特許第6687779号(P6687779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6687779
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20200421BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B66B1/18 L
   B66B1/18 N
   B66B3/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-42789(P2019-42789)
(22)【出願日】2019年3月8日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 道臣
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−069119(JP,A)
【文献】 特開2018−090400(JP,A)
【文献】 特開2014−118263(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 1/52
B66B 3/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置と、
前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定するDCS制御装置と、
前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置と、を備え
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送し、
前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、
前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を保持し、前記乗場表示装置から無線要求信号を受信すると、前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線要求信号を発信し、該無線要求信号を受信した前記携帯端末から送信される前記乗車号機情報を受信して表示することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置と、
前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定するDCS制御装置と、
前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置と、を備え
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送し、
前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、
前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を保持し、前記乗場表示装置から無線要求信号を受信すると、前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線要求信号を発信し、該無線要求信号を受信した前記携帯端末から送信される前記乗車号機情報を受信して表示し、
前記携帯端末は、前記乗場表示装置から無線要求信号を受信すると、前記乗車号機情報を、前記利用者を識別する利用者情報とともに前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記携帯端末から受信した前記乗車号機情報を前記利用者情報と対応付けて表示することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
前記携帯端末は、前記無線信号装置から前記乗車号機情報を受信してから前記乗場表示装置から前記無線要求信号を受信するまでの間に指定時間が経過した場合、前記乗場表示装置から無線要求信号を受信すると、エラー信号を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記携帯端末から前記エラー信号を受信した場合は、前記乗車号機情報に代えて、行先階の再登録を促すメッセージを表示することを特徴とする請求項またはに記載のエレベータシステム。
【請求項4】
無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置と、
前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定するDCS制御装置と、
前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置と、を備え
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送し、
前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、
前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を表示し、
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を、前記利用者を識別する利用者情報とともに前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者情報を保持し、前記DCS制御装置から前記乗車号機情報が伝送されると、該乗車号機情報を前記利用者情報とともに前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を前記利用者情報と対応付けて表示することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置と、
前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定するDCS制御装置と、
前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置と、を備え
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送し、
前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、
前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を表示し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報をさらに前記携帯端末に送信することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置と、
前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定するDCS制御装置と、
前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置と、を備え
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送し、
前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、
前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を表示し、
前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を、前記利用者を識別する利用者情報とともに前記無線信号装置に送信し、
前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者情報を保持し、前記DCS制御装置から前記乗車号機情報が伝送されると、該乗車号機情報を前記利用者情報とともに前記乗場表示装置に送信し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を前記利用者情報と対応付けて表示し、
前記乗場表示装置は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報をさらに前記携帯端末に送信することを特徴とするエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のエレベータを群管理制御するエレベータシステムとして、乗場にて行先階を指定可能な乗場行先階登録装置を備えた行先階制御システム(DCS:Destination Control System)が知られている。DCSは、利用者の行先階を考慮した群管理割当制御(DCS制御)により、複数台のエレベータのうち利用者が乗車するエレベータ(乗車号機)を決定し、この乗車号機を利用者の乗車階に応答させる。DCS制御では、行先階が同じ利用者を同じエレベータに乗車させるように乗車号機が決定されるため、輸送効率が向上する。
【0003】
一方、利用者が所持するスマートフォンなどの携帯端末を利用して行先階の登録を行うシステムもある。例えば、乗場に設置されたビーコンから発信される無線信号を携帯端末が受信すると、携帯端末に予めインストールされているアプリケーションソフトが起動し、携帯端末に記憶されている利用者の行先階がエレベータ制御装置に送信されて、利用者の行先階が自動登録されるシステムが提案されている。このシステムでは、利用者が携帯端末を操作する必要がないため、例えば鞄の中に携帯端末を入れた状態で乗場に行くだけで行先階の登録が可能となる。
【0004】
しかし、このシステムを上述のDCSに適用した場合、利用者の行先階を自動登録することはできるが、DCS制御により決定された乗車号機を利用者に伝えることができない。このため、利用者は複数台のエレベータのうちのどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断できず、スムーズな乗車が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6046222号公報
【特許文献2】特許第6321124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、利用者の行先階を自動登録できるとともに、乗場における利用者のスムーズな乗車を実現できるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るエレベータシステムは、無線信号装置と、DCS制御装置と、乗場表示装置と、を備える。無線信号装置は、無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する。DCS制御装置は、前記アプリケーションソフトの起動により前記携帯端末から送信される前記利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち前記利用者が乗車する乗車号機を決定する。乗場表示装置は、前記利用者の乗車階の乗場で、前記乗車号機を示す乗車号機情報を表示する。前記携帯端末は、前記アプリケーションソフトの起動により前記利用者の行先階を前記無線信号装置に送信し、前記無線信号装置は、前記携帯端末から受信した前記利用者の行先階を前記DCS制御装置に伝送する。前記DCS制御装置は、前記乗車号機情報を前記無線信号装置に伝送し、前記無線信号装置は、前記DCS制御装置から伝送された前記乗車号機情報を前記携帯端末に送信し、前記携帯端末は、前記無線信号装置から受信した前記乗車号機情報を保持し、前記乗場表示装置から無線要求信号を受信すると、前記乗車号機情報を前記乗場表示装置に送信し、前記乗場表示装置は、前記無線要求信号を発信し、該無線要求信号を受信した前記携帯端末から送信される前記乗車号機情報を受信して表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図2図2は、呼び登録テーブルの一例を示す図である。
図3図3は、乗場表示装置の表示画面の一例を示す図である。
図4図4は、乗場表示装置の表示画面の一例を示す図である。
図5図5は、乗場行先階登録装置の操作画面の一例を示す図である。
図6図6は、アプリケーションソフトの実行時における携帯端末の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図8図8は、第3実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図9図9は、呼び登録テーブルの一例を示す図である。
図10図10は、第4実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図11図11は、第5実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。
図12図12は、乗場表示装置の機能を持つ乗場行先階登録装置の操作表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。本実施形態のエレベータシステムは、利用者の行先階を考慮したDCS制御により乗車号機を決定する行先階制御システム(DCS)であり、特に、利用者の携帯端末を利用して行先階の自動登録を行う機能を備えたものである。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態のエレベータシステムは、複数台のエレベータ(本実施形態ではA号機、B号機およびC号機の3台のエレベータを想定する)を備える。各エレベータの運転は、エレベータごとに設けられた個別の制御装置により制御される。すなわち、A号機の運転はA号機制御装置10A、B号機の運転はB号機制御装置10B、C号機の運転はC号機制御装置10Cによってそれぞれ制御される。
【0011】
A号機制御装置10A、B号機制御装置10BおよびC号機制御装置10Cは、それぞれDCS制御装置20に接続されている。DCS制御装置20は、行先階を登録した利用者Pが乗車する乗車号機をDCS制御により決定し、その乗車号機の制御装置(A号機制御装置10A、B号機制御装置10B、C号機制御装置10Cのいずれか)に対し、乗場呼び応答指令を出力する。DCS制御は、行先階が同じ利用者Pを同じエレベータに乗車させるように、乗場呼びに応答するエレベータの割当てを行う群管理割当制御である。
【0012】
建物の各階のエレベータ乗降口30A,30B,30Cの近傍のエリアは、乗場(エレベータホール)40と呼ばれる。乗場40には、利用者Pによる行先階の登録操作を受け付ける乗場行先階登録装置50と、後述のように行先階が自動登録された利用者Pの乗車号機の情報を表示する乗場表示装置60とが設置されている。乗場行先階登録装置50は、ケーブルを介してDCS制御装置20に接続されている。
【0013】
また、乗場40に向かう導線上のエリアであり、乗場40から所定距離離れた位置には、無線信号を発信する無線信号装置70が設置されている。無線信号装置70は、近距離無線通信により無線信号を送受信可能な電波ビーコン端末であり、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)ビーコン端末である。無線信号装置70は、ケーブルを介してDCS制御装置20に接続されており、エレベータシステムの稼働中は常時ONして所定周波数帯の無線信号(ビーコン信号)を発信している。
【0014】
上述の乗場行先階登録装置50、乗場表示装置60および無線信号装置70は、建物のすべての階に設置されてもよいし、例えばエントランス階などの一部の階のみに設置されてもよい。乗場行先階登録装置50、乗場表示装置60および無線信号装置70が設置されない階は、乗場40に行先方向(上昇または下降)を指定する方向ボタンが設けられ、利用者Pがこのボタンを操作することで、行先階を指定しない通常の乗場呼びが行われる。また、乗場行先階登録装置50のみが設置され、乗場表示装置60および無線信号装置70が設置されない階があってもよい。このような階では、行先階の登録は利用者Pが乗場行先階登録装置50を操作することによってのみ行われる。
【0015】
行先階を自動登録する利用者Pは、例えばスマートフォンなどの携帯端末80を携帯して乗場40に向かう。携帯端末80は、例えば鞄の中に入れた状態、あるいは衣服のポケットに入れた状態など、いわゆるハンズフリーの状態で携帯すればよい。この携帯端末80には、行先階自動登録用のアプリケーションソフトが予めインストールされている。このアプリケーションソフトは、例えば、エレベータシステム関連の企業のWebサイト上にて公開されており、このWebサイトから自由にダウンロードできるものである。利用者Pは、携帯端末80でこのアプリケーションソフトを実行し、事前に行先階を設定できる。
【0016】
なお、利用者Pが携帯する携帯端末80は、行先階自動登録用のアプリケーションソフトの実行環境となるコンピュータシステムと、例えばBLEなどの近距離無線通信を行う無線通信モジュールとを備えた端末であればよく、スマートフォン以外にも、通常の携帯電話機、タブレット端末、ノートPCなどを用いることができる。
【0017】
乗場40に設置された乗場表示装置60は、行先階を自動登録する利用者Pが乗場40に到着したときに乗車号機を確認できるように、利用者Pが乗車する乗車号機を示す乗車号機情報を表示する。本実施形態の乗場表示装置60は、無線信号装置70と同様の電波ビーコンモジュールを内蔵した液晶ディスプレイなどの表示装置であり、所定周波数帯の無線要求信号(ビーコン信号)を常時発信し、利用者Pが携帯する携帯端末80との間で近距離無線通信を行うことが可能となっている。ここで、無線要求信号(ビーコン信号)とは、携帯端末80が有している情報について、送信することを要求する信号である。情報とは、例えば、利用者Pに割り振られた乗車号機情報や、利用者Pについて識別する利用者情報などである。
【0018】
ここで、本実施形態のエレベータシステムにおける一連の動作について、図1中の括弧数字に沿って説明する。
【0019】
(1)無線信号装置70は、乗場40から所定距離離れた位置で無線信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場40に向かい、無線信号装置70の設置位置に近づくと、携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信する。
【0020】
(2)携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信すると、携帯端末80に予めインストールされた行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動する。なお、行先階自動登録用のアプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、次の(3)に進む。
【0021】
(3)アプリケーションソフトが起動すると、携帯端末80は例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70と接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を無線信号装置70に送信する。
【0022】
(4)無線信号装置70は、携帯端末80から利用者Pの行先階を受信すると、受信した利用者Pの行先階を、ケーブルを介してDCS制御装置20に伝送する。
【0023】
(5)DCS制御装置20は、無線信号装置70から利用者Pの行先階が伝送されると、この利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により、利用者Pの乗車号機を決定する。DCS制御は、上述のように、行先階が同じ利用者Pを同じエレベータに乗車させるようにエレベータの割当てを行う群管理割当制御であり、例えば図2に示す呼び登録テーブル21を用いて行われる。
【0024】
呼び登録テーブル21は、登録済みで未応答の乗場呼びの情報を保持するテーブルであり、図2に示すように、登録済みの個々の乗場呼びごとに乗車階、行先階および乗車号機が対応付けて格納されている。なお、乗車階は、行先階が自動登録された場合は、携帯端末80から利用者Pの行先階を受信した無線信号装置70が設置されている階であり、行先階が手動で(利用者Pの操作に応じて)登録された場合は、利用者Pによる行先階の登録操作を受け付けた乗場行先階登録装置50が設置されている階である。図2に示す例では、1階の無線信号装置70から受信した利用者Pの行先階が7階であった場合、既に登録された乗場呼びの中に乗車階が1階で行先階が7階の乗場呼びが存在し、この乗場呼びの乗車号機がA号機であるため、利用者Pの乗車号機はA号機に決定される。
【0025】
(6)DCS制御装置20は、利用者Pの乗車号機を決定すると、その乗車号機を示す乗車号機情報を、ケーブルを介して無線信号装置70に伝送する。また、DCS制御装置20は、乗車号機に対応する制御装置(例えばA号機に対応するA号機制御装置10A)に対し、その乗車号機を利用者Pの乗車階(例えば1階)に応答させる応答指令を出力する。
【0026】
(7)無線信号装置70は、DCS制御装置20から乗車号機情報が伝送されると、この乗車号機情報と指定時間を、近距離無線通信により利用者Pの携帯端末80に送信する。指定時間は、利用者Pが乗場40に到着するのが遅れたことを判定するための時間であり、例えば、無線信号装置70から乗場表示装置60までの距離(既知の値)と平均的な人の歩行時間とから求まる移動所要時間に対し、所定のマージン(例えば5秒)を加算して求められる。また、DCS制御装置20が乗車号機の制御装置に対して応答指令を出力する際に、乗車号機が利用者Pの乗車階の乗場40に到着するまでの所要時間を予測し、この予測時間を乗車号機情報とともに無線信号装置70に伝送する場合、この予想時間に対して所定のマージン(例えば10秒)を加算した時間を指定時間としてもよい。
【0027】
(8)携帯端末80は、無線信号装置70から乗車号機情報を受信すると、時間を計測するタイマをスタートさせるとともに、無線信号装置70から受信した乗車号機情報をメモリに一時記憶して保持する。
【0028】
(9)乗場表示装置60は、利用者Pの乗車階の乗場40で無線要求信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが乗車号機情報を保持した携帯端末80を携帯して乗場表示装置60の設置位置に近づくと、携帯端末80が乗場表示装置60からの無線要求信号を受信する。
【0029】
(10)携帯端末80は、乗場表示装置60からの無線要求信号を受信すると、タイマでカウントした時間を上述の指定時間と比較する。そして、タイマでカウントした時間が指定時間未満の場合、つまり、利用者Pが無線信号装置70の設置位置近傍から乗場表示装置60の設置位置近傍まで移動する間に指定時間が経過していなければ、携帯端末80は、無線信号装置70から受信して保持している乗車号機情報を、利用者Pを識別する利用者情報(例えば利用者名)とともに、乗場表示装置60に送信する。一方、タイマでカウントした時間が指定時間以上の場合、つまり、利用者Pが無線信号装置70の設置位置近傍から乗場表示装置60の設置位置近傍まで移動する間に指定時間が経過していれば、携帯端末80は、所定のエラー信号を利用者情報とともに乗場表示装置60に送信する。
【0030】
(11)乗場表示装置60は、携帯端末80から利用者情報とともに乗車号機情報を受信した場合、携帯端末80から受信した乗車号機情報を利用者情報と対応付けて表示する。一方、携帯端末80から利用者情報とともにエラー信号を受信した場合は、利用者Pに対して行先階の再登録を促すメッセージを利用者情報と対応付けて表示する。
【0031】
乗場表示装置60に表示される表示画面61の一例を図3および図4に示す。図3は、乗場表示装置60が携帯端末80から利用者情報とともに乗車号機情報を受信した場合の例であり、図4は、乗場表示装置60が携帯端末80から利用者情報とともにエラー信号を受信した場合の例である。
【0032】
乗場表示装置60の表示画面61は、例えば図3に示すように、未応答の乗場呼びのそれぞれについて、利用者Pが乗車すべきエレベータを示す乗車号機情報62を利用者情報63と対応付けて一覧表示する。そして、乗場表示装置60が携帯端末80から新たな情報を受信するたびにその情報が先頭に追加され、乗場呼びの応答が完了した(乗車号機が乗車階から出発した)情報が削除されるかたちで、随時表示が更新される。行先階を自動登録した利用者Pは、乗車階の乗場40に到着したときに、この乗場表示装置60の表示画面61を見てどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができ、所望の行先階に向かうエレベータにスムーズに乗車できる。
【0033】
ここで、乗場表示装置60が携帯端末80から利用者情報とともにエラー信号を受信した場合は、図4に示すように、乗車号機情報62の代わりに、利用者Pに対して行先階の再登録を促すメッセージ64が利用者情報63と対応付けて表示される。また、利用者Pの注意をひくために、アテンションマーク65が付加されてもよい。これにより、利用者Pは乗場40に到着するのが遅れたために行先階を再登録する必要があることを認識できる。この場合、利用者Pは乗場行先階登録装置50を操作することにより、行先階を手動で再登録する。
【0034】
乗場行先階登録装置50の操作画面51の一例を図5に示す。乗場行先階登録装置50は、例えばタッチパネル式液晶ディスプレイなどを備え、このタッチパネル式液晶ディスプレイに図5に示すような操作画面51が表示される。この操作画面51は、行先階を入力するテンキーなどの操作エリア52と、入力された行先階を表示する表示エリア53と、行先階の入力に応じてDCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報を表示する表示エリア54とを含む。乗場行先階登録装置50は、利用者Pが操作エリア52で入力した行先階をDCS制御装置20に伝送し、DCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報を表示エリア54に表示させる。したがって、この乗場行先階登録装置50を操作して行先階を再登録した利用者Pは、この表示エリア54を見てどのエレベータに乗車すればよいかを判断できる。
【0035】
なお、利用者Pの携帯端末80は、上記(9)において乗場表示装置60から無線要求信号(ビーコン信号)を受信したときに、上述の指定時間が経過していなければ、無線信号装置70から受信して保持している乗車号機情報を自身のディスプレイに表示させるようにしてもよい。この場合、利用者Pは、例えば乗場40が混雑していて乗場表示装置60の表示画面61が見づらい場合であっても、携帯端末80を取り出してディスプレイを見ることで乗車号機を確認できる。また、利用者Pの携帯端末80は、上記(9)において乗場表示装置60から無線要求信号(ビーコン信号)を受信したときに、上述の指定時間が経過している場合は、利用者Pに対して行先階の再登録を促すメッセージを自身のディスプレイに表示させるようにしてもよい。この場合、利用者Pは、例えば乗場40が混雑していて乗場表示装置60の表示画面61が見づらい場合であっても、携帯端末80を取り出してディスプレイを見ることで行先階の再登録が必要であることを認識できる。
【0036】
また、利用者Pがワイヤレスイヤホンを装着して携帯端末80で再生している音楽などを聞いている場合には、携帯端末80は、乗場表示装置60から無線要求信号を受信したときに、乗車号機を案内する音声メッセージ、あるいは、行先階の再登録を促す音声メッセージを音声出力してもよい。この場合、利用者Pは携帯端末80を取り出すことなく、乗車号機を確認したり、行先階の再登録が必要であることを認識したりすることが可能となる。
【0037】
図6は、アプリケーションソフトの実行時における携帯端末80の処理手順の一例を示すフローチャートである。この図6のフローチャートで示される一連の処理は、携帯端末80が無線信号装置70から無線信号(ビーコン信号)を受信して行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動することにより開始される。なお、アプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、携帯端末80が無線信号装置70から無線信号を受信することにより、図6のフローチャートで示される一連の処理が開始される。
【0038】
処理が開始されると、携帯端末80は、例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70に接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を無線信号装置70に送信する(ステップS101)。
【0039】
その後、携帯端末80は、無線信号装置70から乗車号機情報を受信するのを待機し(ステップS102)、無線信号装置70から乗車号機情報を受信すると(ステップS102:Yes)、タイマをスタートさせるとともに(ステップS103)、無線信号装置70から受信した乗車号機情報をメモリに一時記憶して保持する(ステップS104)。
【0040】
次に、携帯端末80は、乗場表示装置60から無線要求信号(ビーコン信号)を受信するのを待機し(ステップS105)、乗場表示装置60から無線要求信号を受信すると(ステップS105:Yes)、タイマでカウントした時間を指定時間と比較して指定時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。そして、携帯端末80は、指定時間が経過していなければ(ステップS106:No)、乗場表示装置60に対し、無線信号装置70から受信して保持している乗車号機情報を利用者情報とともに送信する(ステップS107)。これにより、乗場表示装置60の表示画面61には、利用者Pが乗車すべき乗車号機を示す乗車号機情報が、利用者Pを識別する利用者情報と対応付けて表示される。
【0041】
一方、指定時間が経過していている場合は(ステップS106:Yes)、携帯端末80は、乗場表示装置60に対し、所定のエラー信号を利用者情報とともに送信する(ステップS108)。これにより、乗場表示装置60の表示画面61には、利用者Pに対して行先階の再登録を促すメッセージが、利用者Pを識別する利用者情報と対応付けて表示される。
【0042】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態のエレベータシステムでは、利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場40に向かうと、この携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフト上で設定された利用者Pの行先階がDCS制御装置20に伝えられ、DCS制御装置20により利用者Pの乗車号機が決定される。そして、利用者Pが乗場40に到着すると、乗場40に設置された乗場表示装置60に、DCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報が表示され、利用者Pに伝えられる。したがって、本実施形態のエレベータシステムによれば、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現することができる。
【0043】
なお、以上の説明では、無線信号装置70が無線信号(ビーコン信号)を発信するとともに、携帯端末80から利用者Pの行先階を受信する機能を持つものとしたが、無線信号装置70は無線信号の発信のみを行い、携帯端末80が無線信号装置70から無線信号を受信すると、例えばWi−Fi(登録商標)などの無線LANを利用して、アクセスポイント経由でDCS制御装置20に利用者Pの行先階を送信する構成であってもよい。この場合、DCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報も、無線LANなどを利用して携帯端末80に送信される。
【0044】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、上述の第1実施形態と比較して、無線信号装置70が乗場40に近い位置に設置されている場合を想定した例である。
【0045】
図7は、第2実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態のエレベータシステムは上述の第1実施形態と同様の構成であるが、無線信号装置70が乗場40に近い位置、具体的には乗場表示装置60との間で例えばBLEなどの近距離無線通信が可能な位置に設置されている。
【0046】
ここで、本実施形態のエレベータシステムにおける一連の動作について、図7中の括弧数字に沿って説明する。
【0047】
(1)無線信号装置70は、無線信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場40に向かい、無線信号装置70の設置位置に近づくと、携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信する。
【0048】
(2)携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信すると、携帯端末80に予めインストールされた行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動する。なお、行先階自動登録用のアプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、次の(3)に進む。
【0049】
(3)アプリケーションソフトが起動すると、携帯端末80は例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70に接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を、利用者Pを識別する利用者情報(例えば利用者名)とともに無線信号装置70に送信する。
【0050】
(4)無線信号装置70は、携帯端末80から利用者Pの行先階と利用者情報を受信すると、受信した利用者情報を保持するとともに、受信した利用者Pの行先階を、ケーブルを介してDCS制御装置20に伝送する。
【0051】
(5)DCS制御装置20は、無線信号装置70から利用者Pの行先階が伝送されると、この利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により、利用者Pの乗車号機を決定する。
【0052】
(6)DCS制御装置20は、利用者Pの乗車号機を決定すると、その乗車号機を示す乗車号機情報を、ケーブルを介して無線信号装置70に伝送する。また、DCS制御装置20は、乗車号機に対応する制御装置に対し、その乗車号機を利用者Pの乗車階に応答させる応答指令を出力する。
【0053】
(7)無線信号装置70は、DCS制御装置20から乗車号機情報が伝送されると、例えばBLEなどの近距離無線通信により乗場表示装置60と接続し、DCS制御装置20から伝送された乗車号機情報を、携帯端末80から受信して保持しておいた利用者情報とともに乗場表示装置60に送信する。
【0054】
(8)乗場表示装置60は、無線信号装置70から利用者情報とともに乗車号機情報を受信すると、無線信号装置70から受信した乗車号機情報を利用者情報と対応付けて表示画面61に表示する。これにより、利用者Pは、乗場表示装置60の表示画面61を見てどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができ、所望の行先階に向かうエレベータにスムーズに乗車できる。
【0055】
(9)乗場表示装置60は、無線信号装置70から受信した乗車号機情報を携帯端末80に送信する。携帯端末80は、乗場表示装置60から乗車号機情報を受信することにより、上述の第1実施形態と同様に、この乗車号機情報を自身のディスプレイに表示したり、乗車号機を案内する音声メッセージを音声出力したりすることが可能となる。これにより、利用者Pは、例えば乗場40が混雑していて乗場表示装置60の表示画面61が見づらい場合であっても、携帯端末80を取り出してディスプレイを見る、あるいは携帯端末80が出力する音声メッセージをワイヤレスイヤホンなどで聴くことで乗車号機を確認できる。
【0056】
以上のように、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、利用者Pの携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフト上で設定された利用者Pの行先階がDCS制御装置20に伝えられ、DCS制御装置20により利用者Pの乗車号機が決定される。そして、DCS制御装置20によって決定された乗車号機を示す乗車号機情報が乗場表示装置60に表示され、利用者Pに伝えられる。したがって、本実施形態のエレベータシステムによれば、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現することができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、上述の第2実施形態と同様に無線信号装置70が乗場40に近い位置に設置され、かつ、乗場表示装置60がケーブルを介してDCS制御装置20と接続されている場合を想定した例である。
【0058】
図8は、第3実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態のエレベータシステムは上述の第1実施形態と同様の構成であり、第2実施形態と同様に無線信号装置70が乗場40に近い位置に設置されている。また、乗場表示装置60は、上述の第1実施形態で説明した電波ビーコンモジュールは内蔵しておらず、ケーブルを介してDCS制御装置20と接続されている。
【0059】
ここで、本実施形態のエレベータシステムにおける一連の動作について、図8中の括弧数字に沿って説明する。
【0060】
(1)無線信号装置70は、無線信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場40に向かい、無線信号装置70の設置位置に近づくと、携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信する。
【0061】
(2)携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信すると、携帯端末80に予めインストールされた行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動する。なお、行先階自動登録用のアプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、次の(3)に進む。
【0062】
(3)アプリケーションソフトが起動すると、携帯端末80は例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70に接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を、利用者Pを識別する利用者情報(例えば利用者名)とともに無線信号装置70に送信する。
【0063】
(4)無線信号装置70は、携帯端末80から利用者Pの行先階と利用者情報を受信すると、受信した利用者Pの行先階と利用者情報を、ケーブルを介してDCS制御装置20に伝送する。
【0064】
(5)DCS制御装置20は、無線信号装置70から利用者Pの行先階と利用者情報が伝送されると、利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により、利用者Pの乗車号機を決定する。DCS制御は、上述したように呼び登録テーブル21を用いて行われるが、本実施形態では、利用者Pの行先階とともに利用者Pを識別する利用者情報が伝送されるため、図2に示した呼び登録テーブル21に代えて、図9に示す呼び登録テーブル21が用いられる。図9に示す呼び登録テーブル21は、登録済みの乗場呼びの乗車階、行先階および乗車号機が、利用者情報と対応付けて格納されており、利用者Pごとの乗場呼びの登録および管理が可能となっている。
【0065】
(6)DCS制御装置20は、利用者Pの乗車号機を決定すると、その乗車号機を示す乗車号機情報を、利用者Pを識別する利用者情報とともに、ケーブルを介して乗場表示装置60に伝送する。また、DCS制御装置20は、乗車号機に対応する制御装置に対し、その乗車号機を利用者Pの乗車階に応答させる応答指令を出力する。
【0066】
(7)乗場表示装置60は、DCS制御装置20から利用者情報とともに乗車号機情報が伝送されると、DCS制御装置20から伝送された乗車号機情報を利用者情報と対応付けて表示画面61に表示する。これにより、利用者Pは、乗場表示装置60の表示画面61を見てどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができ、所望の行先階に向かうエレベータにスムーズに乗車できる。
【0067】
以上のように、本実施形態においても、上述の第1実施形態や第2実施形態と同様に、利用者Pの携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフト上で設定された利用者Pの行先階がDCS制御装置20に伝えられ、DCS制御装置20により利用者Pの乗車号機が決定される。そして、DCS制御装置20によって決定された乗車号機を示す乗車号機情報が乗場表示装置60に表示され、利用者Pに伝えられる。したがって、本実施形態のエレベータシステムによれば、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、乗場表示装置60に電波ビーコンモジュールを内蔵する必要がないため、構成を簡素化することができる。
【0069】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、無線信号装置70が乗場40に設置された乗場表示装置60に内蔵された構成の例である。すなわち、本実施形態では、乗場表示装置60に内蔵されている電波ビーコンモジュールが、利用者Pの携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフトを起動する無線信号を発信し、携帯端末80から送信される利用者Pの行先階を受信する無線信号装置70としての機能を持つ。
【0070】
図10は、第4実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態のエレベータシステムでは、図10に示すように、無線信号装置70が乗場表示装置60に内蔵されている。また、乗場表示装置60は、ケーブルを介してDCS制御装置20と接続されている。
【0071】
ここで、本実施形態のエレベータシステムにおける一連の動作について、図10中の括弧数字に沿って説明する。
【0072】
(1)乗場表示装置60に内蔵された無線信号装置70は、無線信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場表示装置60の設置位置に近づくと、携帯端末80が乗場表示装置60に内蔵された無線信号装置70からの無線信号を受信する。
【0073】
(2)携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信すると、携帯端末80に予めインストールされた行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動する。なお、行先階自動登録用のアプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、次の(3)に進む。
【0074】
(3)アプリケーションソフトが起動すると、携帯端末80は例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70に接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を、利用者Pを識別する利用者情報(例えば利用者名)とともに無線信号装置70に送信する。
【0075】
(4)乗場表示装置60は、携帯端末80から送信された利用者Pの行先階と利用者情報を無線信号装置70により受信すると、受信した利用者Pの行先階と利用者情報を、ケーブルを介してDCS制御装置20に伝送する。
【0076】
(5)DCS制御装置20は、乗場表示装置60から利用者Pの行先階と利用者情報が伝送されると、図9に示した呼び登録テーブル21を用い、利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により利用者Pの乗車号機を決定する。
【0077】
(6)DCS制御装置20は、利用者Pの乗車号機を決定すると、その乗車号機を示す乗車号機情報を、利用者Pを識別する利用者情報とともに、ケーブルを介して乗場表示装置60に伝送する。また、DCS制御装置20は、乗車号機に対応する制御装置に対し、その乗車号機を利用者Pの乗車階に応答させる応答指令を出力する。
【0078】
(7)乗場表示装置60は、DCS制御装置20から利用者情報とともに乗車号機情報が伝送されると、DCS制御装置20から伝送された乗車号機情報を利用者情報と対応付けて表示画面61に表示する。これにより、利用者Pは、乗場表示装置60の表示画面61を見てどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができ、所望の行先階に向かうエレベータにスムーズに乗車できる。
【0079】
以上のように、本実施形態のエレベータシステムにおいても、上述の第1実施形態乃至第3実施形態と同様に、利用者Pの携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフト上で設定された利用者Pの行先階がDCS制御装置20に伝えられ、DCS制御装置20により利用者Pの乗車号機が決定される。そして、DCS制御装置20によって決定された乗車号機を示す乗車号機情報が乗場表示装置60に表示され、利用者Pに伝えられる。したがって、本実施形態のエレベータシステムによれば、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現することができる。
【0080】
また、本実施形態では、無線信号装置70が乗場表示装置60に内蔵され、無線信号装置70を別途設置する必要がないため、構成を簡素化することができる。
【0081】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態は、無線信号装置70を内蔵する乗場表示装置60が乗場行先階登録装置50に設けられた構成の例である。すなわち、本実施形態では、乗場行先階登録装置50のタッチパネル式液晶ディスプレイが、無線信号装置70を内蔵する乗場表示装置60としての機能を併せ持つ。
【0082】
図11は、第5実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。本実施形態のエレベータシステムでは、図11に示すように、無線信号装置70を内蔵する乗場表示装置60が乗場行先階登録装置50と一体化され、行先階が自動登録された利用者Pの乗車号機を示す乗車号機情報が、乗場行先階登録装置50のタッチパネル式液晶ディスプレイに表示される。
【0083】
乗場表示装置60が一体化された乗場行先階登録装置50は、乗場40において利用者Pが行う行先階の登録操作を受け付けるだけでなく、行先階が自動登録された利用者Pの乗車号機を示す乗車号機情報を表示する機能を持つ。すなわち、本実施形態の乗場行先階登録装置50は、図5に示したような操作画面51に代えて、図12に示すような操作表示画面55をタッチパネル式液晶ディスプレイに表示する。
【0084】
図12に示す操作表示画面55は、行先階を入力するテンキーなどの操作エリア52、入力された行先階を表示する表示エリア53、行先階の入力に応じてDCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報を表示する表示エリア54に加え、行先階の自動登録に応じてDCS制御装置20により決定された乗車号機を示す乗車号機情報62を利用者Pを識別する利用者情報63と対応付けて表示する表示エリアを持つ。この表示エリアには、行先階を自動登録した利用者Pごとの利用者情報63と乗車号機情報62が、タッチ操作可能な操作ボタン66として表示される。
【0085】
本実施形態では、行先階を自動登録した利用者Pは、乗場行先階登録装置50のタッチパネル式液晶ディスプレイに表示された操作表示画面55を見ることで、どのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができる。また、行先階を自動登録した利用者Pは、この操作表示画面55上で行先階を変更する操作を行うこともできる。すなわち、行先階を自動登録した利用者Pが、自身の利用者情報と乗車号機情報を表示している操作ボタン66をタッチ操作で選択し、操作エリア52のテンキーにより変更後の行先階を入力すると、入力した行先階がDCS制御装置20に伝送され、DCS制御装置20により乗車号機が新たに決定されて、その乗車号機を示す乗車号機情報が表示エリア54に表示される。
【0086】
このとき、DCS制御装置20は、図9に示したように利用者情報と対応付けて登録済みの乗場呼びを管理する呼び登録テーブル21を用いてDCS制御を行い、新たな乗車号機を決定する。このため、ある利用者Pの行先階の変更によって他の利用者Pの乗場呼びが影響を受けることがない。例えば、図9に示した例で、利用者情報が「○○」の利用者Pが行先階を7階から他の階に変更したとしても、利用者情報が「△△」の利用者Pの行先階が7階のままであるため、乗車階が1階で行先階が7階の乗場呼びに対するA号機の割当てが変更されることはない。
【0087】
ここで、本実施形態のエレベータシステムにおける一連の動作について、図11中の括弧数字に沿って説明する。
【0088】
(1)乗場行先階登録装置50と一体化された乗場表示装置60内の無線信号装置70は、無線信号(ビーコン信号)を常時発信している。利用者Pが携帯端末80を携帯して乗場行先階登録装置50の設置位置に近づくと、携帯端末80が乗場表示装置60内の無線信号装置70からの無線信号を受信する。
【0089】
(2)携帯端末80が無線信号装置70からの無線信号を受信すると、携帯端末80に予めインストールされた行先階自動登録用のアプリケーションソフトが起動する。なお、行先階自動登録用のアプリケーションソフトがバックグラウンドですでに起動されている場合は、次の(3)に進む。
【0090】
(3)アプリケーションソフトが起動すると、携帯端末80は例えばBLEなどの近距離無線通信により無線信号装置70に接続し、アプリケーションソフト上で事前に設定された利用者Pの行先階を、利用者Pを識別する利用者情報(例えば利用者名)とともに無線信号装置70に送信する。
【0091】
(4)乗場行先階登録装置50は、携帯端末80から送信された利用者Pの行先階と利用者情報を乗場表示装置60内の無線信号装置70により受信すると、受信した利用者Pの行先階と利用者情報を、ケーブルを介してDCS制御装置20に伝送する。
【0092】
(5)DCS制御装置20は、乗場行先階登録装置50から利用者Pの行先階と利用者情報が伝送されると、図9に示した呼び登録テーブル21を用い、利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により利用者Pの乗車号機を決定する。
【0093】
(6)DCS制御装置20は、利用者Pの乗車号機を決定すると、その乗車号機を示す乗車号機情報を、利用者Pを識別する利用者情報とともに、ケーブルを介して乗場行先階登録装置50に伝送する。また、DCS制御装置20は、乗車号機に対応する制御装置に対し、その乗車号機を利用者Pの乗車階に応答させる応答指令を出力する。
【0094】
(7)乗場行先階登録装置50は、DCS制御装置20から利用者情報とともに乗車号機情報が伝送されると、DCS制御装置20から伝送された乗車号機情報を利用者情報と対応付けて操作表示画面55に表示する。これにより、利用者Pは、乗場行先階登録装置50の操作表示画面55を見てどのエレベータに乗車すればよいかを直ぐに判断することができ、所望の行先階に向かうエレベータにスムーズに乗車できる。
【0095】
以上のように、本実施形態のエレベータシステムにおいても、上述の第1実施形態乃至第4実施形態と同様に、利用者Pの携帯端末80にインストールされているアプリケーションソフト上で設定された利用者Pの行先階がDCS制御装置20に伝えられ、DCS制御装置20により利用者Pの乗車号機が決定される。そして、DCS制御装置20によって決定された乗車号機を示す乗車号機情報が乗場表示装置60に表示され、利用者Pに伝えられる。したがって、本実施形態のエレベータシステムによれば、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現することができる。
【0096】
また、本実施形態では、乗場表示装置60が乗場行先階登録装置50と一体化され、行先階を自動登録した利用者Pが、乗場行先階登録装置50を用いて行先階を変更できる構成としているので、利用者Pの利便性を向上させることができる。
【0097】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のエレベータシステムによれば、無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者Pの携帯端末80に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置70と、アプリケーションソフトの起動により携帯端末80から送信される利用者Pの行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち利用者Pが乗車する乗車号機を決定し、該乗車号機を利用者Pの乗車階の乗場40に応答させるDCS制御装置20と、利用者Pの乗車階の乗場40で、乗車号機を示す乗車号機情報を表示する乗場表示装置60と、を備えることにより、利用者Pの行先階を自動登録できるとともに、乗場40における利用者Pのスムーズな乗車を実現できる。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
20 DCS制御装置、40 乗場、50 乗場行先階登録装置、60 乗場表示装置、70 無線信号装置、80 携帯端末、P 利用者。
【要約】
【課題】利用者の行先階を自動登録できるとともに、乗場における利用者のスムーズな乗車を実現できるエレベータシステムを提供する。
【解決手段】実施形態に係るエレベータシステムは、無線信号装置と、DCS制御装置と、乗場表示装置と、を備える。無線信号装置は、無線信号を発信し、該無線信号を受信した利用者の携帯端末に予めインストールされている所定のアプリケーションソフトを起動する。DCS制御装置は、アプリケーションソフトの起動により携帯端末から送信される利用者の行先階を考慮したDCS制御により、複数台のエレベータのうち利用者が乗車する乗車号機を決定する。乗場表示装置は、利用者の乗車階の乗場で、乗車号機を示す乗車号機情報を表示する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12