(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入れ子にするステップが、前記ステム接触点が前記歯科用修復物設計の近心頬側位置に隣接する入れ子オプションを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記入れ子にするステップが、前記ステム接触点が前記歯科用修復物設計の遠心頬側位置に隣接する入れ子オプションを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記プリフォーム本体が空洞を含み、前記歯科用修復物設計が内面を含み、前記入れ子にするステップが、前記プリフォーム本体の空洞を前記歯科用修復物設計の前記内面に隣接して入れ子にするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1つの機械加工ステップが、連続ツール経路線を含むツール経路を含み、前記方法が、前記連続ツール経路線の間のZ増分がZの負の方向における機械加工時に閾値を超える場合に、2つの連続ツール経路線の間に追加のツール経路線を挿入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記方法が、ダイヤモンドが金属合金層に埋め込まれたダイヤモンド被覆を含む研削ツールを用いて前記プリフォームの材料を成形することにより、前記歯科用修復物を前記プリフォーム本体から成形するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特注の歯科用修復物を作製するための方法について本明細書で説明する。機械加工可能なプリフォームから機械加工された歯科用修復物が
図1Aに示される(100)。一実施形態では、プリフォームは、後工程の焼結を必要することなく、歯科医院のチェアサイドでクラウンなどの最終歯科用修復物に機械加工し、患者の口内に直接固定することのできる焼結プリフォーム材料を含む。完全焼結された最終歯科用修復物を調製するために必要な時間を短くする、焼結プリフォームを特注の最終歯科用修復物に機械加工するための方法が提供される。本明細書に開示された方法および装置は、固有のプリフォーム設計、入れ子法、ツール経路、および機械加工法を含む新規な特徴を含む。さらなる実施形態では、プリフォーム、研削ツール、ならびに、修復物設計をプリフォーム内に入れ子(nest)にし、かつ修復物の成形後の焼結を必要とすることなく、チェアサイドで最終修復物を成形するためのツールを生成するためのコンピュータプログラムまたはモジュールを含むキットが提供される。
【0013】
図2Aおよび
図2Bでは、プリフォーム(200)の一実施形態が、歯科用修復物(101)が機械加工される本体(201)と、本体(201)から突出するステム(202)とを含む。
図2Aに示すように、焼結プリフォーム(200)は、プリフォーム(200)を成形機械に固定するための、マンドレル(216)に取り付けられた取付部(203)を含んでもよい。本明細書での使用に適した機械は、3+1軸CNC機械のように少なくとも3つの軸を有する。機械加工後、修復物(101)は完成し、焼結プリフォームの残りのステム(102)は、患者の歯のプレパレーションに直に配置するために容易に除去することができる。
【0014】
一実施形態では、
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dに示す焼結プリフォーム(200)は、湾曲外面(204)と、CNC機械の成形ツールのz軸方向である円筒体長さ(線A−A’)とを有する円筒形本体(201)を有する。本体(201)の中心部(205)は、下端領域(206)と上端領域(207)との間で延びる。
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dでは、円筒形本体(201)の長さ(A−A’)が、y軸方向のステム(202)の長さ(線C−C’に沿う)に略直交している。本実施形態では、ステムが、円筒形本体の中心部(205)の湾曲外面(204)上のステム接触点から突出し、成形機械に直接または間接的に取り付けるための取付部材(203)まで延びる。
図2A〜
図2Dの焼結プリフォームは、空洞(208)をさらに含む。
図2A〜
図2Cに例示した円筒形本体の中心部の湾曲外面(204)は略平滑である。
【0015】
図2Cに示す実施形態では、円筒形本体(201)は、下端面(209)および上端面(210)に平行な略円形の横断面(線B−B’)を含む。円筒形本体の端部は、円形の下端面(209)および上端面(210)を含む。本実施形態では、下端面(209)が凹面(211)を有し、この凹面(211)から空洞(208)が円筒形本体内へ延びて、プリフォーム内面(212)を画成する。修復物設計が成形される中心部の円形横断面の外径は、約12mm〜約20mm、または約13mm〜約18mm、または約14mm〜約17mmであってよい。上端部と下端部との間のプリフォーム本体の長さは、例えば、咬合面の最も高い点から歯の辺縁の最も低い点まで測定したときに、ほとんどの歯科用修復物設計の高さに対応するのに十分なものであり、したがって、プリフォーム本体の長さまたはプリフォーム本体の中心部は、20mm未満、もしくは18mm未満、もしくは16mm未満、もしくは15mm未満であってよく、または約10mm〜15mmであってもよい。一部の実施形態では、中心部の横断面の直径とプリフォーム本体の長さとの比は1.0:1.0よりも大きい。
【0016】
プリフォーム本体(201)は、円筒体以外の形状、例えば楕円筒体、多面体、湾曲した多面体、平坦面のある円筒体、正方形、丸縁部のある正方形などを含んでもよい。一実施形態では、不規則形状を有するプリフォーム本体の寸法は、修復物設計のz軸の周りの全回転に備えたものである。プリフォーム本体は、約12mm超の内接円の直径と、ステム接触点における約20mm未満の外接円の直径とを持つ横断面幾何形状(上面および下面に平行)を有してもよい。
【0017】
一部の実施形態では、本体(201)が、本体長さ全体にわたって略均一な横断面寸法を有してもよく、上端面(210)および/または下端面(209)が平坦である。あるいは、プリフォームは、プリフォーム本体(201)の湾曲外面(204)と上端領域(207)および下端領域(206)を画成する上端面(210)および/または下端面(209)との間に成形縁部(213)を含んでもよい。あるいは、プリフォーム本体は、空洞(208)の周囲に沿って成形縁部(213’)を有してもよい。例えば、
図2A〜
図2Dに示すように、フィレット縁部が下端面の凹面(211)を取り囲む。
【0018】
一部の実施形態では、プリフォームは、少なくとも1つの面取り縁部、少なくとも1つのフィレット縁部、または面取り縁部およびフィレット縁部の両方を含む。例えば、
図2A〜
図2Dに示すように、フィレット縁部は下端面の凹面(211)を取り囲む。他の実施形態では、円筒形の湾曲外面(204)と下端面(209)または上端面(210)との間の成形縁部(213)を面取りしてもよい。空洞(208)周囲に沿った成形縁部(213’)を面取りしてもよい。プリフォーム本体の下端領域(206)および/または上端領域(207)は、中心部(205)の幅または直径よりも小さい横断面幅または直径を有してもよい。一部の実施形態では、成形縁部を有するプリフォームは、最終修復物のクラウンを作製するときに除去される焼結材料が少なく、成形時間が短くなる。また、成形縁部により、成形ツールが空洞にアクセスしやすくなり得る。
【0019】
ステム(202)は、焼結プリフォーム本体(201)を成形機械内に支持しつつ、本体を最終歯科用修復物に成形する。ステム(202)は円筒形本体(201)とオプションの取付部材(203)とをつなぎ、ステムの縦軸(C−C’)は円筒形本体(A−A’)の長さに直交する。一部の実施形態では、ステムの縦軸は、本体に対する直交から約30度以内または約45度以内である。一例では、第1のステム端部が円筒形本体の中心部から延び、さらなる実施形態では、ステム接触点が、プリフォーム本体の下端部(209)と上端部(210)との間で略等距離にある。
【0020】
一部の実施形態では、焼結プリフォームの成形前に、ステムの長さ(線C−C’に沿う)は、円筒形本体に隣接する第1のステム端部(214)におけるステム幅より大きくてもよい。(このために、例えば、ステムが円形横断面を有する実施形態において、幅を直径と区別せずに使用してもよい)。ステムの長さは約3mm〜約12mm、または約3mm〜約10mmであってよい。一部の実施形態では、ステムの長さは約3mm超、または約4mm超、または約5mm超、または約6mm超、または約8mm超であってもよい。一実施形態では、第1のステム端部(214)の幅(直径)は、取付部材(203)に隣接する第2のステム端部(215)の幅(直径)よりも小さい。第1のステム端部の幅(直径)は、約1mm〜約4mm、または1mm〜約3mm、または約1.5mm〜約3mm、または1.5mm〜約2.5mm、または約4mm未満、または約3mm未満、または約2.5mm未満であってよい。一部の実施形態では、ステムの長さと(プリフォーム本体に隣接する)第1のステム端部(214)の幅または直径との比は、約1.5:1超、または約2:1超、または約3:1超である。
【0021】
一実施形態では、ステムの長さは成形ツールの直径よりも大きい。本実施形態では、ステムの長さは、成形ツールが第1のステム端部近くに入って、ツール先端が焼結プリフォーム材料に接触することなく第1のツール経路に入るための空間を、プリフォーム本体(201)と取付部(203)との間に形成し、これによりツールの摩耗を減らす。第1のステム端部(214)におけるステム(202)の曲げ強度は、焼結状態からの機械加工中に焼結プリフォーム(200)を支持するのに十分な高さであり、完成修復物を例えば手でステムから容易に折り取るのに十分な低さである。ステム形状は円筒体、テーパ円筒体、円錐体、角柱などであってよく、第1のステム端部により、ステム接触点でプリフォーム本体の中心部に連結される。
【0022】
図2B〜
図2Dに例示するように、プリフォーム空洞(208)は下端領域(206)または上端領域(207)の端面(210、209)から始まり、本体(201)内へ延びる。空洞の輪郭は、成形ツールによりアクセス可能なプリフォーム内面(212)を形成する。各空洞の形状は、同一であっても異なっていてもよく、限定されないが、反転円錐体、ドーム、円筒体、トラフなどを含んでもよく、または不規則形状を有してもよい。空洞の開口部またはブレイクアウトの幾何形状は、プリフォーム本体の中心部の外径または幅の約20%〜80%である幅(または、例えばブレイクアウト領域が円形である場合には直径)を有してもよい。空洞開口部またはブレイクアウトの寸法は、上端面、下端面、または中心部横断面の表面積の約50%〜約80%である表面積を有してもよい。空洞のおおよその深さは、プリフォーム本体の長さの5%〜50%であってよい。円形空洞開口部は、端面から測定したときに、プリフォーム本体の外面の直径の最大約75%の内径を有してもよい。
【0023】
焼結プリフォームを、第2のステム端部(215)に接合された取付部材(203)により、成形機械に直接または間接的に取り付けることができる。
図2Aは、プリフォームを成形機械に間接的に取り付けるために、取付部材(203)がマンドレル(216)に連結された実施形態を示す。取付部材(203)は、
図2Aに例示するように、またはマンドレルに接着により取り付けるために、長方形、円形、または正方形として成形された略平坦面(217)を有してもよい。
【0024】
さらなる実施形態では、CAD/CAMベースのシステムにより、焼結プリフォームから歯科用修復物を機械加工するための方法が提供される。患者の歯のプレパレーション、ならびに場合により、周囲の歯および元の歯の構造についての解剖学的情報に関するデータが収集され、コンピュータまたはコンピュータ記憶媒体に記憶される。歯科用修復物CADシステムにおいて、所望の修復物設計(107)のコンピュータモデルを、オペレータにより手動で作製しても、自動で提案してもよい。IOS FASTDESIGN(商標) System(IOS Technologies、San Diego、CA)などの公知の設計システムが、本明細書で使用する歯科用修復物の設計に適している。患者の歯科用修復物設計のコンピュータモデルを、プリフォーム(108)のコンピュータモデル内に選択的に入れ子にして、選択されたCNC機械およびミリングツールまたは研削ツールなどの成形ツールの最適な機械加工条件を設定する。適切なチェアサイドミリング機械は、限定されないが、TS150(商標) chair−side milling system(IOS Technologies、San Diego、CA)を含み、本明細書での使用に適した例示的な研削ツール(300)が
図3に示される。入れ子にした修復物設計(例えば、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B)の位置データをCAMシステムに供給して、本明細書でさらに説明するように、選択されたミリング機械および研削ツールの特性に基づいて、レース方向、XYステップオーバ、最大Z増分、送り速度、冷却剤パラメータなどを含む機械加工法(
図4A、
図4B、
図5A、
図5B)からツール経路を計算することができる。
【0025】
修復物設計をプリフォームの幾何形状内に入れ子にするためのコンピュータで実行する方法が提供される。一実施形態では、歯科用CADソフトウェアを使用して、修復物設計(107)のコンピュータ化3Dモデルを生成する。歯科用修復物設計の3Dモデルとプリフォーム(108)のコンピュータモデルとを、一般に、CADシステム内のz軸に沿って位置合わせする。修復物設計をプリフォームの幾何形状内に入れ子にして、修復物設計の内面(105)(例えば、歯のプレパレーションに接触して取り付けられるように設計された歯科用修復物の内面)の空洞が、プリフォームの空洞(109)に隣接して位置合わせされるようにしてもよい。修復物の凹状内面(105)をプリフォームの空洞に隣接して位置合わせすることにより、成形プロセス中に除去される材料の量が少なくなる。
【0026】
一実施形態では、入れ子にするステップは、修復物設計のコンピュータモデルに対するプリフォームステムの位置を方向付ける、z軸周りの回転と、z軸、x軸、およびy軸の並進運動とを含む。機械加工条件および材料の除去を最適化する、修復物設計の外面に対するステムの位置を選択することができる。一実施形態では、修復物設計をプリフォームの幾何形状内に入れ子にして、
図1Aおよび
図1Cに例示するように、第1のステム端部が、咬合面(103)と辺縁(104)との間の修復物設計の分割線上に、または分割線近くに位置するようにする。第1のステム端部と修復物の歯の辺縁(104)および/または隣接接触点との間に最小距離値が設定されるように、修復物設計を入れ子にしてもよい。プリフォームステムの接触点が修復物の辺縁または近心接触点(proximal contact point)および遠心接触点(distal contact point)から距離を置くように修復物設計を入れ子にすることにより、この領域において、ステムの除去時に生じ得る最終歯科用修復物の表面幾何形状の変化を最小化することができ、これにより、最終修復物の最適な装備が実現される可能性が高まる。
【0027】
図6A、
図6Bは、修復物設計(601)をプリフォーム幾何形状内に入れ子にするための方法(600)を示し、この方法は、修復物設計およびプリフォームのコンピュータモデルをz軸周りの回転に配置するステップと、ステムの長さ(y軸(C−C’)に沿う)および隣の歯の隣接接触領域(606および/または607)の外側のステム接触点を位置決めするステップとを含む。隣接接触領域(606または607)とは、最終修復物歯(601)が患者の歯のプレパレーションに配置されるときに、同じアーチ(
図6B)の隣接歯に接触し得る歯の表面を指す。遠心隣接接触領域(606)は、より後方に位置決めされた隣接歯(612)の近心面に接触し得る修復物歯の遠心面領域を含み、近心隣接接触領域(607)は、前向きの隣接歯(613)の遠心面に接触し得る修復物歯の近心面を取り囲む。遠心隣接接触領域(606)および近心隣接接触領域(607)を、専門家により特定しても、修復物設計ソフトウェアにより自動で特定してもよい。ステム接触点が近心接触領域(606)および/または遠心接触領域(607)の外側になるように修復物設計をプリフォーム内に入れ子にすることにより、ステムは最終修復物の近心接触点または遠心接触点に一致しなくなる。
【0028】
プリフォームステムを、場合により、隣接接触領域(606、607)の外側の修復物設計(601)の頬側面(610)または舌側面(611)に位置決めしてもよい。さらなる実施形態では、修復物設計の頬側−舌側面と近心−遠心面との間にステムの長さ(C−C’)の軸を位置合わせするために、モデルを回転させる。修復物設計をプリフォーム本体のモデル内に入れ子にして、頬側面と隣接近心接触領域との間の近心頬側(mesio-buccal)ステム配置位置(603)、あるいは、設計の舌側面と近心隣接接触領域との間の近心舌側ステム位置(605)を実現してもよい。さらなる代替実施形態では、ステムを遠心接触領域と頬側表面との間に方向付けることにより、遠心頬側(disto-buccal)ステム位置(602)を設定してもよく、またはステムを遠心接触領域と舌側表面との間に方向付けることにより、遠心舌側ステム位置(604)を設定してもよい。
【0029】
修復物設計を、プリフォームモデルの幾何形状内に入れ子にするときに、x軸、y軸、およびz軸の1つまたは複数に沿って並進運動させてもよい。例えば、z軸に沿った並進運動は、修復物設計の咬合面(103)とプリフォームモデルの上端部(210)との間の距離、または修復物設計の辺縁(104)とプリフォームの下端部(209)との間の距離を調節する。z軸に沿った修復物設計の並進運動を行って、咬合面(103)と辺縁(104)との間の距離を置いて、修復物設計の辺縁から離れて第1のステム端部を位置させてもよい。さらに、修復物設計をz軸、y軸またはx軸に沿って並進運動させて、修復物設計の空洞(105)をプリフォーム空洞(208)に隣接して位置合わせして、修復物設計の内面を成形するために、機械ツール(300)がプリフォーム空洞内に容易に直接アクセスしやすくなるようにしてもよい。修復物設計をy軸またはx軸に沿って並進運動させて、プリフォーム本体の外面に対する修復物設計の位置を変化させてもよい。例えば、修復物設計を第1のステム端部に直接隣接して位置決めすることにより、成形後に歯科用修復物の外面から除去される材料(106)の量を最小化することができる。一実施形態では、プリフォーム本体の外面と修復物設計の外面との間の最小距離に備えた閾値パラメータを設定してもよい。
【0030】
入れ子にした修復物設計の位置データをCAMシステムに供給して、最終修復物をプリフォームから成形するためのツール経路を計算することができる。修復物を入れ子設計から成形するための2つ以上の機械加工ステップを含む機械加工法を取得するステップを含む方法が提供される。各機械加工ステップは、レース方向、XYステップオーバ値、最大Z増分、送り速度、冷却剤パラメータなどの機械加工法の要素を含む修復物の一部を機械加工するためのツール経路を含んでもよい。一実施形態では、
図4Aおよび
図4Bに示すように、レーシングまたはジグザグのパターン(400)に従う修復物設計に重なるツール経路が設けられる。平行レーシングパターンは、一般に、距離(401)だけ離れた直線の連続ツール経路線(405)を含む。XYZ機械加工位置およびツール経路線(405)またはパス間の適切な間隔に基づく線形補間方法を使用してツール経路を設定することにより、機械加工条件を最適化することができる。レーシングパターンの線の間の平面間隔、またはステップオーバ距離(401)は、例えば、ツール寸法(407)に基づく任意の増分であってよい。あるいは、ツール経路の連続線(405)の間のY方向のステップオーバ距離(401)を独立して調節して、追加のツール経路線(405)を挿入してもよい。例えば、2本のツール経路線(405’)間の距離(406)が、ツール経路シーケンスの1つの領域におけるZ方向(例えば、Zの負の方向の最大Z増分値)の閾値を超える場合、隣接する線の間のステップオーバ距離(401)を小さくすることができ、追加のツール経路線をその領域に挿入して、閾値を満たすまで、または閾値を超えなくなるまで、2本のツール経路線の間のZ増分距離を小さくすることができる。
【0031】
図5A、
図5Bは、
図4B(404)の横断面図であり、傾斜(500)にわたるツール(例えば、300、407、505)の動きを示す。研削ツール(300)のZ軸は、例えば、ツールが機械加工される面から離れて持ち上げられると、Zの正(402)に向かって動き、ツール経路を通る突出がZの負(403)に向かって生じ得る。ツール(505)のステップオーバ(503)位置がZの負に向く場合、「下り坂」(
図5A)の研削経路(501)が生じる。下り坂の動きにおける材料除去(507)の少なくとも一部は、ツール先端部(302、506)により行われる。ツール先端による材料除去によって、ツール(300)の加熱、ツール先端(302)の摩耗、およびツール軸部(301)の合金被覆に埋め込まれたダイヤモンドなどの研削媒体(303)の過度の摩耗が生じ得る。ステップオーバ(504)位置がZの正(
図5B)に傾斜している場合、「上り坂」(502)の研削経路が、ツール側面(508)による材料除去(507)をもたらして、ツール先端(506)による材料除去を減らし、これにより、ツールの摩耗を減らす。上り坂の動きにおける材料除去について最適化された機械加工法を含む方法が提供される。しかしながら、zの負のミリングが避けられない場合には、例えば、各ツール経路の長さを最小化することにより、(下り坂の)zの負の方向に生じる連続機械加工の量を制限する方法が提供される。
【0032】
一実施形態では、研削ツールのZの負の方向への動きの割合を最小化するための方法は、プリフォーム幾何形状内への修復物設計の入れ子位置を最適化するための入れ子法を実行するステップと、選択された入れ子位置からツール経路を生成するステップとを含む。1つの方法では、歯科用修復物設計にわたるツール経路線の長さを短くする入れ子位置を選択することによって、研削ツールに対する応力または摩耗を少なくする。一部の歯科用修復物について、修復物設計の最長寸法は、頬側面(704)と舌側面(705)との間の幅(例えば、線703により表される)、および/または近心面(706)と遠心面(707)との間の幅である。ツールが歯の最長寸法に平行に、または歯の最長寸法に直交して進む機械加工法は、研削ツールに応力を加えることがある。一実施形態では、方法は、修復物設計(700)の頬側と舌側とを分離する線(703)がステムの長さに直交しないため、ステムの長さ(Y軸)に直交して延びるツール経路線が線(703)に平行でない入れ子構成を選択するステップを含む。一実施形態では、修復物設計(内面(
図7B、708)および咬合面(
図7A、709)から示される)を入れ子にするための方法の実施形態が提供される。Z軸の周りで回転される修復物設計は、頬側面と舌側面とを分離する線(703)がステムの長さ(y軸)(701)からずれて、線703がステムの縦軸に平行でないように位置決めされる。別の実施形態では、方法は、修復物設計をプリフォーム本体内に入れ子にして、頬側面と舌側面とを分離する線(703)がステムの縦軸(y軸)からずれ、かつステムの縦軸に対する直交からもずれて、線(703)がステムの縦軸に対して平行でも直交でもないようにするステップを含む。
【0033】
例示の目的で、修復物設計の外面を境界付けする、隣接する頬側面、舌側面、近心側面、および遠心側面を有する四辺形の箱(702)が示される。本実施形態では、箱内の修復物設計が、ステム(701)の位置に対して菱形構成(710)に傾斜して、側面がステムの長さに対して直交でも平行でもないようにする。したがって、修復物設計をステムに対して菱形構成に入れ子にするステップと、ステムの長さ(y軸)(701)に直交するツール経路線を有するツール経路シーケンスを設けるステップとを含み、例えば、平行レーシングツール経路パターン(XYZ機械加工位置を含む)での使用時に、結果として生じる、歯の近心−遠心幅を通るツール経路の長さが短くなる方法が提供される。一実施形態では、プリフォーム設計のステムのY軸は、近心面および遠心面(608)と頬側面および舌側面(609)との間に角度をおいて位置決めされることにより、
図7Aおよび
図7Bに見られる菱形構成が得られ、研削シーケンスの少なくとも一部について下り坂(Zの負)位置で研削するときに、修復物にわたるツール経路の長さが短くなる。
【0034】
一実施形態では、前述したように、修復物設計が複数の位置で入れ子にされる。一実施形態では、入れ子位置ごとに、内面または咬合面の負の傾斜値が計算される。負の傾斜値は、機械加工方向から見たときに、10°、15°、20°、または30°、またはそれ以上の閾値角度よりも大きい負の傾斜を有するように決定された修復物設計の表面積の割合として計算される。場合により、修復物の負の傾斜値は、咬合面と内面との両方についての閾値角度よりも大きい負の傾斜を有する表面積の割合の合計であってもよい。負の傾斜を有する表面積は、閾値角度以上の角度でツールを下り坂(Zの負)で機械加工することによって成形を実行できる面積に対応する。例えば、STLファイルフォーマットを使用する一実施形態では、修復物設計の咬合面または内面を解析して、機械加工方向から見たときに、三角面の幾何形状の何パーセントが垂線に対して閾値よりも大きく傾斜しているかを判定することができる。内面および/または咬合面の特定の閾値以上の負の傾斜を有する表面積の割合に対応する最小の負の傾斜値を修復物設計が有する入れ子位置は、ツール経路を計算する入れ子位置として選択される。
【0035】
修復物設計を入れ子にするための方法(900)を含むフローチャートが
図9に示される。一実施形態では、方法は、患者の特注の修復物設計ならびに近心接触情報および遠心接触情報を取得するステップ(901)と、修復物がプリフォーム本体の幾何形状内に収まるかどうかを判定するステップ(902)とを含む。一実施形態では、プリフォーム外面および修復物設計外面からの距離が0.2mm超など設定値よりも大きくなるように、閾値を設定してもよい。修復物設計がプリフォームの幾何形状内に収まらない場合、プログラムを終了してもよく、歯科用医により異なる修復物オプションを続行してもよい。修復物設計がプリフォームの幾何形状内に収まる場合、同じアーチの隣接歯の近心接触領域および遠心接触領域の外側のプリフォームステム位置を有する入れ子オプションを特定してもよい(904)。入れ子オプションごとに、閾値よりも大きい負の傾斜を有する修復物表面積(xy面)の合計を、咬合面および内面の両方について計算して合計する。閾値よりも大きい負の傾斜値を有する表面積の最小の割合を有する入れ子オプションを選択してもよい(905)。選択された入れ子オプションについて、ステムに隣接するプリフォームの下部で、修復物設計を入れ子にする(906)。選択された入れ子オプションについて、修復物の分割線、または、例えば咬合面から見たときに、修復物の咬合面と辺縁との間の最大寸法の位置の周りの線に一致して、ステムを位置決めする(907)。さらなるステップ(908)では、修復物設計の歯の辺縁からの第1のステム端部の距離を判定して、例えば、修復物の成形の終了時に、ステム取付部と修復物辺縁との間の距離が閾値よりも大きくなる(例えば、2mm超)かどうかを判定する。(歯科用修復物への取付点における)辺縁からのステムの距離が閾値未満である場合、成形後にステムを除去するときに歯修復物の辺縁が損傷するおそれがあるため、入れ子オプションを無視または拒否することができ(910)、負の傾斜を有する表面積の割合の合計について次の最小値を有する第2の入れ子オプションを選択することができる。近心接触領域および遠心接触領域からのステムの距離、辺縁および/もしくは咬合面からのステムの距離、ならびに/または咬合面および修復物設計内面についてのZの負の方向の機械加工の割合などの1つまたは複数の閾値を満たす最終入れ子オプションが選択されるまで、入れ子および解析ステップのプロセスのいずれかを繰り返してもよい。最終入れ子位置の選択後、ツール経路シーケンスが計算される(909)。
【0036】
図10のフローチャートにより例示されるさらなる実施形態では、修復物設計を入れ子にするための別の方法(1000)が提供される。方法は、患者の特注の修復物設計ならびに近心接触情報および遠心接触情報を取得するステップ(1001)と、プリフォーム本体内への修復物設計の入れ子オプションを特定するステップとを含む。修復物設計と隣接歯との近心接触点および/または遠心接触点でステムの第1の端部が修復物設計に連結しない入れ子オプションが特定される。一実施形態では、ステムが修復物の頬側、例えば遠心頬側ステム位置または近心頬側ステム位置で修復物設計に接触する2つの入れ子オプションを設けてもよい。入れ子オプションごとに、閾値よりも大きい負の傾斜を有する修復物表面積(xy面)の割合を、咬合面および/または内面について計算し、場合により、咬合面および内面の値を合計する(1003)。閾値以上の負の傾斜を持つ最小の割合の表面積を有する第1の入れ子オプションを特定してもよい(1004)。第1の特定された入れ子オプションを選択してもよく、ステムが分割線に一致するようにプリフォーム内の修復物設計の位置を調節してもよい(1004)。第1の選択された入れ子オプションについて、修復物設計がプリフォーム本体内に収まるかどうか(1005)、例えば、プリフォーム外面および修復物設計外面からの距離が0.2mm超など最小閾値よりも大きいかどうかを判定してもよい。ステムと辺縁との間の距離が閾値距離、例えば、1mmよりも大きいかどうかを判定してもよい(1006)。ステップ(1005)およびステップ(1006)の両方のパラメータが満たされると(1007)、第1の入れ子位置を受け入れることができ、ツール経路をプリフォーム内の修復物の入れ子位置から計算することができる(1008)。(1005)または(1006)のいずれかのパラメータが満たされていない場合、負の傾斜を持つ次の最小の割合の表面積を有する別の入れ子オプションを特定し(1010、1009)、(1004)、(1005)、および(1006)のプロセスにより評価することができる。第2または次の入れ子オプションが(1005)および(1006)のパラメータを満たす場合、第2または次の入れ子オプションがパラメータを満たしていることがプログラムのユーザに通知され、入れ子オプションを評価する、入れ子オプションを選択する、入れ子オプションをさらに調節する、または別の修復物オプションを選択するなどのさらなる動作をユーザに促すことができる。(1005)および/または(1006)のパラメータを満たす入れ子オプションがない場合、最小表面積を有する第1の入れ子オプションを選択し(1011)、例えば、プリフォーム内でZ軸方向に調節して、修復物設計がプリフォーム内に最良の形で収まるようにしてもよい。前述したように、すべてのパラメータを満たすオプションがないことをユーザに通知することができ(1012)、さらなる動作をユーザに促すことができる。
【0037】
入れ子ソフトウェアは、歯科用修復物設計ソフトウェアとは別個であってもよく、修復物設計の終了時に自動で実行可能な設計ソフトウェアのモジュールを含んでもよい。入れ子ステップにより得られる、歯科用修復物に対するステムの位置データを含む入れ子情報を使用して、ツール経路を算出してもよい。ツール経路シーケンスをプリフォームステムおよび修復物設計の位置データから計算してもよく、これを2つ以上のツール経路に分割してもよい。
図8A、
図8B、および
図8Cは、機械加工ステップ(800)がプリフォーム本体の前部(803)と後部(808)とに分割された、プリフォーム(802)のモデル内に入れ子にされた修復物設計(804)を示す。
図8Aおよび
図8Bは、ステム(801)と反対側のプリフォーム本体(802)の一部に対応するプリフォーム本体の前部(803)の機械加工ステップの一実施形態を示す。
図8Cは、プリフォームステム(801)に隣接するプリフォーム本体の後部(808)を機械加工するための機械加工ステップを示す。
図8Aは、空洞(806)を有するプリフォーム本体(802)の下部(809)から見た前部(803)を示す。
図8Aでは、修復物設計の内面(805)が、プリフォーム下部(809)に位置するプリフォーム空洞(806)に隣接して入れ子にされる。
図8Bは、プリフォームの上部(810)から見た前部(803)を示し、修復物設計の咬合面(807)がプリフォーム本体の上部(810)に隣接する。
図8Cは、プリフォーム下部(809)から見たプリフォーム本体の後部(808)の機械加工ステップを示し、修復物設計がプリフォームのステム(801)に隣接して入れ子にされる。前部および後部は各々、修復物をプリフォームから機械加工するための1つまたは複数のツール経路を含む1つまたは複数の機械加工ステップを含んでもよい。一実施形態では、プリフォーム本体の前部(803)を機械加工するための第1のツール経路が設けられ、ステムに隣接するプリフォーム本体の後部(808)を機械加工するための第2のツール経路が設けられる。一実施形態では、前部を機械加工するための第1の平行レーシングツール経路が設けられ、後部を機械加工するための第2の平行レーシングツール経路が設けられ、前部および後部がY軸に対して両方のレーシング方向から機械加工される。
【0038】
図8C、
図8D、および
図8Eでは、ミリング機械の寸法制限が、前部(803)および後部(808)の機械加工ステップにより示される。ツールのずれ位置(例えば、813、814)を、プリフォーム本体(802)およびステム(801)の寸法に基づいて計算することができる。
図8Fおよび
図8Gに例示した一実施形態では、プリフォーム本体(802)の側面図に示すように、前部ツール入口位置(811)および後部ツール入口位置(815)と、前部(803)および後部(808)の前部ツール停止位置(812)および後部ツール停止位置(816)とを有する2つのツール経路が設けられる。
【0039】
一実施形態では、第1の機械ステップは、プリフォームの後部(808)を機械加工するための第1のツール経路を含む。第1のツール経路は、プリフォームのステム(801)側近くに後部ツール入口点(例えば、815)を有し、yの正の方向に第1の平行レーシングツール経路を含む。前部を機械加工するための第2のツール経路は、ステムと反対のプリフォームの前側(803)に前部ツール入口点(例えば、811)を有し、Yの負の方向に第2の平行レーシングツール経路を含む。プリフォームの両側(前および後)にツール入口点を有する第1のツール経路および第2のツール経路は各々、ツール経路が分離するy軸上の点に向かって反対方向(Y軸に対して)に進むレーシングパターンをたどる。ツール経路シーケンスを、y軸に対して任意の点で第1のツール経路と第2のツール経路とに分割してもよく(例えば、
図8Dおよび
図8E)、またはツール経路シーケンスを、本明細書で説明した機械加工パラメータを最適化するように選択された、入れ子修復物の位置情報に基づいて複数のツール経路に分割してもよい。一実施形態では、修復物の内面(または空洞)を機械加工するためのツール経路シーケンスを、設定閾値内でプリフォームステムに最も近いY軸上の修復物設計の歯の辺縁線の最小点(例えば、712、818)で第1のツール経路と第2のツール経路(x軸方向に概ね平行なツール経路線を有する)とに分離してもよい。修復物の咬合面を機械加工するためのツール経路シーケンスを、修復物設計の咬合面の縁部がステムに向かって特定の角度で負に傾斜する、Y軸に対する点(例えば、110、711、または817)で、第1のツール経路と第2のツール経路とに分離してもよい(ツール経路線がX軸に概ね平行な場合)。
【0040】
一実施形態では、プリフォーム本体を歯科用修復物に成形するための方法は、i)プリフォーム本体(810)の前端部(803)にツール経路入口を有する第1のツール経路、およびii)ステムに隣接するプリフォーム本体の後端部にツール経路入口を有する第2のツール経路を含む、プリフォーム本体の上側を成形するための少なくとも2つのツール経路と、i)プリフォーム上端部(810)の前端部にツール経路入口を有する第1のツール経路、およびii)ステム(801)に隣接するプリフォーム本体の後端部にツール経路入口を有する第2のツール経路を含む、プリフォーム本体の下側を成形するための少なくとも2つのツール経路とを含む。
【0041】
一実施形態では、歯科用修復物設計を成形するための方法は、修復物設計の咬合面および内面を成形するための2つ以上のツール経路を含み、咬合面を成形するためのツール経路と内面を成形するためのツール経路とは、修復物の外面の輪郭または最大寸法をたどる修復物分割線に沿って分離される。一実施形態では、i)プリフォーム本体のステムに隣接する修復物設計の咬合側の第1の部分を機械加工するための第1の機械加工ステップと、ii)プリフォーム本体の前部に隣接して入れ子にされた修復物の咬合側の第2の部分を機械加工するための第2の機械加工ステップと、iii)プリフォーム本体のステムに隣接して入れ子にされた修復物設計の内面側の第1の部分を機械加工するための第3の機械加工ステップと、iv)プリフォーム本体の前部近くで入れ子にされた内面側の第2の部分を機械加工するための第4の機械加工ステップとを含み、各ステップが別個のツール経路を含む機械加工法が提供される。一実施形態では、ツールがプリフォーム本体と取付具との間でステムに隣接して第1のツール経路および第3のツール経路に入り、プリフォーム本体に接触し、ツール側面によりプリフォーム材料を除去して、ツール先端による研削または材料除去の量を少なくする。プリフォーム本体が円筒形状を含む実施形態では、ツールは、ステム取付具とは反対のプリフォーム側でプリフォームの湾曲外面に隣接する第2のツール経路および第4のツール経路(前述した)についてツール経路に入り、ツール経路に入るときに、研削ツールの側面がプリフォーム材料を除去する。1つの代替実施形態では、修復物設計の咬合面または内面のいずれかを単一のツール経路により成形してもよく、ツール経路は、プリフォーム本体の前部またはステムに隣接するプリフォーム本体の後部に入口点を有してもよい。CAMソフトウェアを実行して、プリフォーム本体の前部および後部について別個のツール経路を生成してもよく、前部ツール経路および後部ツール経路の始点および終点が、ツール経路をY軸に対して分離する位置を特定することによって判定される。修復物設計の前部ツール経路と後部ツール経路とは、例えば約0.2mm重なって、ツール経路が分割される領域でツール経路線の移行をもたらしてもよい。咬合面の前部ツール経路シーケンスと後部ツール経路シーケンスとを、内面の前部ツール経路と後部ツール経路との分離点から独立したY軸上の位置で分割してもよい。
【0042】
さらなる実施形態では、第1のステム端部でステムの寸法(幅または直径)を小さくして、本明細書に記載の修復物成形プロセスの終了時に成形修復物設計からのステムの除去を容易にするための機械加工ステップが設けられる。ステムの縦軸周りの連続回転機械加工経路を有するさらなるツール経路を、本明細書に示す方法に組み込んで、歯科用修復物との接触点近くのステム幅または直径を小さくしてもよい。
【0043】
機械加工ステップおよびツール経路の順序は変化してもよく、例えば、第1のツール経路、第2のツール経路、第3のツール経路、第1の機械ステップ、第2の機械ステップなどで使用される第1および第2のような用語は、説明の便宜上使用されるものであり、特に断りのない限り、ステップの特定の順序を示すものとしての意味を持つべきではない。プリフォームステムに対する修復物設計の入れ子位置を本明細書に記載の方法に基づいて判定されたように特定することにより、かつ特定された入れ子位置について、本明細書に開示された方法により、咬合面および内面上の点を特定して修復物設計を別個のツール経路に分割することにより、機械加工中における研削ツールのZの正の方向への位置決めを最適化するパラメータを含むアルゴリズムが設けられる。
【0044】
さらなる実施形態では、材料送り速度を機械ステップごとに個々に制御してもよい。前部ツール経路および後部ツール経路の機械加工パラメータは、プリフォーム本体の前部および後部について異なる材料送り速度を含んでもよい。一実施形態では、ステムに隣接するツール入口点を有するプリフォーム本体の後部を機械加工するための第1の機械ステップは、修復物設計の咬合面を機械加工するときにプリフォーム本体の前部を機械加工するための機械加工ステップの材料送り速度よりも速い第1の材料送り速度を含む。
【0045】
機械加工パラメータを3+1軸CNC機械で実行して、チェアサイドの適用においてダイヤモンドが埋め込まれた合金被覆を含む単一の研削ツールを用いて、約HV4GPa以上のビッカース硬度値を有する材料からなるプリフォーム本体から完成歯科用修復物を成形してもよい。別の実施形態では、特注の歯科用修復物を3+2軸、または4軸、または5軸機械で機械加工してもよい。対応する3+2軸または4軸または5軸機械加工サイクルを使用して、修復物のCADデータから直接、または元のCADデータから補間された別個のツール軸駆動面を用いて間接的に、機械加工面に垂直なツール接触に対するツール軸角度を特定してもよい。さらなる実施形態では、2つ以上の研削ツールを使用してプリフォームを研削してもよい。例えば粗削りおよび仕上げのために複数の研削ツールを順に使用してもよく、または複数の研削ツールをプリフォームの両面で同時に使用してもよい。
【0046】
本明細書に記載の方法は、本明細書に示す方法により測定したときに、約HV4GPa以上のビッカース硬度値(ビッカースマクロ硬度)またはHV4GPa〜HV20GPa(すなわち、HV4GPa〜HV20GPa)の値を有するプリフォーム材料のための、チェアサイドの適用における機械加工を強化する。あるいは、プリフォーム材料は、HV5GPa〜HV15GPa、またはHV11GPa〜HV14GPaのビッカース硬度値を有する。この範囲内の硬度値を含むプリフォーム本体材料は、コバルトクロムなどの金属、ガラス、ケイ酸リチウムおよび二ケイ酸リチウムなどのガラスセラミック、ならびにアルミナおよびジルコニアを含む焼結セラミックを含むセラミック材料を含んでもよい。
【0047】
限定されないが、市販の歯科用ガラス、ガラスセラミックまたはセラミック、またはこれらの組合せを含む歯科用修復物材料を使用して、本明細書に記載の方法により機械加工可能なプリフォームを作製してもよい。セラミック材料は、ジルコニア、アルミナ、イットリア、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ニオビウム、およびこれらの混合物を含んでもよい。ジルコニアセラミック材料は、ジルコニアがセラミック材料の約85〜約100重量パーセントの量で存在する材料を含む、主にジルコニアからなる材料を含む。ジルコニアセラミックは、ジルコニア、正方晶安定化ジルコニアなどの安定化ジルコニア、およびこれらの混合物を含んでもよい。イットリア安定化ジルコニアは、約3モル%〜約6モル%のイットリア安定化ジルコニア、または約2モル%〜約7モル%のイットリア安定化ジルコニアを含んでもよい。本明細書での使用に適した安定化ジルコニアの例は、限定されないが、(例えば、Tosoh USAによりTZ−3Yグレードとして)市販されているイットリア安定化ジルコニアを含む。本明細書での使用に適した歯科用セラミックを作製するための方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれた、本出願人の米国特許第8,298,329号明細書にも見られる。
【0048】
プリフォーム本体を、焼結プリフォームと略同じ幾何形状を有する中間体に成形された未焼結材料から作製し、必要であれば、焼結時の収縮に対応するように寸法を拡大してもよい。適切な未焼結セラミック材料は、成形および二軸方向押圧または均衡押圧を含む押圧を含むプロセスによりブロックに作製されてもよく、場合により、結合剤および加工助剤を含んでもよい。焼結プリフォームが天然歯列または人工歯列の色を有するように、セラミックのブロックに濃淡付けして、歯科用修復物の形成後にさらに着色する必要がないようにしてもよい。ブロック形成中に着色剤を取り入れて、着色または濃淡付けされていないセラミック材料よりも忠実に天然歯列または市販の人工歯列の外観に一致させてもよい。場合により、参照により全体が本明細書に組み込まれた、本出願人の米国特許出願公開第2009/0115084号明細書、第2013/0231239号明細書、および第2013/0313738号明細書に記載されたプロセスを含むスリップ注型プロセスにより、セラミック粉末をブロックに加工してもよい。中間成形体を作製する際に使用するのに適した予備焼結セラミックブロックは、商品名BruxZir(登録商標)(例えば、BruxZir(登録商標) Shaded 16 Milling Blanks、Glidewell Direct、Irvine、CA)で販売されているものを含む市販のセラミックミリングブロックを含む。一部の実施形態では、完全焼結ジルコニアセラミックの理論最大密度は約5.9g/cm
3〜約6.1g/cm
3、または例えば約6.08g/cm
3である。
【0049】
ステムおよび/または取付部材をプリフォーム本体に取り付けるための別個の取付けステップを必要とすることなく、一体のプリフォームを、単一の連続した未焼結状態のブロックまたは予備焼結セラミックブロックから成形してもよい。あるいは、プリフォームを、射出成形を含む公知の成形プロセスにより作製してもよい。中間成形体を、公知の焼結プロトコルによる理論最大密度の約95%超の密度まで焼結させてもよい。焼結ジルコニアセラミックプリフォームは、セラミック本体の理論最大密度の約95%超、または約98%超、または約99%超、または約99.5%超の密度を有してもよい。
【0050】
プリフォーム本体は、本明細書に記載の方法により、チェアサイドの適用において歯科用修復物に成形可能な材料を含み、この材料は、焼結などによる成形後に材料強度特性を変化させる追加の成形後加工ステップなしで、前部、後部、または前部および後部の両方の歯科用修復物の適用において使用するのに受け入れ可能な強度特性を有する。焼結プリフォームはジルコニアセラミック材料を含んでもよく、このジルコニアセラミック材料は、Dentistry−Ceramic Materialsに記載された3点曲げ強度試験に従って測定され計算された、ISO6872:2008で概説されたジルコニア材料の曲げ強度試験方法によって試験されたときに、約400MPa超、または約500MPa超、または約600MPa超、または約800MPA超の強度値を含む、高い曲げ強度を有する。
【0051】
ある実施形態において一般的なミリングツールが不適切となる材料硬度のため、従来のミリングツールの代わりに研削ツールを使用して焼結セラミックプリフォームを研削することにより、歯科用修復物を作製してもよい。ダイヤモンドが埋め込まれたニッケルめっきツールを含む、ダイヤモンド被覆を有する研削ツールは、本明細書での使用に適している。例えば
図3に示すように軸部(301)を有する研削ツール(300)は、軸部(301)および先端にダイヤモンド被覆が埋め込まれる。本明細書での使用に適したダイヤモンドは、約90ミクロン〜約250ミクロンの平均サイズ、または約107ミクロン〜約250ミクロンの平均サイズ、または約120ミクロン〜約250ミクロンの平均サイズ、または例えば、約120ミクロン〜約180ミクロンの平均サイズを有する塊状の、または脆いダイヤモンドを含む。適切なダイヤモンド被覆は、例えばSEM解析により判定されるように、ダイヤモンドの少なくとも50%が、ダイヤモンドの高さの半分を超えて、金属合金層に埋め込まれたものを含む。ダイヤモンドが、ダイヤモンド高さの約50%〜95%、またはダイヤモンド高さの約60%〜約95%、またはダイヤモンド高さの約80%〜約95%の深さまで金属合金に埋め込まれた被覆を有する研削ツールが、完全焼結ジルコニアプリフォーム、または本明細書に記載の硬度値を有する材料を含むプリフォームなどの材料から作製されたプリフォームを成形するのに有用である。一部の実施形態では、研削ツールが、ダイヤモンドグリットサイズ(例えば、ミクロン)の約50%超、またはダイヤモンドグリットサイズ(例えば、ミクロン)の約60%超、または約70%超、または約80%超、または90%超、または約60%〜90%、または約80%〜100%の厚さを有する金属合金層を有するダイヤモンド被覆された軸部を有する。一実施形態では、研削ツールは、126グリット〜181グリットのダイヤモンドサイズと、ダイヤモンドグリットサイズ(ミクロン)の約70%以上の厚さを有するニッケル合金層とを含むダイヤモンド被覆された軸部を有する。
【0052】
試験方法
曲げ強度試験
ISO6872:2008で概説されたジルコニア材料のインストロン曲げ強度試験方法を使用して、焼結試験材料で曲げ試験を行った。
【0053】
以下のような焼結試験棒の目標寸法と材料の拡大率(E.F.)とを考慮してビスク材料を切断することにより試験棒を用意した。
出発厚さ=3mm×E.F.
出発幅=4mm×E.F.
出発長さ=55mm×E.F.
【0054】
切断されたビスク棒を、ビスク材料の製造者により提供された焼結外形に実質的にしたがって焼結した。ISO(国際標準)6872 Dentistry−Ceramic Materialsに記載された3点曲げ強度試験に従って、曲げ強度データを測定し計算した。
【0055】
ビッカース硬度数
プリフォーム材料を、ビッカース硬度(マクロ硬度試験)を用いて硬度について試験してもよい。硬度数(HV)を、ISO−6507に記載されたように計算してもよく、またはF/A(ここでFは加えられる力(kg/m
2)、Aは結果として生じるくぼみの表面積(mm
2))の比を判定することにより計算してもよい。HV数をSI単位に変換して、H(GPa)=0.009817HVのように単位HVGPaで記録してもよい。
【0056】
例1−21
本明細書に記載の方法により、複数の歯型(番号)の21のジルコニアクラウンを焼結ジルコニアプリフォームから成形した。
【0057】
部分的に焼結されたジルコニアミリングブロック(BruxZir(登録商標) Shaded milling blocks、Glidewell Direct、Irvine、CA)を入手し、ブロック密度から計算された拡大率を取り入れた標準のミリング手順により、プリフォームの形状にミリングした。予備焼結された一体成形体は、
図2B〜
図2Dに実質的に示されるような円筒形本体、ステム、および取付部材を有し、下面から内方へ延びる空洞を有した。ステムは、焼結プリフォームに接触することなくボール研削ツールの先端をz軸方向に位置決めするために、焼結後に取付部材と円筒形本体との間に十分な長さを有した。取付部材の形状およびサイズは、研削プロセスにおいてCNC機械とともに使用されるマンドレルに取り付けるように適合したものであった。
【0058】
予備焼結成形体を製造者により提供されたジルコニアブロックの焼結外形に従って焼結して、約5.9g/cm
3〜6.1g/cm
3の密度を有する完全焼結ジルコニアプリフォームを形成した。完全焼結プリフォームは、約12.8mm〜14.2mmの本体長さ、約14mm〜15mmの横断面外径、約7mm〜8mmの直径を有する、下端面の空洞ブレイクアウト直径を有し、空洞の輪郭は約4mmの深さを有する円錐体であった。第1のステム端部は約2〜2.8mmの幅を有し、ステムの長さは約6.8〜7.3mmであった。
【0059】
プリフォームは各々、金属マンドレルに接着された下面を有する取付部を含んだ。研削ツールのz軸、x軸、およびy軸方向の動きとツール経路サイクル間のプリフォームの回転とを有する3+1軸CNC機械(TS150(商標) Chairside mill system、IOS Technologies、San Diego、CA)を使用して、プリフォームをCAD設計ファイルに基づいて複数の歯の形状の完成修復物に成形した。研削ツールは、約80%〜90%の埋込みダイヤモンド深さまでニッケル合金めっきに埋め込まれたダイヤモンド(サイズ:約126ミクロン)を含んだ。平面方向および研削ツールの軸方向の両方にステップオーバ能力を有するCAMレーシングサイクルを使用して、クラウンの全面を研削した。研削ツールは、約90〜210の平均ダイヤモンドグリットサイズを有した。
【0060】
約150000rpmの回転速度と約85psi最小吸気圧力とを有する空気スピンドルを使用して、完全焼結ジルコニアプリフォームを研削した。CAMレーシングサイクルパラメータは、歯番号と、修復物の上部または下部、修復物のステム側、またはステム側と反対側に対する焼結プリフォームの研削面に基づいて判定された。表1に見られるように、60分で後方歯番号2、3、14、15、18、19、30、および31についての修復物が焼結プリフォームから作製された。
【0062】
図1は、表1に記載の例により作製された修復物クラウンを示す。修復物クラウンは、研削終了後にステムと修復物との間に最小の残留材料(106)を残して成形された。修復物クラウンはステムから折り取られ、ステムの位置は、必要に応じて、平滑に仕上げるために手で磨かれた。
【0063】
例22〜45
複数の歯型(歯番号2、14、15、30、および31)の6つの修復物設計を表す22のジルコニアクラウンを、実質的に例1〜21に示す方法により作製された焼結ジルコニアプリフォームから成形した。
【0064】
以下の歯番号:#2−上アーチの第2臼歯、#14および#15−上アーチの第1臼歯および第2臼歯のそれぞれ、#30および#31−下アーチの第1臼歯および第2臼歯のそれぞれに対応する複数の歯のプレパレーションについて、患者のスキャンデータに基づく歯科用CADシステム(IOS(商標)FASTDESIGN)を用いて修復物設計を生成した。6つの特注の歯科用修復物設計をプリフォームのコンピュータモデル内に入れ子にして、
図6Aおよび
図6Bを参照し、表2に従ってプリフォームステムを歯設計に対して配置する。
【0065】
各修復物設計を4回入れ子にして、4つの入れ子設計を提供した。各入れ子動作において、プリフォームのステムは、表2に示すように、修復物に対する4つの異なる位置のうちの1つに位置決めされた。例えば、番号1のステム位置とともに入れ子にされた修復物設計の場合、ステムのY軸は、修復物設計の近心接触領域と頬側面との間に位置決めされた。番号2のステム位置では、ステムは遠心接触領域と頬側面との間に位置した。番号3のステム位置では、ステムは遠心接触領域と舌側面との間に位置し、番号4のステム位置では、ステムは近心接触領域と舌側面との間に位置した。
【0067】
位置入れ子情報を使用して、各々4つのツール経路を含む修復物設計の4つのツール経路シーケンスを計算した。修復物設計の各面(咬合面および内面(空洞側))について、プリフォームの前部とプリフォーム本体の後部(ステムに隣接する)とを機械加工するための、2つのツール経路が生成された。修復物設計は、計算されたツール経路を用いてプリフォームごとに機械加工された。
【0068】
各例の結果を評価した。完成修復物の成形の成功または失敗が表2に示され、成功の欠如(「いいえ」)は、修復物の完成前にツールの損傷により生じた。入れ子条件に基づいて焼結プリフォームから修復物を成形する時間も、表2に見られるように計算された。
【0069】
ステムが近心頬側位置に位置決めされる入れ子動作からツール経路が計算されたすべての修復物設計は、1時間未満で成形に成功した。12の修復物設計のうちの11が、ステムが近心頬側位置または遠心頬側位置にある入れ子位置から計算されたツール経路から、1時間未満で成形に成功した。ステムが近心舌側位置で入れ子された位置データに基づいてツール経路が計算された5つの修復物設計のうちの3つが、成形に失敗した。すべての成功した修復物を成形するための最短成形時間は、ステム位置が頬側に向いた入れ子位置(近心頬側位置または遠心頬側位置)から計算されたツール経路について生じた。