(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の農作業機として、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機(粗耕起作業機)が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、前フレーム部および後フレーム部を有する機体と、前フレーム部に設けられ前ウイングを有する複数(例えば6つ)の前作業体と、後フレーム部に設けられ後ウイングを有する複数(例えば6つ)の後作業体とを備え、各前作業体の前ウイングと各後作業体の後ウイングとが互いに同じ長さである。
【0004】
すなわち、例えば
図5に示すように、前列の各前作業体1は前ウイング1aおよび前チゼル1bを有し、後列の各後作業体2は後ウイング2aおよび後チゼル2bを有しており、前ウイング1aと後ウイング2aとが互いに同じ長さである。つまり、前後の作業体1,2の全てのウイング1a,2aが同じ長さとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の農作業機では、互いに隣り合う両前ウイング1a間に土が詰まってしまい、適切な耕耘作業ができない場合がある。
【0007】
この土詰まりの原因は、互いに隣り合う両前ウイング1a間の距離aが短く、互いに隣り合う両前ウイング1aの後端部と後チゼル2bの前端部とで作られる三角形の面積sが狭いからである。なお、
図5中の距離bは、互いに隣り合う両後ウイング2a間の距離であり、両前ウイング1a間の距離aと同じ(略同じを含む)である。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項
1記載の農作業機は、走行車の走行により前方に移動しながら耕耘作業をする農作業機であって、前フレーム部および後フレーム部を有し、前記走行車に連結される機体と、前記前フレーム部に設けられ、左右対をなす左右対称の長手板状の前ウイングを有する複数の前作業体と、前記後フレーム部に設けられ、左右対をなす左右対称の長手板状の後ウイングを有する複数の後作業体とを備え、前記前作業体の前記前ウイングは、前記後作業体の前記後ウイングよりも短く、互いに隣り合う前記両前ウイング間の距離が、互いに隣り合う前記両後ウイング間の距離よりも長いものである。
【0010】
請求項
2記載の農作業機は、請求項
1記載の農作業機において、平面視で、前ウイングの後端部と後ウイングの後端部とが、所定のラップ量をもって前後に互いに離間対向しているものである。
【0011】
請求項
3記載の農作業機は、請求項1
または2記載の農作業機において、前ウイングおよび後ウイングは、同じ深さ位置で圃場の土を切削するものである。
【0012】
請求項
4記載の農作業機は、請求項1ないし
3のいずれか一記載の農作業機において、前作業体は、前フレーム部に取り付けられた前支持アームと、この前支持アームの下端側に取り付けられ、圃場の土を切削して持ち上げる前チゼルとを有し、左右対をなす両前ウイングは、前記前チゼルの両側方部の後方で圃場の土を切削するもので、平面視でV字状をなすように配設され、後作業体は、後フレーム部に取り付けられた後支持アームと、この後支持アームの下端側に取り付けられ、圃場の土を切削して持ち上げる後チゼルとを有し、左右対をなす両後ウイングは、前記後チゼルの両側方部の後方で圃場の土を切削するもので、平面視でV字状をなすように配設されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに隣り合う両前ウイング間に土が詰まりにくく、適切な耕耘作業ができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0016】
図中の11は、農作業機で、この農作業機11は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの前進走行により圃場(水田や畑等)を進行方向である前方に移動しながら耕耘作業(粗耕起作業)をする牽引式の耕耘作業機である。
【0017】
農作業機11は、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降支持装置)に脱着可能に連結された機体12を備えている。
【0018】
機体12は、トラクタ連結部である3点連結部13を前部に有し、この3点連結部13がトラクタの3点リンク部に連結されている。機体12は、互いに離間対向する左右1対のフレーム板部14を有し、これら両フレーム板部14の前端部間には左右方向長手状の前フレーム部16が架設され、これら両フレーム板部14の後端部間には左右方向長手状の後フレーム部17が架設されている。
【0019】
前フレーム部(前フレームパイプ部)16と後フレーム部(後フレームパイプ部)17とは、互いに同じ長さであり、前後に互いに離間対向して平行状に配設されている。なお、各フレーム板部14の外面には、スタンドホルダ18が固着されている。
【0020】
また、農作業機11は、機体12の前フレーム部16に左右方向に等間隔をおいて並設され、耕耘作業時に圃場の土中に所定耕耘深さで差し込まれた状態で前方に移動しながら圃場の土を切削して持ち上げて一側方(例えば左側方)に向けて反転放てきする同一構成の複数の前作業体21と、機体12の後フレーム部17に左右方向に等間隔をおいて並設され、耕耘作業時に圃場の土中に所定耕耘深さで差し込まれた状態で前方に移動しながら圃場の土を切削して持ち上げて他側方(例えば右側方)に向けて反転放てきする同一構成の複数の後作業体22とを備えている。
【0021】
すなわち例えば、農作業機11は、左右方向に等間隔で並ぶ前列の3つの前作業体21と、左右方向に等間隔で並ぶ後列の3つの後作業体22とを備えている。なお、各作業体21,22の数は、3つには限定されず、例えば2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0022】
各作業体21,22の所定耕耘深さは、例えば10cm〜15cmである。また、後列の後作業体22は、前列の前作業体21の後方位置(真後ろ)には配設されておらず、前作業体21の後方位置から側方へずれた位置に配設されている。このため、例えば3つの後作業体22のうち、左端の後作業体22を除く2つの後作業体22は、互いに隣り合う両前作業体21間の空間部23の後方位置に配設されている。
【0023】
前作業体21は、上端部が前フレーム部16に取り付けられた前支持アーム26と、この前支持アーム26の下端側に取り付けられ圃場の土を切削して持ち上げる板状の前チゼル(先金)27と、前支持アーム26の下端側に取り付けられ前チゼル27からの土を受け入れて圃場面上方まで持ち上げて一側方に向けて反転放てきする曲板状の前反転板28とを有している。
【0024】
また、前作業体21は、前チゼル27の両側方部の後方で圃場の土を切削する長手板状で同一長さの左右1対の前ウイング29を有している。そして、左右対称で後方を向いた平面視V字状配置の両前ウイング29は、平面視でV字状(略V字状を含む)をなすように配設され、平面視で前ウイング29の長手方向が前後方向に対して傾斜した傾斜方向に一致した状態となっている。
【0025】
前ウイング29は、長手方向一端部である前端部に取付板部31を有し、この取付板部31が前支持アーム26の下端側の側面に取り付けられている。また、前ウイング29には、切削刃部32が長手方向に沿って形成されている。
【0026】
後作業体22は、前作業体21と同様、上端部が後フレーム部17に取り付けられた後支持アーム36と、この後支持アーム36の下端側に取り付けられ圃場の土を切削して持ち上げる板状の後チゼル(先金)37と、後支持アーム36の下端側に取り付けられ後チゼル37からの土を受け入れて圃場面上方まで持ち上げて他側方に向けて反転放てきする曲板状の後反転板38とを有している。
【0027】
また、後作業体22は、後チゼル37の両側方部の後方で圃場の土を切削する長手板状で同一長さの左右1対の後ウイング39を有している。そして、左右対称で後方を向いた平面視V字状配置の両後ウイング39は、平面視でV字状(略V字状を含む)をなすように配設され、平面視で後ウイング39の長手方向が前後方向に対して傾斜した傾斜方向に一致した状態となっている。
【0028】
後ウイング39は、長手方向一端部である前端部に取付板部41を有し、この取付板部41が後支持アーム36の下端側の側面に取り付けられている。また、後ウイング39には、切削刃部42が長手方向に沿って形成されている。
【0029】
ここで、
図4から明らかなように、前ウイング29は、従来に比べて長さを短くしたものであり、前ウイング29の長手方向長さ寸法N1は、
図5に示す前ウイング1aの長手方向長さ寸法n1よりも短い。また、後ウイング39は、逆に、従来に比べて長さを長くしたものであり、後ウイング39の長手方向長さ寸法N2は、
図5に示す後ウイング2aの長手方向長さ寸法n2よりも長い。
【0030】
つまり、本実施の形態に係る農作業機11は、互いに隣り合う両前ウイング29間の土詰まりを防止するために、
図5に示す従来例に比べて、全体の耕耘幅を変えることなく、前ウイング29の長さを短くしかつ後ウイング39の長さを長くしたものである。
【0031】
その結果、この農作業機11においては、各前作業体21の同一長さの各前ウイング29は、各後作業体22の同一長さの各後ウイング39よりも短い。換言すると、各後作業体22の同一長さの各後ウイング39は、各前作業体21の同一長さの各前ウイング29よりも長い。例えば、後ウイング39の長手方向長さ寸法N2は、前ウイング29の長手方向長さ寸法N1の1.2〜2倍(好ましくは約1.5〜2倍)である。なお、前ウイング29と後ウイング39とは、長手方向長さ寸法である長さは異なるが、短手方向長さ寸法である幅は同じ(略同じを含む)である。
【0032】
そして、互いに隣り合う両前ウイング29間の距離Aは、互いに隣り合う両後ウイング39間の距離Bよりも長い。また、互いに隣り合う両前ウイング29間の距離Aは、
図5に示す両前ウイング1a間の距離aよりも長い。さらに、互いに隣り合う両前ウイング29の後端部と後チゼル37の前端部とで作られる三角形の面積Sは、
図5に示す同様の三角形の面積sよりも広い。
【0033】
一方、互いに隣り合う両後ウイング39間の距離Bは、
図5に示す両後ウイング2a間の距離bよりも短いが、この部分には、一度耕耘された土が通るため、土詰まりは生じない。
【0034】
なお、前ウイング29の長手方向長さ寸法N1は、例えば15cm〜25cm(好ましくは20cm)である。後ウイング39の長手方向長さ寸法N2は、例えば25cm〜35cm(好ましくは30cm)である。前ウイング29間の距離Aは、例えば29cm〜39cm(好ましくは34cm)である。後ウイング39間の距離Bは、例えば21cm〜31cm(好ましくは26cm)である。
【0035】
また、
図4に示されるように、平面視で、前ウイング29の後端部と後ウイング39の後端部とが、所定のラップ量Lをもって前後に互いに離間対向している。なお、所定のラップ量Lは、例えば1cm〜5cm(好ましくは2cm)である。
【0036】
さらに、農作業機11は、機体12の後部に取り付けられた鎮圧輪45を備えている。この鎮圧輪45は、後列の複数の後作業体22の後方で所定方向に回転しながら鎮圧作業をするもので、左右方向長手状の複数本の鎮圧棒46を有している。
【0037】
次に、農作業機11の作用等を説明する。
【0038】
農作業機11を使用して耕耘作業をする場合、農作業機11をトラクタに連結した後、トラクタの3点リンク部の作動により農作業機11全体を下降させて、前後の作業体21,22の下端側を圃場の土中に差し込む。
【0039】
そして、トラクタの前進走行により農作業機11を前方に移動させると、前作業体21が圃場の土を切削して持ち上げて一側方へ反転放てきし、後作業体22が圃場の土を切削して持ち上げて他側方へ反転放てきし、この後作業体22の後方では鎮圧輪45が反転放てきされた土を鎮圧する。
【0040】
このとき、前列の複数の前作業体21における左右に互いに隣り合う両前ウイング29間や、後列の複数の後作業体22における左右に互いに隣り合う両後ウイング39間において、土詰まりは生じない。
【0041】
このように、上記農作業機11によれば、前ウイング29が後ウイング39よりも短いため、耕耘作業(粗耕起作業)の際に、前列における全ての互いに隣り合う両前ウイング29間に土が詰まりにくく、適切な耕耘作業ができる。
【0042】
また、互いに隣り合う両前ウイング29間の距離Aが互いに隣り合う両後ウイング39間の距離Bよりも長いため、両前ウイング29間での土詰まりを適切に防止でき、より一層適切な耕耘作業ができる。
【0043】
さらに、平面視で前ウイング29の後端部と後ウイング39の後端部とが所定のラップ量Lをもって前後に互いに離間対向しているため、より一層適切な耕耘作業ができる。
【0044】
また、後ウイング39の長手方向長さ寸法が前ウイング29の長手方向長さ寸法の1.2〜2倍であることから、距離Aが十分に長くかつ三角形の面積Sが十分に広いため、両前ウイング29間での土詰まりを効果的に防止でき、より一層適切な耕耘作業ができる。
【0045】
なお、前作業体21の前反転板28の向きと後作業体22の後反転板38の向きとが、互いに異なる構成について説明したが、例えば前反転板28と後反転板38とが同じ方向を向くようにしてもよい。
【0046】
また、前作業体21と後作業体22とが同じ数である必要はなく、異なる数でもよく、例えば前作業体21が3つで後作業体22が2つの構成や、前作業体21が2つで後作業体22が3つの構成等でもよく、作業体21,22の数は任意である。
【0047】
さらに、平面視で前ウイング29の後端部と後ウイング39の後端部とが所定のラップ量Lをもって前後に互いに離間対向する構成には限定されず、例えば平面視で前ウイング29の後端部と後ウイング39の後端部とがラップしない構成でもよい。