【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例について、
図1〜
図14を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施例に係るスプライン結合装置を適用した油圧ショベルの側面図である。
【0021】
図1において、油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に旋回輪102を介して旋回可能に搭載された上部旋回体103と、上部旋回体103の前側に上下方向に回動可能に取り付けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置104とを備えている。
【0022】
ここで、下部走行体101には走行モータ(図示せず)が設けられると共に、上部旋回体103には旋回モータ(図示せず)が設けられている。下部走行体101は走行モータによって前進、後進等の走行動作を行い、上部旋回体103は旋回モータによって旋回動作を行う。
【0023】
フロント装置104は、ブーム105、アーム106、バケット107によって構成され、これらブーム105、アーム106、バケット107には、ブームシリンダ108、アームシリンダ109、バケットシリンダ110が取り付けられている。これらのシリンダ108〜110は、走行モータ、旋回モータと共に、後述する油圧ポンプ2から吐出される圧油により駆動される。
【0024】
旋回フレーム111は、上部旋回体103の支持構造体を形成する支持フレームであり、下部走行体101上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム111には、後述するキャブ112、カウンタウエイト113、エンジン1、油圧ポンプ2、熱交換器117等が搭載されている。
【0025】
キャブ112は、旋回フレーム111の左前側に搭載されている。キャブ112の内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等が配設されている。
【0026】
カウンタウエイト113は、旋回フレーム111の後端部に取り付けられている。カウンタウエイト113は、フロント装置104との重量バランスをとるものであり、略円弧状をした重量物として形成されている。
【0027】
旋回フレーム111上には
、キャブ112とカウンタウエイト113との間を覆う外装カバー114が配設されている。外装カバー114は、カウンタウエイト113と共に、エンジン1、油圧ポンプ2、後述する熱交換器117等の搭載機器が収容される機械室115を形成している。外装カバー114は、搭載機器の上方を覆う上面カバー114a、搭載機器の側方を覆う側面カバー114b等により構成されている。
【0028】
図2は、フロント装置104と上面カバー115aとを取り外した状態にある油圧ショベル100を上方から見た平面図である。
【0029】
エンジン1は、カウンタウエイト113の前側に位置して旋回フレーム111の後端側に設けられている。エンジン1は、例えばディーゼルエンジンとして構成され、その出力軸3が左右方向に延在する横置き状態で上部旋回体103に搭載されている。エンジン1の出力軸3の一端側(
図2の右側)には、後述の熱交換器117に冷却風を供給するための冷却ファン116が取り付けられている。エンジン1の左側(
図2の右側)には、冷却ファン116に対面するように熱交換器117が配置されている。熱交換器117は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却するもので、例えば、油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ108、アームシリンダ109、バケットシリンダ110等)からの戻り油の冷却を行うオイルクーラ、キャブ112内の室内機(図示せず)から供給される冷媒の冷却を行うコンデンサ等を含んで構成されている。エンジン1の出力軸3の他端側(
図2の左側)には、動力伝達装置118を介して油圧ポンプ2が取り付けられている。
【0030】
図3は、動力伝達装置118の構造を示す図である。
【0031】
図3において、動力伝達装置118は、フライホイール4と、弾性体軸継手5と、フライホイールハウジング6とを含んで構成されている。
【0032】
エンジン1の出力軸3の他端側で後述するフライホイールハウジング6内に突出した端部(図示せず)には、円板状のフライホイール4が設けられている。フライホイール4には、後述する弾性体軸継手5のエンジン側ブロック9(
図4に示す)が取り付けられる。
【0033】
エンジン1の出力軸3の他端側(
図2の右側)には、短尺な円筒状のフライホイールハウジング6が設けられている。フライホイールハウジング6内には、フライホイール4と弾性体軸継手5とが配置されている。フライホイールハウジング6の開口端には、後述するポンプケーシング7のフランジ部7aが取り付けられる。
【0034】
油圧ポンプ2は、例えば斜軸式油圧ポンプ、斜板式油圧ポンプにより構成されるポンプ機構(図示せず)と、ポンプ機構を収容するポンプケーシング7と、ポンプ機構に接続されポンプケーシング7から突出して設けられる後述する入力軸8とを含んで構成されている。また、ポンプケーシング7の入力軸8が突出する側(
図3の右側)には、フランジ部7aが設けられている。このフランジ部7aは、油圧ポンプ2をエンジン1に取り付けるための取付板となるもので、フライホイールハウジング6にボルト等を用いて取り付けられる。油圧ポンプ2は、エンジン1によって駆動されることにより、油圧ショベル100に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を吐出する。
【0035】
弾性体軸継手5は、エンジン1の出力軸3(より具体的には、出力軸3に設けられたフライホイール4)と油圧ポンプ2の入力軸8とを連結し、後述する高弾性体10の弾性変形によって、エンジン1の出力軸3(フライホイール4)と油圧ポンプ2の入力軸8との間のトルク変動、回転中心軸線のずれ等を吸収するものである。弾性体軸継手5は、フライホイールハウジング6の内部(弾性体軸継手室)に、フライホイール4と軸方向に隣り合って配置(収容)されている。
【0036】
図4は、弾性体軸継手5を油圧ポンプ2側から見た平面図であり、
図5は、弾性体軸継手5をエンジン1側から見た平面図である。
【0037】
図4又は
図5において、弾性体軸継手5は、複数(4個)のエンジン側ブロック9と、高弾性体10と、複数(4個)のポンプ側ブロック11と、ハブ12とを備えている。
【0038】
エンジン側ブロック9は、略扇状のブロック体として形成されており、エンジン1の出力軸3側となるフライホイール4に、周方向(回転方向)に間隔をもって取り付けられている。エンジン側ブロック9には、外径側に位置して周方向の両側に延びる鍔部9aが設けられている。これら各鍔部9aは、後述するポンプ側ブロック11の鍔部11aと共に、高弾性体10の径方向の変位を規制するものである。すなわち、エンジン側ブロック9の鍔部9aとポンプ側ブロック11の鍔部11aは、高弾性体10の外周面と当接することにより、それ以上高弾性体10が径方向外側に変位するのを阻止するものである。
【0039】
高弾性体10は、例えば弾性を有する樹脂材料、ゴム材料を用いて厚肉な円筒状に形成され、後述するハブ12を取り囲んで配置されている。高弾性体10の中央には、ハブ12を収容するハブ収容部10cが形成されており、高弾性体10の外周側には、エンジン側ブロック9を収容するエンジン側ブロック係合溝部10aと後述するポンプ側ブロック11を収容するポンプ側ブロック係合溝部10bとが周方向に交互に形成されている。各エンジン側ブロック係合溝部10aと各ポンプ側ブロック係合溝部10bとの間は、それぞれエンジン側ブロック9とポンプ側ブロック11とにより周方向に圧縮(挟持)される圧縮部10dとなっている。
【0040】
ポンプ側ブロック11は、略扇状のブロック体として形成され、後述するハブ12の外周側に、周方向に間隔をもって取り付けられている。ポンプ側ブロック11には、外径側に位置して周方向の両側に延びる鍔部11aが設けられている。これら各鍔部11aは、エンジン側ブロック9の鍔部9aと同様に、高弾性体10の径方向の変位を規制している。
【0041】
次に、油圧ポンプ2の入力軸8と弾性体軸継手5のハブ12とを含んで構成されるスプライン結合装置200について説明する。
【0042】
スプライン結合装置200は、エンジン1と油圧ポンプ2との間で回転力を伝達するものであり、弾性体軸継手5のハブ12と、油圧ポンプ2の入力軸8とを含んで構成されている。
【0043】
ハブ12は、厚肉な円筒体として形成され、高弾性体10のハブ収容部10cに収容されている。ハブ12は、入力軸8と共にスプライン結合装置200を構成し、エンジン1からの回転力により入力軸8を回転駆動する。
【0044】
図6は、
図4及び
図5に示すハブ12の内周側形状を示す拡大図である。
【0045】
図6において、ハブ12の内周側には、軸方向に延びる複数の内スプライン歯15からなる内スプライン部16が設けられている。内スプライン部16は、後述する入力軸8の外スプライン部18にスプライン結合される。
【0046】
図7は、油圧ポンプ2の入力軸8を拡大して示す側面図である。
【0047】
図7において、入力軸8の外周側には、軸方向に延びる複数の外スプライン歯17からなる外スプライン部18が設けられている。外スプライン部18は、ハブ12の内スプライン部16にスプライン結合される。
【0048】
入力軸8の端部は、外スプライン歯17及び後述するガイド歯21のいずれも有しておらず、外スプライン歯17又は後述するガイド歯21を有するその他の軸部分よりも小径に形成されており、第1ガイド軸部19を構成している。
【0049】
入力軸8のうち外スプライン部18が設けられた軸部分と第1ガイド軸部19との間には、第2ガイド軸部20が設けられている。この第2ガイド軸部20の外周側には、複数の外スプライン歯17の歯先を切削した形状を有する複数のガイド歯21が設けられている。
【0050】
以上のように構成されたスプライン結合装置において、入力軸8にハブ12を取り付ける際の手順を、
図8〜
図13を用いて説明する。
【0051】
図8は、入力軸8の第1ガイド軸部19をハブ12に挿入する直前の状態にあるスプライン結合装置200を周方向から見た部分断面図である。
【0052】
まず、入力軸8の軸心とハブ12の軸心とが大よそ一致するようにそれぞれを配置し、入力軸8の第1ガイド軸部19をハブ12に挿入する。
【0053】
図9は、入力軸8の第1ガイド軸部19の一部をハブ12に挿入した状態にあるスプライン結合装置200を周方向から見た部分断面図であり、
図10は、
図9のA方向から見たスプライン結合装置200の部分断面図である。
【0054】
図9又は
図10において、第1ガイド軸部19は外スプライン歯17又はガイド歯21を有しておらず、第1ガイド軸部19の半径R5は外スプライン部18の歯底円半径R2よりも小さい(すなわち、内スプライン部16の歯先円半径R0よりも小さい)ため、外スプライン部18に対して内スプライン部16の位相がずれていても、また、入力軸8の軸心に対してハブ12の軸心が多少ずれていても、第1ガイド軸部19をハブ12に挿入することができる。
【0055】
図11は、入力軸8の第2ガイド軸部20の一部をハブ12に挿入した状態にあるスプライン結合装置200を周方向から見た部分断面図であり、
図12は、
図10のB方向から見たスプライン結合装置200の部分断面図である。
【0056】
図12において、第2ガイド軸部20の歯先円半径R3は、内スプライン歯15の角部に形成された面取り部22の径方向幅W0内に収まるように設定されている。そのため、ガイド歯21と内スプライン歯15との間に周方向の間隙23が形成され、内スプライン部16と入力軸8の第2ガイド軸部20との間で円周方向に遊びが生じる。これにより、
図9又は
図10に示す状態において、入力軸8の軸心とハブ12の軸心とが一致していれば、位相が間隙23で規定される遊びの範囲内でずれていても、ハブ12に第2ガイド軸部20を挿入することができる。また、第2ガイド軸部20の歯底円半径R4は、後述する外スプライン部18の歯底円半径R2と一致しているため、第2ガイド軸部20を挿入することにより、軸芯出しが完了する。
【0057】
図13は、入力軸8の外スプライン部18の一部をハブ12に挿入した状態にあるスプライン結合装置200の部分断面部であり、
図14は、
図13のC方向から見たスプライン結合装置200の部分断面図である。
【0058】
図11に示す状態から更に入力軸8をハブ12に挿入していくと、内スプライン部16の位相が外スプライン部18の位相と一致している場合は、
図13及び
図14に示すように、外スプライン歯17を内スプライン歯15とが噛み合い、それ以降も入力軸8を挿入することができる。一方、内スプライン部16の位相と外スプライン部18の位相とが一致していない場合は、外スプライン歯17の軸端面と内スプライン歯15の軸端面とが突き当たり、それ以降の入力軸8の挿入が阻止される。このとき、既に軸芯出しは完了しており、入力軸8に対するハブ12の位相のずれは周方向の間隙23(
図12に示す)の範囲に収まっている。そのため、周方向の間隙23の範囲内で内スプライン部16の位相を調整するだけで、
図13及び
図14に示すように、外スプライン歯17と内スプライン歯15とが噛み合い、それ以降の入力軸8の挿入が可能となる。
【0059】
外スプライン歯17と内スプライン歯15とが噛み合った後は、第1ガイド軸部19及び第2ガイド軸部20がハブ12から突き出るまで入力軸8をハブ12に挿入する。以上の手順により、入力軸8へのハブ12の取り付けが完了する。
【0060】
以上のように構成した本実施例によれば、入力軸8の端部に、外スプライン歯17及びガイド歯21のいずれも有しておらずかつ内スプライン部16の歯先円半径R1よりも小さい半径R5を有する第1ガイド軸部19を設けたことにより、この第1ガイド軸部19をハブ12に挿入する過程で、外スプライン部18と内スプライン部16との位相のずれを許容したまま入力軸8の軸心とハブ12の軸心とのずれを所定の範囲に収めることができるため、後の軸芯出しが容易となる。
【0061】
また、第2ガイド軸部20の外周側に、外スプライン部18と同一の歯数及び歯底円半径R4を有し、内スプライン歯15と噛み合ったときに内スプライン歯15に対して周方向の間隙23を有するガイド歯21を形成したことにより、この第2ガイド軸部20をハブ12に挿入する過程で、周方向の間隙23によって位相のずれが許容されるため、軸芯出しを容易に行うことができる。さらに、軸芯出しが完了した後の位相のずれが周方向の間隙23に収まる程度に制限されるため、後の位相合わせが容易となる。
【0062】
また、ガイド歯21は外スプライン歯17の歯先を切削した形状を有するため、外スプライン部18を成形する通常のスプライン加工の後に、外スプライン歯17の軸端側部分の歯先を削り取るだけで第2ガイド軸部20を成形することができる。これにより、第2ガイド軸部20の加工に伴う費用を低く抑えることができる。
【0063】
また、第2ガイド軸部20は、入力軸8にハブ12を取り付けたときにハブ12の端面から突出するため、外スプライン歯17よりも歯面の面積が小さいガイド歯21は内スプライン歯15と噛み合うことがない。これにより、外スプライン歯17と内スプライン歯15とが噛み合うときの歯面圧の不均一化を防止することができる。さらに、ガイド歯21の軸方向長を大きくしなくても上述した第2ガイド軸部としての作用効果が得られるため、第2ガイド軸部20の軸方向長を小さくすることにより、入力軸8の長尺化を防ぐことができる。