(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
材料のフライ調理を行うためのフライヤーにおいて、貯油槽内に貯められた油に電場を印加した状態で材料のフライ調理を行うと、調理された材料の食味向上、調理時間の短縮、油温度の減少、油の劣化防止等優れた効果を得られることが知られている。
【0003】
貯油槽内に貯められた油に電場を印加するために、貯油槽内に電場を形成するための電極を設ける場合があり、様々な電極構造が提案されている。例えば特許文献1には、上面を除く5面を閉塞するボックス型の固定電極と、上面を閉塞する開閉可能な蓋型構造の可動電極とを有する電場形成ユニットをフライヤーの貯油槽内に設け、固定電極と可動電極とで閉塞された空間内において、電極である6面全面を利用して油に電場を印加した状態で材料のフライ調理を行うことにより、揚げむらのない材料の調理を行うことができるフライヤーが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフライヤーは、金属製の網を用いて貯油槽内への材料の出し入れを行うことを想定していない。例えば、特許文献1に記載のフライヤーにおいて、貯油槽内に設けられている可動電極と金属製の網とが接触してしまうと、金属製の網にも高電圧が通電され、金属製の網を扱っているフライヤーの利用者が感電してしまう恐れがあった。すると、貯油槽内でフライ調理される材料の出し入れは、木製のはしなどを用いて取り出す必要があり、大量の材料のフライ調理を行う際には不便なものであった。
【0005】
また、特許文献2には、揚げかごの内部に配設された電極板に、貯油槽内に配設された貯油槽内電極を当接させることで、電極板に電場を誘導して貯油槽内の油に電場を印加した状態で調理を行うことができるフライヤーが開示されている。特許文献2に記載のフライヤーは、特許文献1に記載のフライヤーと比較して導入が容易であるが、貯油槽内に配設された貯油槽内電極上に揚げかすが蓄積してしまうと、電極板に貯油槽内電極を当接させることができなくなり、従って貯油槽内の油に電場を印加できなくなるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本件発明は、貯油槽内に貯められた油に電場を印加した状態で材料のフライ調理を行うためのフライヤーにおいて、作業性の良いフライヤーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本件発明の第一の態様として、
金属材料板で少なくとも一部の内側面が構成される貯油槽を含む貯油槽部と、
金属性の網でできた貯油槽に浸漬離脱自在なかごと、
からなるフライヤーであって、
貯油槽部には、
貯油槽にかごを前記内側面と通電することなく浸漬配置するための貯油槽側固定部と、
貯油槽部に配置される通電電極であって、貯油槽にかごが配置された場合に金属製の網に交流を通電するための前記内側面と絶縁された通電電極を備えた通電部と、
を設け、
かごには、貯油槽側固定部と相まってかごを貯油槽に前記内側面と通電させることなく配置するためのからなるかご側固定部と、
貯油槽に配置された場合に、通電電極から受電して金属性の網に通電するための受電部と、
を設け、
貯油槽側固定部と通電部が同一であり、かつ、かご側固定部と受電部とが同一であり、
貯油槽側固定部とかご側固定部との一方がフック、他方がフック係合部からなり、前記フックと前記フック係合部とが係合した場合にのみ通電を行うフライヤーを提供する。
【0009】
また、本件発明の第二の態様として、
フック係合部が棒状部材又は引掛器具からなる第一の態様のフライヤーを提供する。
【0010】
また、本件発明の第三の態様として、貯油槽側固定部とかご側固定部とが係合した場合にのみ通電を行うように通電部を制御する制御部を有する第一又は第二の態様に記載のフライヤーを提供する。
【0011】
また、本件発明の
第四の態様として、通電電極は貯油槽の作業側面に対面する側の貯油槽部の上部に配置される第一から第三の態様のいずれか一に記載のフライヤーを提供する。
【0012】
また、本件発明の第五の態様として、かごには、かごを構成する金属製の網とは絶縁された持ち手が備えられている第一から第四の態様のいずれか一に記載のフライヤーを提供する。
【0013】
また、本件発明の第六の態様として、かごの貯油槽への調理油浸漬予定領域よりも上側は絶縁材料で構成されている第一から第五の態様のいずれか一に記載のフライヤーを提供する。
【0014】
また、本件発明の第七の態様として、通電部はかごの一部にのみ交流を通電する第一から第六の態様のいずれか一に記載のフライヤーを提供する。
【0015】
また、本件発明の第八の態様として、前記かごの他の一部はアースされている第七の態様に記載のフライヤーを提供する。
【0016】
また、本件発明の第九の態様として、かごは直方形状で前記一部と他の一部は線対称にかごの全体を分けた場合の各部分である第八の態様に記載のフライヤーを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本件発明のフライヤーは、貯油槽内にフライ調理される材料の出し入れを行うために使用するかごそのものを、油に電場を印加するための電極として用いる。すると、貯油槽内への材料の出し入れはかごを用いて行うことができるため、作業性が良い。また、油槽内に揚げかすが蓄積したとしても、電場の形成が阻害されることがない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明の実施形態について図面とともに説明する。なお、本件発明はこれら実施形態や図面の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0021】
図1は、本件発明のフライヤーの一例を示す概要図であり、(a)は斜視図、(b)は貯油槽内の側面図を示す。本件発明のフライヤーは、貯油槽部(0101)と、かご(0102)と、から構成される。基本的な構成は、貯油槽に貯められた油に電場を印加することなく材料のフライ調理を行うための通常のフライヤーと同様であり、貯油槽部の貯油槽に貯められた高温の油中にかごを浸漬することにより、かごの内部に投入された材料がフライ調理される。ここで、通常のフライヤーとの相違点は、油中にかごを浸漬した際に、かごに交流を通電することにより、かごそのものを電場形成用の電極とする点である。
【0022】
(貯油槽部)
図2は、本件発明のフライヤーの貯油槽部の一例を示す概要図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図を示している。貯油槽部は、金属材料板で少なくとも一部の内側面が構成される貯油槽(0111)を含んで構成され、貯油槽側固定部と、通電部が設けられる。
【0023】
(貯油槽)
貯油槽(0111)とは、材料のフライ調理を行うための油を貯めておく空間であり、金属材料板で少なくとも一部の内側面(0112)が構成される。ここで「内側面」とは、貯油槽の内側の側面及び底面のことを示している。かごに交流が通電されると、貯油槽の内側面の金属材料板とかごの側面との間に動電場が形成され、貯油槽に貯められた油に電場が印加される。なお、「少なくとも一部の内側面」とあるように、貯油槽の内側面全てが金属材料板で構成されている必要はない。また、金属材料板そのもので内側面が構成されても良いが、例えば金属材料板の表面が絶縁性の樹脂(例えばテフロン(登録商標))で被覆されていても良い。金属材料板の表面を絶縁性の樹脂で被覆する構成とすると、かごと金属材料板とを絶縁することができる。
【0024】
なお、材料の調理時には貯油槽に貯められた油を高温に熱する必要があり、貯油槽部は貯油槽に貯められた油を高温に加熱するための加熱部(図示せず)を有している。油を高温に加熱するには、例えば電熱式もしくはガス式のヒーター等を用いて行うことができる。
【0025】
(貯油槽側固定部)
貯油槽側固定部は、貯油槽にかごを内側面と通電することなく浸漬配置するために設けられる。「貯油槽にかごを内側面と通電することなく浸漬配置する」とは、かごを構成する金属製の網と、貯油槽の内側面を構成する金属材料板とが通電することがないように、かごを貯油槽に貯められた油に浸漬して配置することを示している。もし、金属材料板とかごとが通電してしまうと、金属材料板とかごとが等電位となり、金属材料板とかごとの間で動電場を形成することができない。なお、貯油槽側固定部の構成について、特に限定するものではないが、例えば後述するかご側固定部をフックにより構成する場合に、貯油槽側固定部としてフックを引っ掛けるための引掛器具(0113)を貯油槽に隣接して設けても良い。
【0026】
(通電部)
通電部は、貯油槽の作業側面に対面する側の貯油槽上部に配置される通電電極であって、貯油槽にかごが配置された場合に金属製の網に交流を通電するための内側面と絶縁された通電電極を備えている。通電電極(0116)には、電源(0114)からケーブル(0115)を介して交流が供給されている。本件発明のフライヤーは、通電電極を介してかごに交流を通電することにより、かご自体を電場形成用の電極とすることができる。なお、交流の周波数については特に限定するものではなく、例えば50kHz〜60KHzの周波数の交流を通電電極に通電する構成としても良い。また、電源から供給される電圧の大きさについても、数Vから数十V(例えば3〜10V)の大きさの電圧がかごに供給される構成としても良い。
【0027】
作業側面(0117)とは、貯油槽の側面のうち、フライヤーの利用者が貯油槽へのかごの出し入れ等の作業を行う側の側面のことを示している。すなわち、「貯油槽の作業側面に対面する側の側面」とは、貯油槽の作業側面に対面する側の内側面のことを示している。ここで、「作業側面に対面する側の貯油槽上部」とは、貯油槽の作業側面に対面する側の内側面の上部のことを示しており、例えば貯油槽の作業側面に対面する側の内側面の高さ方向の中心よりも上側の部分を示している。従って、通電電極は貯油槽の内側面に設けられていても、貯油槽の上部に設けられていても良い。通電電極が貯油槽の内側面に設けられる場合に、通電電極が貯油槽に貯められた油に浸漬していても、浸漬していなくても良い。
【0028】
特許文献2に記載のように、通電電極を貯油槽の底面に設ける構成とすると、貯油槽内に蓄積する揚げかすが通電電極上に蓄積し、かごへの交流の通電の邪魔となる恐れが生じる。そこで、通電電極を貯油槽の側面又は貯油槽上部に配置することにより、通電電極上に揚げかすが蓄積することがない。従って、揚げかすがかごへの交流の通電の邪魔となる事態を防止することができる。
【0029】
また、通電電極が作業側面側に設けられる場合、フライヤーの利用者が通電電極と接触して感電してしまう恐れがある。そこで、通電電極を作業側面に対面する側に設けることにより、フライヤーの利用者が感電する事態を最小限とすることができる。
【0030】
なお、通電電極は内側面と絶縁されている必要がある。もし、通電電極と内側面とが電気的に接続されていると、通電電極を介して交流が供給されるかごと内側面は等電位となる。すると、かごと内側面の間に動電場を形成することができない。
図2に示す例では、貯油槽の内側面と通電電極との間に絶縁部(0118)を設けている。
【0031】
通電部の電源の出力は、かごと内側面の間に形成される電場の大きさが常に一定の範囲となるように調整されることが好ましい。例えば電源の出力を常に一定としてしまうと、かごの内部に投入されている材料の分量、組成、水分含有率などに応じて、かごの内部に形成される電場の大きさが変化してしまい、材料の加工時間や加工温度を調理の度に調整する必要が生じてしまう。そこで、かごと内側面の間に形成される電場の大きさを一定とするように電源の出力が調整される構成とすることにより、材料の分量、組成、水分含有率に関わらず安定して調理を行うことができる。
【0032】
(かご)
図3は、本件発明のフライヤーのかごの一例を示す図であり、(a)は斜視図を、(b)は側面図を示している。本件発明のフライヤーにおいて、かご(0102)は金属性の網(0121)でできており、かご側固定部と、受電部から構成される。なお、かごを構成する側面が金属製の網で構成されるといっても、例えば金属製の網の表面が絶縁性の樹脂で被覆されていても良い。
【0033】
「金属製の網でできている」とは、かごを構成する側面が金属製の網で構成されることを示している。なお、「かごを構成する側面」とは、かごの側面に加えて底面のことも示すものとする。かごを構成する側面を金属製の網で構成することにより、かごに交流を通電することで、かごを構成する金属製の網を電場形成用の電極として、かごの側面と貯油槽の内側面との間に動電場を形成することができる。また、貯油槽の内側面の電位を、かごの電位より高電位とすることで、かごの内部に電場を形成することもできる。
【0034】
「金属製の網」について特に限定するものではなく、例えば金属製の網がパンチングメタル(
図3参照)で構成されていても、針金(
図3−2参照)で構成されていても良い。また、かごは複数の金属製の網を溶接等を用いて接続することにより構成されていても良いが、一枚の金属板の押出成型により製造される構成とすると、溶接箇所の接触不良により金属製の網全体に均一に交流が供給されないという事態を防止することができるため好適である。
【0035】
なお、かごのサイズや形状については、貯油槽に応じて適宜設計することができる。すなわち、本件発明のフライヤーは、貯油槽のサイズに関わらず導入することが可能である。また、金属製の網のメッシュ(もしくは貫通穴)のサイズや形状、配置等についても特に限定するものではない。
【0036】
(かご側固定部)
かご側固定部は、貯油槽側固定部と相まってかごを貯油槽に内側面と通電させることなく配置するために設けられる。「貯油槽側固定部と相まって」とは、例えば貯油槽側固定部とかご側固定部とが係合することを示している。かご側固定部の構成について特に限定するものではないが、
図3に示す例では、かご側固定部はフック(0122)により構成されており、フックを貯油槽側固定部の引掛器具へと引っ掛けることにより、かごを貯油槽に配置する構成としている。フックは例えばかごを構成する金属製の網に溶接により接続されていても良い。「かごを貯油槽に内側面と通電させることなく配置する」とは、かごを構成する金属製の網と、貯油槽の内側面を構成する金属材料板とを通電させることなく配置することを示している。
【0037】
(受電部)
受電部は、通電電極から受電してかごを構成する金属性の網に通電するために設けられる。すなわち、受電部は金属製の網と導通しており、受電部を通電電極と接触させることにより、通電電極から受電部を介して金属製の網に交流が通電される。なお、
図3に示す例では、通電電極との接触部に金属製の網と導通している受電パッド(0123)を設けているが、例えば受電パッドを設けない構成の場合、受電部とは通電電極との接触部のことを示すものとする。
【0038】
(持ち手)
かごには、かごを構成する金属製の網と絶縁された持ち手(0124)が備えられていることが好ましい。持ち手が備えられることにより、フライヤーの利用者が、かごを貯油槽から容易に出し入れすることができる。ここで、金属製の網には、材料の調理時に交流電源が供給されているので、金属製の網と持ち手は絶縁されている必要がある。また、かごを高温の油に浸漬している際に、かごを構成する金属製の網は非常に高温となるから、持ち手は熱伝導率の低い素材で構成されることが好ましい。なお、
図3に示す例では、金属製の網に持ち手の一部を溶接することにより、かごに持ち手が備えられている。
【0039】
(電場の概要)
図4は、本件発明のフライヤーの調理時に形成される電場の概要を示している。本図に示すのは、
図3に示すかごを用いた場合の例である。(a)はかごに通電される交流によるかごの電位がV1sinωt(tは時間)で表され、貯油槽の金属材料板の電位がV2で表される場合において、V1>V2の場合を、(b)はV1<V2の場合を示している。なお、説明のために、貯油槽とかごを除く他の構成については図示しておらず、貯油槽にかごを浸漬配置した際に形成される電場の概要を示している。また、以下に示す例は現時点での想定であり、形成される電場の概要については現在も研究中である。
【0040】
(a)の場合、かごに交流が通電されることにより、主にかご(0102)と貯油槽(0111)の内側面(0112)との間に動電場(0401)が形成され、貯油槽内に貯められた油に電場が印加される。油は貯油槽内で対流しており、かごの内部の材料は電場が印加された油によりフライ調理される。一方、(b)の場合、かごに交流が通電されても、かごの電位が貯油槽の金属材料板の電位よりも大きいため、主にかごと貯油槽の内側面との間よりも、かごの内部に電場が形成される。
【0041】
以上、本件発明のフライヤーの構成の一例について説明したが、本件発明のフライヤーは上述の構成に限られない。以下に、本件発明のフライヤーの別の構成例について示す。
【0043】
(電位保持部)
本件発明の別の構成例として、貯油槽部は貯油槽の金属材料板を所定電位に保持する電位保持部を有していても良い。「金属材料板を所定電位に保持する」とは、例えば金属材料板を接地して、金属材料板の電位を0に保持することを示している。本件発明のフライヤーは、かごと貯油槽との間に動電場を形成することにより、かごの内部に電場を形成するものであるが、貯油槽の電位がふらついていると、かごの内部に形成される電場の大きさを安定させることができない。そこで、金属材料板を接地することにより、かごの内部に形成される電場を安定させることができる。なお、金属材料板の電位は切り替えられる構成としても良い。
【0045】
(制御部)
本件発明の別の構成例として、貯油槽部は貯油槽側固定部とかご側固定部とが係合した場合にのみ通電を行うように通電部を制御する制御部を有していても良い。「貯油槽側固定部とかご側固定部とが係合した場合」とは、すなわちかごを貯油槽に浸漬して食材の調理を行う場合のことである。本件発明のフライヤーが制御部を有する構成とすることにより、貯油槽にかごを浸漬させて食材の調理を行っている時にのみ、通電部の通電電極を介してかごに交流電源が供給される構成とすることができる。例えば、通電部の通電電極に常に交流電源が供給されている構成とすると、フライヤーの利用者が誤って通電電極と接触してしまった場合に感電してしまうという恐れが生じる。そこで、材料の調理時のみ通電電極に交流電源が供給される構成とすることにより、感電の恐れを低減することができる。
【0046】
図5は、本件発明のフライヤーにおいて制御部を有する貯油槽側固定部の一例を示す概要図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は断面図を示している。
図5に示す貯油槽側固定部は、一対の支柱(0501)に支持された金属製の棒(0502)を通電電極として、棒が支柱に対して上下に可動可能となるように構成されている。例えばかご側固定部がフックにより構成されるとして、貯油槽にかごを配置する際にフックを棒に引っ掛けると、支柱内部で棒を支持していたばね(0505)が伸長し、棒が下に下がることで、棒が電極(0503)と接触し、棒が固定される。電極には電源と接続されたケーブル(0504)を介して交流が供給されており、棒が電極と接触した際には、棒にも交流が供給されることとなる。また、棒とフックも接触することとなるから、フックを介してかごを構成する金属製の網に交流が通電される。なお、かごを貯油槽から取り出すと、棒はばねの力で支柱の上部に戻され、棒と電極とが離れることとなり、棒には交流が供給されなくなる。
図5に示す貯油槽側固定部に設けられた電極は、フライヤーの利用者が通常接触することがない位置に設けられるため、フライヤーの利用者が感電する事態を防止することができる。なお、本図に示す例は構成例4でも説明するように、貯油槽側固定部と通電部、かご側固定部と受電部とを同一としている。
【0048】
図6に示すのは、本件発明のフライヤーの別の一例を示す概要図であり、(a)に斜視図を、(b)に側面図を示している。
図6に示すフライヤーは、貯油槽側固定部と通電部、かご側固定部と受電部とを同一としている。すなわち、
図2において貯油槽側固定部として設けられていた引掛器具に電源からケーブルを介して交流を通電することにより、引掛器具を通電部としても使用する構成としている。この場合、引掛器具のうち少なくともかご側固定部及び受電部と接触する部分は通電電極として導電性の物質で構成され、通電電極と貯油槽の内側面とは絶縁されている。また、かご側固定部としてかごに設けられているフックを受電部としても使用して、フックを介して金属製の網に通電が行われる構成としている。この場合、フックと金属製の網とは導通している必要があり、フックは導電性の物質で構成されることが好ましい。貯油槽側固定部と通電部、又は/及びかご側固定部と受電部とを同一とすることにより、フライヤーを構成する部品数を少なくすることができる。なお、かごを構成する金属製の網と、貯油槽の内側面とが接触するのを防止するため、貯油槽の内側面に絶縁性の支持体(0601)を設けているが、支持体は貯油槽の内側面に限らず、例えばかごに設けられていても良い。また、金属製の網と内側面とが接触しないのであれば、支持体が設けられなくても良い。
【0050】
図7に示すのは、本件発明のフライヤーのかごの構成の別の一例を示す概要図であり、(a)は斜視図を、(b)は貯油槽に浸漬した際の側面図を示している。
図7に示すかごは、かごの貯油槽への調理油浸漬予定領域よりも上側が絶縁材料(0701)で構成されている。「調理油浸漬予定領域」とは、かごを貯油槽に浸漬した際にかごの側面のうち調理油に浸漬される予定の領域のことであり、「調理油浸漬予定領域よりも上側」とは、すなわち調理油と接触しない予定の領域のことである。なお、貯油槽に貯められた調理油の深さは、かごの内部に投入される材料の分量によって変動するものであるから、調理油浸漬予定領域も変動するものである。従って、「調理油浸漬予定領域よりも上側」とは必ずしも厳密ではなく、例えばかごを貯油槽に浸漬した場合に、絶縁材料の一部が調理油に浸漬することがあっても良い。
【0051】
調理油浸漬予定領域よりも上側を絶縁材料で構成するのは、フライヤーの使用者の感電を防止するためである。材料の調理時に、かごを構成する金属製の網には交流電源が供給されているが、調理油に浸漬していない部分は、フライヤーの使用者が誤って接触し、感電してしまう恐れが生じる。そこで、調理油に浸漬していない部分を絶縁材料で構成することにより、フライヤーの使用者の感電を防止することができる。
【0052】
なお、「調理油浸漬予定領域よりも上側が絶縁材料で構成」とは、例えばかごの側面を構成する金属製の網のうち調理油浸漬予定領域よりも上側の領域を金属製の網ではなく絶縁材料で構成しても良いが、かかる領域の金属製の網の表面を絶縁性の樹脂(例えばテフロン(登録商標))で被覆しても良い。
【0053】
また、構成例2で説明したように、貯油槽の金属材料板が0でない所定電位に保持される場合には、貯油槽の内側面の調理油浸漬予定領域よりも上側についても絶縁材料で構成されることが好ましい。
【0055】
図8は、本件発明のフライヤーのかごの別の一例を示す概要図であり、(a)は斜視図を、(b)は取っ手側から見た側面図を示している。
図8に示すかごは、上述したかごと同様に直方形状であるが、線対称にかごの全体を分けた場合に、一対の金属製の網(0801、0802)が絶縁板(0803)を挟む形で構成されている。なお、
図8に示す例では、絶縁板は取っ手が取り付けられる側面とその側面に対向する側面、及び底面の3箇所に設けられているが、一対の金属製の網が絶縁されていればその構成について特に限定するものではない。なお、金属製の網と絶縁板との接続は、例えば金属製の網と絶縁板との接続部の断面図として(c)に示すように、ねじ(0806)を介して行われても良い。また、
図8に示すかごには、上述したかごと同様に持ち手(0804)、フック(0805)が取り付けられている。
【0056】
図8に示すかごを用いると、一対の金属製の網は絶縁板により絶縁されているから、一対の金属製の網のうち一方にのみ交流を通電し、他の一方をアースすることができる。例えば、構成例1で説明した貯油槽部を用いる場合には、通電部として一対の金属製の網それぞれに交流を通電するための通電電極を2つ設けて、一方にのみ交流を通電し、他の一方をアースする構成とすることで、金属製の網のうち一方に交流を通電し、他の一方をアースすることができる。また、構成例4で説明したような貯油槽側固定部と通電部、かご側固定部と受電部とを同一としたフライヤーの場合も、通電電極を備えた引掛器具を2つ備え、一方の通電電極にのみ交流を通電し、他の一方をアースする構成とすることで、金属製の網のうち一方に交流を通電し、他の一方をアースすることができる。
【0057】
図9は、本構成例のかごを用いたフライヤーの調理時に形成される電場の概要を示しており、(a)はかごに通電される交流によるかごの電位がV1sinωt(tは時間)で表され、貯油槽の金属材料板の電位がV2で表される場合において、V1>V2の場合を、(b)はV1<V2の場合を示している。なお、説明のために、貯油槽とかごを除く他の構成については図示しておらず、貯油槽にかごを浸漬配置した際に形成される電場の概要を示している。また、以下に示す例は現時点での想定であり、形成される電場の概要については現在も研究中である。
【0058】
(a)の場合、主にかごを構成する一対の金属製の網の間に動電場(0901)が形成され、かごの内部の油に電場が印加される。また、交流が通電されている金属製の網と、貯油槽の内側面との間でも動電場が形成される。一方、(b)の場合、主に交流が通電されている金属製の網と、貯油槽の内側面との間で動電場が形成される。