(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
【0015】
[電池の構造]
図1は、実施形態に係る電池10の縦断面図である。電池10は、いわゆるコイン形電池であり、概略円柱状をなす。電池10は、軸方向の寸法が外径よりも小さい扁平形電池である。電池10の軸方向の寸法Lは、例えば1mm以下である。
【0016】
電池10は、外装缶1と、封口缶2と、ガスケット3と、電極体4とを備えている。
【0017】
外装缶1は、ステンレス等の金属材料で構成される。外装缶1は、周壁部11と、底部12とを有する。周壁部11は、筒状をなす。底部12は、周壁部11の軸方向の一端を封鎖する。底部12は、円板状をなす。周壁部11の軸方向の他端は、開口している。以下、説明の便宜上、底部12側を下、その反対側を上と称する場合がある。
【0018】
周壁部11は、周壁本体11aと、屈曲部11bとを有する。周壁本体11aは、概略円筒状をなし、その下端が底部12の周縁と接続されている。屈曲部11bは、周壁本体11aの上端と連続している。屈曲部11bは、周壁本体11aに対して径方向内方に屈曲している。屈曲部11bは、外装缶1の開口縁部を構成する。
【0019】
周壁部11の軸方向の寸法L1は、0.70mm以下であることが好ましく、0.60mm以下であることがより好ましい。寸法L1は、0.50mm以上であることが好ましい。寸法L1は、周壁本体11aの下端(底部12の下面)から屈曲部11bの上端までの軸方向の長さである。
【0020】
封口缶2も、外装缶1と同様、ステンレス等の金属材料で構成される。封口缶2は、周壁部21と、頂部22とを有する。
【0021】
周壁部21は、筒状をなす。周壁部21は、外装缶1の周壁部11の内周に配置される。周壁部21の外周面の少なくとも一部は、ガスケット3を介して、外装缶1の周壁部11の内周面と対向する。つまり、周壁部21の外周面は、外装缶1の周壁本体11aの内周面とともにガスケット3を押圧する部分を有する。本実施形態では、周壁部21に含まれる折り返し部21dがガスケット3を押圧する。
【0022】
周壁部21の軸方向の一端(上端)は、外装缶1の周壁部11から外側に突出している。すなわち、周壁部21の上端は、周壁部11の上端よりも上方に突出している。頂部22は、周壁部21の上端を封鎖する。周壁部21の軸方向の他端(下端)は、開口している。
【0023】
周壁部21は、小径部21aと、大径部21bとを含む。小径部21aは、頂部22に接続されている。大径部21bの外径は、小径部21aの外径よりも大きい。大径部21bは、小径部21aよりも下方に配置され、小径部21aと段差を介して接続されている。言い換えると、大径部21bは、小径部21aの下端から径方向外方に延びる連結部21cによって小径部11aと接続されている。
【0024】
小径部21aの上端部は、外装缶1の周壁部11から上方に突出している。よって、頂部22は、外装缶1の屈曲部11bよりも上方に配置される。大径部21b及び連結部21cは、屈曲部11bよりも下方に配置されている。このような構成により、電池10の上面には凸部が形成される。当該凸部の軸方向の寸法L21は、例えば、0.15〜0.40mmである。寸法L21は、屈曲部11bの上端から頂部22の上面までの長さである。
【0025】
大径部21bは、折り返し部21dを有する。折り返し部21dは、封口缶2の開口縁部を構成する。折り返し部21dは、周壁部21の下端部を構成し、径方向外方且つ上端側に折り返した形状を有している。折り返し部21dは、大径部21bの下端部を径方向外方且つ上方に折り返すことによって形成される。本実施形態では、折り返し部21dの先端は、連結部21cの上面と同程度の高さまで達している。つまり、大径部21bのほぼ全体が折り返し部21dで構成されている。しかしながら、折り返し部21dの先端は、連結部21cよりも下方に位置していてもよい。あるいは、折り返し部21dの先端が連結部21cよりも上方に位置していてもよい。
【0026】
ガスケット3は、外装缶1と封口缶2との隙間を塞ぐように構成される。ガスケット3は、封口缶2の周壁部21上に配置される。ガスケット3は、ガスケット内部31と、ガスケット外部32と、ガスケット底部33とを含んでいる。
【0027】
ガスケット内部31は、封口缶2の周壁部21の内周側に配置される。ガスケット内部31は、周壁部21の内周面全体を覆っている。ガスケット外部32は、周壁部21の外周側に配置される。ガスケット外部32は、周壁部21と外装缶1の周壁部11との間に配置されている。ガスケット底部33は、ガスケット内部31とガスケット外部32とを接続する部分である。ガスケット底部33は、周壁部21と外装缶1の底部12との間に配置されている。
【0028】
ガスケット3は、樹脂材料によって構成される。樹脂材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を挙げることができる。
【0029】
電極体4は、外装缶1、封口缶2、及びガスケット3によって形成される空間内に収容される。当該空間内には、非水電解液(図示略)も収容されている。電極体4は、正極41と、負極42と、セパレータ43とを備える。
【0030】
正極41は、例えば円板状に形成される。正極41は、正極集電体41aと、正極活物質層41bとを有する。正極集電体41aは、アルミニウム等の金属箔で構成される。正極活物質層41bは、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、又はマンガン酸リチウム等といったリチウム遷移金属複合酸化物等の正極活物質を含有する。正極活物質層41bは、正極集電体41a上に形成される。正極集電体41aは、外装缶1の底部12の内面に接触する。これにより、外装缶1が電池10の正極として機能する。
【0031】
負極42は、例えば円板状に形成される。負極42は、負極集電体42aと、負極活物質層42bとを有する。負極集電体42aは、銅等の金属箔で構成される。負極活物質層42bは、黒鉛やリチウム箔等の負極活物質を含有する。負極活物質層42bは、負極集電体42a上に形成される。負極集電体42aは、封口缶2の頂部22の内面に接触する。これにより、封口缶2が電池10の負極として機能する。
【0032】
セパレータ43は、例えば円形状に形成される。セパレータ43は、正極41と負極42との間に配置される。セパレータ43は、ポリエチレン製やポリプロピレン製の微多孔性薄膜等で構成される。
【0033】
以下、ガスケット底部33及びガスケット外部32について、
図2を参照しつつより詳細に説明する。
図2は、電池10の周縁部分の縦断面図である。
【0034】
上述したように、ガスケット底部33は、外装缶1の底部12と封口缶2の周壁部21との間に配置されている。より詳細には、ガスケット底部33は、外装缶1の底部12と封口缶2の周壁部21の開口縁部との間に挟まれている。ガスケット底部33の厚みは、底部12の内面と周壁部21の下端との間で最小となる。ガスケット底部33の最小厚みAは、0.15mm未満とされる。ガスケット底部33の最小厚みAは、0.08mm以上であることが好ましい。
【0035】
ガスケット底部33は、外装缶1の底部12と封口缶2の周壁部21との間で圧縮される。ガスケット底部33は、底部12及び周壁部21の開口縁部によって押圧される。ガスケット底部33に接触する周壁部21の開口縁部の下面は、突出部等が存在しない1曲面で構成されることが好ましい。例えば、折り返し部21dの下面は、円弧面である。しかしながら、折り返し部21dの下面は、完全な円弧面でなくてもよい。折り返し部21dの下面は、曲率が変化する歪曲面(円弧でない曲面)であってもよい。底部12の内面も、突出部等が存在しない平坦な面であることが好ましい。
【0036】
ガスケット外部32は、外装缶1の周壁部11と封口缶2の周壁部21との間に配置されている。ガスケット外部32は、周壁部11,21によって挟まれている。ガスケット外部32のうち大径部21bの上方に位置する部分、つまり折り返し部21dの先端に接触する部分の厚みは、ガスケット底部33の最小厚みAを考慮して決定される。
【0037】
ガスケット外部32のうち折り返し部21dの先端に接触する部分の厚みは、封口缶2の周壁部21からガスケット底部33に対して負荷される圧力に影響する。ガスケット外部32のうち折り返し部21dの先端に接触する部分の最小厚みをBとすると、ガスケット底部33の最小厚みAに対するBの比率B/Aは、1.5未満である。B/Aは、1.27よりも大きいことが好ましい。Bは、例えば、0.14〜0.16mmとすることができる。
【0038】
ガスケット外部32は、外装缶1の周壁部11と封口缶2の折り返し部21dとの間で圧縮される。折り返し部21dは、大径部21bの下端部を径方向外方及び上方に折り返すことによって形成されているため、外面Sを有する。折り返し部21dの外面Sの少なくとも一部は、ガスケット外部32を介して、周壁部11の周壁本体11aの内周面と対向する。折り返し部21dの外面S及び周壁本体11aの内周面により、ガスケット外部32の一部が押圧されている。ガスケット外部32においては、主に、折り返し部21dの外面Sと接触している部分と、底部12の外周縁部から周壁本体11a及び屈曲部11bの一部にかけて外装缶1と接触している部分とが押圧される。
【0039】
折り返し部21dの外面Sの軸方向の寸法L3は、ガスケット外部32をより確実に押圧する観点から、0.12mm以上であることが好ましい。寸法L3は、折り返し部21dの先端(上端)から周壁部21の下端までの軸方向の長さとする。ガスケット外部32のうち、折り返し部21dの外面Sと周壁本体11aの内周面との間に配置される部分の厚みCは、0.18〜0.23mmであることが好ましい。
【0040】
[電池の製造方法]
次に、電池10の製造方法の例について説明する。電池10の製造方法は、外装缶1を作製する工程と、封口缶2を作製する工程と、封口缶2の周壁部21にガスケット3を取り付ける工程と、外装缶1、ガスケット3が取り付けられた封口缶2、及び電極体4を組み合わせる工程とを含む。
【0041】
外装缶1は、金属板をプレス加工することによって作製される。他の部材と組み合わせる前の外装缶1の周壁部11には、屈曲部11bが形成されていない。すなわち、プレス加工の終了時点では、外装缶1の周壁部11は、全体に亘って軸方向にほぼ真っ直ぐ延びている。
【0042】
封口缶2も、金属板のプレス加工によって作製される。封口缶2は、
図1に示す形状に形成される。
【0043】
ガスケット3は、例えば、インサートモールドによって封口缶2の周壁部21に形成される。これにより、ガスケット3が取り付けられた封口缶2を簡易に得ることができる。ただし、封口缶2と別体のガスケット3を形成した後、このガスケット3を封口缶2の周壁部21に取り付けてもよい。この時点では、ガスケット3は、断面視で概略U字状に形成されている。つまり、ガスケット外部32は、周壁部21の外周面に沿っておらず、概ね軸方向に延びている。ガスケット外部32の上端は、封口缶2の頂部22よりも上方に突出していてもよい。
【0044】
封口缶2にガスケット3を取り付けた後、この封口缶2を外装缶1及び電極体4と組み合わせる。具体的には、底部12を下側に向けた外装缶1内に電極体4を配置し、非水電解液を注入する。そして、ガスケット3が取り付けられた封口缶2を外装缶1に被せた後、外装缶1の周壁部11の開口縁部を径方向内方にかしめて屈曲部11bを形成する。
【0045】
外装缶1の周壁部11の開口縁部は、ガスケット底部33のうち最小厚みAを有する部分の圧縮率が
30〜50%となるように、封口缶2の周壁部21の大径部21b及び連結部21cに対してかしめられる。圧縮率は、以下の式(1)によって算出することができる。
{(非圧縮状態におけるガスケット底部33の最小厚み−圧縮状態におけるガスケット底部33の最小厚みA)/非圧縮状態におけるガスケット底部33の最小厚み}×100 (1)
【0046】
上記式(1)において、「非圧縮状態」とは、ガスケット底部33が外装缶1の底部12及び封口缶2の周壁部21によって押圧されていない状態、すなわち、各部材を組み合わせる前のガスケット底部33の状態をいう。「圧縮状態」とは、各部材を組み合わせることによってガスケット底部33が底部12と周壁部21との間に挟まれ、底部12及び周壁部21によって押圧されている状態である。
【0047】
外装缶1の周壁部11の開口縁部をかしめることより、電極体4及び非水電解液が収容された空間が密封され、電池10が完成する。
【0048】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る電池10では、ガスケット底部33の最小厚みAが0.15mm未満であり、非常に小さくなっている。このため、電池10を薄型化することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る電池10では、ガスケット底部33のうち最小厚みAを有する部分の圧縮率が30〜
50%であり、ガスケット底部33が充分に圧縮されている。これにより、ガスケット3の密封性能を向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る電池10では、外装缶1の周壁本体11aの内周面と封口缶2の折り返し部21の外面Sとによってガスケット外部33の一部が押圧される。すなわち、外装缶1の周壁部11及び封口缶2の周壁部21がガスケット外部33に面接触することにより、ガスケット外部33に対して径方向の圧力が確実に付与される。特に、ガスケット外部32のうち、底部12の外周縁部から周壁本体11a及び屈曲部11bの一部にかけて外装缶1と接触している部分が連続的に押圧されることにより、ガスケット3の密封性能をより高めることができる。これにより、電極体4及び非水電解液が収容された空間の密封性が向上する。よって、ガスケット底部33の厚みを小さくして電池10を薄型化した場合であっても、ガスケット3の密封性能を維持することができ、漏液等を防止することができる。
【0051】
本実施形態に係る電池10において、ガスケット底部33の最小厚みAは、好ましくは0.08mm以上である。これにより、外装缶1の底部12及び封口缶2の周壁部21からの圧力によってガスケット底部33が裂断するのを抑制することができる。
【0052】
本実施形態に係る電池10において、折り返し部21dの下面は、滑らかな曲面であることが好ましい。また、外装缶1の底部12の内面も、平坦な面である。この場合、折り返し部21dと底部12との間に配置されるガスケット底部33において、応力集中が発生するのを防止することができる。よって、ガスケット底部33の裂断を抑制することができる。
【0053】
本実施形態に係る電池10では、ガスケット底部33の最小厚みAに対するガスケット外部32の上部の最小厚みBの比率B/Aは、1.5未満に設定されている。すなわち、ガスケット底部33の厚みに対して、ガスケット外部32のうちガスケット底部33の上方に配置される部分の厚みが大きくなりすぎない。これにより、ガスケット底部33の圧力負担が軽減され、ガスケット底部33において裂断が発生するのを抑制することができる。
【0054】
本実施形態に係る電池10では、封口缶2の周壁部21の上端を外装缶1の周壁部11の上端よりも上方に配置することにより、上面に凸部が形成されている。この凸部は、電子機器に対する電池10の位置決めに利用することができる。よって、電子機器に対して電池10を正確且つ容易に取り付けることが可能となる。
【0055】
一般に、ガスケット底部の厚みが大きい場合、外装缶の開口縁部をかしめた後の肩口が高くなり、電子機器に対する電池の位置決めがしにくくなるおそれがある。一方、厚みが大きいガスケットを使用し、所定の厚みを得るために外装缶の開口縁部を強い力でかしめて、ガスケット底部の圧縮率が高くなった場合、ガスケットの変形に伴って封口缶が変形し、電池の密閉性がかえって悪化するおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る電池10では、ガスケット底部33の厚みが小さく、その圧縮率も適切な範囲に設定されている。よって、電池10は、電子機器に対して位置決めしやすく、高い密封性を確保することができる。
【0057】
以上、実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態に係る電池では、封口缶の周壁部の下端に折り返し部が形成されている。しかしながら、封口缶の周壁部の下端には、折り返し部が形成されていなくてもよい。
【0059】
上記実施形態に係る電池は、単層型の電極構造を有する電極体を備えている。しかしながら、電極体の構造はこれに限定されるものではない。例えば、ペレット状の電極を使用することもできる。
【0060】
上記実施形態に係る電池では、外装缶が正極として機能し、封口缶が負極として機能する。しかしながら、外装缶が負極として機能し、封口缶が正極として機能してもよい。また、外装缶及び封口缶自体が正極又は負極を兼ねていなくてもよい。この場合は、電池において、電子機器の端子と接触するための端子を別途設ければよい。
【0061】
上記実施形態では、ガスケットを封口缶に取り付けた後に、この封口缶と外装缶とを組み合わせている。しかしながら、ガスケットを別途用意し、最終の組み立て段階で外装缶と封口缶との間にガスケットを嵌合させてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本開示をさらに詳しく説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[ガスケットの密封性能について]
実施例1−1、実施例1−2、及び比較例1として、
図1及び
図2に示す構造を有する電池を10個ずつ準備した。実施例1−1、実施例1−2、及び比較例では、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)、及びガスケット底部(33)のうち最小厚み(A)を有する部分の圧縮率が互いに異なる。
【0064】
実施例1−1に係る各電池では、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.1mm、ガスケット底部(33)のうち最小厚み(A)を有する部分の圧縮率を50%とした。実施例1−2に係る各電池では、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.13mm、ガスケット底部(33)のうち最小厚み(A)を有する部分の圧縮率を35%とした。比較例1に係る各電池では、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.16mm、ガスケット底部(33)のうち最小厚み(A)を有する部分の圧縮率を20%とした。いずれの電池においても、ガスケット(3)の材料にはPPSを使用した。
【0065】
実施例1−1、実施例1−2、及び比較例1に係る各電池について、ヒートショック試験を実施した。当該試験では、各電池を3.8Vの充電状態とし、60℃で1時間保持した後、−10℃で1時間保持するサイクルを10日間で120サイクル繰り返した。当該試験は、各電池を60℃の恒温槽と−10℃の恒温槽との間で移動させる2ゾーン移動方式のヒートショック試験装置を使用して実施した。各電池について、顕微鏡(20倍)により漏液の発生を確認した。
【0066】
試験6日目において、比較例1に係る電池の1つに漏液が発生した(漏液発生率10%)。実施例1−1及び実施例1−2に係る各電池では、漏液は発生しなかった(漏液発生率0%)。
【0067】
以上のように、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)が0.15mm未満であり、圧縮率が30〜
50%の範囲にある実施例1−1及び実施例1−2では、漏液が発生しないことを確認できた。よって、電池の薄型化のためにガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.15mm未満とし、ガスケット底部(33)のうち最小厚み(A)を有する部分の圧縮率を30〜
50%とすれば、ガスケット(3)の密封性能を維持できるといえる。
【0068】
[ガスケットの裂断について]
ガスケット底部(33)の最小厚み(A)及びガスケット外部(32)のうち折り返し部(21d)の先端に接触する部分(上部)の最小厚み(B)が互いに異なる複数の電池を作製し、ガスケット底部(33)の裂断の発生を確認した。いずれの電池においても、ガスケット(3)の材料にPPSを使用した。
【0069】
表1に示すように、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.08mm以上とした実施例2−1〜2−4の電池では、ガスケット底部(33)の裂断は生じなかった。一方、最小厚み(A)が0.08mm未満である比較例2の電池では、ガスケット底部(33)が裂断した。なお、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)に対するガスケット外部(32)の上部の最小厚み(B)の比率(B/A)は、実施例2−1〜2−4で1.5未満、比較例2で1.5以上である。
【0070】
【表1】
【0071】
以上より、ガスケット底部(33)の最小厚み(A)を0.08mm以上とすれば、ガスケット底部(33)の裂断が抑制されることがわかった。ガスケット底部(33)の裂断が抑制されることにより、密封性能が維持されるとともに、外装缶(1)と封口缶(2)との接触による短絡を防止することができる。