特許第6687939号(P6687939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687939
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】光電変換器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   H01L31/10 G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-6181(P2016-6181)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-126701(P2017-126701A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年11月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 俊匡
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松本 敦
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山本 直克
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−163804(JP,A)
【文献】 特開平05−300042(JP,A)
【文献】 特開昭53−033083(JP,A)
【文献】 特開2014−150462(JP,A)
【文献】 特開平11−088262(JP,A)
【文献】 特開平06−129984(JP,A)
【文献】 特開2004−119885(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0188963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10−31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を電気信号に変換して増幅する光電変換器であって、
前記光信号を電気信号に変換して出力する光電変換素子と、
前記光電変換素子から出力される電気信号を増幅する高周波増幅器と、
前記光電変換素子と前記高周波増幅器との間に配置され、前記光電変換素子と前記高周波増幅器とのマッチングを行う調整回路と
を備え、
前記高周波増幅器は、30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域のうち特定の帯域を増幅する狭帯域型の増幅器であり、
前記調整回路は、Q値が2〜5の範囲内となるように調整されていることを特徴とする光電変換器。
【請求項2】
前記調整回路は、VSWR(定在波比)が3以下となるように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換器。
【請求項3】
前記調整回路は、コイル及びコンデンサを有するLC回路で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光電変換器。
【請求項4】
前記調整回路は、スタブで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光電変換器。
【請求項5】
前記光電変換素子、前記高周波増幅器及び前記調整回路が、
フリップチップ実装のバンプ、ボンディングワイヤ又は貫通電極のいずれかにより接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を電気信号に変換して増幅する光電変換器に関し、特に狭帯域型の光電変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波・ミリ波帯における光無線通信のキーデバイスとして光電変換器がある。この光電変換器は、基地局より光ケーブルを通して送信される光信号を受信し、電気信号へ変換し、アンテナへと出力する。送信される信号の品質はさまざまであることが予想され、狭帯域型の光電変換器に求められる性能として、高光電気変換効率、高RF出力、高RF出力リニアリティ(増幅回路の出力信号が入力信号に対して比例していること)など、光から電気への変換性能が重要となる。
【0003】
一方他の重要なファクターとして、特定のマイクロ波、ミリ波帯における周波数特性がある。周波数帯域幅は、広いほどデータの伝送容量が増えるため、送信側のみならず受信側、すなわち光電変換器としても、特定の周波数で、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性が求められる。
【0004】
一般に、周波数帯域幅を広げるためには、その中心周波数(キャリア周波数)を高めることが有利である。これは、中心周波数に対して約20%の幅が周波数帯域幅として得られるためである。つまり、中心周波数が10GHzの場合、周波数帯域幅は約2GHzとなるが、中心周波数が100GHzの場合、周波数帯域幅は約20GHzとなり、周波数帯域幅が広がる。
【0005】
なお、光ファイバー無線応用などに使用されるマイクロ波・ミリ波帯における狭帯域型のフォトレシーバの製品や研究報告例は極めて少ないのが現状である。しかし、従来技術として、RFアンプなしで、単体のフォトダイオードのみからなる光電変換器(フォトミキサ)が商品化されている。この光電変換器の中心周波数は100GHz(ギガヘルツ)であり、最大利得からの−3dB帯域は35GHzとなっており、中心周波数に対する帯域幅比は35%程度が得られている。しかしながら、後段にRF(高周波)アンプが接続されていないため光電変換効率が低いという欠点がある。
【0006】
また、非特許文献1には、60GHz帯のRF(高周波)アンプを内蔵した狭帯域型の光電変換器が報告されている。この光電変換器は、60GHz帯における最大利得からの−3dB帯域は10GHzとなっており、その中心周波数55GHzに対する帯域幅比は18%程度が得られており、高い変換効率を有している。これは使用したRFアンプ自体の性能の他、フォトダイオードとRFアンプ間の特性に起因するところが大きい。
【0007】
また、特許文献1には、受光素子としてフォトダイオードを用いた光受信機において、前記フォトダイオードのRF出力信号を入力する周波数同調回路と、前記周波数同調回路の出力端と、後段の増幅器における入力端との間に接続した緩衝抵抗とを具備する光電変換器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−191278号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. Fedderwitz, C.C.Leonhardt, J.Honecker, P.Muller, and A.G.Steffan, “A high power 60GHz photoreceiver”, Tech. Dig. of OFC/NFOEC2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、広周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性が求められるが、非特許文献1で提案される光電変換器では、中心周波数55GHzに対する帯域幅比は18%程度が得られており、高い変換効率を有しているが、使用したRFアンプ自体の性能の他、フォトダイオードとRFアンプ間の特性に起因するところが大きく、応用が利かないという問題がある。
【0011】
また、特許文献1で提案される光電変換器では、フォトダイオードのRF出力信号を入力する周波数同調回路を設けて、光の変調周波数の高周波領域に於けるRF信号出力を増強しているが、Q値が最適化されていない場合、後段のプリアンプとのインピーダンスの不整合が大きく、発振傾向が強まってしまう。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性を有する光電変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る光電変換器は、光信号を電気信号に変換して増幅する光電変換器であって、前記光信号を電気信号に変換して出力する光電変換素子と、前記光電変換素子から出力される電気信号を増幅する高周波増幅器と、前記光電変換素子と前記高周波増幅器との間に配置され、前記光電変換素子と前記高周波増幅器とのマッチングを行う調整回路とを備え、前記高周波増幅器は、30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域のうち特定の帯域を増幅する狭帯域型の増幅器であり、前記調整回路は、Q値が2〜5の範囲内となるように調整されている。
【0014】
上記の構成によれば、光信号を電気信号に変換して出力する光電変換素子と、光電変換素子から出力される電気信号を増幅する高周波増幅器と、光電変換素子と高周波増幅器との間に配置され、光電変換素子と前記高周波増幅器とのマッチングを行う調整回路とを備え、調整回路によりQ値が2〜5の範囲内となるように調整されているので、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性を有する光電変換器を提供することができる。
【0015】
また、調整回路を高周波増幅器の後段ではなく、光電変換素子と高周波増幅器との間に配置することで、高周波増幅器による増幅前に電気信号の調整を行うことで、不要な信号の増幅を抑制し、電力損失が低く、高効率な光電変換器とすることができる。さらに、周波数特性が劣化しやすい30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域に適用するため、より効果的に周波数特性を改善することができる。
【0016】
本発明に係る光電変換器の前記調整回路は、VSWR(定在波比)が3以下となるように調整されている。
【0017】
上記の構成によれば、調整回路は、VSWR(定在波比)が3以下となるように調整されているため、電力損失が低く、高効率な光電変換器を提供することができる。
【0018】
本発明に係る光電変換器の前記調整回路は、コイル及びコンデンサを有するLC回路で構成されている。
【0019】
上記の構成によれば、調整回路を一般的な回路で構成することができるため、製造コストを抑制することができ、製造の安定化に寄与する。
【0020】
本発明に係る光電変換器の前記調整回路は、スタブで構成されている。
【0021】
上記の構成によれば、調整回路を一般的な回路で構成することができるため、製造コストを抑制することができ、製造の安定化に寄与する。
【0024】
本発明に係る光電変換器は、前記光電変換素子、前記高周波増幅器及び前記調整回路が、フリップチップ実装のバンプ、ボンディングワイヤ又は貫通電極のいずれかにより接続されている。
【0025】
上記の構成によれば、光電変換素子、高周波増幅器及び調整回路が、フリップチップ実装によるバンプ、ボンディングワイヤ又は貫通電極のいずれかにより接続されている。このため、光電変換素子、高周波増幅器及び調整回路間のインダクタンスを小さくすることができ、効果的に電力損失を低くできる。また、周波数特性も良好となる。また、上記構成とすることで、光電変換器の部品点数及び組み立て工数を削減することができ、その結果、光電変換器(フォトレシーバーモジュール)製作の製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性を有する光電変換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る光電変換器の回路図である。
図2】実施形態に係る光電変換器の調整回路の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る光電変換器の調整回路の一例を示す他の図である。
図4】実施形態に係る光電変換器の接続方法を示す構成図である。
図5】実施例に係る光電変換器の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
図6】実施例に係る光電変換器の光無線伝送のシミュレーション結果を示す図である。
図7】実施例に係る光電変換器の他の光無線伝送のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る光電変換器の回路図である。図2及び図3は、実施形態に係る光電変換器の調整回路の一例を示す図である。以下、図1乃至図3を参照して本実施形態に係る光電変換器の構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る光電変換器(フォトレシーバ)は、光電変換素子10と、高周波増幅器20と、調整回路30とを備える。光電変換素子10は、例えば、フォトダイオードであり、光信号を電気信号に変換して出力する。
【0030】
高周波増幅器20は、例えば、RF(高周波)アンプであり、光電変換素子10から出力される電気信号を増幅する増幅器である。ここで、高周波増幅器20は、30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域のうち特定の帯域を増幅する狭帯域型の増幅器である。周波数特性が劣化しやすい30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域に適用することで、効果的に周波数特性を改善することができる。
【0031】
調整回路30は、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に配置され、光電変換素子10と高周波増幅器20とのインピーダンスマッチングを行う。ここで、調整回路30は、Q値が2〜5の範囲内となるように調整されていることが好ましい。調整回路30によりQ値が2〜5の範囲内となるように調整することで、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性を有する光電変換器を提供することができる。
【0032】
また、調整回路30を高周波増幅器20の後段ではなく、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に配置することで、高周波増幅器20による増幅前に電気信号の調整を行うことで、電力損失が低く、高効率な光電変換器とすることができる。
【0033】
さらに、調整回路30によりVSWR(定在波比)は、3以下となるように調整されていることが好ましい。調整回路30のVSWR(定在波比)を3以下となるように調整することで不要な信号の増幅を抑制し、電力損失が低く、高効率な光電変換器を提供することができる。
【0034】
電気信号の伝送路においては、送り出し側電圧が一定として、その回路の出力インピーダンスと、受け側回路の入力インピーダンスを等しくすることにより、受け側回路において得られる電力が最大になる性質を持つ。そのため、効率的に伝送を行うためには、それらのインピーダンスを等しく(整合)する必要がある。
【0035】
インピーダンスが整合されていない場合、希望する最大出力を取り出せないだけでなく、高周波回路では伝送路に反射波を生じ進行波と重畳して定在波となって不都合が生ずることがある。本実施形態では、調整回路30により光電変換素子10と高周波増幅器20とのインピーダンスマッチングを行うことで、上記問題を解決している。
【0036】
図2は、調整回路30をコイル及びコンデンサを有するLC回路で構成した例を示す図である。LC回路とは、共振回路の一種であり、コイルLとコンデンサCで構成される電気回路である。この場合、図2に示すように、調整回路30は、1以上のコイルLと、1以上のコンデンサCとを接続した回路で構成される。なお、図2(a)は直列LC回路、図2(b)は並列LC回路を示した図である。
【0037】
本実施形態では、狭帯域でのみインピーダンスの整合が取れれば十分であるため、図2に示すようにコイルLとコンデンサCの組み合わせによる整合回路を用いることができる。コンデンサCやコイルLの比率を調整することで光電変換素子10と高周波増幅器20とのマッチングを行うが、高周波回路であるため虚部のインピーダンス(リアクタンス成分)の整合が必要となることに留意が必要である。
【0038】
ここで、調整回路30のQ値やVSWR(定在波比)を調整するためには、LC回路の設計が必要となるが、設計方法は、机上計算による方法、スミスチャートを使う方法の他、最近では回路シミュレータを使う方法、ネットワーク・アナライザで合わせこむ方法等がある。
【0039】
なお、LC回路には、直列LC回路(図2(a)参照)と、並列LC回路(図2(b)参照)とが存在する。直列LC回路の場合、そのインピーダンスZは、以下の式(1)であらわされる。
【数1】
・・・(1)
ω:角速度
L:インダクタンス
C:静電容量
j:虚数
【0040】
また、並列LC回路の場合、そのインピーダンスZは、以下の式(2)であらわされる。
【数2】
・・・(2)
ω:角速度
L:インダクタンス
C:静電容量
j:虚数
【0041】
図3は、調整回路30をスタブ(Stub)回路で構成した例を示す図である。スタブとは高周波回路において伝送線路に並列に接続される分布定数線路のことである。分布定数線路では、終端負荷と、線路長の波長に対する比により、入力端から見てキャパシタになったりインダクタになったりするため、高周波回路でインピーダンスマッチングをおこなうためのコンデンサやコイルの代わりとして用いることができる。
【0042】
終端負荷(抵抗)の種類により、先端が開放しているものはオープンスタブ(Open stub)、先端が短絡しているものはショートスタブ(Short stub)と呼ばれる。図3に示す例では、光電変換素子10と高周波増幅器20との間、すなわち電気信号の伝送線路に直列接続された2つのスタブS1,S2と、一端がスタブS1,S2間に接続され、他端が短絡(接地)されたスタブS3と、一端がスタブS2と高周波増幅器20との間に接続され、他端が短絡(接地)された抵抗Rとで調整回路30が構成されている。
【0043】
ここで、図3に示す回路例では、終端負荷(抵抗)の先端が短絡(接地)しているためショートスタブ(Short stub)型の回路である。なお、スタブS1〜S3は、分布定数線路であり、例えば、配線基板上に形成されるマイクロストリップ線路等により実現される。
【0044】
調整回路30を、コイル及びコンデンサを有するLC回路やスタブのような一般的な回路で構成することで、製造コストを抑制することができ、製造の安定化に寄与する。なお、図2及び図3に示した回路は、調整回路30の一例であり、図2及び図3に示す例に限られない。調整回路30は、図2及び図3に示した回路以外の回路によっても実現が可能である。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る光電変換器は、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に、LC回路やスタブ回路により構成される調整回路を設けたことを特徴とする。光電変換素子10と高周波増幅器20とを直接接続した場合、光電変換素子10の出力インピーダンスと、高周波増幅器20の入力インピーダンスのミスマッチが発生しやすく周波数特性を制御することが難しい。
【0046】
特に光電変換素子10の出力インピーダンスは高く、高周波増幅器20は、中心周波数のみでインピーダンス整合させている場合が主であり、その他の周波数ではインピーダンスが50Ω(オーム)に整合されておらず、リターンロス(入力電力に対する反射電力の比)が大きくなる。このような条件で周波数特性を、例えば、できるだけ平坦なものに制御することは難しい。このため、本実施形態に係る光電変換器では、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に、LC回路やスタブ回路により構成される調整回路を設けている。
【0047】
そして、調整回路30により、Q値が5程度となるように構成した場合、光電変換素子10、調整回路30及び高周波増幅器20を通して利得が向上する。また、調整回路30により、Q値が1程度となるように構成した場合Q=1に近い場合、周波数帯域が広がる。このため、本実施形態に係る光電変換器では、Q値が2〜5程度となるようにして、緩やかに共振させている。Q値が高すぎる場合は、高周波増幅器20の作用により発振傾向を示し、モジュールとしての機能を失ってしまう。また、VSWR(定在波比)3は、高周波増幅器20との作用で発振を生じない値を示す。
【0048】
なお、本実施形態に係る光電変換器は、図4に示すように、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30は、フリップチップ実装、ワイヤボンディング又は貫通電極のいずれかの方法により接続されることが好ましい。図4(a)は、光電変換素子10の回路が形成された半導体チップと、高周波増幅器20の回路が形成された半導体チップと、調整回路30が形成された半導体チップとをワイヤボンディングにより接続した例を示す図である。
【0049】
図4(a)に示す例では、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30が有する入力端、出力端及び接地用端子がボンディングワイヤWで夫々接続されている。なお、光電変換素子10の回路が形成された半導体チップと、高周波増幅器20の回路が形成された半導体チップと、調整回路30が形成された半導体チップとをスペーサを介して積層したのち、入力端、出力端及び接地用端子をボンディングワイヤWで夫々接続するようにしてもよい。
【0050】
図4(b)は、光電変換素子10の回路が形成された半導体チップと、高周波増幅器20の回路が形成された半導体チップと、調整回路30が形成された半導体チップとをフリップチップ接続により接続した例を示す図である。図4(b)に示す例では、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30が有する入力端、出力端及び接地用端子がバンプBにより夫々接続されている。
【0051】
図4(c)は、光電変換素子10の回路が形成された半導体チップと、高周波増幅器20の回路が形成された半導体チップと、調整回路30が形成された半導体チップとをSi貫通電極TSVにより接続した例を示す図である。図4(c)に示す例では、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30が有する入力端、出力端及び接地用端子がSi貫通電極TSVにより夫々接続されている。
【0052】
図4を参照して説明したように、光電変換素子10と、高周波増幅器20と、調整回路30とをフリップチップ実装、ワイヤボンディング又は貫通電極のいずれかの方法により接続することで、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30間のインダクタンスを低くすることができ光電変換器の周波数特性が向上する。また、図4に示す構成とすることで、光電変換器の部品点数及び組み立て工数を削減することができ、その結果、光電変換器(フォトレシーバーモジュール)製作の製造コストを削減することができる。
【実施例】
【0053】
(周波数特性の比較)
図5は、実施例に係る光電変換器の周波数特性のシミュレーション結果である。図5(a)の横軸は、周波数(GHz)である。図5(a)の縦軸は、光電変換素子10及び高周波増幅器20を含む利得(dB)である。また、図5(b)の横軸は、周波数(GHz)である。図5(b)の縦軸は、位相(度)である。なお、図5に示すシミュレーション結果は、中心周波数が30GHzとして場合の結果である。
【0054】
図5のうち破線のグラフが、図1を参照して説明した光電変換器のシミュレーション結果である。すなわち、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に調整回路30が配置されており、光電変換素子10及び高周波増幅器20間のマッチングが調整されている。なお、調整回路30は、図3を参照して説明したスタブにより構成されている。なお、調整回路30(変形スタブ)は、Q値を低くし、VSWR(定在波比)が約3(リターンロスが−6db)となるように調整した。
【0055】
また、図5のうち実線のグラフが、従来の光電変換器の周波数特性のシミュレーション結果である。すなわち、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に調整回路30が配置されておらず、光電変換素子10及び高周波増幅器20間のマッチングが調整されていない。なお、実線のグラフは、インダクタンスによりQ値を比較的大きく調整した例を示しているここで、Q値は、トリミングなし時(調整回路30無し)で4.4、トリミングあり時(調整回路30有り)で2.5程度とした。
【0056】
図5(b)のシミュレーション結果から、調整回路30がない場合(実線)は、位相差を50°内に保てる周波数帯域は7GHzと狭いが、調整回路30を配置した場合(破線)は、位相差を50°内に保てる周波数帯域は11.8GHzと広くなっていることがわかる。これは、中心周波数30GHzに対する帯域幅比でいうと、調整回路30がない場合(実線)で23%、調整回路30を備える場合(破線)で39%となり、広帯域化が確認できる。
【0057】
(光無線伝送の比較)
図6及び図7は、実施例に係る光電変換器の光無線伝送のシミュレーション結果である。図6は、調整回路30がない場合のシミュレーション結果である。図7は、調整回路30がある場合のシミュレーション結果である。
【0058】
なお、以下のシミュレーションでは、中心周波数を30GHzとした。また、調整回路30は、図3を参照して説明したスタブにより構成されている。さらに、調整回路30(変形スタブ)は、Q値を低くし、VSWR(定在波比)が約3(リターンロスが−6db)となるように調整している。
【0059】
調整回路30がない場合と、調整回路30がある場合のシミュレーション結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0060】
表1に示すように、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に調整回路30を備えることで、伝送シンボルレート(Gbaud)が、6から8.4に向上できることがわかった。また、変調方式も16QAMから64QAMまで多値化が可能であることが確認できた。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る光電変換器は、光信号を電気信号に変換して増幅する光電変換器であって、光信号を電気信号に変換して出力する光電変換素子10と、光電変換素子から出力される電気信号を増幅する高周波増幅器20と、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に配置され、光電変換素子10と高周波増幅器20とのマッチングを行う調整回路30とを備え、調整回路30は、Q値が2〜5の範囲内となるように調整されている。
【0062】
上記の構成によれば、光信号を電気信号に変換して出力する光電変換素子10と、光電変換素子10から出力される電気信号を増幅する高周波増幅器20と、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に配置され、光電変換素子10と高周波増幅器20とのマッチングを行う調整回路30とを備え、調整回路30によりQ値が2〜5の範囲内となるように調整されているので、広い周波数帯域幅かつ平坦な周波数特性を有する光電変換器を提供することができる。
【0063】
また、調整回路30を高周波増幅器20の後段ではなく、光電変換素子10と高周波増幅器20との間に配置することで、高周波増幅器20による増幅前に電気信号の調整を行うことで不要な信号の増幅を抑制し、電力損失が低く、高効率な光電変換器とすることができる。
【0064】
本実施形態に係る光電変換器の調整回路30は、VSWR(定在波比)が3以下となるように調整されている。
【0065】
上記の構成によれば、調整回路30は、VSWR(定在波比)が3以下となるように調整されているため、電力損失が低く、高効率な光電変換器を提供することができる。
【0066】
本実施形態に係る光電変換器の調整回路30は、コイル及びコンデンサを有するLC回路で構成されている。
【0067】
上記の構成によれば、調整回路30を一般的な回路で構成することができるため、製造コストを抑制することができ、製造の安定化に寄与する。
【0068】
本実施形態に係る光電変換器の調整回路30は、スタブで構成されている。
【0069】
上記の構成によれば、調整回路30を一般的な回路で構成することができるため、製造コストを抑制することができ、製造の安定化に寄与する。
【0070】
本実施形態に係る光電変換器の高周波増幅器20は、30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域のうち特定の帯域を増幅する狭帯域型の増幅器である。
【0071】
上記の構成によれば、周波数特性が劣化しやすい30GHz(ギガヘルツ)以上の帯域に適用するため、より効果的に周波数特性を改善することができる。
【0072】
本実施形態に係る光電変換器は、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30が、フリップチップ実装のバンプ、ボンディングワイヤ又は貫通電極のいずれかにより接続されている。
【0073】
上記の構成によれば、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30が、フリップチップ実装によるバンプB、ボンディングワイヤW又は貫通電極TSVのいずれかにより接続されている。このため、光電変換素子10、高周波増幅器20及び調整回路30間のインダクタンスを小さくすることができ、効果的に電力損失を低くできる。また、周波数特性も良好となる。また、上記構成とすることで、光電変換器の部品点数及び組み立て工数を削減することができ、その結果、光電変換器(フォトレシーバーモジュール)製作の製造コストを削減することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。例えば、調整回路30は、図2及び図3に示した回路例に限られず、図2及び図3に示した回路例以外の回路によっても実現が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 光電変換素子
20 高周波増幅器
30 調整回路
B バンプ
W ボンディングワイヤ
TSV Si貫通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7