特許第6687695号(P6687695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.の特許一覧

特許6687695安定した無電解銅めっき組成物及び基板上に銅を無電解めっきするための方法
<>
  • 特許6687695-安定した無電解銅めっき組成物及び基板上に銅を無電解めっきするための方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687695
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】安定した無電解銅めっき組成物及び基板上に銅を無電解めっきするための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/40 20060101AFI20200421BHJP
   C23C 18/30 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C23C18/40
   C23C18/30
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-170915(P2018-170915)
(22)【出願日】2018年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-70191(P2019-70191A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】62/568,820
(32)【優先日】2017年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッホ・エム・リフシッツ・アリビオ
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・イー・クリアリー
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−070931(JP,A)
【文献】 特開昭61−110774(JP,A)
【文献】 特開2015−021174(JP,A)
【文献】 特開2007−070244(JP,A)
【文献】 米国特許第3361580(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第1184123(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の銅イオンの源、S−カルボキシメチル−L−システイン、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、ニトリロ酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルコン酸、グルコン酸塩、トリエタノールアミン、S,S−エチレンジアミン二コハク酸ならびにヒダントイン及びヒダントイン誘導体から選択される1つ以上の錯化剤、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ボロハイドライド、ボラン、ジメチルアミンボラン、糖類及び次亜リン酸塩から選択される1つ以上の還元剤、並びに任意に、1つ以上のpH調節剤を含む無電解銅めっき組成物であって、前記無電解銅めっき組成物のpHが、7よりも大きい、無電解銅めっき組成物。
【請求項2】
前記S−カルボキシメチル−L−システインが、少なくとも0.5ppmの量である、請求項1に記載の無電解銅めっき組成物。
【請求項3】
前記S−カルボキシメチル−L−システインが、0.5ppm〜200ppmの量である、請求項2に記載の無電解銅めっき組成物。
【請求項4】
無電解銅めっきの方法であって、
e)誘電体を含む基板を提供することと、
f)前記誘電体を含む前記基板に触媒を適用することと、
g)前記誘電体を含む前記基板に無電解銅めっき組成物を適用することであって、前記無電解銅めっき組成物が、1つ以上の銅イオンの源、S−カルボキシメチル−L−システイン、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、ニトリロ酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルコン酸、グルコン酸塩、トリエタノールアミン、S,S−エチレンジアミン二コハク酸ならびにヒダントイン及びヒダントイン誘導体から選択される1つ以上の錯化剤、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ボロハイドライド、ボラン、ジメチルアミンボラン、糖類及び次亜リン酸塩から選択される1つ以上の還元剤、並びに任意に1つ以上のpH調節剤を含み、前記無電解銅めっき組成物のpHが、7よりも大きい、無電解銅めっき組成物を適用することと、
h)前記無電解銅めっき組成物を用いて前記誘電体を含む前記基板上に銅を無電解めっきすることと、を含む、方法。
【請求項5】
前記S−カルボキシメチル−L−システインが、少なくとも0.5ppmの量である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記無電解銅めっき組成物が、40℃以下である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、パラジウム触媒である、請求項4〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した無電解銅めっき組成物及び基板上に銅を無電解めっきするための方法に関する。より具体的には、本発明は、安定した無電解銅めっき組成物及び基板上に銅を無電解めっきするための方法に関し、無電解銅めっき組成物は、低めっき温度ならびに高安定剤及び浸出触媒濃度でさえ、無電解銅めっき活性を損なうことなく、無電解銅組成物に対する安定性を提供するための安定剤として特定のシステイン誘導体を含む。
【背景技術】
【0002】
無電解銅めっき浴は、様々な種類の基板上に銅を析出するために金属化産業において広く用いられる。例えば、プリント回路基板の製造において、無電解銅浴は、その後の電解銅めっきのための下地として貫通孔の壁及び回路経路に銅を析出するために使用されている。無電解銅めっきはまた、必要に応じて、銅、ニッケル、金、銀、及び他の金属のさらなるめっきのための下地として非導電面上に銅を析出するために、装飾プラスチック産業において使用されている。現在の商業的に使用されている無電解銅浴は、水溶性二価銅化合物、二価銅イオンのためのキレート剤または錯化剤、例えば、ロッシェル塩及びエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、還元剤、例えば、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド前駆体または誘導体、ならびに浴をより安定にし、めっき速度を調節し、銅析出物に光沢を出すためのさらなる添加剤を含有する。
【0003】
しかしながら、無電解銅浴内の全ての構成成分がめっき電位に影響し、したがって、特定の成分及び動作条件に対する最も望ましいめっき電位を維持する濃度に調節されなければならないことを理解されたい。内部めっき電圧、析出の性質及び速度に影響を及ぼす他の因子は、温度、撹拌の度合い、上述の基本材料の種類及び濃度を含む。
【0004】
無電解銅めっき浴では、構成成分が連続的に消費され、その結果、浴が絶え間なく変化する状態にあり、そのため消費された構成成分は、定期的に補充されなければならない。長期間にわたって実質的に均一な銅析出物を伴って高めっき速度を維持するように浴を制御することは、非常に困難である。いくつかの金属ターンオーバー(MTO)にわたる浴構成成分の消費及び補充はまた、例えば、副生成物のビルドアップを通して、浴の不安定性の一因となり得る。したがって、このような浴、及び特に高いめっき電位を有するもの、すなわち、高度に活性な浴は、不安定になり、使用時に自然発生的に分解する傾向がある。このような無電解銅浴の不安定性は、表面に沿って不均一または不連続の銅めっきをもたらし得る。例えば、プリント回路基板の製造において、貫通孔の壁上の無電解銅を、壁上の銅析出物が実質的に連続的かつ均一であり、銅析出物内に破断または間隙が最小限であり、好ましくは、全くないように、めっきすることが重要である。このような銅析出の不連続は、最終的に、正常に動作しない任意の電気デバイスをもたらし得、これには、不具合のあるプリント回路基板が含まれる。さらに、不安定な無電解銅浴はまた、相互接続の不具合(ICD)をもたらし得、これもまた、正常に動作しない電気デバイスをもたらし得る。
【0005】
無電解銅めっきと関連する別の問題は、高触媒金属浸出の存在下での無電解銅めっき浴の安定性である。無電解銅めっきは、無電解銅めっきプロセスを開始するために、コロイドパラジウム−スズ触媒及びイオン性金属触媒等の様々な金属含有触媒を利用する。このような金属含有触媒は、めっき条件、例えば、無電解銅浴のpH、無電解めっき温度、無電解銅浴中の構成成分及び構成成分の濃度に対して敏感であり得、このようなパラメータが、触媒から少なくとも金属浸出をもたらし、それにより、無電解銅浴をさらに不安定にし得る。
【0006】
上述の安定性問題に対処するために、「安定剤」のラベルの下に分類される様々な化合物が、無電解銅めっき浴に導入されている。無電解銅めっき浴内で使用されている安定剤の例は、ジスルフィド及びチオール等の硫黄含有化合物である。このような硫黄含有化合物が有効な安定剤であることが示されているが、無電解銅浴内のそれらの濃度は、このような化合物の多くが触媒毒であるため、慎重に調節されなければならない。したがって、このような硫黄含有化合物は、無電解めっき活性または速度に悪影響を及ぼさずに広い濃度範囲にわたって使用することができない。一方で、触媒金属浸出に関して、触媒から浸出する金属が多ければ多いほど、無電解銅浴の安定性を維持するために必要とされる安定剤濃度が高くなる。触媒金属浸出は、長期または金属ターンオーバー(MTO)の無電解銅めっき性能に関して考慮を必要とする避けられない側面である。この問題に対処するために、安定剤濃度を増加させて、触媒金属浸出を克服することができる。安定剤濃度を増加するとき、無電解銅浴の動作温度を上昇させて、めっき速度における安定剤濃度の増加の負の影響を克服する。多くの安定剤は、無電解銅めっき速度を低下させ、したがって、上述のように、高濃度触媒毒である。低めっき速度は、無電解銅めっき性能に有害である。無電解銅めっき速度はまた、温度に依存しており、それ故に、高安定剤濃度が速度を低下させるとき、めっき温度の上昇が速度を増加させ得る。しかしながら、動作温度の上昇は、副生成物のビルドアップを増加させ、副生成物によって浴添加剤を低減させることによって、無電解銅浴の安定性を減少し得、それにより、安定剤濃度を増加させる効果の一部を打ち消す。結果として、ほとんどの場合、使用される安定剤の量は、高めっき速度の維持と、長時間にわたって安定している無電解浴の達成との間で慎重に妥協されなければならない。
【0007】
したがって、高触媒金属浸出、高MTOがある場合でさえも、触媒を毒することなく、めっき速度またはめっき性能に影響を及ぼすことなく、広い濃度範囲にわたって無電解銅浴を安定化させることができ、低めっき温度でさえ、良好な貫通孔被覆性及び低減されたICDを可能にする、無電解銅めっき浴のための安定剤に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、1つ以上の銅イオンの源、S−カルボキシメチル−L−システイン、1つ以上の錯化剤、1つ以上の還元剤、及び任意に、1つ以上のpH調節剤を含み、無電解銅めっき組成物のpHが7よりも大きい、無電解銅めっき組成物に関する。
【0009】
本発明はまた、無電解銅めっきの方法にも関し、本方法は、
a)誘電体を含む基板を提供することと、
b)誘電体を含む基板に触媒を適用することと、
c)誘電体を含む基板に無電解銅めっき組成物を適用することであって、無電解銅めっき組成物は、1つ以上の銅イオンの源、S−カルボキシメチル−L−システイン、1つ以上の錯化剤、1つ以上の還元剤、及び任意に、1つ以上のpH調節剤を含み、無電解銅めっき組成物のpHは、7よりも大きい、無電解銅めっき組成物を適用することと、
d)無電解銅めっき組成物を用いて誘電体を含む基板上に銅を無電解めっきすることと、を含む。
【0010】
S−カルボキシメチル−L−システインは、安定した無電解銅めっき組成物を可能にし、本発明の無電解銅めっき組成物は、S−カルボキシメチル−L−システインの広い濃度範囲にわたって安定しており、同時に、同じ濃度範囲にわたって無電解めっきした銅の高い及び一定のめっき速度を可能にする。安定剤濃度のための広範な動作ウィンドウは、いかに組成物の構成成分が補充され、消費されるかに関わらず、無電解銅めっき組成物の性能が実質的に変化しないように、安定剤濃度が慎重にモニタリングされる必要がないことを意味する。さらに、本発明の安定剤は、触媒の中毒を懸念することなく、広い濃度範囲にわたって使用され得る。
【0011】
さらに、S−カルボキシメチ−L−システインは、パラジウム触媒からのパラジウム金属の高浸出時でさえも安定した無電解銅めっき組成物を可能にする。浸出された触媒金属に対する無電解銅めっき組成物の安定性は、使用された安定剤の量に比例しており、そのため、より多くの安定剤が添加されると、無電解銅めっき組成物の長期安定性も高くなる。本発明の無電解銅めっき組成物及びその方法は、高い金属ターンオーバー(MTO)を超え、低いめっき温度でさえ、プリント回路基板における良好な貫通孔壁被覆性及び相互接続欠陥(ICD)の低減をさらに可能にする。低めっき温度は、望ましくない副反応または分解によって生じる無電解銅めっき組成物添加剤の消費を低下させ、それにより、より安定した無電解銅めっき組成物を提供し、無電解銅めっきプロセスを運転する費用を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】図は、S−カルボキシメチル−L−システインを含有する本発明の無電解銅めっき組成物のFR/4ガラスエポキシ積層体上のバックライト性能のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通して使用されるとき、以下の略語は、文脈上明確に別の意味を示さない限り、以下の意味を有する:g=グラム、mg=ミリグラム、mL=ミリリットル、L=リットル、cm=センチメートル、m=メートル、mm=ミリメートル、μm=ミクロン、ppm=百万分率=mg/L、M=モル、min.=分、MTO=金属ターンオーバー、ICD=相互接続欠陥、℃=摂氏温度、g/L=グラム/リットル、DI=脱イオン化、Pd=パラジウム、Pd(II)=a+2の酸化状態を有するパラジウムイオン、Pd°=その金属がイオン化されていない状態まで還元されたパラジウム、wt%=重量パーセント、T=ガラス転移温度、及びe.g.=例。
【0014】
「めっき」及び「析出」という用語は、本明細書の全体にわたって互換的に使用される。「組成物」及び「浴」という用語は、本明細書の全体にわたって互換的に使用される。「金属ターンオーバー(MTO)」という用語は、添加された置換金属の総量がめっき組成物中の元来の金属の総量と等しいことを意味する。特定の無電解銅めっき組成物におけるMTO値=めっき組成物(グラム)中の銅含量によって除算された析出された全ての銅(グラム)。「相互接続欠陥(ICD)」という用語は、貫通孔中の掘削破片、残留物、ドリルスミア、粒子(ガラス及び無機充填剤)、ならびにさらなる銅等の、プリント回路基板内の相互回路接続を妨げ得る状態を指す。全ての量は、特記されない限り、重量パーセントである。全ての数値範囲は包括的であり、かつこのような数値範囲が合計で100%になることに制約されることが論理的である場合を除いて任意に組み合わせ可能である。
【0015】
本発明の無電解銅めっき組成物は、1つ以上の銅イオンの源、S−カルボキシメチル−L−システイン、1つ以上の錯化剤またはキレート剤、1つ以上の還元剤、水、及び任意に、1つ以上の界面活性剤、及び任意に、1つ以上のpH調節剤、ならびに前述の構成成分の任意の対応するカチオンまたはアニオンを含み、好ましくは、それらからなり、無電解銅めっき組成物のpHは、7よりも大きい。
【0016】
本発明のS−カルボキシメチル−L−システインは、以下の式を有する:
【0017】
【化1】
【0018】
本発明のS−カルボキシメチル−L−システインは、0.5ppm以上、好ましくは、0.5ppm〜200ppm、さらに好ましくは、1ppm〜50ppm、なおより好ましくは、5ppm〜20ppm、なおさらに好ましくは、7ppm〜20ppm、さらになおより好ましくは、10ppm〜20ppm、最も好ましくは、15ppm〜20ppmの量で含まれる。
【0019】
銅イオン及び対アニオンの源としては、銅の水溶性ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、ならびに他の有機及び無機塩が挙げられるが、これらに限定されない。このような銅塩の1つ以上の混合物が銅イオンを提供するために使用され得る。例は、硫酸銅五水和物、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅、及びスルファミン酸銅等の硫酸銅である。好ましくは、本発明の無電解銅めっき組成物の1つ以上の銅イオンの源は、0.5g/L〜30g/L、より好ましくは、1g/L〜25g/L、なおより好ましくは、5g/L〜20g/L、さらに好ましくは、5g/L〜15g/L、及び最も好ましくは、10g/L〜15g/Lの範囲である。
【0020】
錯化剤またはキレート剤としては、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩(EDTA)、ニトリロ酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルコン酸、グルコン酸塩、トリエタノールアミン、修飾エチレンジアミン四酢酸、S,S−エチレンジアミン二コハク酸、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ヒダントイン誘導体としては、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、及び5,5−ジメチルヒダントインが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、錯化剤は、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、ニトリロ酢酸及びそのアルカリ金属塩、例えば、ニチルロ酢酸のナトリウム塩及びリチウム塩、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体のうちの1つ以上から選択される。好ましくは、EDTA及びその塩は、本発明の無電解銅めっき組成物から除外される。より好ましくは、錯化剤は、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、ニトリロ酢酸、ニトリロ酢酸ナトリウム塩、及びヒダントイン誘導体から選択される。さらにより好ましくは、錯化剤は、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸ナトリウム、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、及び5,5−ジメチルヒダントインから選択される。なお好ましくは、錯化剤は、酒石酸カリウムナトリウム及び酒石酸ナトリウムから選択される。最も好ましくは、錯化剤は、酒石酸カリウムナトリウムである。
【0021】
錯化剤は、10g/l〜150g/L、好ましくは、20g/L〜150g/L、より好ましくは、30g/L〜100g/L、なおより好ましくは、35g/L〜80g/L、及び最も好ましくは、35g/l〜55g/Lの量で本発明の無電解銅めっき組成物中に含まれる。
【0022】
還元剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド前駆体、ホルムアルデヒド誘導体、例えばパラホルムアルデヒド、ボロハイドライド(borohydrides)、例えば水素化ホウ素ナトリウム、置換ボロハイドライド、ボランジメチルアミンボラン(DMAB)、糖類、例えばブドウ糖(グルコース)、グルコース、ソルビトール、セルロース、甘蔗糖、マンニトール及びグルコノラクトン、次亜リン酸塩及びその塩、例えば次亜リン酸ナトリウム、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、キノール、ピロガロール、ヒドロキシキノール、フロログルシノール、グアヤコール、没食子酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸、セアテコールスルホン酸(ceatecholsulfonic acid)、前述の還元剤の全てのタイロン及び塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、還元剤は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド誘導体、ホルムアルデヒド前駆体、ボロハイドライド、ならびに次亜リン酸塩及びその塩、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、及び没食子酸から選択される。さらに好ましくは、還元剤は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド誘導体、ホルムアルデヒド前駆体、及び次亜リン酸ナトリウムから選択される。最も好ましくは、還元剤は
、ホルムアルデヒドである。
【0023】
還元剤は、0.5g/L〜100g/L、好ましくは、0.5g/L〜60g/L、より好ましくは、1g/L〜50g/L、なおより好ましくは、1g/L〜20g/L、さらに好ましくは、1g/L〜10g/L、最も好ましくは、1g/L〜5g/Lの量で本発明の無電解銅めっき組成物中に含まれる。
【0024】
本発明の無電解銅めっき組成物のpHは、7よりも大きい。好ましくは、本発明の無電解銅めっき組成物のpHは、7.5よりも大きい。さらに好ましくは、無電解銅めっき組成物のpHは、8〜14、なおより好ましくは、10〜14、さらに好ましくは、11〜13、及び最も好ましくは、12〜13の範囲である。
【0025】
任意に、1つ以上のpH調節剤は、無電解銅めっき組成物のpHをアルカリ性pHに調節するために、本発明の無電解銅めっき組成物中に含まれ得る。酸性及び塩基は、有機及び無機酸及び塩基を含む、pHを調節するために使用することができる。好ましくは、無機酸または無機塩基、またはこれらの混合物は、本発明の無電解銅めっき組成物のpHを調節するために使用される。無電解銅めっき組成物のpHの調節に用いるのに好適な無機酸は、例えば、リン酸、硝酸、及び塩酸を含む。無電解銅めっき組成物のpHの調節に用いるのに好適な無機塩基は、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムを含む。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはこれらの混合物は、無電解銅めっき組成物のpHを調節するために使用され、最も好ましくは、水酸化ナトリウムは、本発明の無電解銅めっき組成物のpHを調節するために使用される。
【0026】
任意に、1つ以上の界面活性剤は、本発明の無電解銅めっき組成物中に含まれ得る。このような界面活性剤は、イオン性、例えば、陽イオン性及び陰イオン性界面活性剤、非イオン性及び両性界面活性剤を含む。界面活性剤の混合物を使用することができる。界面活性剤は、0.001g/L〜50g/Lの量、好ましくは、0.01g/L〜50g/Lの量で組成物中に含まれ得る。
【0027】
陽イオン性界面活性剤としては、テトラ−アルキルアンモニウムハロゲン化物、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ヒドロキシエチルアルキルイミダゾリン、アルキルベンザルコニウムハロゲン化物、アルキルアミンアセテート、アルキルアミンオレエート、及びアルキルアミノエチルグリシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルまたはアルコキシナフタレンスルホネート、アルキルジフェニルエーテルスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸エステル、高級アルコールリン酸モノエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(リン酸塩)及びアルキルスルホコハク酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチルまたはエチル−N−ヒドロキシエチルまたはメチルイミダゾリウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチルまたはエチル−N−カルボキシメチルオキシエチルイミダゾリウムベタイン、ジメチルアルキルベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸またはその塩、及び脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
好ましくは、界面活性剤は、非イオン性である。非イオン性界面活性剤としては、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール、20〜150繰り返し単位を有するポリオキシエチレンポリマー、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の無電解銅組成物及び方法は、様々な基板、例えば、半導体、プリント回路基板等の金属クラッド及び非クラッド基板上の無電解銅板に使用することができる。このような金属クラッド及び非クラッドプリント回路基板は、繊維ガラス等の繊維を含む、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びこれらの組み合わせ、ならびに前述の含浸された実施形態を含むことができる。好ましくは、基板は、金属クラッドプリント基板または複数の貫通孔を有する配線板である。本発明の無電解銅めっき組成物及び方法は、プリント回路基板を製造する水平及び垂直プロセスの両方で使用することができ、好ましくは、本発明の無電解銅めっき組成物及び方法は、水平プロセスで使用される。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、アセタール樹脂、メチルアクリレート等のアクリル樹脂、エチルアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースナイトレート等のセルロース樹脂、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン及びコポリマーならびにアクリロニトリル−ブタジエンスチレンコポリマー等のスチレンブレンド、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ならびに、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化ビニル−アセテートコポリマー、塩化ビニリデン、及びビニルホルマール等のビニルポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、アリルフタレート、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、単独またはブタジエンアクリロニトリルコポリマーもしくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーと調合されたフェノール−ホルムアルデヒド及びフェノール−フルフラールコポリマー、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、グリセリルフタレート、ならびにポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の無電解銅めっき組成物及び方法は、低及び高T樹脂の両方を用いて基板を無電解銅めっきするために使用することができる。低T樹脂は、160℃未満のTを有し、高T樹脂は、160℃以上のTを有する。典型的には、高T樹脂は、160℃〜280℃、または例えば170℃〜240℃のTを有する。高Tポリマー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリテトラフルオロエチレンブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。このようなブレンドは、例えば、ポリフェニレンオキシド及びシアネートエステルを含むPTFEを含む。高Tgを有する樹脂を含む他の種類のポリマー樹脂としては、エポキシ樹脂、例えば二官能及び多官能エポキシ樹脂、ビマレイミド/トリアジン及びエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェネイレン(polypheneylene)エーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシ、ならびにこれらの複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の無電解銅組成物を用いて無電解銅めっきする方法において、基板を洗浄または脱脂し、任意に粗面化またはマイクロ粗面化し、任意に、基板をエッチングまたはマイクロエッチングし、溶媒膨潤剤を基板に適用し、貫通孔をデスミア処理し、様々なすすぎ処理及びさび止め処理を、任意に使用することができる。
【0036】
好ましくは、本発明の無電解銅めっき組成物及び方法を用いて無電解銅めっきする基板は、誘電体材料及び複数の貫通孔を有する金属クラッド基板、例えばプリント回路基板である。任意に、この板を、水ですすぎ、洗浄し、脱脂し、続いて、貫通孔壁をデスミア処理する。誘電体の準備もしくは軟化または貫通孔のデスミア処理は、溶媒膨潤剤の適用によって開始することができる。無電解銅めっきの方法は、貫通孔壁をめっきするためのものであることが好ましいが、本発明の無電解銅めっきの方法はまた、バイアス壁を無電解銅めっきするために使用することができる。
【0037】
従来の溶媒膨潤剤を使用することができる。特定のタイプは、誘電材料のタイプに応じて変化し得る。どの溶媒膨潤剤が特定の誘電材料に適しているかを決定するために、簡単な実験を行うことができる。誘電体のTは、しばしば、使用される溶媒膨潤剤のタイプを決定する。溶媒膨潤剤としては、グリコールエーテル及びその関連エーテルアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。当業者に周知であるグリコールエーテル及びその関連エーテルアセテートの従来の量を使用することができる。市販の溶媒膨潤剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner 3302A、CIRCUPOSIT(商標)Hole Prep 3303、及びCIRCUPOSIT(商標)Hole Prep 4120溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。
【0038】
溶媒膨潤剤の後に、任意に、プロモーターを適用することができる。従来のプロモーターを使用することができる。このようなプロモーターは、硫酸、クロム酸、アルカリ性過マンガン酸塩、またはプラズマエッチングを含む。好ましくは、アルカリ性過マンガン酸塩は、プロモーターとして使用される。市販のプロモーターの例は、CIRCUPOSIT(商標)Promoter 4130及びCIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter 3308溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。任意に、基板及び貫通孔を、水ですすぐ。
【0039】
プロモーターが使用される場合、プロモーターによって残されたあらゆる残留物を中和するために、中和剤を適用する。従来の中和剤を使用することができる。好ましくは、中和剤は、1つ以上のアミンを含有する酸性水溶液または3重量%の過酸化水素及び3重量%の硫酸の溶液である。市販の中和剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)MLB Neutralizer 216−5である。任意に、基板及び貫通孔を、水ですすぎ、次いで乾燥させる。
【0040】
中和後、酸性またはアルカリ性の調整剤を適用する。従来の調整剤を使用することができる。このような調整剤は、1つ以上の陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、錯化剤、及びpH調整剤または緩衝剤を含むことができる。市販の酸性調整剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)Conditioners 3320A及び3327溶液(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。好適なアルカリ性調整剤としては、1つ以上の第四級アミン及びポリアミンを含有するアルカリ性界面活性剤水溶液が挙げられるが、これに限定されない。市販のアルカリ性界面活性剤の例は、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner 231、3325、813、及び860製剤(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。任意に、基板及び貫通孔を、水ですすぐ。
【0041】
任意に、調整に続いて、マイクロエッチングが行われ得る。従来のマイクロエッチングを使用することができる。マイクロエッチングは、めっきした無電解銅及び電気めっきの後の付着力を高めるため、露出された金属上にマイクロ粗面化した金属表面(例えば内層及び表面エッチ)をもたらすように設計されている。マイクロエッチとしては、60g/L〜120g/Lの過硫酸ナトリウムまたはペルオキシ一硫酸ナトリウムもしくはカリウム及び硫酸(2%)混合物、または一般的な硫酸/過酸化水素が挙げられるが、これらに限定されない。市販のマイクロエッチング組成物の例は、CIRCUPOSIT(商標)Microetch 3330エッチ溶液及びPREPOSIT(商標)748エッチ溶液(両方ともDow Advanced Materialsから入手可能)である。任意に、基板を、水ですすぐ。
【0042】
任意に、プレディップを、マイクロエッチング基板及び貫通孔に適用することができる。プレディップの例としては、酒石酸カリウムナトリウムまたはクエン酸ナトリウム、0.5%〜3%の硫酸もしくは硝酸、または25g/L〜75g/Lの塩化ナトリウムの酸性溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
次いで、触媒を基板に適用する。触媒金属を含む無電解金属めっきに適している任意の従来の触媒を使用することができることが想定されるが、好ましくは、パラジウム触媒は、本発明の方法において使用される。触媒は、コロイドパラジウム−スズ触媒等の非イオン性パラジウム触媒であり得るか、または触媒は、イオン性パラジウム触媒であり得る。触媒がコロイドパラジウム−スズ触媒である場合、水中0.5〜10%の促進剤として塩酸、硫酸、またはテトラフルオロホウ酸を用いて、触媒からスズを揮散し、無電解銅めっきのためにパラジウム金属を曝露する、促進ステップが、行われる。触媒はイオン性触媒である場合、促進ステップが、この方法から除外され、その代わりに、還元剤を基板に適用し、続いて、イオン性触媒に適用して、Pd(II)イオンからPd°金属等の、それらの金属状態に対してイオン性触媒の金属イオンを還元する。好適な市販のコロイドパラジウム−スズ触媒の例は、CIRCUPOSIT(商標)3340触媒及びCATAPOSIT(商標)44触媒(Dow Advanced Materialsから入手可能)である。市販のパラジウムイオン性触媒の例は、CIRCUPOSIT(商標)6530触媒である。触媒は、基板を触媒の溶液に浸漬することによって、または触媒溶液を基板上に噴霧することによって、または従来の装置を用いて基板上の触媒溶液の噴霧化によって適用することができる。触媒は、室温〜約80℃、好ましくは、約30℃〜約60℃の温度で適用することができる。基板及び貫通孔を、任意に、触媒の適用後に水ですすぐ。
【0044】
金属イオンを金属に還元することで知られる従来の還元剤を使用して、触媒の金属イオンをそれらの金属状態に還元することができる。このような還元剤としては、ジメチルアミンボラン(DMBH)、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、イソ−アスコルビン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ギ酸、及びホルムアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。還元剤は、実質的に全ての金属イオンが金属に還元される量で含まれる。このような量は、当業者にはよく知られている。触媒がイオン性触媒である場合、還元剤は、触媒が基板に適用された後、及び金属化前に適用される。
【0045】
次いで、基板及び貫通孔壁を、本発明の無電解銅めっき組成物を用いて銅でめっきする。本発明の無電解銅めっき方法は、室温〜約50℃の温度で行われ得る。好ましくは、本発明の無電解銅めっき方法は、室温〜約46℃の温度で行われ、より好ましくは、無電解銅めっきは、約25℃〜約40℃、なおより好ましくは、約30℃から40℃未満、最も好ましくは、約30℃〜約36℃で行われる。基板は、本発明の無電解銅めっき組成物中に浸漬することができるか、または無電解銅めっき組成物は、基板上に噴霧することができる。本発明の無電解銅めっき組成物を用いた本発明の無電解銅めっき方法は、7よりも大きいpHのアルカリ性環境において行われる。好ましくは、本発明の無電解銅めっき方法は、7.5よりも大きいpHで行われ、より好ましくは、無電解銅めっきは、8〜14、なおより好ましくは、10〜14、さらに好ましくは、11〜13、及び最も好ましくは、12〜13のpHで行われる。
【0046】
本発明の無電解銅めっき組成物を用いた無電解銅めっき方法は、プリント回路基板の貫通孔の無電解銅めっきに対する良好な平均バックライト値を可能にする。このような平均バックライト値は、好ましくは、4.5以上、より好ましくは、4.65〜5、なおより好ましくは、4.8〜5、最も好ましくは、4.9〜5である。このような高い平均バックライト値は、本発明の無電解銅めっき組成物を用いた本発明の無電解銅めっき方法を、市販の無電解銅めっきに使用することを可能にし、プリント回路基板産業は、4.5以上のバックライト値を実質的に必要とする。さらに、本発明の無電解銅めっき組成物は、無電解めっき時に使用された化合物を補充するため以外に、無電解銅めっき浴希釈またはベイルアウト等の浴維持を必要とすることなく、いくつかのMTO、好ましくは、0MTO〜1MTO、より好ましくは、0MTO〜5MTO、最も好ましくは、0MTO〜10MTOで安定している。さらに、本発明の無電解銅めっき組成物は、2〜10MTO(例えば、2MTOまたは例えば6MTOまたは例えば10MTO)の0%ICDのような、いくつかのMTOを上回る積層基板においてICDの低減を可能にする。本発明の無電解銅金属めっき組成物及び方法は、高触媒金属浸出を用いても、S−カルボキシメチル−L−システインの広い濃度範囲にわたって均一な銅析出を可能にする。
【0047】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明をさらに説明することを意図するものである。
【0048】
実施例1
本発明の無電解銅組成物
以下の表1に開示された構成成分及び量を有する、以下の水性アルカリ性無電解銅組成物が、調製される。
【0049】
【表1】
【0050】
水性アルカリ性無電解銅組成物のpHは、Fisher Scientificから入手可能な従来のpH計を用いて測定された場合、室温でpH=12.7を有する。
【0051】
実施例2
本発明の水性アルカリ性無電解銅組成物を用いたバックライト実験
複数の貫通孔を有する6つの異なるFR/4ガラスエポキシ樹脂のうちの4つをそれぞれ提供する:TUC−662、SY−1141、IT−180、370HR、EM825、及びNPGN。パネルは、4層または8層の銅クラッドパネルである。TUC−662は、Taiwan Union Technologyから得られ、SY−1141は、Shengyiから得られる。IT−180は、ITEQ Corp.から得られ、NPGNは、NanYaから得られ、370HRは、Isolaから得られ、EM825は、Elite Materials Corporationから得られる。パネルのT値は、140℃〜180℃の範囲である。各パネルは、5cm×12cmである。
【0052】
各パネルの貫通孔を、以下のように処理する:
1.各パネルの貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)Hole Prep 3303溶液を用いて約80℃で約7分間デスミア処理する。
2.次いで、各パネルの貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
3.次いで、貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter 3308水性過マンガン酸塩溶液を用いて、約80℃で10分間処理する。
4.次いで、貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
5.次いで、貫通孔を、3重量%の硫酸/3重量%の過酸化水素中和剤を用いて、室温で2分間処理する。
6.次いで、各パネルの貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
7.次いで、各パネルの貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner 3325アルカリ性溶液を用いて、約60℃で5分間処理する。
8.次いで、貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
9.次いで、貫通孔を、過硫酸ナトリウム/硫酸エッチ溶液を用いて、室温で2分間処理する。
10.次いで、各パネルの貫通孔を、流れているDI水で4分間すすぐ。
11.次いで、パネルを、イオン性水性アルカリ性パラジウム触媒濃縮物であるCIRCUPOSIT(商標)6530触媒(Dow Electronic Materialsから入手可能)中に約40℃で5分間浸漬し(この触媒は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、または硝酸の十分な量で緩衝して、9〜9.5の触媒pHを達成する)、次いで、パネルを、DI水を用いて室温で2分間すすぐ。
12.次いで、パネルを、0.6g/Lのジメチルアミンボラン及び5g/Lのホウ酸溶液中に約30℃で2分間浸漬して、パラジウムイオンをパラジウム金属に還元し、次いで、パネルを、DI水で2分間すすぐ。
13.次いで、パネルを、上記の表1の無電解銅めっき組成物中に浸漬し、約35℃、12.7のpHで銅をめっきし、貫通孔壁上に5分間銅を析出する。
14.次いで、銅めっきパネルを、流れている水道水で4分間すすぐ。
15.次いで、各銅めっきパネルを、圧縮空気で乾燥させる。
16.パネルの貫通孔壁を、以下に記載されるバックライトプロセスを用いて銅めっき被覆性について試験する。
【0053】
各パネルは、銅めっき壁に曝露するのに可能な限り、貫通孔の中央に最も近い断面である。貫通孔の中央から3mm以下の厚さの断面は、貫通孔壁被覆性を決定するために、各パネルから得られる。ヨーロピアンバックライト評価スケールを使用する。各パネルからの断面は、試料の後ろに光源を有する50倍率の従来の光学顕微鏡下に設置する。銅析出の質は、試料を通じて透過される顕微鏡下での可視光の量によって判定される。透過光は、不完全な無電解被覆である、めっきされた貫通孔の領域でのみ可視である。光が透過されず、この区域が完全に黒色に見える場合、貫通孔壁の完全銅被覆を示す、バックライトスケールにおいて5と評価される。光が、いかなる暗黒領域も有しない、全区域を通過する場合、これは、壁上に銅金属析出がほとんどなく、この区域が0と評価されることを示す。区域がいくつかの暗黒領域及び光領域を有する場合、0〜5と評価される。最低10個の貫通孔を、検査し、各板について評価する。
【0054】
図は、本発明の水性アルカリ性銅めっき組成物のバックライト性能を示す、バックライト評価分布である。グラフ中のプロットは、各板に対して分割された10個の貫通孔のバックライト評価について95%の信頼区間を示す。各プロットの中央を通る横線は、測定された10個の貫通孔区域の各群に対する平均バックライト値を示す。4.5以上のバックライト値は、めっき産業において商業的に許容される触媒を示す。370HRパネルの貫通孔は、4.9〜5の平均バックライト値を有し、NPGNは、4.8〜4.9の平均値を有し、SY−1141は、4.8の平均値、EM825は、4.9〜5の平均値、IT−180は、4.8〜4.9の平均値、及びTU−662は、5の平均値を有する。バックライト値の全ては、様々なFR/4ガラス−エポキシパネルについて商業的に許容される値を示す。
【0055】
実施例3
本発明の水性アルカリ性無電解銅めっき組成物を用いた複数のMTOでのICD実験
【0056】
複数の貫通孔を有する複数の6つの異なる多層、銅クラッドFR/4ガラス−エポキシパネルを、実施例2と同様に提供する:TUC−662、SY−1141、IT−180、370HR、EM825、及びNPGN。各パネルの貫通孔を、以下のように処理する:
1.各パネルの貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)Hole Prep 3303溶液を用いて約80℃で7分間デスミア処理する。
2.次いで、各パネルの貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
3.次いで、貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter 3308水性過マンガン酸塩溶液を用いて、約80℃で10分間処理する。
4.次いで、貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
5.次いで、貫通孔を、3重量%の硫酸/3重量%の過酸化水素中和剤を用いて、室温で2分間処理する。
6.次いで、各パネルの貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
7.次いで、各パネルの貫通孔を、CIRCUPOSIT(商標)Conditioner 3320Aアルカリ性溶液を用いて、約45℃で5分間処理する。
8.次いで、貫通孔を、流れている水道水で4分間すすぐ。
9.次いで、貫通孔を、過硫酸ナトリウム/硫酸エッチ溶液を用いて、室温で2分間処理する。
10.次いで、各パネルの貫通孔を、流れているDI水で4分間すすぐ。
11.次いで、パネルを、イオン性水性アルカリ性パラジウム触媒濃縮物であるCIRCUPOSIT(商標)6530触媒(Dow Electronic Materialsから入手可能)中に約40℃で5分間浸漬し(この触媒は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、または硝酸の十分な量で緩衝して、9〜9.5の触媒pHを達成する)、次いで、パネルを、DI水を用いて室温で2分間すすぐ。
12.次いで、パネルを、0.6g/Lのジメチルアミンボラン及び5g/Lのホウ酸溶液中に約30℃で2分間浸漬して、パラジウムイオンをパラジウム金属に還元し、次いで、パネルを、DI水で2分間すすぐ。
13.次いで、パネルを、上記の表1の無電解銅めっき組成物中に浸漬し、約36℃、12.7のpHで銅をめっきし、貫通孔壁上に5分間2MTO、6MTO、及び10MTOで銅を析出する。
14.次いで、銅めっきパネルを、流れている水道水で4分間すすぐ。
15.次いで、各銅めっきパネルを、圧縮空気で乾燥させる。
16.パネルの貫通孔の壁は、以下の手順を用いてICDについて試験する:貫通孔パネルは、pH1の塩酸溶液に2分間浸透させていかなる酸化物も除去する;次いで、20μmの電解銅厚みまで貫通孔部分の上に銅を電気めっきする;次いで、パネルを流れている水道水で10分間すすぎ、約125℃で6時間、オーブンで焼き付ける;焼き付けした後、貫通孔パネルは、約288℃ではんだ浴中にそれらを設置することによって、6回の10秒サイクルの熱膨張にそれらを曝露することによって熱応力される;熱応力後、パネルをエポキシ樹脂の上に埋め込み、この樹脂を硬化し、クーポンは、切断され、銅めっき壁を露出させるように貫通孔の中心に最も近くまで研磨される;樹脂中に埋め込まれたクーポンは、積層体における銅中間層、無電解銅層、及び電解銅層間の接点を露出させるように水酸化アンモニウム/過酸化水素の水性混合物でエッチングされる;ならびに、各パネルからの切断を、200倍率の従来の光学顕微鏡下に設置し、異なる銅層間の接点を検査する。
【0057】
合計で、積層材料当たり312個の接点を、ICDについて検査する。ICDは、積層体内の無電解銅層と銅中間層、または無電解銅層と電解銅層との間の分離である。積層当たりのICDを示す接点の総量を、試験した接点の総量の割合として表2に報告する。
以下の表2は、試験された各パネルに対するICDの平均(中央値)数を開示している。
【0058】
【表2】
【0059】
2MTO、6MTO、及び10MTOを通して、本発明の水性アルカリ性銅組成物を用いた無電解めっき後にICDの兆候を示したパネルの貫通孔はなかった。
【0060】
実施例4
本発明の無電解銅組成物の銅めっき速度対2,2’−チオジグリコール酸を含有する従来の無電解銅めっき組成物
本発明の以下の水性アルカリ性無電解銅めっき組成物が調製される。
【0061】
【表3】
【0062】
以下の比較水性アルカリ性無電解銅めっき組成物が調製される。
【0063】
【表4】
【0064】
各浴は、NPGN材料及び銅クラッディングから剥離されたFR/4ガラス−エポキシ積層体を無電解銅めっきするために使用される。積層体片は全て、5cm×10cmの大きさである。無電解めっき前に、剥離積層体は、約125℃で1時間焼き付け、積層体の重量は、無電解めっき前に記録される。無電解銅浴のpHは、室温で12.7であり、めっき温度は、約36℃である。無電解銅めっきは、5分間行われる。
【0065】
5分間めっきした後、基板をめっき浴から除去し、DI水で2分間すすぎ、約125℃で1時間焼き付けする。銅析出物の厚さは、焼き付けパネルの最終重量を測定し、重量増加を、パネル領域及び無電解銅厚さ密度を考慮に入れる析出厚さに変換することによって決定される。その速度は、厚さを、無電解めっき時間量で除算することによって算出し、μm/分で表された速度値を得る。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
無電解銅めっき結果は、本発明の無電解銅めっき浴が、1ppm〜20ppmのS−カルボキシメチル−L−システインの濃度範囲にわたって同じ銅速度で実質的にめっきすることを示し、これは、S−カルボキシメチル−L−システインの広範な濃度範囲にわたって安定した無電解銅浴を示す。対照的に、従来の比較無電解銅めっき浴は、2,2’−チオグリコール酸の濃度が1ppmから20ppmに増加する場合に、銅めっき厚さの減少を示し、それにより、2,2’−チオグリコール酸塩がめっき速度を抑制しない濃度範囲がはるかに減少することを示す。結果として、低温で高めっき速度を保持するために、より低量の2,2’−チオグリコール酸塩は、S−カルボキシメチル−L−システインとは対照的に使用されなければならず、S−カルボキシメチル−L−システインを含有するものほど安定しない2,2’−チオグリコール酸塩を含有する組成物を作製する。
【0069】
実施例5
無電解銅浴の安定性及びパラジウム金属負荷
以下の2つの無電解銅めっき浴が、調製される。
【0070】
【表7】
【0071】
各浴のpH=12.7及び作製時の浴の温度は、室温である。
【0072】
各浴は、銅クラッディングから剥離されたNPGN材料のFR/4ガラス−エポキシ積層体を無電解銅めっきするために使用される。無電解銅めっきは、pH=12.7及び約35℃の浴温度で5分間行われる。各浴中の安定剤の量は、剥離パネル上の0.12μm/分を超えるめっき速度の無電解銅を可能にする濃度で決定される。コロイドパラジウム−スズ触媒(Dow Electronic Materialsから入手可能なCATAPOSIT(商標)パラジウム−スズ触媒)が、無電解めっきプロセスで使用される。触媒の量は、触媒からのパラジウム浸出及び高濃度のパラジウム金属に対する各浴の耐性をシミュレートするために、以下の表に示される、パラジウム金属濃度を提供するように異なる。
【0073】
【表8】
【0074】
本発明の水性アルカリ性無電解銅浴である浴17は、銅浴中のパラジウム金属濃度の増加にわたって均一な銅めっき速度を示し、パラジウム金属浸出にわたって良好な浴安定性を示す。対照的に、浴18は、従来の比較浴であり、パラジウム金属の量が0ppmである、銅めっきを示す。しかしながら、金属パラジウム濃度は、1ppm以上であり、無電解浴は、迅速に分解し、結果として剥離パネル上で明らかである銅めっきは示されない。
図1