特許第6687437号(P6687437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687437
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】部分めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/02 20060101AFI20200413BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20200413BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20200413BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C25D5/02 G
   C25D5/12
   C25D7/00 H
   C25D7/06 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-60489(P2016-60489)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172008(P2017-172008A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】足達 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】堤 秀人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太郎
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−097322(JP,A)
【文献】 特開2013−100593(JP,A)
【文献】 特開2003−342782(JP,A)
【文献】 特開平11−240653(JP,A)
【文献】 特開平11−330334(JP,A)
【文献】 特開2014−192470(JP,A)
【文献】 特開昭57−067194(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069689(WO,A1)
【文献】 特開2014−082312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状の被めっき材の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の各々の側面から幅方向に離間した位置にそれぞれ一列に配置されるように、被めっき材の一方の面から他方の面まで貫通する複数の位置決め穴を互いに離間して形成する位置決め穴形成工程と、これらの位置決め穴と被めっき材の長手方向に延びる各々の側面との間隔が所定の間隔になるように、被めっき材の幅方向両側の周縁部の一部を長手方向に沿って切断する周縁部切断工程と、この切断後の被めっき材の複数の位置決め穴とそれぞれ嵌合する複数の位置決めピンが一方の面から突出して形成されたマスク部材の一方の面に被めっき材を密着させてマスク部材の位置決めピンを被めっき材の位置決め穴に嵌合させ、マスク部材の複数の位置決めピンのそれぞれの列から所定の間隔だけ幅方向内側に離間してそれぞれ一列に配置されるようにマスク部材に互いに離間して形成された複数の開口部の各々を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の他方の面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきする部分めっき工程と、この部分めっきしためっき材の長手方向に延びる両側の側面から等距離になるようにめっき材を切断して分離する分離工程とを備えたことを特徴とする、部分めっき方法。
【請求項2】
前記マスク部材が円筒形の部材であり、前記マスク部材の一方の面および他方の面がそれぞれ外周面および内周面であることを特徴とする、請求項1に記載の部分めっき方法。
【請求項3】
前記マスク部材が円周方向に回転可能であり、前記被めっき材を前記マスク部材の外周面に密着させて搬送しながら、前記めっき材上の前記マスク部材の開口部に対向する部分をめっきすることを特徴とする、請求項2に記載の部分めっき方法。
【請求項4】
前記開口部が矩形であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項5】
前記マスク部材が非導電性部材からなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項6】
前記周縁部切断工程と前記部分めっき工程との間に、前記被めっき材の全面に下地めっき層を形成する下地めっき工程を行うことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項7】
前記部分めっき工程と前記分離工程との間に、前記被めっき材の幅方向両側の周縁部に周縁部めっき層を形成することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の部分めっき方法。
【請求項8】
前記被めっき材の幅方向両側の周縁部の一部の切断が、プレス加工によって行われることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の部分めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分めっき方法に関し、特に、長尺の帯板状の被めっき材上の所定の部分をめっきする、部分めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子などの材料として使用される長尺の帯板状の被めっき材の所定の部分をめっきする方法として、円周方向に回転可能な略円筒形の非導電性部材からなるマスク部材の外周面に長尺の帯板状の被めっき材を密着させて搬送しながら、マスク部材に形成された複数の開口部の各々を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の内周面側に配置されたアノードとカソードとしての被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の各々の開口部に対向する部分をめっきする方法が知られている。
【0003】
このような部分めっき方法に使用するマスク部材として、外周部に複数の位置決めピンが配置され、これらの位置決めピンが金属部材と係合して、金属部材を外周部に沿って搬送するドラム治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなドラム治具を使用して金属部材を部分めっきすると、金属部材がドラム治具の位置決めピンと係合して搬送されるので、金属部材上の所定の位置に精度良くめっきすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−100593号公報(段落番号0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のドラム治具のようなマスク部材を使用する部分めっき方法では、リール・ツー・リールめっき装置により、1ラインで1本の長尺の帯板状の被めっき材に部分めっきしているため、生産性が必ずしも十分であるとはいえず、長尺の帯板状の被めっき材を高い生産性で部分めっきすることが望まれている。
【0006】
そのため、1ラインで2本分の幅の長尺の帯板状の被めっき材を部分めっきした後に、長手方向に沿って半分に切断して、2つの帯板状のめっき材を作製することが考えられる。
【0007】
しかし、従来の部分めっき方法では、リール・ツー・リールめっき装置により、1ラインで2本分の幅の長尺の帯板状の被めっき材を部分めっきした後、長手方向に沿って半分に切断して、2つの帯板状のめっき材を作製すると、めっき材上の幅方向の部分めっき皮膜の位置精度が悪くなるおそれがある。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、帯板状の被めっき材に精度良く且つ高い生産性で部分めっきすることができる、部分めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、帯板状の被めっき材の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の各々の側面から幅方向に離間した位置にそれぞれ一列に配置されるように、被めっき材の一方の面から他方の面まで貫通する複数の位置決め穴を互いに離間して形成し、これらの位置決め穴と被めっき材の長手方向に延びる各々の側面との間隔が所定の間隔になるように、被めっき材の幅方向両側の周縁部の一部を長手方向に沿って切断し、この切断後の被めっき材の複数の位置決め穴とそれぞれ嵌合する複数の位置決めピンが一方の面から突出して形成されたマスク部材の一方の面に被めっき材を密着させてマスク部材の位置決めピンを被めっき材の位置決め穴に嵌合させ、マスク部材の複数の位置決めピンのそれぞれの列から所定の間隔だけ幅方向内側に離間してそれぞれ一列に配置されるようにマスク部材に互いに離間して形成された複数の開口部の各々を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の他方の面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきし、このようにして得られためっき材の長手方向に延びる両側の側面から等距離になるようにめっき材を切断して分離することにより、帯板状の被めっき材に精度良く且つ高い生産性で部分めっきすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による部分めっき方法は、帯板状の被めっき材の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の各々の側面から幅方向に離間した位置にそれぞれ一列に配置されるように、被めっき材の一方の面から他方の面まで貫通する複数の位置決め穴を互いに離間して形成する位置決め穴形成工程と、これらの位置決め穴と被めっき材の長手方向に延びる各々の側面との間隔が所定の間隔になるように、被めっき材の幅方向両側の周縁部の一部を長手方向に沿って切断する周縁部切断工程と、この切断後の被めっき材の複数の位置決め穴とそれぞれ嵌合する複数の位置決めピンが一方の面から突出して形成されたマスク部材の一方の面に被めっき材を密着させてマスク部材の位置決めピンを被めっき材の位置決め穴に嵌合させ、マスク部材の複数の位置決めピンのそれぞれの列から所定の間隔だけ幅方向内側に離間してそれぞれ一列に配置されるようにマスク部材に互いに離間して形成された複数の開口部の各々を介して、被めっき材にめっき液を供給するとともに、マスク部材の他方の面側に配置された電極と被めっき材との間に電流を流して、被めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきする部分めっき工程と、この部分めっきしためっき材の長手方向に延びる両側の側面から等距離になるようにめっき材を切断して分離する分離工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この部分めっき方法において、マスク部材が略円筒形の部材であり、マスク部材の一方の面および他方の面がそれぞれ外周面および内周面であるのが好ましい。この場合、マスク部材が円周方向に回転可能であり、被めっき材をマスク部材の外周面に密着させて搬送しながら、めっき材上のマスク部材の開口部に対向する部分をめっきするのが好ましい。また、開口部が略矩形であるのが好ましく、マスク部材が非導電性部材からなるのが好ましい。また、周縁部切断工程と部分めっき工程との間に、被めっき材の全面に下地めっき層を形成する下地めっき工程を行うのが好ましい。さらに、部分めっき工程と分離工程との間に、被めっき材の幅方向両側の周縁部に周縁部めっき層を形成してもよい。また、被めっき材の幅方向両側の周縁部の一部の切断は、プレス加工によって行われるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯板状の被めっき材に精度良く且つ高い生産性で部分めっきすることができる、部分めっき方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による部分めっき方法の実施の形態により製造される長尺の帯板状のめっき材の一部を示す平面図である。
図2】本発明による部分めっき方法の実施の形態に使用する部分めっき装置の側面を示す図である。
図3図2の部分めっき装置を水平面で切断して示す断面図である。
図4図2の部分めっき装置をIV−IV線で切断して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明による部分めっき方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、部分めっき方法の実施の形態により製造される(半分に分離する前の)帯板状のめっき材の一部を示している。
【0016】
図1に示すように、長尺の帯板状の被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部12の各々の側面から幅方向に離間した位置に、それぞれ一列に且つ各々の側面と平行に配置されるように、被めっき材10の一方の面から他方の面まで貫通する所定の形状(図示した実施の形態では略円柱形)の複数の位置決め穴10aが、互いに所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間して形成されている。また、被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部12の各々の側面には、所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間した略V字形の複数の切欠き部10bが形成されている。また、被めっき材10の全面には、下地めっき層14としてNiめっき皮膜が形成されている。また、被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部12の間の中心部には、被めっき材10の長手方向に延びる(図1において点線で示す)中心軸線(各々の側面から等距離の線)の両側に、それぞれ一列に配置され且つ被めっき材10の長手方向に離間して配置されるように、略矩形の複数の部分めっき層16としてAuめっき皮膜が形成されている。また、被めっき材10の長手方向に延びる両側の周縁部12には、下地めっき皮膜14としてのNiめっき皮膜の上に、周縁部めっき層としてSnめっき皮膜が形成されている。
【0017】
このようなめっき材は、本発明による部分めっき方法の実施の形態により製造することができる。本発明による部分めっき方法の実施の形態では、位置決め穴形成工程と、周縁部切断工程と、下地めっき工程と、部分めっき工程と、周縁部めっき工程と、分離工程とをこの順で行う。
【0018】
(位置決め穴形成工程)
この工程では、長尺の帯板状の被めっき材(ワーク)10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部12の各々の側面から離間した位置に、それぞれ一列に且つ各々の側面と平行に配置されるように、被めっき材の一方の面から他方の面まで貫通する複数の位置決め穴10aを互いに離間して形成する。この位置決め穴10aの形成は、被めっき材10を(順送)金型によりプレス加工して行うことができる。
【0019】
(周縁部切断工程)
この工程では、被めっき材10の位置決め穴10aと長手方向に延びる各々の側面との間隔が所定の間隔になるように、被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の一部(幅方向両端部)を長手方向に沿って(幅0.5〜1mm程度)切断する。また、被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部12の各々の側面に、長手方向に所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間した略V字形の複数の切欠き部10bを形成する。この被めっき材10の幅方向両端部の切断と切欠き部10bの形成は、被めっき材10を(順送)金型によりプレス加工して同時に行うことができる。なお、帯板材の幅方向周縁部の切断は、一般にスリッタにより行われているが、長尺の帯板状の被めっき材の幅方向周縁部を精度良く切断するためには、(順送)金型によりプレス加工して行うのが好ましい。被めっき材の幅方向の寸法精度は、(被めっき材を材料として使用する端子などの種類によるが)±30μm以下(好ましくは±20μm以下、さらに好ましくは±15μm以下)であることが要求される場合があり、スリッタの加工精度は±50μm以上程度であるため、精度良く切断することができる(順送)金型によりプレス加工して行うのが好ましい。
【0020】
(下地めっき工程)
この工程では、被めっき材10の(表裏の)全面に下地めっき層14としてNiめっき層を形成する。この下地めっき層14としてのNiめっき皮膜は、電気めっきにより、Niめっきを行うことによって形成することができる。
【0021】
(部分めっき工程)
この工程では、図2図4に示すような部分めっき装置を使用して部分めっき(スポットめっき)を行う。図2は本発明による部分めっき方法の実施の形態に使用する部分めっき装置の側面を示す図であり、図3図2の部分めっき装置を水平面で切断して示す断面図、図4図3の部分めっき装置をIV−IV線で切断して示す拡大断面図である。なお、図2において、マスク部材上に配置される前後の被めっき材を見易くするために、被めっき材の方向を変える支持ロールをマスク部材の外側に示している。
【0022】
図2図4に示すように、部分めっき装置100のマスク部材102の一方の面に被めっき材10を密着させて配置した後、マスク部材102の複数の開口部102cの各々を介して、被めっき材10にめっき液を供給するとともに、マスク部材102の他方の面側に配置された電極(アノード)104と被めっき材10との間に電流を流して、被めっき材10上のマスク部材102の各々の開口部102cに対向する部分をめっきするようになっている。
【0023】
マスク部材102は、円周方向に回転可能な略円筒形の(ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂などの)非導電性部材からなるマスク部材本体(ドラム形マスク部材本体)からなり、このマスク部材本体の外周面(一方の面)には、被めっき材支持部として上下方向略中央部に全周にわたって延びる凹部102aが形成され、この凹部102aの底面に被めっき材10が密着して配置されるようになっている。このマスク部材102の凹部102aの底面の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の各々には、円周方向に所定の間隔(位置決め穴10aと同一の間隔)で離間して一列に配置された所定の形状(図示した実施の形態では位置決め穴10aより僅かに小さい略円柱形)の複数の位置決めピン102bが突起しており、マスク部材102の外周面(一方の面)に被めっき材10が密着して配置される際に、被めっき材10の位置決め穴10aと順次嵌合するようになっている。また、マスク部材102の凹部102aの底面には、それぞれの列の位置決めピン102bから幅方向内側に所定の間隔だけ離間した領域(マスク部材102の凹部102aの円周方向に延びる中心軸線に対応する線から幅方向両側に所定の間隔だけ離間した領域)に、それぞれ一列に配置され且つ円周方向に所定の間隔(図示した実施の形態では略等間隔)で離間して配置された所定の形状(図示した実施の形態では略矩形)の複数の開口部102cがマスク部材102を貫通して形成されている。なお、マスク部材102の位置決めピン102bと嵌合する被めっき材10の位置決め穴10aは、被めっき材10の幅方向両側の側面から所定の間隔で精度良く配置されており、マスク部材102の開口部102cも位置決めピン102bから幅方向内側に所定の間隔で離間して精度良く形成することができる。
【0024】
図3において矢印Aで示す方向に搬送された被めっき材10は、回転可能な入口側支持ロール108により方向を変えて、マスク部材102の外周面に密着すると、被めっき材10の位置決め穴10aがマスク部材102の位置決めピン102bと嵌合して、マスク部材102を矢印Bで示す方向に回転させた後、回転可能な出口側支持ロール110により方向を変えて矢印Aで示す方向に搬送されるようになっている。
【0025】
このようにマスク部材102の外周面に被めっき材10を密着させて配置している間に、マスク部材102の他方の面(内周面)側に配置されためっき液噴流部106の一対のスリット106aから、マスク部材102のそれぞれの列の各々の開口部102cを介して、被めっき材10にめっき液が供給されるとともに、マスク部材102の内周面側に配置された電極(アノード)104とカソードとしての被めっき材10との間に電流が流れると、被めっき材10上のマスク部材102の各々の開口部102cに対向する部分に、部分めっき層16として(Auめっき皮膜などの)めっき皮膜が形成されるようになっている。
【0026】
めっき液噴流部106は、(断面が略扇形の)略半円筒形の非導電性部材からなり、マスク部材102の内周面の一部(被めっき材支持部12bの内周面の略半分)に対向するように配置されている。めっき液噴流部106の一対のスリット106aは、めっき液噴流部106の内周面から外周面まで貫通しており、(図示しない)めっき液供給部により内周面側から外周面側にめっき液を噴射して供給することができるようになっている。
【0027】
アノード104は、断面が扇形の導電性部材からなり、めっき液噴流部106のそれぞれのスリット106aの内壁の上下の面に取り付けられている。なお、めっき液噴流部106のそれぞれのスリット106aの内壁に取り付けられたアノード104に流れる電流をそれぞれ別個の整流器で変化させることにより、マスク部材102のそれぞれの列の開口部102cを介して形成される(Auめっき皮膜などの)めっき皮膜の厚さを変えることができる。
【0028】
(周縁部めっき工程)
この工程では、被めっき材10の周縁部12に周縁部めっき層としてSnめっき皮膜を形成する。この周縁部めっき層としてのSnめっき皮膜の形成は、被めっき材10の一方の側面(下側に配置した側面)から一定の幅の部分(一方の側面側の周縁部)をSnめっき液に浸漬して、電気めっきによりSnめっき皮膜を形成した後、被めっき材10を反転させて他方の側面を下側に配置させ、その他方の側面から一定の幅の部分(他方の側面側の周縁部)をSnめっき液に浸漬して、電気めっきによりSnめっき皮膜を形成することによって行うことができる。
なお、上述した下地めっき層、部分めっき層および周縁部めっき層の形成は、リール・ツー・リールめっき装置により、1ライン、1パスで行うことができる。
【0029】
(分離工程)
この工程では、上記のめっき後のめっき材の両側面を基準として、めっき材の両側面から等距離で長手方向に延びる直線(図1において点線で示す長手方向の中心軸線)に沿ってスリッタによりめっき材を半分に切断して分離する。なお、マスク部材102の位置決めピン102bと嵌合する被めっき材10の位置決め穴10aが、被めっき材10の幅方向両側の側面から所定の間隔で精度良く配置され、マスク部材の開口部102cも位置決めピン102bから幅方向内側に所定の間隔で離間して精度良く形成され、めっき後のめっき材の両側面から等距離で長手方向に延びる直線に沿ってめっき材を半分に切断して分離しているので、分離した2つのめっき材の各々に精度良く部分めっきすることができる。
【0030】
上述したように、本発明による部分めっき方法の実施の形態では、長尺の帯板状の被めっき材10の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部に形成された複数の位置決め穴10aの位置を基準として、被めっき材10の幅方向両側の周縁部の一部を長手方向に沿って切断し、被めっき材10の複数の位置決め穴10aに嵌合するマスク部材102の複数の位置決めピン102bを基準として形成された開口部102cを介して、被めっき材10のマスク部材の開口部102cに対向する部分をめっきして得られためっき材10の長手方向に延びる両側の側面を基準として、めっき材を切断して分離しているので、リール・ツー・リールめっき装置により、1ラインで2本分の幅の長尺の帯板状の被めっき材を部分めっきした後に、長手方向に沿って半分に切断して、2つの帯板状のめっき材を作製しても、2つの帯板状のめっき材の幅方向の寸法が、1本の長尺の帯板状の被めっき材を部分めっきした場合に得られるめっき材の幅方向の寸法と同等になるように、2つの帯板状のめっき材を十分な精度で得ることができるとともに、2つの帯板状のめっき材の各々に幅方向に十分な位置精度で部分めっき皮膜を形成することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明による部分めっき方法の実施例について詳細に説明する。
【0032】
まず、幅54.0mm(−0.1mm〜+0mm)、厚さ0.2mmの長尺の帯板状のCuからなる圧延板を用意した。
【0033】
次に、順送金型を使用したプレス加工により、この圧延板の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の一方の周縁部の側面から離間した位置に、それぞれ一列に且つその側面と平行に配置されるように、直径1.5mmの複数の位置決め穴を長手方向のピッチ(隣接する位置決め穴の中心の間隔)8mmで等間隔に打ち抜いた。なお、圧延板の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の一方の周縁部の位置決め穴は、それぞれの中心がその周縁部の側面から約2.1mm離間するように形成し、他方の周縁部の位置決め穴は、一方の周縁部の位置決め穴のそれぞれの中心から49mm離間した位置に形成した。
【0034】
次に、上記の順送金型を使用したプレス加工により、圧延板のそれぞれの位置決め穴の中心と長手方向に延びる各々の側面との間隔がそれぞれ1.5mmになるように、圧延版の長手方向に延びる幅方向両側の周縁部の一部を長手方向に沿って切断することにより、幅52.0mm(±0.02mm)の帯板状の圧延板(1次プレス品)を被めっき材10として用意した。
【0035】
次に、リール・ツー・リール方式の連続めっきラインにおいて、被めっき材を搬送しながら、前処理として、アルカリ脱脂し、電解脱脂し、水洗し、硫酸で酸洗した後、被めっき材上に下地めっき層、部分めっき層および周縁部めっき層の形成をこの順で1ライン、1パスで行った。
【0036】
下地めっき層の形成では、電流密度9A/dmで電気めっきを行うことにより、被めっき材の全面に下地めっき層としてNiめっき皮膜を形成した。
【0037】
部分めっき層(スポット状のAuめっき皮膜)の形成では、図2図4の部分めっき装置100と同様の部分めっき装置を使用し、マスク部材102として、(マスク部材の円周方向の長さ2.0mm×幅方向の長さ2.5mmの大きさの)略矩形の各々の開口部102cが(幅方向の中心が被めっき材10のそれぞれの周縁部の側面から20mm離間した位置に)互いに離間して形成された略円筒形のPVCからなるマスク部材を使用して、電流密度25A/dmで電気めっきを行うことにより、被めっき材10の一方の面の各々の開口部102cに対向する部分にAuめっき皮膜を形成した後、図2図4の部分めっき装置100と同様の部分めっき装置を被めっき材10の他方の面側に配置させ、マスク部材102として、(マスク部材の円周方向の長さ1.0mm×幅方向の長さ2.0mmの大きさの)略矩形の各々の開口部102c(幅方向の中心が被めっき材10のそれぞれの周縁部の側面から15mm離間した位置に)互いにが離間して形成された略円筒形のPVCからなるマスク部材を使用して、電流密度20A/dmとした以外は、上記と同様の方法により、被めっき材10の他方の面の各々の開口部102cに対向する部分にAuめっき皮膜を形成した。
【0038】
周縁部めっき層の形成では、被めっき材10の一方の側面(下側に配置した側面)から10mmの幅の部分(一方の側面側の周縁部)をSnめっき液に浸漬して、電流密度12A/dmで電気めっきを行うことによってSnめっき皮膜を形成した後、被めっき材10を反転させて他方の側面を下側に配置させ、その他方の側面から10mmの幅の部分(他方の側面側の周縁部)をSnめっき液に浸漬して、電流密度12A/dmで電気めっきを行うことによってSnめっき皮膜を形成した。
【0039】
次に、被めっき材10の両側面を基準として、被めっき材10の両側面から等距離で長手方向に延びる直線に沿って、スリッタにより被めっき材10を半分に切断した。
【0040】
このようにして得られた2つの部分めっき材について、蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSFT−110A)により、2つの部分めっき材の両面のAuめっき皮膜の中央部の膜厚を測定したところ、一方の部分めっき材のAuめっき皮膜の厚さの平均値は、他方の部分めっき材のAuめっき皮膜の厚さの平均値と略同一であった。また、2つの部分めっき材の幅は26.0mm(±0.02mm)であり、2つの部分めっき材を精度良く切断して分離することができるとともに、2つの部分めっき材の各々に幅方向に精度良くAuめっき皮膜を形成することができた。
【符号の説明】
【0041】
10 被めっき材
10a 位置決め穴
10b 切欠き
12 周縁部
14 下地めっき層
16 部分めっき層
100 部分めっき装置
102 マスク部材
102a 凹部(被めっき材支持部)
102b 位置決めピン
102c 開口部
104 アノード
106 めっき液噴流部
106a スリット
108 入口側支持ロール
110 出口側支持ロール
図1
図2
図3
図4