特許第6687468号(P6687468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687468
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20200413BHJP
   A62C 37/36 20060101ALI20200413BHJP
   H01H 13/56 20060101ALI20200413BHJP
   H01H 9/02 20060101ALI20200413BHJP
   H01H 13/02 20060101ALI20200413BHJP
   A62B 3/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   G08B17/00 H
   A62C37/36
   H01H13/56
   H01H9/02 E
   H01H13/02 C
   !A62B3/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-117172(P2016-117172)
(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-224042(P2017-224042A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 健太郎
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−041218(JP,U)
【文献】 特開2011−086224(JP,A)
【文献】 実開昭60−067624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00−5/00
35/00−99/00
A62C2/00−99/00
G08B17/00−31/00
H01H9/00−9/28
13/00−13/88
89/00−89/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に本体開口が形成され、前記本体開口から奥側に延びる側部を有して前記本体開口と連通する中空部が形成され、前記側部には内側に突出する突起が設けられた本体部と、
前記本体部の前記本体開口に取り付けられた枠部と、
前記中空部に収納され、押し釦を押下されることによって火災信号を発信する押下式スイッチと、
前記中空部において前記押し釦の前方に配置されて前記本体部の前記本体開口を遮蔽して前記押し釦を保護すると共に前記押し釦と共に押下される保護部と、
基端部が前記保護部に取り付けられ、前記基端部から外側に延びて、接触面が前記側部に当たるように配置されて前記保護部を支持し、弾性変形する複数の支持部と、を備え、
前記支持部の先端部は、前記保護部が前記押し釦側に押下されることによって前記枠部側から前記奥側に前記突起を乗り越えて保持され、前記保護部が前記押し釦側に再度押下され、前記押し釦が復旧することによって前記奥側から前記枠部側に前記突起を乗り越えるものである
ことを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記支持部は、湾曲している
ことを特徴とする請求項1記載の発信機。
【請求項3】
前記支持部は、前記基端部から放物線を描いて外側に広がって変曲点に至り、前記変曲点から内側に狭まって放物線を描いて前記先端部に至るものである
ことを特徴とする請求項2記載の発信機。
【請求項4】
前記突起は、前記側部の1点から周方向1周にわたって設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発信機。
【請求項5】
前記側部は、前記枠部から離れるに従って縮径している
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発信機。
【請求項6】
前記枠部と前記保護部とを接続し、前記枠部側に向かって縮んでいる弾性部を更に備え、
前記弾性部は、
前記保護部が前記押し釦側に押下されることによって、前記押し釦側に伸びた状態が維持され、前記保護部が前記押し釦側に更に押下されることによって、前記押し釦側に伸びた状態が解除されて前記枠部側に向かって縮むものである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災信号を発信する発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの内部に取り付けられた防水型の発信機が知られている。発信機は、火災を発見した人によって押下されると、管理室に設置された防災盤等に火災信号を発信する。特許文献1には、発信機の内部に応答表示灯が設けられた防災装置が開示されており、特許文献1の防災装置は、例えばトンネルの内部の消火栓等に用いられる。特許文献1の発信機は、取付部材及び枠部材との間の中空部に押し釦スイッチを押下するスイッチノブが収納されており、スイッチノブの前方には、枠部材に取り付けられた保護板が配置されている。火災を発見した人は、保護板を押下することによって、保護板を介してスイッチノブを押下する。その際、保護板は、枠部材から外れて、取付部材の内部に落下して留まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−86224号公報(段落[0056]及び図9(B))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された防災装置は、火災信号が発信された後の復旧作業において、枠部材を取り外して保護板を取り出し、保護板を再度枠部材に装着して、枠部材を取り付ける必要がある。このように、特許文献1は、復旧時の作業が煩雑である。
なお、保護板は、発信機が押下されたことが目視で分かるように、外れたり、破れたりする等、押下される前とは、状態が変化することが求められている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたもので、復旧時の作業が簡易な発信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発信機は、前面に本体開口が形成され、本体開口から奥側に延びる側部を有して本体開口と連通する中空部が形成され、側部には内側に突出する突起が設けられた本体部と、本体部の本体開口に取り付けられた枠部と、中空部に収納され、押し釦を押下されることによって火災信号を発信する押下式スイッチと、中空部において押し釦の前方に配置されて本体部の本体開口を遮蔽して押し釦を保護すると共に押し釦と共に押下される保護部と、基端部が保護部に取り付けられ、基端部から外側に延びて、接触面が側部に当たるように配置されて保護部を支持し、弾性変形する複数の支持部と、を備え、支持部の先端部は、保護部が押し釦側に押下されることによって枠部側から奥側に突起を乗り越えて保持され、保護部が押し釦側に再度押下され、押し釦が復旧することによって奥側から枠部側に突起を乗り越えるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護部は、支持部によって支持されている。そして、支持部の先端部は、保護部が押し釦側に押下されて枠部側から奥側に突起を乗り越えても、保護部が押し釦側に再度押下されることによって奥側から枠部側に突起を乗り越える。これにより、保護部は元の位置に戻る。このように、復旧時に、枠部を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1における防災設備2を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す側面断面図である。
図4】本発明の実施の形態1における弾性部29の動作を示す側面断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
図8】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
図9】本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明に係る発信機の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。図1は、本発明の実施の形態1における防災設備2を示す模式図である。この図1に基づいて、防災設備2について説明する。図1に示すように、防災設備2は、例えばトンネルの内部に設置されるものであり、筐体3と、扉4と、発信機1とを有している。筐体3は、例えば直方体状をなしており、内部に消火器又は消火栓等が設置されている。扉4は、筐体3の前面に取り付けられており、人が取っ手4aを引いて扉4を開くことによって、筐体3の内部に設置された消火器又は消火栓等を使用することができる。発信機1は、筐体3の前面において扉4の隣に設けられている。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す正面図である。図2に示すように、発信機1は、例えば火災を発見した人によって押下されると、管理室等に設置された防災盤に火災信号を発信する。発信機1は、円状をなしており、防災設備2の筐体3に取り付けられている。発信機1の外周に配置された化粧板27には、周状に形成された4個の取付穴27aが設けられている。防災設備2の筐体3において、発信機1が取り付けられる位置の裏面側には、4個のボルト(図示せず)が周状に溶接されており、発信機1が筐体3の内部から筐体3に取り付けられる際、化粧板27の取付穴27aにボルトが挿入され、ナット(図示せず)で固定される。これにより、発信機1が筐体3に取り付けられる。なお、発信機1の中央に配置された保護部26には「強く押す」といった文字が記載されている。
【0011】
図3は、本発明の実施の形態1に係る発信機1を示す側面断面図である。発信機1は、後方側の発信部11と前方側の操作部21と、発信部11と操作部21とにより格納された押下式スイッチ5とを有している。
押下式スイッチ5は、防災盤等と電気的に接続するための端子部30を有するスイッチ部14と、押下することでスイッチ部14のオン又はオフを切り替える押し釦24とを備え、後述するベース12に取り付けられている。
発信部11は、火災信号を発信するものであり、ベース12と、押さえ板13と、押下式スイッチ5のスイッチ部14と、カバー15とを有している。ベース12は、操作部21に取り付けられた円状の板部材であり、例えばABS樹脂からなる。押さえ板13は、カバー15をベース12に押える環状の板部材であり、例えばステンレスからなる。カバー15は、螺子16によってベース12に取り付けられた有底筒状の部材であり、スイッチ部14を覆って保護するものである。カバー15は、例えばクロロプレンゴムからなる。
【0012】
操作部21は、本体部22と、枠部23と、押下式スイッチ5の押し釦24と、キャップ25と、保護部26と、支持部28と、弾性部29と、化粧板27とを有している。本体部22は、防災設備2の開口3aに取り付けられ、前面に本体開口22dが形成され、開口3aから離れる方向(本体部22の奥側)に延びる側部22bを有して本体開口22dと連通する中空部22aが形成された有底円筒状の部材であり、その底面には押し釦24が貫通する貫通穴を有している。本体部22の側部22bは、枠部23から離れるに従って縮径している。即ち、側部22bは、テーパを有している。なお、本体部22の側部22bは、枠部23から水平に延びるものであってもよい。更に、本体部22の側部22bの内面のみが、枠部23から離れるに従って縮径し、本体部22の側部22bの外面は、枠部23から水平に延びるものであってもよい。本体部22の側部22bには、本体部22の内側に突出する突起22cが設けられている。突起22cは、側部22bの1点から周方向1周にわたって設けられている。なお、突起22cは、周方向の一部に設けられていてもよい。本体部22は、例えばステンレスからなり、例えばニトリルゴムからなるパッキン12aを介してベース12に取り付けられている。枠部23は、本体開口22dに取り付けられて、本体部22との間に中空部22aを形成し、中央に開口する枠開口23aが形成された環状の部材である。枠部23は、例えばポリカーボネート樹脂からなり、本体部22に取り付けられている。押し釦24は、中空部22aに収納され、押下されることによって火災信号を発信するものである。
【0013】
押下式スイッチ5は、スイッチ部14と押し釦24とで構成されており、押し釦24が押下されると、押下された押し釦24の一部は、スイッチ部14の内部に挿入される。これにより、押し釦24がオンされた状態となる。再度、押し釦24が押下されると、押下された押し釦24が元の位置に戻りオフの状態となる。本実施の形態1では、押し釦24が押下されると、オンされた状態が保持される自己保持型スイッチについて例示している。自己保持型スイッチでは、押し釦24が一度オンされると、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入され、押し釦24の押下が解除されて(指を離して)も、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入されたまま(オンを保持)である。押し釦24が再度押下されると、押し釦24がスイッチ部14の内部から突出し、オフ状態に戻る。つまり、押下式スイッチ5において、押し釦24は押下されるたびに、スイッチ部14の内部に押し込まれた状態とスイッチ部14から突出した状態とを交互に保持する。
【0014】
キャップ25は、押し釦24に沿った形状の部材であり、押し釦24を覆って保護するものである。キャップ25は、例えばニトリルゴムからなり、押し釦24が押し込まれると、それに対応して変形する。
発信機1は、押下式スイッチ5をキャップ25、本体部22、パッキン12a、ベース12及びカバー15で覆うことにより、防水・防塵構造としている。
【0015】
保護部26は、中空部22aにおいて押し釦24の前方に配置されて本体部22の本体開口22dを遮蔽して押し釦24を保護すると共に押し釦24の押下に利用されるものである。保護部26は、例えば透光性を有するメタクリル樹脂からなり、円状をなしている。保護部26は、防災設備2の開口3a及び枠部23の枠開口23aを閉じている。支持部28は、基端部28aが保護部26に取り付けられて保護部26を支持し、基端部28aから外側に延びて、接触面28dが側部22bに当たるように配置され、弾性変形するものである。
なお、保護部26の形状は円状に限定されるものではなく、例えば正方形でもよい。
【0016】
支持部28は、保護部26を支持するものであり、例えば金属からなり弾性変形する細いバネ部材である。支持部28は、湾曲しており、例えば基端部28aから放物線を描いて外側に広がって変曲点28cに至り、変曲点28cから内側に狭まって放物線を描いて先端部28bに至るものである。発信機1が火災信号を発信していない監視状態において、支持部28の先端部28bは、本体部22の側部22bの突起22cに当たっており、これにより、保護部26が位置決めされている。また、発信機1が火災信号を発信している発信状態において、保護部26が押し釦24側に押下されることによって、支持部28の先端部28bは、枠部23側から本体部22の奥側に本体部22の側部22bの突起22cを乗り越え、変曲点28cが突起22cを乗り越え当接して側部22bに保持される。なお、発信機1が火災信号を発信した後に復旧する場合、保護部26が押し釦24側に再度押下されることによって、押し釦24が突出し、保護部26を押すことで支持部28の変曲点28c及び先端部28bが枠部23側に移動して本体部22の奥側から枠部23側に突起22cを乗り越えて、監視状態における位置と同様の位置に戻る。また、支持部28は、複数設けられており、本実施の形態1では、保護部26の周縁部に同一円周上に等間隔を空けて3個設けられているが、2個以上設けられていればよく、4個以上設けられてもよい。
【0017】
図4は、本発明の実施の形態1における弾性部29の動作を示す側面断面図である。図4(a)は、弾性部29が縮んだ状態を示す図、図4(b)は、弾性部29が伸びた状態を示す図である。図4(a)に示すように、弾性部29は、枠部23と保護部26とを接続し、枠部23側に向かって縮んでいる例えばニトリルゴムからなるダイヤフラムである。弾性部29は、例えば環状の部材であり、外周端部が枠部23に取り付けられ、内周端部に保護部26が取り付けられている。発信機1が火災信号を発信していない監視状態において、弾性部29は、外周端部から押し釦24側に延び、頂点29aで屈曲して枠部23側に延び、内周端部に至る。
【0018】
一方、発信機1が火災信号を発信している発信状態(押し釦24がオンの状態)において、弾性部29が伸び、図4(b)に示すように、弾性部29は、頂点29aからの屈曲が解除され、そのまま押し釦24側に延びる。これにより、保護部26も、弾性部29と共に押し釦24側に移動する。このように、弾性部29は、保護部26が押し釦24側に押下されることによって、押し釦24側に伸びた状態が維持される。なお、発信機1が火災信号を発信した後に復旧する場合、保護部26が押し釦24側に再度押下され、押し釦24が元の位置に突出することによって、弾性部29の伸びが解除され、図4(a)に示すように、頂点29aで屈曲して枠部23側に延び、内周端部に至る形状に戻る。このように、弾性部29は、保護部26が押し釦24側に押下され、その後再度押下されることによって、押し釦24側に伸びた状態が解除されて枠部23側に向かって縮むものである。このとき、支持部28は枠部23側に向かう方向に付勢している。
【0019】
化粧板27は、枠部23の外周を覆う環状の部材であり、防災設備2の筐体3に取り付けられることによって、防災設備2の内部の露出を防止するものである。化粧板27の中央は開口されており、これにより、人は、防災設備2の外側から保護部26を押下することができる。
【0020】
図5図9は、本発明の実施の形態1に係る発信機1の動作を示す側面断面図である。次に、発信機1の動作について説明する。図5は、保護部26が押下され始める状態を示す図である。図5に示すように、発信機1が監視状態にある場合において、火災等が発生した場合、火災等を発見した人は、先ず、枠部23の枠開口23aに指を差し込み、指で保護部26を押下する。このとき、保護部26と共に支持部28も押し釦24側に移動するが、支持部28の先端部28bが本体部22の側部22bの突起22cに引っ掛かり、保護部26及び支持部28が押し釦24側に移動しようとする力に抵抗する。なお、突起22cは、側部22bの1点から周方向1周にわたって設けられているため、支持部28の先端部28bが突起22cに引っ掛かり易い。
【0021】
図6は、押下された保護部26が押し釦24を押下する状態を示す図である。図6に示すように、人は、指で保護部26を更に押下する。このとき、支持部28の先端部28bは、枠部23側から本体部22の奥側に突起22cを乗り越える。また、支持部28の先端部28bは、側部22bが縮径するテーパに沿って内側に曲がる。また、弾性部29は、本体部22の奥側に伸びる。これにより、保護部26も、押し釦24側に移動し、保護部26は、キャップ25に当たってキャップ25と共に押し釦24を押下し、押し釦24がスイッチ部14の内部に挿入される。このとき、支持部28の変曲点28cが突起22cを乗り越えて当接する。これにより、押し釦24がオンされた状態となり保持され、発信機1が防災盤等に火災信号を発信する。
【0022】
図7は、保護部26の押下が解除された(指を離した)状態を示す図である。図7に示すように、火災信号が発信されると、人は、保護部26から指を離して、保護部26の押下を解除する。押下式スイッチ5は自己保持型であるため、押し釦24はスイッチ部14の内部に挿入されたままである。なお、支持部28の変曲点28cが突起22cを乗り越えて、突起22cに引っ掛かって保持されている。また、弾性部29は、本体部22の奥側に伸びた状態が維持されている。これにより、保護部26も、キャップ25に当たったまま移動しない。このように、押し釦24が押下されて火災信号が発信されると、保護部26が本体部22の内部に押し込まれたままとなる。このため、発信機1を操作した人以外の第3者でも、発信機1が、火災信号を発信した発信機1か否かを目視にて瞬時に認識することができる。
【0023】
図8は、発信機1の復旧時に保護部26が押し釦24側に再度押下される状態を示す図である。図8に示すように、火災信号が発信された後、発信機1が復旧される際、人は、指で保護部26を押下する。このとき、押下式スイッチ5において、押し釦24がスイッチ部14の内部から突出する方向に復元力が発生する。また、保護部26と共に支持部28が更に本体部22の奥側に移動し、支持部28の先端部28bは、更に本体部22の奥側に押し込まれる。このとき、支持部28の先端部28bには、保護部26が本体部22から離れる方向に移動しようとする復元力が発生する。更に、保護部26の移動と共に弾性部29が押し釦24側に更に伸びる。これにより、弾性部29には、伸びる力と逆の方向である枠部23側に縮もうとする復元力が発生する。
【0024】
図9は、保護部26が元の位置に戻った状態を示す図である。図9に示すように、押し釦24の復元力、支持部28の先端部28bの復元力及び弾性部29の復元力によって、支持部28の変曲点28cが本体部22の奥側から枠部23側に突起22cを乗り越え、更に先端部28bが本体部22の奥側から枠部23側に突起22cを乗り越えて、監視状態における位置と同様の位置に戻る。このとき、支持部28の先端部28bは、本体部22の側部22bのテーパに沿って広がる力も加わって移動する。また、弾性部29も、監視状態における位置と同様の位置に戻る。これにより、保護部26が元の位置に戻り、復旧作業が完了する。
【0025】
本実施の形態1によれば、保護部26は、支持部28によって支持されている。そして、支持部28の先端部28b及び変曲点28cは、保護部26が押し釦24側に押下されて枠部23側から本体部22の奥側に突起22cを乗り越えても、保護部26が押し釦24側に再度押下されることによって本体部22の奥側から枠部23側に突起22cを乗り越える。これにより、保護部26は元の位置に戻る。よって、火災信号が発信された後の復旧時に、化粧板27及び枠部23等を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。
【0026】
従来、押下式スイッチが押下されると、保護板が枠部材から外れて、取付部材の内部に落下して留まる発信機が知られている。この発信機は、火災信号が発信された後の復旧時において、枠部材を取り外して保護板を取り出し、再度枠部材に装着して、枠部材を取り付ける必要がある。これに対し、本実施の形態1は、化粧板27及び枠部23等を取り外す必要がないため、復旧時の作業が簡易である。更に、従来、発信機として、ビル用の発信機が知られている。ビル用の発信機には、リセットボタンが操作されることによって、押下式スイッチが復旧するものがあるが、防水型の発信機にビル用の発信機と同様のリセットボタンによる復旧方法を適用しようとしても、リセットボタン式の場合、保護部の下部を回転軸に上方を押し込む構成のため、防水型発信機に採用されている押下式スイッチに適用しても押し釦をオン状態まで押し込めない。このため、適用することができない。そこで、本実施の形態1のように、支持部28によって保護部26を支持する構成とすれば、ビル用の発信機のようなリセットボタン式を採用しなくても、簡易に復旧することができる。また、従来、押し釦が押下されると、保護板が破れる発信機が知られている。この発信機は、一度使用されると保護板が破れるため、復旧時に新しい保護板に交換する必要がある。これに対し、本実施の形態1は、保護部26が破壊されないため、保護部26を再利用することができ、コストを削減することができる。
【0027】
また、支持部28は、湾曲しており、例えば基端部28aから放物線を描いて外側に広がって変曲点28cに至り、変曲点28cから内側に放物線を描いて先端部28bに至るものである。これにより、支持部28の先端部28bが本体部22の側部22bに食い込み易い。また、変曲点28cが突起22cを乗り越えて保持される。このため、支持部28の先端部28bが側部22bに保持され易くなる。
【0028】
更に、発信機1は、枠部23と保護部26とを接続し、枠部23側に向かって縮んでいる弾性部29を更に備え、弾性部29は、保護部26が押し釦24側に押下されることによって、本体部22の奥側に伸びた状態が維持され、保護部26が押し釦24側に再度押下されることによって、本体部22の奥側に伸びた状態が解除されて枠部23側に向かって縮むものである。このように、弾性部29の復元力によって、復旧作業が更に容易になる。なお、弾性部29は、省略してもよい。この場合でも、押し釦24の復元力及び支持部28の復元力によって、復旧作業は容易である。
【符号の説明】
【0029】
1 発信機、2 防災設備、3 筐体、3a 開口、4 扉、4a 取っ手、5 押下式スイッチ、11 発信部、12 ベース、12a パッキン、13 押さえ板、14 スイッチ部、15 カバー、16 螺子、21 操作部、22 本体部、22a 中空部、22b 側部、22c 突起、22d 本体開口、23 枠部、23a 枠開口、24 押し釦、25 キャップ、26 保護部、27 化粧板、27a 取付穴、28 支持部、28a 基端部、28b 先端部、28c 変曲点、28d 接触面、29 弾性部、29a 頂点、30 端子部。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9