(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価ステップにおいて、前記評価処理部が、前記第1位置を示すベクトルと、前記第2位置を示すベクトルとの内積値を指標として、前記新規素材が前記目標概念に近いか否かを評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の素材評価方法。
前記第1推定ステップにおいて、前記素材推定部が、前記言語記述に含まれる単語ごとに、前記脳内意味空間における位置を推定し、当該単語ごとの位置の重心を前記第1位置として推定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の素材評価方法。
脳活動計測部によって、被験者に訓練用素材を提示して脳活動が計測された計測結果と、前記訓練用素材の内容を自然言語処理した言語記述とに基づいて構築された脳内意味空間を示す脳内意味空間情報であって、前記脳活動と前記言語記述に現れる単語との脳内の意味関係を示す脳内意味空間情報を記憶する意味空間記憶部と、
前記意味空間記憶部が記憶する前記脳内意味空間情報に基づいて、新規素材の内容を自然言語処理した言語記述から、前記脳内意味空間において前記新規素材の内容に対応する第1位置を推定する素材推定部と、
前記意味空間記憶部が記憶する前記脳内意味空間情報に基づいて、前記新規素材の目標概念を示す目標単語から、前記脳内意味空間において当該目標単語に対応する第2位置を推定する目標推定部と、
前記素材推定部によって推定された前記第1位置と、前記目標推定部によって推定された前記第2位置とに基づいて、前記第1位置と前記第2位置との間の距離が近い程、前記新規素材の目標概念に近くなるように、前記新規素材を評価する評価処理部と
を備えることを特徴とする素材評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による素材評価システム、及び素材評価方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による素材評価システム1の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、素材評価システム1は、データ処理装置10と、画像再生端末20と、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)30と、解析装置40とを備えている。
本実施形態による素材評価システム1は、CM動画(コマーシャル動画、コマーシャルフィルム(CF))などの映像・音声コンテンツや各種製品等である素材に関する知覚内容推定や購買予測等(以下、評価という)を行う。
【0015】
画像再生端末20は、例えば、液晶ディスプレイなどを備える端末装置であり、例えば、トレーニング用の動画(トレーニング動画)などを表示し、被験者S1に視聴させる。ここで、トレーニング動画(訓練用素材の一例)は、多種多様な画像を含む動画である。
【0016】
fMRI30(脳活動計測部の一例)は、画像再生端末20が表示した画像(例えば、トレーニング動画など)を視聴した被験者S1の脳活動を計測する。すなわち、fMRI30は、トレーニング動画を被験者S1に提示して与えた被験者S1への刺激に対する被験者S1の脳活動を計測する。fMRI30は、被験者S1の脳活動に関連した血流動態反応を視覚化するfMRI信号(脳活動信号)を出力する。fMRI30は、所定の時間間隔(例えば、2秒間隔)で、被験者S1の脳活動を計測し、計測した計測結果をfMRI信号として解析装置40に出力する。
【0017】
解析装置40(意味空間構築部の一例)は、fMRI30によって計測された計測結果と、トレーニング動画の内容を自然言語処理した言語記述(アノテーション)とに基づいて、脳活動と言語記述に現れる単語との脳内の意味関係を示す脳内意味空間を構築する。解析装置40は、例えば、統計的学習モデルを用いて、トレーニング動画による刺激と脳活動との組データに対して、対応関係の中間表象となる脳内意味空間を定義する。解析装置40は、構築した脳内意味空間を示す脳内意味空間情報を、データ処理装置10に出力し、当該脳内意味空間情報を、データ処理装置10の意味空間記憶部111に記憶させる。
【0018】
データ処理装置10(素材評価装置の一例)は、fMRI30による脳活動の計測を新たに行わずに、解析装置40によって構築された脳内意味空間に基づいて、評価対象の新規素材の評価を行うコンピュータ装置である。データ処理装置10は、解析装置40によって構築された脳内意味空間に、新規素材の意味内容を投射するとともに、目標概念を示す目標単語を脳内意味空間に投射する。そして、データ処理装置10は、新規素材に対応する脳内意味空間上の位置(第1位置)と、目標単語に対応する脳内意味空間上の位置(第2位置)とに基づいて、新規素材を評価する。また、データ処理装置10は、記憶部11と、制御部12とを備えている。
【0019】
記憶部11は、データ処理装置10が実行する各種処理に利用される各種情報を記憶する。記憶部11は、意味空間記憶部111と、推定結果記憶部112と、評価結果記憶部113とを備えている。
意味空間記憶部111は、解析装置40によって構築された脳内意味空間を示す脳内意味空間情報を記憶する。ここで脳内意味空間情報は、例えば、後述するアノテーションベクトルを脳内意味空間上に投射する投射関数である。
【0020】
推定結果記憶部112は、後述する素材推定部121及び目標推定部122による推定結果を記憶する。推定結果記憶部112は、例えば、新規素材に対応する脳内意味空間上の位置を示す推定結果と、目標単語に対応する脳内意味空間上の位置を示す推定結果とを記憶する。
評価結果記憶部113は、新規素材の評価結果を記憶する。評価結果記憶部113は、例えば、後述する脳内意味空間上の距離の指標などの情報を記憶する。
【0021】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、データ処理装置10を統括的に制御する。制御部12は、データ処理装置10が実行する各種処理を実行する。また、制御部12は、素材推定部121と、目標推定部122と、評価処理部123と、出力処理部124を備えている。
【0022】
素材推定部121は、新規素材の内容を自然言語処理した言語記述から、脳内意味空間において新規素材の内容に対応する位置(第1位置)を推定する。すなわち、素材推定部121は、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、新規素材の内容を自然言語処理した言語記述から、脳内意味空間において新規素材の内容に対応する第1位置を推定する。ここで、言語記述は、例えば、後述するアノテーションベクトルである。素材推定部121は、新規素材の内容に対応するアノテーションベクトルを、脳内意味空間情報を用いて、脳内意味空間上に投射する。
【0023】
ここで、素材推定部121が新規素材の内容からアノテーションベクトルを生成する処理について説明する。新規素材が、例えば、画像である場合、当該画像の印象を示す言語記述の文章(アノテーション情報)が予め作成されており、素材推定部121は、当該アノテーション情報を外部から取得する。ここで、アノテーション情報は、例えば、50字〜150字のシーン概要(画像の概要)の説明や感想などの文章である。素材推定部121は、取得した言語記述の文章(アノテーション情報)を例えば、MeCabなどを利用して、形態素解析を行い、分かち書きのデータを生成する。次に、素材推定部121は、当該分かち書きのデータに含まれる各単語に対して、コーパス50を利用して自然言語処理(例えば、word2vec)を行い、Skip−gram等の行列であるアノテーションベクトルを単語ごとに生成する。
【0024】
なお、コーパス50は、例えば、Wikipedia(登録商標)や新聞記事等の大量の文章データのデータベースである。素材推定部121は、このような大量の文章データをコーパス50として、自然言語処理を行い、アノテーションベクトルを生成する。ここで、アノテーションベクトルは、画像の印象を示す言語記述(アノテーション)に登場する単語に対して、コーパス50に登録されている単語の関係性で距離(意味)が近いものを算出したものである。
【0025】
素材推定部121は、例えば、生成した単語ごとアノテーションベクトルを、上述した脳内意味空間情報に基づいて、脳内意味空間上の位置に変換(投射)する。なお、素材推定部121は、投射した各単語に対応する位置のそれぞれを上述した第1位置としてもよいし、投射した各単語に対応する位置の重心(平均)を上述した第1位置としてもよい。
また、素材推定部121は、新規素材の内容に対応する脳内意味空間上の位置(第1位置)を示す推定結果(例えば、位置を示すベクトル(V1))を推定結果記憶部112に記憶させる。
【0026】
目標推定部122は、新規素材の目標概念を示す目標単語から、脳内意味空間において当該目標単語に対応する位置(第2位置)を推定する。すなわち、目標推定部122は、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、目標単語から、脳内意味空間において目標単語に対応する第2位置を推定する。ここで、目標単語とは、例えば、「可愛い」、「新鮮」など、評価対象の新規素材が目標とする概念を表す単語である。
【0027】
目標推定部122は、目標単語を外部から取得し、当該目標単語に対して、コーパス50を利用して自然言語処理(例えば、word2vec)を行い、Skip−gram等の行列である目標単語に対応するアノテーションベクトルを生成する。目標推定部122は、目標単語に対応するアノテーションベクトルを、上述した脳内意味空間情報に基づいて、脳内意味空間上の位置に変換(投射)する。
また、目標推定部122は、目標単語に対応する脳内意味空間上の位置(第2位置)を示す推定結果(例えば、位置を示すベクトル(V2))を推定結果記憶部112に記憶させる。
【0028】
評価処理部123は、目標推定部122によって推定された第1位置と、目標推定部122によって推定された第2位置とに基づいて、新規素材を評価する。評価処理部123は、例えば、脳内意味空間上の第1位置と第2位置との間の距離に基づいて、新規素材が目標概念に近いか否かを評価する。すなわち、評価処理部123は、脳内意味空間上の距離が近い程、新規素材が目標概念に近いと考えられ、制作意図を反映しているといえる。また、評価処理部123は、脳内意味空間上の距離が遠い程、新規素材が目標概念から遠いと考えられ、制作意図を反映していないといえる。
【0029】
また、評価処理部123は、脳内意味空間上の距離の指標として、例えば、ユークリッド距離、マハラノビス距離、エントロピー、尤度などを算出する。また、評価処理部123は、新規素材の内容に対応する第1位置を示すベクトル(V1)と、目標単語に対応する第2位置を示すベクトル(V2)との内積値(V1・V2)を指標として、新規素材が目標概念に近いか否かを評価するようにしてもよい。
また、評価処理部123は、算出した脳内意味空間上の距離の指標等の情報を評価結果記憶部113に記憶させる。
【0030】
出力処理部124は、評価処理部123によって評価された評価結果を外部に出力させる。出力処理部124は、例えば、評価結果記憶部113が記憶する距離の指標等の情報をグラフなどにして、外部に出力させる。
【0031】
次に、図面を参照して本実施形態による素材評価システム1の動作について説明する。
まず、
図2を参照して、本実施形態における脳内意味空間の構築処理について説明する。
図2は、本実施形態における脳内意味空間の構築の一例を説明する図である。
図2に示すように、まず、画像再生端末20にトレーニング動画を表示させて、被験者S1が当該トレーニング動画を視聴した際の脳活動をfMRI30が計測する。これにより、脳活動の計測結果が得られる。解析装置40は、fMRI30が計測した脳活動の計測結果を取得する。
【0032】
また、一方で、トレーニング動画に含まれるシーン画像(例えば、画像G1)から、アノテーション情報(例えば、アノテーション情報TX1)が生成される。例えば、シーン画像G1が、「大通りを路面電車と大勢の人が通っているシーン」である場合、アノテーション情報TX1は、「珍しい路面電車・・・」、「街の中を走るちんちん電車・・・」、「広島市だろか・・・」などのシーンの概要を説明する文章となる。このアノテーション情報は、上述した素材推定部121において説明した言語記述の文章と同様である。
【0033】
また、解析装置40は、コーパス50に基づいて自然言語処理を行い、アノテーション情報からアノテーションベクトルを生成する。解析装置40は、目標推定部122における説明と同様に、例えば、MeCabなどを利用して、アノテーション情報の形態素解析を行い、分かち書きのデータを生成する。次に、解析装置40は、当該分かち書きのデータに含まれる各単語に対して、コーパス50を利用して自然言語処理(例えば、word2vec)を行い、Skip−gram等の行列であるアノテーションベクトルを単語ごとに生成する。なお、ここでの脳内意味空間の構築に使用するアノテーションベクトルは、例えば、アノテーション情報に含まれる単語ごとのアノテーションベクトルであるものとする。
【0034】
次に、解析装置40は、脳活動の計測結果と、アノテーションベクトルとの組を用いて、統計的学習処理を行い、脳内意味空間を構築する。解析装置40は、例えば、回帰モデルなどの統計的学習処理を行い、脳活動と言語記述に現れる単語との脳内の意味関係を示す脳内意味空間を構築する。解析装置40は、構築した脳内意味空間を示す脳内意味空間情報をデータ処理装置10に出力し、当該脳内意味空間情報を意味空間記憶部111に記憶させる。
【0035】
次に、
図3を参照して、本実施形態における素材の評価処理について説明する。
図3は、本実施形態における素材の評価処理の一例を説明する図である。
図3に示すように、まず、データ処理装置10の素材推定部121は、素材(例えば、評価対象の動画など)の内容を言語記述にした素材の言語記述(アノテーション情報)を脳内意味空間に投射する。すなわち、素材推定部121は、アノテーション情報を形態素解析して分かち書きのデータを生成し、当該分かち書きのデータに含まれる各単語に対して、コーパス50を利用して自然言語処理(例えば、word2vec)を行い、Skip−gram等の行列であるアノテーションベクトルを単語ごとに生成する。
【0036】
次に、素材推定部121は、生成したアノテーションベクトルを、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、脳内意味空間において新規素材の内容に対応する位置P1に投射する。具体的に、素材推定部121は、単語ごとのアノテーションベクトルをそれぞれ脳内意味空間情報に基づいて、脳内意味空間に投射し、投射した各位置の重心を新規素材の内容に対応する位置P1とする。
【0037】
また、データ処理装置10の目標推定部122は、素材の目標概念である目標単語を脳内意味空間に投射する。すなわち、目標推定部122は、目標単語に対して、コーパス50を利用して自然言語処理(例えば、word2vec)を行い、Skip−gram等の行列である目標単語に対応する目標概念ベクトルを生成する。目標推定部122は、目標単語に対応する目標概念ベクトルを、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、脳内意味空間において目標単語に対応する位置P2に投射する。
【0038】
次に、データ処理装置10の評価処理部123は、上述した脳内意味空間の位置P1と、位置P2との距離dに応じて、素材を評価する。例えば、距離dが近い程、被験者S1が脳内で評価対象の新規素材の内容が目標単語に近い内容であると知覚していることを示しており、評価処理部123は、距離dが近い程、新規素材が制作意図を反映していると判定する。また、例えば、距離dが遠い程、被験者S1が評価対象の新規素材の内容が脳内で目標単語に遠い内容であると知覚していることを示しており、評価処理部123は、距離dが遠い程、評価対象の新規素材が制作意図を反映していないと判定する。
【0039】
次に、
図4を参照して、本実施形態による素材評価システム1の全体の動作について説明する。
図4は、本実施形態による素材評価システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、素材評価システム1は、まず、トレーニング動画を視聴した脳活動を計測する(ステップS101)。すなわち、素材評価システム1の画像再生端末20が、トレーニング動画を表示し、当該トレーニング動画を視聴した被験者S1の脳活動をfMRI30が計測する。fMRI30は、計測した計測結果を解析装置40に出力する。
【0040】
次に、解析装置40は、トレーニング動画の各シーンからアノテーションベクトルを生成する(ステップS102)。解析装置40は、トレーニング動画の各シーンから、
図2に示すように、アノテーションベクトルを生成する。
次に、解析装置40は、脳活動の計測結果と、アノテーションベクトルとから脳内意味空間を構築する(ステップS103)。解析装置40は、脳活動の計測結果とアノテーションベクトルとの組を、統計的学習処理して、脳活動とアノテーションベクトルとを関係付けて、被験者S1に対応した脳内意味空間を構築する(
図2参照)。解析装置40は、構築した脳内意味空間を示す脳内意味空間情報をデータ処理装置10に出力し、当該脳内意味空間情報をデータ処理装置10の意味空間記憶部111に記憶させる。
【0041】
次に、データ処理装置10は、評価対象である新規素材を自然言語処理した言語記述からアノテーションベクトルを生成する(ステップS104)。データ処理装置10の素材推定部121は、例えば、CM動画のどの新規素材における各シーンからアノテーションベクトルを生成する。
【0042】
次に、素材推定部121は、新規素材のアノテーションベクトルから脳内意味空間の第1位置を推定する(ステップS105)。素材推定部121は、例えば、
図3に示すように、新規素材のアノテーションベクトルを、脳内意味空間上の新規素材に対応する位置P1に投射する。なお、素材推定部121は、例えば、各シーンに対応するアノテーションベクトルをそれぞれ脳内意味空間上に投射し、複数の位置P1を推定する。
【0043】
次に、データ処理装置10は、目標単語から目標概念ベクトルを生成する(ステップS106)。データ処理装置10の目標推定部122は、新規素材の目標概念を示す目標単語(例えば、「可愛い」など)から、目標概念ベクトルを生成する。
【0044】
次に、目標推定部122は、目標単語の目標概念ベクトルから脳内意味空間の第2位置を推定する(ステップS107)。目標推定部122は、例えば、
図3に示すように、目標単語の目標概念ベクトルを、脳内意味空間上の目標単語に対応する位置P2に投射する。
【0045】
次に、データ処理装置10の評価処理部123は、脳内意味空間上の第1位置(位置P1)と、第2位置(位置P2)とに基づいて、新規素材を評価する(ステップS108)。評価処理部123は、例えば、各シーンに対応する位置P1を示すベクトル(V1)と、目標単語に対応する位置P2を示すベクトル(V2)との内積値を評価の指標として算出する。
【0046】
なお、上述した素材評価のフローチャートにおいて、ステップS101の処理が、脳活動計測ステップの処理に対応し、ステップS102及びステップS103の処理が、意味空間構築ステップの処理に対応する。また、ステップS104及びステップS105の処理が、第1推定ステップの処理に対応し、ステップS106及びステップS107の処理が、第2推定ステップの処理に対応し、ステップS108の処理が、評価ステップに対応する。ここで、ステップS101からステップS103の処理は、脳活動計測を含むが、新規素材の評価に必要なステップS104からステップS108の処理は、新たな脳活動計測を含まない。これにより、本実施形態による素材評価方法は、新規素材にかかる評価要求に対し、新たな脳活動計測を必要としない迅速、かつ簡便な評価手段を提供している。
【0047】
次に、
図5を参照して、素材評価システム1の評価結果の一例について説明する。
図5は、本実施形態による素材評価システム1の評価結果の一例を示す図である。
図5に示す例は、本実施形態によるデータ処理装置10が、特定のCM動画を定量評価した一例である。これは、例えば2つの映像AとBのどちらが特定の印象をより強く視聴者に与えるか、等の定量指標を提供することを目的とするものである。例えば、3つの30秒CM動画を新規素材として、CM動画の各シーンが目標概念を示す目標単語(この場合は「可愛い」)の認識度(ここでは、内積値)を確認することで、目標単語を認知している度合を推定したものである。
図5に示すグラフにおいて、縦軸は、「可愛い」の認識度(内積値)を示す、横軸は、時間を示している。
【0048】
例えば、CM動画CM−1が、「女子高生が親戚と話をしている場面」であり、CM動画CM−2が。「重役会議が行われている場面」であり、CM動画CM−3が、「アイドルがダンスの練習をしている場面」である。
図5に示す例では、CM動画CM−1が、最も内積値が高く、目標単語(「可愛い」)に最も近い素材であることを示している。
【0049】
なお、
図5に示す例では、評価処理部123は、1人の被験者S1に対応する脳内意味空間により評価しているが、複数の被験者S1それぞれにより構築した脳内意味空間それぞれにより、新規素材を評価するようにしてもよい。この場合、意味空間記憶部111は、被験者S1の識別情報と、脳内意味空間情報とを対応付けて記憶する。
また、新規素材によって、女性向けのCM、子供向けのCMなど、評価対象が分かっている場合には、評価処理部123は、評価対象の新規素材の種類に応じて、被験者S1に対応する脳内意味空間情報を変更して、評価するようにしてもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態による素材評価方法は、脳活動計測ステップと、意味空間構築ステップと、第1推定ステップと、第2推定ステップと、評価ステップとを含んでいる。脳活動計測ステップにおいて、fMRI30(脳活動計測部)が、訓練用素材(例えば、トレーニング動画)を被験者S1に提示して、脳活動を計測する。意味空間構築ステップにおいて、解析装置40(意味空間構築部)が、脳活動計測ステップによって計測された計測結果と、訓練用素材の内容を自然言語処理した言語記述(アノテーション)とに基づいて、脳活動と言語記述に現れる単語との脳内の意味関係を示す脳内意味空間を構築する。第1推定ステップにおいて、素材推定部121が、新規素材の内容を自然言語処理した言語記述から、脳内意味空間において新規素材の内容に対応する第1位置を推定する。第2推定ステップにおいて、目標推定部122が、新規素材の目標概念を示す目標単語から、脳内意味空間において当該目標単語に対応する第2位置を推定する。そして、評価ステップにおいて、評価処理部123が、第1推定ステップによって推定された第1位置と、第2推定ステップによって推定された第2位置とに基づいて、新規素材を評価する。
【0051】
これにより、本実施形態による素材評価方法は、新たに評価する新規素材が目標概念に近い脳内表現を誘起するか否かを、新たな脳活動の計測を行わずに、定量的に評価することができる。また、本実施形態による素材評価方法は、新規素材を評価する際に、個別の脳活動の計測をする必要がないため、素材作成、及び評価のサイクルを大幅に低減することができる。よって、本実施形態による素材評価方法は、迅速、且つ簡便に評価することができる。また、本実施形態による素材評価方法は、人的コスト、時間的コスト、及び金銭的コストを低減することが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、評価ステップにおいて、評価処理部123が、脳内意味空間上の第1位置(位置P1)と第2位置(位置P2)との間の距離(d)に基づいて、新規素材が目標概念に近いか否かを評価する。
これにより、本実施形態による素材評価方法は、客観的、且つ、定量的に新規素材に関する評価(例えば、知覚内容推定、及び購買予測など)を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、評価ステップにおいて、評価処理部123が、第1位置を示すベクトルと、第2位置を示すベクトルとの内積値を指標として、新規素材が目標概念に近いか否かを評価してもよい。
これにより、本実施形態による素材評価方法は、内積値の算出という簡易な手法により、
図5に示すように、新規素材に関する定量的な評価を適切に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1推定ステップにおいて、素材推定部121が、言語記述に含まれる単語ごとに、脳内意味空間における位置を推定し、当該単語ごとの位置の重心を第1位置として推定する。
これにより、本実施形態による素材評価方法は、脳内意味空間における新規素材に対応する第1位置を、重心を算出すという簡易な手法により適切に推定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1推定ステップにおいて、素材推定部121が、言語記述に含まれる単語のそれぞれに対応する脳内意味空間における位置を第1位置として推定するようにしてもよい。
これにより、本実施形態による素材評価方法は、新規素材の内容を示す言語記述に含まれる単語単位で、目標単語との距離を評価することができる。
【0056】
また、本実施形態によるデータ処理装置10(素材評価装置)及び素材評価システム1は、意味空間記憶部111と、素材推定部121と、目標推定部122と、評価処理部123とを備えている。意味空間記憶部111は、fMRI30によって、被験者S1に訓練用素材を提示して脳活動が計測された計測結果と、訓練用素材の内容を自然言語処理した言語記述とに基づいて構築された脳内意味空間を示す脳内意味空間情報であって、脳活動と言語記述に現れる単語との脳内の意味関係を示す脳内意味空間情報を記憶する。素材推定部121は、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、新規素材の内容を自然言語処理した言語記述から、脳内意味空間において新規素材の内容に対応する第1位置を推定する。目標推定部122は、意味空間記憶部111が記憶する脳内意味空間情報に基づいて、新規素材の目標概念を示す目標単語から、脳内意味空間において当該目標単語に対応する第2位置を推定する。評価処理部123は、素材推定部121によって推定された第1位置と、目標推定部122によって推定された第2位置とに基づいて、新規素材を評価する。
これにより、本実施形態によるデータ処理装置10及び素材評価システム1は、上述した素材評価方法と同様に、新規素材に対して、新たな脳活動の計測を行わずに、定量的に評価することができ、迅速、且つ簡便に評価することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、素材評価システム1は、画像再生端末20と、fMRI30と、解析装置40とを備える例を説明したが、予め脳内意味空間情報が意味空間記憶部111に記憶されている場合には、データ処理装置10のみにより構成されてもよい。また、データ処理装置10は、解析装置40の機能を含んでもよい。
【0058】
また、上記の実施形態において、出力処理部124が、外部に評価結果を出力する例を説明したが、これに限定されるものではなく、データ処理装置10が表示部を備え、表示部に評価結果を出力するようにしてもよい。また、記憶部11の一部又は全部をデータ処理装置10の外部に備えるようにしてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態において、新規素材(CM動画)のシーンごとに評価する例を説明したが、絵コンテなどのカットごとに評価してもよいし、新規素材(CM動画)全体の内容に対して評価してもよい。
また、上記の実施形態において、脳内意味空間の構築に使用するアノテーションベクトルが、アノテーション情報に含まれる単語ごとのアノテーションベクトルである例を説明したが、単語ごとのアノテーションベクトルの重心を脳内意味空間の構築に使用するアノテーションベクトルとしてもよい。
【0060】
なお、上述したデータ処理装置10及び解析装置40が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したデータ処理装置10及び解析装置40が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したデータ処理装置10及び解析装置40が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0061】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にデータ処理装置10及び解析装置40が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0062】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。