【実施例】
【0016】
実施例に係るデータ管理システムおよびデータ管理方法につき、
図1から
図24を参照して説明する。
【0017】
データ管理システムは、様々な業態においてサービスの提供者と被提供者間でのやり取り、例えば、医療機関では個人の診療録、金融機関では顧客の取引記録や取引履歴、法律関係機関では判例や遺言や不動産取引等の法務に関わる契約書類、メーカーでは製品の真贋証明、の管理資料が電子データ化され、後に参照できるようにサーバで管理するシステムである。本実施例では、契約書類を管理することを例に取り説明する。本実施例におけるデータ管理システムでは、契約書類作成の主体となるクライアント(以下、「自社」ともいう。)と、その契約書類による契約の相手方のクライアント(以下、「相手」という。)とが、後述するサービスサーバ1のAPIサーバ7を介して、契約書ファイルを適宜更新していくことができる。その際の過程版の契約書ファイルと、最終的に締結される最終版の契約書ファイルとは、プラットフォームの異なる第1ブロックチェーン(例えばEOS)と第2ブロックチェーン(例えばEthereum)とに振り分けて記録され、各ブロックチェーンから記録の際に取得した各ハッシュ値を、各契約書ファイルを特定する特定情報に関連付けて保管することで、一連の契約書ファイルとして保管・管理される。例えば、自社内において、契約書の素案を担当者が作成し、作成した契約書の第1版として保管された後に、自社内の上司が契約書の第1版を閲覧後、必要に応じて修正して修正版がその都度保管され、その後上司により承認された契約書が承認版として保管される。また、相手方の担当者や上司によっても修正されて修正版がその都度保管され、その後上司により承認された契約書が承認版として保管される。ここまでの契約書ファイルは、第1ブロックチェーン(例えばEOS)に保管され、最終的に両者で承認を得たことにより所定の指示を受付けると最終版の契約書は第2ブロックチェーン(例えばEthereum)に保管される。
【0018】
図1は、本発明のデータ管理システムに係る実施形態を実現するためのシステム及びネットワークを示し、符号1は管理会社(管理者)がデータ管理システムを提供するためのサービスサーバであり、符号2はクライアント及び出力手段としてのパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略称する)、であり、これらはインターネットを通じて相互通信可能に接続されている。パソコン2には、入力手段としてのスキャナー3、キーボード4、マウス5等がそれぞれ接続されている。その他、入力手段としてはペンタブレットとスタイラスペン等も利用できる。
【0019】
サービスサーバ1は、API(Application Program Interface)サーバ7と利用者管理サーバ8と処理サーバ9がネットワークで接続されて構成されており、クライアント側のパソコン2から契約書類にかかるファイルを受信し、このファイルの管理を行う。また、サービスサーバ1は、契約書類にかかるファイルを、後述するブロックチェーンプラットフォームの動作環境及び分散型ファイルシステムの動作環境である複数のコンピュータ群20,21,22に対して記録させる構成となっている。
【0020】
ブロックチェーンプラットフォームの動作環境及び分散型ファイルシステムの動作環境である複数のコンピュータ群20,21,22のうち、コンピュータ群20はIPFS(Inter Planetary File System)なる分散型ファイルシステムを構成する分散サーバとしてのノードである。コンピュータ群21は、EOSなるプラットフォームのブロックチェーンのブロックを生成する複数のノードであり、分散型ファイルシステムを構成する分散サーバとしてのノードでもある。コンピュータ群22は、Ethereumなるプラットフォームのブロックチェーンのブロックを生成する複数のノードであり、分散型ファイルシステムを構成する分散サーバとしてのノードでもある。
【0021】
APIサーバ7は、データ管理システムを提供する管理会社が運用するサーバであり、クライアント側のパソコン2から受信した契約書類にかかるファイルをブロックチェーン上に保管するために必要なデータの形式変換等を行うAPIを提供するインターネット上のサーバである。尚、APIはAPIサーバ7にて実装されてクライアント側のパソコン2で起動したウェブブラウザ上で動作する。
【0022】
データ管理システムを利用するユーザは、データ管理システムの管理会社が公開するホームページにて、予め固有のユーザID(ユーザ識別情報)とパスワードとを登録しておく。利用者管理サーバ8は、ホームページにて入力されたユーザIDとパスワードと当該ユーザIDのユーザに割り当てられたブロックチェーンへのリンク情報との対応関係を保有する対応テーブルを備えている。
【0023】
ユーザがデータ管理システムに入力データを入力する際には、まずパソコン2で起動したウェブブラウザを用いて管理会社が公開するホームページにアクセスする。
図2に示されるように、ホームページの初期画面10には、ユーザIDの入力欄11とパスワードの入力欄12と、ログインボタン13とが表示され、アクセスしてきたユーザに対して、ユーザIDとパスワードの入力が求められる。
【0024】
ユーザは、これらユーザIDの入力欄11とパスワードの入力欄12に入力し、ログインボタン13を選択する。ログインボタン13が選択されると、入力されたユーザIDとパスワードとは利用者管理サーバ8(
図1参照)に送られ、入力されたユーザIDとパスワードとの組み合わせが対応テーブルを参照して正しいことが判断できたことに基づき、
図3に示されるユーザーページ14が表示される。
【0025】
ユーザーページ14には、契約書作成に用いることができるテンプレートの登録や編集を行うテンプレート機能を呼び出すテンプレート表示15、契約書ファイルを作成する機能を呼び出す契約書作成表示17、ログイン中のユーザが関わった、または継続して関わっている契約書ファイルを確認する機能を呼び出すリスト表示18、通知アイコン19等が表示される。例えば、テンプレート表示15が選択されると、予め登録されている複数の契約書ファイルのテキストデータのテンプレートを呼び出すことができる。
【0026】
通知アイコン19には、確認していない通知メッセージの数が重ねて表示されるようになっており、この通知アイコン19を選択することで、ログイン中のユーザが継続して関わっている契約書ファイルに関わる複数の担当者のアクションや、サービスの運営側からのお知らせ等を確認できる通知ウィンドウ19aが表示される。
【0027】
契約書ファイルを作成する機能を呼び出す契約書作成表示17が選択されると、
図4に示されるように、ユーザが使用するパソコン2には契約書作成画面25が表示される。契約書作成画面25には、まず
図4に示される前文入力表示25aが表示される。前文入力表示25aには、契約書名を入力する入力フォーム26、契約書ファイルに付すタグを入力できる入力フォーム27、入力確認ボタン28が表示される。入力が完了し、入力確認ボタン28が選択されると、
図5に示される本文入力表示25bが表示される。
【0028】
本文入力表示25bには、フォルダ名を選択するプルダウン表示29、契約書ファイルのテキストデータの本文を入力可能なエディタ30、添付ファイルをアップロードできる添付ファイル登録ボタン31、テンプレートを呼び出すことができるテンプレートインポートボタン32、ステータス表示33、入力確認ボタン34が表示される。
【0029】
エディタ30内に契約書ファイルのテキストデータの本文を入力するにあたり、ユーザは、テンプレート表示15を選択することで呼び出される複数の契約書ファイルのテキストデータのテンプレート機能を用いることができ、テンプレートインポートボタン32を選択することで、複数の契約書ファイルのテキストデータのテンプレートの中から一つのテンプレートを呼び出すことでテキストデータの入力を一部省略することもできる。また、添付ファイル登録ボタン31を選択することで、テキストデータとともに契約書ファイルを構成する写真や動画や音声等をアップロードさせることができる。
【0030】
エディタ30は、プレビューボタン35と一時保存ボタン36とを備えている。エディタ30では、XML形式のテキスト表示であるが、データ管理システムでは最終的な出力はPDF形式で表示する。そのため、プレビューボタン35を選択することで、作成途中の契約書ファイルのテキストデータを、実際の出力形式に近い形で確認することができる。
【0031】
ユーザによるエディタ30内に契約書ファイルのテキストデータの入力が完了し、入力確認ボタン34が選択されると、入力されたテキストデータと、添付ファイル登録ボタン31によりアップロードされた添付ファイルがあればその添付ファイルとを合わせて契約書ファイルとして受付け(受付手段)、当該ユーザを特定する特定情報(ここではユーザID)に契約書ファイルを関連付けてサービスサーバ1に保管される。またサービスサーバ1は、契約書ファイルを受付けたことに基づき、入力した内容を記録する処理に移る。入力確認ボタン34が選択されると、
図6に示される暗号化キー入力画面37が表示される。
【0032】
図5に示すステータス表示33では、当該契約書ファイルに対して行われたアクションが時系列表示される。例えば、契約書の作成が開始されたことや、前文の入力が完了したこと等が表示される。
【0033】
図6に示す暗号化キー入力画面37では、契約書を暗号化し、閲覧時に復号化するために付与する暗号化キーを設定する画面であり、暗号化キーを入力する入力フォーム38と、暗号化を決定する暗号化ボタン39と、が表示される。
【0034】
入力フォーム38に暗号化キーが入力され、暗号化ボタン39が選択されさらに確認ポップアップの確認ボタンが選択されると、
図7に示される暗号化完了表示25cが表示される。暗号化完了表示25cには、暗号化が完了した旨を伝えるテキストが表示されるとともに、前文入力表示25aと本文入力表示25bとに入力された内容が表示される。また、暗号化完了表示25cの最下部には、契約参加者追加ボタン40が表示される。
【0035】
契約参加者追加ボタン40が選択されると、契約書作成画面25から
図8に示される契約参加者追加画面41に画面が切り替わる。
【0036】
図8に示すように、契約参加者追加画面41には、契約書作成画面25にて入力された契約書名、契約書タグ、フォルダ名等、が表示されるとともに、契約参加者追加領域42が表示される。契約参加者追加領域42には、追加する契約参加者が「自社内の」「相手の」のいずれであるか選択できるプルダウン表示42a、契約参加者の役割を「担当者」「承認者」「確認者」のいずれかに選択できるプルダウン表示42b、契約参加者のメールアドレスを入力可能な入力フォーム42c、追加ボタン42dが表示される。入力フォーム42cには、メールアドレスを直接入力する他に、予め連絡先が登録されている場合には、氏名を入力することでメールアドレスが自動的に入力される。
【0037】
契約参加者追加領域42内の入力が完了し、追加ボタン42dが選択されると、
図9に示されるように、追加した契約参加者が一覧表示される。契約参加者が一覧表示には、氏名入力フォーム44、入力したメールアドレス、アクセスコードを入力する入力フォーム45、アクセスコードの生成ボタン46、がそれぞれ表示される。アクセスコードは、ユーザが任意に設定可能であり、生成ボタン46が選択されることで、後述する契約参加者による契約書の確認時に必要なアクセスコードが生成され、契約参加者を特定する情報(例えばメールアドレス)に紐付けられてサービスサーバ1で保管される。
【0038】
追加した契約参加者の一覧表示には、チェックボックス47がそれぞれ表示されており、任意のチェックボックス47にチェックを入れた状態で、メール送信ボタン48が選択されると、チェックボックス47がチェックされた契約参加者のメールアドレスに対して招待メール(
図11参照)が送信される。
【0039】
また、追加した契約参加者の一覧表示の下方には、ブロックチェーンへの記録ボタン49が表示されており、この記録ボタン49が選択されると、契約書作成画面25にて作成された契約書ファイルがEOSブロックチェーン(EOSのネットワークを構成するコンピュータ群21(
図1参照))上にアップロードされ記録される(振分記録手段)。
図10(a)に示されるように、記録の進捗を示すポップアップ表示50aがアニメーションにて表示され、記録が完了すると、ブロックチェーン上に記録が完了した旨を示す文言と、ブロックチェーンから返されたハッシュ値がポップアップ表示50bにて示される(
図10(b)参照)。
【0040】
また、サービスサーバ1は、記録ボタン49が選択されたことに基づき、追加した契約参加者の情報を、当該契約書ファイルを示す特定の情報(ここでは、提起された契約書に対して振られる固有のID)に紐付けて保管する(保管手段)。
【0041】
次いで、
図22から
図24のフローチャートを用いてサービスサーバ1が行う電子契約のプロセスを説明する。
図22は、契約参加者において「担当者」と「確認者」による契約書の確認を行う契約書確認処理を示すフローチャートである。尚、契約書を取り交わす自社内の契約参加者はデータ管理システムのサービスにユーザ登録されており、相手の契約参加者がユーザ登録されていない場合を例に取り説明する。
【0042】
上述したように、自社内契約参加者である「担当者(ユーザ)」は、
図2に示されるホームページの初期画面10にてユーザIDとパスワードを入力してログインする(ステップSa01)。そして、
図5に示される契約書作成画面25にて、契約書ファイルを作成する(ステップSa02)。サービスサーバ1は、契約書ファイルにテキストデータを除く添付ファイル等がある場合には、契約書のテキストデータを除く添付ファイル等を抽出し、契約書のテキストデータを
図6に示される暗号化キー入力画面37にて設定された暗号化キーにより暗号化する(ステップSa03)。
【0043】
サービスサーバ1は、抽出した契約書のテキストデータを除く添付ファイル等をIPFSのプラットフォームの分散型ファイルシステム(IPFSのネットワークを構成するコンピュータ群20(
図1参照))上にアップロードする(ステップSa04)。サービスサーバ1は、IPFSの分散型ファイルシステムから返されたハッシュ値を一旦保持し、このハッシュ値と暗号化された契約書ファイルのXMLであるテキストデータと合わせて、EOSのプラットフォームのブロックチェーン(EOSのネットワークを構成するコンピュータ群21(
図1参照))上にアップロードし記録を行う(振分記録手段,ステップSa05)。そして、サービスサーバ1は、EOSのブロックチェーンから返されたハッシュ値(以下「EOSハッシュ値」という)を提起された契約書に対して振られる固有のIDに関連づけて保管する(保管手段)。
【0044】
サービスサーバ1は、EOSのブロックチェーン21からハッシュ値が返されたことに基づき、契約書ファイルの確認要請をユーザから受け付け可能とする。詳しくは、ユーザが
図8に示す契約参加者追加画面41において、契約参加者のメールアドレスに対して招待メールを送信する操作を行うことで、サービスサーバ1は契約書ファイルの確認要請が行われたと判断し、追加された契約参加者における「担当者」と「確認者」のメールアドレスに対して、招待メール51(
図11参照)を送信し契約書確認要請を行う(ステップSa06)。サービスサーバ1は招待メール51に加えて、契約参加者追加画面41にて入力されたアクセスコードを記載したメールを別送する。
【0045】
図11に示されるように、招待メール51には、確認を要請された契約書名、招待者、招待された契約参加者、契約締結期限に加え、作成された契約書が記録されるEOSのブロックチェーンのハッシュ値52が記載されている。更に招待メール51には、当該確認を要請された契約書を確認できるサービスサーバ1が提供する電子契約のウェブページにリンクされた契約確認ボタン53が表示される。
【0046】
招待された契約参加者が、契約確認ボタン53を選択し、サービスサーバ1が提供する電子契約のウェブページにアクセスすると、サービスサーバ1は、アクセスしてきたパソコン2の表示部に対して
図12に示されるアクセスコード確認画面54を表示させる。アクセスコード確認画面54には、メールを受信した人物に契約書ファイルの確認要請が行われた旨を示す表示55と、アクセスコードを入力する入力フォーム56と、入力されたアクセスコードを送信するアクセスコード確認ボタン57とを備えている。契約参加者は、別送されたアクセスコードを入力フォーム56に入力し、アクセスコード確認ボタン57を選択する。
【0047】
サービスサーバ1は、アクセスコード確認ボタン57が選択されたことに基づき、入力されたアクセスコードが正しいか否かの判定を行う(ステップSa07)。アクセスコードが正しい場合、
図13に示される契約書確認画面58を表示する。尚、
図13の契約書確認画面58は、自社内の契約参加者向けの画面である。契約書確認画面58には、契約書名、契約書タグ、フォルダ名、契約書バージョン、契約書ファイルが記録されたEOSのブロックチェーンのハッシュ値等が表示される。このとき、サービスサーバ1には、EOSのブロックチェーン及びIPFSから契約書ファイルを構成するファイルをダウンロードして保持している。
【0048】
また、契約書確認画面58には契約書ファイルを暗号化した暗号化キーの入力を促す表示59が表示される。この表示59には、暗号化キーを入力する入力フォーム60と、入力された暗号化キーを送信する解除ボタン61とを備えている。暗号化キーは、様々な方法で契約参加者に通知できるが、ここでは、サービスサーバ1は招待メール51とアクセスコードを記載したメールとは別に、契約参加者に送信するものとする。
【0049】
サービスサーバ1は、解除ボタン61が選択されたことで入力された暗号化キーが正しいか否かの判定を行う(ステップSa08)。詳しくは、暗号化キーを用いてダウンロードした契約書の復号化を試行し、成功した場合、
図14に示されるように、復号化された契約書ファイルのテキストデータ62を契約書確認画面58に閲覧可能に表示させる(ステップSa09)。
【0050】
契約書確認画面58には、復号化された契約書ファイルのテキストデータ62に加えて、ステータス表示63と、復号化された添付ファイルを確認する確認ボタン64とが表示される。契約参加者は、確認ボタン64を選択することで添付ファイルを確認することができる。
【0051】
契約書ファイルのテキストデータ62の下方には、契約書をPDF形式でダウンロードできるダウンロードボタン65、契約書の編集機能を呼び出す編集ボタン66、契約参加者を更に追加する機能を呼び出す追加ボタン67が表示される。
【0052】
また、
図15の契約書確認画面70は、相手の契約参加者向けの画面であり、自社内の契約参加者向けの契約書確認画面58と異なり契約書タグ、契約書フォルダの表示がなく、復号化された契約書ファイルのテキストデータ72と、添付ファイルを確認する確認ボタン71とステータス表示73と、コメントボタン74が表示される。
【0053】
契約参加者は、コメントボタン74を選択することで、確認した契約書に対して、修正要請等のコメントを入力することができ、このコメントは全契約参加者の契約書確認画面58,70にて閲覧することができる。実際に修正要請等のコメントが入力されると(ステップSa10)、サービスサーバ1は、メールや通知(
図4の通知アイコン19)によって、自社内のユーザにコメントがあることを通知する(通知手段、ステップSa11)。
【0054】
自社内のユーザは、必要であれば契約書ファイルの内容の修正を行う(ステップSa12)。修正された契約書は、
図7に示される暗号化キー入力画面37にて設定された暗号化キーにより暗号化され(ステップSa03)、契約書ファイルの修正が発生する度にステップSa03以降の処理が繰り返され、修正された契約書ファイルが新たな版として、EOSのブロックチェーン上に記録され、そのEOSハッシュ値が版のナンバリングとともに、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管される(保管手段)。
【0055】
図16を参照し、契約書確認画面70の契約書バージョン表示75を選択すると、それまでに作成された複数の契約書ファイルの一覧表示76が表示される。一覧表示76内には比較ボタン77を備え、比較ボタン77が選択されると、その時点での最新の契約書ファイルと、以前の契約書ファイルとの比較を一画面で表示することができ、修正箇所の確認が容易となっている。
【0056】
図15に示されるように、契約書確認画面70の下部には、確認した契約書に対するアクションボタン80が表示されている。アクションボタン80は、契約参加者の役割である「担当者」「承認者」「確認者」(
図8参照)に応じて、それぞれ異なる表示がなされる。詳しくは、「担当者」であれば「承認要請」、「確認者」であれば「契約書確認」、「承認者」であれば「契約書承認」となる。
【0057】
「担当者」により「承認要請」のアクションボタン80が選択されると、サービスサーバ1は「担当者」である当該契約参加者の確認が完了したと判断し、担当者確認完了情報を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管する。「確認者」により「契約書確認」のアクションボタン80が選択されると、サービスサーバ1は「確認者」である当該契約参加者が閲覧する契約書確認画面58,70から、
図17に示される契約書確認要請画面78に切り替える。
【0058】
契約書確認要請画面78には、契約書ファイルのテキストデータのプレビュー79と、契約書の確認が完了したことをサービスサーバ1に送信する確認完了ボタン81とが表示される。プレビュー79には、コメントを入力できるコメントボタン79aが表示され、他の契約参加者へコメントを伝えることができる。また、「確認者」により確認完了ボタン81が選択されると、サービスサーバ1は「確認者」である当該契約参加者の確認が完了したと判断し、契約書確認情報を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管する。
【0059】
サービスサーバ1は、自社内の契約参加者の「担当者」によって「承認要請」のアクションボタン80が選択されたこと、自社内の契約参加者の「確認者」によって確認完了ボタン81が選択されたこと、加えて相手の契約参加者の「担当者」によって「承認要請」のアクションボタン80が選択されたこと、相手の契約参加者の「確認者」によって確認完了ボタン81が選択されたこと、契約書確認画面58,70にて、契約参加者から修正要請等のコメントが入力されなかった(ステップSa10)こと、の全ての条件が満たされたことに基づき、契約書承認処理に移る。契約書承認処理は
図23のフローチャートにて示す。
【0060】
契約書の承認処理が始まると、サービスサーバは、自社内の「承認者」の承認の完了を待機する状態となる。そして、自社内の「承認者」によって「契約書承認」のアクションボタン80が選択されると、サービスサーバ1は「承認者」である当該契約参加者が閲覧する契約書確認画面58(
図14参照)から、
図18に示される契約書承認画面82に切り替え、自社内の「承認者」に対して契約書の承認を要請する(ステップSb01)。同様に、相手の「承認者」によって「契約書承認」のアクションボタン80が選択されると、サービスサーバ1は
図19に示される契約書承認画面86を相手の「承認者」のパソコン2に表示させる。
【0061】
図18に示される契約書承認画面82は、自社内の契約参加者における「承認者」向けの画面である。契約書承認画面82には、契約書ファイルのテキストデータのプレビュー79、署名領域83、印章領域84、契約書の承認が完了したことをサービスサーバ1に送信する承認完了ボタン85が表示される。
【0062】
「承認者」である契約参加者は、署名領域83に署名イメージデータを入力し、印章領域84に印章イメージデータを入力し、承認完了ボタン85を選択する。署名イメージデータと印章イメージデータとは、ここでは詳しく説明しないアップロード機能によって、予めサービスサーバ1に登録しておく。
【0063】
同様に相手の「承認者」によって「契約書承認」のアクションボタン80が選択されると、サービスサーバ1は
図19に示される契約書承認画面86を表示させ、相手の「承認者」に対して契約書の承認を要請する(ステップSb02)。
【0064】
図19の契約書承認画面86は、相手の契約参加者における「承認者」向けの画面である。契約書承認画面86には、契約書ファイルのテキストデータのプレビュー79、署名領域87、印章領域88、契約書の承認が完了したことをサービスサーバ1に送信する承認完了ボタン89が表示される。
【0065】
ここで、サービスサーバ1は、自社内の「承認者」から修正要請等のコメントが入力されなかったか否かを判定(ステップSb03)し、修正要請等のコメントの入力がなく、かつ自社内の「承認者」による承認完了ボタン85の選択があった(ステップSb05)場合には、サービスサーバ1は「承認者」である当該契約参加者の承認が完了したと判断し、自社内の契約書承認情報を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管する。
【0066】
同様にサービスサーバ1は、相手の「承認者」から修正要請等のコメントが入力されなかったか否かを判定(ステップSb04)し、修正要請等のコメントの入力がなく、かつ相手の「承認者」による承認完了ボタン89の選択があった(ステップSb06)場合には、相手の契約書承認情報を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管する。
【0067】
サービスサーバ1は、自社内の「承認者」による承認完了ボタン85の選択と、相手の「承認者」による承認完了ボタン89の選択とにより、両社の承認があり、承認が完了されたと判断し、承認完了情報を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐付けて一連の契約書ファイルとして保管する。
【0068】
サービスサーバ1は、両社の承認が完了された(所定の指示を受付けた)と判断する(ステップSb07)と、最終版記録処理に移る。最終版記録処理では、まず自社内の「担当者」である契約参加者に通知を行う。「担当者」は、ユーザーページ14の通知ウィンドウ19a(
図3)から契約書確認画面58(
図14)を表示させる。ここでは図示しないが、担当者が契約書確認画面58に表示される記録開始ボタンを選択することで、最終版記録処理が開始される。なお、ステップSb07において、担当者による選択が必要である例について説明しているが、ステップSb05、Sb06がイエスとなった場合に、両者によって承認されたと判断し、担当者への通知等を省略し、
図24に示す最終版記録処理に移行するものであってもよい。
【0069】
図24は、サービスサーバ1側において、記録開始ボタンが選択されたことにより開始される最終版記録処理を示すフローチャートである。最終版記録処理が開始されると、サービスサーバ1は、最新版であり、承認が完了された版の契約書ファイルをEOSハッシュ値に基づき、EOSのブロックチェーン及びIPFSから契約書ファイルを構成するファイルをダウンロード(ステップSc01)し、次いでタイムスタンプを入手する(ステップSc02)。
【0070】
サービスサーバ1は、ダウンロードした契約書のテキストデータを
図6に示される暗号化キー入力画面37にて設定された暗号化キーにより暗号化(ステップSc03)し、更に契約書のテキストデータを除く添付ファイルと署名イメージデータと印章イメージデータとをIPFSのプラットフォームの分散型ファイルシステム(IPFSのネットワークを構成するコンピュータ群20(
図1参照))上にアップロードする(ステップSc04)。
【0071】
サービスサーバ1は、IPFSの分散型ファイルシステムから返されたハッシュ値を一旦保持し、このハッシュ値と暗号化された契約書ファイルのXMLであるテキストデータと、承認が完了された版のEOSハッシュ値と、入手したタイムスタンプと、を合わせて、Ethereumなるプラットフォームのブロックチェーン(Ethereumのネットワークを構成するコンピュータ群22(
図1参照))上にアップロードし記録する(振分記録手段,ステップSc05)。自社内の「担当者」であるユーザはEthereumのブロックチェーン22に記録する際の進捗状況を、
図20に示される記録進捗画面90にて確認することができる。サービスサーバ1は、Ethereumのブロックチェーン22から返されたハッシュ値(以下「Ethereumハッシュ値」という)を、提起された契約書に対して振られる固有のIDに紐づけて保管する(保管手段)。
【0072】
サービスサーバ1は、Ethereumハッシュ値を受信したことに基づき、当該契約書の締結が完了したと判断(ステップSc06)し、
図21に示される締結完了表示92を自社内の「担当者」の契約書確認画面58に表示させる。
【0073】
締結完了表示92には、Ethereumハッシュ値93が表示され、締結完了表示92の下方には、承認が完了された版の契約書ファイルをEOSハッシュ値94も併記される。
【0074】
また、ここでは
図21で示す締結完了表示92は、自社内の「担当者」向けの画面であるが、この締結完了表示92に表示されるような内容は、当該提起された契約書に参加した契約参加者全員が、サービスサーバ1の提供する電子契約にアクセスした際に閲覧することができる。そして、当該提起された契約書に参加した契約参加者は、締結完了表示92に表示されるバージョン表示95を選択することで、承認の完了以前の過程版の契約書ファイルを後に閲覧することもできる。また、ここでは図示しないが、承認の完了以前の過程版の契約書ファイルに対応付けられて、それぞれEOSハッシュ値が表示されるため、契約参加者は過程版の契約書ファイルであることが確実に判断できた上で、その内容を閲覧することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明のデータ管理システムは、ユーザから受け付けた複数の契約書ファイルを必要に応じて複数のブロックチェーン21,22に振り分けて記録させる構成であり、前記実施例では最終版の契約書ファイルをネットワークや動作の安定性に優れるプラットフォームであるEthereumのブロックチェーン22に記録し、それ以外の過程版の契約ファイルを承認時間が短く、かつ承認にかかる手数料が低額であるという長所を備えるプラットフォームであるEOSのブロックチェーン21に記録させることができ、ブロックチェーン上にファイルを記録する際の承認に要する時間と安定性とを両立しながら、一連の契約ファイルを関連付けて参照可能に保管することができる。
【0076】
また、サービスサーバ1は、承認者による承認情報を受付けたことに基づき、EOSのブロックチェーン21からEthereumのブロックチェーン22に記録先を変更する構成であり、契約ファイルの記録先を振分け条件により自動的に決定して、振り分けするため、人為的なミスを防止でき、確実に所望のブロックチェーン上に契約ファイルを振り分けて記録させることができ、かつ記録の際の承認に要する時間と安定性とを両立できる。また、所定の指示を受付けた際のファイルは所定のEthereumのブロックチェーン22上に統一して記録されるため、後に参照する際にデータ管理が容易となる。
【0077】
また、サービスサーバ1の振分記録手段は、振分け条件として、承認者による承認情報を受付けたことに基づき、受付けた契約ファイルをEOSのブロックチェーン21に加えてEthereumのブロックチェーン22にも記録させる。これによれば、承認者による承認情報を受付けた際の契約ファイル(前記実施例では最終版の契約ファイル)は、EOSのブロックチェーン21とEthereumのブロックチェーン22の双方に記録されるため、当該契約ファイルの破損による滅失の虞が少なくかつ参照の際のアクセス先が複数選択可能となる。
【0078】
また、サービスサーバ1の振分記録手段は、過程版の契約書ファイルをEOSのブロックチェーン21に振り分け、最終版の契約書ファイルをEthereumのブロックチェーン22に振り分けて記録させる。これによれば、契約書ファイルは複数の担当者により条項等の内容が検討され、最終版に至るまでに複数の版が形成されることが多く、このような過程版の契約書ファイルについては、承認時間が短く、かつ承認にかかる手数料が低額であるという長所を備えるプラットフォームのEOSのブロックチェーン21に記録させ、最終版の契約書ファイルのみをネットワークや動作の安定性に優れるプラットフォームのEthereumのブロックチェーン22に記録させることで、承認に要する時間と安定性とを両立しやすい。
【0079】
また、EOSのブロックチェーン21またはEthereumのブロックチェーン22上に契約ファイルが記録されると、サービスサーバ1が提供するウェブページ上に当該ブロックチェーンから返されたハッシュ値が表示されるため、ユーザ自身がブロックチェーン上にファイルの記録が完了したことを確認することができ、データ管理システムの信頼度を高めることができる。
【0080】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0081】
例えば、前記実施例において、サービスサーバ1は、「承認者」による契約書を承認した契約書承認情報が自社内と相手との両方から得られたことを所定の指示として、この所定の指示に基づき、最終版の契約書ファイルをEthereumのブロックチェーン22上に記録し、所定の指示がない場合には、それ以前の過程版の契約書ファイルをEOSのブロックチェーン21上に記録させるという振り分け条件となっているが、この振り分け条件は、サービスの管理者が適宜設定する(設定手段)ことができるようにしてもよい。例えば、「確認者」が確認した時点の版の契約書ファイルと、「承認者」が承認した時点の最終版の契約書と、をEthereumのブロックチェーン22上に記録するようにし、それ以外をEOSのブロックチェーン21上に記録させる等の振り分け条件とすることで、重要性の高い版の契約書ファイルを全て、信頼性の高いブロックチェーンに記録させる構成としてもよく、その他、状況に応じた最適な振分け条件を設定することができる。
【0082】
また、契約書ファイルを2つのブロックチェーンに振り分けて記録する態様については、「承認者」による契約書を承認した契約書承認情報が自社内と相手との両方から得られたこと等の所定の指示を受付けたことに限らず、例えば管理者側で適宜判断し、振り分けてもよい。
【0083】
また、契約書ファイルを振り分けて記録させるブロックチェーンのプラットフォームは、2種類に限らず、3種類以上の複数でもよい。
【0084】
また、前記実施例では、契約書ファイルを振り分けて記録させるブロックチェーンには、承認時間が短く、かつ承認にかかる手数料が低額であるという長所を備える代表的なプラットフォームとしてEOSのブロックチェーンを、ネットワークや動作の安定性に優れるプラットフォームとしてEthereumを、それぞれ選択したが、これに限らず、同様の対比関係が成り立つ特徴を有するプラットフォームであれば、これらのプラットフォームのブロックチェーンでなくてもよいことはいうまでもない。
【0085】
また、承認が完了された版のEOSハッシュ値は、Ethereumのブロックチェーンに記録しなくてもよい。
【0086】
また、前記実施例では、電子契約にデータ管理システムを利用する場合を例にとり説明したが、これに限らず、例えば、医療機関における個人の診療録、金融機関における顧客の取引記録や取引履歴、メーカーにおける製品の真贋証明等、内容の信頼性が問われる管理資料が時系列毎に一連に関連付けられて保管されるようなシーンであれば有効に利用することができる。
【0087】
また、前記実施例において、イメージデータは、分散型ファイルシステムであるIPFSを用いて保管されているが、これに限らず、例えばテキストデータを保管するブロックチェーン以外の保管環境であれば、分散型ファイルシステムを用いなくてもよいし、サーバやローカルサーバ等に保管されてもよい。加えて、署名イメージデータと、印章イメージデータに関しては、容量が大きくないため、IPFSを利用するステップを省略し、契約書の文書データとともにEthereumのブロックチェーン22に直接保管されてもよい。また、容量が大きくないファイルの場合には、IPFSを利用するステップを省略し、EOSのブロックチェーン21またはEthereumのブロックチェーン22に直接保管するようにしてもよい。
【0088】
また、前記実施例における2つのプラットフォームのブロックチェーンは、パブリックチェーンの仕様で説明したが、管理会社が提供するサービスサーバ1を構成する複数のコンピュータ上の環境で動作する、所謂プライベートチェーンであってもよい。
【0089】
また、管理会社が提供するサービスサーバ1を構成するAPIを備えるAPIサーバ7と、対応テーブルを備える利用者管理サーバ8と処理サーバ9とは、それぞれの機能を兼ねる一台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0090】
また、ユーザが利用するクライアント側の端末は、パソコンに限らず、タブレットやスマートフォンでもよい。