(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0012】
(1)発現抑制核酸分子
本発明の発現抑制核酸分子は、前述のように、標的遺伝子の発現抑制核酸分子であって、
X領域とY領域とが連結した一本鎖核酸であり、
前記X領域は、
発現抑制配列であり、
前記Y領域に対する連結側領域(X
B)および非連結側領域(X
F)からなり、
前記連結側領域(X
B)は、その領域内でステムループ構造またはステム構造を形成する配列であり、
前記非連結側領域(X
F)は、前記Y領域と、分子内アニーリングするアニーリング配列を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、標的遺伝子の発現を抑制できる。発現抑制とは、例えば、前記標的遺伝子の翻訳の抑制、すなわち、前記標的遺伝子がコードするタンパク質の翻訳の抑制を意味し、より詳細には、前記標的遺伝子のmRNAからの前記タンパク質の翻訳の抑制を意味する。前記標的遺伝子の発現抑制は、例えば、前記標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、前記転写産物の活性の減少、前記標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または前記翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。前記タンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質があげられる。
【0014】
本発明の発現抑制核酸分子は、前述の構造をとることで、例えば、Dicer非依存で、発現抑制を行うことができる。一般的に、多くの腫瘍細胞ではDicerの発現が低下しているため、本発明の発現抑制核酸分子は、Dicer非依存であることで、例えば、Dicerの発現が低下している腫瘍細胞においても有効に機能できる。また、自然免疫に関与するTLR family、RIG-I、MDA5による核酸認識は、核酸の長さに強く依存する。本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、全長の短縮が可能であるため、自然免疫反応を回避できる。さらに、本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、siRNAのように二本の一本鎖をアニーリングする必要もなく、安価に製造できる。
【0015】
本発明の発現抑制核酸分子における前記X領域および前記Y領域の配置関係の概略を、
図1に示す。なお、
図1は、概略であって、例えば、各領域の長さ、形状等は、制限されない。本発明の発現抑制核酸分子は、
図1に示すように、5’側に前記X領域が配置され、3’側に前記Y領域が配置されてもよいし、また、図示していないが、5’側に前記Y領域が配置され、3’側に前記X領域が配置されてもよく、好ましくは、前者である。前者の場合、本発明の発現抑制核酸分子は、5’側から、前記X領域における前記非連結側領域(X
F)と前記連結側領域(X
B)、および前記Y領域とが、この順序で配置されている。後者の場合、本発明の発現抑制核酸分子は、5’側から、前記Y領域と、前記X領域における前記連結側領域(X
B)と前記非連結側領域(X
F)とが、この順序で配置されている。
【0016】
本発明の発現抑制核酸分子において、前記連結側領域(X
B)は、その領域内でステムループ構造またはステム構造を形成する配列であり、前記非連結側領域(X
F)は、前記Y領域と、分子内アニーリングするアニーリング配列を含む。また、本発明の発現抑制核酸分子において、前記Y領域は、前記連結側領域(X
B)の一端側に位置し、前記連結側領域(X
B)の他端側に位置する前記非連結側領域(X
F)に分子内アニーリングする配列を含む。分子内アニーリングとは、例えば、自己アニーリングともいう。
【0017】
本発明の発現抑制核酸分子は、その5’末端と3’末端とが未連結である、線状一本鎖核酸分子ということもできる。本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、両末端の未結合の維持のため、5’末端が非リン酸基であることが好ましい。
【0018】
本発明の発現抑制核酸分子において、前記X領域は、前述のように、発現抑制配列である。前記発現抑制配列は、例えば、標的遺伝子において、分子内アニーリングにより前記ステムループ構造または前記ステム構造を形成する領域を選択し、前記領域の相補配列とすることで設定できる。
【0019】
本発明の発現抑制核酸分子において、各領域の長さは、特に制限されない。以下に、条件を例示するが、本発明の発現抑制核酸分子は、これらの記載には限定されない。また、本発明において、塩基の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0020】
前記X領域における前記連結側領域(X
B)の長さは、例えば、ステムループ構造またはステム構造をとり得る長さであり、具体的に、下限が、例えば、5塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限が、例えば、23塩基長、21塩基長、19塩基長であり、範囲が、例えば、5〜23塩基長、10〜23塩基長、8〜23塩基長、または、5〜21塩基長、8〜21塩基長、10〜21塩基長、10〜19塩基長である。
【0021】
前記連結側領域(X
B)において、ステムの長さは、下限が、例えば、0塩基長、2塩基長、4塩基長であり、上限が、例えば、10塩基長、8塩基長、6塩基長であり、範囲が、例えば、0〜10塩基長、2〜8塩基長、4〜6塩基長である。
【0022】
前記連結側領域(X
B)において、ループの長さ(X
B)は、下限が、例えば、3塩基長、4塩基長、5塩基長であり、上限が、例えば、21塩基長、19塩基長、17塩基長であり、範囲が、例えば、3〜21塩基長、4〜19塩基長、5〜17塩基長である。
【0023】
前記X領域における前記非連結側領域(X
F)について、前記Y領域と分子内アニーリングするアニーリング配列の長さは、下限が、例えば、0塩基長、2塩基長、4塩基長であり、上限が、例えば、18塩基長、16塩基長、14塩基長であり、範囲が、例えば、0〜18塩基長、2〜16塩基長、4〜14塩基長である。
【0024】
前記X領域は、例えば、前記Y領域と未連結の末端側に、オーバーハングを有してもよい。すなわち、前記非連結側領域(X
F)は、例えば、末端にオーバーハングを有してもよく、具体的には、前記アニーリング配列と前記オーバーハングとを有してもよい。前記オーバーハングは、下限が、例えば、1塩基長、2塩基長であり、上限が、例えば、3塩基長であり、範囲が、例えば、1〜3塩基長、1塩基長または2塩基長である。前記X領域のオーバーハングの配列は、前記発現抑制配列に付加する配列でもよいし、前記発現抑制配列の末端の配列でもよく、好ましくは後者である。
【0025】
前記Y領域は、例えば、前記X領域と未連結の末端にオーバーハングを有してもよく、具体的には、前記アニーリング配列と前記オーバーハングとを有してもよい。前記オーバーハングは、下限が、例えば、1塩基長、2塩基長であり、上限が、例えば、3塩基長であり、範囲が、例えば、1〜3塩基長、1塩基長または2塩基長である。
【0026】
前記Y領域のオーバーハングの配列は、特に制限されず、例えば、3’側から、UU、CU、GC、UA、AA、CC、UG、CG、AU、TT等からなる配列またはこれらを含む配列が例示できる。前記オーバーハングは、例えば、TTとすることで、RNA分解酵素に対する耐性を付加できる。
【0027】
本発明の発現抑制核酸分子において、前記X領域の長さ(X)は、特に制限されず、下限が、例えば、5塩基長、7塩基長、9塩基長であり、上限が、例えば、23塩基長、21塩基長、19塩基長であり、範囲が、例えば、5〜23塩基長、5〜21塩基長、7〜21塩基長、または5〜19塩基長である。
【0028】
本発明の発現抑制核酸分子において、前記Y領域の長さ(Y)は、特に制限されず、下限が、例えば、1塩基長、3塩基長、5塩基長であり、上限が、例えば、18塩基長、16塩基長、14塩基長であり、範囲が、例えば、1〜18塩基長、3〜16塩基長、5〜14塩基長である。
【0029】
本発明の発現抑制核酸分子の全長は、特に制限されず、下限が、例えば、5塩基長、7塩基長、9塩基長であり、上限が、例えば、41塩基長、39塩基長、37塩基長であり、範囲が、例えば、5〜41塩基長、7〜39塩基長、9〜37塩基長である。
【0030】
本発明の発現抑制核酸分子の構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の発現抑制核酸分子において、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0031】
本発明の発現抑制核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1個もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基であってもよい。本発明の発現抑制核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個である。
【0032】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)またはウラシル(U)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)またはチミン(T)を有する。
【0033】
前記非修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、具体的には、例えば、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0034】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。
【0035】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチドの代替物の残基であってもよい。前記代替物は、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられる。
【0036】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0037】
本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、
2H、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34Sおよび
36Sがあげられる。
【0038】
本発明の発現抑制核酸分子は、前述のように、前記標的遺伝子の発現抑制ができる。このため、本発明の発現抑制核酸分子は、例えば、遺伝子が原因となる疾患の治療剤として使用できる。本発明において、「治療」は、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。前記疾患は、特に制限されず、例えば、目的の疾患に応じて前記発現抑制配列を適宜設定できる。前記疾患としては、例えば、乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、食道がん、前立腺がん、胆嚢がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、白血病等のがん、肺線維症、肝線維症等の疾患があげられる。
【0039】
本発明の発現抑制核酸分子の使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記発現抑制核酸分子を投与すればよい。
【0040】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0041】
本発明において、発現抑制の対象となる前記標的遺伝子は、特に制限されず、所望の遺伝子を設定できる。そして、前記標的遺伝子の種類に応じて、例えば、前述のようにして、前記発現抑制配列を設定すればよい。
【0042】
本発明の発現抑制核酸分子の使用に関しては、後述する本発明の組成物、発現抑制方法および治療方法等の記載を参照できる。
【0043】
本発明の発現抑制核酸分子は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制可能であることから、例えば、医薬品、診断薬および農薬、ならびに、農薬、医学、生命科学等の研究ツールとして有用である。
【0044】
本発明の発現抑制核酸分子の合成方法は、特に制限されず、従来公知の核酸の製造方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH−ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’−O−TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
【0045】
(2)組成物
本発明の発現抑制用組成物は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物であって、前記本発明の発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の発現抑制核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の発現抑制用組成物は、例えば、発現抑制用試薬ということもできる。
【0046】
本発明によれば、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に投与することで、前記標的遺伝子の発現抑制を行うことができる。
【0047】
また、本発明の薬学的組成物は、前述のように、前記本発明の発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の薬学的組成物は、前記本発明の発現抑制核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成は何ら制限されない。本発明の薬学的組成物は、例えば、医薬品ということもできる。
【0048】
本発明によれば、例えば、遺伝子が原因となる疾患の患者に投与することで、前記遺伝子の発現を抑制し、前記疾患を治療することができる。本発明において、「治療」は、前述のように、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0049】
本発明において、治療の対象となる疾患は、特に制限されず、例えば、遺伝子の発現が原因となる疾患があげられる。前記疾患の種類に応じて、その疾患の原因となる遺伝子を前記標的遺伝子に設定すればよい。
【0050】
本発明の発現抑制用組成物および薬学的組成物(以下、組成物という)は、その使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記発現抑制核酸分子を投与すればよい。
【0051】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0052】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が培養細胞の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法等があげられる。
【0053】
本発明の組成物は、例えば、本発明の発現抑制核酸分子のみを含んでもよいし、さらにその他の添加物を含んでもよい。前記添加物は、特に制限されず、例えば、薬学的に許容された添加物が好ましい。前記添加物の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0054】
本発明の組成物において、前記発現抑制核酸分子は、例えば、前記添加物と複合体を形成してもよい。前記添加物は、例えば、複合化剤ということもできる。前記複合体形成により、例えば、前記発現抑制核酸分子を効率よくデリバリーすることができる。
【0055】
前記複合化剤は、特に制限されず、ポリマー、シクロデキストリン、アダマンチン等があげられる。前記シクロデキストリンは、例えば、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー等があげられる。
【0056】
前記添加剤は、この他に、例えば、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤等があげられる。
【0057】
(3)発現抑制方法
本発明の発現抑制方法は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、前記本発明の発現抑制核酸分子を使用することを特徴とする。本発明の発現抑制方法は、前記本発明の発現抑制核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0058】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に、前記発現抑制核酸分子を投与する工程を含む。前記投与工程により、例えば、前記投与対象に前記発現抑制核酸分子を接触させる。前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、
in vivoでも
in vitroでもよい。
【0059】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記発現抑制核酸分子を単独で投与してもよいし、前記発現抑制核酸分子を含む前記本発明の組成物を投与してもよい。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0060】
(4)治療方法
本発明の疾患の治療方法は、前述のように、前記本発明の発現抑制核酸分子を、患者に投与する工程を含むことを特徴とする。本発明の治療方法は、前記本発明の発現抑制核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0061】
本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の発現抑制方法等を援用できる。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、経口投与および非経口投与のいずれでもよい。
【0062】
(5)発現抑制核酸分子の使用
本発明の使用は、前記標的遺伝子の発現抑制のための、前記本発明の発現抑制核酸分子の使用である。
【0063】
本発明の核酸分子は、疾患の治療に使用するための核酸分子であって、前記核酸分子は、前記本発明の発現抑制核酸分子であることを特徴とする。
【0064】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
ルシフェラーゼ遺伝子を標的遺伝子とする発現抑制核酸分子(以下、「核酸分子」ともいう。)を合成し、ルシフェラーゼの発現抑制を確認した。
【0066】
(1)核酸分子の合成
ルシフェラーゼ遺伝子の配列から、ステムループ構造を形成する19塩基長の領域を複数選択して、これらを発現抑制配列(#1、#2、#3、#4、#6)とした。
【0067】
まず、コントロールとして、前記発現抑制配列の3’末端にオーバーハング(TT)を付加したアンチセンス鎖と、それに相補的であり且つ3’末端にオーバーハング(TT)を付加したセンス鎖とからなるsiRNAを合成した。これらの配列を
図2に示す。
【0068】
つぎに、オーバーハング(TT)を有していない前記発現抑制配列(#1、#2、#3、#4、#6)を用いて、本発明の発現抑制核酸分子を合成した。これらの配列を
図3に示す。
図3において、下線部は、前記各発現抑制配列に該当し、縦線が相補関係にある核酸を示す。
【0069】
(2)mRNAの検出
前記核酸分子を、ヒト非小細胞性肺がん細胞株(NCI―H1299)に導入し、ルシフェラーゼ mRNAの検出を行った。
【0070】
まず、前記核酸分子を、注射用蒸留水(大塚製薬、以下同様)で溶解し、100μmol/Lの核酸分子溶液を調製した。mRNAの検出には、NCI―H1299細胞(ATCC社)を使用した。培地は、10%FBSを含むRPMI―1640(Invitrogen)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0071】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、500μLずつ、1×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、前記核酸分子をトランスフェクション試薬RNAi MAX Transfection Reagent(商品名、Life Technologies社)を用い、添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。トランスフェクションは、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定した。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(商品名、Invitrogen)、(C)は、前記RNA溶液であり、両者をあわせて50μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記核酸分子およびsiRNAの最終濃度は、5nmol/L、50nmol/Lとした。トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を2日間培養した。
【0072】
【表1】
【0073】
そして、得られた培養細胞について、ISOGEN reagent(商品名、ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。
【0074】
次に、逆転写酵素(商品名M−MLV reverse transcriptase、Invitrogen)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、合成した前記cDNAを鋳型として定量PCRを行い、ルシフェラーゼ cDNAの量を測定した。また、ルシフェラーゼ mRNAは、GAPDH mRNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。
【0075】
前記定量PCRは、試薬として、FastStart Universal SYBR Green Master(商品名、Roche)、サーモサイクラーとしてMX3000P(商品名、Stratagene)、解析機器としてMxPro(商品名、Stratagene)を用いた(以下、同様)。前記ルシフェラーゼ cDNAおよび前記GAPDH cDNAの増幅には、それぞれ、下記プライマーセットを使用した。反応液の全量は25μLとして、それぞれ3回測定した。
【0076】
ルシフェラーゼ プライマーセット
5’-CGATTTTGTGCCAGAGTCCT-3’ (配列番号16)
5’-AATCTCACGCAGGCAGTTCT-3’ (配列番号17)
GAPDH プライマーセット
5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’ (配列番号18)
5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’ (配列番号19)
【0077】
そして、各発現抑制配列について、siRNAを使用した際のルシフェラーゼ mRNA/GAPDH mRNAを1とした場合における、各核酸分子を使用した場合におけるルシフェラーゼ mRNA/GAPDH mRNAの相対値を算出した。これらの結果を、
図4に示す。
図4は、ルシフェラーゼ mRNA/GAPDH mRNAの相対値であり、左から#1、#2、#3、#4および#6の核酸分子の結果である。
【0078】
図4に示すように、前記各発現抑制配列を用いたsiRNAと比べ、本発明の核酸分子は、いずれも、ルシフェラーゼの発現を抑制することができた。
【0079】
さらに、実施例の核酸分子は、二本鎖のsiRNAとは異なり、一本鎖の核酸分子であるため、使用時に各一本鎖をアニーリングする必要がなく、また、自然免疫に関与するTLR3等に認識されることも回避できる。また、実施例の核酸分子は、トータルの塩基数が、siRNAのトータル塩基数42塩基よりも少ない26〜34塩基であるため、安価な合成が可能であり、自然免疫の作動を防止できる。
【0080】
(実施例2)
ルシフェラーゼ遺伝子を標的遺伝子とする発現抑制核酸分子を合成し、ルシフェラーゼタンパク質の発現抑制を確認した。
【0081】
NCI―H1299細胞に加えて、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒト肺がん細胞株(A549細胞、ATCC社)を用い、前記核酸分子として#1、#4および#6の核酸分子を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、トランスフェクションした。前記トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を72時間培養した。
【0082】
つぎに、前記培養後の細胞を回収し、ルシフェラーゼ測定キット(Luciferase assay System、Promega社製)を用い、添付のプロトコールに基づき、発光強度を測定した。発光強度の測定は、ルミノメーター(Lumat CB 9507、Belthold Wildbad社製)を用い行った。無処置群は、トランスフェクションしなかった以外は同様にして、Mockは、前記核酸分子をトランスフェクションしなかった以外は同様にして、コントロールは、前記核酸分子に変えて、下記のコントロールsiRNAを用いた以外は同様にして、発光強度を測定した。
【0083】
コントロールsiRNA
S鎖: 5’-UACUAUUCGACACGCGAAGTT-3’(配列番号20)
AS鎖:5’-CUUCGCGUGUCGAAUAGUATT-3’(配列番号21)
【0084】
この結果を、
図5に示す。
図5は、発光強度を示すグラフであり、左から、無処置群、Mock、コントロール、ならびに#1、#4、および#6の核酸分子の結果である。また、
図5(A)は、NCI―H1299細胞を用いた場合の結果であり、
図5(B)は、A549細胞を用いた場合の結果である。
図5(A)および(B)に示すように、無処置群、Mockおよびコントロールと比べ、本発明の核酸分子は、いずれも発光強度を抑制すること、すなわち、ルシフェラーゼタンパク質の発現を抑制することができた。
【0085】
(実施例3)
ヒトKRAS遺伝子を標的遺伝子とする発現抑制核酸分子を合成し、KRAS遺伝子の発現抑制を確認した。
【0086】
(1)核酸分子の合成
KRAS遺伝子の配列から、ステムループ構造を形成する19塩基長の領域を1つ選択して、これらを発現抑制配列とした。
【0087】
つぎに、前記発現抑制配列を用いて、本発明の発現抑制核酸分子(G19/P9)を合成した。これらの配列を
図6に示す。
図6において、下線部は、前記発現抑制配列に該当し、縦線が相補関係にある核酸を示す。また、前記実施例2のコントロールsiRNAを合成した。
【0088】
(2)mRNAの検出
前記核酸分子を、活性型ヒトKRAS(KRAS G12S)を有するA549細胞に導入し、KRAS mRNAの検出を行った。
【0089】
まず、NCI―H1299細胞に代えて、前記活性型KRAS(KRAS G12S)を有するA549細胞を用い、前記核酸分子として前記核酸分子(G19/P9)を用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、トランスフェクションした。前記トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を48時間培養した。
【0090】
そして、得られた培養細胞について、前記ルシフェラーゼ プライマーセットに代えて、下記KRAS プライマーセットを用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にしてKRAS cDNAの量を測定した。また、KRAS mRNAは、GAPDH mRNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。
【0091】
KRAS プライマーセット
5’-GGGGAGGGCTTTCTTTGTGTA-3’ (配列番号23)
5’-GTCCTGAGCCTGTTTTGTGTC-3’ (配列番号24)
【0092】
また、無処置群は、トランスフェクションしなかった以外は同様にして、Mockは、前記核酸分子をトランスフェクションしなかった以外は同様にして、コントロールは、前記核酸分子に変えて、前記実施例3(1)のコントロールsiRNAを用いた以外は同様にして、KRAS cDNAおよびGAPDH cDNAの発現量を測定した。そして、無処置群のKRAS cDNA/GAPDH cDNAの発現量の相対値を1とした場合における、前記核酸分子(G19/P9)、Mock、およびコントロールのKRAS cDNA/GAPDH cDNAの相対値を算出した。これらの結果を
図7に示す。
図7は、KRAS cDNA/GAPDH cDNAの相対値を示すグラフであり、左から、無処置群、Mock、コントロール、および前記核酸分子(G19/P9)の結果である。
【0093】
図7に示すように、無処置群、Mock、およびコントロールと比べ、本発明の核酸分子は、KRASの発現を抑制することができた。
【0094】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0095】
この出願は、2014年7月14日に出願された日本出願特願2014−144581を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。