特許第6688007号(P6688007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパッド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000002
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000003
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000004
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000005
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000006
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000007
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000008
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000009
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000010
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000011
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000012
  • 特許6688007-半導体発光装置及びその製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688007
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】半導体発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20200421BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200421BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200421BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20200421BHJP
   C03C 14/00 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20200421BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01L33/50
   H01L23/30 F
   H01L23/30 G
   F21S2/00 100
   F21S2/00 311
   C03C14/00
   C03C17/23
   C03C17/22 Z
   C03C17/34 Z
   C03C15/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-78346(P2015-78346)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-76685(P2016-76685A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2018年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-207036(P2014-207036)
(32)【優先日】2014年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】317016523
【氏名又は名称】アルパッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】古山 英人
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/082286(WO,A1)
【文献】 特開2009−289976(JP,A)
【文献】 特開2011−102004(JP,A)
【文献】 特開2011−233650(JP,A)
【文献】 特開2012−195345(JP,A)
【文献】 特開2014−187196(JP,A)
【文献】 特開2005−294820(JP,A)
【文献】 特開2011−210911(JP,A)
【文献】 特開平10−208105(JP,A)
【文献】 特開2010−287687(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/040974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
C03C 14/00
C03C 15/00
C03C 17/22
C03C 17/23
C03C 17/34
F21S 2/00
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸面を有する発光素子と、
ガラス材と、前記ガラス材に分散された蛍光体とを有し、前記凹凸面の上に設けられた蛍光体層と、
前記凹凸面と前記蛍光体層との間に設けられ、前記凹凸面および前記蛍光体層に接し、前記発光素子の放射光に対して透過性を有する無機層と、
を備え、
前記無機層は、前記発光素子側に設けられた第1無機層と、前記蛍光体層側に設けられ、前記第1無機層とは異なる材料の第2無機層とを含み、前記第2無機層の屈折率は、前記第1無機層の屈折率よりも高く、前記ガラス材の屈折率よりも低い半導体発光装置。
【請求項2】
前記第2無機層の前記蛍光体層側の面の表面粗さは、前記第1無機層の前記発光素子側の面の表面粗さよりも小さい請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第2無機層の前記蛍光体層側の面に凹凸が設けられている請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記ガラス材の屈折率は、前記発光素子の材料の屈折率より小さく、前記無機層の屈折率より大きい請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第2無機層と前記蛍光体層との間に設けられ、前記発光素子の発光波長に対する反射率よりも、前記蛍光体の蛍光波長に対して高い反射率を有する蛍光反射膜をさらに備えた請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第1無機層と前記第2無機層との間に設けられ、前記発光素子の発光波長に対する反射率よりも、前記蛍光体の蛍光波長に対して高い反射率を有する蛍光反射膜をさらに備えた請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記発光素子の側面に設けられた絶縁層をさらに備え、
前記蛍光体層の側面および前記絶縁層の側面は連続している請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体層は、前記発光素子の前記側面よりも外側の領域の前記絶縁層上にも設けられている請求項7記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記無機層は、導電性を有する請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記蛍光体層は樹脂を含まない請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記発光素子と前記蛍光体層との間に基板を含まない請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記ガラス材は、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英、および合成石英の少なくともいずれかを含む請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項13】
発光素子の凹凸面上に、前記発光素子の放射光に対して透過性を有する第1無機層を形成する工程と、
前記第1無機層の表面を平滑化する工程と、
ガラス材と、前記ガラス材に分散された蛍光体とを有する蛍光体層の表面上に、前記発光素子の放射光に対して透過性を有し、前記第1無機層とは異なる材料であって、屈折率が前記第1無機層の屈折率よりも高く、前記ガラス材の屈折率よりも低い第2無機層を形成する工程と、
前記第2無機層の表面を平滑化する工程と、
平滑化された前記第1無機層の表面と、平滑化された前記第2無機層の表面とを貼り合わせる工程と、
を備えた半導体発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1無機層の前記表面の平均粗さ、および前記第2無機層の前記表面の平均粗さは、0.5nm以下である請求項13記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記蛍光体層の前記表面に凹凸を形成する工程をさらに備え、
前記凹凸を埋めるように前記第2無機層が前記蛍光体層の前記表面に形成される請求項13または14に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記ガラス材のエッチングにより前記蛍光体層の前記表面に前記蛍光体を露出させ、前記凹凸を形成する請求項15記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2無機層の裏面に凹凸を形成し、前記蛍光体層を前記第2無機層の裏面の凹凸上に溶融塗布する請求項13または14に記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体を用いた発光素子と、蛍光体層との組み合わせにより白色光源を実現した半導体発光装置が広く普及している。このような半導体発光装置において、特に高出力タイプでは、発光素子だけでなく蛍光体層での発熱に対する対策の要求が高まりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−197236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性の高い半導体発光装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体発光装置は、凹凸面を有する発光素子と、ガラス材と、前記ガラス材に分散された蛍光体とを有し、前記凹凸面の上に設けられた蛍光体層と、前記凹凸面と前記蛍光体層との間に設けられ、前記凹凸面および前記蛍光体層に接し、前記発光素子の放射光に対して透過性を有する無機層と、を備えている。前記無機層は、前記発光素子側に設けられた第1無機層と、前記蛍光体層側に設けられ、前記第1無機層とは異なる材料の第2無機層とを含み、前記第2無機層の屈折率は、前記第1無機層の屈折率よりも高く、前記ガラス材の屈折率よりも低い
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の半導体発光装置の一部の拡大模式断面図。
図2】実施形態の半導体発光装置の一部の拡大模式断面図。
図3】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
図4】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
図5】実施形態の半導体発光装置の模式断面図。
図6】実施形態の半導体発光装置の模式平面図。
図7】実施形態の半導体発光装置の模式断面図。
図8】実施形態の半導体発光装置の模式平面図。
図9】実施形態の半導体層の模式断面図。
図10】実施形態の半導体発光装置の模式断面図。
図11】実施形態の半導体発光装置の一部の拡大模式断面図。
図12】実施形態の蛍光反射膜の反射率の波長依存特性図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
図1(a)は、実施形態の半導体発光装置の一部の拡大模式断面図である。
【0009】
実施形態の半導体発光装置は、発光素子3と、蛍光体層30と、発光素子3と蛍光体層30との間に設けられた透明無機層19とを有する。
【0010】
発光素子3は、窒化物半導体を含む半導体層15を有する。本願明細書において、「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)のIII−V族化合物半導体を含み、さらに、V族元素としては、N(窒素)に加えてリン(P)や砒素(As)などを含有する混晶でもかまわない。またさらに、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0011】
半導体層15は、n型クラッド層を含む第1層11と、p型クラッド層を含む第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層(活性層)13と、を有する。n型クラッド層は、例えば、n型GaN層であり、所謂pn接合の順バイアス時に発光層13に電子を供給する。また、p型クラッド層は、例えば、p型GaN層であり、所謂pn接合の順バイアス時に発光層13に正孔を供給する。
【0012】
発光層13は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層が交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum well)構造を有する。井戸層は、n型クラッド層およびp型クラッド層よりもバンドギャップエネルギーが小さい。障壁層は、井戸層を積層方向に挟んでおり、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きい。井戸層は、例えばInGaNを含む。障壁層は、例えばGaNを含み、Inを実質的に含まない。または、障壁層がInを含む場合、障壁層におけるIn組成比は、井戸層におけるIn組成比よりも低い。発光層13から放出される光のピーク波長の範囲は、例えば360nm以上650nm以下である。
【0013】
第1層11は、発光層13との界面の反対側に凹凸面(または粗面)15aを有する。その凹凸面15a面上には、透明無機層19が設けられている。透明無機層19上には、蛍光体層30が設けられている。
【0014】
半導体層15は、例えば、窒化ガリウム基板、シリコン基板、サファイア基板、炭化シリコン基板、酸化ガリウムなどの単結晶基板(以下単に基板と記す)上にエピタキシャル成長される。基板上に、第1層11、発光層13、および第2層12が順に形成される。ここで、半導体層15の成長用の基板(単結晶基板)が、シリコンのような不透明基板の場合、その半導体層15の形成(成長)に用いた基板は、半導体層15から除去される。
【0015】
基板の除去により露出した第1層11の表面には微小凹凸が形成され、半導体層15の光取り出し側に凹凸面15aが形成される。例えば、アルカリ系溶液を使ったウェットエッチングにより凹凸面15aが形成される。この凹凸面15aにより、半導体層15の内部に戻る反射成分を低減し、半導体層15から無機透明層19への光取り出し効率を向上できる。
【0016】
透明無機層19は凹凸面15aを埋め、透明無機層19における凹凸面15aの反対側の面は平坦面となっている。すなわち、透明無機層19と蛍光体層30との界面は、平坦に形成されている。透明無機層19の蛍光体層30側の面の表面粗さは、透明無機層19の第1層11側の面の表面粗さよりも小さい。
【0017】
蛍光体層30は、複数の粒子状の蛍光体31を含む。蛍光体31は、発光層13の放射光(励起光)により励起され、その励起光の波長とは異なる波長の光を放射する。発光層13の光と蛍光体31の光との混合光として、白色、電球色などの光が擬似的に得られる。
【0018】
複数の蛍光体31は、ガラス材32中に分散されている。ガラス材32は、例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英、および合成石英の少なくともいずれかを含む。
【0019】
実施形態によれば、ガラス材32は、例えばホウケイ酸ガラスの粉末を主成分として含む焼結体であり、その焼結体中に蛍光体31が分散されている。ガラス材32は、発光層13の放射光および蛍光体31の放射光に対して透過性を有する。
【0020】
透明無機層19は、発光層13の放射光に対して透過性を有する。本明細書において、「透過」とは、光の透過率が100%であることに限らず、光の一部を吸収する場合も含む。
【0021】
透明無機層19は、高分子樹脂、低分子樹脂などの所謂有機化合物を含まない無機物層であり、例えば300℃以上の耐熱性を有する。
【0022】
なお、透明無機層19は、無機物としての炭素化合物(炭化シリコン、ダイヤモンド等)や、製造中に混入した炭素を含む無機物の場合もある。炭素化合物以外の炭素混入無機物の場合、透明無機層19中の炭素の重量比は、1パーセント未満である。
【0023】
透明無機層19は、例えば、酸化シリコン、炭化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、ダイヤモンドおよび酸窒化シリコン等を用いることができる。
【0024】
ここで、半導体層15を成長させる基板(単結晶基板)が窒化ガリウム、サファイア、炭化シリコン、酸化ガリウム等の透明基板の場合、基板表面に凹凸を設けて結晶成長を行い、透明基板を例えば50μm以下の薄層化加工と表面平坦化を行って透明無機層19として用いても構わない。
【0025】
後述するように、蛍光体層30と発光素子3とは透明無機層19を介して貼り合わせられた後、ダイシング等により個片化される。そのため、蛍光体層30は発光素子3の周囲には設けられず、蛍光体層30の側面と透明無機層19の側面とは連続している。
【0026】
透明無機層19として堆積膜を用いてもよい。例えば、堆積膜の堆積条件を選択することによって、凹凸面15aに沿った緻密な膜を容易に形成することができ、凹凸面15aに密着した透明無機層19を形成することができる。
【0027】
また、透明無機層19として、300GPa以上のヤング率を有する材料を用いてもよい。この場合、半導体発光装置を実装基板に実装した際に、蛍光体層30にかかる応力を透明無機層19へ分散させることができ、蛍光体層30にかかる応力を低減することが可能となる。したがって、300GPa以上のヤング率を有する材料の透明無機層19は、色割れなどの光学特性の劣化を抑制することが可能であるという点で好ましい。
【0028】
また、透明無機層19として、300GPa未満のヤング率を有する材料を用いてもよい。300GPa未満のヤング率を有する材料の透明無機層19は、半導体層15にかかる応力を透明無機層19によって緩和しやすい構造となる点で好ましい。この点で、透明無機層19のヤング率は、300GPa未満であることに限定されず、280GPa以下、さらに好ましくは100GPa以下の透明無機層19を用いることができる。
【0029】
蛍光体31は発光にともない波長変換損失(ストークスロス)分の発熱をする。そのとき、蛍光体31を樹脂に分散させた構造では、蛍光体31の熱で樹脂が変質や分解してしまう懸念がある。特に高出力発光素子で、樹脂の耐熱性が問題となりうる。
【0030】
これに対して実施形態によれば、蛍光体31を、樹脂よりも耐熱性をもつガラス材32に分散させているため、蛍光体層30の信頼性を高くできる。蛍光体層30は、複数の蛍光体31を結合するバインダーとして樹脂を含まない。
【0031】
ガラス材32の屈折率(平均屈折率)は、半導体層15の屈折率(平均屈折率)より小さく、透明無機層19の屈折率(平均屈折率)より大きいことが望ましい。例えば、凹凸面15aを形成するGaNの屈折率は2.4〜2.7であり、ガラス材32の屈折率は1.8以上であり、透明無機層19の屈折率は1.5〜1.8である。
【0032】
透明無機層19の屈折率はガラス材32の屈折率よりも小さいため、透明無機層19の屈折率がガラス材32の屈折率よりも大きい場合と比較して、透明無機層19からガラス材32へと光を取り込みやすい。この場合、発光層13の光(例えば青色光)が、透明無機層19中に閉じ込められて光導波することによって横方向に広がり、蛍光体31を励起せずに外部に放出されることによる色割れを抑制でき、色度の制御性が高い。
【0033】
透明無機層19としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)のような導電性を有する透明材料を使うこともできる。
【0034】
透明無機層19は、第1層11の凹凸面15aに接して凹凸面15a上に広がって設けられている。このため、透明無機層19が導電性を有すると、電流は透明無機層19中も横方向に拡散して流れる。これは、第1層11だけを通じて電流を拡散させる場合に比べて、電流を横方向に均一に拡散しやすい。この結果、面内発光強度分布を均一化しやすい。
【0035】
図3(a)は、図1(a)に示す構造の製造方法を示す模式断面図である。
【0036】
ガラス粉末に蛍光体31を所定の割合で添加し、ガラス粉末と蛍光体31を均一に混合する。その混合粉末を、所定形状の金型に充填し、例えば600〜650℃に加熱して溶融させた後、冷却することで、例えばシート状の蛍光体層30を形成する。また、シート状の蛍光体層30は、別のガラス基板上に溶融塗布して形成することでもよい。
【0037】
一方、半導体層15や電極などを含む発光素子3は基板上にウェーハ状態で形成され、基板は除去される、または薄層化される。第1層11の表面には、例えば、アルカリ系溶液を使ったウェットエッチングにより凹凸面15aが形成される。
【0038】
その凹凸面15a上に透明無機層19を形成する。透明無機層19は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法、SOG(spin on glass)法などで形成され、凹凸面15aを埋める。
【0039】
透明無機層19を形成した後、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、透明無機層19の表面を平滑化する。
【0040】
あるいは、透明無機層19として低温溶融ガラスを凹凸面15a上に供給した後、その溶融ガラスをリフローして表面を平滑化することもできる。
【0041】
また、半導体層15を成長させる基板(単結晶基板)が窒化ガリウム、サファイア、炭化シリコン、酸化ガリウム等の透明基板の場合、基板表面に凹凸を設けて結晶成長を行い、透明基板を例えば50μmm以下の薄層化加工と表面平坦化を行って透明無機層19として用いても構わない。
【0042】
次に、平滑化された透明無機層19の表面に蛍光体層30を貼り合わせる。蛍光体層30における透明無機層19との貼り合わせ面も平坦面となっている。これらの平坦面(貼り合せ面)は清浄化、親水化処理された後、中央部または端部から貼り合わされ、例えば150〜300℃の熱処理を例えば30分以上行うことで、より強固な接着強度を得ることが可能になる。
【0043】
このように、ウェーハ状態の発光素子3に対してシート状の蛍光体層30が貼り合わされ、その後、発光素子3および蛍光体層30の積層体はダイシング等により、個片化される。
【0044】
実施形態によれば、蛍光体層30を発光素子3に貼り合わせるにあたって、蛍光体層30と発光素子3との間に樹脂の接着層が介在しない。そのため、蛍光体層30の熱で接着層が劣化することがない。
【0045】
また、蛍光体層30のガラス材32を直接半導体層15に貼り合わせる場合、半導体層15の表面(接着面)の平滑化が要求されるが、その場合凹凸面による光取り出し効率の向上が図れない。
【0046】
これに対して実施形態によれば、半導体層15の凹凸面15aを埋めるように透明無機層19を形成し、その透明無機層19の表面を平滑化し、その透明無機層19の表面に蛍光体層30を貼り合わせる。このため、半導体層15から蛍光体層30側への光取り出し効率の向上を図りつつ、蛍光体層30を発光素子3に対して確実に接着させることができる。したがって、実施形態によれば、高い光取り出し効率および高い信頼性を両立した半導体発光装置を提供できる。
【0047】
蛍光体層30と透明無機層19との高い接着力を確保するため、透明無機層19の表面、および蛍光体層30の透明無機層19に貼り合せる面の平均粗さは、それぞれ0.5nm以下が望ましく、より望ましくは0.3nm以下がよい。
【0048】
図1(b)は、実施形態の半導体発光装置の他の具体例の模式断面図である。
図3(b)は、図1(b)の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【0049】
図3(b)に示すように、凹凸面15a上に第1透明無機層19aを形成し、一方、蛍光体層30の接着面側にも第2透明無機層19bを形成する。第1透明無機層19aおよび第2透明無機層19bは、前述した透明無機層19と同じ材料であり、また同じ方法で形成することができる。
【0050】
第1透明無機層19aの表面および第2透明無機層19bの表面は、平滑化される。そして、第1透明無機層19aの平滑面と第2透明無機層19bの平滑面どうしを貼り合わせ、図1(b)に示す半導体発光装置が得られる。したがって、発光素子3の凹凸面15aと蛍光体層30との間に、第1透明無機層19aと第2透明無機層19bとが一体となった透明無機層19が設けられている。
【0051】
尚、例えば150〜300℃の熱処理を例えば30分以上行うことで、より強固な接着強度を得ることが可能になる。
【0052】
同じ材料の第1透明無機層19aと第2透明無機層19bとを貼り合わせるため、接合界面での応力を小さくすることができ、接着強度を高くできる。この場合も、高い接着力を確保するため、第1透明無機層19aの表面の平均粗さ、および第2透明無機層19bの表面の平均粗さは、0.5nm以下が望ましく、より望ましくは0.3nm以下がよい。
【0053】
尚、第1透明無機層19aと第2透明無機層19bを異なる材料とすることも可能である。この場合、第2透明無機層19bの屈折率を第1透明無機層19aの屈折率より高く、ガラス材32の屈折率より低く設定することで蛍光体層30への発光層13の放射光(励起光)の取り込みが容易となる。
【0054】
図1(c)は、実施形態の半導体発光装置のさらに他の具体例の模式断面図である。
図4(a)及び(b)は、図1(c)の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【0055】
図4(a)に示すように、ガラス材32に蛍光体31を分散させたシート状の蛍光体層30を形成した後、蛍光体層30の表面に凹凸30aを形成する。例えば、ガラス材32をエッチングして蛍光体層30の表面に蛍光体31を露出させ凹凸30aを形成することができる。エッチングによりガラス材32が後退して凹部となり、蛍光体31が凸部として露出する。
【0056】
その後、図4(b)に示すように、発光素子3の凹凸面15a上に第1透明無機層19aを形成し、一方、蛍光体層30の凹凸面30aに第2透明無機層19bを形成する。第2透明無機層19bは、蛍光体層30の凹凸を埋める。
【0057】
また、蛍光体層30および第2透明無機層19bは、別のガラス基板の表面に凹凸を形成しておき、その面に蛍光体層30を溶融塗布し、そのガラス基板を研磨により薄層化して第2透明無機層19bとすることでも同様な構成とすることができる。更に、上記のガラス基板を薄層化して第2透明無機層19bとする場合、その表面に更に第1透明無機層19aと同じ材料の透明無機層を設けておいてもよい。
【0058】
第1透明無機層19aの表面および第2透明無機層19bの表面は、平滑化される。そして、第1透明無機層19aの平滑面と第2透明無機層19bの平滑面どうしを貼り合わせ、図1(c)に示す半導体発光装置が得られる。したがって、発光素子3の凹凸面15aと蛍光体層30の凹凸面30aとの間に、第1透明無機層19aと第2透明無機層19bとが一体となった透明無機層19が設けられている。
【0059】
この構造においても、同じ材料の第1透明無機層19aと第2透明無機層19bとを貼り合わせる場合、接着強度を高くできる。また、第1透明無機層19aと第2透明無機層19bを異なる材料とする場合、第2透明無機層19bの屈折率を第1透明無機層19aの屈折率より高く、ガラス材32の屈折率より低く設定することで蛍光体層30への発光層13の放射光(励起光)の取り込みが容易となる。
【0060】
また、透明無機層19と蛍光体層30との界面(透明無機層19の蛍光体層30側の面)に凹凸が形成されているため、透明無機層19から蛍光体層30のガラス材32への光取り込み効率を向上できる。
【0061】
また、図2(a)及び(b)に示すように、リソグラフィーで形成したマスクを使ったエッチングにより、半導体層15に凹凸面15aを形成してもよい。また、図2(c)に示すように、リソグラフィーで形成したマスクを使ったエッチングにより、蛍光体層30にも凹凸面30aを形成してもよい。この場合、所望の深さ、ピッチ、幅の凹凸を形成することができ、光学設計が容易になる。
【0062】
実施形態において、蛍光体31としては、例えば、YAl12、BaSiO:Eu2+、SrBaSiO:Eu2+などの酸化物系蛍光体、ZnS:(Cu,Al3+)、SrS:Eu2+、CaS:Eu2+、SrGa:Eu2+などの硫化物系蛍光体、YS:Eu3+などの酸硫化物系蛍光体、M(POCl:Eu2+(MはSr、Ca、BaまたはMg)などのハロゲン化物系蛍光体、BaMgAl1017:(Eu2+,Mn2+)、SrAl:Eu2+などのアルミン酸塩系蛍光体などを用いることができる。
【0063】
また、蛍光体31として、例えば、化学式:Ca8−xEuMg1−yMn(SiOCl(0<x≦8、0≦y≦1)で表され、カルシウムマグネシウムクロロシリケートにEuを添加したものを用いることができる。マンガン(Mn)の比率yは、0≦y≦0.2が望ましい。
【0064】
また、蛍光体31として、例えば、化学式(Sr1−x−yBaEu(Si1−zGe(0<x≦0.1、0≦y≦1、0≦z≦0.1)で表されるストロンチウムシリケート系蛍光体を用いることができる。
【0065】
また、蛍光体31として、例えば、化学式:(M1−x,Ra1AlSib1c1d1で表わされるサイアロン系蛍光体を用いることができる。ここで、Mは、Si及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、CaもしくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、例えば、Euが望ましい。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。
0<x≦1、
0.6<a1<0.95、
2<b1<3.9、
0.25<c1<0.45、
4<d1<5.7。
【0066】
また、蛍光体31として、例えば、化学式:(M1−x,Ra2AlSib2c2d2で表わされるサイアロン系蛍光体を用いることができる。ここで、Mは、Si及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、例えば、Euが望ましい。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす。
0<x≦1、
0.93<a2<1.3、
4.0<b2<5.8、
0.6<c2<1、6<d2<11。
【0067】
尚、蛍光体31は、上記した蛍光体材料以外の蛍光体材料も含め、単一の蛍光体材料を用いるだけでなく、複数種類の蛍光体材料の混合物であっても構わないことは述べるまでもないことである。
【0068】
次に、実施形態の半導体発光装置のさらに詳細な具体例について説明する。
【0069】
図5は、実施形態の半導体発光装置101の模式断面図である。
図6(a)は、半導体発光装置101における一部要素の平面レイアウトの一例を示す模式平面図である。図5は、図6(a)におけるA−A’断面に対応する。
図6(b)は、半導体発光装置101の実装面(図5の下面)の模式平面図である。
【0070】
半導体発光装置101は、支持体100と、蛍光体層30と、支持体100と蛍光体層30との間に設けられ、半導体層15を含む発光素子4と、を有する。
【0071】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。また、第1層11は、凹凸面15aを有する。
【0072】
半導体層15は、発光層13及び第2層12を含む部分15dと、発光層13及び第2層12を含まない部分15eとを有する。部分15dは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されている部分である。部分15eは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されていない部分である。
【0073】
発光層13を含む部分15dの第2層12の表面に、p側電極16が設けられている。発光層13を含まない部分15eの第1層11の表面に、n側電極17が設けられている。p側電極16およびn側電極17は、凹凸面15aの反対側に設けられている。
【0074】
図6(a)に示す例では、発光層13を含まない部分15eが発光層13を含む部分15dを囲んでおり、n側電極17がp側電極16を囲んでいる。
【0075】
発光層13を含む部分15dの面積は、発光層13を含まない部分15eの面積よりも広い。また、発光層13を含む部分15dの表面に設けられたp側電極16の面積は、発光層13を含まない部分15eの表面に設けられたn側電極17の面積よりも広い。これにより、広い発光面が得られ、光出力を高くできる。
【0076】
図6(a)に示すように、n側電極17は例えば4本の直線部を有し、そのうちの1本の直線部には、その直線部の幅方向に突出したコンタクト部17cが設けられている。そのコンタクト部17cの表面には、図5に示すようにn側配線層22のビア22aが接続される。
【0077】
半導体層15における凹凸面15aの反対側には、支持体100が設けられている。半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子4は、支持体100によって支持されている。
【0078】
半導体層15の凹凸面15a側には、蛍光体層30が設けられている。前述したように、蛍光体層30は、ガラス材32と、ガラス材32中に分散された蛍光体31とを有する。
【0079】
半導体層15の凹凸面15aと、蛍光体層30との間には、透明無機層19が設けられている。半導体層15、透明無機層19、および蛍光体層30の積層部分の構造は、前述した図1(a)〜(c)および図2(a)〜(c)のいずれかの構造が適用される。
【0080】
半導体層15における凹凸面15aの反対側(第2面側)、p側電極16およびn側電極17は、絶縁膜18に覆われている。絶縁膜18は、例えば、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜である。絶縁膜18は、発光層13の側面及び第2層12の側面にも設けられ、発光層13の側面及び第2層12の側面を覆っている。絶縁膜18は、第1層11における凹凸面15aから続く側面15cにも設けられ、その側面15cを覆っている。
【0081】
絶縁膜18上には、p側配線層21とn側配線層22とが互いに分離して設けられている。絶縁膜18には、p側電極16に通じる複数の第1開口と、n側電極17のコンタクト部17cに通じる第2開口が形成される。なお、第1開口は、より大きな1つの開口でも良い。
【0082】
p側配線層21は、絶縁膜18上および第1開口の内部に設けられている。p側配線層21は、第1開口内に設けられたビア21aを介してp側電極16と電気的に接続されている。
【0083】
n側配線層22は、絶縁膜18上および第2開口の内部に設けられている。n側配線層22は、第2開口内に設けられたビア22aを介してn側電極17のコンタクト部17cと電気的に接続されている。
【0084】
p側配線層21及びn側配線層22が、半導体層15の第2面側の領域の大部分を占めて絶縁膜18上に広がっている。p側配線層21は、複数のビア21aを介してp側電極16と接続している。
【0085】
また、半導体層15の側面15cを、絶縁膜18を介して反射膜51が覆っている。反射膜51は側面15cに接しておらず、半導体層15に対して電気的に接続されていない。反射膜51は、p側配線層21及びn側配線層22に対して分離している。反射膜51は、発光層13の放射光及び蛍光体31の放射光に対して反射性を有する金属膜である。
【0086】
反射膜51、p側配線層21およびn側配線層22は、共通の金属膜上に例えばめっき法により同時に形成される。反射膜51、p側配線層21およびn側配線層22は、例えば銅膜を含む。その銅膜は、絶縁膜18上に形成された金属膜上にめっき法で形成される。
【0087】
p側配線層21及びn側配線層22の下地となる金属膜は、例えばアルミニウム膜を含む。発光層13の発光光に対して高い反射率を有するアルミニウム膜が、半導体層15の第2面側の大部分の領域に広がって形成されている。これにより、蛍光体層30側に向かう光の量を増大できる。
【0088】
p側配線層21における半導体層15とは反対側の面にはp側金属ピラー23が設けられている。p側配線部41は、p側配線層21及びp側金属ピラー23を含む。
【0089】
n側配線層22における半導体層15とは反対側の面にはn側金属ピラー24が設けられている。n側配線部43は、n側配線層22及びn側金属ピラー24を含む。
【0090】
p側配線部41とn側配線部43との間には、絶縁層として樹脂層25が設けられている。樹脂層25は、p側配線部41の側面およびn側配線部43の側面に設けられている。
【0091】
樹脂層25は、p側金属ピラー23の側面とn側金属ピラー24の側面に接するように、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に設けられている。p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に、樹脂層25が充填されている。
【0092】
樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間、p側配線層21と反射膜51との間、およびn側配線層22と反射膜51との間に設けられている。樹脂層25は、p側金属ピラー23の周囲およびn側金属ピラー24の周囲に設けられ、p側金属ピラー23の側面およびn側金属ピラー24の側面を覆っている。
【0093】
また、樹脂層25は、半導体層15の側面15cに隣接する領域(チップ外周部)にも設けられ、反射膜51を覆っている。
【0094】
p側金属ピラー23におけるp側配線層21とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側外部端子23aとして機能する。n側金属ピラー24におけるn側配線層22とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側外部端子24aとして機能する。p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のパッドに接合される。
【0095】
図6(b)に示すように、p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、樹脂層25の同じ面内で離間して並んで形成されている。p側外部端子23aは例えば矩形状に形成され、n側外部端子24aは、p側外部端子23aの矩形と同じサイズの矩形における2つの角を切り欠いた形状に形成されている。これにより、外部端子の極性を判別できる。あるいは、n側外部端子24aを矩形状にし、p側外部端子23aを矩形の角を切り欠いた形状にしてもよい。
【0096】
p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、絶縁膜18上におけるp側配線層21とn側配線層22との間隔よりも広い。p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、実装時のはんだの広がりよりも大きくする。これにより、はんだを通じた、p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間の短絡を防ぐことができる。
【0097】
これに対し、p側配線層21とn側配線層22との間隔は、プロセス上の限界まで狭くすることができる。このため、p側配線層21の面積、およびp側配線層21とp側金属ピラー23との接触面積の拡大を図れる。これにより、発光層13の熱の放散を促進できる。
【0098】
また、複数のビア21aを通じてp側配線層21がp側電極16と接する面積は、ビア22aを通じてn側配線層22がn側電極17と接する面積よりも広い。これにより、発光層13に流れる電流の分布を均一化できる。
【0099】
絶縁膜18上で広がるn側配線層22の面積は、n側電極17の面積よりも広くできる。そして、n側配線層22の上に設けられるn側金属ピラー24の面積(n側外部端子24aの面積)をn側電極17よりも広くできる。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側外部端子24aの面積を確保しつつ、n側電極17の面積を小さくすることが可能となる。すなわち、半導体層15における発光層13を含まない部分15eの面積を縮小し、発光層13を含む部分15dの面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0100】
第1層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2層12は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0101】
p側金属ピラー23の厚さ(p側配線層21とp側外部端子23aとを結ぶ方向の厚さ)は、p側配線層21の厚さよりも厚い。n側金属ピラー24の厚さ(n側配線層22とn側外部端子24aとを結ぶ方向の厚さ)は、n側配線層22の厚さよりも厚い。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25のそれぞれの厚さは、半導体層15よりも厚い。
【0102】
金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は、1以上であっても良いし、1より小さくても良い。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズより厚くても良いし、薄くても良い。
【0103】
p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25を含む支持体100の厚さは、半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子(LEDチップ)4の厚さよりも厚い。
【0104】
半導体層15は、基板上にエピタキシャル成長法により形成される。図5に示す例では、基板は支持体100を形成した後に除去され、半導体層15は凹凸面15a側に基板を含まない。半導体層15は、剛直な板状の基板にではなく、金属ピラー23、24と樹脂層25との複合体からなる支持体100によって支持されている。
【0105】
p側配線部41及びn側配線部43の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0106】
樹脂層25は、p側金属ピラー23およびn側金属ピラー24を補強する。樹脂層25は、実装基板と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えば、エポキシ樹脂を主に含む樹脂、シリコーン樹脂を主に含む樹脂、フッ素樹脂を主に含む樹脂を挙げることができる。
【0107】
また、樹脂層25におけるベースとなる樹脂に光吸収剤、光反射剤、光散乱剤などが含まれ、樹脂層25は発光層13の光に対して遮光性または反射性を有することができる。これにより、支持体100の側面及び実装面側からの光漏れを抑制することができる。
【0108】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側外部端子23aおよびn側外部端子24aを実装基板のパッドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、その応力を吸収し緩和する。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層25を支持体100の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0109】
反射膜51は、p側配線部41及びn側配線部43に対して分離している。このため、実装時にp側金属ピラー23及びn側金属ピラー24に加わる応力は、反射膜51には伝達されない。したがって、反射膜51の剥離を抑制することができる。また、半導体層15の側面15c側に加わる応力を抑制することができる。
【0110】
基板を除去し、凹凸面15aを形成した後、凹凸面15a上に透明無機層19が形成される。透明無機層19は、チップ外周部の絶縁膜18上にも形成される。透明無機層19の表面は平滑化され、その透明無機層19の平滑面に対して蛍光体層30が貼り合わされる。
【0111】
蛍光体層30は、半導体層15の第2面側、金属ピラー23、24の周囲、および支持体100の側面にまわりこんで形成されていない。蛍光体層30の側面と、支持体100の側面(樹脂層25の側面)とが揃っている。
【0112】
すなわち、図5に示す半導体発光装置101は、チップサイズパッケージ構造の非常に小型の半導体発光装置である。
【0113】
光を外部に取り出さない実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。第2面側に広がるp側配線層21、n側配線層22、および厚い金属ピラー23、24を介して、発光層13の熱を実装基板側に放散させることができ、小型でありながらも放熱性に優れている。
【0114】
一般的なフリップチップ実装では、LEDチップを実装基板にバンプなどを介して実装した後に、チップ全体を覆うように蛍光体層が形成される。あるいは、バンプ間に樹脂がアンダーフィルされる。
【0115】
これに対して実施形態によれば、実装前の状態で、p側金属ピラー23の周囲及びn側金属ピラー24の周囲には、蛍光体層30と異なる樹脂層25が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層25が設けられているため、実装後のアンダーフィルが不要となる。
【0116】
凹凸面(第1面)15a側には、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の蛍光体層30が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層25には、シリカ粒子などのフィラーを高密度充填し、支持体として適切な硬さに調整することができる。
【0117】
発光層13から凹凸面15a側に放射された光は透明無機層19を介して蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体31を励起し、発光層13の光と、蛍光体31の光との混合光として例えば白色光が擬似的に得られる。
【0118】
ここで、凹凸面15a上に基板があると、蛍光体層30に入射せずに、基板の側面から外部に漏れる光が生じる。すなわち、基板の側面から発光層13の光の色みの強い光が漏れ、蛍光体層30を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える現象など、色割れや色ムラの原因になり得る。
【0119】
これに対して、実施形態によれば、凹凸面15aと蛍光体層30との間には基板がないため、基板側面から発光層13の光の色みが強い光が漏れることによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0120】
また、第1層11の側面15cに、絶縁膜18を介して反射膜51が設けられている。発光層13から第1層11の側面15cに向かった光は、反射膜51で反射し、外部に漏れない。このため、基板が凹凸面15a側にない特徴とあいまって、半導体発光装置の側面側からの光漏れによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0121】
反射膜51と、第1層11の側面15cとの間に設けられた絶縁膜18は、反射膜51に含まれる金属の第1層11への拡散を防止する。これにより、第1層11に含まれる例えばGaNの金属汚染を防ぐことができ、第1層11の劣化を防ぐことができる。
【0122】
次に、図7〜9を参照して、実施形態の半導体発光装置のさらに他の具体例について説明する。
【0123】
図7は、実施形態の半導体発光装置102の模式断面図である。
図8は、実施形態の半導体発光装置102の実装面側の模式平面図であり、図7の下面図に対応する。
【0124】
半導体発光装置102は、ウェーハレベルで形成されるチップサイズの発光素子(LEDチップ)5と、発光素子5の周囲に設けられた絶縁部材127と、実装面側に設けられた金属層171、172とを有する。
【0125】
発光素子5は、電極7、8と、第1配線層(オンチップ配線層)116、117と、光学層30、133と、第1配線層116、117と光学層30、133との間に設けられた半導体層15とを有する。
【0126】
図9は、半導体層15の拡大模式断面図である。
【0127】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。
【0128】
半導体層15は、第2層12および発光層13の積層膜を有する領域15dと、発光層13および第2層12で覆われていない第1層11の第2面11aを有する領域15eとを有する。
【0129】
例えば、領域15eは発光領域15dに囲まれた島状に形成され、また、領域15eは発光領域15dの外周側に、発光領域15dを連続して囲むように形成されている。発光領域15dの面積は、領域15eの面積よりも広い。
【0130】
第1層11において第2面11aの反対側には、発光層13および第2層12で覆われていない凹凸面(第1面)15aが形成されている。また、半導体層15は、凹凸面15aに続く側面15cを有する。
【0131】
第1層11の第2面11aに、図7に示すn側電極8が設けられ、第2層12の表面に、図7に示すp側電極7が設けられている。p側電極7およびn側電極8は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。
【0132】
p側電極7の面積はn側電極8の面積よりも広い。p側電極7と第2層12との接触面積は、n側電極7と第1層11との接触面積よりも広い。
【0133】
半導体層15の凹凸面15a以外の面には絶縁膜114が設けられている。絶縁膜114は、無機膜であり、例えばシリコン酸化膜である。
【0134】
絶縁膜114には、p側電極7に通じるp側開口と、n側電極8に通じるn側開口が形成されている。例えば2つのn側開口が互いに離れて形成されている。それら2つのn側開口の間のp側電極7の表面は、絶縁膜114で覆われている。
【0135】
第1層11の側面15c、第2層12の側面、および発光層13の側面は、絶縁膜114で覆われている。
【0136】
半導体層15の凹凸面15aの反対側には、第1p側配線層116と、第1n側配線層117が設けられている。
【0137】
第1p側配線層116は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。第1p側配線層116は、p側開口内にも設けられ、p側電極7に接している。第1p側配線層116は、p側開口内に一体に形成されたコンタクト部116aを介してp側電極7と接続されている。第1p側配線層116は、第1層11に接していない。
【0138】
第1n側配線層117は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。第1n側配線層117は、n側開口内にも設けられ、n側電極8に接している。第1n側配線層117は、n側開口内に一体に形成されたコンタクト部117aを介してn側電極8と接続されている。
【0139】
第1n側配線層117は、例えば、2つの島状のn側電極8を結ぶ方向に延びるラインパターン状に形成されている。第1n側配線層117の2つのn側電極8の間の部分とp側電極7との間、および第1n側配線層117の2つのn側電極8の間の部分と第2層12との間には、絶縁膜114が設けられ、第1n側配線層117はp側電極7および第2層12に接していない。
【0140】
p側電極7は、第2層12と第1p側配線層116との間に設けられている。例えば、p側電極7は、発光層13および蛍光体31が発する光に対して高い反射率をもつ銀(Ag)膜を含む。
【0141】
n側電極8は、第1層11と、第1n側配線層117のコンタクト部117aとの間に設けられている。例えば、n側電極8は、発光層13および蛍光体31が発する光に対して高い反射率をもつアルミニウム(Al)膜を含む。
【0142】
第1p側配線層116および第1n側配線層117の表面に、絶縁膜118が設けられている。絶縁膜118は、第1p側配線層116と第1n側配線層117との間にも設けられている。絶縁膜118は、例えば、無機膜であり、シリコン酸化膜等である。
【0143】
絶縁膜118には、第1p側配線層116の一部(p側パッド116b)を露出させるp側開口と、第1n側配線層117の一部(n側パッド117b)を露出させるn側開口が形成されている。
【0144】
p側パッド116bの面積は、n側パッド117bの面積よりも大きい。n側パッド117bの面積は、第1n側配線層117とn側電極8とのコンタクト面積よりも広い。
【0145】
半導体層15の凹凸面15a上には、蛍光体層30が設けられ、さらに、その蛍光体層30の上に透明層(第1透明層)133が設けられている。蛍光体層30は、前述したように、ガラス材32と、そのガラス材32中に分散された蛍光体31とを有する。
【0146】
凹凸面15aと蛍光体層30との間には、透明無機層19が設けられている。図7の半導体発光装置102においても、半導体層15、透明無機層19、および蛍光体層30の積層部分の構造は、前述した図1(a)〜(c)および図2(a)〜(c)のいずれかの構造が適用される。
【0147】
透明無機層19および蛍光体層30は、チップ外領域の絶縁膜114上にも設けられている。
【0148】
蛍光体層30上の透明層133は、蛍光体粒子を含まない透明ガラスまたは透明樹脂を用いる。あるいは、透明層133を光散乱層として機能させる場合、透明層133は、発光層13の放射光を散乱させる複数の粒子状の散乱材(例えばシリコン酸化物、チタン化合物、酸化亜鉛など)と、発光層13の放射光を透過させる結合材(例えば透明樹脂または透明ガラス)とを含む。
【0149】
半導体層15の側面よりも外側のチップ外領域には、絶縁部材127が設けられている。絶縁部材127は、半導体層15よりも厚い。絶縁部材127は、絶縁膜114を介して半導体層15の側面を覆っている。
【0150】
また、絶縁部材127は、光学層(蛍光体層30および透明層33)の側面の外側にも設けられ、光学層の側面を覆っている。
【0151】
絶縁部材127は、半導体層15、電極7、8、第1配線層(オンチップ配線層)116、117、および蛍光体層30を含む発光素子5の周囲に設けられ、発光素子5を支持している。
【0152】
絶縁部材127の上面127aと透明層133の上面は平坦面を形成している。絶縁部材127の裏面には、絶縁膜126が設けられている。
【0153】
第1p側配線層116の第1p側パッド116b上には、第2p側配線層121が設けられている。第2p側配線層121は、第1p側配線層116の第1p側パッド116bに接するとともに、チップ外領域に延びている。第2p側配線層121のチップ外領域に延出した部分は、絶縁膜126を介して絶縁部材127に支持されている。
【0154】
また、第2p側配線層121の一部は、絶縁膜118を介して、第1n側配線層117に重なる領域にも延びている。
【0155】
第1n側配線層117の第1n側パッド117b上には、第2n側配線層122が設けられている。第2n側配線層122は、第1n側配線層117の第1n側パッド117bに接するとともに、チップ外領域に延びている。第2n側配線層122のチップ外領域に延出した部分は、絶縁膜126を介して絶縁部材127に支持されている。
【0156】
第2p側配線層121と第2n側配線層122の表面には、絶縁膜119が設けられている。絶縁膜119は、例えば、無機膜であり、シリコン酸化膜等である。
【0157】
絶縁膜119には、第2p側配線層121の第2p側パッド121aを露出させるp側開口と、第2n側配線層122の第2n側パッド122aを露出させるn側開口が形成される。
【0158】
第2p側配線層121の第2p側パッド121a上には、p側外部接続電極123が設けられている。p側外部接続電極123は、第2p側配線層121の第2p側パッド121aに接して、第2p側配線層121上に設けられている。
【0159】
また、p側外部接続電極123の一部は、絶縁膜118、119を介して、第1n側配線層117に重なる領域、および絶縁膜119を介して第2n側配線層122に重なる領域にも設けられている。
【0160】
p側外部接続電極123は、半導体層15に重なるチップ領域、およびチップ外領域に広がっている。p側外部接続電極123は、第1p側配線層116よりも厚く、第2p側配線層121よりも厚い。
【0161】
第2n側配線層122の第2n側パッド122a上には、n側外部接続電極124が設けられている。n側外部接続電極124は、チップ外領域に配置され、第2n側配線層122の第2n側パッド122aに接している。
【0162】
n側外部接続電極124は、第1n側配線層117よりも厚く、第2n側配線層122よりも厚い。
【0163】
p側外部接続電極123とn側外部接続電極124との間には、樹脂層(絶縁層)125が設けられている。樹脂層125は、p側外部接続電極123の側面とn側外部接続電極124の側面に接して、p側外部接続電極123とn側外部接続電極124との間に充填されている。
【0164】
また、樹脂層125は、p側外部接続電極123の周囲およびn側外部接続電極124の周囲に設けられ、p側外部接続電極123の側面およびn側外部接続電極124の側面を覆っている。
【0165】
樹脂層125は、p側外部接続電極123およびn側外部接続電極124の機械的強度を高める。また、樹脂層125は、実装時にはんだのぬれ広がりを防ぐソルダレジストとして機能する。
【0166】
p側外部接続電極123の下面は、樹脂層125から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側実装面(p側外部端子)123aとして機能する。n側外部接続電極124の下面は、樹脂層125から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側実装面(n側外部端子)124aとして機能する。p側実装面123aおよびn側実装面124aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のランドパターンに接合される。
【0167】
p側実装面123aおよびn側実装面124aを、樹脂層125の表面よりも突出させることが望ましい。これにより、実装時の接続部半田形状が安定化し、実装の信頼性を向上させることができる。
【0168】
図8は、p側実装面123aとn側実装面124aの平面レイアウトの一例を表す。
【0169】
p側実装面123aとn側実装面124aは、半導体層15の平面領域を2等分する中心線cに対して非対称に配置され、p側実装面123aは1n側実装面24aよりも広い。
【0170】
p側実装面123aとn側実装面124aとの間隔は、実装時にp側実装面123aとn側実装面124aとの間をはんだがブリッジしない間隔に設定される。
【0171】
半導体層15におけるn側の電極コンタクト面(第1層11の第2面11a)は、第1n側配線層117と第2n側配線層122によって、チップ外領域も含むより広い領域に再配置されている。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側実装面124aの面積を確保しつつ、半導体層15におけるn側電極面の面積を小さくすることが可能となる。したがって、半導体層15における発光層13を含まない領域15eの面積を縮小し、発光層13を含む領域15dの面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0172】
実装面側にp側金属層171とn側金属層172が設けられている。p側金属層171は、第1p側配線層116、第2p側配線層121およびp側外部接続電極123を含む。n側金属層172は、第1n側配線層117、第2n側配線層122およびn側外部接続電極124を含む。
【0173】
半導体層15は、金属層171、172と、樹脂層125との複合体からなる支持体の上に支持されている。また、半導体層15は、半導体層15よりも厚い例えば樹脂層である絶縁部材127によって側面側から支えられている。
【0174】
金属層171、172の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0175】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側実装面123aおよびn側実装面124aを実装基板のランドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側外部接続電極123、n側外部接続電極124および樹脂層125を適切な厚さ(高さ)に形成することで、p側外部接続電極123、n側外部接続電極124および樹脂層125が上記応力を吸収し緩和することができる。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層125を実装面側に支持体の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0176】
金属層171、172は例えば高い熱伝導率を持つ銅を主成分として含み、発光層13に重なる領域に高熱伝導体が広い面積で広がっている。発光層13で発生した熱は、金属層171、172を通じて、チップ下方に形成される短いパスで実装基板へと放熱される。
【0177】
特に、半導体層15の発光領域15dと接続されたp側金属層171のp側実装面123aは、図8に示す平面視で半導体層15の平面領域のほとんどに重なっているため、p側金属層171を通じて実装基板に高効率で放熱させることができる。
【0178】
また、p側実装面123aはチップ外領域にも拡張している。したがって、p側実装面123aに接合されるはんだの平面サイズも大きくでき、はんだを介した実装基板への放熱性を向上できる。
【0179】
また、第2n側配線層122はチップ外領域に延びている。このため、チップに重なる領域の大部分を占めてレイアウトされたp側実装面123aの制約を受けずに、チップ外領域にn側実装面124aを配置することができる。n側実装面124aをチップ外領域に配置することで、n側実装面124aをチップ領域範囲内でのみレイアウトするよりも面積を広くできる。
【0180】
したがって、n側についても、n側実装面124aに接合されるはんだの平面サイズを大きくでき、はんだを介した実装基板への放熱性を向上できる。
【0181】
発光層13から凹凸面15a側に放射された光は、透明無機層19を介して蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体31を励起し、発光層13の光と、蛍光体31の光との混合光として例えば白色光が得られる。
【0182】
発光層13から実装面側に放射された光は、p側電極7及びn側電極8によって反射され、上方の蛍光体層30側に向かう。
【0183】
蛍光体層30上には透明層(第1透明層)133が設けられ、その透明層133上およびチップ外領域の絶縁部材127上には、透明層(第2透明層)134が設けられている。
【0184】
透明層134は、透明ガラスもしくは透明樹脂とし、透明ガラスの場合は透明樹脂からなる接着層が挿入されていても構わない。また、発光層13の放射光を散乱させる複数の粒子状の散乱材(例えばシリコン酸化物、チタン化合物、酸化亜鉛など)と、発光層13の放射光を透過させる結合材(例えば透明樹脂または透明ガラス)とを含むことでも構わない。
【0185】
後者の場合、透明層134は光散乱層として機能する。その光散乱層である透明層134の平面サイズは、蛍光体層30の平面サイズ、および透明層133の平面サイズよりも大きい。すなわち、透明層134の平面サイズは、発光素子5の平面サイズよりも大きい。したがって、半導体発光装置102から外部へと発せられる光の範囲を広げることができ、広角の配光特性が可能である。
【0186】
絶縁部材127の少なくとも半導体層15の側面に近接する部分の表面は、発光層13の放射光に対して反射性を有する。また、絶縁部材127の蛍光体層30の側面に近接する部分および透明層133の側面に近接する部分は、発光層13の放射光および蛍光体31の放射光に対して反射性を有する。さらに、絶縁部材127の透明層134との境界付近が発光層13の放射光および蛍光体31の放射光に対して反射性を有する。
【0187】
例えば、絶縁部材127は、発光層13の放射光および蛍光体31の放射光に対する反射率が50%以上となる樹脂層である。
【0188】
したがって、発光素子5の側面からの放射光、および透明層134で散乱されて絶縁部材127側に向かう光を、絶縁部材127で反射させることができる。このため、絶縁部材127での光の吸収損失を防いで、透明層134を通じた外部への光取り出し効率を高めることができる。
【0189】
半導体層15の凹凸面15a上に透明無機層19が形成され、その透明無機層19の表面は平滑化される。その透明無機層19の平滑面に、蛍光体層30が貼り合わされる。蛍光体層30の平面サイズは、半導体層15の平面サイズとほぼ同じ、または半導体層15の平面サイズよりもわずかに大きい。
【0190】
蛍光体層30は、半導体層15の側面、および実装面側にまわりこんで形成されていない。すなわち、光を外部に取り出さないチップ側面側および実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。
【0191】
また、p側外部接続電極123の周囲およびn側外部接続電極124の周囲には、蛍光体層30と異なる樹脂層125が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層125が設けられているため、半導体発光装置102を実装基板に実装した後のアンダーフィルが不要となる。
【0192】
半導体層15の凹凸面15a側には、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の蛍光体層30が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層125は、ベースとなる樹脂にシリカ粒子などのフィラーが高密度充填された構造を有し、支持体として適切な硬さに調整されている。
【0193】
図7に示す半導体発光装置102によれば、半導体層15、電極7、8、オンチップ配線層116、117、および蛍光体層30はウェーハレベルで一括形成して低コストのチップサイズ発光素子5を実現するとともに、外部端子(実装面)123a、124aをチップ外領域に拡張させて、放熱性を高くすることができる。したがって、安価で高信頼性の半導体発光装置102を提供することができる。
【0194】
図10は、他の実施形態の半導体発光装置103の模式断面図である。
【0195】
半導体発光装置103は、支持基板10と、蛍光体層30と、支持基板10と蛍光体層30との間に設けられた半導体層15と、を有する。
【0196】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。また、第1層11は、凹凸面15aを有する。
【0197】
半導体層15における凹凸面15aの反対側には、金属層(ボンディングメタル)63を介して支持基板10が設けられている。支持基板10における金属層63が設けられた面の反対側の面には、金属層(バックメタル)64が設けられている。
【0198】
半導体層15の凹凸面15a側には、蛍光体層30が設けられている。前述したように、蛍光体層30は、ガラス材32と、ガラス材32中に分散された蛍光体31とを有する。
【0199】
半導体層15の凹凸面15aと、蛍光体層30との間には、透明無機層19が設けられている。半導体層15、透明無機層19、および蛍光体層30の積層部分の構造は、前述した図1(a)〜(c)および図2(a)〜(c)のいずれかの構造が適用される。
【0200】
半導体層15と金属層63との間にはp側電極61が設けられている。p側電極61は第2層12に接している。p側電極61の一部は半導体層15の側面よりも外側に延出し、その延出部の上にp側パッド62が設けられている。第2層12は、p側電極61を介してp側パッド62と電気的に接続されている。
【0201】
p側電極61と金属層63との間には絶縁膜65が設けられ、p側電極61と金属層63との間は絶縁されている。
【0202】
金属層63上には、複数のn側電極63aが金属層63と一体に設けられている。n側電極63aは、p側電極61、第2層12および発光層13を貫通して第1層11に達し、第1層11と電気的に接続されている。n側電極63aと発光層13との間、n側電極63aと第2層12との間、およびn側電極63aとp側電極61との間には、絶縁膜65が設けられている。
【0203】
半導体層15は前述した単結晶基板上に成長される。p側電極61、n側電極63aなどを形成した後、金属層63を介して半導体層15は支持基板10に貼り合わされる。支持基板10は導電性を有し、例えばシリコン基板である。したがって、n側電極63a、金属層63および支持基板10を介して、第1層11は金属層(裏面電極)64と電気的に接続されている。
【0204】
半導体層15を支持基板10に貼り合わせた後、単結晶基板が除去され、第1層11の表面が露出する。その第1層11の表面に凹凸面15aが形成された後、透明無機層19が形成され、透明無機層19を介して蛍光体層30が半導体層15に貼り合わされる。
【0205】
図11(a)および(b)は、さらに他の実施形態の半導体発光装置の一部の拡大模式断面図である。図11(a)は上記図1(a)の断面に対応し、図11(b)は上記図2(a)の断面に対応する。
【0206】
図11(a)および(b)に示す実施形態によれば、無機層19と蛍光体層30との間に、無機材料の蛍光反射膜20が設けられている。
もしくは、図11(c)に示すように、蛍光反射膜20は第1無機層19aと第2無機層19bとの間に設けられている。例えば、第1無機層19aおよび第2無機層19bは同じ材料である。すなわち、蛍光反射膜20は無機層中に設けられている。なお、第1無機層19aおよび第2無機層19bは異なる材料でもよい。
【0207】
蛍光反射膜20は、発光素子3の発光波長に対する反射率よりも、蛍光体31の蛍光波長に対して高い反射率を有し、蛍光体出力光の発光素子3側に向かう成分を反射する。蛍光反射膜20は、発光素子3の励起光に対しては相対的に低反射で、蛍光体31の出力光に対して相対的に高反射となるように機能する。
【0208】
このような蛍光反射膜20は、発光素子3の励起光の取り込み効率を大きく低減させることなく、発光素子3側に戻される蛍光体出力光の吸収や散乱による損失割合を低減する。これは、外部から見た場合の発光効率を高くする。
【0209】
ここで、無機層19の屈折率をn1、無機層19の厚さをh1、蛍光反射膜20の屈折率をn2、蛍光反射膜20の厚さをh2、蛍光体層30の等価屈折率をn3、蛍光体層30の厚さをh3とする。
蛍光反射膜20が第1無機層19aと第2無機層19bとの間に設けられている場合、蛍光反射膜20と蛍光体層30との間の第2無機層19bの屈折率と厚さを、それぞれ、n3、h3とする。
無機層19の厚さh1と、蛍光体層30(もしくは第2無機層19b)の厚さh3が、励起光波長(発光素子3の発光波長)λ0より十分大きくなるように設定される。
【0210】
例えば、n2<(n1n3)1/2のときは、n2h2=λ0(1+2m)/4(m=0,1,2,3...)となるように設定する。
n2>(n1n3)1/2のときは、n2h2=λ0(1+m)/2(m=0,1,2,3...)となるように設定する。
【0211】
例えば、n2<(n1n3)1/2のときは、n2h2=λ0/4、λ0(3/4)、λ0(5/4)...、となるように蛍光反射膜20の厚さh2を設定する。
n2>(n1n3)1/2のときは、n2h2=λ0/2、λ0、λ0(3/2)...、となるように蛍光反射膜20の厚さh2を設定する。
【0212】
図12(a)および(b)に、蛍光反射膜20の反射率の波長依存特性例を示す。
【0213】
図12(a)は以下の構成の特性を示す。
蛍光体層30は、AlとSiの混合物ベースのガラス材32と、そのガラス材32に分散された蛍光体31とを有し、蛍光体層30の等価屈折率n3は約1.9である。蛍光反射膜20は、屈折率n2が約2.7で、厚さh2が85nmの酸化チタン(TiO)膜である。無機層19は、屈折率n1が約1.5のSiO層である。
【0214】
図12(b)は以下の構成の特性を示す。
蛍光体層30は、SiOベースのガラス材32と、そのガラス材32に分散された蛍光体31とを有し、蛍光体層30の等価屈折率n3は約1.5である。蛍光反射膜20は、屈折率n2が約2.0で、厚さh2が110nmの窒化シリコン(Si)膜である。無機層19は、屈折率n1が約1.5のSiO層である。
【0215】
蛍光体層30の等価屈折率n3が約1.9の場合、図12(a)に示すように、発光素子3の励起光(波長λ0=450nm)の反射率は1.6%、黄色蛍光体出力(波長560nm)の反射率は8.4%となっている。黄色蛍光体出力の反射率は、発光素子3の励起光の反射率よりも約5倍高い。
【0216】
蛍光体層30の等価屈折率n3が約1.5の場合、図12(b)に示すように、発光素子3の励起光(波長λ0=450nm)の反射率は0.006%、黄色蛍光体出力(波長560nm)の反射率は3.6%となっている。黄色蛍光体出力の反射率は、発光素子3の励起光の反射率よりも約600倍高い。
【0217】
黄色蛍光体出力は、赤色領域近傍まで発光スペクトルが広がっているものの、赤色領域の輝度が低いため演色性が低い傾向がある。
【0218】
実施形態の蛍光反射膜20によれば、図12(a)および(b)からわかるように、励起光波長から離れた波長の反射率が高い。
【0219】
図12(a)に示すように、蛍光体層30の等価屈折率n3が約1.9の場合、波長700nmの反射率は16.4%であり、黄色蛍光波長(560nm)に対して約2倍、励起光波長に対しては約10倍高い反射率となっている。
【0220】
図12(b)に示すように、蛍光体層30の等価屈折率n3が約1.5の場合、波長700nmの反射率は8.6%であり、黄色蛍光波長(560nm)に対して約2.4倍、励起光波長に対しては約1400倍高い反射率となっている。
【0221】
図12(a)または(b)の特性をもつ蛍光反射膜20により、蛍光体31の蛍光出力の発光素子3による損失成分が抑制されるほか、輝度の低い長波長の光が高反射となる効果が加わって、演色性の改善の効果も表れる。
【0222】
なお、蛍光反射膜20は、図1(b)、図1(c)、図2(b)、図2(c)、図5図7、および図10に示す構造に設けてもよい。
【0223】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0224】
3,4,5…発光素子、13…発光層、15…半導体層、15a…凹凸面、19,19a,19b…透明無機層、20…蛍光反射膜、30…蛍光体層、31…蛍光体、32…ガラス材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12