【課題を解決するための手段】
【0009】
背景技術に関するこれまでの議論は、本発明のみに対する理解を促進することを意図したものである。本出願の優先日時点で、言及された資料のいずれかが、オーストラリアまたはその他の国地域における常識的な一般知識の一部であることを、本議論によって認知または承認するものではないことは留意すべきである。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という用語は、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」等の活用形も含めて、言明された整数または整数群を含むことを示唆するが、その他の整数または整数群を除外するものではないと理解されるものとする。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「雲母(mica)」、「雲母(micas)」という用語は、その明らかな関連語も含めて、シート状または板状構造に結晶化する、一連の複雑な含水性のアルミノケイ酸塩鉱物を指し示すと理解されるものとする。具体的には、本明細書にて言及される雲母は、リチウムを含有する雲母と理解されるべきである。
【0012】
本発明に従って、リチウムを含有する雲母含量が豊富な鉱物からリチウムを回収する方法が提供される。本方法は、リチウムを含有する雲母含量が豊富な鉱物を1つ以上含む鉱石を少なくとも1つの前処理工程に付すことと、前処理された鉱石を酸浸出工程に付すことで
浸出スラリーを生産し、次に浸出スラリーを固液分離工程に付して、当該分離工程により浸出残渣および貴浸出溶液(Pregnant Leach Solution)を生産することと、貴浸出液を一連の処理工程に供することで1つ以上の不純物金属を取り除くことと、リチウム含有塩生成物としてリチウムを回収することと、を有する。
【0013】
リチウム含有塩はLi
2CO
3であることが望ましい。付加的な生成物は、カリウム含有塩、限定されないが好ましくはK
2SO
4、ルビジウム含有塩、限定されないが好ましくは、Rb
2SO
4、セシウム含有塩、限定されないが好ましくは、Cs
2SO
4、フッ化塩、塩またはアルミナとしてのアルミニウム、およびシリカ含有物、好ましくは、Na
2SiO
3を含むことが望ましい。
【0014】
フッ化塩は、フッ化アルミニウムおよびアルミナの混合物を含むことが望ましい。このような混合物は、現在用いられているフッ化アルミニウムよりも、アルミニウム生産に使用される電解槽内の供給成分としての利用に適していると考えられる。電解槽に加えられる混合物は実質的に不純物を含まない必要があるため、従来使用されるフッ化アルミニウムは、一般的に、水酸化アルミニウムをフッ化水素と反応させることで調製される。
【0015】
雲母含量が豊富な鉱物は、レピドライトおよび/またはチンワルダイトを含むことが望ましい。
【0016】
前処理工程は、濃縮工程および粉砕工程の一方または両方を含むことが望ましい。粉砕工程は、微細粉砕工程であることが望ましい。濃縮工程は、浮遊選鉱(flotation)工程としてもよい。
【0017】
粉砕工程による生成物の粒径について、P
80が150ミクロン未満(<P
80 150ミクロン)であることがさらに望ましい。
【0018】
粉砕工程(ii)による生成物の粒径について、P
80が75ミクロン未満(<P
80 75ミクロン)であることがよりさらに望ましい。
【0019】
浸出工程中に濃硫酸を添加することが望ましい。
【0020】
酸浸出工程では、含有されるリチウム、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、フッ素、およびセシウムの少なくとも一部が溶液へと抽出され、それによって貴浸出溶液(「PLS」)を形成することがさらに望ましい。
【0021】
上記浸出残渣はシリカを含むことが望ましく、主に非晶質シリカを含むことが望ましい。さらには、シリカの濃度が60〜90%の範囲であることが望ましい。
【0022】
浸出工程は大気条件下で実行されることが望ましい。
【0023】
浸出工程は沸点に近い温度、例としては120℃で、あるいはその前後で実行されることが望ましい。
【0024】
浸出工程は、約50g/LのH
2SO
4を上回る遊離酸濃度となるよう、H
2SO
4が過剰な状態で実行することが望ましい。
【0025】
総硫酸塩濃度は、浸出温度において溶液の飽和限界付近であることがより望ましい。例としては、>90℃で6.0MのSなどが挙げられる。
【0026】
浸出工程では、約12時間の保持時間で、約90%を上回る金属抽出が達成されることがよりさらに望ましい。
【0027】
選択的結晶化を利用することで、蒸発による冷却、または蒸発によらない冷却で、貴浸出溶液から1価のミョウバン(alum)塩の混合物を沈殿させることが望ましい。沈殿する塩類が、KAl(SO
4)
2.12H
2O、RbAl(SO
4)
2.12H
2O、およびCsAl(SO
4)
2.12H
2Oを含むことが望ましい。K
2SO
4、Rb
2SO
4、および/またはCs
2SO
4を添加することで、Alの回収量を増加させてもよい。
【0028】
1価のミョウバン塩類は、ミョウバンの結晶化の後に、濾過またはデカンテーションによって溶液から分離されることが望ましい。形成された濾液には、原鉱石または精鉱に含まれていたリチウムの大部分が含まれることが望ましく、約95%以上が含まれることが望ましい。
【0029】
リチウムを含有する濾液に存在する不純物は、低pH不純物除去工程にて、塩基を添加することで沈殿させて除去することがなお望ましい。塩基は、望ましくは、石灰岩、石灰、または1価の炭酸塩または水酸化物塩の1つ以上である。沈殿する不純物が、硫酸、アルミニウム、クロム、および鉄を含むことが望ましい。
【0030】
低pH不純物除去工程で生じた固体は、同伴リチウムを回収するために、水で洗浄されることが望ましい。
【0031】
低pH不純物除去工程で生じた濾液は、高pH不純物除去工程へと送られ、塩基の添加によって、不純物の卑金属が沈殿させられる。塩基は、石灰および/または1価の水酸化物塩が望ましい。不純物の卑金属としては、マンガンおよびマグネシウムを含むことが望ましい。
【0032】
カルシウムは、1価の炭酸塩を添加することで、高pH不純物除去工程の濾過生成物から沈殿させることが望ましい。炭酸塩は、Li
2CO
3、Na
2CO
3またはK
2CO
3のいずれかであることが望ましい。
【0033】
炭酸リチウムは、1価の炭酸塩をカルシウム沈殿の濾過生成物に加えることで沈殿させることがより望ましい。炭酸塩としては、Na
2CO
3またはK
2CO
3のいずれかが望ましい。炭酸リチウムの分離は、濾過またはデカンテーションによって行うことが望ましい。
【0034】
1価のミョウバン塩の混合物は、水に再溶解させ、選択的沈殿に付してAl(OH)
3を沈殿させることが望ましい。選択的沈殿は、石灰岩、石灰、1価の炭酸塩および水酸化物塩のいずれか1つ以上を加えることによりもたらされてもよい。
【0035】
選択的沈澱により沈殿したAl(OH)
3は、濾過またはデカンテーションによって分離し、その結果生じる濾液に1価のカチオン塩が含まれることが望ましい。1価のカチオン塩は、選択的結晶化によって分離することが望ましい。
【0036】
任意のルビジウムおよびセシウムの硫酸塩について、さらに処理することでその他の塩類を生成することがより望ましい。本発明の1形態では、ルビジウムおよびセシウムの硫酸塩をさらに処理することで、ギ酸塩が生成される。
【0037】
本発明の1形態は、リチウム含有雲母を豊富に含む鉱物からリチウムを回収する方法として、
(i)第1の前処理工程であるフロス浮選(froth flotation)でリチウム含有鉱物であるレピドライトを脈石鉱物から分離して、精鉱を生成することと、
(ii)第2の前処理工程で、精鉱を微細粉砕することと、
(iii)大気条件下にて硫酸溶液中で浸出して
浸出スラリーを生成し、次に浸出スラリーを固液分離工程に付して、当該分離工程により浸出残渣、および可溶性のリチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびアルミニウムの硫酸塩、ならびに抽出されたフッ素を含有する貴浸出溶液を生産することと、
(iv)蒸発による冷却、または蒸発によらない冷却で、1価のミョウバン塩の混合物を選択的に結晶化することと、
(v)濾過またはデカンテーションによって、1価のミョウバン塩を液体から分離し、その結果生じる濾液に原鉱石または精鉱に含まれるリチウムの大部分を含有させることと、
(vi)H
2SO
4、アルミニウム、クロム、および鉄を含む、リチウム含有濾液に残留する不純物を、石灰石、石灰、または1価の炭酸塩もしくは水酸化物塩を含む適切な塩基を用いることで沈殿させて取り除くことと、
(vii)濾過またはデカンテーションによって、液体から不純物金属および硫酸塩を分離し、その結果生じる濾液に貴浸出溶液に含まれるリチウムの大部分を含有させ、かつ、固体を水で洗浄することで同伴リチウムを回収することと、
(viii)石灰または1価の水酸化物塩などの塩基を用いて、マンガンおよび/またはマグネシウムを含む卑金属不純物を沈殿させることと、
(ix)濾過またはデカンテーションによって、液体から不純物金属および硫酸塩を分離し、その結果生じる濾液に貴浸出溶液に含まれるリチウムの大部分を含有させ、かつ、固体を水で洗浄することで同伴リチウムを回収することと、
(x)1価の炭酸塩を添加することでカルシウムイオンを沈殿させることと、
(xi)濾過またはデカンテーションによって、液体からカルシウム塩の沈殿物を分離し、その結果生じる濾液に貴浸出溶液に含まれるリチウムの大部分を含有させることと、
(xii)1価の炭酸塩を添加することで、炭酸リチウムを沈殿させ、濾過またはデカンテーションによって、液体からリチウム塩を分離することと、
(xiii)塩析および/または蒸発によって、濾液から1価の硫酸塩を結晶化することと、
(xiv)工程(iv)の1価のミョウバン塩の混合物を水に再溶解し、石灰岩、石灰、または1価の炭酸塩もしくは水酸化物塩を用いて同混合物を選択的沈澱に供して、Al(OH)
3を沈殿させることと、
(xv)濾過またはデカンテーションによって、液体から沈殿したAl(OH)
3を分離し、その結果生じる濾液に1価のカチオン塩を含有させることと、
(xvi)選択的結晶化によって1価のカチオン塩を分離することと、
を含む。
【0038】
ルビジウムおよびセシウム硫酸塩にさらに処理を施すことで、その他の塩類を生成させることが望ましい。本発明の1形態では、ルビジウムおよびセシウム硫酸塩はさらに処理され、ギ酸塩が生成する。
【0039】
(vii)、(ix)および(xi)の各工程で詳述された、貴浸出溶液に含まれるリチウムの大部分は、約95%を超えるものとなることが望ましい。
【0040】
(ii)の粉砕工程では、レピドライト鉱石または粒径について150ミクロン未満(<P
80 150ミクロン)の精鉱が生成されることが望ましい。
【0041】
さらには、(ii)の粉砕工程では、レピドライト鉱石または粒径について75ミクロン未満(<P
80 75ミクロン)の精鉱が生成されることがより望ましい。
【0042】
浸出残渣には、高濃度のシリカが含まれることが望ましい。このシリカは商業的に有用な生成物であると考えられる。
【0043】
(iii)の浸出工程は、大気条件下にて沸点に近い温度で実施し、遊離酸濃度が>50g/LのH
2SO
4となるように、H
2SO
4が過剰な状態で行うことが望ましい。
【0044】
さらには、硫酸塩の総濃度は、浸出温度での溶液の飽和限界に近いものであることがより望ましい。例として、>90℃で6.0MのSなどが挙げられる。これらの条件下では、12時間以内に>90%の金属抽出が達成される。
【0045】
1価のミョウバン塩が結晶化される(ix)の選択的結晶化工程は、浸出温度未満の温度で実施し、蒸発による液体の濃縮および/または1価の硫酸塩(望ましくはCs
2SO
4)の添加によって、収量を増加させることが望ましい。
【0046】
さらに望ましくは、(ix)の結晶化工程は、浸出溶液を強制冷却することでも達成可能である。浸出段階から温度が低下することで、ミョウバンが結晶化を開始する。結晶は濾過によって回収し、水または1価のミョウバン塩を含む溶液によって洗浄する。
【0047】
(vii)の低pH不純物除去段階は、石灰岩を用いることで7未満のpHにて実施することが望ましい。石灰岩は安価な塩基であり、硫酸塩を石こうとして除去するため推奨される。
【0048】
(viii)の高pH不純物除去段階は、石灰を用いることで9より高いpHにて実施することが望ましい。石灰は安価な塩基であり、硫酸塩を石こうとして除去するため推奨される。
【0049】
(x)のカルシウム沈殿工程は、Li
2CO
3生成物を添加することで実行し、沈殿したCaCO
3は(vi)の段階へと再利用されることが望ましい。沈殿を洗浄する必要はない。
【0050】
(xii)のLi
2CO
3沈殿段階は温度を上昇させて実施し、蒸発によって溶液量を減少させることが望ましい。これによって、回収されるリチウム量が増加する。例えば、90℃より高い温度であってもよい。
【0051】
本発明の1形態では、フッ化物の回収が可能となる。本形態では、以下のさらなる工程が利用される:
a)浸出溶液から1価のミョウバン塩を分離することで生じる濾液から、フッ化アルミニウムおよび硫酸アルミニウムの複塩であるカーデマイト(khademite)を選択的に結晶化させること;および
b)濾過またはデカンテーションによって、液体からカーデマイトを分離し、その結果生じる濾液に貴浸出溶液に含まれるリチウムの大部分を含有させること。
【0052】
カーデマイトを水に再溶解し、Al(OH)
3を用いて水酸化アルミニウムフッ化物を沈殿させることが望ましい。このAl(OH)
3は、本発明の処理における他の部分で生成されたものを用いるのが望ましい。
【0053】
水酸化アルミニウムフッ化物は、濾過またはデカンテーションによって液体から分離し、その結果生じる濾液に硫酸アルミニウムを含有させるのが望ましい。この硫酸アルミニウムは、前記工程(i)に供するのが望ましい。硫酸アルミニウムを添加することで、カーデマイトの回収量の増加が可能になることが理解される。
【0054】
さらには、前記工程(ii)におけるリチウムの大部分は、約95%を超えるものであることがより望ましい。
【0055】
水酸化アルミニウムフッ化物は、350℃から600℃の温度範囲で焼成し、フッ化アルミニウムと酸化アルミニウムの混合物を生成するのが望ましい。
【0056】
本発明の1形態では、カーデマイトを700℃より高い温度で焙焼し、AlF
3およびAl
2O
3の混合物を生成する。このカーデマイトは、必要ならばさらに精製されてもよい。
【0057】
カーデマイトは、結晶化率を上げるために、前記工程(i)のカーデマイトを種として添加した液体を連続攪拌することで初期回収することが望ましい。
【0058】
本発明のさらなる実施形態においては、ケイ酸塩生成物は、以下の
さらなる方法の工程を利用して、
上記酸浸出残渣から回収されてもよい:
(i)水酸化ナトリウム溶液でシリカ
含有浸出残渣を浸出させて、浸出スラリーを生成すること;および
(
ii)浸出スラリーを濾過および洗浄することで、非晶質シリカを枯渇させた浸出残渣およびケイ酸ナトリウムを含有する浸出溶液を生成すること。
【0059】
浸出物中の水酸化ナトリウムの濃度および/または固体の割合を変更することで、異なる等級またはSiO
2/Na
2O比の生成が可能となることが望ましい。浸出は、約15分以内で進行させることが望ましい。より高温にするほど、より高い抽出率が達成できる。非晶質シリカの抽出率としては、70〜95%の範囲が望ましい。さらには、SiO
2/Na
2Oの比率は、最大3.5:1であることがより望ましい。