート復帰時の停止時間τ2が規定される。
【0076】
図12の保護回路60eによれば、オープン状態から正常状態の復帰、ショート状態から正常状態の復帰の両方において、過電流を抑制できる。
図12から第1微分回路62を省略すれば、ショート状態から正常状態への復帰における過電流が抑制できる。
【0077】
(用途)
最後に、車両用灯具1の用途を説明する。
図13は、第1あるいは第2の実施の形態に係る車両用灯具1を備えるランプユニット(ランプアッシー)500の斜視図である。ランプユニット500は、透明のカバー502、ハイビームユニット504、ロービームユニット506、筐体508を備える。上述の車両用灯具1は、たとえばハイビームユニット504に用いることができる。ハイビームユニット504に代えて、あるいはそれに加えて、ロービームユニット506に車両用灯具1を用いてもよい。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。