特許第6687828号(P6687828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6687828-空間光伝送装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687828
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】空間光伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20200421BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H04B10/116
   H01S5/022
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-156272(P2015-156272)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-38099(P2017-38099A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(72)【発明者】
【氏名】小薮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堀 正輝
(72)【発明者】
【氏名】森下 日雄
【審査官】 対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−026691(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013639(WO,A1)
【文献】 特開2008−283446(JP,A)
【文献】 特開2009−176674(JP,A)
【文献】 特開2008−154063(JP,A)
【文献】 特開2013−021413(JP,A)
【文献】 特開2003−318836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換する発光部を備え、前記発光部が変換した前記光信号を水中又は海中からなる伝送空間に放出して外部機器との間で前記伝送空間を通じて情報を送信する空間光伝送装置において、
前記発光部は、レーザ素子を有し、
前記レーザ素子から放出された情報を含むレーザ光を有する白色光又は疑似白色光からなる光信号を前記伝送空間に放出して前記伝送空間を通じた情報の送信と前記伝送空間の投光とを同時に行う通信投光モードと、
前記伝送空間の投光が不要な前記外部機器との近接状態で実行されるモードであって、前記通信投光モードより前記レーザ素子の発光量が低く、前記レーザ素子から放出された情報を含むレーザ光を有する白色光又は疑似白色光からなる光信号を前記伝送空間に放出して前記伝送空間を通じた情報の送信を行う通信モードとを実行する空間光伝送装置。
【請求項2】
前記レーザ素子から放出された情報を含まないレーザ光を有する白色光又は疑似白色光を前記伝送空間に放出して前記伝送空間を投光する投光モードを有し、
前記通信モードは、前記投光モードより前記レーザ素子の発光量が低く、
前記発光部が、前記通信投光モード、前記通信モード及び前記投光モードを切り換えて実行する請求項1に記載の空間光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間光伝送装置として、情報を変調した電気信号を発光素子によって光信号に変換し、変換した光信号を空間に放出することで空間を通じて情報を送信するとともに、発光素子から放出される光信号によって空間を投光する投光器を兼ねた空間光伝送装置が提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、上記の空間光伝送装置では、光信号を放出する発光素子としてLEDが採用されており発光素子の高輝度化が困難であるため、海中や水中のような光信号が減衰しやすい伝送空間において伝送距離の長距離化を図ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−154063号公報
【特許文献2】特開2013−21413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、伝送距離の長距離化が可能な空間光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空間光伝送装置は、電気信号を光信号に変換する発光部を備え、前記発光部が変換した前記光信号を水中又は海中からなる伝送空間に放出して外部機器との間で前記伝送空間を通じて情報を送信する空間光伝送装置において、前記発光部は、レーザ素子を有し、前記レーザ素子から放出された情報を含むレーザ光を有する白色光又は疑似白色光からなる光信号を前記伝送空間に放出して、前記伝送空間を通じた情報の送信と前記伝送空間の投光とを同時に行う通信投光モードと、前記伝送空間の投光が不要な前記外部機器との近接状態で実行されるモードであって、前記通信投光モードより前記レーザ素子の発光量が低く、前記レーザ素子から放出された情報を含むレーザ光を有する白色光又は疑似白色光からなる光信号を前記伝送空間に放出して前記伝送空間を通じた情報の送信を行う通信モードとを実行するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空間光伝送装置の伝送距離を長距離化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空間光伝送装置と外部機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る空間光伝送装置10は、図1に示すように、例えば、水中を航行する潜水艇に取り付けられ、海上の船舶や海中を航行する他の潜水艇に設けられた外部機器50との間で海中において可視光を用いた空間光伝送により情報を送受信するとともに、送信用の可視光により海中を照明する装置である。
【0011】
この空間光伝送装置10は、筐体11と、筐体11の内部に収納された送信部12及び受信部14を備える。外部機器50は、筐体51と、筐体51の内部に収納された送信部52及び受信部54を備える。空間光伝送装置10と外部機器50とは、送信部12が伝送空間(海中)へ放出する光信号の波長帯(第1波長帯)と、送信部52が伝送空間へ放出する光信号の波長帯(第2波長帯)とが異なっているが、他の構造は基本的に同一である。
【0012】
筐体11は、内部に送信部12及び受信部14を収納し水密状態で密閉されるものであって、外部機器50との間で送受信する可視光が透過する窓部11aを備える。
【0013】
送信部12は、外部機器50の受信部54へ伝送する情報を光制御信号に変調する変調部16と、変調部16で生成された光制御信号が入力される発光部18とを備える。
【0014】
発光部18は、光源部20と、光源部20を駆動する駆動部21と、光源部20の光軸上に配置された補正部22とを備え、変調部16から入力された光制御信号を光信号に変換する。
【0015】
光源部20は、青色の波長帯、この例では、中心波長が430nmの第1波長帯のレーザ光を発光する青色レーザ素子からなる発光素子20aと、発光素子20aからの青色光が透過される黄色蛍光体20bを備える。光源部20は、発光素子20aからの青色光が黄色蛍光体20bを透過する際、この青色光により黄色蛍光体20bを励起させて黄色の蛍光を発生させている。これにより、光源部20では、黄色の蛍光と黄色蛍光体20bを透過する第1波長帯の青色光とが合成させることにより白色光(疑似白色光)となって出射される。
【0016】
駆動部21は、光源部20を駆動する駆動電流を生成し、これを光源部20の発光素子20aへ出力することで発光素子20aにおいてレーザ光を発光させる。本実施形態では、駆動部21が、通信投光モード、投光モード、及び通信モードを切り替えて実行する。
【0017】
通信投光モードは、駆動部21が、変調部16から入力された光制御信号に基づいて光源部20を駆動する駆動電流を生成して伝送情報を重畳したレーザ光を発光素子20aから発光させ、光源部20より白色のレーザ光を伝送空間へ放出させる。これにより、当該レーザ光によって伝送空間を通じて情報を送信するとともに伝送空間を投光する。
【0018】
投光モードは、駆動部21が、光源部20を駆動する駆動電流として、例えば、一定周期のパルス信号を生成することで、光源部20より伝送情報を含まない白色のレーザ光を伝送空間へ放出させる。これにより、伝送情報の送信を行うことなく伝送空間を投光する。
【0019】
通信モードは、空間光伝送装置10が外部機器50と近接状態で通信する場合のように伝送空間の投光が不要な場合に実行するモードであって、駆動部21が、変調部16から入力された光制御信号に基づいて光源部20を駆動する駆動電流を生成する。その際、駆動部21は、上記した通信投光モード及び投光モードに比べて発光素子20aの発光量を低下させて伝送情報を重畳したレーザ光を発光素子20aから発光させ、光源部20より白色のレーザ光を伝送空間へ放出させる。これにより、光源部20から放出されるレーザ光によって伝送空間を通じて情報を送信する。
【0020】
補正部22は、光源部20から放射された白色光の強度分布を水平面上で均一化するように補正した後、窓部11aから外部へ出力する。補正部22として、例えば、光源部20からの光を平行光にする凸レンズなどが用いられる。
【0021】
受信部14は、外部機器50の送信部52から送信される光信号を受信して電気信号に変換する受光部24と、受光部24で変換された電気信号を復調する復調部26とを備える。
【0022】
受光部24は、外部から窓部11aを介して光が入射するフィルタ24aと、フィルタ24aを透過した光が入力される受光素子24bとを備える。
【0023】
フィルタ24aは、外部より入射した光のうち空間光伝送装置10の光源部20が発光する第1波長帯のレーザ光を吸収するとともに、外部機器50の送信部52から放出される第2波長帯のレーザ光を透過するバンドパスフィルタからなる。受光素子24bは、フィルタ24aで第1波長帯のレーザ光を吸収した光が入力され電気信号に変換して復調部26へ出力する。受光素子24aとしては、例えば、フォトダイオード(PD)やアバランシェフォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)などを用いることができる。特に、受光素子24aに光電子増倍管を用いると外部より入射した光が微弱な場合であってもこれを検出することができるとともに、光電子増倍管は検出した光量の変化量を出力することができるため、受光部24に入力される光信号の光量が多い場合でも検出出力が飽和することなく光信号のパルスを検出することができる。つまり、受光素子24aに光電子増倍管を用いることで、光信号の光量が少なくなる長距離の光伝送から光信号の光量が多くなる近距離の光伝送まで、検出レンジの異なる受光素子に切り替えたり減光フィルタを用いたりすることなく光信号のパルスを検出することができる。
【0024】
復調部26は、受光部32から入力された電気信号を復調して、外部より入射した光から、第2波長帯の光信号によって外部機器50より送信された情報を取得する。
【0025】
外部機器50は、筐体51の内部に送信部52及び受信部54を水密状態で収納しており、可視光が透過する窓部51aを介して空間光伝送装置10との間で光信号を送受信する。
【0026】
送信部52は、空間光伝送装置10の受信部14へ伝送する情報を光制御信号に変調する変調部56と、変調部56で生成された光制御信号が入力される発光部58とを備える。
【0027】
発光部58は、光源部60と、光源部60を駆動する駆動部61と、光源部60の光軸上に配置された補正部62とを備え、変調部56から入力された光制御信号を光信号に変換する。
【0028】
光源部60は、空間光伝送装置10の光源部20に設けられた発光素子20aと異なる波長帯、この例では、中心波長が450nmの第2波長帯のレーザ光を発光する青色レーザ素子からなる発光素子60aと、発光素子60aからの青色光が透過される黄色蛍光体60bを備える。光源部60は、発光素子60aからの青色光が黄色蛍光体60bを透過する際、この青色光により黄色蛍光体60bを励起させて黄色の蛍光を発生させている。これにより、光源部60では、黄色の蛍光と黄色蛍光体60bを透過する第2波長帯の青色光とが合成させることにより白色光(疑似白色光)となって出射される。
【0029】
駆動部61は、光源部60を駆動する駆動電流を生成し、これを光源部60の発光素子60aへ出力することで発光素子60aにおいてレーザ光を発光させる。本実施形態では、空間光伝送装置10に設けられた駆動部21と同様、駆動部61は、伝送情報を重畳した白色のレーザ光を発光素子60aから発光させて伝送空間を通じて情報を送信するとともに伝送空間を投光する通信投光モードと、伝送情報を含まない白色のレーザ光を伝送空間へ放出させて伝送情報の送信を行うことなく伝送空間を投光する投光モードと、通信投光モード及び投光モードに比べて発光素子60aの発光量を低下させて伝送情報を重畳したレーザ光を発光素子60aから発光させて伝送空間を通じて情報を送信する通信モードとを切り替えて実行する。
【0030】
補正部62は、光源部60から放射された白色光の強度分布を水平面上で均一化するように補正した後、窓部51aから外部へ出力する。補正部62として、例えば、光源部60からの光を平行光にする凸レンズなどが用いられる。
【0031】
受信部54は、空間光伝送装置10の送信部12から送信される光信号を受信して電気信号に変換する受光部64と、受光部64で変換された電気信号を復調する復調部66とを備える。
【0032】
受光部64は、外部から窓部51aを介して光が入射するフィルタ64aと、フィルタ64aを透過した光が入力される受光素子64bとを備える。
【0033】
フィルタ64aは、外部より入射した光のうち外部機器50の光源部60が発光する第2波長帯のレーザ光を吸収するとともに、空間光伝送装置10の送信部12から放出される第1波長帯のレーザ光を透過するバンドパスフィルタからなる。受光素子64bは、フィルタ64aで第2波長帯のレーザ光を吸収した光が入力され電気信号に変換して復調部66へ出力する。受光素子64aとしては、例えば、フォトダイオード(PD)やアバランシェフォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)などを用いることができる。なお、空間光伝送装置10の受光素子24aと同様、受光素子64も光電子増倍管を用いることが好ましい。
【0034】
復調部66は、受光部64から入力された電気信号を復調して、外部より入射した光から、第1波長帯の光信号によって空間光伝送装置10より送信された情報を取得する。
【0035】
以上のように、本実施形態の空間光伝送装置10では、発光部18において光を放出する発光素子としてレーザ素子20aが採用されているため、発光部18から放出される光の高輝度化することができ、海中や水中のような光信号が減衰しやすい伝送空間における伝送距離及び投光距離の長距離化を図ることができる。
【0036】
また、伝送空間が海中や水中の場合、光信号の波長が長くなると伝送空間において減衰しやすくなり発光部18に使用可能な発光素子の波長帯が制限されるが、本実施形態では発光部18においてレーザ素子20aが採用され発光波長分布の小さい光信号を伝送空間に放出することができるため、異なる波長帯の信号との間で混信が発生しにくい。
【0037】
また、本実施形態の空間光伝送装置10では、伝送空間を通じて情報を送信するとともに伝送空間を投光する通信投光モードと、伝送情報の送信を行うことなく伝送空間を投光する投光モードと、通信投光モード及び投光モードに比べて発光素子20aの発光量を低下させて伝送空間を通じて情報を送信する通信モードとを切り替えて実行することができる。特に、空間光伝送装置10が外部機器50と近接状態で通信する場合のように伝送空間の投光が不要な場合に通信モードを実行することで、レーザ素子20aの発光量を抑えて消費電力量を抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態の空間光伝送装置10では、受信部14に設けられた受光部24が第1波長帯の光を遮断するフィルタ24aを備えるため、送信部12より伝送空間へ放出された光が、伝送空間を浮遊する障害物に反射して受信部14の受光部24に戻り光として入射しても、フィルタ24aにより戻り光が遮断され受光素子24bへ入射することがなくなり、伝送距離が長くなっても安定して情報を送受信することができる。
【0039】
(変更例1)
上記した実施形態では、発光部18の光源部20が、青色のレーザ光を発光する発光素子20aと黄色蛍光体20bとを備え、疑似白色光を伝送空間に放出する場合について説明したが、例えば、黄色蛍光体20bに換えて、あるいは黄色蛍光体20bとともに緑色光及び赤色光を発光するレーザ素子を発光素子として設けてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、
発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実
施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変
更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様
に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…空間光伝送装置、11…筐体、11a…窓部、12…送信部、14…受信部、16…変調部、18…発光部、20…光源部、20a…発光素子、20b…黄色蛍光体、21…駆動部、22…補正部、24…受光部、24a…フィルタ、24b…受光素子、26…復調部、50…外部機器
図1