特許第6687985号(P6687985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687985
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】建設機械の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/04 20060101AFI20200421BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   F01P7/04 B
   E02F9/00 M
   F01P7/04 T
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-174376(P2017-174376)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-49238(P2019-49238A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅一
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−303837(JP,A)
【文献】 特開2017−008739(JP,A)
【文献】 特開2014−012995(JP,A)
【文献】 特開2016−050428(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/110611(WO,A1)
【文献】 特開2012−122478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/04
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンと、前記冷却ファンを駆動する油圧駆動式又は電動式のファン駆動装置と、前記冷却ファンで誘起された冷却風によって被冷却流体を冷却する冷却器と、前記被冷却流体の温度を検出する検出器と、前記検出器で検出された被冷却流体の温度に応じて前記冷却ファンの回転数を可変制御するように前記ファン駆動装置を制御するコントローラとを備えた建設機械の冷却装置において、
前記コントローラは、
前記被冷却流体の温度と前記冷却ファンの目標回転数の関係であって、前記被冷却流体の温度の上昇に応じて前記冷却ファンの目標回転数が増加するように設定された制御テーブルを記憶するテーブル記憶部と、
前記冷却ファンの回転数が変化してからそれに応じた前記被冷却流体の温度の変化があらわれるまでのむだ時間以上の間隔となるように予め設定された第1周期にて、前記検出器で検出された被冷却流体の温度と予め設定された目標温度との偏差に基づいて前記制御テーブルを補正する補正制御部と、
前記むだ時間未満の間隔となるように予め設定された第2周期にて、前記補正制御部で補正された制御テーブルを用い、前記検出器で検出された被冷却流体の温度に応じた前記冷却ファンの目標回転数を決定するファン回転数決定部と、
前記第2周期にて、前記ファン回転数決定部で決定された前記冷却ファンの目標回転数に基づいて前記ファン駆動装置への制御信号を生成して出力するファン制御部とを有することを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の冷却装置において、
前記補正制御部は、前記第1周期にて、前記検出器で検出された被冷却流体の温度と前記目標温度との偏差に基づいて前記冷却ファンの目標回転数の補正量を演算し、前記制御テーブルとして前記被冷却流体の温度と前記冷却ファンの目標回転数の関係を表す特性線を前記補正量だけシフトすることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械には、冷却装置が搭載されている。この冷却装置は、冷却ファンと、冷却ファンで生起された冷却風によって、被冷却流体を冷却する冷却器(詳細には、例えば、作動油を冷却するオイルクーラや、エンジン冷却水を冷却するラジエータ等)を備えている。一般的に、冷却ファンは、エンジンの回転軸に連結されている。そのため、被冷却流体の温度が低い場合でも、冷却ファンの回転数が高くて過冷却となる可能性がある。
【0003】
そこで、冷却ファンを駆動するファン駆動装置と、被冷却流体の温度を検出する検出器と、検出器で検出された被冷却流体の温度に応じて冷却ファンの回転数を可変制御するようにファン駆動装置を制御するコントローラとを設けることが提唱されている。ファン駆動装置は、例えば油圧駆動式であれば、冷却ファンを駆動するファンモータ(油圧モータ)と、エンジンによって駆動されるファンポンプと、ファンポンプからファンモータへの作動油(圧油)の供給流量を可変制御する流量制御装置(詳細には、例えば、ファンポンプの容量を可変制御するレギュレータ、若しくは、ファンモータの給排流路に設けられて作動油の流量を可変制御するファンバルブ)とを備えている。
【0004】
従来技術のコントローラの制御方法について説明する。第1の従来技術のコントローラは、被冷却流体の温度と冷却ファンの目標回転数の関係であって、被冷却流体の温度の上昇に応じて冷却ファンの目標回転数が増加するように予め設定された制御テーブルを記憶する。そして、この制御テーブルを用い、検出器で検出された被冷却流体の温度に応じた冷却ファンの目標回転数を決定する。そして、この冷却ファンの目標回転数に基づき、ファン駆動装置への制御信号を生成して出力する。
【0005】
第2の従来技術(例えば特許文献1参照)のコントローラは、検出器で検出された被冷却流体の温度と予め設定された目標温度との偏差に基づいて、冷却ファンの目標回転数を決定する。そして、この冷却ファンの目標回転数に基づき、ファン駆動装置への制御信号を生成して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−110560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した第1の従来技術は、被冷却流体の温度制御の安定性の点で優れているものの、次のような改善の余地がある。第1の従来技術で用いられる制御テーブルは、制御条件を想定した上で、被冷却流体の温度と冷却ファンの目標回転数の関係を予め設定したものである。詳細には、例えば、建設機械の作業負荷に伴う発熱量を想定した上で、被冷却流体の温度に応じて必要な冷却量を想定し、さらに、大気温度を想定した上で、必要な冷却量を得るための冷却ファンの目標回転数を予め設定したものである。しかし、例えば建設機械の作業負荷が低下すれば、被冷却流体の温度が同じであっても、必要な冷却量が減少する。あるいは、例えば冬季のように大気温度が低下すれば、冷却ファンの回転数が同じであっても冷却力が増加する。そのため、冷却ファンの回転数を下げて動力を低減する余地がある。
【0008】
かといって、第1の従来技術に代えて、上述した第2の従来技術(いわゆるフィードバック制御)を採用すれば、動力の低減を図れるかもしれないが、むだ時間(言い換えれば、冷却ファンの回転数が変化してからそれに応じた被冷却流体の温度の変化があらわれるまでの時間)の長さの影響により、被冷却流体の温度制御が不安定となってハンチングやオーバーシュートを起こす可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、被冷却流体の温度制御の安定性を図ることができ、且つ、動力の低減を図ることができる建設機械の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、冷却ファンと、前記冷却ファンを駆動する油圧駆動式又は電動式のファン駆動装置と、前記冷却ファンで誘起された冷却風によって被冷却流体を冷却する冷却器と、前記被冷却流体の温度を検出する検出器と、前記検出器で検出された被冷却流体の温度に応じて前記冷却ファンの回転数を可変制御するように前記ファン駆動装置を制御するコントローラとを備えた建設機械の冷却装置において、前記コントローラは、前記被冷却流体の温度と前記冷却ファンの目標回転数の関係であって、前記被冷却流体の温度の上昇に応じて前記冷却ファンの目標回転数が増加するように設定された制御テーブルを記憶するテーブル記憶部と、前記冷却ファンの回転数が変化してからそれに応じた前記被冷却流体の温度の変化があらわれるまでのむだ時間以上の間隔となるように予め設定された第1周期にて、前記検出器で検出された被冷却流体の温度と予め設定された目標温度との偏差に基づいて前記制御テーブルを補正する補正制御部と、前記むだ時間未満の間隔となるように予め設定された第2周期にて、前記補正制御部で補正された制御テーブルを用い、前記検出器で検出された被冷却流体の温度に応じた前記冷却ファンの目標回転数を決定するファン回転数決定部と、前記第2周期にて、前記ファン回転数決定部で決定された前記冷却ファンの目標回転数に基づいて前記ファン駆動装置への制御信号を生成して出力するファン制御部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被冷却流体の温度制御の安定性を図ることができ、且つ、動力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態におけるホイール式油圧ショベルの構造を表す側面図である。
図2】本発明の一実施形態における油圧ショベルの冷却装置の構成を油圧システムの一部と共に表す概略図である。
図3】本発明の一実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態におけるコントローラのテーブル記憶部に記憶された初期の制御テーブルを表す図である。
図5】本発明の一実施形態におけるコントローラの処理手順を表すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態におけるコントローラの補正制御部で補正された制御テーブルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の適用対象の建設機械としてホイール式油圧ショベルを例にとり、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態におけるホイール式油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【0015】
本実施形態のホイール式油圧ショベルは、車体1と、車体1に連結された作業装置2とを備えている。車体1は、前後左右の車輪3で走行する下部走行体4と、下部走行体4の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体5とで構成されている。下部走行体4は、図示しない走行モータによって駆動するようになっている。上部旋回体5は、図示しない旋回モータによって駆動するようになっている。
【0016】
作業装置2は、上部旋回体5の前部(詳細には、後述する旋回フレーム12の前部)に鉛直方向に回動可能に連結されたブーム6と、ブーム6に鉛直方向に回動可能に連結されたアーム7と、アーム7に鉛直方向に回動可能に連結されたバケット8とを備えている。ブーム6、アーム7、及びバケット8は、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11によってそれぞれ駆動するようになっている。
【0017】
上部旋回体5は、基礎構造体をなす旋回フレーム12と、旋回フレーム12の前部左側に設けられたキャブタイプの運転室13と、旋回フレーム12の前部右側に設けられた燃料タンク(図示せず)及び作動油タンク14(後述の図2参照)と、旋回フレーム12の後端に設けられたカウンタウエイト15と、旋回フレーム12の後部(言い換えれば、運転室13、燃料タンク、及び作動油タンク14とカウンタウエイト15の間)に形成された機械室16とを備えている。運転室13には、運転席、前後進切替レバー、ステアリングハンドル、アクセルペダルブレーキペダル、及び作業用の操作レバー等が設けられている。機械室16には、エンジン17(後述の図2参照)等の機器が搭載されている。
【0018】
上述した油圧ショベルには、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11等)を駆動する油圧システムと共に、この油圧システムで用いられる作動油を冷却する冷却装置が搭載されている。図2は、本実施形態における油圧ショベルの冷却装置の構成を油圧システムの一部と共に表す概略図である。なお、この図2においては、油圧システムの構成のうち、代表として、ブームシリンダ9の駆動に係わる構成を表す。
【0019】
本実施形態の油圧システムは、エンジン17によって駆動され、作動油タンク14から作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプ18と、油圧ポンプ18からブームシリンダ9への作動油(圧油)の流れを制御するコントロールバルブ19とを備えている。
【0020】
コントロールバルブ19は、例えば操作レバーの操作に応じて生成された油圧操作信号又は電気操作信号などによって切換えられる。これにより、油圧ポンプ18からブームシリンダ9への作動油の流れを制御する。具体的には、例えば、油圧ポンプ18からの作動油をブームシリンダ9のロッド側に供給し、ブームシリンダ9のボトム側からの作動油を作動油タンク14に戻して、ブームシリンダ9を縮短させる。あるいは、例えば、油圧ポンプ18からの作動油をブームシリンダ9のボトム側に供給し、ブームシリンダ9のロッド側からの作動油を作動油タンク14に戻して、ブームシリンダ9を伸長させるようになっている。
【0021】
本実施形態の冷却装置は、冷却ファン20と、冷却ファン20を駆動する油圧駆動式のファン駆動装置21と、コントロールバルブ19から作動油タンク14へ作動油を戻す流路に設けられ、冷却ファン20で誘起された冷却風によって作動油を冷却するオイルクーラ22(冷却器)と、例えば作動油タンク14内の作動油の温度を検出する温度センサ23(検出器)と、温度センサ23で検出された作動油の温度に応じて冷却ファン20の回転数を可変制御するようにファン駆動装置21を制御するコントローラ24とを備えている。
【0022】
ファン駆動装置21は、冷却ファン20を駆動するファンモータ(油圧モータ)25と、エンジン17によって駆動されるファンポンプ26と、ファンモータ25の給排流路に設けられ、ファンポンプ26からファンモータ25への作動油(圧油)の供給流量を制御するファンバルブ27とで構成されている。ファンバルブ27は、コントローラ24からの制御信号によって駆動してファンモータ25への作動油の流量を可変制御し、これによって冷却ファン20の回転数を可変制御するようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の要部であるコントローラ24について説明する。
【0024】
図3は、本実施形態におけるコントローラ24の機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0025】
本実施形態のコントローラ24は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。コントローラ24は、機能的構成として、テーブル記憶部28、補正制御部29、ファン回転数決定部30、及びファン制御部31を有している。
【0026】
テーブル記憶部28は、作動油の温度と冷却ファン20の目標回転数の関係が設定された初期の制御テーブル(図4参照)を記憶するとともに、補正制御部29で補正された制御テーブル(後述の図6(a)又は図6(b)参照)を記憶するようになっている。
【0027】
上述した制御テーブルは、図示のように作動油の温度と冷却ファン20の目標回転数の関係を表す特性線として表されるものであり、作動油の温度の上昇に応じて(本実施形態では比例して)冷却ファン20の目標回転数が増加するように設定されている。言い換えれば、作動油の温度と冷却ファン20の目標回転数が1対1の関係で設定されている。また、冷却ファン20の目標回転数の上限値Nmax及び下限値Nminが設定されている。なお、本実施形態の初期の制御テーブルでは、作動油の温度がTaからTbまで上昇するのに従い(但し、作動油の目標温度をTrとした場合に、Ta<Tr<Tb)、冷却ファン20の目標回転数が下限値Nminから上限値Nmaxまで増加するように設定されており、差分(Tb−Tr)<差分(Tr−Ta)として設定されている。但し、差分(Tb−Tr)≒差分(Tr−Ta)として設定されてもよいし、差分(Tb−Tr)>差分(Tr−Ta)として設定されてもよい。
【0028】
補正制御部29は、補正量演算部32及びテーブル補正部33を有している。補正量演算部32は、むだ時間(詳細には、冷却ファン20の回転数が変化してからそれに応じた作動油の温度の変化があらわれるまでの時間であり、本実施形態では100秒)以上の間隔となるように予め設定された長周期(第1周期。詳細には、例えば100秒の間隔)にて、温度センサ23で検出された作動油の温度Tiと予め設定された目標温度Trとの偏差ΔTiに基づいて前回の制御テーブル(詳細には、1回目の補正時は初期の制御テーブル、2回目以降の補正時は前回補正の制御テーブル)に対する補正量ΔNiを演算するようになっている(下記の式(1)参照)。なお、式(1)中のγは制御ゲイン(補正係数)であり、γ>0である。
【0029】
ΔNi=γ×ΔTi=γ×(Ti−Tr) ・・・(1)
テーブル補正部33は、前述した長周期にて、テーブル記憶部28で記憶された前回の制御テーブルを読込み、補正量演算部32で演算された補正量ΔNiに基づいて前回の制御テーブルを補正し、補正後の制御テーブルをテーブル記憶部28に記憶させるようになっている。
【0030】
また、テーブル補正部33は、むだ時間未満の間隔となるように予め設定された短周期(第2周期。詳細には、例えば100ミリ秒の間隔)にて、テーブル記憶部28で記憶された最新の制御テーブル(すなわち、補正後の制御テーブル。但し、補正が行われる前は初期の制御テーブル)を読込み、ファン回転数決定部30に出力するようになっている。ファン回転数決定部30は、前述した短周期にて、テーブル補正部33から入力した制御テーブルを用い、温度センサ23で検出された作動油の温度に対応する冷却ファン20の目標回転数を決定するようになっている。
【0031】
ファン制御部31は、前述した短周期にて、ファン回転数決定部30で決定された冷却ファン20の目標回転数に対応する制御信号を生成するようになっている。詳細には、例えば、図示しない回転数センサで検出された冷却ファン20の回転数と目標回転数との偏差に基づいて、制御信号を生成する。あるいは、冷却ファン20の目標回転数に対応するファンモータ25への作動油の供給流量を演算し、この供給流量を得るための制御信号を生成してもよい。そして、生成した制御信号をファン駆動装置21のファンバルブ27へ出力するようになっている。
【0032】
図5は、本実施形態におけるコントローラ24の処理手順を表すフローチャートである。なお、この図5において、ステップS101〜S104は、上述した短周期で行われるものである。また、ステップS105及びS106は、ステップS102がYESとなる場合であって、長周期で行われるものである。
【0033】
ステップS101では、コントローラ24は、温度センサ23で検出された作動油の温度を取得する。その後、ステップS102に進み、コントローラ24の補正制御部29は、テーブル補正周期(長周期)に達したか否かを判定する。最初は、テーブル補正周期に達していないため、ステップS102の判定がNOとなって、ステップS103に移る。
【0034】
ステップS103では、補正制御部29のテーブル補正部33は、テーブル記憶部28で記憶された初期の制御テーブルを読込み、ファン回転数決定部30に出力する。ファン回転数決定部30は、テーブル補正部33から入力した初期の制御テーブルを用い、温度センサ23で検出された作動油の温度に対応する冷却ファン20の目標回転数を決定する。その後、ステップS104に進み、ファン制御部31は、ファン回転数決定部30で決定された冷却ファン20の目標回転数に対応する制御信号を生成し、生成した制御信号をファン駆動装置21のファンバルブ27へ出力する。その後、1回目のテーブル補正周期に達するまでの間、上述したステップS101,S103,S104の手順を繰り返す。
【0035】
ステップS102にて1回目のテーブル補正周期に達した場合は、その判定がYESとなって、ステップS105に移る(このとき、カウント時間はリセットされる)。ステップS105では、補正制御部29の補正量演算部32は、温度センサ23で検出された作動油の温度T1と目標温度Trとの偏差ΔT1に基づいて初期の制御テーブルに対する補正量ΔN1を演算する。その後、ステップS106に進み、補正制御部29のテーブル補正部33は、図6(a)で示すように、初期の制御テーブルの特性線を補正量ΔN1だけシフトするように補正する。詳細には、図示のように検出温度T1<目標温度Trであれば、冷却ファン20の目標回転数を減少させるように、制御テーブルの特性線を補正する。また、検出温度T1>目標温度Trであれば、冷却ファン20の目標回転数を増加させるように、制御テーブルの特性線を補正する。但し、冷却ファン20の目標回転数の下限値Nmin及び上限値Nmaxは固定したままである。そして、補正後の制御テーブルをテーブル記憶部28に記憶させる。
【0036】
その後、ステップS103に進み、補正制御部29のテーブル補正部33は、テーブル記憶部28で記憶された1回目の補正後の制御テーブルを読込み、ファン回転数決定部30に出力する。ファン回転数決定部30は、テーブル補正部33から入力した1回目の補正後の制御テーブルを用い、温度センサ23で検出された作動油の温度に対応する冷却ファン20の目標回転数を決定する。その後、ステップS104に進み、ファン制御部31は、ファン回転数決定部30で決定された冷却ファン20の目標回転数に対応する制御信号を生成し、生成した制御信号をファン駆動装置21のファンバルブ27へ出力する。その後、2回目のテーブル補正周期に達するまでの間、上述したステップS101,S103,S104の手順を繰り返す。
【0037】
ステップS102にて2回目のテーブル補正周期に達した場合は、その判定がYESとなって、ステップS105に移る(このとき、カウント時間はリセットされる)。ステップS105では、補正制御部29の補正量演算部32は、温度センサ23で検出された作動油の温度T2と目標温度Trとの偏差ΔT2に基づいて1回目の補正後の制御テーブルに対する補正量ΔN2を演算する。その後、ステップS106に進み、補正制御部29のテーブル補正部33は、図6(b)で示すように、1回目の補正後の制御テーブルの特性線を補正量ΔN2だけシフトするように補正する。そして、補正後の制御テーブルをテーブル記憶部28に記憶させる。
【0038】
その後、ステップS103に進み、補正制御部29のテーブル補正部33は、テーブル記憶部28で記憶された2回目の補正後の制御テーブルを読込み、ファン回転数決定部30に出力する。ファン回転数決定部30は、テーブル補正部33から入力した2回目の補正後の制御テーブルを用い、温度センサ23で検出された作動油の温度に対応する冷却ファン20の目標回転数を決定する。その後、ステップS104に進み、ファン制御部31は、ファン回転数決定部30で決定された冷却ファン20の目標回転数に対応する制御信号を生成し、生成した制御信号をファン駆動装置21のファンバルブ27へ出力する。その後、3回目のテーブル補正周期に達するまでの間、上述したステップS101,S103,S104の手順を繰り返す。
【0039】
以上のように本実施形態においては、むだ時間未満の間隔となるように予め設定された短周期にて、制御テーブルを用い、作動油の検出温度に応じた冷却ファンの目標回転数を決定する。これにより、短周期にてフィードバック制御を行う場合と異なり、むだ時間の長さの影響を受けずに、作動油の温度制御の安定性を図ることができる。また、むだ時間以上の間隔となるように予め設定された長周期にて、作動油の検出温度と目標温度との偏差に基づいて、前述した制御テーブルを補正する。これにより、例えば油圧ショベルの作業負荷や大気温度などの制御条件が変動しても、作動油の温度を目標温度に近づけることができる。そして、例えば油圧ショベルの作業負荷が低減する場合や大気温度が低下する場合に、冷却ファン20の回転数を下げて、動力の低減を図ることができる。
【0040】
なお、上記一実施形態においては、ファンポンプ26からファンモータ25への作動油の供給流量を可変制御する流量制御装置として、ファンバルブ27を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば、ファンポンプ26の容量を可変制御するレギュレータを備えてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、上記一実施形態においては、油圧駆動式のファン駆動装置21を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、電動式のファン駆動装置を備えてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、以上においては、本発明の適用対象の冷却装置として、作動油を冷却する冷却装置を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。エンジン17の冷却水を冷却する冷却装置に適用してもよい。すなわち、冷却装置は、冷却ファンで誘起された冷却風によってエンジン17の冷却水を冷却するラジエータ(冷却器)と、エンジン17の冷却水の温度を検出する温度センサ(検出器)と、温度センサで検出された冷却水の温度に応じて冷却ファンの回転数を可変制御するようにファン駆動装置を制御するコントローラとを備えてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本発明の適用対象の建設機械として、ホイール式油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、クローラ式油圧ショベルやローダ等の他の建設機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
20 冷却ファン
21 ファン駆動装置
22 オイルクーラ(冷却器)
23 温度センサ(検出器)
24 コントローラ
28 テーブル記憶部
29 補正制御部
30 ファン回転数決定部
31 ファン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6