【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省「140GHz帯高精度レーダーの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送信素子から出力された電磁波の反射波を受信する受信素子の受信出力として、送信素子で電磁波が出力されてから受信素子で反射波を受信するまでの伝送経路が異なる複数の系の受信出力を得る受信処理部と、
前記受信処理部で得た各受信出力に含まれる閾値を越える極大値を、複数の距離点の情報として抽出すると共に、各距離点のドップラ速度を取得する距離点取得部と、
前記距離点取得部で得られた複数の距離点の情報を、それぞれの距離点のドップラ速度に基づいて複数のクラスタに分類するクラスタリング処理部と、
前記クラスタリング処理部で分類されたクラスタごとの複数の距離点の集積度を評価して、目標の形状を得る距離点マイグレーション処理部とを備え、
前記距離点マイグレーション処理部での複数の距離点の集積度の評価に基づいて、前記クラスタリング処理部で複数のクラスタに分類する処理を再度実行し、再度の実行で得た複数のクラスタごとの複数の距離点の集積度の評価を、前記距離点マイグレーション処理部で行うようにした
レーダ装置。
送信素子から出力された電磁波の反射波を受信する受信素子の受信出力として、送信素子で電磁波が出力されてから受信素子で反射波を受信するまでの伝送経路が異なる複数の系の受信出力を得る受信処理と、
前記受信処理で得た各受信出力に含まれる閾値を越える極大値を、複数の距離点の情報として抽出すると共に、各距離点のドップラ速度を取得する距離点取得処理と、
前記距離点取得処理で得られた複数の距離点の情報を、それぞれの距離点のドップラ速度に基づいて複数のクラスタに分類するクラスタリング処理と、
前記クラスタリング処理で分類されたクラスタごとの複数の距離点の集積度を評価して、目標の形状を得る距離点マイグレーション処理とを含み、
前記距離点マイグレーション処理での複数の距離点の集積度の評価に基づいて、前記クラスタリング処理で複数のクラスタに分類する処理を再度実行し、再度の実行で得た複数のクラスタごとの複数の距離点の集積度の評価を、前記距離点マイグレーション処理で行うようにした
目標形状推定方法。
送信素子から出力された電磁波の反射波を受信する受信素子の受信出力として、送信素子で電磁波が出力されてから受信素子で反射波を受信するまでの伝送経路が異なる複数の系の受信出力を得る受信処理手順と、
前記受信処理手順で得た各受信出力に含まれる閾値を越える極大値を、複数の距離点の情報として抽出すると共に、各距離点のドップラ速度を取得する距離点取得処理手順と、
前記距離点取得処理手順で得られた複数の距離点の情報を、それぞれの距離点のドップラ速度に基づいて複数のクラスタに分類するクラスタリング処理手順と、
前記クラスタリング処理手順で分類されたクラスタごとの複数の距離点の集積度を評価して、目標の形状を得る距離点マイグレーション処理手順とを、
コンピュータ装置に実装して実行させるプログラムであり、
前記距離点マイグレーション処理手順での複数の距離点の集積度の評価に基づいて、前記クラスタリング処理手順で複数のクラスタに分類する処理を再度実行し、再度の実行で得た複数のクラスタごとの複数の距離点の集積度の評価を、前記距離点マイグレーション処理手順で行うようにした
プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態の例(以下、「本例」と称する。)を、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[1.RPM法の基本原理]
まず、本例のレーダ装置に適用されるRPM(Range Points Migration:距離点マイグレーション)法の基本原理について説明する。
RPM法は、送信素子から電磁波を送信して、その電磁波の目標での反射波を受信素子が受信したとき、その受信信号の状態から、目標境界を点群として表現し、点群の集積度の評価で、目標の形状を推定するものである。
【0013】
例えば、
図1Aに示すように、6個のアンテナa1,a2,a3,・・・,a6を一定間隔で直線状に配置する。アンテナa1は送信素子であり、他のアンテナa2〜a6は受信素子である。以下の説明では、アンテナa1を送信素子と称し、アンテナa2〜a6を受信素子と称する。但し、ここでの送信素子a1は、後述するように送信機能の他に受信機能も備える。
図1Aの例では、実空間上に3つの目標♯1,♯2,♯3が存在したとする。
図1Aは、横軸をX方向、縦軸をZ方向とした2次元上の実空間での目標♯1〜♯3、送信素子a1、及び受信素子a2〜a6の位置を示す。送信素子a1と受信素子a2〜a6は、X方向に直線状に一定間隔で配置されている。
【0014】
送信素子a1から電磁波を送信したとき、受信素子a2で受信される信号には、
図1Aに破線で電磁波の伝送経路を示すように、3つの目標♯1,♯2,♯3で反射した成分が含まれる。送信素子a1から送信された電磁波が、各目標♯1,♯2,♯3で反射して受信素子a2で受信されるまでの伝送経路の距離が異なるとき、各目標♯1,♯2,♯3で反射した信号は、受信素子a2に到達するタイミングが異なる。
【0015】
図1Bは、受信素子a2で得られる受信信号のレベルを示すものである。
図1Bの縦軸は、受信素子a2での受信信号から、送信素子a1から送信された信号をフィルタで抽出したときの信号レベルを示す。横軸は、受信信号の時間変化を示す。この時間変化は、電磁波の伝送経路の長さに比例するため、目標までの距離Rに換算することができる。
【0016】
図1Bの例では、目標♯1の表面で反射した信号d−♯1、目標♯2の表面で反射した信号d−♯2、及び目標♯3の表面で反射した信号d−♯3が、受信信号のピーク(極大点)として現われている。これらの信号d−♯1,d−♯2,d−♯3は、閾値αを越えた信号のピークを検出することで抽出することができる。閾値THは、各目標♯1,♯2,♯3の反射波とノイズを区別することが可能な値に設定される。閾値THを越えたピークの信号d−♯1,d−♯2,d−♯3を検出した位置が、そのまま距離Rに換算されることになる。
【0017】
図1Bでは受信素子a2が受信した信号のみを示すが、
図1Aに示す他の受信素子a3〜a6についても、同様に各目標♯1,♯2,♯3で反射した信号から、各目標♯1,♯2,♯3までの距離Rを検出することができる。また、送信素子a1についても、電磁波の送信後に自己が送信した電磁波を受信して、各目標♯1,♯2,♯3までの距離Rを検出することができる。
【0018】
図1Cは、各素子a1〜a6で受信した信号のピークから検出した距離をデータ空間上で並べたものである。
図1Cの横軸は素子配置方向であるX方向を示し、縦軸は各素子で検出した距離Rを示す。例えば、
図1Bに示す受信素子a2の受信信号d−♯1,d−♯2,d−♯3の距離Rが、垂直のラインa2′に沿って示されている。他の素子a1,a3〜a6で検出されるピーク位置の距離Rについても、同様にデータ空間上に配置されている。以下の説明では、それぞれのピーク位置を距離点(RP:Range Point)と称する。
図1Cは、3つの目標♯1,♯2,♯3の検出例を示すため、各素子a1〜a6の受信信号から検出される距離点が、3つの目標♯1,♯2,♯3に対応した3個存在している。但し、一部の素子(受信素子a3,a5)の距離点については、2つの距離点が近接して重なった状態で示されている。
【0019】
RPM法では、この
図1Cに示す各素子a1〜a6で検出した距離点RPを解析して目標♯1,♯2,♯3の形状を推定する処理が行われる。
以下、
図2〜
図4を参照して、得られた距離点から目標♯1,♯2,♯3の形状を推定する原理について説明する。
図2は、目標♯0が存在する場合に、送信素子L
T0から送信した電磁波が目標♯0の表面α0で反射し、その反射波を受信素子L
R0で受信したとき、その受信信号の反射点α0が存在する可能性がある位置を示すものである。受信信号の反射点α0が存在する可能性がある位置は、送信素子L
T0と受信素子L
R0の位置で決まる楕円、つまり、送信素子L
T0と受信素子L
R0の位置を焦点とする楕円C0上に存在する。
【0020】
図2は、送信素子と受信素子が1つの例であるが、受信素子が複数存在する場合には、送信素子と受信素子の組み合わせ毎に、反射点が通過する楕円が形成される。
例えば、
図3に示すように、受信素子L
R0の他に3個の受信素子L
R1,L
R2,L
R3が存在し、合計4個の受信素子L
R0〜L
R3が送信素子L
T0からの電磁波を受信したとき、目標♯0の表面で電磁波が反射した位置は、それぞれの素子の位置で決まる楕円C0,C1,C2,C3の上に存在する。
【0021】
この
図3の例において、各楕円C0,C1,C2,C3の上の電磁波の反射位置が判定できれば、目標♯0の境界形状が得られる。
ここで、RPM法では、楕円C0の上の電磁波の反射位置(距離点RP)を推定するために、その楕円C0と交差する楕円C1,C2,C3の交点の集積度の評価演算を行う。すなわち、
図3の例では、楕円C0と楕円C1との交点α1、楕円C0と楕円C2との交点α2などを求め、各交点α1,α2,・・・の密集度を評価する。そして、その密集度の評価結果から、目標♯0の距離点α0の座標位置を推定する処理が行われる。ここでは、評価対象の距離点RPをMainRPと称し、交点を評価する際に使用する他の距離点群をSubRPと称する。
【0022】
各交点α1,α2,α3の集積度を評価する際には、次式の演算処理が行われる。
すなわち、送信素子及び受信素子の位置と距離で決まる距離点q
iに対する目標境界推定点p^(q
i)は、次の[数1]式で算出される。なお、本明細書中に示す「p^」の「^」は、次の[数1]式に記載するように、本来は「^」が「p」の上に付加されるものであるが、本明細書では記載上の制約から「p^」と示す。
【0024】
この[数1]式において、exp[−D(q
i,q
j)/2σ
2x]の項は、素子間距離の重み付けである。すなわち、
図4に示すように、注目距離点q
iと評価対象距離点q
jとの距離をD(q
i,q
j)としたとき、その距離D(q
i,q
j)の重み付けを行う。
[数1]式において、exp[−||p(q
i;q
j)−p(q
i;q
k)||
2/σ
2r]の項は、楕円交点間密集度の重み付けである。すなわち、i番目の距離点を評価するために、
図4に示す交点p(q
i;q
j)と交点p(q
i;q
k)との評価を行い、楕円交点間密集度の重み付けを行う。
この[数1]式を用いて、それぞれの楕円交点を計算して、その交点の密集度の評価から、
図4に示す目標♯0の境界推定点p^(q
i)を得ることができる。例えば、
図4に示すように、楕円C0上の目標♯0の形状の推定点p^(q
i)は、他の楕円との交点の密集度の評価から、
図4上に×印で示す位置と算出される。
【0025】
このようにRPM法を適用することで、レーダ装置で得た距離点を使って、目標の形状を推定することができる。ところで、RPM法で評価対象の距離点MainRPを精度良く推定するためには、交点を評価する他の距離点群SubRPのデータが正確である必要があるが、交点を評価する他の距離点群SubRPには、不要なデータが含まれている可能性が高い。すなわち、
図3の例のように空間上に1つの目標♯0だけが存在する状況であれば、評価対象の距離点MainRPの周囲の他の距離点群SubRPが、全て評価対象のデータになる。これに対して、目標♯0以外の他の物体が目標♯0の近くに存在したとき、その目標♯0以外の物体の距離点群SubRPが含まれると、評価対象の距離点MainRPの推定精度が劣化する要因になってしまう。
【0026】
また、RPM法では、距離点群SubRPが多数存在するため、楕円の交点の計算回数が非常に多いという問題があり、目標とする距離点を算出するための計算量が多く、評価対象の距離点MainRPを得るために比較的長い時間を必要としていた。具体的には、評価対象の距離点MainRPの数の二乗に比例して計算量が増えるという問題があった。
図1〜
図4では、説明を簡単にするために二次上の形状を評価する例を示したが、三次元上の計算を行う場合には、非常に計算量が増えてしまう。
ここで、本例においては、従来のRPM法が持つ問題点を解決した、少ない計算量で精度の高い形状の推定が可能なレーダ装置を提案するものである。以下、本例のレーダ装置の具体例について説明する。
【0027】
[2.レーダ装置の構成例]
次に、本例のレーダ装置の構成を、
図5を参照して説明する。後述するように本例のレーダ装置は、送信信号として140GHz帯を使用した中心波長λが約2mmのミリ波レーダであり、10m程度の比較的近距離の目標を検出するレーダ装置である。
【0028】
レーダ装置10は、25個のアンテナA1〜A25を備える。25個用意した内の4個のアンテナA1,A5,A21,A25は送信素子と受信素子を兼ね、他の21個のアンテナA2〜A4,A6〜A20,A22〜A24は受信素子である。25個のアンテナA1〜A25の具体的な配置例(
図6)については後述する。
【0029】
そして、レーダ装置10は、UWB(Ultra Wide Band)と称される超広帯域無線信号を送信するUWB送信処理部11を備え、UWB送信処理部11で生成したUWB信号を、送受信切替器SW1〜SW4を介してアンテナA1,A5,A21,A25に供給する。各アンテナA1,A5,A21,A25は、供給されるUWB信号に基づいたパルス状の電磁波を送信する。UWB信号(送信信号)は、例えば中心周波数140GHz、帯域幅10GHzとする。140GHz帯を使うことで、中心波長λが約2mmのミリ波レーダとなる。UWB送信処理部11は、ベースバンド処理部13から供給される信号に基づいて、送信信号を生成する。
【0030】
4個のアンテナA1,A5,A21,A25から送信された電磁波の目標からの反射波は、全てのアンテナA1〜A25で受信される。各アンテナA1〜A25で得た受信信号は、UWB受信処理部12に供給される。UWB受信処理部12では、受信信号の復調などの処理を行ってベースバンド信号とする。UWB受信処理部12で得られたベースバンド信号は、ベースバンド処理部13に供給され、各種ベースバンド処理が行われる。
ベースバンド処理部13で得られたベースバンドの受信信号成分は、フィルタ処理部14に供給される。フィルタ処理部14では、受信信号に含まれる電磁波の反射波の成分を抽出する処理が行われる。
【0031】
フィルタ処理部14で抽出された反射波の成分は、レンジドップラ分布処理部15に供給される。レンジドップラ分布処理部15では、供給される信号の変化状態からドップラ速度が検出される。さらに、フィルタ処理部14で抽出された反射波の成分が極大応答抽出部16に供給され、閾値以上で極大点が抽出される。
そして、極大応答抽出部16で抽出された極大点の情報が距離点取得部17に供給され、距離点が得られる。このとき、距離点取得部17は、それぞれの距離点のドップラ速度についても、レンジドップラ分布処理部15で検出した情報に基づいて取得される。なお、距離点取得部17が取得する距離点には、送信素子と受信素子の位置の情報も含まれる。
【0032】
距離点取得部17で得られたピーク箇所の距離点及びドップラ速度の情報は、クラスタリング処理部18に供給される。クラスタリング処理部18では、供給されるピーク箇所の距離点の情報が、ドップラ速度に基づいて複数のクラスタに分類される。そして、クラスタリング処理部18でドップラ速度に基づいて分類された距離点の情報が、RPM処理部(距離点マイグレーション処理部)19に供給され、RPMの演算処理が行われる。
【0033】
RPM処理部19でRPM法の演算を行う際には、クラスタリング処理部18で分類されたクラスタごとに演算処理が実行される。すなわち、既に
図2〜
図4で説明したように、境界位置の推定対象の距離点MainRPと、交点を評価する他の距離点群SubRPとの演算([数1]式の演算)で、交点の集積度を評価するが、この評価演算を行う際の他の距離点群SubRPとして、ドップラ速度に基づいて分類された同じクラスタ内の距離点だけが使用される。
【0034】
そして、RPM処理部19でそれぞれの距離点についてRPM法の演算を行って得た各距離点の推定結果が、画像出力部20に供給される。画像出力部20は、RPM処理部19における演算で得たそれぞれの箇所の距離点の推定結果から、目標形状を示す画像を生成し、生成した画像データを出力する。
【0035】
なお、RPM処理部19は、1回の演算で得た距離点の情報をクラスタリング処理部18に戻して、再度クラスタリング処理を行うようにしてもよい。そして、そのクラスタリング処理部18での再度分類されたクラスタの情報を使って、RPM処理部19が各距離点の推定処理を繰り返すようにしてもよい。
【0036】
[3.送信素子と受信素子の配置例]
図6は、25個のアンテナA1〜A25の配置の一例を示す。本例のアンテナA1〜A25は、
図6に示すように、水平方向に等間隔で5個配置すると共に、垂直方向に等間隔で5個配置して、25個のアンテナA1〜A25を5個×5個のマトリクス状に配置する。
四隅のアンテナA1,A5,A21,A25は、送信素子であると共に受信素子でもある。他のアンテナA2〜A4,A6〜A20,A22〜A24は受信素子である。したがって、それぞれのアンテナA1〜A25で受信する際には、送信素子である4つのアンテナA1,A5,A21,A25から送信された電磁波の反射波を受信可能である。
【0037】
なお、本例のレーダ装置10は、各アンテナA1〜A25で受信した信号から、4つのアンテナA1,A5,A21,A25から送信された電磁波を分別する必要がある。このためにレーダ装置10は、4つのアンテナA1,A5,A21,A25から送信される信号について、受信処理時に送信信号を区別できるような処理を行っている。例えば、送信タイミングの変更、周波数の変更、識別情報の付加などの処理である。4つの送信用のアンテナA1,A5,A21,A25からの信号を受信信号から分別する処理は、例えばレーダ装置10のベースバンド処理部13で実行され、ベースバンド処理部13で実空間上の電磁波の伝送経路が異なる複数の系の受信データを得る。
【0038】
[4.目標形状推定処理の流れの例]
図7は、本例のレーダ装置10で目標の位置を推定して画像を得る処理の流れを示すフローチャートである。
まずレーダ装置10は、UWB送信処理部11で生成した送信信号を各アンテナA1,A5,A21,A25に供給して送信し、反射波としての受信信号を各アンテナA1〜A25で受信してUWB受信処理部12で受信処理を行って、観測データ取得処理を行う(ステップS11)。そして、フィルタ処理部14が、受信して得た観測データをフィルタ処理して、反射波の成分を抽出する(ステップS12)。
【0039】
次に、レンジドップラ処理部15は、レンジドップラ分布を取得して(ステップS13)、速度情報を得る。さらに、極大応答抽出部16が、同平面内の極大応答の抽出処理を行い(ステップS14)、距離点取得部17は、距離点の情報(距離及びドップラ速度)を取得する(ステップS15)。
そして、クラスタリング処理部18が、距離点取得部17で取得した全ての距離点について、それぞれの距離点が持つドップラ速度に応じて、複数のクラスタに分類するクラスタリング処理を行う(ステップS16)。
このようにして複数のクラスタに分類された後、RPM処理部19は、各クラスタの距離点のデータを使って、RPM(距離点マイグレーション)の演算処理を行い、目標の形状を推定する(ステップS17)。そして、RPM処理部19の演算結果で得た全ての目標の形状を総合して、画像出力部20が目標の画像データを作成して、作成した画像データを出力する。
なお、ステップS17でRPMの演算処理を行った後、再クラスタリングを行う場合には、
図7のフローチャートに破線で示すように、ステップS16のクラスタリング処理に戻り、その再度のクラスタリングで得られたクラスタごとに、ステップS17でのRPMの演算処理が繰り返される。この繰り返しの処理は、複数回繰り返すようにしてもよい。
【0040】
[5.クラスタリングの例]
図8は、レーダ装置10で得た距離点をクラスタリングする例を示す。
図8Aは、複数の受信素子a1〜a6をX方向(横軸方向)に一定間隔で配置した場合に、それぞれの受信素子a1〜a6での受信信号から検出した距離点の距離Rを縦軸とした、距離点のデータ空間を示す図である。この
図8Aは、
図1Cに示すデータ空間と同じ状態を示す。すなわち、
図1Aに示すように3つの目標♯1,♯2,♯3が存在する場合の各受信素子a1〜a6での受信信号から距離点RPを検出した例である。
【0041】
ここで、
図1Aに示す3つの目標♯1,♯2,♯3は、それぞれ異なるドップラ速度を持っていると仮定する。なお、異なるドップラ速度の内の1つは速度0であってもよい。ドップラ速度0の状態とは、目標が静止した状態、又は目標と受信素子との相対距離に変化がない移動状態である。
それぞれの目標♯1,♯2,♯3が分類可能な異なるドップラ速度を持つとき、それぞれの距離点RPの情報は、検出されたドップラ速度で3つのクラスタに分類される。具体的には、
図8Bに示すように、受信素子a1が検出した3つの距離点が、第1のドップラ速度の距離点RP1−1と、第2のドップラ速度の距離点RP2−1と、第3のドップラ速度の距離点RP3−1に分類される。同様に、他の受信素子a2,a3,・・・,a6が検出した3つの距離点が、第1のドップラ速度の距離点RP1−2〜RP1−6と、第2のドップラ速度の距離点RP2−2〜RP2−6と、第3のドップラ速度の距離点RP3−2〜RP3−6に分類される。
【0042】
このように、ドップラ速度でクラスタリングすることで、2つの距離点の情報が近接した距離に存在する場合でも、その近接した2つの距離点の情報を分離できるようになる。具体的には、例えば
図8Bに示すように、受信素子a3が検出した3つの距離点の情報RP1−3,RP2−3,RP3−3が存在し、その内の情報RP1−3,RP2−3が近接した距離点であっても、この2つの情報RP1−3,RP2−3を、個別の距離点の情報に区別できる場合がある。従来は、
図1Cで説明したように、近接した距離点を区別することは不可能であった。
【0043】
図8Bに示すように、ドップラ速度でクラスタ分けされた各距離点をデータ空間上に配置して各クラスタで接続することで、各クラスタごとに距離点の変化を示す特性曲線T1,T2,T3が得られるようになる。観測された距離点の誤差が少ない場合には、それぞれの距離点は各特性曲線T1,T2,T3から大きく外れることがない。
【0044】
そして、各クラスタが持つ距離点の情報を使って、RPM法の演算([数1]式の演算)を行うことで、
図8Cに示すように3つの目標♯1,♯2,♯3の形状の推定点RPM1−1〜RPM1−6,RPM2−1〜RPM2−6,RPM3−1〜RPM3−6が得られる。これらの形状の推定点RPM1−1〜RPM1−6,RPM2−1〜RPM2−6,RPM3−1〜RPM3−6が得られることで、目標♯1,♯2,♯3の形状を示す画像が作成できるようになる。
例えば、目標♯1の形状の推定点RPM1−1〜RPM1−6を得る際には、第1のドップラ速度の距離点RP1−1〜RP1−6だけを使ったRPM法の演算処理が行われ、従来のように全ての距離点を使ってRPM法の演算処理をする場合に比べて、非常に少ない演算処理で目標の形状を得ることができる。演算処理の負担が少ないということは、演算処理に要する時間も短時間になる。また、近接した位置に複数の距離点が存在した場合でも、ドップラ速度が異なった場合には、それぞれの距離点を正確に区別してクラスタリングができるため、目標の形状の推定精度が向上する。
【0045】
[6.シミュレーション例]
次に、
図9を参照して、本例のレーダ装置10を使用して目標の形状を推定するシミュレーション例について説明する。
図9Aは、目標の形状及び目標のドップラ速度と、アンテナA1〜A25(送信素子,受信素子)の配置状態を示す。
ここでは、人体を模した11個の目標♯11〜♯21を想定し、この目標♯11〜♯21と対向した25個のアンテナA1〜A25を使って検出する例を示す。25個のアンテナA1〜A25は、
図6に示すように垂直5個、水平5個のマトリクス状に配置されている。四隅のアンテナA1,A5,A21,A25は送信素子及び受信素子を兼ね、他の21個のアンテナA2〜A4,A6〜A20,A22〜A24は受信素子である。アンテナA1,A5,A21,A25が送信する電磁波としては、140GHz帯のミリ波レーダが使用される。
【0046】
人体を模した11個の目標♯11〜♯21は、それぞれ人体の頭部、胸部、腰部、左上腕部、左下腕部、右上腕部、右下腕部、左腿部、左脛部、右腿部、及び右脛部を模したものである。ここでは、人体が歩行中であることを想定し、ドップラ速度として、
図9Aに矢印で示すように、頭部♯11 0m/s、胸部♯12 0m/s、腰部♯13 0m/s、左上腕部♯14 0.5m/s、左下腕部♯15 1m/s、右上腕部♯16 −0.5m/s、右下腕部♯17 −1m/s、左腿部♯18 −0.5m/s、左脛部♯19 −1m/s、右腿部♯20 0.5m/s、及び右脛部♯21 1m/sが設定されている。
【0047】
図9Bは、従来のRPM法(クラスタリングしない手法)で目標の三次元形状を推定した例を示す。
図9Bの実空間上にプロットした点が、形状の推定位置である。
この従来のRPM法では、演算で推定することができた目標境界点の数は279カ所であり、目標形状の誤差が10λ(λは送信信号の1波長)以内に入る割合は、約57.0%である。この
図9Bに示す演算処理は、551秒で完了した。
【0048】
一方、
図9Cは、本例のクラスタリングが行われるRPM法で目標の形状を推定した例を示す。本例のRPM法で目標位置を推定したときには、演算で推定することができた目標境界点の数は587カ所であり、目標形状の誤差が10λ(λは波長)以内に入る割合は、約70.2%である。この
図9Cに示す演算処理は、175秒で完了した。なお、この演算処理時間は、計算処理を実行する装置(計算機)の処理能力に依存するため、能力の高い計算機を使用することでより高速化を図ることができる。
【0049】
この
図9Cに示す本例のレーダ装置による例と、
図9Bに示す従来のレーダ装置による例を比較すると判るように、本例の場合には目標位置の推定誤差が大幅に減少すると共に、演算処理量も大幅に減少して、演算処理時間も大幅に短縮することができる。
【0050】
このように本例のレーダ装置10によると、抽出した各距離点をドップラ速度に基づいてクラスタリングするため、少ない演算処理量で正確な目標の形状の推定が可能になる。例えば
図9の例のような歩行中の人体が目標である場合、左右の各部が
図9Aで説明したように個別のドップラ速度を持つため、人体の形状が良好に検出できるようになる。なお、1つの物体内の各部が個別のドップラ速度を持つ物体(生体)として人体を検出するのは一例であり、犬や猫などの他の動物の検出に適用してもよい。
したがって、本例のレーダ装置10で周囲の検出を行うことで、不可視領域(濃煙環境下、夜間など)であっても人物などの動きがある物体を良好に検知できるようになる。例えば、災害現場での不明者の捜索、各種施設での高齢者の見守り、建設現場などの危険箇所への侵入監視などが、濃煙環境下や夜間であっても確実に行えるようになる。
【0051】
[7.変形例]
なお、
図6に示すアンテナA1〜A25の配置例は一例であり、その他のアンテナ配置としてもよい。例えば、
図6の例では、送信素子としてのアンテナを4個、受信素子としてのアンテナを25個としたが、複数の系の伝送経路の信号が得られれば、様々なアンテナ配置が適用可能である。例えば、送信素子から送信した電磁波の反射波を多数の受信素子で受信するようにしたが、複数の送信素子から送信した電磁波の反射波を1つなどの限られた数の受信素子で受信するようにして、複数の系の伝送経路の信号を得るようにしてもよい。
また、
図6のように複数配置したアンテナで電磁波の複数の系の伝送経路を得る代りに、送信素子又は受信素子の位置を移動させて、実質的に複数の系の電磁波の伝送経路を得て、RPM法の演算処理を行うようにしてもよい。
また、アンテナA1などが送信素子と受信素子を兼ねるようにした構成についても一例であり、送信素子と受信素子とは、それぞれ個別の素子としてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態例では、140GHz帯を使用して帯域幅が約10GHzのUWB信号を送信するミリ波レーダに適用したが、その他の周波数帯を使用したレーダに適用してもよい。帯域幅が約10GHzとした点についても一例であり、少なくとも数GHz以上の広帯域の信号を送信するレーダ装置に適用することで、同様の処理ができる。
【0053】
また、
図5に示す構成では、レーダ装置10が複数の伝送経路の受信処理、距離点の取得処理、クラスタリング処理、RPM処理、及び画像作成処理を行うようにしたが、例えばレーダ装置で得たデータを、外部の他の装置(コンピュータ装置など)が取得して、これらの処理を行うようにしてもよい。例えば、
図7のフローチャートに示す各処理の手順を実行するプログラム(ソフトウェア)を作成して、そのプログラムをコンピュータ装置に実装して、
図5に示すレーダ装置10と同様の処理を行うようにしてもよい。