(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6687776
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】固着した無機化合物のスケールの除去を簡便にする水処理設備と洗浄方法及び塗料
(51)【国際特許分類】
C02F 5/10 20060101AFI20200421BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20200421BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20200421BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20200421BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20200421BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20200421BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
C02F5/10 620Z
C02F5/00 620B
C02F5/00 610Z
C02F1/00 U
C09D183/04
C09D5/00 D
C09D163/00
C09D5/16
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-34943(P2019-34943)
(22)【出願日】2019年2月27日
【審査請求日】2019年7月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503293732
【氏名又は名称】関西ペイント販売株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519070301
【氏名又は名称】カンペ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 行範
(72)【発明者】
【氏名】平井 聡之
(72)【発明者】
【氏名】大西 真由子
(72)【発明者】
【氏名】嘉瀬井 一彦
(72)【発明者】
【氏名】梶原 義彦
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−043579(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0290699(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102337049(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−11/20
C09D 1/00−10/00、101/00−201/10
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)下水処理場、(イ)工業用水道処理場、(ウ)し尿処理場、(エ)廃棄物最終処分場、(オ)一般工場に施設される水処理設備及び/又は汚泥処理設備、及び(カ)前記(ア)〜(オ)の配管類付帯設備を含む水処理設備において、スケールを発生させる成分を含む被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを備えることを特徴とする水処理設備。
(1)コーティング中にポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:KF353)で構成されるシリコーンオイルを1〜90重量%含有し、残余に反応硬化型シリコーン樹脂、または、変性ポリアミドアダクト硬化剤を含むエポキシ樹脂を含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【請求項2】
前記コーティングが2層以上の多層からなり、第1層目のコーティングがエポキシ樹脂を含有する請求項1に記載の水処理設備。
【請求項3】
(ア)下水処理場、(イ)工業用水道処理場、(ウ)し尿処理場、(エ)廃棄物最終処分場、(オ)一般工場に施設される水処理設備及び/又は汚泥処理設備、及び(カ)前記(ア)〜(オ)の配管類付帯設備を含む水処理設備において、スケールを発生させる成分を含む被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを備え、前記コーティングの上に付着する前記スケールを含む表面付着物を、洗浄具を用いて除去することを含む水処理設備の洗浄方法。
(1)コーティング中にポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:KF353)で構成されるシリコーンオイルを1〜90重量%含有し、残余に反応硬化型シリコーン樹脂、または、変性ポリアミドアダクト硬化剤を含むエポキシ樹脂を含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【請求項4】
前記表面付着物を除去した後に、前記被処理液と接する面に、前記(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを更に配置することを含む請求項3に記載の水処理設備の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備及び水処理設備の洗浄方法に関し、特に、水処理施設に固着するカルシウム等の無機塩類化合物からなるスケールの除去を簡便に実施することが可能な水処理設備と洗浄方法及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃水や浸出水等を処理する水処理設備は、鉄、ステンレス、コンクリート等によって作製されており、鉄製部分に関しては防錆塗装が施される程度で、ステンレス製部分やコンクリート製部分においては無塗装で稼動されるものが多い。
【0003】
一方、有機物を含む有機性廃水、汚泥、浸出水などの原水を処理する水処理設備においては、被処理液と接する機器類、水槽槽、配管等の種々の設備の表面にカルシウム等の無機塩類化合物からなるスケールが固着し、稼動効率などの低下を招く場合がある。設備表面に固着したスケールは硬く厚みをなして付着するものが多いため、除去する作業は容易ではなく、現状は、ハンマーやノミなどを用いて叩き落す程度しかできていない。
【0004】
中でも鉄製部分は、表面の防錆塗膜ごとスケールなどが脱落するために洗浄は一応可能であるが、ステンレス製部分やコンクリート製部分の洗浄作業は、設備の破損を伴う場合があるため、洗浄が困難な状況であった。
【0005】
このような問題を解決する手法として、水処理設備のステンレス製部分及びコンクリート製部分等に対しても表面にラッカー系塗料を予め塗布することで塗膜ごとスケールを脱落させる方法を実施してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−297294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ラッカー系塗料を予め塗布する方法は、無塗装状態と比較すると、スケールの脱落のし易さは多少改善されるものの、除去作業の労力そのものは大きくは変わっていないため、除去作業性を向上及び効率化できているとはいえない。また、ラッカー系塗料は剥がれやすいため、叩き落しによる除去作業後にはラッカー系塗料で再塗装することが必須となる。そのため、除去性やメンテナンス性を含めた総合的な視点及び洗浄作業が軽減されるという点から鑑みてもまだ十分とはいえないものであった。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、スケールの除去性に優れ、除去作業時における作業負担の軽減及び設備の損傷を軽減でき、長期間安定的な運転が可能な水処理設備、水処理設備の洗浄方法及び塗料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水処理設備の被処理液と接する表面上に所定のコーティングを施しておくことで、スケールの除去性が飛躍的に向上し、繰り返し性にも優れ、除去作業時における作業負担及び設備の損傷も軽減でき、設備停止時間の短縮にも繋がり、これにより安定的な設備運転の実施が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記知見を基礎として完成した本発明の実施の形態に係る水処理設備は一側面において、下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む水処理設備であって、スケールを発生させる成分を含む被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを備えることを特徴とする水処理設備である。
(1)コーティング中にシリコーンオイルを1〜90重量%含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【0011】
本発明の実施の形態に係る水処理設備は一実施態様において、コーティングがシリコーンオイルを被処理液中へ除放する作用を有する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る水処理設備は別の一実施態様において、コーティングが加水分解性シリコーンレジンを含有する。
【0013】
本発明の実施の形態に係る水処理設備は別の一実施態様において、コーティングが2層以上の多層からなり、第1層目のコーティングがエポキシ樹脂を含有する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る水処理設備の洗浄方法は、一側面において、下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む水処理設備において、スケールを発生させる成分を含む被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを備え、コーティング上に付着するスケールを含む表面付着物を、洗浄具を用いて除去することを含む水処理設備の洗浄方法である。
(1)コーティング中にシリコーンオイルを1〜90重量%含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【0015】
本発明の実施の形態に係る水処理設備の洗浄方法は一実施態様において、表面付着物を除去した後に、被処理液と接する面に、上記(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを更に配置することを含む。
【0016】
本発明の実施の形態に係る塗料は、一側面において、下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む水処理設備において用いる塗料であって、スケールを発生させる成分を含む被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを形成するための塗料である。
(1)コーティング中にシリコーンオイルを1〜90重量%含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スケールの除去性に優れ、除去作業時における作業負担の軽減及び設備の損傷を軽減でき、長期間安定的な運転が可能な水処理設備及び水処理設備の洗浄方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成要素の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。なお、本発明の実施の形態において「%」は特に言及のない限り重量%を意味するものとする。
【0019】
本発明の実施の形態に係る水処理設備は、下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む。このような水処理設備においてスケールを発生させるカルシウム等の無機物質を含む被処理液と接する面に以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングが配置される。
【0020】
「被処理液と接する面」、即ち、本発明の実施の形態に係るコーティングが付される被塗面としては、鉄、アルミ、ステンレス、チタン銅合金、亜鉛メッキなどの金属素材面及びその表面処理面、コンクリートやモルタル、成型板などの無機素材面及びその表面調整面、更にこれら素材面上の旧塗膜面などを含むことができる。
【0021】
本処理方法では、(1)コーティング中にシリコーンオイルを1〜90重量%含有し、(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上であり、(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下であり、(4)コーティングの厚さが5〜2000μmであるコーティング(A)を形成する。
【0022】
このようなコーティング(A)を形成するための塗料は上記条件を満たすものであれば特に制限は無く、従来公知の下塗り塗料や中塗り塗料が適用できる。金属面には例えばフタル酸系さび止め塗料や油性アルキド系、フェノールアルキド系、エポキシエステル系、1液型又は2液型のエポキシアミン系、ポリウレタン系、塩化ゴム系などの錆止め塗料やプライマーなどが挙げられる。
【0023】
無機素材面上には、例えば塩化ビニル系、アクリル系、エポキシ系、塩化ゴム系、ウレタン系、塩素化樹脂系などのシーラー用塗料や、アクリル系、ウレタン系、ポリマーセメント系などの下地調整材が挙げられ、更にはエポキシ系、アクリル系、ウレタン系などの中塗り塗料が挙げられる。
【0024】
実際には、金属面及び無機素材面の何れも被塗面の設備環境が多岐に渡ること及び被塗面が接液面となるという点から耐久性を勘案すると、水処理設備の任意の被塗面上に下塗り(第1層目のコーティング)としてエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂塗料を用いることが望ましい。更に、実使用環境の中では、エポキシ樹脂を有する下塗り層との最適な組み合わせとなる2層以上の多層からなるコーティングが形成されることが望ましい。
【0025】
コーティング(A)の塗装は、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、コテ塗り、ヘラ塗りなどの一般的な方法により行うことができ、その塗布量は使用する被塗物及び被塗面の性状及び面積等によって適宜選択する事ができる。
【0026】
コーティング(A)の表面に、再びコーティング(A)を施すのには何ら問題は無い。但し、効果の発現する膜厚は5μm〜2000μmであるため、再びコーティング(A)を施す際の総膜厚は2000μmを超えないようにすることが良い。
【0027】
コーティング(A)の表面に再びコーティング(A)を施す際の塗装は、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、コテ塗り、ヘラ塗りなどの一般的な方法により行うことができ、再びコーティングを施すことによる制約は特に無い。また、その塗布量は使用する被塗物及び被塗面の性状及び面積等によって適宜選択する事ができる。
【0028】
被塗面上に配置され、水処理設備の被処理水と接するコーティング(A)としては、シリコーンオイルを被処理液中へ除放する作用を有することが好ましい。これにより、カルシウム等の無機塩類化合物を含むスケールをコーティング(A)が塗装された表面上に固着することを抑制するとともに、スケールを含む表面付着物をブラシ、ハンマー、動力工具、高圧水洗浄機などを用いた洗浄具によって除去し易くすることができるため、除去作業時における作業負担の軽減及び設備の損傷を軽減できる。コーティング(A)としては、加水分解性シリコーンレジンを含有することが更に好ましい。
【0029】
(1)シリコーンオイル
コーティングにはシリコーンオイルが1〜90%含有される。シリコーンオイルはより好ましくは5〜50%含有され、更に好ましくは10〜30%含有される。
【0030】
(2)パラフィン接触角
コーティング表面のパラフィン接触角は30°以上であることが必要であり、より好ましくは45°以上、更に好ましくは60°以上である。コーティング表面のパラフィン接触角が30°よりも小さい場合には無機スケールなど汚染物質が付着し易いという場合がある。一方、コーティング表面のパラフィン接触角が大きすぎると塗膜の補修性(重ね塗り性)に問題が生じる場合がある。パラフィン接触角は、例えば80°以下とすることができ、更には70°以下とすることができる。ここで、パラフィン接触角とは、簡易接触角計を用いて、常温下における静的接触角を測定した結果を表す。
【0031】
(3)動摩擦係数
コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が大きすぎると無機スケールの易除去性が低下するという場合があるため、動摩擦係数が0.15以下であることが好ましく、0.10以下が更に好ましく、より更に好ましくは0.05以下である。動摩擦係数が小さすぎると、塗膜の補修性(重ね塗り性)に問題が生じる場合があるため、コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数を0.02以上とすることが好ましい。
【0032】
(4)厚さ
コーティングの厚さが薄すぎるとスケール除去作業の際に剥離が生じてコーティングの再塗布作業が頻繁化して効率的でない反面、厚すぎても経済性を損なう場合がある。コーティングの膜厚は5μm〜2000μmとし、一実施態様では75〜1000μmとし、更に別の一実施態様では150〜300μmとすることができる。
【0033】
(洗浄方法)
シリコーンオイルを1〜90%含有し、ベース樹脂として加水分解性シリコーンレジン又はエポキシ樹脂を更に加えて得られた組成物を下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む水処理設備の被処理液と接する面に塗布して養生し、乾燥させることによりコーティング(塗膜)を形成し、このコーティング上に付着するスケールを含む表面付着物を水処理設備の洗浄工程において洗浄具を用いて除去することにより、水処理設備の洗浄を行うことができる。
【0034】
洗浄具には例えば、ブラシ、ハンマー、動力工具、高圧水洗浄機等のスケール除去のために従来から使用される任意の器具を用いることができる。洗浄後にコーティングの剥離が生じる場合には、表面付着物を除去した後に、被処理液と接する被塗面に対して再度、上述のコーティングを配置することが好ましい。表面付着物除去作業後のコーティングの再形成は、表面付着物を除去する度に行う必要は無く、除去作業後の表面性状に応じて適宜コーティングの再形成を行うことが、効率的にも好ましい。
【0035】
以下に本発明の実施例を比較例とともに示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではい。なお、実施例及び比較例中の「部」は特に断らない限り重量部を示す。
【0036】
表1に示す配合組成の組成物からなるコーティング1〜12(実施例)、13〜17(比較例)を作製した。コーティング1〜4、7〜16は加水分解シリコーンからなり、サンプル5〜6はエポキシ樹脂塗料からなる。なお、各組成に関しては、上述の(1)〜(4)のパラメーターを満足できれば、特に分子量や変成物、組成などに制限はなく、顔料などの充填材を用いても良いことは勿論である。また、塗料の作製や塗装時に際して、適宜、溶剤を使用しても構わないことも勿論である(表1中の重量部配合には含めない)。コーティング17はステンレス鋼鈑に対して無塗装とした。コーティング1〜6、7〜12、13〜16は下塗層として被塗面上にエポキシ樹脂層を40μm配置した。
【0037】
表1中、「加水分解シリコーン」としては、信越化学工業(株)製、1液反応硬化型シリコーン樹脂(RTV)、商品名K
E42を使用した。「エポキシ」としては、三菱ケミカル(株)製、液状エポキシ樹脂、商品名1001X75及び(株)T&K TOKA製、変成ポリアミドアダクト硬化剤、商品名トーマイド423を塗装直前に当量比0.6になるように調製した。「シリコーンオイル」としては、信越化学工業(株)製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、商品名KF353を使用した。「下塗」には関西ペイント(株)製、エポキシ樹脂塗料、商品名エポマリンGXを使用した。
【0038】
ステンレス素材(3.2×70×150mmのSUS304鋼鈑)の板上に、表1中の乾燥膜厚を得られるように、スプレー塗装にて施すことにより実施例及び比較例に係る乾燥塗膜(コーティング)を作製した。表1に示す乾燥塗膜の特性の測定は、サンプル1〜17で得られる塗料を塗装後、23℃恒温室にて7日間養生乾燥させた後に実施した。各特性は以下に従って測定した。
【0039】
(パラフィン接触角)
パラフィンの静的接触角を、協和界面化学(株)製の接触角計「DMe−211」を用いて測定を行った。
【0040】
(動摩擦係数)
3点鋼球式摩擦係数を、協和界面化学(株)製の自動摩擦摩耗解析装置「TSf−503」を用いて測定を行った。測定条件は荷重1kgの錘を5cm/秒で、塗膜上を水平に滑らしたときの応力から、水平力(kg)/1kgの平均値を摩擦係数とした。
【0041】
(コーティング膜厚)
コーティングの膜厚を、(株)サンコウ電子研究所製の鉄面・非鉄金属面両用膜厚計「SAMAC−FN」を用いて測定を行った。尚、下塗を用いる系では、定点測定にて予め下塗の膜厚を測定しておき、総膜厚から下塗膜厚を引きコーティングの膜厚のみを求めた。
【0042】
コーティング付着性試験及び無機スケール除去性試験を以下の手順に従って評価した。結果を表2に示す。
【0043】
(コーティング付着性)
コーティング1〜17に対し、試験を実施する前の初期付着としてナイロンブラシにて表面を10往復、強く擦り、その時の各コーティングの付着性を以下の評価基準に基づき評価した。
(評価水準)
◎:全くハガレが見られない
〇:コーティングに擦り跡が付く程度で、ハガレそのものは見られない。
△:ハガレがやや見られる。
×:ハガレが著しい。
【0044】
(無機スケール除去性)
実施例及び比較例に係るコーティング1〜17を作製した試験板を、実際の設備(カルシウムを高濃度で含有するごみ浸出水処理施設の反応槽)に60日間浸漬させたのち、引き上げて除去性の評価を実施した。除去方法は、ハンマーで試験体を殴打し、カルシウムスケールの脱落具合を以下の評価基準に基づき評価した。
(評価水準)
◎:ハンマーで1〜2回叩く程度で脱落する。
〇:ハンマーで3〜5回叩く程度で脱落する。
△:ハンマーだけでは脱落せず、ノミを使ってようやく脱落する。
×:ノミを使ってもなかなか脱落せず、コーティングの剥離を伴いながら
ようやく脱落する。若しくは殆ど脱落しない。
【要約】
【課題】スケールの除去性に優れ、除去作業時における作業負担の軽減及び設備の損傷を軽減でき、長期間安定的な運転が可能な水処理設備、水処理設備の洗浄方法及び塗料を提供する。
【解決手段】下水処理場、及び/又は工業用水道、及び/又はし尿処理場、及び/又は廃棄物最終処分場、及び/又は一般工場に施設される水処理及び/又は汚泥処理設備、及びそれらの配管類等付帯設備を含む水処理設備であって、被処理液と接する面に、以下の(1)〜(4)の特性を備えるコーティングを備えることを特徴とする水処理設備。
(1)コーティング中にシリコーンオイルを1〜90重量%含有する。
(2)コーティング表面のパラフィン接触角が30°以上である。
(3)コーティング表面の3点鋼球による動摩擦係数が0.15以下である。
(4)コーティングの厚さが5〜2000μmである。
【選択図】なし