(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘導結合による通信用の第1の送受信コイル、前記第1の送受信コイルの両端から引き出された第1の引き出し線、および前記第1の引き出し線に接続して前記第1の送受信コイルとの間で信号を入出力する第1の送受信回路を各々有して積層された複数のメモリチップと、
誘導結合によって前記第1の送受信コイルと結合する第2の送受信コイル、前記第2の送受信コイルの両端から引き出された第2の引き出し線、および前記第2の引き出し線に接続して前記第2の送受信コイルとの間で信号を入出力する第2の送受信回路を前記複数のメモリチップ毎に有して、前記複数のメモリチップの積層方向の一端に配置されたインターポーザとを具備し、
前記複数のメモリチップは、平面視で、複数の前記第1の送受信回路が互いに重なる位置に配置され、これらの第1の送受信回路の周囲に前記第1の送受信コイルが互いに重ならない位置に配置された構造を有する半導体装置。
前記複数のメモリチップは、複数のグループ単位に分割され、各グループ単位を構成するメモリチップの前記第1の送受信コイル、前記第1の引き出し線、および前記第1の送受信回路は、平面視でそれぞれ互いに重なる位置に配置される請求項1に記載の半導体装置。
前記メモリチップは、それぞれ、互いに異なる識別番号を出力する演算回路と、前記識別番号をメモリチップ選択用のアドレスと比較して一致するか否かを検知する比較回路とを有し、前記アドレスの信号線は全ての前記メモリチップ間で共通する請求項7に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態による半導体装置の一例を示す一部断面図である。
図1の半導体装置1では、基板5の上にはんだボール6を介してプロセッサ2が実装されている。また、基板5の上には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のメモリチップ11〜14が基板5に対して垂直方向に積層された積層構造(積層DRAM4)が設けられている。積層DRAM4におけるメモリチップの積層方向の一端、すなわち、メモリチップ11の上には、インターポーザ3が配置されている。インターポーザ3を設けることで、プロセッサ2で発した熱がDRAMの動作に悪影響を与えるのを防止できる。尚、半導体装置1は、例えば、プロセッサ2の周囲に、インターポーザ3と積層DRAM4とからなる構造体が複数配置された構造とすることができる。積層は、フュージョンボンディング(Fusion Bonding)によって実現されている。積層は、接着剤を使用した手法や、表面活性化常温接合等の他の手法を利用してもよい。
【0021】
プロセッサ2と、積層DRAM4の各メモリチップ11〜14とは、インターポーザ3を介して電気的に接続される。具体的には、インターポーザ3は、上方に配置されたプロセッサ2のチップから送られたデータを受信し、下方に配置された積層DRAM4のうちの所定のメモリチップへデータを送信する。これにより、データの書き込みが行われる。一方、データの読み込みは、インターポーザ3が、下方に配置された積層DRAM4のうちの所定のメモリチップから送られたデータを受信し、上方に配置されたプロセッサ2のチップへデータを送信することによって行われる。
【0022】
尚、半導体装置1では、例えば、プロセッサ2から図示されない他の1以上の素子へデータが送信され、それらの素子のいずれかからインターポーザ3へデータが送信されてもよい。また、メモリチップ11〜14から受信したデータをインターポーザ3は、プロセッサ2ではなく、図示されない他の素子へ送信してもよい。
【0023】
図2は、
図1におけるインターポーザ3と積層DRAM4の構造を模式的に示す斜視図である。積層DRAM4は、4枚のDRAMのメモリチップ11〜14が積層されてなる。各メモリチップ11〜14は、それぞれ、送受信コイルC11〜C14を有する。また、インターポーザ3は、メモリチップ11〜14の送受信コイルC11〜C14に対応する送受信コイルC1〜C4を有する。ここで、送受信コイルC11〜C14は、本発明の第1の送受信コイルの好適な一例である。また、送受信コイルC1〜C4は、本発明の第2の送受信コイルの好適な一例である。但し、本実施の形態において、メモリチップの積層数は、
図1および
図2の例に限られるものではない。
【0024】
尚、本明細書では、送信コイルと受信コイルを併せて送受信コイルと称する。送受信コイルは、例えば、送信コイルの中心と受信コイルの中心とが同軸に位置するよう配置された構造とすることができる。送受信コイルの巻き数は、複数の配線層と接続ビアを用いることによって任意の値とすることができる。尚、送受信コイルの構造は上記の例に限られるものではなく、例えば、一層の配線で一巻きの送信コイルと受信コイルを形成してこれらを連結し、複数の配線層と接続ビアによって巻き数を増やした構造としてもよい。実際の半導体装置では、DRAMのメモリチップ1つあたりに、例えば1000個程度の送受信コイルが配置される。各送受信コイル間の距離は、例えば、送受信コイルのサイズの2分の1程度とすることができる。
【0025】
図3を用いて、インターポーザ3の送受信コイルC1と、メモリチップ11の送受信コイルC11の間での誘導結合について説明する。尚、本実施の形態では、送受信コイル(C1〜C4,C11〜C14)の平面形状を円形としているが、これに限られるものではなく、多角形または楕円形などであってもよい。
【0026】
図3の例において、送受信コイルC1は、送信コイルC1
Tの外側に受信コイルC1
Rが設けられ、さらに、送信コイルC1
Tと受信コイルC1
Rとが同心に配置された二重コイルとなっている。また、送受信コイルC11も同様であり、送信コイルC11
Tの外側に受信コイルC11
Rが設けられた構造となっている。そして、送受信コイルC1と送受信コイルC11とは、
図3において点線で示す中心軸が互いに一致するように配置されている。
【0027】
送受信コイルC1の両端からは、引き出し線L1が引き出されており、この引き出し線L1には、送受信回路TR1が接続している。送受信回路TR1は、以下のようにして、送受信コイルC1との間で信号を入出力する。尚、引き出し線L1は、本発明の第2の引き出し線の好適な一例である。また、送受信回路TR1は、本発明の第2の送受信回路の好適な一例である。
【0028】
送受信回路TR1は、メモリチップ11に送信するデータに応じて重畳した電流を送信コイルC1
Tに出力する。送信コイルC1
Tに送信電流が流れると、送信コイルC1
Tに鎖交する磁束が生じる。生じた磁束はメモリチップ11における送受信コイルC11の受信コイルC11
Rにも鎖交するため、受信コイルC11
Rに誘導起電力が生じて受信電流が流れる。
【0029】
送受信コイルC11の両端からは、引き出し線L11が引き出されており、この引き出し線L11には、送受信回路TR11が接続している。送受信回路TR11は、送受信コイルC11との間で信号を入出力する。ここでは、受信コイルC11
Rに受信電流が流れると、送受信回路TR11は、生じた誘導起電力に応じたデータを再生する。尚、引き出し線L11は、本発明の第1の引き出し線の好適な一例である。また、送受信回路TR11は、本発明の第1の送受信回路の好適な一例である。
【0030】
以上のようにして、プロセッサ2から出力されたデータは、インターポーザ3を介して積層DRAM4のメモリチップ11に伝送される。
【0031】
一方、メモリチップ11からデータを読み出す場合には、メモリチップ11における送受信回路TR11の送信器が、インターポーザ3に送信するデータに応じて重畳した電流を送信コイルC11
Tに出力する。送信コイルC11
Tに送信電流が流れると、送信コイルC11
Tに鎖交する磁束が生じる。生じた磁束はインターポーザ3における送受信コイルC1の受信コイルC1
Rにも鎖交するため、受信コイルC1
Rに誘導起電力が生じて受信電流が流れる。受信コイルC1
Rに受信電流が流れると、受信コイルC1
Rに電気的に接続する送受信回路TR1は、生じた誘導起電力に応じたデータを再生する。以上のようにして、積層DRAM4のメモリチップ11から出力されたデータは、インターポーザ3に伝送される。
【0032】
インターポーザの他の送受信コイル(C2〜C4)と、他のメモリチップの送受信コイル(C12〜C14)についても、コイルの両端から引き出された引き出し線と、この引き出し線に接続して送受信コイルとの間で信号を入出力する送受信回路とが、それぞれに設けられている。ここで、送受信コイル(C2〜C4)に設けられた引き出し線は、本発明の第2の引き出し線の好適な一例であり、送受信コイル(C12〜C14)に設けられた引き出し線は、本発明の第1の引き出し線の好適な一例である。また、送受信コイル(C2〜C4)と電気的に接続する送受信回路は、本発明の第2の送受信回路の好適な一例であり、送受信コイル(C12〜C14)と電気的に接続する送受信回路は、本発明の第1の送受信回路の好適な一例である。
【0033】
半導体装置1では、送受信コイルC2と送受信コイルC12の間、送受信コイルC3と送受信コイルC13の間、送受信コイルC4と送受信コイルC14の間で、それぞれ上記と同様にしてデータの送受信が行われる。
図2のM1〜M4は、各コイル間で生じる磁束である。このとき、インターポーザ3の送受信コイルC1〜C4の各中心軸は、それぞれ対応するメモリチップの送受信コイルC11〜C14の中心軸と一致していることが好ましい。これにより、送受信が行われるコイル間で信号が減衰して通信ができなくなるのを抑制できる。また、通信を行うためにより大きな電力が必要となる事態を回避できる。
【0034】
本実施の形態では、積層DRAMを構成する複数のメモリチップにおいて、各メモリチップの第1の送受信回路は、平面視で互いに重なる位置に配置される。一方、各メモリチップの第1の送受信コイルは、平面視で、これらの第1の送受信回路の周囲の互いに重ならない位置に配置される。このとき、インターポーザの第2の送受信コイルの中心軸は、上述の通り、それぞれ対応する第1の送受信コイルの中心軸に一致していることが好ましい。また、第1の送受信コイルは、平面視で対象に配置されることが好ましく、第1の引き出し線の長さは、メモリチップ間で等しいことが好ましい。
【0035】
図4(A)〜
図4(D)は、メモリチップ11〜14の模式的な一部平面図である。これらの図には、メモリチップ11〜14に設けられた送受信コイルC11〜C14と、これらの送受信コイルの両端から引き出された引き出し線L11〜L14と、これらの引き出し線に接続して送受信コイルC11〜C14との間で信号を入出力する送受信回路TR11〜TR14とが示されている。
【0036】
図4(A)に示すメモリチップ11では、送受信コイルC11と送受信回路TR11は、Y方向に沿って配列している。
図4(C)に示すメモリチップ13も同様であるが、送受信コイルC13と送受信回路TR13の位置関係は
図4(A)と180度異なっている。また、
図4(B)に示すメモリチップ12では、送受信コイルC12と送受信回路TR12は、X方向に沿って配列している。
図4(D)に示すメモリチップ14も同様であるが、送受信コイルC14と送受信回路TR14の位置関係は
図4(B)と180度異なっている。このようなメモリチップ11〜14を、送受信回路TR11〜TR14が平面視で重なるようにして積層した構造が
図2に示すものである。送受信回路TR11〜TR14は、メモリチップ11〜14で共通する位置、すなわち、
図2の点線CLで示す位置に配置される。半導体装置1のフロアプランをこのようにすることにより、効率よく多数の送受信回路、ひいては送受信コイルを各メモリチップ11〜14に設けることができる。したがって、半導体装置を小型化・高集積化することが可能である。
【0037】
また、
図2の構造によれば、積層DRAM4を平面視したとき、重なり合った送受信回路TR11〜TR14の周囲に送受信コイルC11〜C14が互いに重ならない位置で配置される。このとき、送受信コイルC11〜C14は、
図2に示すように、平面視で対称に配置されることが好ましい。送受信コイルC11〜C14を互いに重ならない位置で配置することにより、互いのコイル間の距離が離れるため、各送受信コイルにおけるクロストークの受信電圧を減少させて、インターポーザ3の対応する送受信コイルからの受信信号電圧に影響しないようにすることが可能となる。さらに、送受信コイルC11〜C14を平面視で対称となるように配置すれば、これらに限られない多数の送受信コイルを各メモリチップ11〜14に一層効率よく配置することが可能である。尚、本明細書において、対称とは、線対称若しくは点対称、または線対称および点対称の両方であることを意味する。例えば、
図2において、平面視での送受信コイルC11〜C14の配置は、線対称の配置であるとともに点対称の配置でもある。
【0038】
そしてまた、
図4(A)〜
図4(D)に示すように、引き出し線L11〜L14の長さは、互いに等しいことが好ましい。引き出し線L11〜L14の長さが異なると、これらの抵抗も異なるため、送受信コイルC11〜C14と送受信回路TR11〜TR14の間で入出力される信号の減衰の程度に差が生じる。引き出し線L11〜L14の長さを同じとすることにより、送受信コイルと送受信回路はどの組み合わせであっても、同じレベルの信号を入出力することが可能となる。
【0039】
図5は、インターポーザ3の模式的な一部平面図である。この図には、送受信コイルC1〜C4と、これらの送受信コイルの両端から引き出された引き出し線L1〜L4と、これらの引き出し線に接続して送受信コイルC1〜C4との間で信号を入出力する送受信回路TR1〜TR4とが示されている。ここで、送受信コイルC1、引き出し線L1、および送受信回路TR1を1組とし、同様に、他の送受信コイルC2〜C4、引き出し線L2〜L4、および送受信回路TR2〜TR4についても組分けすると、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路からなる組が4組できる。これらを適当な大きさの円10の周上に、送受信回路TR1〜TR4を円10の内側に、送受信コイルC1〜C4を円10の外側に向けて対称に配置すると、
図5に示すようになる。このとき、送受信コイルC1〜C4の中心軸は、既に述べたように、それぞれ対応するメモリチップの送受信コイルC11〜C14の中心軸に一致することが好ましい。
【0040】
また、インターポーザ3の引き出し線L1〜L4は互いに等しい長さを有することが好ましい。引き出し線L1〜L4の長さが異なると、これらの抵抗も異なるため、送受信コイルC1〜C4と送受信回路TR1〜TR4の間で入出力される信号の減衰の程度に差が生じる。引き出し線L1〜L4の長さを同じとすることにより、いずれの送受信コイルと送受信回路の組み合わせであっても、同じレベルの信号を入出力することが可能となる。
【0041】
尚、
図2および
図5において、インターポーザ3の送受信回路TR1〜TR4は互いに重ならない位置に配置されているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、
図5の円10の中心に送受信回路を1つ設け、この送受信回路が、送受信コイルC1〜C4のそれぞれに対応する4つの回路部分と、これらの送受信コイルC1〜C4に共通して使用される回路部分とを有するようにしてもよい。
【0042】
実施の形態2.
図6は、本実施の形態による半導体装置の一例を示す一部断面図である。
図6の半導体装置101では、基板105の上に、はんだボール106を介してプロセッサ102が実装されており、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)の5枚のメモリチップ111,11〜14が基板105に対して垂直方向に積層された積層DRAM104が設けられている。
【0043】
図7は、積層DRAM104の断面模式図である。この図において、
図2と同じ符号を示したものは同様の構造であることを意味する。尚、積層DRAM104は、メモリチップ111の下方に4枚のメモリチップ11〜14が積層されてなるが、メモリチップ111の下方に積層されるチップ数はこれに限られるものではない。
【0044】
積層DRAM104の最上層のメモリチップ111は、メモリチップとしての本来的な機能と、インターポーザとしての機能とを併せ持つ。この構造によれば、インターポーザを積層DRAMと別個のものとして設ける必要がないので、基板105の上に設けられる積層体全体の厚みを小さくすることができる。
【0045】
メモリチップ111がインターポーザとして機能するために、メモリチップ111は、各DRAMのメモリチップ11〜14の送受信コイルC11〜C14に対応する送受信コイルC1〜C4を有する。送受信コイルC11〜C14,C1〜C4は、実施の形態1で述べた送受信コイルC11〜C14,C1〜C4と同様であり、それぞれ、本発明の第1の送受信コイルと第2の送受信コイルに対応する。
【0046】
メモリチップ111の送受信コイル(C1〜C4)と、他のメモリチップ11〜14の送受信コイル(C11〜C14)には、コイルの両端から引き出された引き出し線(L1〜L4,L11〜L14)がそれぞれ設けられており、さらに、引き出し線には、対応する送受信コイルとの間で信号を入出力する送受信回路(TR1〜TR4、TR11〜TR14)がそれぞれ接続している。ここで、引き出し線L1〜L4は、本発明の第2の引き出し線の好適な一例であり、引き出し線L11〜L14は、本発明の第1の引き出し線の好適な一例である。また、送受信回路TR1〜TR4は、本発明の第2の送受信回路の好適な一例であり、送受信回路TR11〜TR14は、本発明の第1の送受信回路の好適な一例である。
【0047】
図7に示すように、送受信コイルC1と送受信コイルC11の間で、矢印M1で示すような磁束により電磁的な結合が生じ、それによってデータの送受信が行われる。また、送受信コイルC2と送受信コイルC12の間、送受信コイルC3と送受信コイルC13の間、送受信コイルC4と送受信コイルC14の間でも、それぞれ、矢印M2〜M4で示すような磁束により電磁的な結合が生じて、データの送受信が行われる。このとき、メモリチップ111の送受信コイルC1〜C4の各中心軸は、それぞれ対応するメモリチップの送受信コイルC11〜C14の中心軸と一致していることが好ましい。これにより、送受信が行われるコイル間で信号が減衰して通信ができなくなるのを抑制できる。また、通信を行うためにより大きな電力が必要となる事態を回避できる。
【0048】
メモリチップ11〜14の送受信回路TR11〜TR14は、平面視で互いに重なる位置に配置される。すなわち、送受信回路TR11〜TR14は、メモリチップ11〜14で共通する位置、具体的には、
図7の点線CLで示す位置に配置される。一方、メモリチップ11〜14の送受信コイルC11〜C14は、平面視で、これらの送受信回路TR11〜TR14の周囲の互いに重ならない位置に配置される。このとき、メモリチップ111の送受信コイルC1〜C4の中心軸は、上述の通り、それぞれ対応するメモリチップ11〜14の送受信コイルC11〜C14の中心軸に一致していることが好ましい。また、送受信コイルC11〜C14は、平面視で対象に配置されることが好ましく、引き出し線の長さL11〜L14は、メモリチップ11〜14間で等しいことが好ましい。
【0049】
半導体装置101のフロアプランを上記のようにすることにより、効率よく多数の送受信回路、ひいては送受信コイルを各メモリチップ11〜14に設けることができる。したがって、半導体装置を小型化・高集積化することが可能である。また、送受信コイルC11〜C14を互いに重ならない位置で配置することにより、互いのコイル間の距離が離れるため、各送受信コイルにおけるクロストークの受信電圧を減少させて、メモリチップ111の対応する送受信コイルからの受信信号電圧に影響しないようにすることが可能となる。さらに、送受信コイルC11〜C14を平面視で対称となるように配置すれば、これらに限られない多数の送受信コイルをメモリチップ11〜14に一層効率よく配置することが可能である。そしてまた、引き出し線L11〜L14の長さを互いに等しくすることにより、送受信コイルC11と送受信回路TR11の間、送受信コイルC12と送受信回路TR12の間、送受信コイルC13と送受信回路TR13の間、または送受信コイルC14と送受信回路TR14の間で入出力される各信号のレベルを同じとすることが可能となる。
【0050】
インターポーザとして機能するメモリチップ111のフロアプランは、実施の形態1で
図5を用いて述べたインターポーザ3のフロアプランと同様である。すなわち、メモリチップ111の送受信コイルC1、引き出し線L1、および送受信回路TR1を1組とし、同様に、他の送受信コイルC2〜C4、引き出し線L1〜L4、および送受信回路TR2〜TR4についても組分けすると、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路からなる組が4組できる。これらを適当な大きさの円の周上に、送受信回路TR2〜TR4を円の内側に、送受信コイルC1〜C4を円の外側に向けて対称に配置すると、
図7に示すようになる。このとき、送受信コイルC1〜C4の中心軸は、既に述べたように、それぞれ対応するメモリチップの送受信コイルC11〜C14の中心軸に一致することが好ましい。
【0051】
また、メモリチップ111の引き出し線L1〜L4は、互いに等しい長さを有することが好ましい。引き出し線L1〜L4の長さが異なると、これらの抵抗も異なるため、送受信コイルC1〜C4と送受信回路TR1〜TR4の間で入出力される信号の減衰の程度に差が生じる。引き出し線L1〜L4の長さを同じとすることにより、送受信コイルと送受信回路はどの組み合わせであっても、同じレベルの信号を入出力することが可能となる。
【0052】
尚、
図7において、メモリチップ111の送受信回路TR1〜TR4は互いに重ならない位置に配置されているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、上記円の中心に送受信回路を1つ設けてもよい。この場合、送受信回路は、例えば、送受信コイルC1〜C4のそれぞれに対応する4つの回路部分と、これらの送受信コイルC1〜C4に共通して使用される回路部分とを有することができる。
【0053】
実施の形態3.
本実施の形態の半導体装置は、実施の形態1で述べた
図1と同様に、基板の上にはんだボールを介してプロセッサが実装された構造とすることができる。この基板の上には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のメモリチップが基板に対して垂直方向に積層された積層構造(積層DRAM)が設けられる。また、積層DRAMにおけるメモリチップの積層方向の一端には、インターポーザが配置される。そして、プロセッサとDRAMとは、インターポーザを介して電気的に接続される。
【0054】
図8は、インターポーザ20と積層DRAM204の構造を模式的に示す斜視図である。この図において、積層DRAM204は、8枚のDRAMのメモリチップ21〜28によって構成されているが、メモリチップの積層数はこれに限られるものではない。
【0055】
図8において、インターポーザ20には、送受信コイルC21〜C24と、これらの送受信コイルの両端から引き出された引き出し線L21〜L24と、これらの引き出し線に接続して送受信コイルC21〜C24との間で信号を入出力する送受信回路TR21〜TR24とが配置されている。これらは、実施の形態1で述べたインターポーザ3の送受信コイルC1〜C4、引き出し線L1〜L4、送受信回路TR1〜TR4と同様である。尚、送受信コイルC21〜C24は、本発明の第2の送受信コイルの好適な一例である。また、引き出し線L21〜L24は、本発明の第2の引き出し線の好適な一例である。さらに、送受信回路TR21〜TR24は、本発明の第2の送受信回路の好適な一例である。
【0056】
図8では、メモリチップ21〜28に配置された送受信コイル、引き出し線、および送受信回路はいずれも省略されているが、これらは、実施の形態1で
図2を用いて説明したメモリチップ11〜14と同様である。すなわち、メモリチップ21,22には、メモリチップ11と同様の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路が配置されている。また、メモリチップ23,24には、メモリチップ12と同様の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路が配置されている。さらに、メモリチップ25,26には、メモリチップ13と同様の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路が配置されている。そしてまた、メモリチップ27,28には、メモリチップ14と同様の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路が配置されている。これらのメモリチップ21〜28と、インターポーザ20との配置関係も
図2と同様である。
【0057】
このように、本実施の形態は、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路の配置が同一であるメモリチップを複数有する点で実施の形態1と相違する。具体的には、積層DRAM204を構成するメモリチップ21〜28は、4つ(複数)のグループ単位に分割され、各グループ単位G1〜G4を構成するメモリチップの送受信コイル、引き出し線、および送受信回路は、平面視でそれぞれ互いに重なる位置に配置される。すなわち、
図8でグループG1を構成するメモリチップ22の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路の配置は、同じグループG1のメモリチップ21と同じである。同様に、グループG2を構成するメモリチップ23と24、グループG3を構成するメモリチップ25と26、グループG4を構成するメモリチップ27と28も、それぞれ、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路の配置が同一である。このような構成によれば、メモリチップ毎に異なる配置の送受信コイル、引き出し線、および送受信回路を設ける必要がない。したがって、DRAMのメモリチップを4枚積層した製品と8枚積層した製品との間での切り替えを容易にし、半導体装置の製造プロセスを簡略化することが可能となる。
【0058】
図9(A)〜
図9(D)は、メモリチップ21〜28の模式的な一部平面図である。これらの図には、メモリチップ21〜28に設けられた送受信コイルC221〜C228と、これらの送受信コイルの両端から引き出された引き出し線L221〜L228と、これらの引き出し線に接続して送受信コイルC221〜C228との間で信号を入出力する送受信回路TR221〜TR228とが示されている。ここで、送受信コイルC221〜C228は、本発明の第1の送受信コイルの好適な一例である。また、引き出し線L221〜L228は、本発明の第1の引き出し線の好適な一例である。さらに、送受信回路TR221〜TR228は、本発明の第1の送受信回路の好適な一例である。
【0059】
図9(A)に示すメモリチップ21(22)では、送受信コイルC221(C222)と送受信回路TR221(TR222)は、Y方向に沿って配列している。
図9(C)に示すメモリチップ25(26)も同様であるが、送受信コイルC225(C226)と送受信回路TR225(TR226)の位置関係は、
図9(A)と180度異なっている。
【0060】
また、
図9(B)に示すメモリチップ23(24)では、送受信コイルC223(C224)と送受信回路TR223(TR224)は、X方向に沿って配列している。
図9(D)に示すメモリチップ27(28)も同様であるが、送受信コイルC227(C228)と送受信回路TR227(TR228)の位置関係は、
図9(B)と180度異なっている。
【0061】
積層DRAM204は、このようなメモリチップ21〜28を、送受信回路TR221〜TR228が平面視で重なるように積層して構成される。すなわち、送受信回路TR221〜TR228が、メモリチップ21〜28で共通する位置に配置される。半導体装置のフロアプランをこのようにすることにより、効率よく多数の送受信回路、ひいては送受信コイルC221〜C228を各メモリチップ21〜28に設けることができる。したがって、半導体装置を小型化・高集積化することが可能である。
【0062】
また、上記の構造によれば、積層DRAM204を平面視したとき、重なり合った送受信回路TR221〜TR228の周囲に送受信コイルC221〜C228が互いに重ならない位置で配置される。このとき、送受信コイルC221〜C228は、実施の形態1と同様に、平面視で対称に配置されることが好ましい。送受信コイルC221〜C228を互いに重ならない位置で配置することにより、互いのコイル間の距離が離れるため、各送受信コイルにおけるクロストークの受信電圧を減少させて、インターポーザ20の対応する送受信コイルからの受信信号電圧に影響しないようにすることが可能となる。さらに、送受信コイルC221〜C228を平面視で対称となるように配置すれば、これらに限られない多数の送受信コイルを各メモリチップ21〜28に一層効率よく配置することが可能である。
【0063】
さらにまた、
図9(A)〜
図9(D)に示す引き出し線L221〜L228の長さは、互いに等しいことが好ましい。引き出し線L221〜L228の長さが異なると、これらの抵抗も異なるため、送受信コイルC221〜C228と送受信回路TR221〜TR228の間で入出力される信号の減衰の程度に差が生じる。引き出し線L221〜L228の長さを同じとすることにより、送受信コイルと送受信回路はどの組み合わせであっても、同じレベルの信号を入出力することが可能となる。
【0064】
図10は、インターポーザ20の模式的な一部平面図である。
図10において、送受信コイルC21、引き出し線L21、および送受信回路TR21を1組とし、同様に、他の送受信コイルC22〜C24、引き出し線L22〜L24、および送受信回路TR22〜TR24についても組分けすると、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路からなる組が4組できる。これらを、(
図5の円10と同様の)適当な大きさの円の周上に、送受信回路TR21〜TR24を円の内側に、送受信コイルC21〜C24を円の外側に向けて対称に配置すると、
図10に示すようになる。
【0065】
インターポーザ20の引き出し線L21〜L24は互いに等しい長さを有することが好ましい。引き出し線L21〜L24の長さが異なると、これらの抵抗も異なるため、送受信コイルC21〜C24と送受信回路TR21〜TR24の間で入出力される信号の減衰の程度に差が生じる。引き出し線L21〜L24の長さを同じとすることにより、送受信コイルと送受信回路はどの組み合わせであっても、同じレベルの信号を入出力することが可能となる。
【0066】
図11は、
図10のa−a線を
図8のメモリチップ21〜28に投影したときの、インターポーザ20と積層DRAM204の断面構成を示す模式図である。尚、この図では、説明のために送受信コイルのみを示している。
【0067】
図11に示すように、送受信コイルC21と送受信コイルC221の間、および送受信コイルC21と送受信コイルC222の間で、それぞれ
図11の矢印で示す磁束M21,M22によって電磁的な結合が生じる。この図に示すように、インターポーザ20の送受信コイルC21は、その中心軸が、メモリチップ21の送受信コイルC221とメモリチップ22の送受信コイルC222の各中心軸と一致するように配置されることが好ましい。
【0068】
また、送受信コイルC24と送受信コイルC227の間、および送受信コイルC24と送受信コイルC228の間で、それぞれ
図11の矢印で示す磁束M27,M28によって電磁的な結合が生じる。インターポーザ20の送受信コイルC24は、その中心軸が、メモリチップ27の送受信コイルC227とメモリチップ28の送受信コイルC228の各中心軸と一致するように配置されることが好ましい。
【0069】
図12は、
図10のb−b線を
図8のメモリチップ21〜28に投影したときの、インターポーザ20と積層DRAM204の断面構成を示す模式図である。尚、この図では、説明のために送受信コイルのみを示している。
【0070】
図12に示すように、送受信コイルC22と送受信コイルC223の間、および送受信コイルC22と送受信コイルC224の間で、それぞれ
図12の矢印で示す磁束M23,M24によって電磁的な結合が生じる。この図に示すように、インターポーザ20の送受信コイルC22は、その中心軸が、メモリチップ23の送受信コイルC223とメモリチップ24の送受信コイルC224の各中心軸と一致するように配置されることが好ましい。
【0071】
また、送受信コイルC23と送受信コイルC225の間、および送受信コイルC23と送受信コイルC226の間で、それぞれ
図12の矢印で示す磁束M25,M26によって電磁的な結合が生じる。インターポーザ20の送受信コイルC23は、その中心軸が、メモリチップ25の送受信コイルC225とメモリチップ26の送受信コイルC226の各中心軸と一致するように配置されることが好ましい。
【0072】
このように、インターポーザ20の送受信コイルC21〜C24の各中心軸を、対応するメモリチップ21〜28の送受信コイルC221〜C228の中心軸と一致させることにより、送受信が行われるコイル間で信号が減衰して通信できなくなるのを抑制できる。また、通信を行うためにより大きな電力が必要となる事態を回避できる。
【0073】
尚、
図8および
図10において、インターポーザ20の送受信回路TR21〜TR24は互いに重ならない位置に配置されているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、上述した円の中心に送受信回路を1つ設け、この送受信回路が、送受信コイルC21〜C24のそれぞれに対応する4つの回路部分と、これらの送受信コイルC21〜C24に共通して使用される回路部分とを有するようにしてもよい。
【0074】
送受信コイル、引き出し線、および送受信回路の配置が同一であるメモリチップを複数有する積層DRAM204と、インターポーザ20との間のデータ通信は、例えば次のようにして行うことができる。
【0075】
各メモリチップ21〜28は、それぞれ、メモリ回路に加えて、
図13に示すようなチップ選択回路31〜38を備えることができる。
【0076】
図13に示すように、チップ選択回路31〜38は互いに接続しており、それぞれ、対応するメモリチップに付与する識別番号S1を生成する。また、チップ選択回路31〜38は、外部からインターポーザ20を経由し共通の信号線60を介して入力されたチップ選択用のアドレスS2を、チップの識別番号S1と比較して、チップ選択信号S3を出力する。尚、インターポーザ20がアドレスS2を生成して出力する機能を有していてもよい。
【0077】
チップ選択回路31〜38は、メモリチップ21〜28に対し、それぞれ互いに異なる識別番号S1を出力する演算回路と、識別番号S1とアドレスS2を比較してチップ選択信号S3を出力する比較回路39〜46を有する。
図13において、演算回路は、入力値に1を加えるインクリメント演算を行う3ビットのインクリメント回路47〜54である。
【0078】
チップ選択回路31では、識別番号SNを構成する3ビットα1、α2、α3がいずれもグランドに接続されている。したがって、インクリメント回路47には0が入力され、メモリチップ21の識別番号S1として0が付与される。チップ選択回路32へは、インクリメント回路47から0に1を加えた値が入力されるので、メモリチップ22の識別番号は1になる。インクリメント回路48には1が入力されて、1を加えた数、すなわち2が出力される。以下、同様にして、メモリチップ23〜28に対して、それぞれ、2〜7の識別番号が付与される。
【0079】
インクリメント回路47〜54は、3ビットのインクリメント演算を行うために、3つの1ビットインクリメント回路を有する。チップ識別番号を構成する3ビットα1、α2、α3が各1ビットインクリメント回路に入力され、各1ビットインクリメント回路から3ビットβ1、β2、β3が出力される。
【0080】
比較回路39〜46は、3つのEXOR回路と、1つのAND回路とを有する。EXOR回路の1つには、識別番号S1のビットα1と、アドレスS2のビットβ1が入力される。EXOR回路の他の1つには、識別番号S1のビットα2とアドレスS2のビットβ2が入力される。EXOR回路の残りの1つには、識別番号S1のビットα3とアドレスS2のビットβ3が入力される。各EXOR回路は、入力されたビットが一致しないときは0を出力し、ビットが一致するときは1を出力する。AND回路には、3つのEXOR回路からの出力値が入力される。3つのEXOR回路の全ての一致が検知されると、AND回路は1を出力し、チップ選択信号S3はハイとなる。一方、3つのEXOR回路のいずれかで不一致が検知されると、AND回路は0を出力し、チップ選択信号S3はロウになる。
【0081】
以上の構成によれば、送受信コイル、引き出し線、および送受信回路の配置が同一であるメモリチップが複数あっても、所望のメモリチップを選択して、インターポーザとの間でデータ通信をすることができる。尚、チップ選択回路は、
図13の構成に限られるものではなく、同一の容量および構成のメモリチップの中から特定のメモリチップを選択できるものであれば、他の公知の構成としてもよい。
【0082】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0083】
また、上記各実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、半導体装置に必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての半導体装置は、本発明の範囲に包含される。