(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687705
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】起毛加工システム
(51)【国際特許分類】
A43D 37/00 20060101AFI20200421BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
A43D37/00
G06T1/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-208731(P2018-208731)
(22)【出願日】2018年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-98159(P2019-98159A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2018年11月6日
(31)【優先権主張番号】106141300
(32)【優先日】2017年11月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518083788
【氏名又は名称】パオ チェン コン イエ クー フェン ユー シェン コン スー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シュイ チェン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン イン チー
(72)【発明者】
【氏名】チョアン テイン シュエ
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−130905(JP,A)
【文献】
特開2016−142592(JP,A)
【文献】
特開昭58−087603(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0656743(KR,B1)
【文献】
中国特許出願公開第104643409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
A43C 1/00−19/00
A43D 1/00−999/00
B29D 35/00−35/14
G01N 21/84−21/958
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
G06T 1/00−1/40
G06T 3/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴のアッパーの外表面に延伸する所定の経路に沿って該外表面に起毛部を形成する起毛加工装置と、
前記起毛部を画像化する画像化装置と、を備える起毛加工システムであって、
前記画像化装置は、
前記所定の経路に平行するように移動しながら、所定の時間が経つと、所在位置に対応する前記起毛部の一部を撮影する第1の撮影モード、及び、所定の距離を移動すると、所在位置に対応する前記起毛部の一部を撮影する第2の撮影モード、のうちのいずれかのモードに従って、前記起毛部の一部を撮影する動作を繰り返す撮影モジュールと、
前記撮影モジュールから、該撮影モジュールが逐一に撮った複数の部分的な画像を受信して、該複数の部分的な画像を1つの前記起毛部のパノラマ画像に合成する処理モジュールと、を備え、
前記撮影モジュールは、前記起毛加工装置が前記所定の経路に沿って前記アッパーを起毛加工する間に前記所定の経路と平行する経路に沿って移動するように前記起毛加工装置に設置されている、ことを特徴とする起毛加工システム。
【請求項2】
前記起毛加工装置は、前記アッパーの前記外表面に前記起毛部を形成できる起毛用砥石と、前記起毛用砥石が設置され、前記起毛用砥石を前記所定の経路に沿って移動させて起毛加工を行うロボットアームと、前記外表面に前記起毛部を形成するように前記起毛用砥石を回転駆動するモーターと、により構成されており、
前記撮影モジュールは、前記ロボットアームに設置されていて、前記ロボットアームに設置されている前記起毛用砥石と同期に移動できる保持フレームと、前記保持フレームに設置されていて、前記起毛部の画像を撮影するカメラと、により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の起毛加工システム。
【請求項3】
前記起毛加工装置は、前記アッパーの外表面に前記起毛部を形成できる起毛用砥石と、前記起毛用砥石が設置され、前記起毛用砥石を前記所定の経路に沿って移動させるロボットアームと、前記外表面に前記起毛部を形成するように前記起毛用砥石を回転駆動するモーターと、により構成されており、
前記撮影モジュールは、前記ロボットアームに設置されている前記起毛用砥石を追跡して移動できるように構成されている保持フレームと、前記保持フレームに設置されていて、前記起毛部の画像を撮影するカメラと、により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の起毛加工システム。
【請求項4】
前記処理モジュールは、前記撮影モジュールから逐一に撮った複数の部分的な画像のそれぞれに対してエッジ検出を行い、前記起毛部に属する部分の画像である目標画像を切り出した後、互いに接合して1つの前記起毛部のパノラマ画像に合成するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の起毛加工システム。
【請求項5】
前記処理モジュールは、前記接合の際に、複数の目標画像を、撮影された順で1つの前記起毛部のパノラマ画像に合成するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の起毛加工システム。
【請求項6】
前記画像化装置は、前記処理モジュールにより合成された前記起毛部のパノラマ画像を示すディスプレーを更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の起毛加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は起毛加工システムに関し、特に、画像化装置を備えた、靴製造用の起毛加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
靴の製造過程において、接着剤で靴のアッパーにソールを接着する前に、アッパーとソールとの接着力を上げるために、アッパーの外表面におけるソールと接着する部分を起毛加工してアッパーの外表面を起毛させてからアッパーとソールとを接着する。その加工により、投錨効果でアッパーとソールとの間の接着力が上がる。例えば、特許文献1の起毛加工装置は、
図1に示されるように、起毛加工装置1の円盤状の起毛用砥石11がアッパー2の外表面に沿って一周回って移動しながらアッパー2の外表面を起毛させて、アッパー2の外表面に起毛部21を形成する。
【0003】
接着剤による接着力は、起毛部21の深さ、幅、起毛具合などの状態により影響されるので、起毛部21を形成した後、起毛部21の状態を検査する必要がある。
【0004】
従来の起毛部21の状態に対する検査は、人工で直接にアッパー2を持ち上げて、アッパー2の輪郭をなぞるように、その外表面に形成された起毛部21を観察することにより、起毛部21の状態を検査するので、検査の速度が遅いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】台湾特許第I583319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査の効率を上げるために、起毛部21の写真または映像を撮った後、写真または映像を検査する方法が提出されたが、映像で検査する場合は、映像を全部見ないとならなく、写真で検査する場合は、起毛部21を各角度から撮った大量の写真を検査しなければならないので、効率の向上はあまり効果がない。
【0007】
従って、本発明は、上記の問題点を解消できる画像化装置を備える起毛加工システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、靴のアッパーの外表面に延伸する所定の経路に沿って該外表面に起毛部を形成する起毛加工装置と、前記起毛部を画像化する画像化装置と、を備える起毛加工システムであって、前記画像化装置は、前記所定の経路に平行するように移動しながら、所定の時間が経つと、所在位置に対応する前記起毛部の一部を撮影する第1の撮影モード、及び、所定の距離を移動すると、所在位置に対応する前記起毛部の一部を撮影する第2の撮影モード、のうちのいずれかのモードに従って、前記起毛部の一部を撮影する動作を繰り返す撮影モジュールと、前記撮影モジュールから、該撮影モジュールが逐一に撮った複数の部分的な画像を受信して、該複数の部分的な画像を1つの前記起毛部のパノラマ画像に合成する処理モジュールと、を備えることを特徴とする起毛加工システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の起毛加工システムは、靴のアッパーの外表面に形成された起毛部を1つのパノラマ画像に合成する画像化装置を備えるので、目視によりまたは検査装置で1つのパノラマ画像を検査することにより起毛部の状態を検査することができる。従って、従来より検査の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の靴のアッパー面を起毛加工することを示す図である。
【
図2】本発明の起毛加工システムの第1の実施形態を示す図である。
【
図3】上記起毛加工システムで起毛加工を行う加工経路を示す図である。
【
図4】上記起毛加工システムで撮った起毛部の画像を示す図である。
【
図5】上記起毛加工システムで合成したパノラマ画像9を示す図である。
【
図6】本発明の起毛加工システムの第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る起毛加工システムの各実施形態について詳しく説明する。
<第1の実施形態>
図2は本発明の起毛加工システムの第1の実施形態を示す図である。
図3は上記起毛加工システムで起毛加工を行う加工経路を示す図である。
図4は上記起毛加工システムで撮った起毛部の画像を示す図である。
図5は上記起毛加工システムで合成したパノラマ画像9を示す図である。
【0012】
本発明の起毛加工システムは、
図2に示されるように、靴のアッパー3の外表面32に延伸する所定の経路L(
図3に示される)に沿って外表面32に起毛部31を形成する起毛加工装置4と、起毛部31を画像化する画像化装置と、を備えるものである。
【0013】
なお、本発明の起毛加工装置による起毛とは、平坦な表面を毛羽立たせて、粗面化することである。
【0014】
起毛加工装置4は、アッパー3の外表面32に起毛部31を形成できる起毛用砥石41と、起毛用砥石41が設置され、起毛用砥石41を所定の経路Lに沿って移動させながら起毛加工を行うロボットアーム42と、靴のアッパー3の外表面32に起毛部31を形成するように起毛用砥石41を回転駆動するモーター43とを備える。
【0015】
この実施形態において、起毛部31は連続的に形成される。
【0016】
前記画像化装置は、
図2に示されるように、撮影モジュール5と、処理モジュール6と、ディスプレー7とを備える。
【0017】
撮影モジュール5は、ロボットアーム42に設置されていて、ロボットアーム42に設置されている起毛用砥石41と同期に移動できる保持フレーム51と、保持フレーム51に設置されていて、起毛部31の画像を撮影するカメラ52と、により構成されている。
【0018】
撮影モジュール5は、ロボットアーム42の移動と共に所定の経路Lに平行するように移動しながら、所定の時間が経つと、所在位置に対応する起毛部31の一部を撮影する第1の撮影モード、及び、所定の距離を移動すると、所在位置に対応する起毛部31の一部を撮影する第2の撮影モード、のうちのいずれかのモードに従って、起毛部31の一部を撮影する動作を繰り返して、撮った起毛部31の一部の画像8を処理モジュール6に送信する。
【0019】
第1の撮影モード及び第2の撮影モードにおける時間及び距離のインターバルは、必要に応じて適宜に設定することができる。例えば、第1の撮影モードは、10秒間移動する毎に所在位置に対応する起毛部31の一部を撮影するように設定することができ、第2の撮影モードは、2.8cm移動する毎に所在位置に対応する起毛部31の一部を撮影するように設定することができる。
【0020】
処理モジュール6は、
図4に示されるように、撮影モジュール5から逐一に撮った複数の部分的な画像8を受信して、複数の画像8のそれぞれをエッジ検出且つ画像認識して、所定の演算法により必要ない部分を切り捨て、起毛部31に属する部分(即ち起毛部31とその周辺)の画像である目標画像81を切り出した後、
図5に示されるように、互いに接合して1つの起毛部31のパノラマ画像9に合成するように構成されている。
【0021】
この実施形態において、起毛部31及び起毛部31から上下所定の広さの範囲内のアッパーが写されている部分を目標画像81とし、そして、複数の目標画像81を接合する際に、複数の目標画像81を、撮影された順で1つの前記起毛部31のパノラマ画像9(例えば全周パノラマ)に合成するように構成されている。
【0022】
処理モジュール6として、例えばシングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、デュアルコアモバイルプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)などが挙げられる。
【0023】
また、上記エッジ検出、画像認識及び演算法は、一般の画像処理またはパノラマ画像の合成に使用する公知の技術を使用することができる。
【0024】
ディスプレー7は、前記処理モジュール6により合成された前記起毛部31のパノラマ画像9を表示するものである。
【0025】
上記の構成によれば、靴のアッパー3の外表面32に形成された起毛部21を検査する時に、検査者による目視または検査装置で、ディスプレー7に示されている1つのパノラマ画像9を検査するだけで、検査者の経験または検査装置の検査機能によって起毛部21の深さ、幅、起毛具合などの状態を検査することができ、従来の複数の写真を検査することによる検査より速く検査でき、検査の効率を大幅に向上できる。
【0026】
なお、処理モジュール6にパノラマ画像9における起毛部21を検査できる運算法などを追加すると、処理モジュール6を検査装置として使用できる。
<第2の実施形態>
図6は、本発明の起毛加工システムの第2の実施形態を示す図である。
【0027】
本発明の第2の実施形態は、上記第1の実施形態と多くの構成が共通するので、ここでは詳しい説明を省略し、その相違点のみを説明する。
【0028】
この実施形態の起毛加工システムにおいて、
図6に示されるように、撮影モジュール5は、ロボットアーム42に設置されている起毛用砥石41を追跡して移動できるように構成されている保持フレーム51と、保持フレーム51に設置されていて、起毛部31の画像を撮影するカメラ52と、により構成されている。
【0029】
保持フレーム51は、ロボットアーム42に設置されている起毛用砥石41を追跡して移動できる他のロボットアームに設置されることにより移動することができ、または、地面に設置されていて所定の経路Lと実質的に同じ形状を有するループ状に沿って移動できる移動装置(図示せず)に設置されることにより、ロボットアーム42に設置されている起毛用砥石41を追跡して移動することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の起毛加工システムは、靴のアッパーの外表面に起毛部を形成しながら起毛部の状態を検査するのに特に好適である。
【符号の説明】
【0031】
3 アッパー
31 起毛部
32 外表面
4 起毛加工装置
41 起毛用砥石
42 ロボットアーム
43 モーター
5 撮影モジュール
51 保持フレーム
52 カメラ
6 処理モジュール
7 ディスプレー
8 画像
81 目標画像
9 パノラマ画像
L 所定の経路