特許第6687973号(P6687973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687973
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】泡立てネット
(51)【国際特許分類】
   A47K 5/14 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   A47K5/14
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-13856(P2016-13856)
(22)【出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-131396(P2017-131396A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】山内 拓己
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−000175(JP,A)
【文献】 特開2000−325253(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3073831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 5/14
A47K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット部材が、扁平に広がる形状に形成され、その一部を緊縮させる緊縮部材と、その緊縮状態を維持するための維持手段とを有し、該維持手段は容易に解除可能に構成され、前記緊縮部材によってネット部材に緊縮部が形成されたときに、その緊縮部の両側のネット部材が変形して泡立て部が形成され、前記維持手段を解除してネット部材の緊縮状態を解除することにより、ネット部材が元の形状に復帰可能である泡立てネットにおいて、緊縮部材は紐であって、該紐は、ネット部材の面に沿って延びる紐通し通路に挿通され、ネット部材は、その紐に沿って縮幅されることにより緊縮され、且つ、ネット部材は、紐が折り畳まれる方向に折り畳まれた状態に形成されていることを特徴とする泡立てネット。
【請求項2】
ネット部材は、少なくとも部分的にネット素材が重なっている請求項1記載の泡立てネット。
【請求項3】
ネット部材は、筒状のネット素材を扁平に潰して形成されている請求項2記載の泡立てネット。
【請求項4】
ネット部材は、縦長に形成され、紐が縦方向に取り付けられている請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の泡立てネット。
【請求項5】
ネット部材の両端が開放されている請求項4記載の泡立てネット。
【請求項6】
ネット部材は、その中央で折り畳まれた状態に形成されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の泡立てネット。
【請求項7】
紐通し通路に挿通された紐の両端部がそれぞれ紐通し通路の端部から抜き出ており、抜き出ている双方の紐上をスライド可能に紐止め具が紐に取り付けられている請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の泡立てネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットで石鹸等の洗顔料を泡立て、泡立った泡で洗顔するための泡立てネットに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットで石鹸を泡立てる泡立てネットには主なものとして二種類あり、その一つは、ネットを袋状に形成したものであって、その袋の中に石鹸を入れ、ネットを水で濡らして手で揉みながら石鹸を泡立てるものである。他の一つは、石鹸をネットに内蔵させず、扁平のネットの中心を紐で緊縮させた状態に縫い付けて、ネットを球形や蝶に似た髪飾りリボン形などの泡立て部にしたり、筒状ネットの一端を紐で縫い付けてスカート形の泡立て部としたりしている。そして、そのように構成された泡立て部を水で濡らしてそのネットに石鹸を軽く擦り付けて付着させてから、ネットを揉んで石鹸を泡立てるものである。本発明は、石鹸をネットに内蔵させない形式の泡立てネットである。
【0003】
従来の、石鹸をネットに内蔵させない形式の泡立てネットは、紐でネットを縫い付けた状態で販売されるものであり、紐をほどくことは全く予定していない。したがって、使用後は、そのまま浴室などに吊り下げて乾燥させることにより、繰り返し使用している。この場合、ネットは紐で緊縮されたままであるから、乾燥までに時間を要していた。特に、旅行先では時間的制約があるので、乾燥時間を短くしたいとする要望があった。また、緊縮されたままなので、平らに折り畳んだり、ロール状に巻いたりすることができず、旅行などの携帯時に嵩張って不便であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3282110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、前記背景技術で説明したように、従来の石鹸をネットに内蔵させない形式の泡立てネットでは、乾燥までに時間を要するという点と、携帯時に嵩張るという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための請求項1記載の発明は、ネット部材が、扁平に広がる形状に形成され、その一部を緊縮させる緊縮部材と、その緊縮状態を維持するための維持手段とを有し、その維持手段は容易に解除可能に構成され、前記緊縮部材によってネット部材に緊縮部が形成されたときに、その緊縮部の両側のネット部材が変形して泡立て部が形成され、前記維持手段を解除してネット部材の緊縮状態を解除することにより、ネット部材が元の形状に復帰可能である泡立てネットにおいて、緊縮部材は紐であって、該紐は、ネット部材の面に沿って延びる紐通し通路に挿通され、ネット部材は、その紐に沿って縮幅されることにより緊縮され、且つ、ネット部材は、紐が折り畳まれる方向に折り畳まれた状態に形成されている。
【0007】
請求項2記載の発明は、ネット部材が、少なくとも部分的にネット素材が重なっている構成である。
【0008】
請求項3記載の発明は、ネット部材が、筒状のネット素材を扁平に潰して形成されている構成である。
【0009】
請求項4記載の発明は、ネット部材が、縦長に形成され、紐が縦方向に取り付けられている構成である。
【0010】
請求項5記載の発明は、ネット部材の両端が開放されている構成である。
【0011】
請求項6記載の発明は、ネット部材が、その中央で折り畳まれた状態に形成されている構成である。
【0012】
請求項7記載の発明は、紐通し通路に挿通された紐の両端部がそれぞれ紐通し通路の端部から抜き出ており、抜き出ている双方の紐上をスライド可能に紐止め具が紐に取り付けられている構成である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、ネット部材が、扁平に広がる形状に形成され、緊縮部材によってネット部材に緊縮部が形成されたときに、その緊縮部の両側のネット部材が変形して泡立て部が形成され、ネット部材の緊縮状態を解除することにより、ネット部材が元の形状に復帰可能である。すなわち、使用時には、石鹸などの泡立ちを良くするために扁平なネット部材の一部を緊縮させるが、使用後には、元の扁平に広がる形状に戻すことができる。したがって、扁平に広げた状態で干すことによって、ネット素材の重なりが少なく風通しが良いので、短時間で乾燥させることができる。特に、浴室で長時間干しておくと悪臭が発生する虞もあり、衛生的でもある。また、扁平に広げて折り畳んだり、ロール状に巻いたりできるので、嵩張らずに収納できるから携帯に便利である。
【0014】
また、ネット部材、紐通し通路に挿通された紐に沿って縮幅されることにより緊縮される。したがって、ネット部材の紐に沿った部分の一方の端部を他方の端部側に押して寄せれば縮幅できるので、円滑に緊縮と解除を行うことができる。
【0015】
さらに、ネット部材が、紐が折り畳まれる方向に折り畳まれた状態に形成されている。仮に、ネット部材が折り畳まれていないときは、それを緊縮するときに、ネット部材の紐に沿った部分の一方の端部を他方の端部側に寄せて縮幅させるので、一方の端部のみが移動し、縮幅の能率が悪いのである。ネット部材が、紐が折り畳まれる方向に折り畳まれていれば、ネット部材の紐に沿った部分の双方の端部を同じ方向に押すことにより、ネット部材が寄って縮幅させられるので、能率よくネット部材を縮幅させることができる。また、使用時に折り目部分を手に取ったときに、その部分でネット素材を構成する繊維の端部が手に当たらないので、手がちくちくせず、受ける感触が滑らかなものとなる。
【0016】
請求項2記載の発明は、ネット部材が、少なくとも部分的にネット素材が重なっている。したがって、緊縮させることにより変形して形成された泡立て部のネット素材が密になるので、石鹸などの泡立ちを良くすることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、ネット部材が、筒状のネット素材を扁平に潰して形成されている。したがって、二枚のネット素材を重ねて側部を接合させたものでなく、側部はネットとして一連につながっているので、ネット部材を揉みながら泡立てるときに、手の受ける感触が滑らかになる。
【0018】
請求項4記載の発明は、ネット部材が、縦長に形成され、紐が縦方向に取り付けられている。したがって、緊縮させるネット部材の幅が広く、変形して形成された泡立て部を構成するネット素材が、幾重にも重なるので、ネット素材が密となり、石鹸などの泡立ちを良くすることができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、ネット部材の両端が開放されている。したがって、ネット部材を緊縮させたときに、両端部が変形し易いので、ネット部材が揉みやすく、手の受ける感触も滑らかになる。
【0020】
請求項6記載の発明は、ネット部材が、その中央で折り畳まれた状態に形成されている。したがって、ネット部材の紐に沿った部分の双方の端部が同じ位置に揃っているから、さらに能率よくネット部材を縮幅させることができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、紐通し通路に挿通された紐の両端部がそれぞれ紐通し通路の端部から抜き出ており、抜き出ている双方の紐上をスライド可能に紐止め具が紐に取り付けられている。したがって、紐止め具をスライドさせることによって、ネット部材を容易に緊縮させることができ、且つ紐止め具によって緊縮状態を確実に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明の斜視図である。
図2図2はネット部材の正面図である。
図3図3図2におけるA−A断面図である。
図4図4はネット部材の側面図である。
図5図5は使用状態におけるネット部材の斜視図である。
図6図6はネット部材を折り畳んで巻いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。泡立てネット1は、ネット部材2と、一本の紐3と、一つの紐止め具4とから成る。ネット部材2は、合成樹脂材で網状に形成されたネット素材5で構成されており、弾力性を有する。合材樹脂材に代えて合成樹脂繊維を編んだものでもよく、弾性と耐水性を有する他の材料であってもよい。ネット素材5は、筒状に形成され、両端が解放されたものが用いられる。その筒状のネット素材5は、扁平に潰されてネット素材5が二重に重なる縦長の長方形とされ、さらにその扁平な長方形を維持できる加工がなされたネット部材2とされる。扁平な長方形は、例えば、加熱加工によって維持することができる。扁平な長方形に形成されたネット部材2は、その縦方向の中心線の両側に沿って、縫い糸6,6で全長に亘って縫い合わされている。これにより、縫い糸6,6による縫い目7,7の間に、紐3を通すための紐通し通路8が形成されている。このように構成された縦長の長方形をなすネット部材2は、図1又は図4に示すように、横二つ折りに畳まれ、その二つ折りが維持できるように加工されている。このように、横二つ折りに畳まれることにより、ネット部材2は、結局、ネット素材5が四重に重なることになる。このように四角形に折り畳まれたネット部材2は、図1に示すように、四角形の三辺においてネット素材5が一連に繋がっているので、使用時に手触りが良くなるのである。また、このような筒状のネット部材2を複数用意して、これらを一まとめにして一つの泡立てネットとしてもよい。その場合、ネット素材5を四重よりも多く重ねることができる。
【0024】
図1に示すように、紐3は、紐通し通路8に挿通され、それぞれ紐通し通路8の両端から抜き出て、その抜き出た紐9,9の中央付近で、結び目10により両紐9,9が結ばれている。さらに、抜き出た紐9,9はその端部付近で結び目11により結ばれている。また、抜き出た紐9,9の結び目10よりもネット部材2寄りの部分に、紐止め具4がスライド可能に取り付けられている。紐止め具4は、公知の器具であって、本体12と可動部材13とから成り、共に紐の挿通孔を有し、可動部材13がバネにより外側に付勢されることにより、それぞれの挿通孔は互いに位置がずれている。そのため、挿通されている紐が圧迫されるので、紐止め具4は抜き出た紐9,9に固定される。紐止め具4をスライドさせるときは、可動部材13を押すと、各挿通孔が整合するので、紐止め具4を紐に沿ってスライドさせることができる。
【0025】
泡立てネット1は、図1に示すように、二つ折りにされたネット部材2が扁平に広がり、抜き出た紐9,9に紐止め具4が取り付けられている。泡立てネット1を使用するときは、一方の手で抜き出た紐9,9を持ち、他方の手で紐止め具4を持つ。そして、紐止め具4を持った手の指で可動部材13を押しながら、紐止め具4をネット部材2の方へスライドさせる。紐止め具4がネット部材2に当たったときに、さらに力を加えて紐止め具4でネット部材2を押し付けるようにしてスライドさせる。紐止め具4をネット素材5が寄って行く方向に一杯にスライドさせて、手から紐止め具4を離すと、可動部材13は弾性的に元の位置に復帰し、紐止め具4は抜き出た紐9,9に固定される。そして、図5に示すように、ネット部材2の中央部が緊縮され、緊縮部の両側に蝶に似た髪飾りリボン形の泡立て部14,14が形成される。前述したように、紐止め具4が固定されているので、泡立て部14,14の形が崩れて元の扁平な形状に戻ることはない。なお、図3は、二つ折りにされたネット部材2の断面図であって、扁平に折り畳まれたものであるが、二重に重ねられたネット素材5,5にやや隙間を設けてある。このような隙間を設けずに、ネット素材5,5を重ね合わせて扁平にしたものであってもよいことは勿論である。この場合、紐通し通路8には、紐3を通す分の隙間が生じている。このネット部材2のサイズは、図2の状態で、縦が約215mmで横が約175mmである。また、図2の正面視における形状は、長方形であるが、これ以外の形状であってもよく、例えば、円形や楕円形や五辺以上の多角形などであってもよい。
【0026】
次に、その泡立て部14,14を水で濡らし、石鹸などの洗顔料を付けて手で揉みながら泡立てる。洗顔料としての石鹸以外に、身体用石鹸や髭剃り石鹸などの泡立てに用いてもよいことは勿論である。十分に泡立ったら、その泡を手のひらに取って洗顔する。使用後は、紐止め具4を元の位置に戻してネット部材2を扁平に広げ、湯水ですすいでから結び目10,11の間を利用して吊るし乾燥させる。ネット部材2が扁平に広げられているので、乾燥を早めることができる。乾燥させたら、図2に示す状態から、ネット部材2の両側を所定の幅で内側に折り畳んで縦三つ折りとし、図2で見て下側からネット部材2を上側に向かって巻いて行く。巻き終わったときに、抜き出た紐9,9をその巻き終わったネット部材2の上から巻いて行く。そして、図6に示すように、抜き出た紐9,9の結び目11付近を紐止め具4に引っ掛ければ、丸めたネット部材2の巻き崩れを防止することができる。これにより、ネット部材2をコンパクトに畳むことができるので、携帯や保管に嵩張らず便利である。
【0027】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、ネット部材2は、筒状に形成されたネット素材5を扁平に潰して二重に重ねただけのものとしてもよく、本実施例のように、さらに横二つ折りにして四重に重ねてもよい。また、筒状のネット素材5は、一方の端部又は両端部が閉じられたものであってもよい。端部を閉じる場合、端部の半分のみを閉じる構成であってもよい。また、ネット部材2は、筒状のネット素材に代えて、シート状のネット素材を複数重ねる構成としてもよい。また、ネット部材2は、一枚のネット素材5で構成しなくてもよく、複数枚のネット素材で構成してもよい。その場合、ネット素材の形状がそれぞれ同じでも異なっていてもよい。筒状のネット素材とシート状のネット素材を組み合わせてネット部材としてもよい。また、ネット素材の網目の粗さは任意に選択することができる。網目の粗さは一定であってもよいし、場所によって粗さが異なるものとしてもよい。例えば、緊縮部の紐に近い部分の網目を細かくし、紐から遠くなるほど網目を粗く設定したり、その逆に設定したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
緊縮させたネット部材を、扁平に広がる形状に戻すことができるので、乾燥を早めることができて衛生的であり、また、旅行などの携帯時に好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 泡立てネット、 2 ネット部材、 3 紐、 4 紐止め具、 5 ネット素材、 6 縫い糸、 7 縫い目、 8 紐通し通路、 9 抜き出た紐、 10 結び目、 11 結び目、 12 本体、 13 可動部材、 14 泡立て部
図1
図2
図3
図4
図5
図6