特許第6687473号(P6687473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6687473-リン回収方法及びリン回収装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687473
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】リン回収方法及びリン回収装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20200413BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20200413BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20200413BHJP
   G01N 27/10 20060101ALI20200413BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20200413BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20200413BHJP
   G01N 29/032 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C02F11/14ZAB
   C02F11/00 Z
   C02F1/58 R
   G01N27/10
   G01N21/59 Z
   G01N21/27 A
   G01N29/032
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-134818(P2016-134818)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-1129(P2018-1129A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
(72)【発明者】
【氏名】與倉 寛人
(72)【発明者】
【氏名】増山 貴明
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−058413(JP,A)
【文献】 特開2016−087583(JP,A)
【文献】 特開2016−087584(JP,A)
【文献】 特開2015−073966(JP,A)
【文献】 特開2018−001130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
C02F 1/58−1/64
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00
C12P 9/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥に由来する凝集汚泥を濃縮して得られる濃縮分離水をリン原水として用いてリンを回収する方法であって、
当該有機汚泥、当該有機汚泥を破砕処理した破砕汚泥、当該破砕汚泥を除渣処理した除渣汚泥、当該除渣汚泥と余剰汚泥及び/又は外部汚泥を含む混合汚泥、当該混合汚泥又は当該除渣汚泥を凝集処理した凝集汚泥、当該凝集汚泥を濃縮分離した濃縮分離水、又はこれらの任意の組合せから選択される被検物の性状をモニタリングし、異常を検出した場合にリン回収装置を迂回するように当該濃縮分離水及び/又は当該リン原水の流路を切り換えることを特徴とするリン回収方法。
【請求項2】
前記被検物の性状は、導電率、pH、塩素イオン濃度、アルカリ度、もしくは明度及び彩度で示される黒色度、又はこれらの任意の組合せから選択される指標を用いてモニタリングすることを特徴とする、請求項1に記載のリン回収方法。
【請求項3】
前記被検物が前記凝集汚泥及び/又は前記濃縮分離水である場合の性状は、導電率、pH、塩素イオン濃度、アルカリ度、SS、レーザー透過率、赤外線透過率、電磁波透過率、超音波透過率、もしくは明度及び彩度で示される黒色度、又はこれらの任意の組合せから選択される指標を用いてモニタリングすることを特徴とする、請求項1に記載のリン回収方法。
【請求項4】
有機汚泥に由来する凝集汚泥を濃縮して得られる濃縮分離水をリン原水として用いてリンを回収する装置であって、
当該有機汚泥を受け入れる沈砂槽を有する受入槽、
当該有機汚泥を破砕した破砕汚泥を除渣して得られる除渣汚泥を貯留するか、又は当該除渣汚泥に余剰汚泥及び/又は外部汚泥添加して混合汚泥を形成する貯留槽、
当該混合汚泥又は当該除渣汚泥を凝集処理する凝集設備、
当該凝集汚泥を濃縮分離して濃縮分離水と濃縮汚泥とを形成する濃縮設備、
当該濃縮分離水を貯留し、リン原水とするリン原水槽、
当該リン原水槽の後段に設けられているリン回収装置、
当該受入槽からの有機汚泥を当該貯留槽に送る送液管、
当該貯留槽当該凝集設備を接続する混合汚泥送液管、
当該凝集設備からの凝集汚泥を当該濃縮設備に送る凝集汚泥送液管、
当該濃縮設備からの濃縮分離水を当該リン原水槽に送る濃縮分離水送液管、
当該リン原水槽からのリン原水を当該リン回収装置に送るリン原水送液管、
当該濃縮分離液送液管から分岐して当該リン原水槽を迂回する迂回濃縮分離水送液管、
当該リン原水送液管から分岐して当該リン回収装置を迂回する迂回リン原水送液管、
当該濃縮分離水送液管及び当該迂回濃縮分離水送液管にそれぞれ設けられている濃縮分離水送液切り換え弁、
当該リン原水送液管及び当該迂回リン原水送液管にそれぞれ設けられているリン原水送液切り換え弁、
当該沈砂槽、当該送液管、当該混合汚泥送液管、当該凝集設備、当該凝集汚泥送液管、当該濃縮設備、もしくは当該濃縮分離水送液管又はこれらの任意の組合せに設けられている計測機器
を具備し、当該有機汚泥、当該混合汚泥、当該凝集汚泥、もしくは当該濃縮分離水、又はこれらの任意の組合せから選択される被検物の性状を当該計測機器によってモニタリングし、異常を検出した場合に当該濃縮分離水及び/又は当該リン原水がリン回収装置を迂回するように、当該濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は当該リン原水送液切り換え弁を作動させることを特徴とするリン回収装置。
【請求項5】
前記受入槽と前記貯留槽との間に設けられており、前記有機汚泥を破砕して破砕汚泥を形成する破砕手段と、
当該破砕手段からの破砕汚泥を前記貯留槽に送る破砕汚泥送液管と、
をさらに具備する、請求項4に記載のリン回収装置。
【請求項6】
前記破砕汚泥送液管に設けられている前記破砕汚泥の性状をモニタリングする計測機器をさらに具備し、当該計測機器により前記破砕汚泥の異常を検出した場合に前記濃縮分離水及び/又は前記リン原水がリン回収装置を迂回するように、前記濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は前記リン原水送液切り換え弁を作動させる、請求項5に記載のリン回収装置。
【請求項7】
前記受入槽と前記貯留槽との間に設けられており、前記し尿及び/又は浄化槽汚泥を除渣処理して除渣汚泥を形成する前処理設備と、
当該前処理設備からの除渣汚泥を前記貯留槽に送る除渣汚泥送液管と、
をさらに具備する、請求項4に記載のリン回収装置。
【請求項8】
前記受入槽と前記貯留槽との間に、
前記有機汚泥を破砕して破砕汚泥を形成する破砕手段と、
当該破砕汚泥を除渣処理して除渣汚泥を形成する前処理設備と、
当該破砕手段からの破砕汚泥を当該前処理設備に送る破砕汚泥送液管と、
当該前処理設備からの除渣汚泥を前記貯留槽に送る除渣汚泥送液管と、
をさらに具備する、請求項4に記載のリン回収装置。
【請求項9】
前記破砕汚泥送液管、前記前処理設備、もしくは前記除渣汚泥送液管又はこれらの任意の組合せに設けられている計測機器をさらに具備し、当該計測機器により前記破砕汚泥及び/又は前記除渣汚泥の異常を検出した場合に前記濃縮分離水及び/又は前記リン原水がリン回収装置を迂回するように、前記濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は前記リン原水送液切り換え弁を作動させる、請求項8に記載のリン回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン回収装置及びその運転方法に関し、特にし尿、浄化槽汚泥や農業集落排水汚泥などの有機汚泥を含有する有機性廃水の処理において用いるリン回収装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿、浄化槽汚泥や農業集落排水汚泥などの有機汚泥を含有する有機性廃水を処理する際に、肥料等として再利用可能なリンを回収することが行われており、し尿等を直接脱水する際に用いる濃縮機の分離水(以後「濃縮分離水」と略称することもある。)をリン原水として用いて、脱水汚泥の低含水率化及び減容化を達成しながら、リンを回収する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5439439号公報
【特許文献2】特開2015-73979号公報
【特許文献3】特開2015-58413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
し尿、浄化槽汚泥、農業集落排水汚泥等の有機汚泥を直接脱水する処理設備において、リンを回収する場合には、リンを回収するための原液に質的変動があると、凝集剤などの薬注率、流量及び汚泥引き抜き量などの調整が必要になる。特に、し尿、浄化槽汚泥及び農業集落排水汚泥などは、処理設備に搬入される単位ごとに性状も異なり、特に浄化槽汚泥の場合や処理設備に搬入された後の貯留時間の長期化などにより腐敗することがあり、質的変動の要因が多く、リン原水として用いる濃縮分離水のSSが高くなることもある。特に腐敗汚泥の場合には、凝集剤が作用しにくく、未凝集汚泥や未反応のポリマーがリン原水中に混入することもある。濃縮分離水のSSが300mg/Lを越えると、リン回収装置内で閉塞を起こすことがあり、リン原水としては不適切となる。
【0005】
そこで、本発明は、リン原水の水質変動が生じてもリン回収装置の閉塞を起こさずに安定したリン回収運転を継続できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば下記態様のリン燐回収方法及びリン回収装置が提供される。
[1]有機汚泥に由来する凝集汚泥を濃縮して得られる濃縮分離水をリン原水として用いてリンを回収する方法であって、
当該有機汚泥、当該有機汚泥を破砕処理した破砕汚泥、当該破砕汚泥を除渣処理した除渣汚泥、当該除渣汚泥と余剰汚泥及び/又は外部汚泥を含む混合汚泥、当該混合汚泥又は当該除渣汚泥を凝集処理した凝集汚泥、当該凝集汚泥を濃縮分離した濃縮分離水、又はこれらの任意の組合せから選択される被検物の性状をモニタリングし、異常を検出した場合にリン回収装置を迂回するように当該濃縮分離水及び/又は当該リン原水の流路を切り換えることを特徴とするリン回収方法。
[2]前記被検物の性状は、導電率、pH、塩素イオン濃度、アルカリ度、もしくは明度及び彩度で示される黒色度、又はこれらの任意の組合せから選択される指標を用いてモニタリングすることを特徴とする、[1]に記載のリン回収方法。
[3]前記被検物が前記凝集汚泥及び/又は前記濃縮分離水である場合の性状は、導電率、pH、塩素イオン濃度、アルカリ度、SS、レーザー透過率、赤外線透過率、電磁波透過率、超音波透過率、もしくは明度及び彩度で示される黒色度、又はこれらの任意の組合せから選択される指標を用いてモニタリングすることを特徴とする、[1]に記載のリン回収方法。
[4]有機汚泥に由来する凝集汚泥を濃縮して得られる濃縮分離水をリン原水として用いてリンを回収する装置であって、
当該有機汚泥を受け入れる沈砂槽を有する受入槽、
当該有機汚泥を破砕した破砕汚泥を除渣して得られる除渣汚泥を貯留するか、又は当該除渣汚泥に余剰汚泥及び/又は外部汚泥を添加して、混合汚泥を形成する貯留槽、
当該混合汚泥又は当該除渣汚泥を凝集処理する凝集設備、
当該凝集汚泥を濃縮分離して濃縮分離水と濃縮汚泥とを形成する濃縮設備、
当該濃縮分離水を貯留し、リン原水とするリン原水槽、
当該リン原水槽の後段に設けられているリン回収装置、
当該受入槽からの有機汚泥を当該貯留槽に送る送液管、
当該貯留槽当該凝集設備を接続する混合汚泥送液管、
当該凝集設備からの凝集汚泥を当該濃縮設備に送る凝集汚泥送液管、
当該濃縮設備からの濃縮分離水を当該リン原水槽に送る濃縮分離水送液管、
当該リン原水槽からのリン原水を当該リン回収装置に送るリン原水送液管、
当該濃縮分離液送液管から分岐して当該リン原水槽を迂回する迂回濃縮分離水送液管、
当該リン原水送液管から分岐して当該リン回収装置を迂回する迂回リン原水送液管、
当該濃縮分離水送液管及び当該迂回濃縮分離水送液管にそれぞれ設けられている濃縮分離水送液切り換え弁、
当該リン原水送液管及び当該迂回リン原水送液管にそれぞれ設けられているリン原水送液切り換え弁、
当該沈砂槽、当該送液管、当該混合汚泥送液管、当該凝集設備、当該凝集汚泥送液管、当該濃縮設備、もしくは当該濃縮分離水送液管又はこれらの任意の組合せに設けられている計測機器
を具備し、当該有機汚泥、当該混合汚泥、当該凝集汚泥、もしくは当該濃縮分離水、又はこれらの任意の組合せから選択される被検物の性状を当該計測機器によってモニタリングし、異常を検出した場合に当該濃縮分離水及び/又は当該リン原水がリン回収装置を迂回するように、当該濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は当該リン原水送液切り換え弁を作動させることを特徴とするリン回収装置。
[5]前記受入槽と前記貯留槽との間に設けられており、前記有機汚泥を破砕して破砕汚泥を形成する破砕手段と、
当該破砕手段からの破砕汚泥を前記貯留槽に送る破砕汚泥送液管と、
をさらに具備する、[4]に記載のリン回収装置。
[6]前記破砕汚泥送液管に設けられている前記破砕汚泥の性状をモニタリングする計測機器をさらに具備し、当該計測機器により前記破砕汚泥の異常を検出した場合に前記濃縮分離水及び/又は前記リン原水がリン回収装置を迂回するように、前記濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は前記リン原水送液切り換え弁を作動させる、[5]に記載のリン回収装置。
[7]前記受入槽と前記貯留槽との間に設けられており、前記し尿及び/又は浄化槽汚泥を除渣処理して除渣汚泥を形成する前処理設備と、
当該前処理設備からの除渣汚泥を前記貯留槽に送る除渣汚泥送液管と、
をさらに具備する、[4]に記載のリン回収装置。
[8]前記前処理設備又は前記除渣汚泥送液管に設けられている前記除渣汚泥の性状をモニタリングする計測機器をさらに具備し、当該計測機器により前記除渣汚泥の異常を検出した場合に前記濃縮分離水及び/又は前記リン原水がリン回収装置を迂回するように、前記濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は前記リン原水送液切り換え弁を作動させる、[7]に記載のリン回収装置。
[9]前記受入槽と前記貯留槽との間に、
前記有機汚泥を破砕して破砕汚泥を形成する破砕手段と、
当該破砕汚泥を除渣処理して除渣汚泥を形成する前処理設備と、
当該破砕手段からの破砕汚泥を当該前処理設備に送る破砕汚泥送液管と、
当該前処理設備からの除渣汚泥を前記貯留槽に送る除渣汚泥送液管と、
をさらに具備する、[4]に記載のリン回収装置。
[10]前記破砕汚泥送液管、前記前処理設備、もしくは前記除渣汚泥送液管又はこれらの任意の組合せに設けられている計測機器をさらに具備し、当該計測機器により前記破砕汚泥及び/又は前記除渣汚泥の異常を検出した場合に前記濃縮分離水及び/又は前記リン原水がリン回収装置を迂回するように、前記濃縮分離水送液切り換え弁及び/又は前記リン原水送液切り換え弁を作動させる、[9]に記載のリン回収装置。
[11]前記計測機器は、導電率測定装置、pH測定装置、塩素イオン濃度測定装置、アルカリ度測定装置、色彩測定機器、もしくは撮影装置を有する画像処理手段又はこれらの任意の組合せである、[4]、[6]、[8]又は[10]に記載のリン回収装置。
[12]前記凝集設備、前記凝集汚泥送液管、前記濃縮設備、もしくは前記濃縮分離水送液管又はこれらの組合せに設けられている計測機器は、導電率測定装置、pH測定装置、塩素イオン濃度測定装置、アルカリ度測定装置、SS測定装置、レーザー透過率測定装置、赤外線透過率測定装置、電磁波透過率測定装置、超音波透過率測定装置、色彩測定機器、もしくは撮影装置を有する画像処理手段、又はこれらの任意の組合せである、[4]、[6]、[8]又は[10]に記載のリン回収装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン原水槽及び/又はリン回収装置に供給される前の工程において、有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水の少なくとも1つの性状をモニタリングして、異常が検出された場合にはリン原水槽及び/又はリン回収装置への供給を制御することにより、リン回収に不適切な性状のリン原水の流入を阻止し、リン原水槽におけるリン原水の性状を適切な状態に維持し、及び/又はリン回収装置の正常な運転を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のリン回収方法を実施するために好適なし尿及び/又は浄化槽汚泥のリン回収処理フロー又はリン回収装置構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明のリン回収方法を実施するために好適なし尿、浄化槽汚泥及び農業集落排水汚泥などの有機汚泥のリン回収処理フロー又はリン回収装置構成を示す概略説明図である。
【0011】
図1に示す有機汚泥等の直接脱水処理フローを実施する処理設備は、有機汚泥を受け入れる沈砂槽1を有する受入槽2と、受入槽2の後段に設けられている有機汚泥を破砕して破砕汚泥を形成する破砕手段3と、破砕汚泥を除渣処理して除渣汚泥を形成する前処理設備4と、除渣汚泥を貯留し、場合によっては他の水処理施設からの余剰汚泥や外部汚泥を添加して混合汚泥を形成する貯留槽5と、貯留槽5で形成される混合汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を形成する凝集設備7と、凝集汚泥を濃縮して濃縮汚泥と濃縮分離水とに分離する濃縮設備8と、濃縮汚泥を脱水する脱水設備9と、濃縮分離水を受け入れるリン原水槽10と、リン原水槽10からのリン原水を受け入れてリンを回収するリン回収装置12と、リン回収装置12からの脱リン水、濃縮設備8からの濃縮分離水及び脱水設備9からの脱水処理水を受け入れる脱水分離水槽13と、受入槽2と前処理設備4とを接続する送液管L1と、前処理設備4と貯留槽5とを接続する除渣汚泥送液管L2と、貯留槽5と凝集設備7とを接続する混合汚泥送液管L3と、凝集設備7と濃縮設備8とを接続する凝集汚泥送液管L4と、濃縮設備8と脱水設備9を接続する濃縮汚泥送液管L5と、濃縮設備8とリン原水槽10を接続する濃縮分離水送液管L6及びL61と、濃縮設備8と脱水分離水槽13を接続する迂回濃縮分離水送液管L62と、リン原水槽10とリン回収装置12を接続するリン原水送液管L7及びL71と、リン原水槽10と脱水分離水槽13を接続する迂回リン原水送液管L72と、リン回収装置12と脱水分離水槽13を接続する脱リン水送液管L8と、脱水設備9と脱水分離水槽13を接続する脱水処理水送液管L9と、を具備する。濃縮分離水送液管L61及び迂回濃縮分離水送液管L62には、流路を切り換える濃縮分離水送液切り換え弁V1及びV2がそれぞれ設けられている。リン原水送液管L71及び迂回リン原水送液管L72には、流路を切り換えるリン原水送液切り換え弁V3及びV4がそれぞれ設けられている。切り換え弁V1〜V4は後述する検知手段と電気的に接続されている自動弁であることが好ましいが、手動弁でもよい。切り換え弁V1〜V4が自動弁である場合には、これらの切り換え弁を自動開閉する制御装置をさらに具備する。
【0012】
本発明のリン回収方法は、有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥、及び/又は濃縮分離水の性状を検知し、濃縮分離水送液切り換え弁V1及びV2の開閉及び/又はリン原水送液切り換え弁V3及びV4の開閉を制御して、リン回収装置12へのリン原水の流入を制御することを特徴とする。
【0013】
有機汚泥の性状を検知するための検知手段又は計測機器A(以下「検知手段A」と略称する。)は、受入槽2に設け、特に受入槽2に設けられている沈砂槽1に設けることが好ましい。
【0014】
破砕汚泥の性状を検知するための検知手段又は計測機器B(以下「検知手段B」と略称する。)は、送液管L1に設ける。
【0015】
除渣汚泥の性状を検知するための検知手段又は計測機器C(以下「検知手段C」と略称する。)は、前処理設備4及び/又は除渣汚泥送液管L2に設ける。
【0016】
混合汚泥の性状を検知するための検知手段又は計測機器D(以下「検知手段D」と略称する。)は、混合汚泥送液管L3に設ける。
【0017】
凝集汚泥の性状を検知するための検知手段又は計測機器E(以下「検知手段E」と略称する。)は、凝集設備7及び/又は凝集汚泥送液管L4に設ける。
【0018】
濃縮分離水の性状を検知するための検知手段又は計測機器F(以下「検知手段F」と略称する。)は、濃縮設備8及び/又は濃縮分離水送液管L6に設ける。
【0019】
検知手段A〜Fのすべてを設けることが好ましいが、すべてを設ける必要はなく、いずれか1以上を設ければよい。また、検知手段A〜Fの少なくとも1つを送液管L1〜L6の少なくとも1つに設ける場合には、送液管L1〜L6の少なくとも1つからの検知手段用の分岐管を設けてもよい。
【0020】
検知手段A〜Fは、導電率計、pH計、塩素イオン濃度計、アルカリ度計、色彩測定機器及び撮影装置を有する画像処理装置から選択される1以上の検知手段とすることができ、2種以上を使用する場合には同一又は異なる検知手段の任意の組合せとすることができる。また、検知手段E及びFはレーザー、赤外線、電磁波又は超音波の透過率計であってもよい。さらに、検知手段FはSS計であってもよい。
【0021】
検知手段A〜Dが導電率計である場合、7000mS/m以上の有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水は、リン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0022】
検知手段A〜FがpH計である場合、pH7.0以下の有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水は、リン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0023】
検知手段A〜Fが塩素イオン濃度計である場合、Cl濃度が2500mg/L以上である有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水は、リン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0024】
検知手段A〜Fがアルカリ度計である場合、CaCOとして測定されるアルカリ度6000mg/L以上の有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水は、リン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0025】
検知手段A〜Fが色彩測定機器もしくは撮影装置を有する画像処理装置(CCDカメラなど)である場合、有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離水の明度L*が8未満、彩度C*が10未満の場合、リン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0026】
検知手段E及びFがレーザーを光源とする光透過率計である場合、2.0%以下の透過率の凝集汚泥及び50%以下の透過率の濃縮分離水はリン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0027】
検知手段FがSS計である場合、500mg/L以上の濃縮分離水はリン原水として不適と判断され、切り換え弁V1が閉じられ、切り換え弁V2が開かれて、濃縮分離水を脱水分離水槽13に送り、リン原水槽10に送らないように流路が切り換えられるか、及び/又は切り換え弁V3が閉じられ、切り換え弁V4が開かれて、リン原水を脱水分離水槽13に送り、リン回収装置12に送らないように流路が切り換えられる。
【0028】
貯留槽5に余剰汚泥が供給される場合には、混合汚泥、凝集汚泥、及び濃縮分離液の導電率、塩素イオン濃度及びアルカリ度は低くなるため、導電率が6200mS/m以上、塩素イオン濃度が2200mg/L以上、アルカリ度が5500mg/L以上が検出された場合に、アルカリ原水として不適と判断する。
【0029】
本発明のリン回収方法によれば、有機汚泥、破砕汚泥、除渣汚泥、混合汚泥、凝集汚泥及び濃縮分離液のいずれか1つ以上で計測される導電率が7000mS/m未満、好ましくは6500ms/m以下、塩素イオン濃度が2500mg/L未満、好ましくは2000mg/L以下、pHが7.0よりも大きく、好ましくは7.5以上、アルカリ度がCaCOとして6000mg/L未満、好ましくは5500mg/L以下、明度L*が8以上、好ましくは12以上、彩度C*が10以上、好ましくは16以上、凝集汚泥のレーザー透過率又は光透過率が2.0%より大きく、好ましくは10.0%以上、濃縮分離水のレーザー透過率又は光透過率が50%より大きく、好ましくは70%以上の場合、及び濃縮分離水のSSが500mg/L未満、好ましくは300mg/L以下の場合に、濃縮分離水をリン原水として用いることができる。
【0030】
本発明のリン回収方法にて用いることができるリン回収工程又はリン回収装置は、晶析法であるMAP法を利用することが好ましい。MAP法は、有機汚泥に由来するアンモニウムイオン及びオルトリン酸イオンとマグネシウムイオンの反応により、リン酸マグネシウムアンモニウム(NHMgPO・6HO)としてリンを回収する方法である。リン回収装置には、塩化マグネシウムなどのマグネシウムイオン源を秤量供給する手段が設けられていることが好ましい。
【0031】
凝集設備に供給される凝集剤は特に限定されず、有機汚泥の水処理方法において通常用いられる凝集剤を用いることができる。
【0032】
なお、本発明のリン回収方法を実施するための装置は、図1に示す装置構成に限定されず、破砕手段3及び/又は前処理設備4、並びにこれらに関連する送液管、あるいは貯留槽5に余剰汚泥を供給する配管を省略してもよい。また、し尿と浄化槽汚泥を別々に受け入れる施設においてはそれぞれの受入槽2を設けて、貯留槽5にて混合してもよい。あるいは、し尿は受入槽2から貯留槽5に送られ、浄化槽汚泥は受入槽2から前処理設備4に送られた後に貯留槽5に送られてもよい。また、貯留槽5と凝集設備7との間に破砕手段を追加的に設けてもよい。さらに、脱水設備9にて生じる脱水液を貯留槽5に戻す脱水液送液管を設けてもよい。また、図1に示す態様において、脱水汚泥は後段のホッパ14に送られ計量されるが、脱水汚泥をそのまま外部搬出して処分してもよいし、堆肥や固形燃料として資源化して再利用しても良いし、同じ施設内の焼却炉にて燃料として再利用してもよいし、貯蔵してもよい。脱リン水及び脱水処理水、場合によってはリン回収に不適切と判断された濃縮分離水及びリン原水は、脱水分離水槽13からそのままあるいは希釈されて下水に放流されてもよいし、別の水処理設備にてさらに処理されてもよい。また、リン回収装置12は、運転負荷(トルク、電流値、圧力など)を計測する手段Gを有していてもよい。
図1