(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687461
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】独立型太陽光発電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20200413BHJP
H02S 10/00 20140101ALI20200413BHJP
【FI】
H02J7/35 H
H02S10/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-99233(P2016-99233)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-208915(P2017-208915A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】512112600
【氏名又は名称】株式会社 ダイワテック
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】岡 忠志
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】堀部 真
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−207298(JP,A)
【文献】
特許第5838006(JP,B1)
【文献】
特開平09−199748(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3176963(JP,U)
【文献】
特開2016−035724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向へ傾斜した屋根を有する箱体に固設した太陽電池アレイからの電力を蓄積する発電ユニットに、その近傍に傾斜させて設置した複数個の補助電池アレイの発電電力を受け入れるようにした独立型太陽光発電装置において、該発電ユニットは、箱体内が断熱材で内装され該太陽電池アレイおよび補助電池アレイの発電電力を受け入れ蓄積する複数のバッテリがバッテリー枠に保持され、該バッテリに充電するための複数個の充放電コントローラと、該バッテリに充電された直流電力を交流に変換するインバータが2個該バッテリに並列に接続されて機器棚に収納され、箱体上部には換気扇が設けられ、後壁には出入口を備えたことを特徴とする独立型太陽光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力会社と電力のやり取りをしないで、太陽電池の発生電力だけを供給する独立型の太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
独立型の太陽光発電装置は、電力を必要とする場所へ移動させれば直ちに電気を供給することができ、イベントや屋台、特に商用電源のない山中や災害時に、有効に使用されている。これの一般的なものとして、太陽電池モジュールと、発電された電気を蓄えるバッテリと、バッテリに充電された電気を制御するインバータなどの制御機器を、タイヤを備えた台車に搭載したもの(特許文献1参照)が知られている。
一方、出願人は、先に、トラック輸送が可能な直方体状のユニットハウスの屋根上に、太陽電池モジュールを複数個配置し、室内に、複数のバッテリと、インバータと、充放電コントローラとを設けた工事現場用ハウスを開発し(特許文献2参照)ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-34190公報
【特許文献2】実用新案登録第3176963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電装置の発生電力は、天候に大きく左右され、また、夏と冬とでは得られる電力量に差があるので、安定して電力を得ることは難しい。
特許文献1の太陽光発電装置は、簡便に移動できるので、短時間のイベントや屋台などにおいては、有効に活用できる。しかし、得られる電力量は、小さいので照明に使用されるのが主で、エアコンや洗濯機などの電気機器を使用することはできない。なお、電力量を増加させるため、太陽電池モジュールを箱体の上部に収納し、現地で、四方へ水平に引き出して使用するようにしたものもあるが、太陽電池モジュールが水平な状態なので、電力変換効率が悪く、特に冬場は極端に低下するという問題がある。
【0005】
特許文献2の工事現場用ハウスは、ハウスを現地に搬送して設置するや直ちに室内灯やエアコンが使用でき、また、3日雨が降っても十分足りるバッテリ容量を備えている。このため、ある程度の期間使用できる。
しかしながら、工事現場用ハウスを、十分日当たりの良いところに設置する必要があり、設置場所に苦慮することが少なくない。また、パネル状の太陽電池を平坦な屋根に設置しているので、季節によって得られる電力量にバラつきがあり、また、電気機器の使用電圧が種々あるときには、別途エンジン発電機などを用意しなければならないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、開発したもので、必要な電力が効率よく得られる独立型太陽光発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の独立型太陽光発電装置は、上記の目的を達成するため、次の手段を採った。すなわち、
一方向へ傾斜した屋根を有する箱体に固設した太陽電池アレイからの電力を蓄積する発電ユニットに、その近傍に傾斜させて設置した複数個の補助電池アレイの発電電力を
受け入れるようにした独立型太陽光発電装置において、該発電ユニットは、箱体内が断熱材で内装され該太陽電池アレイおよび補助電池アレイの発電電力を受け入れ蓄積する複数のバッテリがバッテリー
枠に保持され、該バッテリに充電するための複数個の充放電コントローラと、該バッテリに充電された直流電力を交流に変換するインバータが2個該バッテリに並列に接続されて機器
棚に収納され、箱体上部には換気扇が設けられ、後壁には出入口を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明の独立型太陽光発電装置は、発電ユニットと複数個の補助電池アレイとから構成されている。
発電ユニットは、一方向へ傾斜した屋根に太陽電池モジュールを複数個取り付けた太陽電池アレイが固設された箱体であり、箱体の中には、該太陽電池アレイでの発生電力を充放電コントローラを介して受け入れ蓄積する複数のバッテリと、該バッテリに充電された直流電力を交流に変換するインバータが2個収納されている。
【0009】
また、発電ユニットは、断熱材で内装され、複数のバッテリを保持するバッテリ枠と、2個のインバータと複数個の充放電コントローラと、分電盤とを支持する機器棚が固設されており、箱体上部には換気扇が設けられ、後壁には出入口を備え
ている。
【0010】
また、補助電池アレイは、発電ユニットの太陽電池アレイと同面積(セルの数が同じ)で、発電ユニットの充放電コントローラにケーブルで接続している。 望ましくは、請求項3に記載のように、複数個の太陽電池モジュールからなり、それぞれ矩形状のアルミフレームに取り付けられ、搬送時は前記発電ユニット内に収納され、使用時は一端を支点に起こされてステーで傾斜保持できる構成とするとよい。
補助電池アレイの太陽電池モジュールは、発電ユニットの太陽電池アレイの太陽電池モジュールと同じものを使用するのが望ましい。補助電池アレイの個数は、必要とする電力に応じて決めればよい。
また、傾斜角度は、設置する場所と季節によって適宜変えることができるようにするとよい。なお、発電ユニットの屋根の傾斜も変えるようにしてもよいが、一定角度とする場合は、40度位にするのが望ましい。
【0011】
バッテリは、液の補充などメンテナンスの必要のない密閉型のものを使用し、個数はその場所での晴天が最大失われる日数を勘案して最大必要量を算出して決めればよい。なお、それでも電力が不足する事態がないとは限らないので、何個かのバッテリは充電のために持ち出せるように設置するとよい。
【0012】
充放電コントローラは、太陽電池アレイの発生電力をバッテリに効率よく充電するためのコントローラーで、バッテリから太陽電池へ電流が流れないようにする逆流防止装置と、バッテリへの過充電防止機能を備えたものを使用する。
また、インバータを2個設け、単相AC100Vのほか、単相200V、三相200Vも使用できるようにする。
【0013】
発電ユニットおよび補助電池アレイは、工場で製作して現地へトラックで搬送し、太陽電池に十分に太陽光があたる場所を選定してクレーンで設置する。分電盤に電気機器を接続すれば、直ちに、電力が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の独立型太陽光発電装置の発電ユニットは、
箱体内が断熱材で内装され該太陽電池アレイの発電電力を受け入れ蓄積する複数のバッテリがバッテリー枠に保持され、該バッテリに充電するための複数個の充放電コントローラと、該バッテリに充電された直流電力を交流に変換するインバータが2個該バッテリに並列に接続されて機器棚に収納され、箱体上部には換気扇が設けられ、後壁には出入口を備えたので、トラックで目的地へ搬送し、太陽電池アレイおよび補助電池アレイを十分日光があたる位置に設置すれば、直ちに交流電力が得られる。しかも、設置および撤収作業が短時間で行え、交流電源として単相100V、200V、三相200Vのいずれでも供給できるので、一般家庭用の電気機器のほか、作業用の電動工具など殆どの電気機器が使用できる。さらに、必要に応じて補助電池アレイを増加できるので、電力不足を気にすることなく必要な電動工具を重複して使用できる。
【0015】
また、発電ユニットは、十分換気がなされ、夏の暑さにも十分耐え、コンパクトな装置にできる。
【0016】
なお、補助電池アレイは、矩形状のアルミフレームに取り付けられ、搬送時は前記発電ユニット内に収納され、使用時は一端を支点に起こされてステーで傾斜保持する構造のものとすると、設置および撤収作業が簡便で、効率よく電気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の独立型太陽光発電装置の実施の形態を示す外観斜視図である。
【
図2】同、(a)は発電ユニットの外観斜視図で、(b)は、一部断面図である。
【
図3】同、(a)は補助電池アレイの設置時の外観斜視図で、(b)は、運搬、収納時の外観斜視図である。
【
図4】同、独立型太陽光発電装置の電気配線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の独立型太陽光発電装置の実施の形態を、
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1は、独立型太陽光発電装置の全体外観を示す斜視図で、
図2は、発電ユニット10の斜視図である。また、
図3は補助電池アレイ20の構成品である補助太陽電池20Aの斜視図である。そして、
図4は、独立型太陽光発電装置の電気配線図である。
【0019】
独立型太陽光発電装置は、
図1に示すように、傾斜した屋根に太陽電池アレイ30を固設した発電ユニット10と、その近傍に太陽電池モジュール30aを傾斜保持した補助太陽電池20A,20B,20Cからなる補助電池アレイ20が2台とから構成される。
発電ユニット10の屋根の傾斜は一定で、ここでは、40度としている。なお、補助電池アレイ20の傾斜角度は季節に合わせて適宜調整できるようにしている。
【0020】
発電ユニット10は、
図2に示すように、一方向にのみ傾斜した屋根を有し、前壁13,後壁14,左右の側壁12、および床板15とからなる箱体で、屋根には太陽電池アレイ30が設置されている。そして、後壁14には出入口16(シャッタ)が設けられ、左右の側壁12の上部には換気扇17が、下部には吸引ファン18が設けられている。
なお、発電ユニット10の外観の大きさは、ここでは、1,600mm×2,300mm×2,600mm(後壁高さ)としている。
【0021】
太陽電池アレイ30は、太陽電池モジュール30aを架台11に3枚並べて設置されたもので、ここでは、単結晶シリコンタイプを使用している。太陽電池モジュール30aの大きさは、概略、1,050mm×1,600mmであり、太陽電池アレイ30大きさは、1,600mm×3,147mmである。
【0022】
発電ユニット10の箱内は、断熱材で内装され、床面にはバッテリ枠37が固設されており、DC48V、230Ahのバッテリ32が8個収納されている。
このバッテリ32は、電解液吸収型シールド構造方式(GEL)であり、電解液をゲル化することで液漏れを防止し、 バッテリケースが破損しても液が飛散しない。また引火を防止する内圧調整安全バルブを採用した完全密閉式で水素ガスの発生も抑制される構造のものを使用している。
【0023】
また、箱内の前壁13寄りには、機器棚38が設けられ、ここに、3個の充放電コントローラ31a、31b,31cと,2個のインバータ33a、33bおよび配線用遮断器34,35と、分電盤36が載置されている。なお、これらの機器間の配線を簡素にするため中継端子台が別途設けられている。
【0024】
補助電池アレイ20は、同じ仕様の補助太陽電池20A,20B,20Cを連設したものである。補助太陽電池20Aは、
図3(a)に示すように、アルミフレーム21と、アルミフレーム21に固設された取付枠22と、取付枠22に蝶番25で連結された取付部材23と、取付部材23に固設された太陽電池モジュール30aと、取付部材23を所定の角度に支持する支持棒24とから構成されている。なお、太陽電池モジュール30aの傾斜角度は、支持棒24のアルミフレーム21との係止位置を変えることにより変更できる。
補助太陽電池20A、20B,20Cを搬送するときは、
図3(b)に示すように、支持棒24を外して取付部材23を取付枠22に密接して平板状にし、補助太陽電池20A、20B,20Cを分離して、発電ユニット10内に収納する。
【0025】
独立型太陽光発電装置は、上記のように構成されているので、発電ユニット10の太陽電池アレイ30で発生した電力は、
図4の電気系統図に示すように、発電ユニット10内の充放電コントローラ31aを介してバッテリ32に蓄電される。また、補助電池アレイ20で発生した電力も、充放電コントローラ31b,31cをそれぞれ介してバッテリ32に蓄電される。
そして、電気機器へ電力の供給は、バッテリ32からインバータ33a、33bを介して交流(AC)へ変換され、分電盤36を介して行われる。分電盤36には単相AC100V、単相AC200V、三相AC200Vの電源の取出口が設けられており、電気機器は適宜の取出口へ接続して受電する。
【0026】
充放電コントローラ31a、31b,31cは、太陽電池アレイ30および補助電池アレイ20にそれぞれ接続されており、複数のバッテリ32へ均一に分配して効率よく充電するもので、バッテリ32の過充電を防止する機能や、各バッテリ32からインバータ33a、33bへの直流電流を安定供給する制御を行う機能、さらには、太陽電池アレイ30および補助電池アレイ20への逆流を阻止する機能も備えている。
【0027】
インバータ33a、33bは、バッテリ32に蓄電された直流電流を、交流電流に変換して出力するもので、出力電圧が単相AC100V、単相AC200V、三相AC200Vが使用できるように2個設けられている。電気機器は、変換装置を備えた分電盤36に接続して受電する。
なお、
図4において34,35は配線用遮断器である。
【0028】
独立型太陽光発電装置は、工場で製作、組み立て、屋根に太陽電池アレイ30を固設し、バッテリ32、と充放電コントローラ31a、31b,31c、インバータ33a、33bなどの機器を内装して、電源ユニット10を構成して補助太陽電池20A,20B,20Cを収納し、トラックで、設置場所へ搬送し、クレーン吊りで載置する。
補助電池アレイ20は、電源ユニット10に収納されている補助太陽電池20A,20B,20Cを、所定の場所(電源ユニット10の近くで日当たりのよい場所)に降ろし、それぞれを連設して、太陽電池モジュール30aを起こして傾斜を持たせ支持棒24で支持する。
なお、バッテリ32は、予め充電されたものを使用する。これにより、直ちに電気が使用できるので、夜中に運び込むこともできる。また、設置場所を変えたい場合も簡便に移動できる。配線は、
図4に示すように、補助電池アレイ20に付設されているケーブルを発電ユニット10の充放電コントローラ31b,31cへそれぞれ接続するだけでよい。
【0029】
本発明の独立型太陽光発電装置は、灯具、エアコン、湯沸し器、パソコンなど、家庭用電気機器のほか、三相交流200Vの作業機なども使用できる。
【0030】
なお、上記の実施の形態の説明では、発明の内容がよく解るように、独立型太陽光発電装置について具体的な寸法を示して説明したが、本発明は、これに限定されるものでないことはいうまでもない。また、補助電池アレイ20は2セット設置したもので説明したが、必要とする電力量に応じて適宜増減できる。なお、増加する場合は、充放電コントローラ31を追加することは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
10 発電ユニット
11 架台
12 側壁
13 前壁
14 後壁
15 床板
16 シャッタ
17 換気扇
18 吸込ファン
20 補助電池アレイ
20A 補助太陽電池
20B 補助太陽電池
20C 補助太陽電池
21 アルミフレーム
22 取付枠
23 取付部材
24 支持棒
25 蝶番
30 太陽電池アレイ
30a 太陽電池モジュール
31a 充放電コントローラ
31b 充放電コントローラ
31c 充放電コントローラ
32 バッテリ
33a インバータ
33b インバータ
34 配線用遮断器
35 配線用遮断器
36 分電盤
37 バッテリ枠
38 機器棚