(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687866
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】電子レンジ用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-196758(P2018-196758)
(22)【出願日】2018年10月18日
(62)【分割の表示】特願2014-199673(P2014-199673)の分割
【原出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2019-6507(P2019-6507A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎司
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−308175(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/056690(WO,A1)
【文献】
特開2010−023851(JP,A)
【文献】
特開2009−120247(JP,A)
【文献】
特開2006−096367(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0044525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/34
B65D77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ用容器であって、
上部に開口を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口から外側に延出するように形成されたフランジ部と、
前記フランジ部の上面の全周にわたって形成され、前記開口を塞ぐフィルム状の蓋材に熱融着される熱融着部と
を備え、
前記熱融着部が、前記容器本体内で発生した蒸気が所定の圧力に達したとき前記蓋材との熱融着を破断して前記蒸気を排出する第1熱融着部としての蒸気排出部と、前記蒸気排出部以外の第2熱融着部とを有し、
前記蒸気排出部が、平面視において外側へ向かって拡開するV字部によって形成され、前記V字部の内側に位置する先端に向かってシール強度が弱められている電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記蒸気排出部が、前記第2熱融着部よりも幅狭に形成されている請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
前記フランジ部が、前記蒸気排出部の両側であって前記第2熱融着部の外側の領域に凹部を有する請求項1又は請求項2に記載の電子レンジ用容器。
【請求項4】
前記容器本体が、その側面において、周方向に沿って下方が小径となる段差を有し、前記段差より前記開口側の側面が鉛直方向よりも外側に傾斜している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子レンジ用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ用容器は、たとえば下記特許文献1に開示されているように、開口から外側に延出するフランジ部を有し、このフランジ部の上面に全周にわたってリブ状の熱融着部が形成されている。この熱融着部は、当該容器の開口を塞ぐフィルム状の蓋材を熱融着する部分となっている。そして、熱融着部の一部には、いわゆる蒸気抜きのための蒸気排出部が形成され、この蒸気排出部は外側に向かって拡開するパターンからなるV字部によって構成されている。このように構成される蒸気排出部は、容器内に発生した蒸気が所定の圧力に達したときに、そのV字部の内側の先鋭部に応力が集中し、蓋材の熱融着を破断させるようになっている。
【0003】
しかし、このように構成される蒸気排出部は、蒸気が所定の圧力に達したときに確実に蓋材の熱融着を破断させるように制御する場合において、熱融着部の熱融着幅を所定の値に設定するという方法も考えられるが、狭いスペース内で行わなければならず、限界を有することが免れなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5050648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸気が所定の圧力に達したときに確実に蓋材の熱融着を破断させるように制御できる電子レンジ用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の電子レンジ用容器は、上部に開口を有する容器本体と、容器本体の開口から外側に延出するように形成されたフランジ部と、フランジ部の上面の全周にわたってリブ状に形成され、開口を塞ぐフィルム状の蓋材に熱融着される熱融着部と、を備え、熱融着部が、容器本体内で発生した蒸気が所定の圧力に達したとき蓋材との熱融着を破断して蒸気を排出する蒸気排出部を有し、蒸気排出部が、平面視において、外側へ向かって拡開するV字部を有し、側面視において、V字部の内側に位置する先端が開口に向かって低くなるように傾斜することを特徴とする電子レンジ用容器。
【0007】
(2)本発明の電子レンジ用容器は、(1)の構成において、蒸気排出部が、それ以外の熱融着部よりも幅狭の熱融着幅を有することを特徴とする。
【0008】
(3)本発明の電子レンジ用容器は、(1)又は(2)の構成において、フランジ部が、その延出端を下向きにして傾斜し、熱融着部が、その上面を水平にして形成されていることを特徴とする。
【0009】
(4)本発明の電子レンジ用容器は、(1)ないし(3)のいずれかの構成において、フランジ部が、蒸気排出部の両側であって熱融着部の外側の領域に凹部を有することを特徴とする。
【0010】
(5)本発明の電子レンジ用容器は、(1)ないし(4)のいずれかの構成において、容器本体が、その側面において、周方向に沿って下方が小径となる段差を有し、段差より開口側の側面が鉛直方向よりも外側に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような電子レンジ用容器によれば、蒸気が所定の圧力に達したときに確実に蓋材の熱融着を破断させるように制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の電子レンジ用容器の実施形態1の全体を示す斜視図である。
【
図2】(a)は容器本体の上面図、(b)は容器本体の側面図である。
【
図3】(a)は、
図2(a)のIIIa−IIIaにおける断面図、(b)は複数の容器本体を積み上げた場合の要部の断面図である。
【
図4】(a)は蓋開封部と蒸気排出部を示す斜視図、(b)は(a)のIVb−IVb線における断面図である。
【
図5】
図2(a)のV−V線における断面図である。
【
図6】本発明の電子レンジ用容器の実施形態2の全体を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の電子レンジ用容器の全体を示す斜視図である。
図1に示す電子レンジ用容器10は、容器本体20と蓋材50とで構成されている。容器本体20と蓋材50はいずれも樹脂材によって形成されている。
【0015】
容器本体20は、平面視で角(かど)部に丸みを有するほぼ長方形をなし、上部に開口21を有するようになっている。また、容器本体20は、開口21から外方に延出するようにしてフランジ部22が形成されている。フランジ部22は、平面視でほぼ長方形をなし、角(かど)部において、他の部分より幅の広い幅広部22Aを有するようになっている。
【0016】
フランジ部22には、その上面側において凸となるリブ状の熱融着部23が形成されている。熱融着部23はフランジ部22の全周にわたって形成されている。換言すれば、熱融着部23はフランジ部22の上面において容器本体20の開口21を囲むようにして形成されている。
【0017】
蓋材50は、フランジ部22の外周とほぼ同じ大きさの外周をもつフィルム状からなっている。蓋材50は、容器本体20に内容物(図示せず)を収納した後に、熱融着部23に熱融着(シール)されることによって、容器本体20の開口21を塞ぐようになっている。なお、
図1では、レンジによる加熱後において、蓋材50をフランジ部22の一つの角(かど)部から一部剥離している状態を示している。
【0018】
また、蓋材50の剥離の出発点となるフランジ部22の一つの角(かど)部には、熱融着部23が‘M’字状のパターンとなっており、このパターンによって熱融着部23に蓋開封部24と蒸気排出部25とが形成されるようになっている。なお、この明細書において蒸気排出部25を第1熱融着部と称し、それ以外の熱融着部23を第2熱融着部と称する場合がある。
【0019】
図2(a)は、容器本体20の上面図、
図2(b)は、容器本体20の側面図である。なお、
図1(a)、(b)には、蓋材50の図示は省略している。
【0020】
図2(a)に示すように、熱融着部23の‘M’字状のパターンにおいて、その中央の‘V’字状パターン(外側に向かって拡開するV字部)によって蒸気排出部25が形成され、その両脇の逆‘V’字状パターン(内側に向かって拡開するV字部)によって蓋開封部24が形成されている。この場合、蒸気排出部25の右側の部分は右側に隣接する蓋開封部24の一部と共通化され、蒸気排出部25の左側の部分は左側に隣接する蓋開封部24の一部と共通化されて形成されている。
【0021】
蓋材50をフランジ部22の蓋開封部24が形成された角(かど)部から剥がす場合、蓋開封部24の逆‘V’字状パターンの先鋭部に応力が集中して蓋材50を容易に剥がせる効果を奏する。また、レンジで加熱する際は、容器本体20内に発生する蒸気圧は蒸気排出部25の‘V’字状パターンの先鋭部に応力が集中し、該蒸気圧が所定の圧力に達したときに蓋材50との熱融着を容易に破断させる効果を奏する。
【0022】
このような蒸気排出部25は、上述したように熱融着部23の一部を‘V’字状パターンにすることにより形成され、この部分以外の熱融着部23よりも幅狭の熱融着幅tを有するようになっている。蒸気排出部25を幅狭の熱融着幅tとすることによって、蓋材50との熱融着を破断させ易くできるようになる。また、蒸気排出部25以外の熱融着部23の熱融着幅Tを広くすることによって、蒸気排出部25以外での蒸気抜きを防止できる効果を奏する。
【0023】
図3(a)は、
図2(a)のIIIa−IIIaにおける断面図である。
図3(a)に示すように、容器本体20のフランジ部22は、その延出端を下向きにして角度θ(例えば、6°)で傾斜されて形成されている。フランジ部22のこのような傾斜はフランジ部22の全周に及んでほぼ同様になっている。容器本体20の成形の際の反りを予め見越して構成されたものである。この場合において、熱融着部23は、その上面がほぼ水平になるように形成され、蓋材50(
図1参照)との熱融着の信頼性を確保している。このため、熱融着部23は、内周側のフランジ部22に対する高さt1が外周側のフランジ部22に対する高さt2よりも小さく形成されている。
【0024】
図4(a)は、フランジ部22の幅広部22Aに形成された蓋開封部24と蒸気排出部25を示す斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVb線における断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、蒸気排出部25は、側面視において、V字部の内側に位置する先端が開口に向かって低くなるように傾斜されている。ここで、フランジ部22は、
図4(b)に示すように、その延出端を下向きにして角度θ(例えば、6°)で傾斜されて形成され、蒸気排出部25の外側の水平面Qに対する高さt3が外側の水平面Qに対する高さt4よりも低く形成されている。
【0025】
この場合、蒸気排出部25以外の熱融着部23(蓋開封部24の一部を含む)の上面は、
図3(a)に示したと同様に、水平になるように形成されている。このように、蒸気排出部25をV字部の内側に位置する先端が開口21に向かって低くなるように傾斜させることにより、蒸気排出部25の開口21側のシール強度を弱めることができ、蒸気抜きがし易くなる効果を奏するようになる。したがって、蒸気が所定の圧力に達したときに確実に蓋材50の熱融着を破断させるように制御できるようになる。
【0026】
ここで、蒸気排出部25をV字部の内側に位置する先端が開口21に向かって低くなるように傾斜させる場合の好ましい態様について、説明する。
図4(b)において、蒸気排出部25の拡開する側の端部(図中、左端)外縁のフランジ部22からの高さt7は、電子レンジ用容器として備えるべき部材の厚みを確保する関係から、好ましくは1ないし5mm、さらに好ましくは1ないし3mmに設けられる。平均的には1.2mm程度が好ましい。
【0027】
そして、開口21に向かって低くなっている先端(図中、右端)については、右端外縁(図中、右端の左側外縁)の高さt6は左端外縁の高さt7の40ないし90%に、右端内縁(図中、右端の右側外縁)の高さt5は同じく5ないし50%(平均的に30%程度)に相当するように、低くすることが好ましい。この場合、高さt5は高さt6よりも低くなるようにする。このようにすることで、蒸気排出部25のV字部の先端は拡開する端部よりも低いと同時に、先端自体の内縁がその外縁よりも低いことにより、容器本体20の開口21に遠い側から近い側にいくにつれて、蒸気排出部25をシール強度が相対的に強い部分から弱い部分へと変化させることができる。
【0028】
図2(a)に戻り、蓋開封部24と蒸気排出部25が形成されたフランジ部22において、蒸気排出部25の両側であって熱融着部23(蓋開封部24の一部を含む)の内側には2つの凹部31が形成されている。さらに、フランジ部22には、蒸気排出部25の両側であって熱融着部23(蓋開封部24の一部を含む)の外側にも2つの凹部32が形成されている。容器本体20の開口21を囲むように形成される熱融着部23は、内容物の侵入を防ぐために、開口21に近接して形成することが望ましく、これにより、各蓋開封部24の蒸気排出部25と反対側の部分は急峻な傾きをもって熱融着部23に連続するパターンとなり、熱融着部23の外側においてフランジ部22(幅広部22A)の外周との間に充分なスペースを確保でき、このスペースに前記凹部32を形成することができるようになる。
【0029】
このような凹部31、32は、
図2(a)のV−V線における断面図である
図5に示すように、凹部31、32の底面に対して相対的に熱融着部23(蓋開封部24)の高さを大きくでき、蓋材50(
図1参照)のシール時において、フランジ部22への貼り付きを防止できる効果を奏する。また、蒸気排出部25のV字部の外側に向かって拡開される部分に凹部を形成することも考えられるが、この部分は極めて狭い領域で形成が困難となり、その代わりに前記凹部32を形成することにより、同様の効果を奏することができるようになる。
【0030】
さらに、
図3(a)に戻り、容器本体20の側面には、その周方向に沿って下方が小径となる段差27が形成されている。そして、段差27より開口21側の側面28が鉛直方向(図中点線Pで示す)よりも外側に傾斜するように形成されている。このような容器本体20の側面の段差27は、
図3(b)に示すように複数の容器本体20を積み重ねた場合に、上段の容器本体20が下段の容器本体20に深く収納されることを防ぐストッパとしての機能を有し、段差27より開口21側の側面28が鉛直方向よりも外側に傾斜させることによって、上段の容器本体20を下段の容器本体20から容易に抜き出すことができる効果を奏する。
【0031】
(実施形態2)
上述した実施形態では、電子レンジ用容器10は、容器本体20が平面視で角(かど)部に丸みを有するほぼ長方形をなし、フランジ部22が平面視でほぼ長方形をなし、角(かど)部において幅広部22Aを有するものを例として挙げたものである。しかし、これに限定されることはない。たとえば、
図6に示すように、容器本体20が平面視でほぼ円形をなし、フランジ部22が平面視でほぼ正方形をなし、各角(かど)部において幅広部22Aを有するものに適用させてもよいことはもちろんである。
【0032】
(実施形態3)
上述した実施形態では、蒸気排出部25の両脇に蓋開封部24を一部共通させて連続させて形成したものである。しかし、これらは分離させて形成するようにしてもよいことはもちろんである。たとえば、フランジ部22の4個の角(かど)部のうち、少なくとも一つの角(かど)部に蒸気排出部25を形成し、他の少なくとも一つの角(かど)部に蓋開封部24を形成するようにしてもよいことはもちろんである。
【0033】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0034】
10 電子レンジ用容器
20 容器本体
21 開口
22 フランジ部
22A 幅広部
23 熱融着部
24 蓋開封部
25 蒸気排出部(第1熱融着部)
27 段差
28 側面(段差27より開口21側の側面)
31 凹部
32 凹部
50 蓋材