特許第6687442号(P6687442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687442ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸溶液、およびポリイミドの利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687442
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド酸溶液、およびポリイミドの利用
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   C08G73/10
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-64189(P2016-64189)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-179000(P2017-179000A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】中山 博文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真理
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/113647(WO,A1)
【文献】 特開2002−161136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73、C08L、C08J5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)のくり返し単位で表されるポリアミド酸であって、
構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含み、
前記(1)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が97/3〜80/20の範囲であることを特徴とするポリアミド酸。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド酸と有機溶媒とを含有するポリアミド酸溶液。
【請求項3】
請求項に記載のポリアミド酸溶液を支持体に塗工して得られたことを特徴とするポリイミドの製造方法。
【請求項4】
一般式(5)で表されるポリイミドであって
【化2】
構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含み、
前記(5)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が97/3〜80/20の範囲であることを特徴とするポリイミド。
【請求項5】
膜厚が10〜15μmのときの波長400nmにおける光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項に記載のポリイミド。
【請求項6】
膜厚が10〜15μmのときの100〜300℃における熱膨張係数が20ppm/K以下であることを特徴とする請求項4または5に記載のポリイミド。
【請求項7】
ガラス転移温度が300℃以上であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のポリイミド。
【請求項8】
無機層との90度ピール強度が0.03N/cm以上であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のポリイミド。
【請求項9】
膜厚が10〜15μmのときのCutoff波長が340nm以上であることを特徴とする請求項いずれか一項に記載のポリイミド。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する基板。
【請求項11】
請求項のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する光学材料。
【請求項12】
請求項のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する画像表示装置。
【請求項13】
請求項のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド酸、ポリイミド、およびポリアミド酸溶液に関する。本発明は、さらに、ポリイミドを用いた電子デバイス材料、TFT基板、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター、印刷物、光学材料、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3−Dディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、透明導電膜基板等、現在ガラスが使用されている部分の代替材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶、有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されている。そこでこれらのデバイスに用いられているガラス基板に代えて、薄型化、軽量化、フレキシブル化が可能なプラスチックフィルム基板が検討されている。
【0003】
これらのデバイスでは、基板上に様々な電子素子、例えば、薄膜トランジスタや透明電極等が形成されており、これらの電子素子の形成には高温プロセスが必要である。そのため、プラスチックフィルム基板には高温プロセスに適応できるだけの十分な耐熱性が必要とされる。また無機材料からなるこれらの電子素子をフィルム上に形成した場合、無機材料とフィルムの線熱膨張係数の違いにより、無機素子の形成後フィルムが反ったり、更には、無機素子が破壊されてしまう恐れがあった。このため、耐熱性を有しながら、無機材料と同等の線熱膨張係数を有する材料が望まれていた。
【0004】
さらに、表示素子(液晶、有機ELなど)から発せられる光がプラスチックフィルム基板を通って出射されるような場合(例えば、ボトムエミッション型の有機ELなど)、プラスチックフィルム基板には透明性が必要となる。特に、可視光領域である400nm以下の波長領域での光透過率が高いことが要求される。
【0005】
これらデバイスの作製プロセスはバッチタイプとロール・トゥ・ロールタイプに分けられる。ロール・トゥ・ロールの作製プロセスを用いる場合には、新たな設備が必要となり、さらに回転と接触に起因するいくつかの問題を克服しなければならない。一方、バッチタイプは、ガラス基板上にコーティング樹脂溶液を塗布、乾燥し、基板形成した後、剥がすというプロセスになる。そのため、バッチタイプは、現行TFT等のガラス基板用プロセス設備を利用することができるため、コスト面で優位である。
しかし、バッチタイプではガラス基板とガラス基板上に形成した樹脂基板との密着性が乏しいと、製造プロセスに適応できないことが考えられる。
【0006】
このような背景から、既存のバッチプロセス対応が可能で、耐熱性、低熱膨張性、透明性、さらにはガラスなどの無機基板との密着性に優れた材料の開発が強く望まれている。
上記の要求を満たす材料として、耐熱性に優れることが知られているポリイミド系材料が検討されている。透明性が高く、さらに低熱膨張性を示すポリイミドを得ようとする場合、剛直な構造のモノマーや脂環式モノマーが一般に用いられている(特許文献1、2)。また、シランカップリング剤を用いることで無機基板との密着性が向上することが知られている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2002−161136号公報(2002年6月4日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2012−41530号公報(2012年3月1日公開)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2014−9305号公報(2014年1月20日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3のいずれにも、透明性、耐熱性、低熱膨張性に優れ、さらには、無機基板との密着性にすぐれるポリイミドは記載されていない。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、耐熱性、低熱膨張性、透明性に優れ、さらに無機基板との密着性を示すポリイミド、およびその前駆体としてのポリアミド酸を得ることを目的とする。さらに、当該ポリイミド、およびポリアミド酸を用いて耐熱性および透明性の要求の高い製品又は部材を提供することを目的とする。特に、本発明のポリイミド、およびポリアミド酸を、ガラス、金属、金属酸化物及び単結晶シリコン等の無機物表面に形成する用途に適用した製品、及び部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、耐熱性、低熱膨張性、および透明性に優れ、さらには無機基板との優れた密着性を示すポリイミドを得るためには、骨格中に剛直な構造および脂環構造を導入し、さらにはパラ芳香族エステル内包モノマーを併用することが有効であることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は下記[1]〜[17]に関する。
[1]一般式(1)のくり返し単位で表されるポリアミド酸であって、
構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含むことを特徴とするポリアミド酸。
【0012】
【化1】
【0013】
[2]前記(1)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が99/1〜1/99の範囲であることを特徴とする[1]に記載するポリアミド酸。
【0014】
[3]前記(1)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が99/1〜70/30の範囲であることを特徴とする[2]に記載するポリアミド酸。
【0015】
[4][1]から[3]のいずれか一項に記載のポリアミド酸と有機溶媒とを含有するポリアミド酸溶液。
【0016】
[5][4]に記載のポリアミド酸溶液を支持体に塗工して得られたことを特徴とするポリイミドの製造方法。
【0017】
[6]一般式(5)で表されるポリイミドであって
【0018】
【化2】
【0019】
構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含むことを特徴とするポリイミド。
【0020】
[7]前記(5)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が99/1〜1/99の範囲であることを特徴とする[6]に記載するポリイミド。
【0021】
[8]前記(5)で表される構成単位A中の少なくとも80mol%以上が前記(2)と前記(3)で占められ、前記(2)/前記(3)で表されるモル比が99/1〜70/30の範囲であることを特徴とする[7]に記載するポリイミド。
【0022】
[9]膜厚が10〜15μmのときの波長400nmにおける光透過率が50%以上であることを特徴とする[6]から[8]のいずれか一項に記載のポリイミド。
【0023】
[10]膜厚が10〜15μmのときの100〜300℃における熱膨張係数が20ppm/K以下であることを特徴とする[6]〜[9]のいずれか一項に記載のポリイミド。
【0024】
[11]ガラス転移温度が300℃以上であることを特徴とする[6]〜[10]のいずれか一項に記載のポリイミド。
【0025】
[12]無機層との90度ピール強度が0.03N/cm以上であることを特徴とする[6]〜[11]のいずれか一項に記載のポリイミド。
【0026】
[13]膜厚が10〜15μmのときのCut off波長が340nm以上であることを特徴とする請求項[6]〜[12]いずれか一項に記載のポリイミド。
【0027】
[14][6]〜[13]のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する基板。
【0028】
[15][6]〜[13]のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する光学材料。
【0029】
[16][6]〜[13]のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する画像表示装置。
【0030】
[17][6]〜[13]のいずれか一項に記載のポリイミドを含有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0031】
上記本発明に係るポリアミド酸を用いて製造されるポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性、および透明性に加えて、無機基板との密着性を有する。そのため、本発明に係るポリイミド、および本発明に係るポリアミド酸は、耐熱性、低熱膨張性、および透明性、無機基板との密着性を有することが必要とされる部材用のフィルムや基板として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下において本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明にかかるポリアミド酸は、一般式(1)のくり返し単位で表されるポリアミド酸であって、構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含む。
【0034】
【化3】
【0035】
一般式(1)中のBは低線熱膨張性の観点から1,4−シクロヘキサンジアミン残基のトランス体であることが望ましい。また、透明性の観点から(4)は50mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上が望ましい。
【0036】
また特性に影響を与えない範囲であれば任意のジアミンを共重合させることが出来る。例えば1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4’−アミノフェニル−4−アミノベンゼン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、m−トリジン、o−トリジン、4,4’−ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、2−(4−アミノフェニル)−6−アミノベンゾオキサゾール、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノ−3,3’ジヒドロキシビフェニル、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いることが出来る。
【0037】
一般式(1)中のAは低熱膨張性の観点から、前記(2)と前記(3)を少なくとも80mol%以上含み、無機基板との密着性の観点から、前記(2)/前記(3)のモル比が99/1〜1/99であることが好ましく、さらに好ましくは1/99〜30/70、より好ましくは5/95〜20/80であることが望ましい。
【0038】
また特性に影響を与えない範囲であれば任意の酸二無水物を共重合させることが出来る。例えばピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2’−オキソジスピロ[2.2.1]ヘプタン−2,1’’−シクロヘプタン−3,2’’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,5’−6,6’−テトラカルボン酸二無水物及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いることが出来る。
【0039】
ガラス等の支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、電子素子等を形成して基板形成した後、剥がすという、バッチタイプのデバイス作製プロセスにおいては、支持体とポリイミドとの間の密着性が良いことが必要である。
【0040】
本発明にかかるポリイミドは一般式(5)で表されるくり返し単位からなるポリイミドであって、構成単位のうち、一般式中Aが(2)と(3)を含み、B中に少なくとも50mol%以上(4)を含む。
【0041】
【化4】
【0042】
一般式(5)中のBは低線熱膨張性の観点から1,4−シクロヘキサンジアミン残基のトランス体であることが望ましい。また、透明性の観点から(4)は50mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上が望ましい。
【0043】
また特性に影響を与えない範囲であれば任意のジアミンを共重合させることが出来る。例えば1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4’−アミノフェニル−4−アミノベンゼン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、m−トリジン、o−トリジン、4,4’−ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、2−(4−アミノフェニル)−6−アミノベンゾオキサゾール、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノ−3,3’ジヒドロキシビフェニル、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いることが出来る。
【0044】
一般式(5)中のAは低熱膨張性の観点から、前記(2)と前記(3)を少なくとも80mol%以上含み、無機基板との密着性の観点から、前記(2)/前記(3)のモル比が99/1〜1/99であることが好ましく、さらに好ましくは1/99〜30/70、より好ましくは5/95〜20/80であることが望ましい。
【0045】
また特性に影響を与えない範囲であれば任意の酸二無水物を共重合させることが出来る。例えばピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2’−オキソジスピロ[2.2.1]ヘプタン−2,1’’−シクロヘプタン−3,2’’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,5’−6,6’−テトラカルボン酸二無水物及びそれらの類似物が挙げられ、これらを単独または2種類以上用いることが出来る。
【0046】
本発明のポリイミドは一般式(1)で表される構成単位で表される構成単位を含むポリアミド酸をイミド化することによって得ることができる。また、本発明のポリイミドは、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸シリルエステル等の一般に知られる前躯体より合成してもよいし、前躯体を経由せずに製造してもよい。
【0047】
本発明のポリアミド酸は、公知の一般的な方法にて合成することができ、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、例えば、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、テトラカルボン酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0048】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、単数または複数のジアミン成分全量のモル数と、単数または複数のテトラカルボン酸二無水物成分全量のモル数とを、実質上等モルに調整することで、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることができる。また、2種のポリアミド酸をブレンドすることによって複数のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含有するポリアミド酸を得ることもできる。上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応即ち、ポリアミド酸の合成反応の温度条件は、特に限定されない。脂環式ジアミンを用いる場合、塩形成が起こる場合が多いので、ポリアミド酸の合成反応の温度を、必要に応じて50℃〜150℃の範囲としてもよく、塩が溶解し重合反応が進行しはじめたら、ポリアミド酸の分子量低下を抑制するために、ポリアミド酸の合成反応の温度を、80℃以下とすることが好ましく、0℃以上50℃以下とすることがより好ましい。また、反応時間は10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0049】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。
【0050】
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒は、使用するテトラカルボン酸二無水物、およびジアミン類を溶解することが可能なものが好ましく、更に生成されるポリアミド酸を溶解することが可能なものが好ましい。上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は、例えば、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、フェノール、クレゾールなどのフェノール系溶媒、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いて良い。ポリアミド酸の溶解性及び反応性を高めるために、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒より選択されることが好ましく、特にDMF、DMAC、NMPなどのアミド系溶媒が好ましい。
【0051】
ポリアミド酸を用いて、ポリイミドを得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。また、ポリアミド酸からポリイミドへのイミド化は、1〜100%の任意の割合をとることができる。つまり、一部がイミド化されたポリアミド酸を合成してもよい。本明細書ではポリアミド酸と有機溶媒とを含む溶液をポリアミド酸溶液とする。ここで、ポリアミド酸溶液に含まれる当該有機溶媒としては、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒と同様の有機溶媒を用いることができ、中でも、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒より選択される有機溶媒をより好適に用いることができ、DMF、DMAC、NMPなどのアミド系溶媒を特に好適に用いることができる。上述した方法でポリアミド酸を得た場合、合成した反応溶液自体をポリアミド酸溶液と表現することもある。
【0052】
脱水閉環は、ポリアミド酸を加熱して行えばよい。ポリアミド酸を加熱する方法は特に制限されないが、例えば、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体に、ポリアミド酸溶液を流延または塗布した後、80℃〜500℃の範囲内で熱処理を行えばよい。或いは、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸溶液を入れ、当該ポリアミド酸溶液を減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミドを得ることができる。なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分〜5時間の範囲で行うことが好ましい。また、加熱時間の短縮や特性発現のために、イミド化剤および/または脱水触媒をポリアミド酸溶液に添加し、このイミド化剤および/または脱水触媒を添加したポリアミド酸溶液を上記のような方法で加熱してイミド化してもよい。
【0053】
上記イミド化剤としては、特に限定されないが、3級アミンを用いることができる。3級アミンとしては複素環式の3級アミンがさらに好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としてはピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、1,2−ジメチルイミダゾールなどを挙げることができる。上記脱水触媒としては具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等を好ましい具体例として挙げることができる。
【0054】
イミド化剤および脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のアミド基に対して、イミド化剤は0.5〜5.0倍モル当量、さらには0.7〜2.5倍モル当量、特には0.8〜2.0倍モル当量が好ましい。また、ポリアミド酸のアミド基に対して、脱水触媒は0.5〜10.0倍モル当量、さらには0.7〜5.0倍モル当量、特には0.8〜3.0倍モル当量が好ましい。ポリアミド酸溶液にイミド化剤および/または脱水触媒を加える際、有機溶媒に溶かさず直接加えても良いし、有機溶媒に溶かしたものを加えても良い。有機溶媒に溶かさず直接加える方法ではイミド化剤および/または脱水触媒が拡散する前に反応が急激に進行し、ゲルが生成することがある。イミド化剤および/または脱水触媒を有機溶媒に溶かして得られた溶液を、ポリアミド酸溶液に混合することがより好ましい。
【0055】
本発明のポリイミドは、支持体にポリアミド酸溶液を塗工し、乾燥または加熱することにより製造することができる。本明細書において、上述したような方法で得られた膜状のポリイミドを、ポリイミド膜と表現することがある。ここで、ポリアミド酸溶液は一部がイミド化した溶液でもよい。乾燥または加熱は空気下で実施してもよいし、窒素雰囲気下で実施してもよい。透明性の観点から窒素雰囲気下で乾燥または加熱することが特に好ましい。
【0056】
ポリアミド酸溶液を塗工する支持体としては、ガラス基板;SUS等の金属基板あるいは金属ベルト;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム等が使用されるがこれに限定されるものではない。現行のバッチタイプのデバイス製造プロセスに適応させるためにはガラス基板を用いることが好ましい。
【0057】
ポリイミド膜製造時の乾燥温度または加熱温度に関しては、プロセスに合わせた条件を選択することが可能であり、特性に影響を与えない限り、特に制限されない。
【0058】
ポリイミドの透明性は、例えば、JIS K7105−1981に従った全光線透過率(TT)あるいはヘイズで表される。後述する本発明の用途でポリイミド膜を用いる場合、ポリイミドの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、ヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。本発明の用途においては、ポリイミドは全波長領域で透過率が高いことが要求されるが、ポリイミドは短波長側の光を吸収しやすい傾向があり、膜自体が黄色に着色することが多い。本発明の用途に使用するためには、ポリイミドは、膜厚が10〜15μmのとき、波長400nmでの光透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%より大きいことがさらに好ましい。
【0059】
波長400nmでの光透過率は、紫外−可視分光光度計によって測定される。このように透明性を付与することで、ポリイミド膜は、ガラス代替用途などの透明基板として使用することができる。
【0060】
本発明のポリイミドは、フィルム特性として低線熱膨張特性と加熱前後の寸法安定性を有する。例えば熱機械分析(TMA)によりこれらの値を測定する場合、日立ハイテクサイエンス(株)社製TMA7100SSを用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし10℃/minで20℃から350℃まで一旦昇温させた後、−30℃まで冷却したときの、冷却時の100〜300℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線膨張係数を求めた。100℃から300℃の範囲での線熱膨張係数が、20ppm/K以下、より好ましくは15ppm/K以下となるポリイミドを得ることができる。
【0061】
ガラス転移温度は日立ハイテクサイエンス(株)社製TMA7100SSを用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし10℃/minで10〜400℃まで昇温させたたときのフィルムの歪の変化量を測定し、この変化量の変曲点の温度をガラス転移温度とした。耐熱性の観点から、ガラス転移温度は高ければ高いほど良い。具体的には300℃以上が好ましく、プロセス温度が高くても対応できるといった点で350℃以上がさらに好ましい。
【0062】
また、ガラス等の支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、電子素子等を形成して基板形成した後、剥がすという、バッチタイプのデバイス作製プロセスにおいては、支持体とポリイミドとの間の密着性が良いことが必要である。ここでいう密着性とは、密着強度という意味である。支持体上のポリイミド膜に電子素子等を形成して基板形成した後に、支持体から、電子素子等が形成されたポリイミド基板を剥がすという作製プロセスにおいて、無機基板との密着性に優れるということは、電子素子等をより正確に形成または実装することができる。密着性は東洋製機製ストロボグラフVESIDによりASTM D−1867−01規格に従い、サンプル幅10mm、23℃、55%RH条件化で50mm剥がした際の剥離強度の平均値をピール強度として評価した。基板上に電子素子等を積層させる製造プロセスの観点からピール強度は高ければ高いほど良い。具体的には0.03N/cm以上が好ましく、0.1N/cm以上がさらに好ましい。一方で、基板の支持体からの剥がし易さの観点から、ピール強度は高すぎない方がよい。具体的には0.25N/cm以下であることが好ましい。すなわち、バッチタイプの製造プロセスに適したピール強度は0.10〜0.25N/cmであることが好ましい。
【0063】
製造プロセスにおいて、電子素子等を積層したポリイミド基板は、レーザー照射によって無機基板から剥離される。ポリイミド膜がレーザーの波長をまったく吸収せず透過するとレーザーによる剥離が困難になるため、ポリイミド膜はレーザーの波長を吸収する必要がある。
【0064】
通常、レーザー剥離に使用されるレーザーの波長は300nm前後であり、その波長を吸収する必要があることから、Cut off波長は340nm以上が好ましく、355nm以上がより好ましい。また、Cut Off波長が380nmを越えると、透明性を維持することが困難なため、Cut Off波長は340nm〜380nmであることが好ましい。但し、ここで言うCut off波長とは、紫外−可視分光光度計によって測定される、透過率が0.1%以下になる波長のことを意味する。
【0065】
本発明に係るポリアミド酸およびポリイミドは、そのまま製品や部材を作製するためのコーティングや成形プロセスに供してもよいが、フィルム状に成形された成形物にさらにコーティング等の処理を行うための積層物として用いることも出来る。コーティングあるいは成形プロセスに供するために、該ポリアミド酸およびポリイミドを必要に応じて有機溶媒に溶解又は分散させ、さらに、光又は熱硬化性成分、本発明に係るポリアミド酸およびポリイミド以外の非重合性バインダー樹脂、その他の成分を配合して、ポリアミド酸およびポリイミド樹脂組成物を調製してもよい。
【0066】
本発明に係るポリアミド酸およびポリイミドに加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0067】
本発明に係るポリイミド膜は、その表面に金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していても良い。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法等が挙げられる。
【0068】
本発明に係るポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性、透明性に加えて、支持体とポリイミドとの間の密着性が良いことから、これらの特性が有効とされる分野および製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、光学フィルム、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3−Dディスプレイ、タッチパネル、透明導電膜基板あるいは太陽電池に使用されることが好ましく、さらには現在ガラスが使用されている部分の代替材料とすることがさらに好ましい。
【0069】
また、本発明に係るポリアミド酸、ポリイミドおよびポリアミド酸溶液は、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、電子素子等を形成して基板形成した後、剥がすという、バッチタイプのデバイス作製プロセスに好適に用いることができる。したがって、本発明には、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱してイミド化し、支持体上に形成されたポリイミド膜に電子素子等を形成する基板形成工程を含む電子デバイスの製造方法も含まれる。また、かかる電子デバイスの製造方法は、さらに、基板形成工程の後に、支持体から、電子素子等が形成されたポリイミド基板を剥がす工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0070】
(評価方法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法のよって得られたものである。
【0071】
(1)ポリイミド膜の透過率
日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V−650)を用いて、ポリイミド膜の200−800nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率を指標として用いた。また、透過率が0.1%以下となる波長(Cut off波長)も求めた。また、JIS K 7373記載の式から、黄色度を表す指標としてイエローインデックス(YI)を算出した。
【0072】
(2)フィルムの線熱膨張係数(CTE)
線熱膨張係数の測定は、日立ハイテクサイエンス(株)社製TMA7100SSを用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし10℃/minで20℃から350℃まで一旦昇温させた後、−30℃まで冷却したときの、冷却時の100〜300℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線膨張係数を求めた。
【0073】
(3)ポリイミド膜のガラス転移温度(Tg)
日立ハイテクサイエンス(株)社製TMA7100SSを用いて(サンプルサイズ 幅3mm、長さ10mm、膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし10℃/minで20〜400℃まで昇温させたたときのフィルムの歪の変化量を測定し、この変化量の変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0074】
(4)ポリイミド膜の全光線透過率(TT)
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105−1981記載の方法により測定した。
【0075】
(5)ポリイミド膜のヘイズ
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105−1981記載の方法により測定した。
【0076】
(6)ガラス密着性試験
東洋製機製ストロボグラフVESIDによりASTM D−1867−01規格に従い、サンプル幅10mm、23℃、55%RH条件化で50mm剥がした際の90°剥離強度の平均値をピール強度として評価した。
【0077】
(実施例1)
<ポリアミド酸の重合>
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに重合用の有機溶媒としてNMP113.3gを仕込み、CHDA5.6gを入れ、攪拌した。この溶液に、BPDA13.8gと、TMHQ0.7gを同時に加え、80℃で60分加熱し、その後冷却し、室温(23℃)で5時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。各モノマーの仕込み比率は、CHDAを100mol%としたとき、BPDA:97mol%、TMHQ:3mol%となっていた。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0078】
<ポリイミド膜の作製>
重合したポリアミド酸溶液をバーコーターでガラス板上にて塗布し、空気中で80℃で30分、窒素雰囲気下で350℃で1時間乾燥させ、膜厚10〜15μmのポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の特性を表1に示す。
【0079】
(実施例2〜5,9及び参考例6〜8
表1に記載したジアミン成分、テトラカルボン酸成分、有機溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液および、ポリイミド膜を得た。
【0080】
(実施例10)
実施例5で合成したポリアミド酸溶液67gにDMIを0.1g加え攪拌し、均一な溶液を得た。
【0081】
<ポリイミド膜の作製>
得られた溶液をバーコーターでガラス板上にて塗布し、空気中で80℃で30分、窒素雰囲気下で350℃で1時間乾燥させ、膜厚10〜15μmのポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の特性を表1に示す。
【0082】
(実施例11)
実施例2で合成したポリアミド酸溶液67gにAPSを0.01g加え攪拌し、12時間おいた後に均一な溶液を得た。
【0083】
<ポリイミド膜の作製>
得られた溶液をバーコーターでガラス板上にて塗布し、空気中で80℃で30分、窒素雰囲気下で350℃で1時間乾燥させ、膜厚10〜15μmのポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の特性を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに重合用の有機溶媒としてNMP113.3gを仕込み、CHDA5.6gを入れ、攪拌した。この溶液に、BPDA13.8gを加え、80℃で60分加熱し、その後冷却し、室温(23℃)で5時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。モノマーの仕込み比率は、CHDAを100mol%としたとき、BPDA:100mol%となっていた。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0085】
<ポリイミド膜の作製>
重合したポリアミド酸溶液をバーコーターでガラス板上にて塗布し、空気中で80℃で30分、窒素雰囲気下で350℃で1時間乾燥させ、膜厚10〜15μmのポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の特性を表1に示す。
【0086】
(比較例2〜5)
表1に記載したジアミン成分、テトラカルボン酸成分、有機溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液および、ポリイミド膜を得た。
【0087】
【表1】
【0088】
以下に略称を示す。
NMP:1−メチル−2−ピロリドン
BPDA:3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
a−BPDA:2,3−3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TMHQ:1,4−フェニレンビス(トリメリテート酸二無水物)
ODPA:4,4‘’−オキシジフタル酸二無水物
CHDA:トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン
APS:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
DMI:1,2−ジメチルイミダゾール