(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688031
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】シュレッダー
(51)【国際特許分類】
B02C 18/06 20060101AFI20200421BHJP
B02C 18/24 20060101ALI20200421BHJP
B02C 18/16 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
B02C18/06 A
B02C18/24
B02C18/16 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-200802(P2015-200802)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-70926(P2017-70926A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006921
【氏名又は名称】ナカバヤシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】藤森 茂
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4620840(JP,B2)
【文献】
特開平10−034007(JP,A)
【文献】
特開平03−032753(JP,A)
【文献】
特開平05−092144(JP,A)
【文献】
特開平05−317739(JP,A)
【文献】
実開昭60−115547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 9/00−13/31、18/00−25/00
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の多板ディスク状回転カッターが噛合して紙を縦方向に細断する縦切り細断部と、前記縦切り細断部から排出される縦切り屑を固定カッターとスパイラル状回転カッターとによって横方向に細断する横切り細断部とを備えたシュレッダーであって、前記横切り細断部の前記スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知する手段を備えると共に、多板ディスク状回転カッターを回転する縦切り細断用駆動モータと、スパイラル状回転カッターを回転する横切り細断用駆動モータとを別々に備え、前記検知手段によって前記スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知すれば前記縦切り細断用駆動モータの駆動を停止して前記縦切り細断部の細断を停止することを特徴としたシュレッダー。
【請求項2】
横切り細断部のスパイラル状回転カッターが回転していないことを検知すれば、縦切り細断部の多板ディスク状回転カッターを細断方向とは逆向きに回転させるように縦切り細断用駆動モータを制御する請求項1記載のシュレッダー。
【請求項3】
スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知する手段は、スパイラル状回転カッターの回転軸に一体に設けたエンコーダディスクと、該エンコーダディスクに対応するエンコーダセンサの組み合わせからなる請求項1または2記載のシュレッダー。
【請求項4】
エンコーダディスクはディスク外周に凹部と凸部とを周方向に沿って交互に複数組形成した歯車状であり、エンコーダセンサは前記ディスク外周を挟み、前記凸部で光が遮断され、前記凹部で光が通過するように投光部と受光部とを配置した光センサである請求項3記載のシュレッダー。
【請求項5】
多板ディスク状回転カッター及びスパイラル状回転カッターの回転軸と、それぞれの駆動モータの駆動軸にはスプロケットを設け、該スプロケットに対応したチェーンによって前記駆動モータそれぞれを前記多板ディスク状回転カッター及び前記スパイラル状回転カッターそれぞれと連結した請求項1から4のうち何れか一項記載のシュレッダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦切り細断部と横切り細断部とを備えたシュレッダーに係り、何らかの原因で横切り細断部が動作しない場合や動作を停止した場合、これを検知して、縦切り細断部を動作させないようにすることで、縦切り細断部と横切り細断部の間に細断屑が詰まることを防止する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、縦切り細断部と、その排出側に横切り細断部とを備えたシュレッダーが公知である(特許文献1等)。
【0003】
図4は、従来のシュレッダーの主要部を示したものであり、多数のディスク状カッターを回転駆動軸上に配置した一対の多板ディスク状回転カッター21・22を噛み合わせて、当該噛合部を通過する紙を所定幅の幾つもの細長いヌードル状の縦切り屑に縦切りする縦切り細断部20と、スパイラル状に細断刃を配したスパイラル状回転カッター31とこれと対向する平刃の横切り用固定カッター32とを有して、前記縦切り細断部20から排出される前記縦切り屑をさらに細かく横切り(みじん切り)する横切り細断部30とを備えており、横切り細断部30から排出される最終的な細断屑をさらに細かいものとして、その文書の機密漏洩を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4620840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成では、縦切り細断部20と横切り細断部30は連動して動作するが、何らかの原因によって横切り細断部30が動作しなかったり、細断中に動作を停止して、縦切り細断部20だけが動作し続けると、縦切り細断部20から排出される縦切り屑が横切り細断部30との間に詰まってしまい、縦切り細断部20を逆回転させても詰まった縦切り屑を除去できないため、シュレッダーが使用できなくなる。
【0006】
この点、従来は、
図4に示したように、一つの駆動モータ40の動力を縦切り細断部20に伝達する一方、縦切り細断部20と横切り細断部30とは歯車50等によって機械的に連結されいるため、縦切り細断部20のみが単独で動作する事態に陥りにくい。
【0007】
しかし、特許文献1の
図2に示された構成では、二つの駆動モータを備え、それぞれを縦切り細断部20と横切り細断部30とに接続した構成が例示されており、この場合は、横切り細断部30に対応する駆動モータやその配線に不具合や故障があったり、もう一方の駆動モータとの同期を図るための制御プログラムに不備があれば、横切り細断部30が回転しないまま、縦切り細断部20が単独で回転することがあり得る。
【0008】
なお、特許文献1において、縦切り細断部20と横切り細断部30を別々の駆動モータで動作させるようにしたのは、縦切り細断部20が正回転と逆回転の何れにあっても、常に、横切り細断部30を正回転させることで、細断屑を確実に排出するためである。したがって、この技術では、横切り細断部30の回転が停止することや、その場合に、縦切り細断部20の回転を停止することは想定されておらず、縦切り細断部20の単独運転による上述した紙詰まりそのものを防止するものではなかった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、何らかの原因によって横切り細断部が回転不能に陥った場合に、紙詰まりすることがないシュレッダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、一対の多板ディスク状回転カッターが噛合して紙を縦方向に細断する縦切り細断部と、前記縦切り細断部から排出される縦切り屑を固定カッターとスパイラル状回転カッターとによってさらに横方向に細断する横切り細断部とを備えたシュレッダーであって、前記横切り細断部の前記スパイラル状回転カッターが回転してないことを検知する手段を備え、当該検知手段によって前記スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知すれば前記縦切り細断部の細断を停止するという手段を用いた。
【0011】
この手段によれば、何らかの原因でスパイラル状回転カッターが回転していないことを検知したときには、縦切り細断部は細断を行わないため、縦切り細断部と横切り細断部の間で紙詰まりが発生しない。なお、縦切り細断部の細断を停止することには、細断途中の中断のみならず、当初から運転を開始しないことも含む。また、縦切り細断部を細断方向とは逆向きに回転(逆回転)させる動作も含むことであってもよい。
【0012】
具体的手段としては、多板ディスク状回転カッターを回転する縦切り細断用駆動モータと、スパイラル状回転カッターを回転する横切り細断用駆動モータとを別々に備え、前記スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知すれば前記縦切り細断用駆動モータの駆動を停止して縦切り細断部の細断を行わないようにすることが該当する。
この手段において、横切り細断部のスパイラル状回転カッターが回転していないことを検知すれば、縦切り細断部の多板ディスク状回転カッターを細断方向とは逆向きに回転させるように縦切り細断用駆動モータを制御する。
【0013】
また、スパイラル状回転カッターが回転していないことを検知する手段は、スパイラル状回転カッターの回転軸に一体に設けたエンコーダディスクと、該エンコーダディスクに対応するエンコーダセンサの組み合わせによって構成することができる。
【0014】
さらに、エンコーダディスクはディスク外周に凹部と凸部とを周方向に沿って交互に複数組形成した歯車状とし、エンコーダセンサは光センサによって構成するという手段を用いる。光センサとしては、前記ディスク外周を挟み、前記凸部で光が遮断され、前記凹部で光が通過するように投光部と受光部とを配置した透過形フォトセンサ(光電センサ)が典型的であるが、その他のフォトセンサであってもよい。光センサが透過形フォトセンサである場合は、投光部と受光部とが予め光軸を合わせた状態で一体化されている溝形あるいはコの字形といわれるものを採用することが好ましい。
【0015】
さらにまた、各細断部と各モータの連結態様は歯車であってよいが、多板ディスク状回転カッター及びスパイラル状回転カッターの回転軸と、それぞれの駆動モータの駆動軸にはスプロケットを設け、該スプロケットに対応したチェーンによって前記駆動モータそれぞれを前記多板ディスク状回転カッター及び前記スパイラル状回転カッターそれぞれと連結するという手段も採用し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、何らかの不具合により横切り細断部が機能しないときに、その回転(未回転)を検知して、上段にある縦切り細断部の動作を停止するため、不用意に縦切り細断部から縦切り屑が排出されることがなく、これによって紙詰まりが回避されると共に、速やかに不具合を点検・修理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシュレッダー主要部の平面視概略図
【
図3】同、検知部の概略図であって、(a)は側面視概略図、(b)は正面視概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシュレッダーの主要部を示したもので、1は縦切り細断部、2は横切り細断部、3は縦切り細断用駆動モータ、4は横切り細断用駆動モータ、5は検知部である。
【0019】
縦切り細断部1は、一対の多板ディスク状回転カッター1a・1bを、その刃が互いに噛合した状態で紙Pの送り出し方向に回転するように配列してなり、
図2に示したように、当該噛合部を通過する紙Pを縦方向に細断してヌードル状の細長い縦切り屑Q1とする部分である。
【0020】
このような縦切り細断部1において、何れか一方の多板ディスク状回転カッター1aの回転軸1cと、縦切り細断用駆動モータ3の駆動軸3aとには、それぞれスプロケット6が設けられ、対応するチェーン7を架け渡すことで、モータ3の駆動力をチェーン7を介して多板ディスク状回転カッター1aに伝達して、これを回転可能としている。また、一対の多板ディスク状回転カッター1a・1bの回転軸1c・1dには歯車8が設けられ、これら歯車8が噛合することによって、これら多板ディスク状回転カッター1a・1bが同期して回転するようにしている。なお、多板ディスク状回転カッター1a・1bの回転方向は紙Pを細断する正回転の他、モータ3の回転方向を制御することによって、逆回転させることもできる。
【0021】
横切り細断部2は、複数の刃先を有するスパイラル状回転カッター2aと、
図2に示すように、その回転軌道上に刃先を位置させた固定カッター2bとを備え、縦切り細断部1から排出される縦切り屑Q1を上記スパイラル状回転カッター2aと固定カッター2bとで、さらに横方向に細断(横切り)する部分である。
【0022】
このような横切り細断部2において、スパイラル状回転カッター2aの回転軸2cと、横切り細断用駆動モータ4の駆動軸4aとには、それぞれスプロケット9が設けられ、対応するチェーン10を架け渡すことで、モータ4の駆動力をチェーン10を介してスパイラル状回転カッター2aに伝達して、これを回転可能としている。このスパイラル状回転カッター2aの回転方向は、縦切り細断部1から排出される縦切り屑Q1を横切り細断する正回転に限られ、通常、逆回転させる必要はない。
【0023】
また、横切り細断部2には、スパイラル状回転カッター2aの回転の有無を検知する検知部5が設けられている。
【0024】
この検知部5は、スパイラル状回転カッター2aの回転軸2cに一体に設けたエンコーダディスク5aと、エンコーダセンサ5bとを組み合わせてなる。このうちエンコーダディスク5aは、
図3に示したように、ディスク外周に凹部5cと凸部5dを周方向に沿って交互に複数組形成した歯車状である。一方、エンコーダセンサ5bは、エンコーダディスク5aを挟んで、投光部5eと受光部5fとを対向配置した透過形フォトセンサからなり、投光部5eと受光部5fの間に凹部5cが位置するときは光が通過し、凸部5dが位置するときは光が遮断される。
【0025】
したがって、この検知部5では、受光部5fに一定時間、光が間欠的に入力されればスパイラル状回転カッター2aが回転しているものと判定され、スパイラル状回転カッター2aが回転していること、即ち横切り細断部2が正常に動作中であることを検知することができる。逆に、一定時間以上、光が入力されないか、光が入力されっぱなしであれば、スパイラル状回転カッター2aは回転していないものと判定され、スパイラル状回転カッター2aが回転していないことを検知することができる。
【0026】
本実施形態に係るシュレッダーによれば、図示しない本体の電源を投入すれば、検知部5が動作して、スパイラル状回転カッター2aの回転の有無について監視が開始される。そして、実際に、紙Pを細断すべく、図示しないスタートボタンを押せば、通常であれば、縦切り細断用駆動モータ3と横切り細断用駆動モータ4が駆動して、多板ディスク状回転カッター1a・1bとスパイラル状回転カッター2aとが同時に回転して、縦切り細断と横切り細断が同時に行われる。
【0027】
このような通常運転に対して、スタートボタンを押したにもかかわらず、何らかの原因でスパイラル状回転カッター2aが回転していないことを検知部5が検知したならば、図示しない制御回路により縦切り細断用駆動モータ3への電力供給を停止するなどして多板ディスク状回転カッター1a・1bを回転させないようにして、縦切り細断に係る動作をキャンセルする。
【0028】
こうしたキャンセルは、細断スタート時に限らず、それまで通常運転にあったものが、その途中で、スパイラル状回転カッター2aの未回転を検知した場合にも同様に行う。
【0029】
したがって、多板ディスク状回転カッター1a・1bのみが回転する縦切り細断部1の単独運転によって、該縦切り細断部1から排出される縦切り屑Q1が横切り細断部2との間で詰まることを未然に防止することができる。よって、本実施形態のシュレッダーでは、横切り細断部2にモータ4の故障や配線の不具合等があって、正常に動作しない場合には、追い打ちをかけて紙詰まりが発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 縦切り細断部
1a・1b 多板ディスク状回転カッター
1c・1d 回転軸
2 横切り細断部
2a スパイラル状回転カッター
2b 固定カッター
2c 回転軸
3 縦切り細断用駆動モータ
3a 駆動軸
4 横切り細断用駆動モータ
4a 駆動軸
5 検知部
5a エンコーダディスク
5b エンコーダセンサ(透過形フォトセンサ)
5c 凹部
5d 凸部
5e 投光部
5f 受光部
6・9 スプロケット
7・10 チェーン
8 歯車