(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687929
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】透視度計測治具及びそれを用いた透視度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
G01N21/59 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-43882(P2016-43882)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-146287(P2017-146287A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年10月25日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】516069878
【氏名又は名称】瀧 和夫
(72)【発明者】
【氏名】瀧 和夫
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭47−002179(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3164899(JP,U)
【文献】
実開昭57−138001(JP,U)
【文献】
実開昭57−019401(JP,U)
【文献】
実開平06−018966(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に標識を有する標識板を計測目盛尺の下端部に当該計測目盛尺に対して垂直になるように装着し、かつ、当該計測目盛尺に当該標識板の上面を0起点として上方に向けて計測目盛を印した透視度計において、標識板を当該計測目盛尺の下端部に磁石または固定バネを持つ係止部材を介して着脱自在な装着としたことを特徴とする透視度計測治具。
【請求項2】
請求項1に記載する透視度計測治具において、当該計測目盛尺の少なくとも計測目盛を印した面に所定の間隔にて異なる彩色をなしたことを特徴とする透視度計測治具。
【請求項3】
底部を有する筒状の容器に、請求項1又は請求項2に記載する透視度計測治具を挿入したことを特徴とする透視度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海、湖、川などの水、またはその他の液体に対する簡便な繰り返し計測を可能とする透視度治具及びそれを用いた透視度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている透視度計は、
図9に示すように、深さが数十センチメートル程度の透明な下口付長円筒容器12の底に、上面に直行する二重線を印した白色の標識板18を沈めた構成となっている。また、その使用に際しては、底部近くに設けた水出し口15のゴム管16に装着されたピンチコック17をゆるめながら少しずつ排水し、下口付長円筒容器12内の水面上方より観察して、前記標識板18上に印してある二重線が鮮明に見えるようになったら排水をストップし、その時の水深をもって透視度としていた。例えば、非特許文献1参照。しかし、この場合、当該標識板18に印した標識が「見える、見えない」の境界は非常に微妙であり、当該透視度計に精通した専門家では1回で済むが、一般の方では1回の測定では確定できにくく、繰り返しの動作による確認が必要となる。
【0003】
しかるに、従来の透視度計では、下方の水出し口15から排水によって水位調整していたため、出しすぎると再び水を入れ、適切な水位を微妙な調整によって見出していかなければならなかった。このため、時間と労力も要し、十分な補足水量の無い場合など、排水し過ぎると測定出来なくなることもあった。
また、環境学習のような多人数で測定を繰り返す場合、個々人の見え方が異なることから、その都度、下口付長円筒容器12への補水あるいは排水を繰り返さなければならない等の煩わしさがあった。
【0004】
さらに、非特許文献1においては、計測目盛が下口付長円筒容器12の外側面に印されており、かつ、排水と測定を一人で行うことから、白色の標識板18の二重線の確認後、目を移動させ、下口付長円筒容器12に対して水平な位置から下口付長円筒容器12に記されている目盛を測定のたびに読まなければならないという煩わしさがあった。
【0005】
加えて、従来の透視度計では、排水と測定を一人で行う必要上から、下口付長円筒容器12の上方から覗いた状態でピンチコック17を操作できる距離とする必要がある。そのため、透視度計の長さも50cm程度が限界であり、したがって透視度50cm以上の測定は出来なかった。
【0006】
また、透視度確認後の下口付長円筒容器12に残留している検水の排除に際して、検水注ぎ口15から排水することが多く、下口付長円筒容器12の底部にあった標識板18が排水と共に排出され、回収不能となることがしばしば生じていた。
【0007】
前述の透視度計の欠点を解消するためのものとして、長円筒容器への給排水の改善を試みた透視度計が提案されている。特許文献1参照。しかしながら、当該透視度計においては、計測目盛は長円筒容器外側の上方の小孔を0起点として下方に等間隔に印されており、測定は水面を0起点と一致させてから始めなければならない。そのため、測定のたびに余分な液体を水位小孔より排除されるのを待たなければならないこと、水位小孔から零れ出た検水を受ける道具が必要となること、また、標識板を糸で吊るしているため、標識板を上下移動させるたびに水につかる糸の体積が変動し、水面高さが計測目盛の0起点からずれてしまい、そのために、水面の目盛と標識板の上面の目盛との差を透視度の値としなければならないこと、さらに、透視度板が長円筒に常に触れながらの上下移動となるために標識板の水平が保ちにくいこと、標識板の二重線の確認後、目を移動させ、水平な位置から目盛を読まなければならない等の欠点を有していた。このようなことから、環境学習のための児童生徒や一般人などの初心者には扱いづらいと言う問題を残している。
【0008】
また、特許文献2のように、従来の透視度計の長円筒の長さの限界を改善した透視度計においても、より複雑で重量感を伴う構造となっている。そのため、当該透視度計の移動性及び携帯性に不便さを抱えることとなったこと、本体上部に設置されたドレンから零れ出た検水を受ける道具が必要となる等の新たな課題が生じた。また、当該透視度計において、標識板と目盛ゲージとは連結材を通して連結されているものの、当該目盛ゲージはガイドレールで覆われた構造となっているなど、標識板と目盛ゲージとが間接的に連動されているために、連結材や標識板の厚み、及び位置が変化した場合の0起点の位置の調整対応が困難である。さらに、標識板を上下移動させるたびにゲージの水につかる体積が変化し、当初の0起点とする基準水位が維持できず、そのための計測値の補正が必要となること等の課題を残すこととなった。そのため、環境学習のための児童生徒や一般人などの初心者に取っては扱いづらいものとなっている。
【0009】
さらに、特許文献3のように、目盛を印してある長円筒容器の上端に、あるいは、目盛体上端に定滑車を取り付けた透視度計においても、標識板の端に取り付けた紐による上下移動は紐のヨジレや標識板の水平状態維持の困難さを残している。さらに、透視度の計測においても、水面の目盛と標識板の上面の目盛との差を求めなければならない等の煩わしさの改善にまでは至っていない。これらのことから、児童生徒や一般の初心者にとって測定が極めて面倒で、野外で簡便に使える器具としては適切なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開平9−318530号 広報
【特許文献2】 特開2009−222719号 広報
【特許文献3】 実開平01−180642号 広報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】 「工場排水試験法−JIS K0102:2013−」,日本工業標準調査会 審議、日本規格協会発行、平成25年、p.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に述べた従来の透視度計では、測定者1人による測定を想定した器具であることから、透視度計の長円筒の長さに限界があったこと、また、多人数による繰り返し測定を行うような環境学習教材としての利用には、補足水としての検水が参加人数分必要であること、排水時に長円筒上方から検水を排出されることが多く、底部にあった標識板も同時に排出・回収不能となることがしばしばであった
【0013】
さらに、解決のための提案がなされてきたが、長円筒内の基準水面を設けたことによる零れ出た検水を受ける道具が新たに必要になったこと、標識板の水平安定性とそれを吊るす紐の捩れ、測定開始時の水面高さの調整、計測目盛尺の0起点の調整、及び測定器具の移動性と携帯性等の新たな課題を作り出すこととなった。
【0014】
本発明は、このような従来の構成が有している問題を解決しようとするものであり、計測目盛尺と標識板とを着脱・一体化した治具を長円筒容器にある検水内で上下するのみで透視度の測定が容易に可能とするものである。さらに、これにより、計測時間と労力の軽減、多人数による繰り返し測定、補足水の必要性、零れ出た検水を受ける道具、透視度計の長円筒の長さの限界、標識板の回収、標識板の水平安定性とそれを吊るす紐の捩れ、測定開始時の水面高さの調整、計測目盛尺の0起点の調整、及び測定器具の移動性と携帯性などの対策を施した透視度計の実現を目的とするものである。
【0015】
本発明は上記目的を達成するために、上面に標識を有する標識板を計測目盛尺の下端部に当該計測目盛尺に対して垂直になるように装着し、かつ、当該計測目盛尺に標識板の上面を0起点として上方に向けて計測目盛を印した
透視度計測治具において、当該標識板を当該計測目盛尺の下端部に磁石または固定バネを持つ係止部材を介して着脱自在に装着したものである。
【0016】
第2の解決手段は、前項[0015]に記載するものにおいて、計測目盛尺の少なくとも計測目盛を印した面に所定の間隔にて異なる彩色を施したものである。
【0018】
また、第
3の解決手段は、
前項[0015]及び[0016]に記載する透視度計測治具を、底部を有する筒状の容器に挿入したものである。
【0019】
上述のように本発明の透視度計測治具及びそれを用いた透視度計は、容器の中に検水を任意量注ぎ込み、標識板を装着した計測目盛尺を容器に挿入することによって即座に計測状態が得られるため、計測時間と労力の軽減を可能にした。また、野外における静水状態の水面に対しても、透視度計測治具によって直接計測が可能である。
【0020】
次に、測定開始時の水面高さの調整について、標識板の上面を0起点とする計測目盛尺の使用によって、容器内の水面高さを定めることなく、任意の水面高さで測定開始を可能にした。
【0021】
白色の標識板の厚さの違いが生じても、その上面を計測目盛尺の0起点に合わせることが可能であり容易に確認ができること、また、計測目盛用の紐やゲージの上げ下げによる基準水面の変動による透視度の計測値補正を必要としないこと、さらに、計測目盛尺の長尺の活用によって従来の透視度計より透視度の測定範囲を広げることが出来る。
【0022】
[0015]及び[0016]における標識板と計測目盛尺との一体化及び計測目盛尺彩色による色分け表示によって、透視度計測時の視線を移動させずに、計測目盛尺の水面高さを過誤なく容易に計測を可能にした。
【0023】
標識板と計測目盛尺とを一体化する治具によって、計測ごとに給排水することなく計測目盛尺を上方、あるいは、下方へ操作するだけで、繰り返し簡単に適切な透視度計測の水深測定が可能となった。このことは初心者や多人数による繰り返し測定を可能とした。
【0024】
透視度確認後に標識板が排水と共に排出され、回収不能となることが従来の測定器具でしばしば生じていたが、計測時の標識板と計測目盛尺とを一体化することによって、容器から排水と共に排出されるのを防ぐことを可能とした。
【0025】
標識板は計測目盛尺と係止部材によって直角に一体化され、なおかつ水平に設置された状態で透視度の計測がなされることから、標識板の水平安定性を容易に提供できる。
【0026】
標識板を計測目盛尺と垂直に一体化することによって、従来の測定器具に見られる標識板を吊るす紐の捩れなどの課題を解決するもので、透視度測定時の標識板の水平安定性を保つことを可能にした。
【0027】
さらに、本透視度計は透視度計測治具と検水を受ける容器から構成されており、別々に保管・携帯が可能で、測定器具の移動性と携帯性に優れた効果を発揮するものである。なお、透視度計測治具の標識板と計測目盛尺とは着脱可能としたことにより、携帯に一層の便利さが備わった。このことは、初心者や一般社会人の使用及び屋外での測定器具としての使い易さを高めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態を示す透視度計測治具の正面図及び側面図。
【
図2】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の上面図。
【
図3】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の側面及び底面図/L字型係止金具による係止例。
【
図4】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の側面及び底面図/磁石とL字型係止金具による係止例。
【
図5】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の側面及び底面図/弾力を有する係止金具による係止例。
【
図6】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の側面及び底面図/バネを有する係止金具による係止例。
【
図7】透視度計測治具に用いられる標識板の一実施例の側面及び底面図/0起点補正可能とする係止鋲による係止例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
【0030】
図1に記載する透視度計測治具において、当該透視度計測治具は標識板5を計測目盛尺4の下端部に垂直になるように装着している。また、計測目盛尺4において、当該計測目盛尺4の下端部に装着した標識板15の上面を0起点として上方に計測目盛が等間隔に印されている。なお、計測目盛尺4は円形、方形あるいは三角形の棒状の金属製、樹脂製、木製あるいは竹製等のいずれの材料であってもよい。
【0031】
計測目盛尺4において、当該計測目盛尺は少なくとも計測目盛6を印した面に所定の間隔にて異なる彩色による色分け表示がなされている。ここで、計測目盛尺4の計測目盛及び色分け表示の一例を
図1に示す。なお、計測目盛6を色分けして表示してもよいし、両方が印されてもよい。
【0032】
さらに、計測目盛尺4において、標識板5を当該計測目盛尺の下端部に係止部材を介して着脱自在に装着する。ここで、計測目盛尺4の0起点に標識板5の上面が容易に合わせられ、係止部材によって一体化されている。計測時以外は、標識板5は計測目盛尺4から容易に取り外され、取り扱い不注意による係止部の破損を予防されている。また、厚さの異なる標識板5の計測目盛尺4への0起点合わせは係止部材の着脱を介して当該標識板5の装着時の調整によって、直接的に、かつ、容易に行われるようにしてある。ここで、係止部材は磁石、粘着テープ、又は、ネジなどの脱着・一体化が可能な材料であればよい。
なお、標識板5に表示される標識模様を
図2に、係止部材による標識板5と計測目盛尺4の定着実施例を
図3〜
図7に示す。
【0033】
図8において、1は容器を示すもので、容器の底部3は側部と一体化したもの、又は取り外し可能な栓であっても良い。容器1自体は円形断面に限るものではないが、少なくとも容器1の側面は透明なガラス、あるいは、樹脂材で出来たもの、又は明りが十分取り入れられるような容器であれば容器の構造に規定するものではない。すなわち、検水面に対して垂直上方より目視し、標識板5と一体化した計測目盛尺4を上方あるいは下方へ移動させ、水面に垂直標識板の表面に印された模様が明確に確認された時、その時の計測目盛尺4に印されている計測目盛6の指し示す水面の値をもって透視度の値とするための容器であればよい。
ここで、標識板に表示される標識模様は
図2又はJIS K0102で定められている二重直行線に限定されるものではなく、標識板が検水面に対して水平に設置されていることを確認できるものであればよい。また、標識板の形状は円形に限定されるものではない。ただし、高さ320mm、直径33〜35mmの円筒型透明ガラス製容器を用い、計測目盛板の表面が白色で、かつ、その表面に1.0mm間隔に2本の0.5mm幅の黒線を十文字に印したものを用いることにより、JIS K0102に準拠した透視度計として使うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 長円筒容器
2 透視度計測治具
3 底部
4 計測目盛尺
5 標識板
6 計測目盛
7 標識模様
8 係止部材(磁石)
9 係止部材(係止金具)
10 係止部材(係止鋲)
11 係止部材(固定バネ)
12 下口付シリンダー
13 検水注ぎ口
14 計測目盛
15 水出し口
16 ゴム管
17 ピンチコック
18 標識板