【文献】
陶磁器工房 器楽,“陶磁器工房 器楽の気楽な日々”,[online],日本,2014年12月10日,[令和元年10月11日検索]、インターネット< URL:https://plaza.rakuten.co.jp/kkiraku/diary/201412030000>
【文献】
FINEMAICA,“FINEMAICA’s Blog”,[online],日本,2014年 7月 2日,[令和元年10月15日検索]、インターネット< URL:https://finemaica.blogspot.com/2014/07/blog-post_2.html>
【文献】
鎌倉[LaMORatte?],“貼り絵付け:鎌倉[LaMORatte?]”,日本,2010年 9月 6日,[令和元年10月15日検索]、インターネット< URL:https://porcelarts-studio.at.webry.info/201009/article_3.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態のシート貼付物1>
図1〜19には、本発明の第1実施形態に係るシート貼付物1が示されている。
このシート貼付物1は、シート状物2を三次元物3に貼り付けて構成されたものである。
シート貼付物1におけるシート状物2は、後述する間隙4を少なくとも有し、その他、重なり5や食出し6を有していても良い。
【0018】
<シート状物2>
図1〜19で示されたように、シート状物2は、三次元物3の露出面3a上で広がるシート状のものや、層状のものなど、何れの構成であっても良く、複数のシート状物2を、1つの三次元物3の露出面に対して、貼り付けても良い。
シート状物2は、例えば、所定のインクを三次元物3の露出面3aに転写させる(貼り付ける)転写シートを用いて転写されるインク層であっても良い。
【0019】
その他、シート状物2は、粘着剤を介して三次元物3の露出面3aに付着する(貼り付ける)シール、所定のインクを直接、三次元物3の露出面3aに塗布(又は印刷)して形成される(つまり、インク層を三次元物3の露出面3aに貼り付けられた)塗布層、三次元物3の少なくとも露出面3aが金属材料である場合には、三次元物3の露出面3aに琺瑯を施したもの(三次元物3の露出面3a上に琺瑯層を貼り付けたもの)などでも構わない。
以下、シート状物2は、転写シートを用いて三次元物3の露出面3aに転写される場合を主に述べる。
【0020】
シート状物2は、紙又は樹脂フィルム等の基材シートに対して、インク(インク層)を印刷(又は塗布)することで構成される。
転写シートを用いて転写されるインク(インク層)2は、その成分に特に制限はないが、例えば、三次元物3が陶磁器であれば、釉(釉薬)に陶磁器顔料(セラミック顔料、窯業用顔料)を加えたものでも良い。
【0021】
ここで、釉(釉薬)とは、ケイ酸塩化合物であって、焼成するとガラス質となる。釉には、唐土(炭酸鉛(PbCO
3 ))やホウ砂(四ホウ酸ナトリウム(Na
2 B
4 O
5 (OH)
4 ・8H
2 O))を混ぜても良い。
この釉に加える陶磁器顔料は、酸化物・複合酸化物・ケイ酸塩などの化合物に、遷移元素などを加えて(固溶させて)発色させる。
【0022】
例えば、黒の陶磁器顔料の場合は、スピネル系の固溶物(スピネル(MgAl
2 O
4 )、鉄スピネル(FeAl
2 O
4 )、亜鉛スピネル(ZnAl
2 O
4 )、マンガンスピネル(MnAl
2 O
4 )、磁鉄鉱(FeFe
3+2 O
4 )、磁苦土鉄鉱(MgFe
3+2 O
4 )、ヤコブス鉱(MnFe
3+2 O
4 )、クロム鉄鉱(FeCr
2 O
4 )、クロム苦土鉱(MgCr
2 O
4 ))などを用いても良い。
その他、赤の場合はベンガラ(酸化鉄(FeO、Fe
2 O
3 ))等を用い、緑の場合は酸化銅(CuO)等を用い、青の場合は炭酸銅(CuCO
3 )等を用い、紫の場合は呉須(鉄(Fe)やマンガン(Mn)などを含んだ酸化コバルト(Co
2 O
3 ))やマンガン(Mn)等を用い、黄の場合は唐白目(アンチモン(Sb))等を用いる。
【0023】
これらの陶磁器顔料は、三次元物(陶磁器)3の露出面3aに、転写シートを用いてインク(インク層)を転写させた(絵付けをした)後、焼成(高温で焼成する本焼焼成など)をすることで、所定の色を焼き付けても(インク層を形成しても)良い。
尚、三次元物(陶磁器)3の露出面3aに、まずは陶磁器顔料だけを転写し、その後、釉をかけてから、焼成しても良い。
転写シートによるインク層2の厚みは、特に制限はなく、例えば、10μm以上3000μmm以下であっても良い。
【0024】
<その他のインク(インク層)>
この他、転写シートにおけるインク(インク層)2としては、色素成分、樹脂材料などを適宜に組み合わせて構成されても良い。
転写シートのインク層2における色素成分は、その具体例として、通常の塗料用や染色用の着色材料であっても良く、各種の顔料あるいは染料や、プラスチック成形用の着色材料も使用できる。
色素成分は、インク中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。
【0025】
色素成分は、粒子状のものや燐片状のもの繊維状のものなどが使用でき、色素成分の粒径は、特に制限はないが、例えば、0.01μm以上1.00μm以下であっても良い。
インク層に、透光性のある反射材が配合されている場合、色素成分の粒径を反射材よりも小さくとも良く、この場合、インク層の上層には反射材、下層に色素成分が配置されて、反射特性を発揮させ易くなるとも言える。
尚、インク層中における色素成分の配合量は、当該色素成分の種類や要求性能によっても異なる。
【0026】
転写シートのインク層2における樹脂材料は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れでも良く、その他、湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。
樹脂材料は、水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂であっても良く、具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢ビ系、ポバール系、シリコーン系、ポリエステル系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩ビ系などの樹脂が挙げられる。
これらの樹脂の共重合体や、一般的な接着性樹脂材料、市販の接着用樹脂などを、転写シートのインク2における樹脂材料として使用しても良い。
【0027】
樹脂材料が熱硬化性樹脂の場合、その具体的な熱硬化温度は、何れの値でも良いが、この場合には、例えば、550℃以下であっても良い。
樹脂材料が透明性に優れたものであれば、インク層に到達した光を、インク層内の色素成分などで反射させて、色光を作り出せるとも言える。
【0028】
樹脂材料が不透明材料であれば、インク層に入射した光は全て、インク層とその外界との境界面で反射するか、インク層で吸収される。
樹脂材料は、造膜性を有していたり、基材シートに対して化学的に反応して接着することがないものが好ましい。
尚、三次元物3の露出面3aに直接にインク(インク層)を塗布(又は印刷)する場合は、三次元物3の露出面3aに対して接合性の高い樹脂材料が好ましい。
【0029】
転写シートのインク層2には、上述した以外にも、必要に応じて、インクに各種配合成分を配合できる。
例えば、インクには、反射材や、シランカップリング剤、色素成分の分散を助ける分散剤、インク層のひび割れを防ぐ、ひび割れ防止剤、インクの粘度を適度に調整する粘度調整剤、硬化剤や硬化促進剤、硬化遅延剤、溶剤、消泡剤、架橋剤、粘性付与剤、安定剤、又は、それらを組み合わせたものを配合しても良い。
【0030】
転写シートのインク層2は、材料や配合の異なる複数の層を積層して構成しても良く、例えば、反射性の高い層と、透明性の高い層と、着色層とを順次積層することも可能である。
尚、転写シートは、インク層(インク)2を覆うカバーコート層を有していても良く、この場合、基材シートには、先にカバーコート層(カバーコート層を構成する樹脂等)を印刷(又は塗布)し、カバーコート層が乾燥した後に、インクを印刷(又は塗布)することになる。
【0031】
<シート状物2の露出面2aにおける模様2b>
図1〜19で示されたように、シート状物2の露出面2a(シート状物2の外方に露出した側の面(表面(上面)、外周面、内周面など)に描かれた模様2bは、図形、文字、数字、符号、記号、マーク、図柄、又は、これらの組合せであっても良い。
尚、実施例1〜15におけるシート状物2の模様2bは、古代ギリシャ赤絵式陶器から引用している。
【0032】
このような模様2bを形成するインク(インク層)を、転写シート(基材シート)に対して、基材シートの露出面(表面)に印刷(又は、塗布)することで、転写シートが構成される。
尚、印刷方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなどの何れの方法であっても良く、基材シートの露出面に塗布する方法としては、筆、刷毛、ローラ、スプレーを用いた手作業であっても良い。
模様2bを形成するインクを基材シートの露出面に印刷(又は、塗布)するその他の方法として、エッチングされた銅版や、石版等の凹版の凹部にインクを填め、これを基材シートの露出面に押し付けることにより、インクを基材シートに転写させても良い。
【0033】
一方、模様2bを形成するインク(インク層)は、直接、三次元物3の露出面3aに塗布(又は印刷)されても良く、その際の印刷方法としても、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなどや、筆、刷毛、ローラ、スプレーを用いた手作業であっても構わない。
その他、所定の模様2b通りに各色のインクを自動的に三次元物3の露出面3aに付着させる陶磁器絵付け印刷機などを用いても良い。
【0034】
<三次元物3>
図1〜19で示されたように、三次元物3は、縦、横、高さを有した三次元空間中における何れの物体をも含み、例えば、陶磁器製の皿や茶碗、コップ等の食器であっても良く、その他、陶磁器製の花瓶など、何れの構成であっても良い。
三次元物3は、陶磁器以外に、ガラス(ガラス製の文鎮など)、石材、木材、金属、プラスチック、合成樹脂、織物や編物等の布帛、不織布、紙、天然ゴム、合成ゴムなど、何れの素材であっても構わない。
【0035】
その他、三次元物3は、複数の素材を組み合わせたものや、それぞれの構造物を組み立てたものなども含み、最終的に使用された状態の完成品だけでなく、製造途中の中間製品や部品段階の物品や、素材や原材料の段階の物品であっても良い。
尚、三次元物3の露出面3aとは、三次元物3の外方に露出した側の面(正面、背面、上面、下面、左面、右面など)である。
【0036】
例えば、
図1〜19のように、三次元物3がリム(皿の周縁における帯状部分)R付きの皿である場合、露出面3aには、皿の上面(見込み(表面))、下面(底(裏面))だけでなく、皿の凹凸に沿った内周面(例えば、リム付き皿のリムRにおけるリム肩R’から内底面Bまでの内周面RB)や、皿が割れた際に表れる断面も含まれる。
三次元物3が後述する花瓶である場合には、露出面3aには、花瓶の外周面の他、花瓶の内面(見込み(内周面、内底面B))や裏面(底(外底面B’))なども含まれる。
以下、三次元物3は、陶磁器製のリム付き皿である場合を主に述べる。
【0037】
<三次元物3の露出面3aにおける凹凸3b>
図1〜15で示されたように、三次元物3の露出面3aにおける凹凸3bは、三次元物3の露出面3aにおいて高低差(突出差)が生じている部分を言う。
よって、三次元物3の露出面3aにおける凹凸3bとは、隆起した凸部、窪んだ凹みなどの凹凸や所定方向に沿って掲載された段差、三次元物3の露出面3a全体の湾曲も含まれる。
【0038】
リム付き皿(三次元物)3においては、リムRのリム肩R’から内底面Bまでに亘る間に高低差が生じており(内底面BよりリムRの方が上方へ突出しており)、リムRのリム肩R’から内底面Bにかけて凹凸3bが形成されている。
又、リム付き皿3のリムRの上面自体にも、リム肩R’から皿3の口縁にかけて徐々に高くなっており(つまり、リム肩R’から皿3の口縁までに亘る間に高低差が生じており)、リムRの上面にも凹凸3bが形成されていると言える。
【0039】
尚、三次元物3の凹凸3bは、当該凹凸3bの角(リム付き皿3の場合であれば、リム肩R’など)が丸いものも含まれる。
三次元物3の凹凸3bにおける高低差(突出差)は、特に制限はないが、例えば、例えば、0.01mm以上100.00mm以下、好ましくは0.1mm以上50.0mm以下、更に好ましくは1mm以上30mm以下であっても良い。
【0040】
<三次元物3の稜3c>
図1〜15で示されたように、三次元物3の露出面3aにおける稜3cは、三次元物3が、上述のリム付き皿や花瓶、文鎮のように多面体で構成されている場合において、隣り合う二つの露出面3aが交わって出来る線分を言う。
よって、リム付き皿(三次元物)3における稜3cは、表面(上面)と裏面(下面)との間の口縁(周縁)や、凹凸3bに沿った内周面RBにおける上下の周線分(つまり、上の周線分(リム付き皿3の周縁にあるリムRのリム肩R’)と、下の周線分(リム付き皿3のリムRにおけるリム肩R’から内底面Bまでの内周面RBと当該内底面Bとの間の周線分)などである。
【0041】
その他の稜3cとしては、リム付き皿3の外底面B’を囲む糸切り(高台)Sの突出周端における周線分や、高台Sと外底面B’との間の周線分、高台Sと外周面との間の周線分なども含まれる。
このような稜3cは、当然、後述する花瓶などにも存在している。
この他、リム付き皿をはじめ何れの三次元物3の露出面3aにおいても、湾曲の角度が変化しているところ(変曲点が集まって形成された線分)も、稜3cであると言える。
【0042】
<間隙4>
図1〜19で示されたように、シート状物2における間隙4は、シート状物2の少なくとも一部同士が三次元物3の露出面3aに沿う方向(シート状物2の広がる方向)に離間したものであって(つまり、シート状物2に凹凸を設けて厚み方向に離間したものではないとも言え)、シート状物2が離間するのであれば、何れの構成でも良い。
例えば、間隙4は、1つのシート状物2における一端部2cと他端部2d同士がリム付き皿3の露出面3aに沿う方向に離間している間隙や、複数のシート状物2、2’同士がリム付き皿3の露出面3aに沿う方向に離間している間隙であっても構わない。
【0043】
これらの間隙4は、シート状物2を切り離して形成されていても、シート状物2の一部を抜き取って形成されていても良い。
間隙4の形状は、何れの形状であっても構わないが、例えば、略三角形状であったり、帯状、線状や、略多角形状であっても良い。
【0044】
間隙4において、シート状物2の少なくとも一部同士が離間している距離(離間距離L)は、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上100.00mm以下、好ましくは0.1mm以上50.0mm以下、更に好ましくは1mm以上30mm以下であっても良い。
このような間隙4を、敢えて有することで、特許文献1のように、非粘着部を紫外線硬化型インキにて複数印刷形成する工程や、印刷面に紫外線を照射する工程などの工程は必要ないため、「製造効率の向上」と「生産コストの低減」が同時に実現できる。
又、間隙4は、空気を抜く排気孔の役目も果たし、三次元物3において、複雑な形状であったとしても、シート状物2を貼り付けるのに、特別な技能は必要なく、「貼付の容易化」も図れる。
【0045】
<模様隙部4a>
図1〜19で示されたように、間隙4における模様隙部4aは、シート状物2の露出面2aに描かれた模様2bの少なくとも一部同士を、三次元物3の露出面3aに沿う方向に離間させるものであって、シート状物2の模様2b同士を離間させるのであれば、何れの構成でも良い。
例えば、模様隙部4aは、シート状物2における模様2b同士を切り離したもの(模様2bは何れの部分も欠落していないものの、模様2b同士は切り離されることで、模様2bの間に模様隙部4aが形成されたもの)や、シート状物2の一部を抜き取ったもの(模様2bの一部を抜き取る(つまり、模様2bの一部を欠落させる)ことで、模様2bの間に模様隙部4aが形成されたもの)でも良い。
【0046】
尚、模様隙部4aは、シート状物2の模様2b同士を離間させていることから、当然、シート状物2そのもの同士を離間させており、模様隙部4aは、間隙4に含まれる。
このような模様隙部4aによって、シート状物2における模様2bが欠落することとなり、シート状物の模様2b(全体像)の一部分を敢えて欠落させることで、かえって見る者に全体像を意識させ、見る者の意識を活性化させる仕掛け「虚階(こかい(商標出願))」を実現できると言える。
この「虚階」について詳解すれば、模様隙部4aは、シート状物2における模様2bを離間させることで、シート状物2の模様2bを模様隙部4aで欠落させることとなり、この模様2bの欠落が、見る者に、観念的な模様を想い起こさせる刺激となる。
つまり、ただ一方的に模様2bを見せるだけでは、見る方もただ受容するだけとなるが、模様隙部4aによる模様2bの欠落(すなわち「虚階」)が、見る者の意識を活性化するための仕掛けとなる(物理的に見えない模様を視る、観念的な意匠である)。
【0047】
<凹凸隙部4b>
図1〜19で示されたように、間隙4における凹凸隙部4bは、三次元物3の露出面3aにおける凹凸3bに沿ったものであって、三次元物3の露出面3aにおいて高低差(突出差)が生じている凹凸3bに沿うものであれば、何れの構成でも良い。
例えば、凹凸隙部4bは、リム付き皿3においては、リムRのリム肩R’から内底面Bにかけて高低差を生じさせる凹凸3bに沿って形成されていても良い。
【0048】
従って、この凹凸隙部4bは、リム付き皿3の平面視において円状の凹凸3b(円状のリム肩R’、内底面Bの周線分、内周面RB)のように、円周状に形成されることとなる。
凹凸隙部4bは、リム付き皿(三次元物)3の凹凸3bに沿っていれば、当該凹凸3b(凹凸3bを形成する稜3c)までの距離(凹凸距離)L’だけ離れた位置にシート状物2を貼り付けていても良く、この凹凸距離L’は特に制限はないが、例えば、0mm以上30mm以下、好ましくは0.1mm以上20.0mm以下、更に好ましくは1mm以上10mm以下であっても良い。
尚、凹凸隙部4bは、凹凸3bからの凹凸距離L’が常に一定でなくとも良く、例えば、凹凸距離L’が所定の範囲内で変化しても良い。
又、
図10〜12で示したように、凹凸隙間4bが、凹凸3bの途中(内周面RB)に存在する場合には、凹凸距離L’は0mmとなる。
【0049】
尚、三次元物(リム付き皿)3の凹凸3bは、稜3cに挟まれていることから、凹凸隙部4bは、三次元物(リム付き皿)3の稜3cに沿って形成されているとも言える。
より厳密には、この凹凸隙部4bは、リム付き皿3の稜3c(上述したリム付き皿3の内周面RBにおける上下の周線分)にも沿って形成され、内周面RBにおける上の周線分(リム肩R’)や、下の周線分(内周面RBと内底面Bとの間の周線分)から凹凸距離L’離れたところにシート状物2を貼り付けることとなる。
【0050】
つまり、凹凸隙部4bは、リム付き皿3のリムRにシート状物2を貼り付けた場合や、内底面Bにシート状物2を貼り付けた場合だけではなく、内周面RBにシート状物2を貼り付けた場合にも形成される。
これは、リム付き皿3のリムRと内底面Bとの間の凹凸3bだけでなく、リム付き皿3の外底面B’を囲む高台Sの突出周端における稜(周線分)3cや、高台Sと外底面B’との間の稜(周線分)3c、高台Sと外周面との間の稜(周線分)3c、三次元物3の露出面3aにおいて湾曲の角度を変化させている稜3cから凹凸距離L’離れたところにシート状物2を貼り付けた場合でも同様であって、これらの稜3cに沿って形成された間隙4も凹凸隙部4bであると言える。
【0051】
尚、凹凸隙部4bは、シート状物2の模様2b同士を離間させていることから、当然、シート状物2そのもの同士を離間させており、凹凸隙部4bも、間隙4に含まれる。
このような凹凸隙部4bによって、三次元物3において、当該三次元物3とシート状物2との間において、最も気泡が出来易い(空気が溜まり易い)凹凸3bがある部分であっても、凹凸3bに沿って設けたシート状物2の間隙4から空気が抜けるため、特許文献1における非粘着部などを設ける必要が一切なく、更なる「製造効率の向上」と「生産コストの低減」の同時実現を図れる。
【0052】
<重なり5>
図10〜12、14、15で示されたように、シート状物2における重なり5は、シート状物2の少なくとも一部同士が重複したものであって、シート状物2同士が重複しているものであれば、何れの構成でも良い。
例えば、重なり5は、1つのシート状物2における一端部2cと他端部2d同士が重複している重なりや、複数のシート状物2、2’同士が重複している重なりであっても構わない。
【0053】
重なり5の形状も、何れの形状であっても構わないが、例えば、略三角形状であったり、帯状、線状や、略多角形状であっても良い。
重なり5において、シート状物2の少なくとも一部同士が重複している距離(重複距離L”)は、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上100.00mm以下、好ましくは0.1mm以上50.0mm以下、更に好ましくは1mm以上30mm以下であっても良い。
このような重複した重なり5を有することで、従来では表現できなかった意匠性や立体感を備え、芸術的にも更に価値のあるシート貼付物1を得る。
【0054】
<食出し6>
図1〜4、6〜9、10〜13で示されたように、シート状物2における食出し6は、三次元物3の露出面3aにおける稜3cを跨いで貼り付けられたシート状物2の一部であって、稜3cを跨いで貼り付けられているものであれば、何れの構成でも良い。
例えば、食出し6は、リム付き皿3の表面(上面)と裏面(下面)との間の稜3cを跨いで貼り付けられた食出しや、リム付き皿3のリムRの稜3c(リム肩R’、内周面RBと内底面Bとの間の周線分)を跨いで貼り付けられた食出し、リム付き皿3の外底面B’における高台Sの稜3cを跨いで貼り付けられた食出し、三次元物3の露出面3aにおいて湾曲の角度を変化させている稜3cを跨いで貼り付けられた食出しであっても構わない。
【0055】
食出し6の形状も、何れの形状であっても構わないが、例えば、略矩形状であったり、略三角形状、帯状、線状や、略多角形状であっても良い。
食出し6において、稜3cから食み出している距離(食出距離D)は、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上100.00mm以下、好ましくは0.1mm以上50.0mm以下、更に好ましくは1mm以上30mm以下であっても良い。
【0056】
このような食出し6を有することで、従来では表現できなかった意匠性や立体感を備え、芸術的にも更に価値のあるシート貼付物1を得る。
尚、食出し6によって、上述した凹凸隙部4bも同時に形成することも出来る。
【0057】
<実施例1>
図1〜5には、本発明の第1実施形態の実施例1に係るシート貼付物1が示されている。
この実施例1における間隙4は、三次元物3がリム付き皿であり、貼り付けたシート状物2の模様2bを欠落・離間させた模様隙部4aと、リムRと内底面Bとの間の凹凸3bに沿って形成された凹凸隙部4bの両方が含まれている。
【0058】
尚、実施例1のシート貼付物1における内底面Bの略中央部で模様2bを欠落させて形成された模様隙部4a等により、かえって見る者に全体像を意識させ、見る者の意識を活性化させる仕掛け「虚階(称呼は「こかい」である(商標出願))」を実現していると言える。
つまり、実施例1は、ただ一方的に模様2bを見るだけではなく、見る者が物理的に見えない模様(観念的な意匠)を見せる仕掛け「虚階」を有していると言える。
【0059】
<実施例2>
図1、6〜9には、本発明の第1実施形態の実施例2に係るシート貼付物1が示されている。
この実施例2は、実施例1よりも内底面Bの略中央部の模様2bを大きく欠落させている(略中央の模様隙部4aが大きい)と共に、リムRと内底面Bとの間の稜3cを跨いで貼り付けたシート状物2の食出し6が多くなっている。
【0060】
更に、実施例2は、リムRの凹凸3bに沿った凹凸隙部4bが、実施例1よりも、当該凹凸3bから遠い(凹凸距離L’がより大きい)位置に形成されており、凹凸隙部4bは、三次元物3の凹凸3bから所定の凹凸距離L’だけ離れていても十分に空気を抜く排気孔の役目も果たせる。
その他のシート貼付物1の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1と同様である。
【0061】
<実施例3>
図1、10〜15には、本発明の第1実施形態の実施例3に係るシート貼付物1が示されている。
この実施例3は、実施例1、2とは異なり、帯状(短冊状)にカットされた複数のシート状物2を、リムRの凹凸3bを無視して貼り付けた部分を有している。
【0062】
又、
図1で示したように、実施例3は、実施例1、2より、模様2bの欠落が大きい(模様隙部4aが大きく、多い)と共に、実施例1、2から連続して実施例3を見た者は、多くの欠落した模様2bの部分を見せ、見る者に全体像を意識させて、より意識を活性化させる仕掛け「虚階」を実現していると言える。
更に、実施例3は、重なり5も有し、食出し6も大きく、多くなっている。
その他のシート貼付物1の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1、2と同様である。
【0063】
<その他の模様2b−1〜4>
図16〜19には、本発明の第1実施形態に係るシート貼付物1のその他の模様2bが示されている。
尚、模様2bは、上述した実施例1〜3における鳥(鶏)に跨った人の模様2bや、後述する模様2b−1〜4に限定されず、何れの模様でも構わない。
【0064】
図16は、シート状物2が、2種類の模様が1つに合せた合成模様2b−1を有する場合を示しており、
図16(a)では、波形状と巴(例えば、三つ巴)状の2種類の模様を、斜めの切り口を介して合せており、
図16(b)では、波形状と花柄(例えば、桜の花)状の2種類の模様を、斜めの切り口を介して合わせている。
【0065】
図17は、シート状物2を帯状(短冊状)にカットした帯状模様2b−2を有する場合を示しており、その模様2bは、例えば、花柄(例えば、桜の花)状の模様である。
図17(a)では、シート状物2同士の間の間隙4(離間距離L)が大きく形成されており、
図17(b)では、シート状物2同士の間隙4に、更に、花柄状にカットしたシート状物2を貼り付けている。
【0066】
図18は、雲状の模様を有したシート状物2から形成される雲状模様2b−3を有する場合を示しており、
図18(a)、(b)では、それぞれ異なるカッティングをしたシート状物2を、その間に間隙4を形成するように貼り付けている。
図19は、山や月などの風景を模したシート状物2から形成される風景模様2b−4を有する場合を示しており、
図19(a)、(b)では、月の色などが異なる模様となっている。
【0067】
<その他の実施形態のシート貼付物1>
図20には、本発明のその他の実施形態に係るシート貼付物1が示されている。
尚、シート貼付物1に用いられる三次元物3は、上述したリム付き皿や、後述する花瓶、文鎮に限定されず、リム無しの皿など、何れの三次元物でも構わない。
【0068】
図20(a)は、三次元物3が花瓶である第2実施形態に係るシート貼付物1であり、上述した合成模様2b−1のシート状物2を貼り付けたものである。
第2実施形態は、当該花瓶3において左右外方へ突出している外周面も、花瓶の首Nから腰Wにかけて突出差が生じており、花瓶の外周面にも凹凸3bが形成されていると言え、この凹凸3bに沿って凹凸隙部4bが形成されていても良い。
【0069】
図20(b)は、三次元物3が文鎮である第3実施形態に係るシート貼付物1であり、上述した雲状模様2b−3のシート状物2を貼り付けたものである。
第3実施形態は、当該文鎮3において上方へ突出している側面上部から上面にかけても、突出差が生じており、文鎮の側面から上面にかけても凹凸3bが形成されていると言え、この凹凸3bに沿って凹凸隙部4bが形成されていても良い。
【0070】
尚、文鎮3における底面と側面との間の線分や、前面と、側面から上面にかけての間の線分、後面と、側面から上面にかけての間の線分なども、稜3cに含まれる。
その他の実施形態におけるシート貼付物1の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0071】
<その他>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。シート貼付物1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
シート状物2は、その露出面2aに描かれた模様2bとは関係なく、月や花などの形状にカッティングされていても良い。
シート状物2は、当該シート状物2の少なくとも一部が三次元物3の露出面3aから離間した飛出しや、シート状物2の一端部と他端部が非常に狭い幅で連結している繋がりを有していても良い。
【0072】
三次元物3の露出面3aには、シート状物2における模様2bとは別に、模様が描かれていても良い。又、三次元物3における凹凸3bで模様を形成しても良い。
三次元物3には、シート状の三次元物も当然含まれ、この場合におけるシート貼付物1とは、土台となるシート状の三次元物3に、また別のシート状物2が貼り付けられているものを意味する。
【0073】
間隙4は、上述した模様隙部4aや凹凸隙部4bを兼用する間隙であっても良い。
又、間隙4は、上述した模様隙部4aや凹凸隙部4bとは異なり、シート状物2の模様2bや三次元物3の凹凸3bとは無関係に存在していても良い。
例えば、間隙4は、三次元物3がリム付き皿である場合には、リムRのリム肩R’と内底面Bとの間の内周面RBや、リムRの上面において、この周方向に沿って所定距離ごとに設けられていても良い。
又、間隙4は、シート状物2の少なくとも一部同士が、三次元物3の露出面3aに沿う方向に離間しているのであれば、同時に、シート状物2に凹凸を設けて、シート状物2の厚み方向に三次元物3の露出面3aから離間したり、シート状物2の少なくとも一部同士が厚み方向に離間したものであっても良い。