(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載の発明では、オペレータがレバースイッチを操作したときに電動シリンダが作動する。つまり、オペレータがレバースイッチを操作しない限り、カメラは現状位置を維持し続ける。
【0005】
このため、荷役作業中にカメラが作動位置にある場合において、オペレータの不注意により、電動シリンダが壁や貨物等に接触又は衝突し、当該電動シリンダ又は貨物等が損傷してしまうおそれがある。
【0006】
電動シリンダが損傷すると、修理費用等の点で不利である。そこで、本願は、上記点を考慮したカメラ用装着ブラケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願では、カメラが取り付けられる取付部(11A)を有するブラケット本体(11)と、ブラケット本体(11)を荷役作業車に固定するための固定構造部(13)であって、当該荷役作業車に不動状態で固定された固定部(17)、及びブラケット本体(11)に設けられ、固定部(17)に離脱自在に連結された連結部(15)を有する固定構造部(13)とを備え、固定構造部(13)は、ブラケット本体(11)に予め決められた大きさ以上のモーメントが作用したときに、連結部(15)が固定部(17)から離脱するように構成されている。
【0008】
これにより、オペレータの不注意により、ブラケット本体(11)が貨物等に衝突した場合には、連結部(15)がブラケット本体(11)と共に固定部(17)から容易に離脱する。つまり、ブラケット本体(11)が貨物等に衝突すると、ブラケット本体(11)又は貨物等に大きな損傷が発生する前に、当該ブラケット本体(11)が固定部(17)から離脱する。
【0009】
したがって、ブラケット本体(11)が折れ曲がってしまう等の大きな損傷がブラケット本体(11)に発生すること及び貨物等が損傷することを抑制できるとともに、離脱したブラケット本体(11)を固定部(17)に連結すれば、当該ブラケット本体(11)を再利用できる。
【0010】
なお、「予め決められた大きさ以上のモーメント」とは、上記の作用を達成可能な大きさのモーメントであって、試行錯誤的に決定される大きさのモーメントである。
具体的には、当該モーメントは、例えば、「JIS規格のネジ」や「JIS規格の溶接方法」等にてブラケット本体(11)を固定部(17)に連結した際の連結強度より小さい連結強度に相当するモーメントである。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0015】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、当該部材が2以上設けられていてもよい。
(第1実施形態)
1.カメラ用装着ブラケットの取付位置
本実施形態は、
図1に示すように、リーチ式フォークリフト型の荷役作業車1に本発明に係るカメラ用装着ブラケット10を適用したものである。カメラ用装着ブラケット10は、ヘッドガード3を支えるポスト部5に装着される。
【0016】
ヘッドガード3は、
図2に示すように、荷役作業車1の操作を行うオペレータを、その頭上側から覆うため保護部材である。本実施形態に係るポスト部5は、ヘッドガード3の幅方向両側それぞれに設けられている。
【0017】
そして、カメラ用装着ブラケット10は、少なくとも一方のポスト部5に装着されている。なお、本実施形態では、車両前方側に向かって左側のポスト部5に装着される。つまり、車両左右方向において、オペレータの乗車位置と反対側のポスト部5にカメラ用装着ブラケット10が装着される。
【0018】
モニタ7は、カメラ用装着ブラケット10に取り付けられたカメラ9により撮影された画像が映し出される表示部である。つまり、モニタ7は、カメラ用装着ブラケット10が装着されるポスト部5に取り付けられ、かつ、車両左右方向において、当該ポスト部5を挟んでカメラ9と反対側に配置される。
【0019】
2.カメラ用装着ブラケットの構造
カメラ用装着ブラケット10は、
図3に示すように、ブラケット本体11及び固定構造部13等を有して構成されている。ブラケット本体11はカメラ9が取り付けられる取付部11A等を有する。
【0020】
本実施形態に係るブラケット本体11は、取付部11Aが設けられたステー部11B、及び連結部15(
図4参照)が設けられたステー保持部11C等を有する。ステー部11Bは、カメラ用装着ブラケット10がポスト部5に装着された状態で略水平方向に延びる帯板状の部位である。
【0021】
ステー保持部11Cは、カメラ用装着ブラケット10がポスト部5に装着されたときに当該ポスト部5に対向するとともに、ステー部11Bが固定された部位である。なお、本実施形態では、ステー部11Bとステー保持部11Cとは、共に鉄系の金属製であって、略直交した状態で溶接等にて接合されて一体化されている。
【0022】
固定構造部13は、ブラケット本体11をポスト部5に固定するための構造部である。本実施形態では複数の固定構造部13が設けられている。それら固定構造部13は、ポスト部5の長手方向、つまり上下方向に沿って配置されている。なお、本実施形態では、いずれの固定構造部13も同一構造である。
【0023】
各固定構造部13は、
図4に示すように、連結部15及び固定部17等を有して構成されている。固定部17は、ポスト部5に不動状態で固定される部位である。連結部15は、ブラケット本体11に設けられ、固定部17に離脱自在に連結される部位である。
【0024】
そして、各固定構造部13は、予め決められた大きさ以上のモーメント(以下、離脱モーメントという。)がブラケット本体11に作用したときに、連結部15が固定部17から離脱するように構成されている。
【0025】
具体的には、固定部17と連結部15とは磁力による吸引力により連結されている。このため、当該吸引力により発生可能なモーメントを上回るモーメントがブラケット本体11に作用したときに連結部15が固定部17から離脱する。
【0026】
すなわち、連結部15は、
図5Aに示すように、マグネット部15A及びリング部15B等を有して構成されている。マグネット部15Aは、磁界を誘起する部材であって、永久磁石を有して構成されている。
【0027】
リング部15Bは、マグネット部15Aを囲む環状の部材であって(
図5B参照)、鉄系金属等の強磁性体にて構成されている。リング部15Bの厚み寸法D1は、マグネット部15Aの厚み寸法D2より大きい。このため、マグネット部15Aがリング部15Bから突出することなく、マグネット部15Aがリング部15B内に陥没した状態となる。
【0028】
固定部17は、
図6Aに示すように、上下方向と交差する面17A(以下、連結面17Aという。)にて固定部17と接触可能な部位であって、ポスト部5に固定された部位である。本実施形態に係る連結面17Aは、連結部15側から固定部17側に向かう方向に対して傾いたテーパ面である。
【0029】
「連結部15側から固定部17側に向かう方向」とは、ブラケット本体11がポスト部5に装着された状態において、略水平方向に一致する。このため、連結面17Aは、連結部15(リング部15B)に対して、少なくともその上端側及び下端側で連結部15(リング部15B)に接触することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態に係る連結面17Aは、
図6Bに示すように、ポスト部5側に向かうほど直径が小さくなるように環状に連続した円錐面であるので、連結面17Aは車両前後方向においても連結部15に接触することができる。つまり、連結面17Aは、車両幅方向を中心軸線とする環状の範囲で連結部15に接触可能である。
【0031】
リング部15Bのうち連結面17Aと接触する部位は、
図5Aに示すように、連結面17Aと同一のテーパ角を有するテーパ面15Cが設けられている。このため、連結部15が固定された状態においては、連結面17Aとテーパ面15Cとが接触する。
【0032】
固定部17は、リング部15Bと同様に鉄系金属等の強磁性体にて構成されている。なお、ポスト部5も鋼板等の鉄系金属製である。このため、マグネット部15Aの電磁吸引力は、固定部17及びポスト部5のいずれにも作用する。
【0033】
そして、固定部17は、
図3に示すように、車体の最外側面1Aより内側に位置している。車体の最外側面1Aとは、
図2に示すように、例えば、車両幅方向における最大寸法値となる部位である。
【0034】
3.本実施形態に係るカメラ用装着ブラケットの特徴
本実施形態に係る固定構造部13は、ブラケット本体11に離脱モーメント以上のモーメントが作用したときに、連結部15が固定部17から離脱するように構成されている。
【0035】
これにより、オペレータの不注意により、ブラケット本体11が貨物等に衝突した場合には、連結部15がブラケット本体11と共に固定部17から容易に離脱する。つまり、ブラケット本体11が貨物等に衝突すると、ブラケット本体11又は貨物等に大きな損傷が発生する前に、当該ブラケット本体11が固定部17から離脱する。
【0036】
したがって、ブラケット本体11が折れ曲がってしまう等の大きな損傷がブラケット本体11に発生すること及び貨物等が損傷することを抑制できるとともに、離脱したブラケット本体11を固定部17に連結すれば、当該ブラケット本体11を再利用できる。
【0037】
「離脱モーメント」の大きさは、上記の作用を達成可能な大きさのモーメントであって、試行錯誤的に決定される大きさのモーメントである。
具体的には、「離脱モーメント」は、例えば、「JIS規格のネジ」や「JIS規格の溶接方法」等にてブラケット本体11を固定部17に連結した際の連結強度より小さい連結強度に相当するモーメントである。
【0038】
なお、ブラケット本体11は、ワイヤー等の可撓性を有する紐部材(図示せず。)を介してポスト部5等の荷役作業車1側に連結されている。このため、ブラケット本体11が固定部17から離脱してもブラケット本体11が地面や床面に落下してしまうことはない。
【0039】
本実施形態では、固定部17と連結部15とは磁力による吸引力により連結されている。これにより、マグネット部15Aを構成する永久磁石を選択することにより、容易に固定構造部13を構成することができる。
【0040】
本実施形態では、固定部17と連結部15との連結面17Aがテーパ面に構成されている。これにより、連結部15を固定部17に装着する際に、連結部15が連結面17Aにより案内されて自動調芯機能が発揮される。したがって、連結部15を固定部17に対して適切な位置に装着することができる。
【0041】
本実施形態では、マグネット部15Aがリング部15Bから突出することなく、マグネット部15Aがリング部15B内に陥没した状態である。これにより、リング部15Bによりマグネット部15Aを保護できるので、マグネット部15Aが損傷してしまうことを抑制できる。
【0042】
本実施形態では、固定部17及びリング部15Bは、鉄系金属等の強磁性体にて構成されている。これにより、マグネット部15Aで誘起された磁束が強磁性体の固定部17及びリング部15Bに集中して連結面17Aの磁束密度を大きくすることができる。延いては、電磁吸引力を高めることができる。
【0043】
ところで、磁束の向きと直交する剪断方向の電磁吸引力は、磁束の向きと平行な法線方向の電磁吸引力に比べて小さい。このため、剪断方向(例えば、上下方向)の荷重がブラケット本体11に作用すると、比較的小さな力でブラケット本体11が固定部17から離脱してしまうおそれがある。
【0044】
これに対して、本実施形態では、連結面17Aは、連結部15に対して、少なくともその上端側及び下端側で連結部15に接触しているので、上下方向の荷重を連結面17Aで受けるも可能である。したがって、比較的小さな力でブラケット本体11が固定部17から離脱してしまうことを抑制できる。
【0045】
同様に、本実施形態に係る連結面17Aは、連結面17Aは車両前後方向においても連結部15に接触しているので、車両前後の荷重を連結面17Aで受けるも可能である。したがって、比較的小さな力でブラケット本体11が固定部17から離脱してしまうことを抑制できる。
【0046】
本実施形態では、固定部17が車体の最外側面1Aより内側に位置している。このため、ブラケット本体11が固定部17から離脱した後において、固定部17が貨物等の障害物と干渉してしまうことを抑制できる。
【0047】
(第2実施形態)
本実施形態に係る各固定部17は、
図7に示すように、弾性変形した状態で連結部15を両側から挟持する挟持体17Bを有して構成されている。各挟持体17Bは、バネ鋼鋼材等の弾性に優れた材質で構成されている。
【0048】
各連結部15は、車両前後方向に延びる棒状の部材にて構成されている。そして、各挟持体17Bは、上下方向から連結部15をなす棒状の部材を挟み込んでいる。したがって、ブラケット本体11が貨物等に衝突した場合には、連結部15がブラケット本体11と共に固定部17から容易に離脱する。
【0049】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(その他の実施形態)
第1実施形態では、固定部17に連結面17Aが設けられ、リング部15Bに連結面17Aと同一のテーパ角を有するテーパ面15Cが設けられていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
すなわち、例えば、(a)連結面17A及びテーパ面15Cのうち少なくとも一方が廃止された構成、又は(b)ポスト部5を固定部17として機能させる構成であってもよい。なお、(b)の場合には、マグネット部15Aで構成された連結部15は、ポスト部5に接触した状態で当該ポスト部5に吸着される。
【0051】
第1実施形態では、マグネット部15Aがリング部15Bから突出することなく、マグネット部15Aがリング部15B内に陥没した状態であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、(a)リング部15Bが廃止された構成、(b)リング部15Bの厚み寸法D1がマグネット部15Aの厚み寸法D2以下である構成であってもよい。
【0052】
第1実施形態に係るリング部15Bは、鉄系金属等の強磁性体にて構成されていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、樹脂等の非磁性体にてリング部15Bを構成してもよい。
【0053】
第1実施形態に係る連結面17Aは、上下方向に対して傾斜した面であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、連結面17Aが上下方向に対して直交した面であってもよい。
【0054】
本願の固定構造部13は上述の実施形態に示された構造に限定されるものではない。すなわち、例えば、固定部17と連結部13Cとをハンダ付け等の接合強度が小さい手法で接合された構成であってもよい。
【0055】
第1実施形態では、固定部17は強磁性体であり、連結部15は永久磁石を有して構成されていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、固定部17が永久磁石を有して構成され、連結部15が強磁性体で構成されていてもよい。
【0056】
第1実施形態に係る連結面17Aは、ポスト部5側に向かうほど直径が小さくなるように環状に連続した円錐面であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、ポスト部5側に向かうほど直径が大きくなるように環状に連続した円錐面であってもい。
【0057】
上述の実施形態では、リーチ式フォークリフトに本発明を適用した。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、カウンター式フォークリフト等のその他の荷役作業車にも適用できる。
【0058】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。