(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記遠心圧縮機が前記所定容量未満で動作する場合、前記インペラと前記ディフューザとの間の前記領域にインジェクションする液冷媒の量を制御するように更にプログラミングされている、
請求項1に記載の遠心圧縮機。
前記コントローラは、前記モータの回転速度と前記入口案内羽根の位置とに基づいて、前記遠心圧縮機が前記所定容量未満で動作していることを判断するように更にプログラミングされている、
請求項1に記載の遠心圧縮機。
前記コントローラは、前記モータの回転速度が所定の値を超えた場合、前記インペラと前記ディフューザとの間の前記領域への液冷媒のインジェクションを停止するように更にプログラミングされている、
請求項1に記載の遠心圧縮機。
前記コントローラは、前記遠心圧縮機が前記所定容量未満で動作する場合、前記開度可変の膨張弁を制御して、前記インペラと前記ディフューザとの間の前記領域に液冷媒をインジェクションするように更にプログラミングされている、
請求項9に記載の遠心圧縮機。
前記コントローラは、前記入口案内羽根の前記位置が所定の位置値を超えて移動した場合、前記インペラと前記ディフューザとの間の前記領域への液冷媒のインジェクションを停止するように更にプログラミングされている、
請求項11に記載の遠心圧縮機。
前記コントローラは、前記遠心圧縮機が動作停止に近付いている場合、前記インペラと前記ディフューザとの間の前記領域への液冷媒のインジェクションを停止するように更にプログラミングされている、
請求項11に記載の遠心圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、選択した実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態の説明は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物で定義される本発明を限定するためのものでないことは、本開示から当業者に明らかであろう。
【0029】
まず
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るチラーシステム10を説明する。チラーシステム10は、液インジェクション通路12及びホットガスバイパス14を備える。
図2に示すように、液インジェクション通路12は、基本的に、第1のパイプセクション12aと、第2のパイプセクション12bと、液インジェクション弁16とを備える。
図3に示すように、ホットガスバイパス14は、基本的に、第1のパイプセクション14aと、第2のパイプセクション14bと、ホットガス弁18と、を備える。
【0030】
図1に示すように、チラーシステム10は、液インジェクション通路12とホットガスバイパス14との両方を備える。本発明の別の実施形態によれば、チラーシステム10において、液インジェクション通路12又はホットガスバイパス14を省いてもよい。より具体的には、
図2に示すように、チラーシステム10’はホットガスバイパス14を備えておらず、
図3に示すように、チラーシステム10’’は液インジェクション通路12を備えていない。このように、チラーシステムは、液インジェクションとホットガスインジェクションとの両方を使用することも、又は液インジェクションとホットガスインジェクションとのいずれかを使用することもできる。
【0031】
チラーシステム10は、好ましくは、従来の方法で冷却水及びチラー水を利用する水冷チラーである。本開示に示すチラーシステム10は、単段チラーシステムである。ただし、チラーシステム10が多段チラーシステムでもよいことは、本開示から当業者に明らかであろう。チラーシステム10は基本的に、チラーコントローラ20と、圧縮機22と、凝縮器24と、膨張弁26と、蒸発器28とを備え、これらの部品は互いに直列に接続されてループ冷凍サイクルを形成している。さらに、
図1に示すように、この回路に亘って各種センサS及びTが配置されている。チラーシステム10は、本発明に従って液インジェクション通路12及びホットガスバイパス14を有していることを除き、従来のものである。
【0032】
図1〜5を参照すると、この例示実施形態において、圧縮機22は遠心圧縮機である。この例示実施形態の遠心圧縮機22は、基本的に、ケーシング30と、入口案内羽根32と、インペラ34と、ディフューザ36と、モータ38と、磁気軸受アセンブリ40とを備え、従来の各種センサ(いくつかのみ図示)も備えている。チラーコントローラ20は、以下で更に詳細に説明するように、各種センサから信号を受信し、入口案内羽根32、モータ38、及び磁気軸受アセンブリ40を従来の方法で制御する。冷媒は、入口案内羽根32、インペラ34、及びディフューザ36を順に流れる。入口案内羽根32は、インペラ34に入る冷媒ガスの流量を従来の方法で制御する。インペラ34は、冷媒ガスの圧力をほぼ変更することなく、その速度を増加させる。モータ速度によって、冷媒ガスの速度の増加量が決まる。ディフューザ36は、冷媒速度を変化させることなく冷媒圧力を増加させる。ディフューザ36は、ケーシング30に対して動かないように固定されている。モータ38は、シャフト42を介してインペラ34を回転させる。磁気軸受アセンブリ40は、シャフト42を磁気的に支持する。このようにして、冷媒は、遠心圧縮機22で圧縮される。
【0033】
チラーシステム10は従来のものではあるが、本発明に従って液インジェクション通路12及びホットガスバイパス14を有している。上述し、更に詳細に後述するように、液インジェクション通路12又はホットガスバイパス14は省略可能である(
図2及び
図3参照)。以下でより詳細に説明するように、液インジェクション通路12がチラーシステム10内に設けられ、インペラ34とディフューザ36との間に位置するディフューザ36の進入(開始)部分に液冷媒がインジェクションされる。
図1及び2に示すように、液インジェクション通路12は、第1のパイプセクション12aと、第2のパイプセクション12bと、それらの間に配置された液インジェクション弁16と、を備える。第1のパイプセクション12aは、凝縮器24の出口ポート(底部)から液インジェクション弁16まで延びている。第2のパイプセクション12bは、液インジェクション弁16から、インペラ34とディフューザ36との間に位置するディフューザ36の進入部分まで延びている。このようにして、凝縮器24で冷却された液冷媒は、インペラ34とディフューザ36との間に位置するディフューザ36の進入部分にインジェクションされる。
【0034】
図6を参照すると、液インジェクション通路12に配置された液インジェクション弁16は、液インジェクション通路12を通過する液冷媒の量「m」を調整する。以下で説明するように、液インジェクション弁16は、チラーコントローラ20の液インジェクション通路制御セクション68に連結されている。以下でより詳細に説明するように、液インジェクション通路制御セクション68は、液インジェクション弁16を制御して、インペラ34とディフューザ36との間に位置するディフューザ36の進入部分に注入される液冷媒の量「m」を調整するようにプログラミングされている。
【0035】
液インジェクション弁16は、電磁弁でも、開度可変の膨張弁でもよい。電磁弁は、ソレノイドによって制御される電気機械式の弁であり、流れが間断的にオン又はオフに切り換えられる。開度可変の膨張弁は、その開度が調整可能であるように構成された電気機械式の弁である。開度可変の膨張弁の例としては、ボール弁や電動弁が挙げられる。液インジェクション弁16は、単一の弁でも複数の弁でもよい。例えば、複数の電磁弁を互いに並列に配置してもよい。液インジェクション弁16は、液インジェクション通路制御セクション68に連結されたタイマで制御され、所定の時間量が経過した場合に自動的に開閉されてもよい。
【0036】
以下でより詳細に説明するように、チラーシステム10にホットガスバイパス14を設けて、入口案内羽根32とインペラ34との間に高温ガス冷媒(Hot Gas Refrigerant)をインジェクションする。
図1及び3に示すように、ホットガスバイパス14は、第1のパイプセクション14aと、第2のパイプセクション14bと、それらの間に配置されたホットガス弁18とを備える。第1のパイプセクション14aは、圧縮機22の吐出側からホットガス弁18まで延びている。第2のパイプセクション14bは、ホットガス弁18から、入口案内羽根32とインペラ34との間の領域に向かって延びている。このようにして、圧縮機22で圧縮された高温ガス冷媒は、入口案内羽根32とインペラ34との間にインジェクションされる。
【0037】
ホットガスバイパス14内に配置されたホットガス弁18は、ホットガスバイパス14を通過する高温ガス冷媒の量を調整する。以下で説明するように、ホットガス弁18は、チラーコントローラ20のホットガスバイパス制御セクション69に連結されている。以下でより詳細に説明するように、ホットガスバイパス制御セクション69は、ホットガス弁18を制御して、入口案内羽根32とインペラ34との間に注入される高温ガス冷媒の量を調整するようにプログラミングされている。
【0038】
ホットガス弁18は、電磁弁でも、開度可変の膨張弁でもよい。電磁弁は、ソレノイドによって制御される電気機械式の弁であり、この弁において流れが間欠的にオン又はオフに切り換えられる。開度可変の膨張弁は、その開度が調整可能であるように構成された電気機械式の弁である。開度可変の膨張弁の例としては、ボール弁や電動弁が挙げられる。ホットガス弁18は、単一の弁でも複数の弁でもよい。例えば、複数の電磁弁を互いに並列に配置してもよい。ホットガス弁18は、ホットガスバイパス制御セクション69に連結されたタイマで制御され、所定の時間量が経過した場合に自動的に開閉されてもよい。
【0039】
図4及び5を参照すると、磁気軸受アセンブリ40は従来のものである。したがって、磁気軸受アセンブリ40は、本発明に関連する内容を除き、ここでは詳細に説明及び/又は図示しない。つまり、本発明から逸脱することなく好適な磁気軸受であればいずれも使用可能であることは、当業者には明らかであろう。
図4からわかるように、磁気軸受アセンブリ40は、好ましくは、第1のラジアル磁気軸受44と、第2のラジアル磁気軸受46と、アキシャル(スラスト)磁気軸受48と、を備える。いずれの場合も、少なくとも1つのラジアル磁気軸受44又は46がシャフト42を回転可能に支持する。スラスト磁気軸受48は、スラストディスク45に作用することによって、回転軸Xに沿ってシャフト42を支持する。スラスト磁気軸受48は、シャフト42に取り付けられたスラストディスク45を備える。
【0040】
スラストディスク45は、シャフト42から、回転軸Xに垂直な方向へ径方向に延び、シャフト42に対して固定されている。回転軸Xに沿ったシャフト42の位置(軸方向位置)は、本発明に従ってスラストディスク45の軸方向位置によって制御される。第1のラジアル磁気軸受44と第2のラジアル磁気軸受46とは、モータ38の両側の軸方向端部に配置される、又は、モータ38に対して同じ軸方向端部に配置されてもよい(不図示)。以下でより詳細に説明する各種センサは、磁気軸受44、46、48に対するシャフト42の径方向位置及び軸方向位置を感知し、従来の方法でチラーコントローラ20に信号を送信する。次いで、チラーコントローラ20は、磁気軸受44、46、48に送られる電流を従来の方法で制御して、シャフト42を正しい位置で維持する。磁気軸受アセンブリ40の磁気軸受44、46、48等の磁気軸受及び磁気軸受アセンブリの動作は、当該技術分野において周知であるため、磁気軸受アセンブリ40について、ここでは詳細に説明及び/又は図示しない。
【0041】
磁気軸受アセンブリ40は、好ましくは、能動型磁気軸受44、46、48の組み合わせであり、非接触型位置センサ54、56、58を利用してシャフト位置を監視し、シャフト位置を示す信号をチラーコントローラ20に送信する。したがって、磁気軸受44、46、48は、それぞれ、好ましくは能動型磁気軸受である。磁気軸受制御セクション61は、この情報を使用して、磁気アクチュエータへの必要な電流を調整し、径方向及び軸方向の両方において適切なロータ位置を維持する。能動型磁気軸受は当技術分野において周知であるため、ここでは詳細に説明及び/又は図示しない。
【0042】
図1、13、14を参照すると、チラーコントローラ20は、磁気軸受制御セクション61と、サージ予測セクション62と、サージ制御セクション63と、可変周波数ドライブ64と、モータ制御セクション65と、入口案内羽根制御セクション66と、膨張弁制御セクション67と、を備える。上述したように、チラーコントローラ20は、液インジェクション通路制御セクション68及びホットガスバイパス制御セクション69を更に備えている。磁気軸受制御セクション61、サージ予測セクション62、サージ制御セクション63、可変周波数ドライブ64、モータ制御セクション65、入口案内羽根制御セクション66、液インジェクション通路制御セクション68、及びホットガスバイパス制御セクション69は互いに連結されており、圧縮機22のI/Oインターフェース50に電気的に連結された遠心圧縮機制御部分のパーツを形成している。
【0043】
磁気軸受制御セクション61が、磁気軸受アセンブリ40のいくつかの部分に接続され、チラーコントローラ20の様々なセクションと通信するため、チラーコントローラ20の様々なセクションは、圧縮機22のセンサ54、56、58からの信号を受信し、演算を行い、磁気軸受アセンブリ40等の圧縮機22のパーツに制御信号を送信することができる。同様に、チラーコントローラ20の様々なセクションは、センサS及びTからの信号を受信し、演算を行い、圧縮機22(例えば、モータ)及び膨張弁26に制御信号を送信することができる。制御セクション及び可変周波数ドライブ64は、別個のコントローラであっても、又は本開示に記載するパーツの制御を実行するようにプログラミングされたチラーコントローラの単にセクションであってもよい。言い換えると、本開示で説明するように、1つ以上のコントローラがチラーシステム10のパーツの制御を実行するようにプログラミングされている限り、制御セクション、制御部分、及び/又はチラーコントローラ20の厳密な数、場所、及び/又は構造が本発明から逸脱することなく変更可能であることは、本開示から当業者に明らかであろう。
【0044】
チラーコントローラ20は従来のものであり、従って少なくとも1つのマイクロプロセッサ又はCPUと、入出力(I/O)インターフェースと、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)と、リード・オンリ・メモリ(ROM)と、(一時又は永久)記憶装置とを備え、1つ以上の制御プログラムを実行することによってチラーシステム10を制御するようにプログラミングされたコンピュータ可読媒体を形成している。チラーコントローラ20は、任意で、キーパッド等のユーザからの入力を受信する入力インターフェースと、ユーザに対して各種パラメータを表示するために使用される表示装置とを備えてもよい。これらのパーツ及びプログラミングは、サージの制御に関する内容以外は従来のものであるため、実施形態の理解に必要である場合を除き、ここでは詳細に説明しない。
<液インジェクション>
【0045】
ここで、
図1、2、6〜8を参照して、チラーシステム10における液インジェクション動作をより詳細に説明する。
【0046】
上述したように、圧縮機22が小容量で動作する場合、サージが起こらないように液インジェクションが行われる。この液インジェクション動作において、液冷媒が、液インジェクション通路12を通って、インペラ34とディフューザ36との間に位置するディフューザ36の進入部分にインジェクションされる。液インジェクション弁16を開閉することにより、液インジェクション通路12を通過する液冷媒の量が調整される。液インジェクション通路制御セクション68は、圧縮機22が小容量で動作すると判断した場合には液インジェクション弁16を開閉するようにプログラミングされている。例示実施形態では、以下でより詳細に説明するように、液インジェクション通路制御セクション68は、モータ38のrpm及び入口案内羽根32の位置に基づいて圧縮機22が小容量で動作するか否かを判断するようにプログラミングされている。
【0047】
図6を参照すると、ディフューザ36のための従来の可動壁を使用せずに、ディフューザ36の進入部分に液冷媒Lをインジェクションすることによって、ディフューザ36の通路の空隙G
1を狭めることができる。より具体的には、インジェクションされた液冷媒Lがディフューザ36の通路内で占める面積が大きくなると、ディフューザ36の経路内のガスの割合は、
図6に空隙G
2として示すように小さくなり、これにより、ディフューザ36の通路でのガス速度を増加させることができる。ディフューザ36の通路でのガス速度を増加させることによって、ディフューザ36の圧力が増加され、従ってサージを起こす背圧を低下させることができる。また、圧縮機22が小容量で動作する場合、ガス速度が増加するにつれて圧縮機22の動作範囲を拡大することもできる。さらに、本発明によれば、インジェクションする液冷媒の量を調整することによって、ディフューザ36の通路の空隙を容易に制御することができ、したがって、圧縮機22の全負荷条件と低負荷条件との両方に関してディフューザ36の性能を容易に最適化することができる。
【0048】
次に、
図7及び8を参照して、第1及び第2の液インジェクション制御方法を詳細に説明する。液インジェクション弁16として電磁弁が使用される第1の液インジェクション制御方法(
図7)と、液インジェクション弁16として開度可変の膨張弁が使用される第2の液インジェクション制御方法(
図8A)とを詳細に説明する。第1及び第2の液インジェクション制御方法は、同じ目標、すなわちサージ制御を実現することができる。しかし、弁が異なるため、異なる工程が用いられる。
【0049】
図7に示す第1の液インジェクション制御方法によれば、液インジェクション通路制御セクション68は、圧縮機22の始動後(S101)、まずモータ38のrpmが(A+3)%よりも大きいか否かを判断する(S102)ようにプログラミングされている。ここで、「A」は所定の値であり、「3」はマージンである。値「A」は、テスト中にサージが観測されたモータ38のrpmの閾値でよい。マージンを加えることで、サージが起こらないことを確実にすることができる。モータ38のrpmが(A+3)%よりも大きいと液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S102において「Yes」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は閉じられる。このときサージは起こらない。
【0050】
液インジェクション通路制御セクション68は、モータ38のrpmが(A+3)%以下であると判断した場合(S102において「No」)、S103に進み、圧縮機22が動作停止に近付いているか否かを判断する(S103)。例えば、圧縮機22の急停止が生じた場合に圧縮機22が動作停止に近付いていると判断するように液インジェクション通路制御セクション68はプログラミングされてもよい。圧縮機22の急停止は、圧縮機22に信号を送信し、その信号が圧縮機22から返送されるかを判断することによって監視することができる。また、急停止を検出した場合、アラームシステムが使用されてもよい。圧縮機22が動作停止に近付いていると液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S103において「Yes」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は閉じられる。
【0051】
一方、液インジェクション通路制御セクション68は、圧縮機22が動作停止に近付いていないと判断した場合(S103において「No」)、S104に進み、液インジェクション弁16のタイマが計時しているか否かを判断する(S104)。上述したように、タイマは、液インジェクション通路制御セクション68に連結されており、所定の時間量が経過した場合に液インジェクション弁(電磁弁)16を自動的に開閉させる。液インジェクション弁16のタイマが計時している場合(S104において「Yes」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は、現状のまま維持され、所定の時間が経過した場合に自動的に開閉される。
【0052】
S104において、液インジェクション弁16のタイマが計時していない場合(S104において「No」)、液インジェクション通路制御セクション68は、S105に進み、モータ38のrpmがA%未満であるか否かを判断する(S105)。モータ38のrpmがA%以上であると液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S105において「No」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は現状のまま維持される。
【0053】
一方、液インジェクション通路制御セクション68は、モータ38のrpmがA%未満であると判断した場合(S105において「Yes」)、S106に進み、入口案内羽根32の位置が(a+b)%よりも大きいか否かを判断する(S106)。ここで、「a」は所定の値であり、「b」はマージンである。値「a」は、テスト中にサージが観測された入口案内羽根32の位置の閾値であってもよい。マージン「b」は、サージが起こらないことを保証するように決定することができる。入口案内羽根32の位置が(a+b)%よりも大きいと液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S106において「Yes」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は閉じられる。
【0054】
S106において、液インジェクション通路制御セクション68は、入口案内羽根32の位置が(a+b)%以下であると判断した場合(S106において「Yes」)、S107に進み、入口案内羽根32の位置がa%未満であるか否かを判断する(S107)。S107において、液インジェクション通路制御セクション68は、入口案内羽根32の位置がa%未満であると判断した場合(S107において「Yes」)、圧縮機22が小容量で動作していると判断し、液インジェクション弁(電磁弁)16は開かれる。モータ38のrpm及び入口案内羽根32の位置が上記の範囲内(すなわち、モータ38のrpm<A%、及び入口案内羽根32の位置<a%)にある限り液インジェクション弁(電磁弁)16を開いたままにしておくように、液インジェクション通路制御セクション68をプログラミングすることができる。あるいは、入口案内羽根32の位置がa%以上に戻っていると液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合に、液インジェクション弁16のタイマをセットして所定の時間量を計時するように、液インジェクション通路制御セクション68をプログラミングすることができる。その後、所定の時間が経過した場合、液インジェクション弁(電磁弁)16は閉じる。例示実施形態では、この所定時間は60秒である。このようにすることで、たびたび弁16のオン/オフを切り替えなくてよくなる。
【0055】
S107において、入口案内羽根32の位置がa%以上であると液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S107において「No」)、液インジェクション弁(電磁弁)16は現状のまま維持される。
【0056】
上で説明した例示実施形態において、値「A」、「a」、及び「b」は、チラーシステム10の設置技師又は操作者がチラーシステム10の部品のサイズ又はモデルを考慮に入れながら所望値に設定することができる。あるいは、値「A」、「a」、及び「b」を、実験の結果に基づいて工場で設定することもできる。また、圧縮機22が始動してから5分以内には液インジェクション弁16が開かないように、液インジェクション通路制御セクション68を更にプログラミングすることもできる。
【0057】
図8Aに示す第2の液インジェクション制御方法によれば、液インジェクション通路制御セクション68は、圧縮機22の始動後(S201)、まず入口案内羽根32の位置がa%よりも大きいか否かを判断する(S202)ようにプログラミングされている。入口案内羽根32の位置がa%よりも大きいと液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S202において「Yes」)、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16は閉じられる。あるいは、S202において、モータ38のrpmがA%よりも大きいか否かを判断するように液インジェクション通路制御セクション68をプログラミングすることができる。
【0058】
液インジェクション通路制御セクション68は、入口案内羽根32の位置がa%以下であると判断した場合(S202において「No」)、S203に進み、圧縮機22が動作停止に近付いているか否かを判断する(S203)。例えば、圧縮機22の急停止が生じた場合に圧縮機22が動作停止に近付いていると判断するように、液インジェクション通路制御セクション68をプログラミングすることができる。この急停止は、圧縮機22に信号を送信し、その信号が圧縮機22から返送されるかどうかを判断することによって監視することができる。また、急停止を検出した場合、アラームシステムが使用されてもよい。圧縮機22が動作停止に近付いていると液インジェクション通路制御セクション68が判断した場合(S203において「Yes」)、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16は閉じられる。
【0059】
一方、液インジェクション通路制御セクション68は、圧縮機22が動作停止に近付いていないと判断した場合(S203において「No」)、S104に進み、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16を開く。S204では、関数f(圧力比、IGV)に基づいて、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16の開度が決定される。より具体的には、
図8Bに示すように、吐出圧力と吸入圧力との圧力比と入口案内羽根32の位置との関数fに基づいて、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16の開度が決定される。入口案内羽根32の位置がa%以下である場合には、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16が開かれるか否かが判断される。
図8Cを参照されたい。更に、
図8Dに示すように、入口案内羽根32の位置がa%以下の場合、吐出圧力と吸入圧力との圧力比に比例して液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16の開度が調整される。しかし、吐出圧力と吸入圧力との圧力比が1.5以下である場合には、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16は開かれない(閉じている)。また、吐出圧力と吸入圧力との圧力比が2.5を超える場合には、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16の開度は、吐出圧力と吸入圧力との圧力比が2.5である場合の開度で保たれる。
【0060】
液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16を開いた後、液インジェクション通路制御セクション68は、入口案内羽根32の位置を監視し続ける。液インジェクション通路制御セクション68が入口案内羽根32の位置がa%以上に戻ったと判断するまで、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16を開いたままにしておくように液インジェクション通路制御セクション68をプログラミングすることができる。液インジェクション通路制御セクション68は、入口案内羽根32の位置がa%以上に戻ったと判断した場合、液インジェクション弁(開度可変の膨張弁)16を閉じる。
【0061】
上で説明した例示実施形態において、値「a」は、チラーシステム10の設置技師又は操作者がチラーシステム10の部品のサイズ又はモデルを考慮に入れながら所望値に設定することができる。あるいは、値「a」は、実験の結果に基づいて工場で設定することもできる。また、圧縮機22が始動してから5分以内には液インジェクション弁16が開かれないように、液インジェクション通路制御セクション68を更にプログラミングすることもできる。
【0062】
チラーコントローラ20を、上述した液インジェクションを行った後にホットガスインジェクションが必要であるとチラーコントローラ20が判断した場合に、後述するホットガスインジェクションを行うように、プログラミングすることができる。
【0063】
<ホットガスインジェクション>
ここで、
図1、3、9、10を参照して、チラーシステム10におけるホットガスインジェクション動作をより詳細に説明する。
【0064】
ホットガスインジェクションでは、ホットガスバイパス14を通して、入口案内羽根32とインペラ34との間に高温ガス冷媒がインジェクションされる。ホットガス弁18を開閉することにより、ホットガスバイパス14を通過する高温ガス冷媒の量が調整される。以下でより詳細に説明するように、ホットガスバイパス制御セクション69は、ホットガス弁18を開閉するようにプログラミングされている。
【0065】
図9を参照すると、高温ガス冷媒は、入口案内羽根32とインペラ34との間の領域にインジェクションされる。入口案内羽根32とインペラ34との間の領域での圧力P2は、従来の技術に従って高温ガス冷媒がインジェクションされる圧縮機22の吸入側での圧力P1よりも小さい。パイプ内のガスの流量は、圧力差とパイプの内径とに基づいて決定される。より具体的には、圧力差が大きくなる場合、パイプの内径が小さければ、高い流量を実現することができる。したがって、圧力P1よりも小さい圧力P2の領域に高温ガス冷媒をインジェクションすることによって、圧力差ΔP2(圧縮機の吐出側での圧力−P2)が圧力差ΔP1(圧縮機の吐出側での圧力−P1)よりも大きいため、より小さい直径のパイプで十分に高いガス流量を実現することができる。このようにして、本発明によるホットガスバイパス16としては小型のパイプを使用することができる。
【0066】
さらに、入口案内羽根32とインペラ34との間の領域ではガス乱流が生じ易く、そのようなガス乱流が生じると、磁気軸受において入口案内羽根の開放位置が小さいときにはシャフトが振動する。入口案内羽根32とインペラ34との間の領域に高温ガス冷媒をインジェクションすることによって、そのようなガス乱流を低減することができ、磁気軸受におけるシャフト振動を抑えることができる。
【0067】
図10Aに示すホットガスインジェクション制御方法によれば、ホットガスバイパス制御セクション69は、圧縮機22の始動後(S301)、現在の蒸発器28の出口での水温が所定値未満であるか否かを判断する(S302)ようにプログラミングされる。本明細書では、以後、蒸発器28の出口での水温をEOWTと呼ぶ。S302での所定の値は、EOWTの目標値と不感帯値(dead band value)との差に基づいて決定される。ここで、目標値は、設置技師又は操作者がチラーシステム10の部品のサイズやモデルを考慮に入れて設定するEOWTの所望値である。不感帯値は、その後のチラープロセスにおいて、EOWTの変化に対して観測可能な応答が生じない値の範囲である。EOWTの目標値及び不感帯値は、実験の結果に基づいて工場で設定することができる。
【0068】
ホットガスバイパス制御セクション69は、現在のEOWTが所定値未満であると判断した場合(S302において「Yes」)、S303に進み、入口案内羽根32の位置が最小位置%未満であるか否かを判断する(S303)。
【0069】
S303において、入口案内羽根32の位置が最小位置%未満であるとホットガスバイパス制御セクション69が判断した場合(S303において「はい」)、ホットガス弁18が開かれ、入口案内羽根32は現在の位置に留まるように制御される。ホットガスバイパス制御セクション69を、現在のEOWTが目標値に達するようにホットガス弁18を開いたままにしておくよう更にプログラミングすることができる。
【0070】
S303において、入口案内羽根32の位置が最小位置%以上であるとホットガスバイパス制御セクション69が判断した場合(S303において「No」)、入口案内羽根32は閉じられる。
【0071】
一方、S302において、ホットガスバイパス制御セクション69は、現在のEOWTが所定値以上であると判断した場合(S302において「No」)、S304に進み、EOWTの現在の値と目標値との差の絶対値が不感帯値未満であるか否かを判断する(S304)。
【0072】
S304において、EOWTの現在の値と目標値との差の絶対値が不感帯値未満であるとホットガスバイパス制御セクション69が判断した場合(S304において「Yes」)、ホットガス弁18及び入口案内羽根32は、現在の位置に留まるように制御される。S304において、ホットガスバイパス制御セクション69は、EOWTの現在の値と目標値との差の絶対値が不感帯値以上であると判断した場合(S304において「No」)、S305に進み、ホットガス弁18の位置が0%よりも大きいか否かを判断する(S305)。
【0073】
S305において、ホットガス弁18の位置が0%よりも大きいとホットガスバイパス制御セクション69が判断した場合(S305において「Yes」)、ホットガス弁18は閉じられ、入口案内羽根32は現在の位置に留まるように制御される。一方、S305において、ホットガス弁18の位置が0%以下であるとホットガスバイパス制御セクション69が判断した場合(S305において「No」)、入口案内羽根32は開かれる。ホットガスバイパス制御セクション69は、ホットガスインジェクション弁18を閉じてゼロ位置に戻し、その後、遠心圧縮機22の要求負荷が増加した場合に入口案内羽根32を開くように、更にプログラミングされてもよい。
【0074】
圧縮機22の始動後(S301)、ホットガスバイパス制御セクション69は、S306に進んでもよい。S306において、ホットガスバイパス制御セクション69は、入口案内羽根32の位置がa%未満であるか否かを判断する。「a」は所定の値である。値「a」は、テスト中にサージが観測された入口案内羽根32の位置の閾値であってもよい。ホットガスバイパス制御セクション69は、入口案内羽根32の位置がa%未満であると判断した場合(S306において「Yes」)、S307に進み、磁気軸受44、46、48の位置が所定の軌道範囲外であるか否かを判断する(S307)。ここで、以下でより詳細に説明するように、磁気軸受制御セクション61を介して位置センサ54、56、58からの信号を受信して磁気軸受アセンブリ40の磁気軸受44、46、48の位置を決定するように、ホットガスバイパス制御セクション69をプログラミングすることができる。
【0075】
ホットガスバイパス制御セクション69は、磁気軸受44、46、48の位置が所定の軌道範囲外であると判断した場合、ホットガス弁18を開いて、磁気軸受44、46、48を所定の軌道範囲内の位置に戻す。ホットガス弁18を開くこのプロセスは、ホットガス弁18を閉じる、ホットガス弁18を現在の位置に留まるように制御する上記プロセスに優先して行われる。このようにして、ホットガス弁18を開いて、入口案内羽根32とインペラ34との間に高温ガス冷媒をインジェクションすることによって、入口案内羽根32とインペラ34との間の領域でのガス乱流を低減することができ、磁気軸受44、46、48におけるシャフト振動の大きさを抑えることができる。
【0076】
チラーコントローラ20は、磁気軸受44、46、48でのシャフト振動が許容レベルを超え、磁気軸受44、46、48の位置が所望の軌道範囲外になると、従来の方法で遠心圧縮機22を動作停止するようにプログラミングされている。S307において、磁気軸受44、46、48の所定の軌道範囲は、遠心圧縮機22が動作停止するように構成された際の磁気軸受44、46、48の軌道範囲よりも小さく設定することができる。
【0077】
チラーコントローラ20は、上述したホットガスインジェクションを行った後に、液インジェクションが必要であると判断した場合に、液インジェクションを行うようにプログラミングすることができる。
【0078】
磁気軸受制御セクション61は通常、磁気軸受アセンブリ40のセンサ54、56、58から信号を受信し、磁気軸受44、46、48に電気信号を送信して、従来の方法でシャフト42を所望位置に維持する。より具体的には、磁気軸受制御セクション61は、サージが予測されない通常動作中、磁気軸受制御プログラムを実行して、従来の方法でシャフト42を所望位置に維持するようにプログラミングされている。しかし、サージが予測される場合には、サージ制御セクション62及びアキシャル磁気軸受48を使用してシャフト42の軸方向位置を調整することができる。したがって、以下でより詳細に説明するように、シャフト42に固定されたインペラ34の軸方向位置をディフューザ36に対して調整することができる。
【0079】
可変周波数ドライブ64及びモータ制御セクション65は、少なくとも1つのモータセンサ(不図示)から信号を受信し、モータ38の回転速度を制御して、従来の方法で圧縮機22の容量を制御する。より具体的には、可変周波数ドライブ64及びモータ制御セクション65は、モータ制御プログラムを1つ以上実行してモータ38の回転速度を制御し、従来の方法で圧縮機22の容量を制御するようにプログラミングされている。入口案内羽根制御セクション66は、少なくとも1つの入口案内羽根センサ(不図示)から信号を受信し、入口案内羽根32の位置を制御して、従来の方法で圧縮機22の容量を制御する。より具体的には、入口案内羽根制御セクション66は、入口案内羽根制御プログラムを実行して入口案内羽根32の位置を制御し、従来の方法で圧縮機22の容量を制御するようにプログラミングされている。膨張弁制御セクション67は、膨張弁26の開度を制御して、従来の方法でチラーシステム10の容量を制御する。より具体的には、膨張弁制御セクション67は、膨張弁制御プログラムを実行して膨張弁26の開度を制御し、従来の方法でチラーシステム10の容量を制御するようにプログラミングされている。モータ制御セクション65及び入口案内羽根制御セクション66は協働し、膨張弁制御セクション67と共に、従来の方法でチラーシステム10の全体の容量を制御する。チラーコントローラ20は、センサS、並びに、任意でセンサTから信号を受信することによって、従来の方法で全体の容量を制御する。任意のセンサTは、温度センサである。センサSは、好ましくは、上記制御を行うために従来の方法で使用される従来の圧力センサ及び/又は温度センサである。
【0080】
各磁気軸受44は、複数のアクチュエータ74と、少なくとも1つの増幅器84とを備える。同様に、各磁気軸受46は、複数のアクチュエータ76と、少なくとも1つの増幅器86とを備える。同様に、各磁気軸受48は、複数のアクチュエータ78と、少なくとも1つの増幅器88とを備える。各磁気軸受44、46、48の増幅器84、86、88を、複数のアクチュエータを制御するマルチチャネル増幅器としてもよく、又は各アクチュエータ74、76、78専用の個別増幅器を備えてもよい。いずれの場合も、増幅器84、86、88は、各磁気軸受44、46、48それぞれのアクチュエータ74、76、78に電気的に接続されている。
【0081】
図13及び14を参照すると、磁気軸受制御セクション61は、サージ制御セクション63に電気的に接続されており、サージ制御セクション63からの信号を受信する。磁気軸受制御セクション61は、シャフト42の所望の軸方向位置を、磁気軸受48のシフト可能範囲内の任意の1点に調整することができる。例示実施形態では、磁気軸受48のシフト可能範囲は、好ましくは、200mm〜300mmである。磁気軸受制御セクション61は、磁気軸受48の増幅器88への電気信号を調整して、シャフト42の軸方向位置を調整するようにプログラミングされている。磁気軸受48は、2つのチャネルを有する増幅器88を備え、磁気軸受48の各アクチュエータ78をそれぞれ独立して制御してもよく、又は、磁気軸受48の各アクチュエータ78が、それぞれ対応する増幅器88を有してもよい。磁気軸受48のアクチュエータ78は、スラストディスク45に磁力を及ぼすことで作用する。磁気軸受48のアクチュエータ78は、電流に基づく磁力を発生する。したがって、以下で更に詳細に説明するように、各アクチュエータ78に供給される電流量を制御することによって磁力を可変制御することができる。
【0082】
例示実施形態では、磁気軸受48は、スラストディスク45と、スラストディスク45の両側に配置された2つのアクチュエータ78と、スラストディスク45の両側に配置された2つの位置センサ58と、2つのアクチュエータ78に電気的に接続された増幅器88と、磁気軸受制御セクション61とを備える。磁気軸受制御セクション61は、位置センサ58と、増幅器88と、チラーコントローラ20の他の部分とに電気的に接続されている。各アクチュエータ78は、増幅器88からそれぞれ電流を受け取り、各電流は、磁気軸受制御セクション61によって決定され、信号によって増幅器88に伝達される。磁気軸受48のアクチュエータ78は、2つのアクチュエータ78の正味の力が平衡に達する軸方向位置までスラストディスク45を付勢する。
【0083】
従来、入口案内羽根制御セクション66は、入口案内羽根32を制御することによってインペラに入る冷媒ガスの流量を制御する。例えば、案内羽根制御セクションは、システムの目標容量を決定し、その目標容量に達するのに必要な案内羽根32の調整量を決定し、案内羽根32を制御して目標容量を実現することができる。しかし、遠心圧縮機で磁気軸受を使用する場合、入口案内羽根とインペラとの間に生じるガス乱流が引き起こす大きなシャフト振動を避けるために入口案内羽根がとることの可能な閉鎖位置には制限がある。遠心圧縮機によっては、調整可能なディフューザ壁を用いてサージ制御機能を備えている。
【0084】
本開示で述べる技術を使用してサージを制御することによって、チラーシステム10は、入口案内羽根位置を制限することによる及び/又は調整可能なディフューザ壁によるサージの制御に限定されなくなる。さらに、その他の調整構造も省略できる、又は、不要とできる可能性がある。すなわち、ディフューザは、調整可能なディフューザ壁(不図示)を有さなくてもよい。案内羽根32をなくすことによって、チラーシステム10の信頼性を高めることができ、コストを削減することができる。
【0085】
図12を参照すると、サージは圧縮機における定常流の完全な崩壊であり、通常、低流量時に起こる。
図12は、サージラインSLを示し、このラインは、rpm1、rpm2、rpm3におけるサージ点S1、S2、S3をそれぞれ繋いでいる。これらの点は、圧縮機によって生成される圧力がその圧縮機下流のパイプ圧力を下回っているピーク点である。これらの点は、サージサイクルの開始を示す。破線PAは、サージ制御ラインを示している。ラインPAとラインSLとの間に距離があると、サージ制御方法が不十分であることになる。サージ制御ラインPAとサージラインSLとの差を低減することによって、圧縮機22をより効率的に制御することができる。上記サージ制御方法の1つの利点は、サージを制御する新規の方法を提供することである。すなわち、従来の方法と比較して、サージ制御ラインPAをサージラインSLに近付けることができる。
<用語の一般的解釈>
【0086】
本発明の範囲を理解するにあたって、ここで使用する用語「含む/備える(comprising)」及びその派生語は、上記の特徴、要素、部品、群、数値、及び/又は工程の存在を明記するものであるが、述べていないその他の特徴、要素、部品、群、数値、及び/又は工程の存在を排除しない非限定的用語であることを意図している。また、上記は、用語「備える/含む/有する(including、having)」及びその派生語等の同様の意味を有する単語にも適用される。さらに、用語「パーツ(part)」、「セクション(section)」、「部分(portion)」、「部材(member)」、「要素(element)」は、単数形で使用されていても、単数複数双方の意味を有し得る。
【0087】
部品、セクション、装置等が実行する動作又は機能の説明のためにここで使用する用語「検出」は、物理的な検出を要するのではなく、その動作又は機能を実行するための決定、測定、モデリング、予測、演算等を含む。
【0088】
装置の部品、セクション、又はパーツの説明のためにここで使用する用語「構成する(configured)」は、所望の機能を実行するために構築及び/又はプログラミングされたハードウェア及び/又はソフトウェアを含む。
【0089】
ここで使用する「略(substantially)」、「約(about)」、及び「およそ(approximately)」等の度合いを示す用語は、最終結果が実質的に変わらないように被修飾語の妥当な偏移量を意味する。
【0090】
本発明を説明するために特定の実施形態のみを選択してきたが、添付の請求項において定義される発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正がここにおいて可能であることは、本開示から当業者に明らかである。例えば、各種部品のサイズ、形状、場所、又は向きは、必要又は所望に応じて変更可能である。互いに直接的に接続又は接触するように示されている部品は、それらの間に中間構造体を有してもよい。単一要素の機能を、2つの要素で実行可能であり、その逆も同様である。一実施形態の構造及び機能を、別の実施形態で用いてもよい。特定の実施形態に全ての利点が同時に含まれていなくてもよい。従来技術と比べて固有の特徴はすべて、単独としてもその他の特徴との組み合わせとしても、これら1つ以上の特徴によって具体化される構造的及び/又は機能的概念を含む、本出願人による更なる発明の別個の記載として見なされるべきものである。したがって、本発明に係る実施形態の上記説明は、単なる例示であり、添付の請求項及びそれらの等価物によって定義される発明の限定を目的とするものではない。