特許第6687475号(P6687475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6687475-ベントピース及びゴム成形用金型 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687475
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ベントピース及びゴム成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/10 20060101AFI20200413BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20200413BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20200413BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   B29C33/10
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29K21:00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-139559(P2016-139559)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-8450(P2018-8450A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲二
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−044154(JP,A)
【文献】 特開平11−280398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−35/18
B29K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成形用金型のベントホールに取り付けられるベントピースであって、粒状物の集合体からなり、外周部が、内側部分を形成する粒状物に比べて粒径の大きい粒状物で形成された、ベントピース。
【請求項2】
前記内側部分を形成する粒状物の粒径が0.2〜0.6mmであり、前記外周部を形成する粒状物の粒径が0.4〜1.0mmである、請求項1に記載のベントピース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベントピースがベントホールに取り付けられたゴム成形用金型。
【請求項4】
前記ベントピースの端面が金型のキャビティに面している、請求項3に記載のゴム成形用金型。
【請求項5】
前記ベントピースの前記外周部を形成する粒状物が、前記ベントホールの壁面よりも高硬度の材料からなる、請求項3又は4に記載のゴム成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ベントピース及びゴム成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品を成形するために用いられる金型(即ち、ゴム成形用金型)には、金型内部の空気を排気するために、排気孔としてのベントホールが設けられている。例えば、タイヤ加硫成形用金型には、未加硫タイヤと金型との間に存在する空気を排気するために、多数のベントホールが形成されている。
【0003】
これらのベントホールには成形中にゴム材料が流れ込んでスピューと称される髭状の突起が形成されるため、別途除去工程が必要となる。そこで、ベントホールからの排気を可能にしつつ、ゴム材料の流れ込みを抑制するために、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、ベルトホールに取り付けるベントピースとして、金属焼結体からなる多孔質体を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−062235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにベントピースは金型のベントホールに取り付けられるものであり、金型本体とは別部品であるため、ベントホールからの脱落を防止する必要がある。すなわち、ゴム製品の脱型時にベントピースがベントホールから抜けてゴム製品に残留することを回避するべく、ベントピースはベントホールにしっかり固定されることが望まれる。
【0006】
本発明の実施形態は、ゴム材料の流れ込みを抑制しかつベントホールからの排気を可能にしつつ、ベントホールからの抜けを抑制することができる、ベントピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るベントピースは、ゴム成形用金型のベントホールに取り付けられるベントピースであって、粒状物の集合体からなり、外周部が、内側部分を形成する粒状物に比べて粒径の大きい粒状物で形成されたものである。
【0008】
本発明の実施形態に係るゴム成形用金型は、前記ベントピースがベントホールに取り付けられたものである。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、ゴム材料の流れ込みを抑制しかつベントホールからの排気を可能にしつつ、ベントホールからの抜けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るゴム成形用金型の断面図である。
図2】ベントホールにベントピースを取り付けた状態を示すゴム成形用金型の要部拡大断面図である。
図3】(A)はベントピースの平面図であり、(B)はそのX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るゴム成形用金型10の断面図である。この金型10は、空気入りタイヤを加硫成形するための金型、即ちタイヤ加硫成形用金型である。金型10は、タイヤのトレッド部を成形するための環状のトレッド型部12と、タイヤのサイドウォール部を成形するための上下一対のサイド型部14,14と、タイヤのビード部を形成するための上下一対のビードリング16,16を備え、空気入りタイヤの成形空間であるキャビティ18を形成する。
【0013】
トレッド型部12の内周面であるトレッド成形面には、トレッド部に溝を成形するための突条20が設けられ、これら突条20で区画された領域が、トレッド部にリブやブロックなどの陸部を形成するための凹部22となっている。
【0014】
トレッド成形面を含む金型内面24には、金型10の外部に連通するエア抜き用のベントホール26が設けられている。ベントホール26は各凹部22に設けられている。また、ベントホール26は、トレッド型部12の内周面だけでなく、サイド型部14におけるサイドウォール成形面にも設けられている。
【0015】
図2に示すように、ベントホール26にはベントピース30が取り付けられている。ベントピース30は、図3に示すように、粒状物の集合体からなり、ベントホール26に嵌合する外周部32が、その内側部分34を形成する粒状物36に比べて粒径の大きい粒状物38で形成されている。すなわち、ベントピース30は、多数の粒状物をあわせて一体化してなる集合体であって、小粒径の粒状物36で形成された芯部である内側部分34と、その外周を取り囲む鞘部であり大粒径の粒状物38で形成された外周部32と、を含むものである。ベントピース30は、粒状物36,38の集合体からなるため、粒状物間に空隙を持ち、該空隙が互いに連通した多孔質体である。そのため、軸方向(高さ方向)に延びる多数の縦孔を有して、当該軸方向に空気を透過させることができる。
【0016】
ベントピース30を構成する粒状物36,38の材料としては、鉄(例えばスチール)やアルミニウムなどの金属が好ましい。また、粒状物36,38の形状としては、球体であることが好ましい。
【0017】
ベントピース30は、柱状、好ましくは円柱状をなし、その外径Dは、特に限定されず、例えば2.0〜5.0mmでもよく、2.0〜3.5mmでもよい。また、高さ(軸方向長さ)Lは、特に限定されず、例えば5〜20mmでもよく、10〜15mmでもよい。
【0018】
ベントピース30は、小粒径の粒状物36からなる内側部分34を主部とし、その外周が全周にわたって外周部32により取り囲まれている。詳細には、内側部分34は、柱状好ましくは円柱状をなし、外周部32は、筒状、好ましくは円筒状をなす。この例では、外周部32は、内側部分34の外周面に大粒径の粒状物38を一層構造に設けてなる単粒子膜状に形成されている。ベントピース30の軸方向における両側の端面40,40は、図3(A)に示すように、内側部分34と、その周りを取り囲む外周部32とで構成されている。
【0019】
内側部分34を形成する粒状物36の粒径は0.2〜0.6mmであることが好ましい。これにより、空気の透過性を確保しつつ、ゴム材料の流れ込みによる詰まりを抑制する効果を高めることができる。外周部32を形成する粒状物38の粒径は0.4〜1.0mmであることが好ましい。これにより、ベントホール26からのベントピース30の抜けを抑制する効果を高めることができる。なお、内側部分34の粒状物36の粒径に対する外周部32の粒状物38の粒径の比は、特に限定しないが、例えば1.3〜2.5倍でもよく、1.5〜2.0倍でもよい。粒状物36,38は、上記のように球体であることが好ましく、より好ましくはそれぞれ粒径にばらつきのない均一の直径を持つ球体を用いることである。
【0020】
ここで、粒状物36,38の粒径は、顕微鏡観察により画像を得て、この画像を用いて、無作為抽出された10個の粒状物の直径(最大差渡し部での長さ)を計測することにより、その相加平均として求められる平均粒径である。
【0021】
ベントピース30は、好ましくは、多数の粒状物からなる焼結体(多孔質焼結体)であり、粒径差のある粒状物を用いて、通常の焼結法又は3Dレーザープリンターによる焼結法等により製造することができる。通常の焼結法としては、金型で成形し、圧力を加えながら加熱により焼結する方法が挙げられる。3Dレーザープリンターによる焼結法としては、例えば粉末焼結積層造形法などを用いることができる。通常の焼結法の場合、例えば、小粒径の粒状物36を用いて内側部分34となる柱状体を焼結により作製し、該柱状体の周りに大粒径の粒状物38を巻き付けて焼結することにより、ベントピース30が得られる。また、3Dレーザープリンターによる焼結法の場合、例えば、小粒径の粒状物36を用いて内側部分34となる柱状体を3Dレーザープリンターで作製するとともに、大粒径の粒状物38を用いて外周部32となる筒状体を3Dレーザープリンターで作製し、その後、筒状体の内側に柱状体を嵌め入れて、両者の界面を焼結することで、ベントピース30が得られる。
【0022】
図2に示すように、ベントピース30は、ベントホール26内に嵌合固定される。ベントピース30は、その端面40が金型10のキャビティ18に面した状態で取り付けられており、金型10の成形面に露出している。そのため、ベントピース30の端面40が成形面の一部を構成している。
【0023】
詳細には、ベントホール26には、ベントピース30が装着される装着穴部28が設けられている。装着穴部28は、ベントホール26の金型内面24側の端部において金型内面24に開口する円柱面状の穴部であり、ベントホール26の本体流路部に対し段差部28Aを介して広げられた形状を持つ。装着穴部28は、ベントピース30の外径D及び高さLに対応した寸法に形成されており、この例では、ベントホール26にベントピース30を圧入したとき、ベントピース30が締り嵌めされるように、装着穴部28の内径はベントピース30の外径よりも若干小さく設定されている。
【0024】
本実施形態では、ベントピース30の外周部32を形成する粒状物38が、ベントホール26の壁面よりも高硬度の材料で形成されている。一例として、ベントピース30を構成する粒状物36,38の材料として鉄を用い、ベントホール26が設けられた金型10(例えば、トレッド型部12)をアルミニウムで形成してもよい。
【0025】
以上よりなる金型10を用いて空気入りタイヤを製造する際には、金型10内に未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)をセットして型閉めした後、内側に配置した不図示のブラダーを膨張させて、未加硫タイヤを金型内面24に押し当て、加熱状態に保持することにより未加硫タイヤが加硫成形される。その際、本実施形態では、未加硫タイヤと金型内面24との間に溜まった空気が、多孔質体からなるベントピース30を通過し、ベントホール26から外部に排出される。ゴム材料は、多孔質体よりなるベントピース30によってベントホール26内への侵入が阻止される。そのため、ベントホール26からの排気を可能にしつつ、ベントホール26へのゴム材料の流れ込みを抑制することができ、スピュー除去工程も不要となる。
【0026】
本実施形態であると、ベントピース30の外周部32が、その内側部分34よりも、粒径の大きい粒状物38で形成されているので、次の作用効果が奏される。すなわち、金型10は、一般に成形時の熱により膨張する。かかる金型10の熱膨張により、ベントホール26の壁面は、ベントピース30の粒状物38間の隙間に入り込むように変形する。その際、ベントホール26が接するベントピース外周部32の粒径が大きいと、粒状物38間の隙間に入り込むことで形成されるベントホール26の壁面の凹凸も大きくなる。そのため、この凹凸が抜け止め構造となって、ベントホール26からのベントピース30の抜けを効果的に抑制することができる。
【0027】
また、ベントピース30は、内側部分34が小粒径の粒状物36からなるため、ゴム材料の流入を抑制する効果が高い。また、内側部分34の内部に存在する空気層により、保温性を確保しやすく、ベントホール26が設けられていない部分と同等の加硫促進効果を持たせることができる。
【0028】
また、本実施形態であると、ベントピース30の外周部32を形成する粒状物38が、ベントホール26の壁面よりも高硬度の材料からなるため、次の作用効果が奏される。すなわち、ベントホール26にベントピース30を圧入したときに、硬度の低いベントホール26の壁面が、ベントピース30を構成する粒状物38間の隙間に入り込むように変形する。この変形により形成されるベントホール26の壁面の凹凸が抜け止め構造となって、ベントホール26からのベントピース30の抜けを抑制することができる。そのため、上記の熱膨張よりも前の段階から凹凸による抜け止め構造を形成することができ、抜け止め効果を高めることができる。しかも、外周側の粒状物38が大粒径であるため、形成される凹凸が大きく、抜け止め効果をより一層高めることができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、ベントピース30の外周部32を形成する粒状物38に、ベントホール26の壁面よりも高硬度の材料を用いたが、これとは逆に、外周部32を形成する粒状物38に、ベントホール26の壁面よりも低硬度の材料を用いてもよい。例えば、ベントピース30を構成する粒状物36,38の材料としてアルミニウムを用い、ベントホール26が設けられた金型10(例えば、トレッド型部12)を鉄で形成してもよい。その場合、ベントホール26にベントピース30を圧入したとき、硬度の低い粒状物38が潰れることによりベントホール26の壁面との接触面積が大きくなり、接触面積の増加による抜け止め効果を発揮することができる。
【0030】
また、ベントピース30の外周部32を形成する粒状物38とベントホール26の壁面とを同材質で形成してもよい。同材質にすることで、ベントピース30とその周りの金型10との熱伝導率を合わせて、両者間での加硫促進効果の差を低減することができる。
【0031】
一実施形態として、トレッド型部12をアルミニウムで形成し、サイド型部14を鉄で形成した場合に、ベントピース30を構成する粒状物36,38として鉄を用いてもよい。この場合、トレッド型部12のベントホール26では、ベントピース30の圧入時に形成されるベントホール26の壁面の凹凸を大きくすることができる。一方、サイド型部14のベントホール26では、ベントピース30と同材質で形成されることで、熱伝導率を合わせて加硫促進効果の差を低減することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、タイヤ加硫成形用金型について説明したが、例えば、防振ゴム部材等、様々なゴム製品を成形する金型に用いることができる。
【0033】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
10…金型、12…トレッド型部、14…サイド型部、18…キャビティ、24…金型内面、26…ベントホール、30…ベントピース、32…外周部、34…内側部分、36…外周部の粒状物、38…内側部分の粒状物、40…端面
図1
図2
図3