特許第6687777号(P6687777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687777
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20200421BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20200421BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   F25D23/00 302Z
   F25D23/00 301G
   A23L3/36 Z
   A23B7/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-38248(P2019-38248)
(22)【出願日】2019年3月4日
(62)【分割の表示】特願2015-23294(P2015-23294)の分割
【原出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-82324(P2019-82324A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】及川 巧
(72)【発明者】
【氏名】品川 英司
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−287869(JP,A)
【文献】 特表2007−533952(JP,A)
【文献】 特開2013−002762(JP,A)
【文献】 特開2002−195971(JP,A)
【文献】 特開2001−355957(JP,A)
【文献】 特開2014−016108(JP,A)
【文献】 特開2002−235979(JP,A)
【文献】 特開2003−106748(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/047788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00−31/00
A23L 3/36−3/54
A23B 7/00−9/34
A01F 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜室と、
前記野菜室内の炭酸ガス濃度を測定するガスセンサと、
前記ガスセンサが測定した測定濃度がピークより一定の割合低下するとユーザに報知する報知手段と、
を有する冷蔵庫。
【請求項2】
野菜室と、
前記野菜室内の炭酸ガス濃度を測定するガスセンサと、
前記野菜室の扉を閉じた後に、前記ガスセンサが測定した測定濃度が所定濃度減少したときにユーザに報知する報知手段と、
を有する冷蔵庫。
【請求項3】
前記ガスセンサが、前記野菜室の下部に設けられている、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記ガスセンサが、前記野菜室の背面にある冷気の吸い込み口に設けられている、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記ガスセンサは、前記測定濃度を、冷気を冷蔵用蒸発器から前記野菜室に送風する冷蔵用送風機が動作中に測定する、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記報知手段の前記報知は、音声で行う、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、野菜室を有する冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜は、肉、魚、加工食品などと異なり、呼吸を行い水、炭酸ガス、エチレンなどを放出している。収穫前の野菜は、外部から養分を吸収し、エネルギーに変換することで成長するが、収穫後の野菜は外部からの吸収が無くなるため野菜自身のエネルギーを消費しているため、野菜の劣化が進む。野菜が劣化していくと呼吸量が減少し、水、炭酸ガス、エチレンの放出も減少する。
【0003】
収穫後の野菜を長持ちさせるためには、この呼吸をできるだけ抑制する必要があり、そのために野菜を低温で保存したり、低温、高炭酸ガス、低酸素の状態にして保存している。また、野菜の呼吸量は、野菜を切ったり輸送などの刺激によっても増えることが知られている。これは野菜を切ると皮の無い部分ができるため、断面での呼吸が増えて断面から先に劣化が進んでしまうからである。
【0004】
ところで、野菜の呼吸量を確認するには、この呼吸によって放出される水、炭酸ガス、エチレンの量を測定することにより把握できる。しかし、水は呼吸によって放出される部分と単純に周囲の相対湿度が低いために蒸発する分もあるため、水分量を測定しても呼吸とは直接結びつかない。また、エチレンは放出しない野菜も多く、しかも量的に少ないために測定が難しい。したがって、野菜の呼吸量を測定するには、炭酸ガスの濃度を測定することが一般的である。
【0005】
従来、冷蔵庫で野菜を保存する場合には、野菜を野菜室に入れて低温で保存することで劣化を防ぎ、その野菜の鮮度を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−218924号公報
【特許文献2】特開平9−287869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、冷蔵庫の野菜室に保存された野菜の鮮度についてはユーザの観察や嗅覚に頼っているのが現状である。また、野菜は賞味期限の表示が無いためその消費は完全にユーザに委ねてられている。したがって、野菜室において野菜を新鮮な状態で保存することは難しいという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明の実施形態は、野菜の鮮度の劣化を知らせる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、野菜室と、前記野菜室内の炭酸ガス濃度を測定するガスセンサと、前記ガスセンサが測定した測定濃度がピークより一定の割合低下するとユーザに報知する報知手段と、を有する冷蔵庫である。
【0010】
また、本発明の実施形態は、野菜室と、前記野菜室内の炭酸ガス濃度を測定するガスセンサと、前記野菜室の扉を閉じた後に、前記ガスセンサが測定した測定濃度が所定濃度減少したときにユーザに報知する報知手段と、を有する冷蔵庫である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す冷蔵庫の正面図。
図2】冷蔵庫の縦断面図。
図3】冷凍サイクルの説明図。
図4】冷蔵庫のブロック図。
図5】表示パネルの表示状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態の冷蔵庫10について図1図5に基づいて説明する。
【0013】
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について図1図2に基づいて説明する。図1は冷蔵庫10の正面図、図2は冷蔵庫10の側面から見た縦断面図である。
【0014】
冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内部は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室21が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室22の間には水平な断熱仕切体36が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切体38によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の扉14a,14bが設けられ、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室21にはそれぞれ引出し式の扉16a,18a,20a,21aが設けられている。
【0015】
冷蔵室14の扉14aの前面左上部には、冷蔵庫10を操作するための操作パネル58が設けられ、この操作パネル58には、タッチスイッチと表示部が設けられている。また、冷蔵室14の扉14aの前面下部には、液晶表示装置よりなる表示パネル59が設けられている。また、冷蔵室14内には、複数の棚40が設けられ、下部には引出し式のチルド容器42を有するチルド室44が設けられている。このチルド室44は低温室であって、肉や魚を収納する。冷蔵室14の扉14aの背面には複数のドアポケット46が設けられている。野菜室16には、引出し式の野菜容器48、50が設けられている。
【0016】
冷蔵室14の背面下部から野菜室16の背面において、冷蔵用蒸発器(以下、「Rエバ」という)28が設けられ、その下方には冷蔵用送風機(以下、「Rファン」という)30が設けられている。Rエバ28とRファン30とは、エバカバー15で囲まれたRエバ室17に配されている。冷蔵室14の背面には、Rエバ室17からの冷気の吹き出し口が複数開口している。Rエバ室17の下部には、冷気の吸い込み口52が開口している。Rエバ室17の下部にある冷気の吸い込み口54の上部近傍には、野菜室16の炭酸ガス濃度を測定するガスセンサ56が設けられている。Rエバ28の下方には、不図示の除霜ヒータが設けられ、また、Rエバ28で発生した除霜水を溜める受け皿52が設けられている。
【0017】
小型冷凍室18、製氷室21の背面から冷凍室20の背面にかけてのFエバ室29には、冷凍用蒸発器(以下、「Fエバ」という)32が設けられ、その上方には冷凍用送風機(以下、「Fファン」という)34が設けられている。Fエバ32の下方には、不図示の除霜ヒータが設けられている。
【0018】
Rエバ28で冷却された冷気は、Rファン30によって冷蔵室14及び野菜室16に送風される。Fエバ32で冷却された冷気は、Fファン34によって小型冷凍室18、製氷室21、冷凍室20に送風される。
【0019】
キャビネット12の背面底部には、機械室22が設けられ、冷凍サイクル62を構成する圧縮機24などが載置されている。この機械室22の背面上部には、制御板26が設けられている。
【0020】
冷蔵室14の背面には、冷蔵室14の庫内温度を測定する冷蔵室用センサ(以下、「Rセンサ」という)31が設けられ、冷凍室20の背面には、冷凍室20の庫内温度を測定する冷凍用センサ(以下、「Fセンサ」という)35が設けられている。
【0021】
(2)冷凍サイクル62の構成
冷蔵庫10の冷凍サイクル62について図3に基づいて説明する。図3に示すように、冷凍サイクル62は、圧縮機24、この圧縮機24から吐出される冷媒ガスを受けて放熱液化するコンデンサ(凝縮器)64、このコンデンサ64の出口側に設けられたドライヤ66、ドライヤ66の出口側に設けられ冷媒流路を切り替える三方弁68、Rエバ28、Fエバ30、Rエバ28とFエバ30のための絞り手段としての冷蔵用キャピラリーチューブ(冷蔵用減圧装置、以下、「Rキャピラリーチューブ」という)70及び冷凍用キャピラリーチューブ(冷凍用減圧装置、以下、「Fキャピラリーチューブ」という)72、逆止弁74とを備えている。
【0022】
圧縮機24は、モータのインバータ制御により周波数が可変であって、これにより回転数を変化させ、圧縮機24から供給される圧縮された高温高圧の冷媒ガスの量を制御できる。
【0023】
三方弁68は、コンデンサ64の出口側に設けられてFエバ36及びRエバ32への冷媒流路の切り替えと共に流量を絞り制御できる膨張弁としても機能する。圧縮機24とコンデンサ64と三方弁68とは、直列に接続され、三方弁68の冷蔵側出口(以下、「R出口」という)にRキャピラリーチューブ70とRエバ28とが直列に接続され、三方弁68の冷凍側出口(以下、「F出口」という)にFキャピラリーチューブ72とFエバ32と逆止弁74とが直列に接続されている。逆止弁74の出口側に接続された配管とRエバ28の出口側に接続された配管とが合流し、サクションパイプ(吸い込み管)76を介して圧縮機24へ接続されている。したがって、三方弁68のR出口からRキャピラリーチューブ70を介して接続された高温側のRエバ28と、三方弁68のF出口からFキャピラリーチューブ72を介して接続された低温側のFエバ32とは、並列に接続されている。
【0024】
Rエバ28には、その温度を測定するRエバセンサ78が設けられ、Fエバ32には、その温度を測定するFエバセンサ80が設けられている。
【0025】
(3)冷蔵庫10の電気的構成
次に、冷蔵庫10の電気的構成について図4のブロック図に基づいて説明する。制御板26には、冷蔵庫10を制御するためのマイクロコンピュータよりなる制御部60が設けられている。
【0026】
図4に示すように、制御部60は、マイクロコンピュータより構成され、圧縮機24のモータ、Rファン30、Fファン34、ガスセンサ56、三方弁68、Rセンサ31、Fセンサ35、Rエバセンサ78、Fエバセンサ80が接続されている。また、冷蔵室14の扉14aに設けられた操作パネル58、表示パネル59が接続されている。
【0027】
(4)冷却モード
上記構成の冷蔵庫10では、制御部60が、Rセンサ31、Fセンサ35、Rエバセンサ78、Fエバセンサ80の測定温度に基づいて、三方弁68を切り替え制御することにより、Rエバ28に冷媒を流すことで冷蔵室14と野菜室16を冷却する冷蔵冷却モード(以下、「Rモード」いう)と、Fエバ32に冷媒を流すことで冷凍室18,20、製氷室21を冷却する冷凍冷却モード(以下、「Fモード」いう)を実行する。
【0028】
制御部60は、Rセンサ31が検出したR庫内温度が、冷蔵開始温度TR1になるとRモードを開始し、R庫内温度が冷蔵終了温度TR2(但し、0℃<TR2<TR1である)に到達するとRモードを終了する。Rモードにおいては、Rエバ室17内のRエバ28からRファン30によって冷蔵室14に吹き出された冷気は、冷蔵室14を上から下に循環した後に、野菜室16に侵入して、野菜容器48,50に収納された野菜を冷却して、Rエバ室17の下端にある吸い込み口54からRエバ28に循環する。
【0029】
制御部60は、Fセンサ35が検出したF庫内温度が、冷凍開始温度TF1になるとFモードを開始し、F庫内温度が冷凍終了温度TF2(但し、0℃>TF1>TF2である)に到達するとFモードを終了する。Fモードにおいては、Fエバ室29内のFエバ32からFファン34によって冷凍室20,小型冷凍室18、製氷室21に吹き出された冷気は、上から下に循環した後にFエバ室29内のFエバ32に循環する。
【0030】
なお、R庫内温度が冷蔵開始温度TR1になり、かつ、F庫内温度が冷凍開始温度TF1になったときは、Fモードを優先して実行して冷凍終了温度TF2になるとRモードを実行するか、又は、三方弁68の出口を両方開いていてRモードとFモードを同時に実行する。
【0031】
また、制御部60は、Rエバ28とFエバ32の除霜を行う除霜モードを定期的に実行する。この場合には、制御部60は、Rエバ28とFエバ32のそれぞれ下方にある除霜ヒータを駆動して加熱し、Rエバセンサ78、Fエバセンサ80の検出検出温度が、所定温度(例えば、2℃)以上になると除霜モードを終了する。
【0032】
(5)ガスセンサ56による制御方法
次に、野菜室16に設けられたガスセンサ56を用いた5つの制御方法について説明する。ガスセンサ56は、野菜室16の炭酸ガス濃度(%)を測定して制御部60に出力し、制御部60は、測定濃度(%)の時間的変化から炭酸ガスの放出速度(mg/分)も算出する。なお、炭酸ガス濃度をより正確に測定するために、Rファン30が回転し、野菜室16内部で冷気が循環し、冷気がRエバ室17の吸い込み口54から引き込まれているときに測定するのがよい。
【0033】
(5−1)第1の制御方法
第1の制御方法について説明する。制御部60は、ガスセンサ56の測定濃度が、基準濃度(例えば、0.2%)より高いときは、野菜室16の庫内温度を所定温度(例えば、1℃〜2℃)上昇させる。野菜室16の庫内温度を所定温度上昇させる制御方法としては、例えば、制御部60が、冷蔵開始温度を(TR1+2)に設定し、冷蔵終了温度も(TR2+2)に設定する。これにより、野菜室16の庫内温度が上昇する。
【0034】
この野菜室の庫内温度を上昇させる理由は、野菜室16内部の炭酸ガス濃度が高いということは、酸素濃度が減少し、減酸素貯蔵と同じ効果を得ていることになるため、野菜の鮮度が高く、その呼吸量が通常よりも多くなっている。そのため、野菜室16内部の庫内温度をそのまま維持するよりは、庫内温度が少し上昇させても野菜の呼吸量が少なく鮮度を維持でき、かつ、省エネルギーになるからである。
【0035】
(5−2)第2の制御方法
第2の制御方法について説明する。制御部60は、炭酸ガスの放出速度が基準速度(例えば、1.0mg/分)より早いときは、野菜室16の庫内温度を所定温度(例えば、1℃〜2℃)下降させる。野菜室16の庫内温度を所定温度下降させる制御方法としては、例えば、制御部60が、冷蔵開始温度を(TR1−2)に設定し、冷蔵終了温度も(TR2−2)に設定する。これにより、野菜室16の庫内温度が下降する。
【0036】
この野菜室の庫内温度を下降させる理由は、炭酸ガスの放出速度が早いということは、新鮮な野菜が野菜室16に収納された場合や野菜の収納量が多くなったことが考えられ、それらの野菜の鮮度を保つために野菜室16の庫内温度を下げる。
【0037】
(5−3)第3の制御方法
第3の制御方法について説明する。制御部60は、炭酸ガスの測定濃度がピーク時に比べて一定の割合(例えば、50%)以下になったときに、野菜の鮮度が落ちたとしてユーザに報知を行う。例えば、制御部60は、操作パネル58に設けられたスピーカから、「野菜室の炭酸ガス濃度が下がりました」などの音声を出力する。
【0038】
(5−4)第4の制御方法
第4の制御方法について説明する。制御部60は、野菜室16の閉扉時から一定時間(例えば、5分)後の炭酸ガスの放出速度を表示パネル59に表示する。
【0039】
この理由は、野菜室16の引き出し式扉16aが開かれて炭酸ガスの測定濃度が低下しても、一定時間後であると炭酸ガスの濃度も安定して、リセットされた状態でより正確に呼吸の状態を表示できるからである。
【0040】
(5−5)第5の制御方法
第5の制御方法について説明する。制御部60は、野菜室16の閉扉時の測定濃度から一定の減少が見られたときに報知を行う。例えば、制御部60は、操作パネル58に設けられたスピーカから、「野菜室の炭酸ガス濃度が下がりました」などの音声を出力する。
【0041】
この理由は、測定濃度が一定濃度減少すると野菜の呼吸が少なくなって劣化している可能性があり、それを知らせるためである。
【0042】
(6)具体例
次に、上記で説明した各制御方法を実施した具体的な状況について、図5に基づいて説明する。制御部60は、表示パネル59を用いてガスセンサ56によって測定した炭酸ガスの測定濃度(%)に関して横軸を時刻、縦軸を放出速度(mg/分)としてグラフ表示し、また、炭酸ガスの放出速度(mg/分)に関して横軸を時刻、縦軸を放出速度(mg/分)としてグラフ表示する。また、制御部60は、表示パネル59に、現在時刻(図5中では、17時55分)と現在の測定濃度(図5中では、0.098%)と現在の放出速度(図5中では、1.0mg/分)をデジタル数字表示する。
【0043】
また、ユーザは14時40分に野菜室16の引き出し式扉16aを開いて野菜容器48に野菜を追加収納し、17時5分に夕食を作るために野菜室16の引き出し式扉16aを再び開いて野菜を取り出したものとする。
【0044】
測定濃度グラフが示すように、ユーザが14時40分に野菜を収納するまでは、前回収納した野菜の鮮度が落ちてきて、炭酸ガスの測定濃度が減少している。ユーザが野菜を収納すると、新しい野菜からの炭酸ガスの放出が増えて測定濃度が上昇し始め、16時00分頃にピークとなる。その後に野菜の鮮度が落ちてくると共に炭酸ガスの放出が減少して測定濃度も減少する。
【0045】
測定濃度グラフが示すように、ユーザが夕食の準備のために、17時5分に野菜を取り出すと、野菜室16の引き出し式扉16aを開いたため炭酸ガスが外に出て測定濃度が急激に下降する。その後、引き出し式扉16aを閉じると、測定濃度が再び上昇し始める。
【0046】
放出速度グラフに示すように、ユーザが14時40分に引き出し式扉16aを開けるまでは、野菜室16内の野菜の鮮度が落ちてきているため、野菜からの炭酸ガスの放出速度が減少きている。
【0047】
放出速度グラフに示すように、ユーザが14時40分に野菜を収納すると新しい野菜により放出速度が急激に上昇し、測定濃度がほぼピークに達するまで一定の放出速度で炭酸ガスが放出される。そして、16時00分頃にピークに達した後に野菜からの放出速度は減少する。
【0048】
放出速度グラフに示すように、ユーザが夕食の準備のために、17時05分に引き出し式扉16aを再び開けて野菜を野菜室16から出すと、野菜の量が減って放出速度がより減少する。
【0049】
上記のような時間による測定濃度と放出速度の変化に基づいて、上記の制御方法を具体的に図5に基づいて説明する。
【0050】
第1の制御方法に関しては、ユーザが14時40分に野菜室16に野菜を収納すると、測定濃度が増加して、基準濃度(例えば0.2%)を超えると、制御部60は、現在の冷却モードの種類に関わらず、野菜室16の庫内温度を所定温度(例えば、1℃〜2℃)上昇させる。
【0051】
第2の制御方法に関しては、放出速度が14時40分に基準速度(例えば、1.0mg/分)を超えているため、制御部60は、現在の冷却モードの種類に関わらず、野菜室16の庫内温度を所定温度(例えば、1℃〜2℃)下降させる。なお、この具体例のように、第1の制御方法の条件と第2の制御方法の条件が同時に満たされた場合には、野菜室16の庫内温度は変化させない。
【0052】
第3の制御方法に関しては、測定濃度が16時00分頃に0.3%でピークとなり、その後に測定濃度が下がって、0.15%以下になると、制御部60はユーザに操作パネル28のスピーカから報知を行う。但し、この具体例の場合には、引き出し式扉16aを開けたときには測定濃度が下がって報知されることとなる。この場合には、ユーザは引き出し式扉16aを開けたことによる測定濃度の下降であることを知っているため、その報知は無視できる。
【0053】
第4の制御方法に関しては、ユーザが14時40分に野菜室16の引き出し式扉16aを閉じた後に、制御部60は所定時間(例えば5分)後の放出速度を表示パネル59に表示する。これにより、ユーザは、野菜がどれくらい呼吸しているかを判断できる。
【0054】
第5の制御方法に関しては、ユーザが14時40分に野菜室16の引き出し式扉16aを閉じた後、制御部60は、測定濃度が所定濃度減少したときに操作パネル28のスピーカから報知を行う。なお、ユーザが引き出し式扉16aを17時05分に開けたときにも同様の状態となるが、ユーザは引き出し式扉16aを開けて野菜を取り出したことが理由であるのを知っているため、ユーザはその報知は無視できる。
【0055】
(7)効果
本実施形態によれば、炭酸ガスの測定濃度、放出速度を表示パネル59にデジタル表示することで、ユーザは野菜の呼吸が行われていることが判り、また、野菜の種類、量との比較で呼吸が正常なものか否かの概略を知ることができる。例えば、ユーザが同じような種類の野菜を買い置きしている場合には、いつも同じような数値が表示され、正常な保存がされていることが判断できる。
【0056】
また、ガスセンサ56は、野菜室16内部に設けられているため、野菜室16に収納された野菜の呼吸よって発生した炭酸ガスの量を正確に測定できる。特に、炭酸ガスは空気より重いために、野菜室16の下側、特に循環した冷気の吸い込み口54に近傍に設けられているため、正確に濃度を測定できる。
【0057】
また、炭酸ガスの測定濃度と放出速度の経時変化を表すグラフ表示することにより、ユーザは食品の出し入れによる経時変化や呼吸が安定しているかなどの変化を判断できる。
【0058】
また、第1の制御方法においては、炭酸ガスの測定濃度が高いときに野菜室16の庫内温度を上昇させるため、野菜室16をあまり冷やすことがなく省エネルギーを図ることができる。
【0059】
また、第2の制御方法においては、炭酸ガスの放出速度が大きい場合に野菜が増加したことになるので、野菜室16の庫内温度を下げることで、野菜の鮮度を保持できる。
【0060】
また、第3の制御方法においては、炭酸ガスの測定濃度がピーク時に比べて一定の割合以下になった場合に報知されるため、ユーザが表示パネル59の測定濃度グラフを見て判断することなく野菜の劣化を判断できる。
【0061】
また、第4の制御方法においては、野菜室16の閉扉時からの一定時間後の炭酸ガスの放出速度を表示することで、ユーザはより正確に野菜の呼吸量について判断できる。
【0062】
また、第5の制御方法においては、野菜室16の閉扉時の測定濃度から所定濃度の減少があったときに報知を行うので、ユーザは野菜の呼吸が少なくなって劣化していることを判断できる。
【0063】
(8)変更例
上記実施形態では、ガスセンサ56を野菜室16の下部にある吸い込み口54近傍に設けたが、これに代えて、野菜室16の上部に設けてもよい。この理由は、野菜室16に冷気が侵入した場合の撹拌や庫内温度の違いによる対流、ガス濃度の違いによる拡散現象などが発生している可能性があるからである。
【0064】
また、上記実施形態では、炭酸ガスの測定濃度などを表示する手段として表示パネル59を設けたが、これに代えて表示手段を野菜室16に設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1の制御方法〜第5の制御方法まで全て行ったが、これに限らず、第1の制御方法のみを行う場合、第2の制御方法のみを行う場合、第1と第2の制御方法を行う場合、これら第1の制御方法又は第2の制御方法に付随して第3〜第6の制御方法を行ってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第1の制御方法において冷蔵開始温度と冷蔵終了温度を調整して野菜室16の庫内温度を上昇させたが、これに代えてRエバ28の除霜ヒータを動作させてもよい。
【0067】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10・・・冷蔵庫、16・・・野菜室、56・・・ガスセンサ、58・・・操作パネル、59・・・表示パネル、60・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5