【実施例】
【0031】
本発明の実施の形態に係る内燃機関1は、
図1に示すように、シリンダヘッド2と、当該シリンダヘッド2の上部に取り付けられたロッカーカバー4と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられた本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20と、当該シリンダブロック20の下部に取り付けられたアッパーオイルパン6と、当該アッパーオイルパン6の下部に取り付けられたロアオイルパン8と、シリンダブロック20に取り付けられたウォータポンプ10と、を備えている。内燃機関1は、実施例では、4つの気筒が直列に配置された直列4気筒エンジンとして構成されている。
【0032】
シリンダブロック20は、
図2および
図3に示すように、シリンダブロック20の外郭を構成する外壁部22と、4つのシリンダボア24aを有するシリンダボア壁部24と、を備えており、外壁部22とシリンダボア壁部24との間には、ブロック用ウォータジャケットBWJが形成されている。外壁部22およびシリンダボア壁部24の上端面(
図2における上側の端面)は、面一状に形成されており、シリンダヘッド2に当接されるトップデッキ面25を構成している。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、4つのシリンダボア24aを
図2および
図3における左側から順に「第1シリンダボア24a1」、「第2シリンダボア24a2」、「第3シリンダボア24a3」および「第4シリンダボア24a4」として規定する。
【0033】
外壁部22には、
図3に示すように、シリンダボア24aの配列方向に沿ってほぼ等間隔に複数のネジ穴23が形成されている。詳細には、ネジ穴23は、隣接するシリンダボア24a間に対応する位置にシリンダボア24a列を挟んで両側に各5個ずつ、計10個形成されている。即ち、ネジ穴23は、隣接するシリンダボア24a間に対応する位置に配置されたネジ穴23を隣接するシリンダボア24a同士で共有した状態で、各シリンダボア24aの周方向にほぼ等間隔(90度の間隔)に4個配置される。
【0034】
また、外壁部22のうちシリンダボア24aの配列方向に沿って延在するように構成された側壁22a,22bのうちの一方の側壁22aには、
図2および
図4に示すように、ウォータポンプ10を取り付けるためのウォータポンプ取付部32と、当該ウォータポンプ取付部32に冷却水を導くサクション通路部34と、ウォータポンプ10から吐出される冷却水が導入される導入室36と、が形成されている。
【0035】
ウォータポンプ取付部32は、
図2に示すように、側壁22aのうち第1シリンダボア24a1に対応した位置に一体形成されている。当該ウォータポンプ取付部32に、例えば、ゴムガスケットやFIPG(現場成形ガスケット)からなる液状ガスケットを介して、図示しない締結ボルトによってウォータポンプ10が取り付け固定される。ウォータポンプ取付部32は、
図2および
図4に示すように、ウォータポンプ10の吸入ポート(図示せず)に接続される吸入通路部32aと、ウォータポンプ10の吐出ポート(図示せず)に接続される吐出通路部32bと、を有している。
【0036】
吐出通路部32bは、
図5および
図8に示すように、側壁22aをほぼ直交状に貫通して導入室36に連通接続されている。吐出通路部32bは、本発明における「導入開口」に対応する実施構成の一例である。
【0037】
サクション通路部34は、
図4に示すように、側壁22aの上方部(
図4の上方側)において、シリンダボア24aの配列方向(
図2の左右方向)に沿って延在しており、サクション通路部34内部には冷却水が流れる冷却水通路が形成されている。サクション通路部34の一端部はウォータポンプ取付部32の吸入通路部32aに接続されており、サクション通路部34の他端部は、図示しないヘッド用ウォータジャケットに連通されている。
【0038】
導入室36は、
図2、
図3、
図5および
図7に示すように、トップデッキ面25側が開口された有底凹部として構成されており、切欠き26を介してブロック用ウォータジャケットBWJに連通接続されている。切欠き26は、側壁22aの一部を切欠くことにより構成されている。詳細には、切欠き26は、
図3、
図5および
図7に示すように、第1切欠構成壁部28aと、第2切欠構成壁部28bと、によって構成されている。なお、切欠き26は、
図4および
図6に示すように、吐出通路部32bに対向する位置に設けられている。
【0039】
第1切欠構成壁部28aの近傍には、
図5に示すように、ネジ穴23が形成されている。また、第1切欠構成壁部28aは、
図7に示すように、切欠き26の底部26aに向かうに従い第2切欠構成壁部28bに近づく方向(第1および第2切欠構成壁部28a,28b間の距離が減少する方向)に傾斜した傾斜部29を有している。これにより、切欠き26は、
図7に示すように、シリンダボア24aの配列方向にほぼ直交する方向から見た場合に略V字状に構成される。
【0040】
ここで、傾斜部29は、側壁22a側から吐出通路部32bを流れる冷却水の流れ方向に沿う方向に当該吐出通路部32bを見た場合、
図4および
図6に示すように、吐出通路部32bの通路断面積の略半分を占めるような位置および大きさに構成されている。即ち、傾斜部29は、ウォータポンプ10から吐出通路部32bを介して導入室36に導入された冷却水の少なくとも一部が衝突するように構成されている。傾斜部29が、側壁22a側から吐出通路部32bを見た場合に、当該吐出通路部32bの通路断面積の略半分を占めるような位置および大きさに構成されている態様は、本発明における「前記傾斜部は、前記導入開口から前記導入室に導入される冷却水の流れ方向に沿う方向から前記導入開口を見たときに前記導入開口の一部とオーバーラップするよう構成されている」態様に対応する実施構成の一例である。
【0041】
また、傾斜部29の内周面29a(シリンダボア壁部24に対向する面)および外周面29b(導入室36に対向する面)は、
図5に示すように、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面に構成されている。
【0042】
シリンダボア壁部24は、
図2および
図3に示すように、4つのシリンダボア24aが直列に配置されるように構成されており、互いに隣接する各シリンダボア壁部24が互いに連結されたサイアミーズシリンダを構成している。なお、シリンダボア24a内には、図示しないピストンが摺動する。
【0043】
ブロック用ウォータジャケットBWJは、
図3に示すように、シリンダボア壁部24を囲むようにシリンダボア壁部24にほぼ同心状に構成されている。ブロック用ウォータジャケットBWJは、冷却水が流れる冷却水通路として構成されており、ブロック用ウォータジャケットBWJを流れる冷却水によって、シリンダブロック20、特に、シリンダボア壁部24周りが冷却される。ブロック用ウォータジャケットBWJは、トップデッキ面25側(
図3の紙面方向手前側)が開口された所謂オープンデッキタイプのウォータジャケットとして構成されている。
【0044】
こうして構成されたシリンダブロック20のトップデッキ面25にシリンダヘッド2を設置すると共にネジ穴23にヘッド締結ボルトをネジ係合することによって、シリンダヘッド2がシリンダブロック20に締結される。ここで、第1および第2切欠構成壁部28a,28bは、切欠き26によって不連続となっているため、他の外壁部22に比べて剛性が低下している。したがって、第1および第2切欠構成壁部28a,28bが、ヘッド締結ボルトの締結力(軸力)によって切欠き26が拡開する方向の変形を生じ易い。特に、第1切欠構成壁部28aの近傍にはネジ穴23が形成されているため、ヘッド締結ボルトの締結力(軸力)の影響が顕著なものとなる。
【0045】
しかしながら、本実施の形態によれば、第1切欠構成壁部28aが傾斜部29を有しているため、第1切欠構成壁部28aが、ヘッド締結ボルトの締結力(軸力)によって切欠き26が拡開する方向に変形することを良好に抑制することができる。これにより、第1切欠構成壁部28aの変形に起因して生ずるシリンダボア壁部24の変形を抑制することができ、シリンダヘッド2とシリンダブロック20との間のシール性が低下することもない。なお、従来のようにシリンダボア壁部24の対称性が損なわれることがないため、シリンダボア壁部24が非対称に構成されることに起因するシリンダボア壁部24の変形が助長されることも抑制され得る。
【0046】
次に、こうして構成された内燃機関1の運転に伴って駆動されるウォータポンプ10によって吐出され、ブロック用ウォータジャケットBWJに供給される冷却水の流れについて説明する。ウォータポンプ10によって吐出された冷却水は、吐出通路部32bから導入室36内に導入される。導入室36に導入された冷却水の一部は、第1切欠構成壁部28aの傾斜部29に衝突し、残りの一部は、直接切欠き26に向かって流れる。
【0047】
傾斜部29の外周面29bに衝突した冷却水は、
図9の実線矢印で示すように、切欠き26に向かう方向にその流れ方向が変えられ、切欠き26を介してブロック用ウォータジャケットBWJ内に流入する。ここで、傾斜部29の外周面29bが、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面に構成されているため、傾斜部29の外周面29bに衝突した冷却水をスムーズに切欠き26に向かわせることができると共に、ブロック用ウォータジャケットBWJに沿った流れに変更することができる。
【0048】
一方、直接切欠き26に向かって流れる冷却水は、傾斜部29の外周面29bに衝突して流れ方向が切欠き26に向かう方向に変えられた冷却水と衝突して、
図9の破線矢印で示すように、その流れ方向がブロック用ウォータジャケットBWJに沿った流れ方向に変更された上でブロック用ウォータジャケットBWJ内に流入する。
【0049】
これにより、冷却水が直接切欠き26からブロック用ウォータジャケットBWJに流入することにより、シリンダボア壁部24の切欠き26に対向する部分に集中的に冷却水が衝突することを抑制できる。この結果、シリンダボア壁部24の切欠き26に対向する部分のみが過冷却されることを抑制でき、シリンダボア壁部24の不均一な冷却に起因して生ずるシリンダボア壁部24の変形の抑制を図ることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、導入室36に導入された冷却水は、傾斜部29によってその流れ方向がブロック用ウォータジャケットBWJに沿った流れ方向に変更された上でブロック用ウォータジャケットBWJ内に流入するため、ブロック用ウォータジャケットBWJ内への冷却水の流入性を向上することができる。即ち、ブロック用ウォータジャケットBWJへの冷却水の流入性の向上を図りながら、シリンダボア壁部24の変形を抑制することができる。
【0051】
なお、傾斜部29の内周面29aがシリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面に構成されているため、ブロック用ウォータジャケットBWJ内を流れる冷却水の流れが乱れることもない。これにより、冷却性能の低下を防止できる。
【0052】
本実施の形態では、第1切欠構成壁部28aのみに傾斜部29を設ける構成としたが、これに限らない。例えば、第2切欠構成壁部28bの近傍にネジ穴23が形成される場合にあっては、第2切欠構成壁部28bのみに傾斜部29を設ける構成としても良い。また、第1および第2切欠構成壁部28a,28bの両方に傾斜部29を設ける構成としても良い。
【0053】
本実施の形態では、傾斜部29の上面が直線部を有し、切欠き26は、シリンダボア24aの配列方向にほぼ直交する方向から見た場合に略V字状となる構成としたが、これに限らない。例えば、傾斜部29の上面を下に凸の曲線とし、切欠き26は、シリンダボア24aの配列方向にほぼ直交する方向から見た場合に略U字状となる構成としても良い。
【0054】
本実施の形態では、傾斜部29の内周面29aおよび外周面29bを、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面に構成したが、これに限らない。冷却水をブロック用ウォータジャケットBWJ内にスムーズに流入することができ、かつ、ブロック用ウォータジャケットBWJ内を流れる冷却水の流れに乱れが生じなければ、傾斜部29の内周面29aおよび外周面29bは、例えば、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状ではない曲面に構成しても良いし、傾斜部29の内周面29aおよび外周面29bは、曲面に構成しなくても良い。
【0055】
本実施の形態では、傾斜部29の内周面29aおよび外周面29bの両方を、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面に構成したが、これに限らない。例えば、傾斜部29の内周面29aおよび外周面29bのいずれか一方のみに、シリンダボア壁部24の外周面と同心円状の曲面を構成しても良い。
【0056】
本実施の形態では、側壁22a側から吐出通路部32bを見た場合に、当該吐出通路部32bの通路断面積の略半分を占めるような位置および大きさに傾斜部29を構成したが、これに限らない。側壁22a側から吐出通路部32bを見た場合に、傾斜部29が当該吐出通路部32bの一部とオーバーラップする構成であれば良く、吐出通路部32bの通路断面積の半分未満あるいは半分より大きな割合を占めるような位置および大きさに傾斜部29を構成しても良い。
【0057】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。