(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。既に説明した実施形態の構成と類似(対応)する構成について、既に説明した実施形態の符号とは異なる符号を付した場合においても、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
【0017】
<第1実施形態>
(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
【0018】
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯)を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、溶湯に代えて、固液共存金属を用いることも可能である。
【0019】
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
【0020】
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体部3と、マシン本体部3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
【0021】
マシン本体部3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(
図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体部3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、基本的には(例えば射出装置9の取付けに係る部分を除いて)、公知の種々の構成と同様とされてよい。
【0022】
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
【0023】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(
図2参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
【0024】
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
【0025】
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
【0026】
なお、ダイカストマシン1のうち射出装置9に着目する場合において、制御ユニット5は、射出装置9の制御ユニットとして捉えられてよい。
【0027】
(射出装置の構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(
図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがある。
【0028】
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
【0029】
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
【0030】
(射出駆動部の概略構成)
図2は、射出装置9(射出駆動部25)の具体的な構成を示す模式図である。
図2は、基本的に上方又は側方から見た図となっているが、図示の都合上、一部(例えば液圧系)はこの限りではない。また、
図2は適宜に断面図を含んでいる。
【0031】
射出装置9は、いわゆる全電動式の射出装置として構成されている。すなわち、射出装置9は、射出用電動機27及び増圧用電動機29を有しており、プランジャ23は、基本的に、射出の全工程に亘って射出用電動機27及び増圧用電動機29の駆動力によって駆動され、ポンプやアキュムレータ等の油圧機器の駆動力によっては駆動されない。
【0032】
射出用電動機27は、主として、低速射出及び高速射出(狭義の射出)に利用されるものであり、増圧用電動機29は、主として増圧に利用されるものである。射出装置9は、射出用電動機27及び増圧用電動機29の駆動力をプランジャ23に伝達し、かつ使用する電動機を工程の進行に応じて切り換えるために、プランジャ23とこれら電動機との間に介在する統合伝達機構31を有している。
【0033】
統合伝達機構31は、プランジャ23に連結され、射出用電動機27及び増圧用電動機29の駆動力のプランジャ23への伝達、及び使用する電動機の切換えに寄与するシリンダ機構33と、射出用電動機27の駆動力をシリンダ機構33へ伝達するための射出用伝達機構35と、増圧用電動機29の駆動力をシリンダ機構33へ伝達するための増圧用伝達機構37とを有している。
【0034】
(電動機)
電動機の台数は、適宜に設定されてよい。本実施形態の説明では、2つの射出用電動機27と1つの増圧用電動機29とが設けられる態様を例に取る。
【0035】
射出用電動機27及び増圧用電動機29は、例えば、回転式の電動機により構成されており、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。なお、これらの電動機は、適宜な形式のものとされてよく、例えば、直流電動機であってもよいし、交流電動機であってもよいし、同期電動機であってもよいし、誘導電動機であってもよい。
【0036】
射出用電動機27及び増圧用電動機29は、例えば、サーボモータとして構成されている。すなわち、射出用電動機27は、その回転を検出する回転センサ27sを有し、回転センサ27sの検出値に基づいて、不図示のサーボドライバにより回転数のフィードバック制御がなされる。同様に、増圧用電動機29は、その回転を検出する回転センサ29sを有し、回転センサ29sの検出値に基づいて、不図示のサーボドライバにより回転数のフィードバック制御がなされる。射出用電動機27及び増圧用電動機29の回転センサは、例えば、回転量に応じた数のパルスを出力するエンコーダである。
【0037】
また、増圧用電動機29のサーボドライバは、例えば、増圧用電動機29に流れる電流を検出し、その検出値に基づいてトルクのフィードバック制御を行うことが可能である。射出用電動機27のサーボドライバも、そのようなトルクのフィードバック制御が可能であってもよい。
【0038】
射出用電動機27及び増圧用電動機29(特に射出用電動機27)は、低慣性電動機により構成されていることが好ましい。すなわち、これら電動機は、定格トルクに対してロータのイナーシャが相対的に小さい電動機により構成されていることが好ましい。なお、低慣性電動機は、そのカタログ乃至は仕様書などにおいて、低慣性電動機である旨が記載されていることが多く、当該記載に基づいて低慣性電動機であるか否かを特定可能である。一般に、低慣性電動機は、ロータ径をロータの軸方向長さに対して相対的に小さくして構成されている。ただし、磁石材料、ロータ径、鉄心形状及び積厚等を最適化することにより低慣性が実現されたものも知られている。
【0039】
射出用電動機27及び増圧用電動機29の仕様は、互いに同一であってもよいが、本実施形態では互いに異なっている。例えば、射出用電動機27は、増圧用電動機29に比較して、定格回転数が高く、定格トルクが低い。
【0040】
射出用電動機27及び増圧用電動機29の配置は適宜に設定されてよい。例えば、射出用電動機27及び増圧用電動機29は、シリンダ機構33に対して並列に配置されている。より具体的には、例えば、射出用電動機27は、その出力軸27aを後方へ向けている。増圧用電動機29は、その出力軸29aを後方に向けている。
【0041】
また、例えば、射出用電動機27及び増圧用電動機29のシリンダ機構33の軸回りの絶対的な位置及び両電動機間の相対位置は適宜に設定されてよい。なお、
図2では、図示の都合上、この軸回りの位置を正確には示していない。2つの射出用電動機27は、例えば、平面視又は側面視においてシリンダ機構33に対して概ね対称に配置されている。増圧用電動機29は、例えば、シリンダ機構33の軸回りにおいて2つの射出用電動機27の中間位置に配置されている。
【0042】
(シリンダ機構)
シリンダ機構33は、油圧シリンダ(射出シリンダ)を含む液圧装置に類似した構成とされている。具体的には、例えば、シリンダ機構33は、シリンダ部材39と、シリンダ部材39に摺動可能に収容されているピストン41と、ピストン41に固定されており、シリンダ部材39からピストン41の移動方向の一方側(前方)へ延び出ている前側ロッド43と、ピストン41に固定されており、前側ロッド43とは反対側(後方)へ延びている後側ロッド45と、ピストン41の背後に位置する加圧部材47と、を有している。
【0043】
シリンダ機構33は、プランジャ23に対して同軸的に配置されている。前側ロッド43は、カップリング49を介してプランジャ23の後端に同軸に連結されている。シリンダ部材39は、固定的(移動不可能)に設けられている。従って、射出用電動機27の駆動力を後側ロッド45に伝達することによって、プランジャ23を駆動することができる。また、増圧用電動機29の駆動力を加圧部材47に伝達することによって、ピストン41の背後の液体(例えば油)を加圧して、プランジャ23を駆動することができる。
【0044】
シリンダ部材39のうちピストン41の前方側、並びにピストン41及び前側ロッド43の構成は、一般的な射出シリンダのものと同様とされてよい。例えば、ピストン41は、概ね円柱状である。前側ロッド43は、概ね断面円形であり、概ね一定の断面形状で延びている。シリンダ部材39の内部は、ピストン41によって、前側ロッド43が延び出る側のロッド側室39rと、その反対側のヘッド側室39hとに区画されている。これら2つのシリンダ室には、液体が満たされている。シリンダ部材39は、例えば、型締装置7の、固定金型103を保持している固定ダイプレート(符号省略)に固定されたフレーム51に固定されている。
【0045】
後側ロッド45は、例えば、前側ロッド43と同様に、概ね断面円形であり、概ね一定の断面形状で延びている。後側ロッド45は、加圧部材47等を貫通してヘッド側室39hの外部へ延び出ている。後側ロッド45の断面積(径)は、ピストン41の断面積(径)よりも小さい限り、適宜に設定されてよく、例えば、前側ロッド43の断面積(径)よりも小さくてもよいし、同様でもよいし、大きくてもよい。両者の好適な大小関係については、後に、後側ロッド45の作用を説明する際に適宜に言及する。図示の例では、後側ロッド45の断面積は、前側ロッド43の断面積に対して同等である。
【0046】
加圧部材47は、例えば、シリンダ部材39を摺動可能なピストンにより構成されている。加圧部材47は、シリンダ部材39の内部を、ヘッド側室39hと、その反対側(後方)の空間(符号省略。図では、加圧部材47が後退限に位置していることから容積0となっている)とに区画している。当該後方の空間は、例えば、液体が満たされておらず、大気開放されている。
【0047】
加圧部材47には、後側ロッド45が挿通される穴47hが形成されている。後側ロッド45は、穴47hの内周面に対して摺動可能とされている。別の観点では、後側ロッド45の端面(紙面右側の面)は、加圧部材47によってヘッド側室39hから隔離されている。穴47hは、例えば、加圧部材47をその移動方向に貫通する貫通孔である。
【0048】
なお、加圧部材47は、シリンダ部材39の後端面の内側に当接して後退限が規定されてよい。後側ロッド45の中途には、加圧部材47の前面に当接して、ピストン41と加圧部材47との一定以上の近接を規制するストッパ45sが設けられてよい。ストッパ45sは、例えば、フランジ状に形成されている。ピストン41の後退限は、ストッパ45sによって加圧部材47に対する後退が規制され、かつ加圧部材47の後退限がシリンダ部材39によって規定されることによって規定されてもよいし、シリンダ部材39内に設けられてピストン41に当接する不図示のストッパによって規定されてもよい。
【0049】
(シリンダ機構に係る液圧系)
統合伝達機構31は、シリンダ機構33に係る液体の流れを制御するための液体制御部53を有している。液体制御部53は、例えば、ロッド側室39rとヘッド側室39hとを連通する連通流路55と、ロッド側室39r及び/又はヘッド側室39h(本実施形態では双方)に接続されたアキュムレータ57と、連通流路55に設けられたヘッド側バルブ59、流量制御弁61及び補助バルブ63とを有している。
【0050】
連通流路55(及びその他の流路)は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。連通流路55は、一端がピストン41の前進限よりも前方にてロッド側室39rに通じ、他端がピストン41の後退限よりも後方にてヘッド側室39hに通じている。連通流路55が設けられていることにより、ピストン41が前進する際、ロッド側室39rの容積の縮小に伴ってロッド側室39rから排出される液体によって、容積が拡大するヘッド側室39hへの液体の補給を行うことができる。同様に、ピストン41が後退する際、ヘッド側室39hから排出される液体によってロッド側室39rへの液体の補給を行うことができる。
【0051】
ピストン41の移動に伴うロッド側室39rの容積の変化量は、ピストン41の断面積から前側ロッド43の断面積を差し引いた断面積にピストン41の移動量を乗じた大きさである。ピストン41の移動に伴うヘッド側室39hの容積の変化量は、ピストン41の断面積から後側ロッド45の断面積を差し引いた断面積にピストン41の移動量を乗じた大きさである。従って、後側ロッド45が設けられていることによって、後側ロッド45が設けられていない態様に比較して、ロッド側室39rの容積の変化量とヘッド側室39hの容積の変化量との差は緩和される。ひいては、上記のように連通流路55によってロッド側室39r及びヘッド側室39h同士で液体を補給し合う場合における液体の過不足は緩和される。
【0052】
上記の過不足緩和の効果は、加圧部材47の動作の影響等を無視すると、後側ロッド45の断面積が前側ロッド43の断面積と同等であるときに最大となる。また、後側ロッド45の断面積が前側ロッド43の断面積の2倍未満である限り、後側ロッド45の断面積が非常に小さくても、又は前側ロッド43の断面積よりも大きくても、上記の効果は奏される。なお、後側ロッド45の断面積が前側ロッド43の断面積の2倍以上となると、後側ロッド45が設けられていない態様に対して、液体の不足又は過剰が生じるシリンダ室がロッド側室39rとヘッド側室39hとで逆になった状態で、後側ロッド45が設けられていないときと同程度以上の過不足が生じる。
【0053】
アキュムレータ57は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。図示の例では、アキュムレータ57は、シリンダ式のものとされており、符号は省略するが、シリンダ部材と、シリンダ部材に摺動可能に収容されたピストンとを有している。シリンダ部材の内部は、ピストンによって気体室と液体室とに区画されており、液体室がシリンダ機構33に接続されている。
【0054】
アキュムレータ57は、通常の射出シリンダに接続されるアキュムレータとは異なり、液体の送出によってピストン41を駆動することを目的としたものではなく、その圧力は比較的低くてよい。例えば、アキュムレータ57の気体室の圧力(例えばアキュムレータ57の仕様で設定されている最高圧力又は成形サイクル中に実際に生じる最高圧力)は、高圧ガス保安法において高圧と定義されている圧力(1MPa)よりも低くてよい。また、アキュムレータ57として、いわゆるミニボトルが用いられてもよい。
【0055】
アキュムレータ57は、例えば、連通流路55に接続されており、ひいては、ロッド側室39r及びヘッド側室39hに通じている。ただし、後述の動作から理解されるように、アキュムレータ57は、必ずしもヘッド側室39hに通じている必要はなく、連通流路55とは別個にロッド側室39rに接続されていてもよい。
【0056】
ヘッド側バルブ59は、連通流路55に設けられており、ロッド側室39r及びヘッド側室39hの双方向の流れを許容可能であるとともに、少なくともヘッド側室39hからロッド側室39rへの流れ(別の観点ではヘッド側室39hからの液体の排出)を禁止可能である。例えば、ヘッド側バルブ59は、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていないときは、ロッド側室39rからヘッド側室39hへの流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止し、パイロット圧が導入されているときは、双方の流れを許容する。また、ヘッド側バルブ59は、連通流路55において、連通流路55とアキュムレータ57との接続位置よりもヘッド側室39h側に設けられている。
【0057】
ヘッド側バルブ59に対するパイロット圧の導入を停止し、ヘッド側バルブ59によってヘッド側室39hからの液体の排出を禁止することによって、例えば、増圧用電動機29の駆動力を加圧部材47に伝達して加圧部材47を前進させたときに、ヘッド側室39hの圧力を上昇させ、ピストン41に前進方向への力を付与することができる。すなわち、増圧用電動機29の駆動力をプランジャ23に伝達することができる。このとき、ロッド側室39rの圧力は、例えば、アキュムレータ57に逃がされる。
【0058】
流量制御弁61は、ロッド側室39rから排出される液体の流量を制御するためのものである。ロッド側室39rからの液体の流量を制御することによって、ピストン41の速度を制御し、ひいては、射出の際における前進方向の慣性力を制御することができる。流量制御弁61は、例えば、連通流路55において、連通流路55とアキュムレータ57との接続位置よりもロッド側室39r側に設けられている。
【0059】
流量制御弁61は、例えば、圧力補償を行うもの(流量調整弁)であってもよし、圧力補償を行わないものであってもよい。また、流量制御弁61は、温度補償を行うものであってもよいし、温度補償を行わないものであってもよい。流量制御弁61の制御方式は、例えば、ばね式、電磁式及びパイロット式並びにこれらの2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。流量制御弁61は、フィードバック制御がなされるサーボバルブであってもよいし、オープン制御がなされる比例弁であってもよい。
図2では、流量制御弁61として、圧力補償機能付きかつ温度補償機能付きの流量制御弁であって、ばねの復元力によって閉じられ、電磁力とパイロット圧力とが順次作動して開かれるものが図示されている。
【0060】
補助バルブ63は、流量制御弁61をバイパスする流路に設けられた逆止弁である。すなわち、流量制御弁61及び補助バルブ63は、逆止弁付流量制御弁を構成している。補助バルブ63は、流量制御弁61をバイパスする流路において、ロッド側室39rからヘッド側室39hへの液体の流れを禁止するとともに、その反対方向の流れを許容する。従って、流量制御弁61の開閉に関わらずに、アキュムレータ57からロッド側室39rへの流れ、及びヘッド側室39hから開状態のヘッド側バルブ59を介したロッド側室39rへの流れは許容されている。ただし、補助バルブ63が省略され、適宜に流量制御弁61を開く制御が行われて、ロッド側室39rへの流れが許容されてもよい。
【0061】
(射出用伝達機構)
射出用伝達機構35は、例えば、巻掛伝動機構(符号省略)と射出用ねじ機構69とを含んで構成されている。具体的には、例えば、射出用伝達機構35は、射出用電動機27の出力軸27aに固定されたプーリ65と、プーリ65に掛けられたベルト67と、ベルト67が掛けられたナット71と、ナット71に螺合されたねじ軸73とを有している。なお、プーリ65、ベルト67及びナット71によって巻掛伝動機構の一種であるプーリ・ベルト機構が構成されている。ナット71及びねじ軸73によって射出用ねじ機構69が構成されている。
【0062】
プーリ65及びベルト67は、射出用電動機27の回転をナット71に伝達する。これらの部材は、例えば、射出用電動機27をねじ軸73に対して並列に配置したり、射出用ねじ機構69に対する射出用電動機27の配置の自由度を向上させたりすることに寄与している。プーリ65の径とナット71の径とは、同等であってもよいし、一方が他方よりも大きくてもよい。すなわち、射出用伝達機構35の巻掛伝動機構は、減速又は増速に寄与しなくてもよいし、寄与してもよい。図示の例では、両者の径は概ね同等である。ベルト67は、例えば、歯付ベルトであってもよいし、歯が付いていないものであってもよい。射出用伝達機構35の巻掛伝動機構は、スプロケット・チェーン機構のように、プーリ・ベルト機構以外の他の形式のものであってもよい。
【0063】
射出用ねじ機構69は、射出用電動機27の回転を直線運動に変換することに寄与する。射出用ねじ機構69は、ナット71とねじ軸73との間にボールが介在するボールねじ機構であってもよいし、ボールが介在しないすべりねじ機構であってもよい。伝動効率を向上させて高速化を図る等の観点からは前者が好ましい。射出用ねじ機構69は、ねじ溝が1本の1条ねじ式のものであってもよいし、ねじ溝が2本以上の多条ねじ式のものであってもよい。
【0064】
射出用ねじ機構69は、例えば、シリンダ機構33に対して概略同軸的に配置されている。具体的には、ねじ軸73は、後側ロッド45に対して同軸的に後側ロッド45の端部に固定されている。なお、ねじ軸73は、後側ロッド45とは別の部材からなり、後側ロッド45に固定されていてもよいし、後側ロッド45と一体的に形成されることによって後側ロッド45に固定されていてもよい。後側ロッド45の径及びねじ軸73の径(例えばねじの外径)は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。ナット71は、後述する増圧用ねじ機構83よりも後方に位置している。
【0065】
ナット71は、軸回りの回転が許容されているとともに軸方向の移動が規制されている。一方、ねじ軸73は、軸回りの回転が規制されているとともに軸方向の移動が許容されている。従って、射出用電動機27の回転がプーリ65及びベルト67を介してナット71に伝達されると、ねじ軸73がその軸方向に移動する。ひいては、後側ロッド45等を介してねじ軸73に固定されているプランジャ23が前後方向に移動する。
【0066】
ナット71の軸回りの回転の許容及び軸方向の移動の規制は、例えば、ナット71が適宜な軸受けによって支持されることによりなされている。ねじ軸73の軸回りの回転の規制は、例えば、ねじ軸73に同軸的に固定された後側ロッド45がピストン41及び/又は加圧部材47に対して偏心して設けられたり、ピストン41及び加圧部材47に対して同軸及び同心に設けられた後側ロッド45に対してねじ軸73が偏心して設けられたり、ねじ軸73に設けられた不図示のスプライン溝がシリンダ部材39に固定的なガイドに案内されたり、及び/又はねじ軸73に並列で軸方向の移動のみが許容された不図示のガイド軸がねじ軸73に固定されたりすることによってなされる。
【0067】
ナット71には、2つのベルト67が掛けられており、2つの射出用電動機27の駆動力が伝達される。ただし、射出用電動機27毎にナット71が設けられてもよい。2つの射出用電動機27の制御においては、タンデム制御が行われてもよい。また、射出用電動機27は、1つのみ設けられてもよい。
【0068】
(増圧用伝達機構)
増圧用伝達機構37は、例えば、巻掛伝動機構(符号省略)及び増圧用ねじ機構83を含んで構成されている。具体的には、増圧用伝達機構37は、増圧用電動機29の出力軸29aに固定されたプーリ79と、プーリ79に掛けられたベルト81と、ベルト81が掛けられたナット85と、ナット85に螺合されるとともに加圧部材47に固定されたねじ軸87とを有している。なお、プーリ79、ベルト81及びナット85によって巻掛伝動機構の一種であるプーリ・ベルト機構が構成されている。ナット85及びねじ軸87によって増圧用ねじ機構83が構成されている。
【0069】
プーリ79及びベルト81は、増圧用電動機29の回転をナット85に伝達する。これらの部材は、例えば、増圧用電動機29をねじ軸87に対して並列に配置したり、増圧用ねじ機構83に対する増圧用電動機29の配置の自由度を向上させたりすることに寄与している。プーリ79の径とナット85の径とは、同等であってもよいし、一方が他方よりも大きくてもよい。すなわち、増圧用伝達機構37の巻掛伝動機構は、減速又は増速に寄与していなくてもよいし、寄与してもよい。図示の例では、ナット85の径は、プーリ79の径よりも大きくなっている。従って、増圧用電動機29の生じたトルクよりも大きなトルクでナット85は駆動される。ベルト81は、例えば、歯付ベルトであってもよいし、歯が付いていないものであってもよい。増圧用伝達機構37の巻掛伝動機構は、スプロケット・チェーン機構のように、プーリ・ベルト機構以外の他の形式のものであってもよい。
【0070】
増圧用ねじ機構83は、増圧用電動機29の回転を直線運動に変換することに寄与する。増圧用ねじ機構83は、ナット85とねじ軸87との間にボールが介在するボールねじ機構であってもよいし、ボールが介在しないすべりねじ機構であってもよい。伝動効率の向上によって高精度に所望の昇圧曲線を得る等の観点からは前者が好ましく、ヘッド側室39hから圧力を受ける加圧部材47の後退を抑制する等の観点からは後者が好ましい。増圧用ねじ機構83は、ねじ溝が1本の1条ねじ式のものであってもよいし、ねじ溝が2本以上の多条ねじ式のものであってもよい。
【0071】
ナット85は、軸回りの回転が許容されているとともに軸方向の移動が規制されている。一方、ねじ軸87は、軸回りの回転が規制されているとともに軸方向の移動が許容されている。従って、増圧用電動機29の回転がプーリ79及びベルト81を介してナット85に伝達されると、ねじ軸87がその軸方向に移動する。ひいては、ねじ軸87に固定されている加圧部材47が前後方向に移動する。
【0072】
ナット85の軸回りの回転の許容及び軸方向の移動の規制は、例えば、ナット85が適宜な軸受けによって支持されることによりなされている。ねじ軸87の回転の規制は、例えば、ねじ軸87が加圧部材47に対して偏心して固定されたり、ねじ軸87に設けられた不図示のスプライン溝がシリンダ部材39に固定的なガイドに案内されたり、及び/又はねじ軸87に並列で軸方向の移動のみが許容された不図示のガイド軸がねじ軸87に固定されたりすることによってなされる。
【0073】
ねじ軸87は、後側ロッド45が挿通される穴87hを有している。穴87hは、例えば、ねじ軸87を貫通する貫通孔であり、一端は加圧部材47の穴47hに通じ、他端は大気開放されている。そして、後側ロッド45は、穴47h及び87hに挿通されることによって、その端面が大気圧下に露出している。ねじ軸87の穴87hの内径は、例えば、後側ロッド45の外径よりも大きく、両者は摺動しないようになっている。
【0074】
なお、ねじ軸87は、加圧部材47とは別個の部材からなり、互いに固定されていてもよいし、加圧部材47と一体的に形成されてねじ軸87に固定されていてもよい。
【0075】
射出用ねじ機構69及び増圧用ねじ機構83を比較すると、例えば、増圧用ねじ機構83は射出用ねじ機構69に比較して、リードが小さく、また、径(例えば有効径又は雄ねじの谷径)が大きい。また、例えば、射出用ねじ機構69がボールねじ機構によって構成されているのに対して、増圧用ねじ機構83をすべりねじ機構によって構成してもよい。
【0076】
なお、以上の説明から理解されるように、射出用電動機27の駆動力は、機械式の伝達機構によってプランジャ23に伝達されており、流体圧機器(例えば油圧機器)を介さずに伝達されている。例えば、射出用電動機27は、ポンプを駆動する電動機のような、作動流体に圧力を付与したり、作動流体を送出したりして、プランジャ23を駆動するものではない。同様に、増圧用電動機29の駆動力は、機械式の伝達機構によって加圧部材47に伝達されており、流体圧機器(例えば油圧機器)を介さずに伝達されている。例えば、増圧用電動機29は、ポンプを駆動する電動機のような、作動流体に圧力を付与したり、作動流体を送出したりして、加圧部材47を駆動するものではない。
【0077】
(制御装置及びセンサ等)
制御装置13は、例えば、CPU89及びメモリ91を含むコンピュータにより構成されており、入力部93を介して入力される電気信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を生成し、その生成した制御信号を、出力部95を介して各部へ出力する。
【0078】
制御装置13に入力される電気信号は、例えば、プランジャ23の位置を検出する位置センサ97の検出信号、プランジャ23に付与されている力を検出する力センサ99の検出信号、及び入力装置17からのユーザの操作に応じた操作信号である。その他、射出用電動機27の回転センサ27sの検出信号、増圧用電動機29の回転センサ29sの検出信号、増圧用電動機29に流れる電流を検出する電流検出器の検出信号、流量制御弁61の開度を示す検出信号等が、電動機又は制御弁を駆動するサーボドライバへの入力に加えて又は代えて、制御装置13に入力されてもよい。
【0079】
制御装置13から出力される制御信号は、例えば、射出用電動機27、増圧用電動機29、流量制御弁61及び表示装置15を制御するためにこれらの制御対象(厳密にはそのドライバ)に出力される制御信号である。
【0080】
位置センサ97は、例えば、プランジャ23に対して固定的に設けられた不図示のスケール部とともに、磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成している。図示の例では、スケール部は、前側ロッド43に設けられており、位置センサ97は、フレーム51付近に位置している。位置センサ97及び/又は制御装置13は、スケール部と位置センサ97との相対的な移動量に応じた数で生成されるパルスに基づいて、プランジャ23の位置及び速度(射出速度)を特定可能である。
【0081】
力センサ99は、例えば、プランジャ23と前側ロッド43との間に位置するロードセルを含んで構成されている。ロードセルは、例えば、歪ゲージ式のものである。制御装置13は、力センサ99からの検出信号に基づいて、プランジャ23に付与されている力、ひいては、溶湯に付与されている圧力を特定可能である。
【0082】
(射出装置の動作)
図3は、射出装置9の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0083】
図3において、横軸は時間tを示している。線L
Vは射出速度(プランジャ23の速度)を示し、線L
Pは射出圧力(プランジャ23が溶湯に付与する圧力)を示している。また、その上方側の線は、射出用電動機27のサーボロック状態(サーボON状態)での回転数又はサーボフリー状態(サーボOFF状態)、増圧用電動機29のサーボロック状態(サーボON状態)での回転数又はサーボフリー状態(サーボOFF状態)、及び流量制御弁61の制御状態を示している。
【0084】
射出速度(線L
V)及び射出圧力(線L
P)から理解されるように、射出装置9は、概観すると、低速射出(期間T1)、高速射出(期間T2)、及び、増圧・保圧(期間T3)を順に行う。すなわち、射出装置9は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ23を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ23を前進させる。その後、射出装置9は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ23の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0085】
(低速射出開始前:〜t0)
低速射出の開始直前において、射出装置9は、
図2に示す状態となっている。すなわち、ピストン41(プランジャ23及び前側ロッド43)並びに加圧部材47は、後退限等の初期位置に位置している。射出用電動機27及び増圧用電動機29は停止している。ヘッド側バルブ59は例えばパイロット圧が導入されていない。流量制御弁61は例えば全開とされている。
【0086】
上記の状態では、低圧ではあるが、アキュムレータ57の圧力がロッド側室39r及びヘッド側室39hに付与される。従って、例えば、後側ロッド45の断面積が前側ロッド43の断面積よりも小さい態様においては、ピストン41が意図せず前進するおそれがある。図示の例では、前側ロッド43及び後側ロッド45の断面積は同等であることから、そのような意図しない前進は生じない。
【0087】
なお、図示の例において意図しない前進を確実に防止したり、図示の例とは異なり、後側ロッド45の断面積が前側ロッド43の断面積よりも小さい態様において、意図しない前進を防止したりするために、流量制御弁61を閉じたり、アキュムレータ57からヘッド側室39hへの液体の流れを禁止できるようにヘッド側バルブ59を構成したり、射出用電動機27のサーボロック機能又はブレーキを利用したりしてよい。
【0088】
また、意図しない前進を確実に防止する観点からは、後側ロッド45の断面積は前側ロッド43の断面積よりも大きいことが好ましい。ただし、この場合も、後側ロッド45の断面積は、既述のように、前側ロッド43の断面積の2倍未満であることが好ましい。
【0089】
(低速射出(T1):t0〜t1)
固定金型103及び移動金型105の型締めが終了し、溶湯がスリーブ21に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、射出用電動機27を駆動する。その駆動力は、射出用伝達機構35を介して後側ロッド45(並びにピストン41及び前側ロッド43)に伝達され、プランジャ23が前進する。すなわち、射出用電動機27の駆動力によって低速射出が行われる。
【0090】
この際、ピストン41の前進に伴ってロッド側室39rから排出される液体はヘッド側室39hに還流される。前側ロッド43及び後側ロッド45の断面積が同等であれば、基本的には液体の過不足は生じない。また、前側ロッド43及び後側ロッド45の断面積が互いに異なり、液体の過不足が生じる場合、当該過不足はアキュムレータ57によって解消される。
【0091】
プランジャ23の速度は、射出用電動機27の回転数の調整により制御される。具体的には、例えば、制御装置13は、位置センサ97により検出されるプランジャ23の速度に基づいて、射出用電動機27の回転数をフィードバック制御する。なお、
図3では、このときの射出用電動機27の回転数M
VLは一定とされ、ひいては、低速射出速度V
Lは一定とされている。ただし、多段変速が行われてもよい。
【0092】
ここでの速度フィードバック制御は、速度自体の偏差に基づいて速度を制御するものであってもよいし、目標速度に基づいて所定の時間刻み(例えば1ms)で時々刻々の目標位置を予め求めておき、時々刻々の位置の偏差に基づいて速度を制御する(位置フィードバックによって実質的に速度フィードバックを行う)ものであってもよい。速度は、位置の微分であるから、後者も速度に基づくフィードバック制御であると捉えられてよい。後述する高速射出においても同様である。
【0093】
低速射出速度V
Lは、溶湯によるガスの巻き込みが生じないように適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s未満である。低速射出中の射出圧力は、射出速度が比較的低速であることに対応して比較的低いP
Lとなる。
【0094】
(高速射出(T2):t1〜t3)
制御装置13は、プランジャ23が所定の高速切換位置に到達すると、射出用電動機27の回転数をM
VLからM
VHへ上昇させる。これにより、射出速度は比較的低速のV
Lから比較的高速のV
Hへ上昇し、高速射出が実現される。なお、射出速度の上昇に伴って、射出圧力も若干上昇してP
Hとなる。高速射出速度V
Hは、低速射出速度V
Lよりも高い範囲で適宜に設定されてよいが、例えば、1m/s以上であり。好ましくは3m/s以上である。
【0095】
なお、制御装置13は、例えば、プランジャ23の移動範囲を複数に分けた区間毎に設定された目標速度を時々刻々のプランジャ23の目標位置に変換して位置フィードバック制御(実質的な速度フィードバック制御)を行っており(時間経過に基づいて変速しており)、プランジャ23が高速切換位置に到達したか否か検知しない。ただし、制御装置13は、位置センサ97からの信号に基づいてプランジャ23が所定の高速切換位置に到達したことを検知して目標速度を切り換えてもよい。
【0096】
射出用電動機27の回転数の制御により高速射出が実現されることから、低速射出速度V
Lから高速射出速度V
Hに至るまでの昇速時間(T4:t1〜t2)は、任意に設定可能である。なお、射出用電動機27が低慣性電動機である場合においては、より正確に昇速時間が制御される。例えば、V
L=0.20m/sからV
H=5.0m/sへの昇速を10ms程度で行うこともできる。
【0097】
また、制御装置13は、増圧が開始される前の適宜な時期において、増圧用電動機29の駆動を開始する。
図3では、高速射出速度V
Hへの昇速完了時(t2)に増圧用電動機29の駆動が開始され、且つ、一定の回転数M
VIまで回転数が上昇されている場合を例示している。高速射出中における加圧部材47の前進速度は、ピストン41の前進速度(V
H)よりも低速であり、射出用電動機27の回転数の制御による高速射出速度V
Hの制御に影響を及ぼさない若しくは殆ど影響を及ぼさない。そして、このように予め増圧用電動機29を駆動しておくことにより、増圧への移行が円滑に行われる。
【0098】
(射出用電動機による減速:t3〜t4)
制御装置13は、所定の減速開始条件が満たされると(t3)、射出用電動機27の回転数を下げる。これにより、プランジャ23は減速される。昇速と同様、この減速は射出用電動機27の回転数の制御により実現されることから、その減速時間は、任意に設定可能である。射出用電動機27を低慣性電動機により構成することにより、そのような減速時間の設定が好適になされることも昇速と同様である。なお、減速が開始されても、キャビティCaには溶湯が概ね充填されていることから、溶湯の圧力はP
H付近に保たれ又は上昇する。
【0099】
ここでの射出用電動機27の減速制御は、低速射出及び高速射出における速度制御と同様に、オープン制御であってもよいし、フィードバック制御であってもよく、また、速度フィードバック制御は、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、時々刻々の位置偏差に基づくものであってもよい。
【0100】
減速開始条件は、適宜に設定されてよく、例えば、プランジャ23が所定の減速開始位置に到達したときに減速が開始される。ただし、高速切換位置と同様に、制御装置13は、位置センサ97からの信号に基づいてプランジャ23が減速開始位置に到達したことを検知して目標速度を切り換えてもよいし、時々刻々の位置フィードバック制御によって実質的に速度フィードバック制御を行っており(時間経過に基づいて変速しており)、プランジャ23が減速開始位置に到達したか否か検知しなくてもよい。
【0101】
なお、このような射出用電動機27の減速制御が行われずに、金型101に概ね充填された溶湯からプランジャ23が受ける力によって、プランジャ23及び射出用電動機27が減速されてもよい。
【0102】
(流量制御弁による慣性力制御:t3〜t4)
制御装置13は、プランジャ23の減速が開始されてからプランジャ23が停止するまでの期間のうちの適宜な時期において、流量制御弁61によってロッド側室39rから排出される液体の流量を制御し(基本的には減じ)、ひいては、プランジャ23及び射出駆動部25の前方への慣性力を制御する(基本的には減じる)。これにより、例えば、大きなサージ圧が発生するおそれが低減される。なお、この動作は、プランジャ23の減速制御でもある。
【0103】
具体的には、例えば、制御装置13は、一旦流量を減じた後、再度流量を増加させる制御を行う。最も減じられたときの流量は、適宜に設定されてよく、また、0であってもよい。減じた後に最も増加された流量は、適宜に設定されてよく、また、最大(全開に対応する流量)であってもよい。流量を減じたり、増加させたりするときの流量の変化の速度、開始時点及び終了時点等も適宜に設定されてよい。
【0104】
図3では、上述した減速開始条件が満たされたとき(t3)において、最大速度で流量を減じ、その後、徐々に流量を増加させ、プランジャ23が概ね停止するとき(t4)に全開となるように流量制御弁61が制御されている態様を例示している。
【0105】
(プランジャの停止:t4)
上述の射出用電動機27の減速制御によって、及び/又はプランジャ23が溶湯から受ける力によってプランジャ23は停止する(t4)。このとき、流量制御弁61は開かれているから(例えば全開)、ロッド側室39rの圧力変動は、アキュムレータ57によって吸収される。その結果、
図3において点線で示すようなサージ圧の発生が抑制される。
【0106】
(増圧:t3〜t4)
上述のように、増圧用電動機29は適宜な時期に回転が開始され、一定の回転数M
VIに到達する。回転数M
VIに到達する時期は適宜な時期とされてよいが、例えば、減速が開始される時点(t3)である。プランジャ23の減速の結果、ピストン41の前進速度が加圧部材47の前進速度よりも遅くなると、ピストン41と加圧部材47との間の容積は縮小される。その結果、ヘッド側バルブ59は自閉し、ヘッド側室39hの圧力が上昇する。これにより、増圧用電動機29の駆動力は、加圧部材47、ヘッド側室39hの液体及びピストン41を介して、プランジャ23に伝達される。すなわち、増圧用電動機29の駆動力による増圧が実現される。
【0107】
そして、射出圧力は、終圧である圧力P
maxに達する(t4)。圧力P
maxに到達するまでの昇圧時間は、昇速時間や減速時間と同様に、射出用電動機27及び増圧用電動機29を適宜に制御することによって任意の長さに設定可能である。また、射出用電動機27及び増圧用電動機29を低慣性電動機により構成することにより、そのような昇圧時間の設定が好適になされることも同様である。例えば、P
H=30kgf/cm
2からP
max=500kgf/cm
2への昇圧を10ms程度で行うこともできる。
【0108】
増圧において、制御装置13は、適宜に増圧用電動機29の速度制御及び/又はトルク制御を行ってよい。例えば、制御装置13は、減速開始時点等の適宜な時期に、増圧用電動機29の制御を速度制御からトルク制御に切り換えてよいし、速度制御とトルク制御とを組み合わせた制御を行ってもよい。
【0109】
速度制御は、オープン制御であってもよいし、フィードバック制御であってもよく、フィードバック制御は、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、時々刻々の位置偏差に基づくものであってもよい。また、速度制御は、増圧用電動機29の回転センサ29sの検出値に基づくセミ・クローズドループによるものであってもよいし、このループを含む又は含まない、加圧部材47の速度(位置)を検出するセンサを設けることによってなされる(フル)クローズドループによるものであってもよい。
【0110】
トルク制御は、オープン制御であってもよいし、フィードバック制御であってもよい。フィードバック制御は、不図示の電流検出器が検出する増圧用電動機29の電流に基づくセミ・クローズドループによるものであってもよいし、このループを含む又は含まない、力センサ99の検出値に基づくクローズドループによるものであってもよい。また、増圧用電動機29のトルクは、多段制御されてよい。
【0111】
(保圧:t4〜t6)
プランジャ23の停止(t4)後、射出用電動機27は、例えば、トルクフリーの状態とされる。増圧用電動機29は、例えば、停止され、又はトルク制御が維持される。加圧部材47の後退が規制されるとともにヘッド側室39hの液体の排出がヘッド側バルブ59によって規制されていることにより、又はこれに加えて増圧用電動機29のトルク制御が維持されていることにより、鋳造圧力P
maxは維持される。
【0112】
保圧においては、溶湯の凝固に伴う収縮に応じて増圧用電動機29により適宜にプランジャ23を前進させ(速度V
1)、キャビティCa内の圧力を鋳造圧力P
maxに保つことができる。そして、一定の時間が経過すると、増圧用電動機29のトルクは徐々に下げられ、さらには、増圧用電動機29は停止され、保圧は完了する(t6)。
【0113】
なお、保圧において、加圧部材47の後退の規制は、増圧用電動機29のサーボロック機能又はブレーキによってなされてもよいし、及び/又は増圧用ねじ機構83(すべりねじ機構)の抵抗力によってなされてもよい。
【0114】
(成形後)
成形品が凝固すると、不図示の型締装置により型開きが行われ、不図示の押出装置により成形品が型から押し出される。なお、射出装置9は、成形品を固定金型103から離型させるために、プランジャ23によりビスケットの押出しを行ってもよい。このとき利用される電動機は、射出用電動機27及び増圧用電動機29のいずれであってもよいし、双方が利用されてもよい。
【0115】
その後、ピストン41は、射出用電動機27の逆回転により初期位置に戻され、加圧部材47は増圧用電動機29の逆回転により初期位置に戻される。ピストン41の後退によってヘッド側室39hから排出される液体は、パイロット圧が導入されて開かれたヘッド側バルブ59を介してロッド側室39rに還流される。液体の過不足は、アキュムレータ57によって解消される。
【0116】
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出用電動機27と、増圧用電動機29と、射出用電動機27及び増圧用電動機29の駆動力をプランジャ23に伝達する統合伝達機構31と、を有している。統合伝達機構31は、プランジャ23の後方にてプランジャ23に対して固定的なピストン41と、ピストン41を摺動可能に収容しており、ピストン41の後側に、液体が満たされるヘッド側室39hを有しているシリンダ部材39と、ピストン41に固定されており、ヘッド側室39hを経由してヘッド側室39hの外部へ延び出ており、その延び出た部分に射出用電動機27の駆動力が伝達される後側ロッド45と、増圧用電動機29により流体圧機器を介さずに駆動されてヘッド側室39hの液体を加圧する加圧部材47と、を有している。
【0117】
従って、例えば、射出用電動機27によってプランジャ23を駆動するときにおいては、ピストン41と加圧部材47との離間が許容されることによって、増圧用電動機29をプランジャ23から実質的に切り離した状態でプランジャ23を駆動できる。その一方で、増圧用電動機29によって加圧部材47を前進させると、ヘッド側室39hの液体の圧力が上昇することによって増圧用電動機29の駆動力がプランジャ23へ伝達されるから、増圧用電動機29がプランジャ23に実質的に接続されることになる。すなわち、プランジャ23を駆動する電動機を切り換えることができる。
【0118】
このようなシリンダ機構33を用いた電動機の切り換えは、例えば、摩擦クラッチを用いるような場合に比較して、大きな力を伝達することに有利である。また、例えば、ロッド側室39r及び/又はヘッド側室39hの液体が種々の衝撃緩和に寄与することによって、耐久性向上が期待される。これらのことから、本実施形態は、比較的大きな駆動力を必要とし、また、慣性力が比較的大きくなりやすい、大型成形機の全電動化に有利である。
【0119】
また、射出用電動機27からプランジャ23への駆動力の伝達は、ピストン41から後方へ延びる後側ロッド45を介してなされる。従って、例えば、射出用電動機27を前側ロッド43又はプランジャ23に連結する場合に比較して、射出用電動機27を比較的後方に配置することができる。その結果、例えば、溶湯の飛沫から射出用電動機27又は射出用伝達機構35を保護しやすい。また、ロッド側室39rとヘッド側室39hとの間で液体の給排を行う場合においては、後側ロッド45によって液体の過不足を緩和することができる。従って、後側ロッド45は、駆動力の伝達と液体の過不足緩和とに兼用されることになり、装置の簡素化乃至は小型化が図られる。
【0120】
また、本実施形態では、射出用電動機27及び増圧用電動機29は回転式であり、統合伝達機構31は、射出用電動機27の回転を直線運動に変換して後側ロッド45に伝達する射出用ねじ機構69と、増圧用電動機29の回転を直線運動に変換して加圧部材47に伝達する、射出用ねじ機構69に比較して大径かつ小リードの増圧用ねじ機構83を更に有している。
【0121】
従って、射出用電動機27及び増圧用電動機29からの駆動力の伝達は、ねじ機構によってなされるから、例えば、比較的大きな駆動力の伝達が容易であり、大型成形機の全電動化に有利である。また、射出用ねじ機構69のリードが相対的に大きいことから、例えば、射出用電動機27によってプランジャ23を駆動するときに速度を高くしやすい。一方で、増圧用ねじ機構83のリードが相対的に小さいことから、例えば、増圧用電動機29によって加圧部材47を駆動するときに推力を大きくしやすい。また、増圧用ねじ機構83の径が相対的に大きいことから、例えば、増圧用電動機29によって加圧部材47を駆動するときに増圧用ねじ機構83のねじ軸87に座屈が生じにくく、ひいては、比較的大きな推力を伝達しやすい。
【0122】
また、本実施形態では、加圧部材47は、ピストン41の後方に配置されている。増圧用ねじ機構83は、加圧部材47から後方へ延びるねじ軸87と、ねじ軸87に螺合され、増圧用電動機29により回転されるナット85と、を有している。加圧部材47及びねじ軸87には、後側ロッド45が挿通される穴47h及び87hが形成されている。
【0123】
従って、例えば、加圧部材47及びねじ軸87が後側ロッド45に対して同心状に配置されることになり、小型化が図られる。また、例えば、射出用電動機27、射出用伝達機構35、増圧用電動機29及び増圧用伝達機構37全体を後方に集中的に配置しやすくなり、装置の小型化が容易化される。
【0124】
また、本実施形態では、シリンダ部材39は、ピストン41の前側に、液体が満たされるロッド側室39rを有しており、統合伝達機構31は、ロッド側室39rに通じるアキュムレータ57を有している。
【0125】
従って、例えば、プランジャ23の停止時にロッド側室39rに生じる圧力変動をアキュムレータ57に逃がし、サージ圧を抑制することができる。すなわち、プランジャ23の駆動に使用する電動機の切り換えのためのシリンダ機構33を有効利用することができる。また、このアキュムレータ57によって、シリンダ機構33における液体の過不足を解消することができる。
【0126】
また、本実施形態では、統合伝達機構31は、ロッド側室39rから排出される液体の流量を制御可能な流量制御弁61を有している。
【0127】
従って、例えば、ロッド側室39rから排出される液体の流量制御によってプランジャ23の停止直前の慣性力を制御し、サージ圧を抑制することができる。すなわち、プランジャ23の駆動に使用する電動機の切り換えのためのシリンダ機構33を有効利用することができる。
【0128】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る射出装置209(射出駆動部225)の構成を示す、
図2と同様の図である。
【0129】
第1実施形態では、プランジャ23が停止する直前において流量制御弁61によってロッド側室39rから排出される液体の流量を制御した。これに対して、本実施形態では、流量制御弁61が設けられておらず、他の手段によって流量が制御される点が第1実施形態と相違する。その他にも、本実施形態と第1実施形態との間で相違点があるが、流量制御弁61以外の相違点に係る構成は、これらの実施形態の間で互いに置換されてよい。
【0130】
(流量制御に係る構成)
流量制御弁61に代わる構成は、具体的には、以下のとおりである。なお、本実施形態の流量制御弁61に代わる構成と、流量制御弁61とは併設されても構わない。
【0131】
射出駆動部225は、第1実施形態と同様に、統合伝達機構231を有しており、統合伝達機構231は、シリンダ機構233、射出用伝達機構235及び増圧用伝達機構37を有している。
【0132】
シリンダ機構233の基本的な構成は、第1実施形態のシリンダ機構33と同様であり、シリンダ機構233は、シリンダ部材239と、シリンダ部材239に摺動可能に収容されたピストン241と、ピストン241に固定された前側ロッド43及び後側ロッド45と、加圧部材47とを有している。
【0133】
シリンダ部材239は、その内面に、ピストン241が摺動する摺動部239eと、ロッド側室239rとシリンダ部材239の外部とを接続するためのポート239aと、摺動部239eとポート239aとの間に位置し、摺動部239eよりも内径が小さいクッション部239fとを有している。摺動部239eは、別の観点では、内径が軸方向に一定の部分である。
【0134】
クッション部239fと前側ロッド43との隙間の流路断面積(前側ロッド43に直交する断面積)は、ポート239aの流路断面積よりも大きい。なお、ポート239aのシリンダ部材239の内側への開口面積と、ポート239aのシリンダ部材239の外側への開口面積とが異なっている場合のように、ポート239aの流路断面積が流れ方向において変化している場合においては、ポート239aの最小の流路断面積によって上述の大小関係を判断してよい。クッション部239fは、摺動部239eにつながる部分等において、摺動部239e側からポート239a側へ徐々に縮径している部分を有していてもよい。徐々に縮径する部分は、曲面状でも階段状でもよい。
【0135】
一方、ピストン241は、シリンダ部材239内を摺動する本体部241aと、その先端に位置し、本体部241aよりも径が小さい先端部241bとを有している。先端部241bは、その先端等において、本体部241a側から前方へ徐々に縮径している部分を有していてもよい。徐々に縮径する部分は、曲面状でも階段状でもよい。
【0136】
ピストン241がシリンダ部材239内を前進すると、先端部241bがクッション部239fに挿入される。このとき、クッション部239fと先端部241bとの隙間の流路断面積(例えば摺動部239eからポート239aへの流路の断面積のうち最小のもの)は、ポート239aの流路断面積よりも小さい。従って、クッション部239fと先端部241bとによって、ロッド側室239rからポート239aに流れ込む液体の流量が制限されることになる。その結果、例えば、プランジャ23が停止する直前においてプランジャ23等の慣性力が減じられ、サージ圧が抑制される。
【0137】
先端部241bのクッション部239fへの挿入開始時においては、両者の間の隙間(流路断面積)は徐々に小さくなっていく。これにより、弁を徐々に閉じていくような作用が生じる。この流量断面積の変化率は、先端部241b及び/又はクッション部239fに、徐々に縮径する部分を形成することによって調整可能である。
【0138】
プランジャ23が停止したとき、先端部241bとクッション部239fとの隙間は、完全に塞がれないことが好ましい。圧力変動をアキュムレータ57に逃がす観点からである。ただし、前記の隙間は塞がれてもよい。なお、ピストン241は、シリンダ部材239に対する前進限に到達する前に、溶湯が充填されて停止するが、ピストン241がシリンダ部材239に対する前進限に到達した状態で、先端部241bとクッション部239fとの隙間は、完全に塞がれてもよいし、塞がれなくてもよい。
【0139】
(その他の相違点)
第1実施形態では、2つの射出用電動機27が設けられたのに対して、本実施形態では、射出用電動機27は1つとされている。また、これに対応して、射出用ねじ機構269のナット271には、1本のベルト67のみが掛けられている。
【0140】
射出用電動機27は、第1実施形態とは逆に、その出力軸27aを前方へ向けるようにして配置されている。なお、この場合、装置の小型化の観点から、射出用電動機27の出力軸27aとは反対側の端部(回転センサ27s)は、後退限に位置しているねじ軸73の後端よりも後方へ突出していないことが好ましい。
【0141】
また、射出用電動機27と増圧用電動機29とは、互いに出力軸を向き合わせて同軸的に配置されている。このような配置は、装置の小型化に有利である。
【0142】
ヘッド側バルブ259は、第1実施形態と同様に、ロッド側室239r及びヘッド側室239hの双方向の流れを許容可能であるとともに、少なくともヘッド側室239hからロッド側室239rへの流れ(別の観点ではヘッド側室239hからの液体の排出)を禁止可能である。ただし、
図4では、ヘッド側バルブ259として、パイロット式逆止弁ではなく、電磁力によって制御されるノンリーク切換弁が図示されている。
【0143】
射出装置209の動作は、流量制御弁61の制御が省略されることを除いて、概ね、第1実施形態の射出装置の動作と同様でよい。なお、ノンリーク切換弁からなるヘッド側バルブ259は、自閉しないから、加圧部材47によってヘッド側室239hの液体を加圧するときには制御によって閉じられる。
【0144】
以上のとおり、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、射出装置209は、射出用電動機27、増圧用電動機29及びこれらの駆動力をプランジャ23に伝達する統合伝達機構231を有しており、統合伝達機構231では、射出用電動機27の駆動力が後側ロッド45を介してプランジャ23に伝達され、増圧用電動機29の駆動力が流体圧機器を介さずに加圧部材47に伝達される。
【0145】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、摩擦クラッチを用いずに、プランジャ23を駆動する電動機の切り換えを好適に行うことができる。また、例えば、後側ロッド45に駆動力を伝達することから、射出用電動機27等を後方に配置しやすい。
【0146】
また、本実施形態では、シリンダ部材239は、ポート239aと摺動部239eとの間に位置しており、摺動部239eよりも内径が小さいクッション部239fを有している。ピストン241は、摺動部239eを摺動する本体部241aと、本体部241aの前に位置し、本体部241aよりも径が小さく、クッション部239fに対する挿入によってクッション部239fとの隙間の流路断面積をポート239aの断面積よりも小さくすることが可能な先端部241bと、を有している。
【0147】
従って、例えば、流量制御弁61を設けない簡素な構成及び制御でプランジャ23の停止直前における慣性力を制御(低減)することができる。また、例えば、流量制御弁61を設けないことに加えて、ヘッド側バルブ259にノンリーク切換弁を用いることなどによって、液圧系の密閉性を高くし、液体の補給などのメンテナンスの必要性を低減することができる。
【0148】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る射出装置309(射出駆動部325)の構成を示す、
図2と同様の図である。ただし、
図5では、A−A線に対応する断面図も紙面右上(点線の枠内)に示されている。
【0149】
第3実施形態は、射出用電動機27の駆動力を後側ロッド45へ伝達する射出用伝達機構の構成が第1実施形態と相違する。また、これに伴い、射出用電動機27の配置位置も第1実施形態と相違する。その他の構成については、第3実施形態は、第1実施形態と同様である。
【0150】
第3実施形態の射出用伝達機構335は、例えば、射出用電動機27の回転を直線運動に変換して後側ロッド45へ伝達するラックアンドピニオン機構369を有している。なお、射出用電動機27及びラックアンドピニオン機構369の組み合わせの数は、1つでもよいし、2つ以上でもよく、本実施形態の説明では、2つの場合を例に取る。
【0151】
各ラックアンドピニオン機構369は、後側ロッド45に対して固定的に設けられたラック373と、ラック373に噛み合い可能なピニオン371とを有している。
【0152】
ラック373は、ラック用ロッド370に設けられている。ラック用ロッド370は、例えば、後側ロッド45に対して同軸的に固定されており、後側ロッド45から後方へ延びている。なお、後側ロッド45及びラック用ロッド370は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。後側ロッド45の径及びラック用ロッド370の径(例えば最大径)は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0153】
ラック373は、ラック用ロッド370の外周面に設けられており、ラック用ロッド370の軸方向に沿って配列された複数の歯を有している。ラック373の、ラック用ロッド370の軸回りの位置は適宜に設定されてよく、ラック用ロッド370の上面、側面、下面のいずれであってもよい。ピニオン371は、ラック用ロッド370の軸方向に直交する方向(
図5の紙面貫通方向)を回転軸が延びる方向として配置されている。射出用電動機27の回転がピニオン371に伝達されると、ラック373がラック用ロッド370の軸方向に移動し、ひいては、プランジャ23が前後進を行う。
【0154】
2つのラックアンドピニオン機構369は、例えば、ラック用ロッド370の軸心に対して互いに対称に設けられている。すなわち、2つのラック373は、ラック用ロッド370の軸心に対して互いに反対側、かつラック用ロッド370の軸方向において互いに同一の範囲に設けられている。2つのピニオン371は、ラック用ロッド370をその径方向に挟むように、ラック用ロッド370の軸方向において同一の位置に配置されている。
【0155】
射出用電動機27からピニオン371への回転の伝達は、例えば、伝達機構を介さずに直接的になされる。すなわち、射出用電動機27は、その出力軸27aがラック373に直交する向きで配置され、出力軸27aとピニオン371とは固定されている。ただし、巻掛伝動機構又は歯車機構(例えば傘歯車を含むもの)等の伝達機構を介して間接的に射出用電動機27からピニオン371へ回転が伝達されてもよい。
【0156】
射出装置309の動作は、第1実施形態の動作と概ね同様でよい。なお、第1実施形態においても言及したように、2つの射出用電動機27は、タンデム制御がなされてもよい。
【0157】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、射出装置309は、射出用電動機27、増圧用電動機29及びこれらの駆動力をプランジャ23に伝達する統合伝達機構331を有しており、統合伝達機構331では、射出用電動機27の駆動力が後側ロッド45を介してプランジャ23に伝達され、増圧用電動機29の駆動力が流体圧機器を介さずに加圧部材47に伝達される。
【0158】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、摩擦クラッチを用いずに、プランジャ23を駆動する電動機の切り換えを好適に行うことができる。また、例えば、後側ロッド45に駆動力を伝達することから、射出用電動機27等を後方に配置しやすい。
【0159】
また、本実施形態では、射出用電動機27及び増圧用電動機29は回転式である。統合伝達機構331は、射出用電動機27の回転を直線運動に変換して後側ロッド45に伝達するラックアンドピニオン機構369と、増圧用電動機29の回転を直線運動に変換して加圧部材47に伝達する増圧用ねじ機構83と、を更に有している。
【0160】
従って、例えば、高速な直線運動への変換に適したラックアンドピニオン機構369を高速射出等に用い、大きな駆動力の伝達に適した増圧用ねじ機構83を増圧等に用いることができ、全体として動作が好適化される。
【0161】
<変形例>
図6は、変形例の構成を示す模式図である。なお、この図では、実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態の構成及び符号を示すが、変形例は、他の実施形態に適用されてもよい。
【0162】
加圧部材153は、ピストン41と同軸的に配置されず、例えば、ピストン41の移動方向に対して交差(例えば直交)する方向において進退してもよい。この態様において、後側ロッド45が設けられる場合、後側ロッド45は、加圧部材153を貫通せずに直接にシリンダ部材39から外部へ延び出る。なお、加圧部材153は、後側ロッド45と干渉しない範囲でシリンダ部材39内に侵入してもよい。
【0163】
また、加圧部材153は、シリンダ部材39に連結された他のシリンダ部材155内で進退されてもよい。図示の例では、シリンダ部材155は、シリンダ部材39に直接的に連結されているが、流路を介してシリンダ部材39に連結されていてもよい。シリンダ部材155及び加圧部材153は、液体の量を低減したり、増圧用電動機29の負担を軽減したりする観点から、シリンダ部材39よりも小径とされてよい。
【0164】
また、特に図示しないが、加圧部材は、シリンダ部材39又はシリンダ部材155を摺動するピストン状のものでなくてもよい。例えば、加圧部材は、実施形態の加圧部材47の外径をシリンダ部材39の内径よりも小さくしたものとされ、シリンダ部材39の後端面の孔に対して摺動してもよい。また、例えば、加圧部材は、変形例において加圧部材153(拡径部分)を無くしたロッド状とされてもよい。また、例えば、加圧部材は、シリンダ部材155が設けられずに、ピストン41の移動方向に交差する方向において、後側ロッド45に干渉しない範囲でシリンダ部材39内へ進退するものであってもよい。また、例えば、加圧部材は、シリンダ部材の外周面を摺動可能にシリンダ部材の後端部を覆い、シリンダ部材の後端開口を介してシリンダ部材の内部に通じるシリンダ状であってもよい。
【0165】
また、
図6の変形例に示すように、第1実施形態の流量制御弁61及び第2実施形態のクッション部239fのいずれも設けられずに、ロッド側室39rとアキュムレータ57とが接続されてもよい。この態様であっても、アキュムレータ57は、液体の過不足の解消及びサージ圧の抑制等に寄与する。
【0166】
また、
図6の変形例に示すように、射出用ねじ機構69は、ナット71が後側ロッド45に固定されるとともにその回転が規制され、ねじ軸73が軸方向の移動が規制されるとともに射出用電動機27によって回転されてもよい。なお、図示の例では、射出用電動機27の出力軸27aがねじ軸73に直接的に固定されているが、両者の間に巻掛伝動機構等が介在してもよい。
【0167】
なお、以上の実施形態及び変形例において、ダイカストマシン1は成形機の一例であり、射出用電動機27は第1電動機の一例であり、増圧用電動機29は第2電動機の一例であり、統合伝達機構31、231及び331はそれぞれ伝達機構の一例であり、プランジャ23は射出プランジャの一例であり、射出用ねじ機構69は第1ねじ機構の一例であり、増圧用ねじ機構83は第2ねじ機構及びねじ機構の一例である。
【0168】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0169】
成形機(成形機)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。成形材料は、液状のものに限定されず、半凝固金属又は半溶融金属のように固液共存状態のものであってもよい。シリンダ機構に利用される液体は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0170】
射出用電動機27と増圧用電動機29とのように役割分担の異なる電動機は、適宜な数で設けられてよく、2種に限定されない。例えば、低速射出用電動機、高速射出用電動機及び増圧用電動機が設けられてもよい。また、実施形態でも言及したように、役割分担が共通する電動機が複数設けられてもよい。例えば、射出用電動機27を2機設けたり、増圧用電動機29を2機設けたりしてもよい。
【0171】
ピストンを駆動する第1電動機(実施形態では射出用電動機27)及び加圧部材を駆動する第2電動機(実施形態では増圧用電動機29)の役割分担は、適宜に設定されてよい。例えば、第2電動機によって低速射出及び増圧を行い、第1電動機によって高速射出を行ってもよい。また、例えば、増圧及び/又は保圧において、第2電動機に加えて第1電動機のトルク制御も行い、第1電動機及び第2電動機によって増圧及び/又は保圧を行ってもよい。
【0172】
第1電動機及び第2電動機それぞれは、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、この場合、リニアモータの駆動力を後側ロッド又は加圧部材に伝達するための伝達機構は設けられなくてもよい。また、第1電動機又は第2電動機が回転式のものである場合において、その回転を直線運動に変換する機構はねじ機構及びラックアンドピニオン機構に限定されない。例えば、カム機構又はリンク機構が用いられてもよい。
【0173】
第1又は第2電動機の回転を直線運動に変換せずに伝達する回転伝達機構(例えば第1実施形態の巻掛伝動機構)は設けられなくてもよいし、設けられてもよい。また、回転伝達機構は、巻掛伝動機構以外の機構(例えば歯車機構)とされてもよい。
【0174】
実施形態では、ピストンの前に、液体が満たされるロッド側室が構成され、このロッド側室の液体がサージ圧の低減等に利用されたが、ピストンの前には液体が満たされなくてもよい。例えば、ロッド側室は密閉されておらず、大気開放されていてもよい。なお、この場合においても、ピストンとシリンダ部材との潤滑に寄与する油がロッド側室に少量蓄えられていてもよい。
【0175】
実施形態では、シリンダ機構における液体の過不足をアキュムレータによって解消した。しかし、アキュムレータに代えて、例えば、タンクによって液体の過不足を解消してもよい。なお、この場合、ヘッド側室又はロッド側室の液体の不足は、例えば、これらのシリンダ室の負圧によって液体が吸入されることによって補給される。また、例えば、液体の余剰は生じないようにし、液体が不足したときにはヘッド側室又はロッド側室等に真空の空間が形成されるようにしてもよい。
【0176】
実施形態に示した以外の、サージ圧低減のための構成が実施形態の構成に組み合わされてもよい。例えば、プランジャと前側ロッドとを連結するカップリング内において、プランジャと前側ロッドとの間に介在する弾性部材及び/又は液体(例えば油)が配置されてもよい。カップリング内に液体が配置される場合、前側ロッド内には、サージ圧が生じたときにカップリング内の液体をヘッド側室へ逃がす流路が設けられていてもよい。