特許第6688046号(P6688046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688046X線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688046
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】X線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/02 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   A61C7/02
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-224329(P2015-224329)
(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公開番号】特開2017-86771(P2017-86771A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】515318876
【氏名又は名称】分山 英次
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】分山 英次
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0044745(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0176182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略三角環状のアンカースクリューのねじ込み位置特定部と
じ込み位置特定部に対応した環状のアンカースクリューのねじ込み方向特定部と
各特定部を連結して隣接する歯間に跨持するようにU字状に折曲げ変形可能な直線状の連結部と、で構成し、
しかも、各特定部及び連結部は、塑性変形可能な金属ワイヤで連続的に形成され、
さらに、ねじ込み位置特定部は、
連結部に三角形の一頂点で連結すると共に同連結頂部から外方拡開した左右斜辺を有し、同左右斜辺先端同士の間は複数の波状谷部と複数の波状山部とを交互に連続的に形成して波状としたことを特徴とするX線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、歯科矯正方法として歯科矯正用アンカースクリュー(以下、単に「アンカースクリュー」ともいう。)を用いたインプラント矯正治療法が普及している。
【0003】
これまで矯正が困難であった症例、例えば大臼歯や歯列全体を移動する必要のある症例では、従来、矯正歯科治療を施すにあたり、ヘッドギア等の顎外固定装置の装着を要していた。
【0004】
しかしながら、近年提案されているアンカースクリューを用いたインプラント矯正治療法によれば、上記のような症例において、歯槽骨に植立されたアンカースクリューを矯正力をかけるための絶対的固定源とすることができるため、顎外固定装置を要せず、患者負担の観点からより優れている治療法であるといえる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「歯科矯正用アンカースクリューのガイドライン」、一般社団法人 日本矯正歯科学会、2012年9月26日、p.4―13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の治療に使用するアンカースクリューは、歯牙の歯根に接触しないように歯ぐき内部の歯槽骨に正確に螺入することで、植立したアンカースクリューによって患者が感じる違和感や不快感を軽減することができる。
【0007】
ところが、アンカースクリューの施術に際しては、術前のX線検査で得られたX線画像をもとに歯根に接触しないアンカースクリュー螺入位置の確認を行った後、二次元的に示されたX線画像と実際の三次元的な患者の歯列の状態を交互に参照しながら、医師や歯科医師等の施術者の頭の中で次元の違いを補完しつつ植立するのが一般的である。
【0008】
すなわち、アンカースクリューのねじ込み位置や方向は、未だ施術者の経験の多寡に依存するのが現状である。
【0009】
万一、術後のアンカースクリューのねじ込み位置や方向が不安定である場合には、アンカースクリューの動揺や脱落、周囲粘膜の感染、炎症に伴う痛みや腫れ、歯根の損傷、アンカースクリューの破折等のインプラント矯正治療におけるリスクが生じることとなる。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、施術者の経験の多寡に可及的依存することなく、歯科矯正用アンカースクリューの植立を安定して行なうことができる歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るX線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具では、略三角環状のアンカースクリューのねじ込み位置特定部と、ねじ込み位置特定部に対応した環状のアンカースクリューのねじ込み方向特定部と各特定部を連結して隣接する歯間に跨持するようにU字状に折曲げ変形可能な直線状の連結部と、で構成し、しかも、各特定部及び連結部は、塑性変形可能な金属ワイヤで連続的に形成され、さらに、ねじ込み位置特定部は、連結部に三角形の一頂点で連結すると共に同連結頂部から外方拡開した左右斜辺を有し、同左右斜辺先端同士の間は複数の波状谷部と複数の波状山部とを交互に連続的に形成して波状としたことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るX線撮影に使用する歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具によれば、略三角環状のアンカースクリューのねじ込み位置特定部と、ねじ込み位置特定部に対応した環状のアンカースクリューのねじ込み方向特定部と各特定部を連結して隣接する歯間に跨持するようにU字状に折曲げ変形可能な直線状の連結部と、で構成し、しかも、各特定部及び連結部は、塑性変形可能な金属ワイヤで連続的に形成され、さらに、ねじ込み位置特定部は、連結部に三角形の一頂点で連結すると共に同連結頂部から外方拡開した左右斜辺を有し、同左右斜辺先端同士の間は複数の波状谷部と複数の波状山部とを交互に連続的に形成して波状としたため、施術者の経験の多寡に可及的依存することなく、歯科矯正用アンカースクリューの植立を安定して行なうことができる。
【0015】
また、アンカースクリューねじ込み位置、すなわちアンカースクリューの植立位置決定のための大がかりな設備を要することなく、アンカースクリュー施術法に用いられている一般的な設備を利用して短時間で精密な植立位置の特定を行うことができる。
【0016】
さらに、植立位置のための特殊な設備が不要となるため、インプラント矯正治療法にかかる費用を低減化でき、施術者や患者の経済的負担を軽減することができる。
【0017】
また、ねじ込み位置特定部を波状に形成したことで、同ねじ込み位置決め具を歯間に跨持装着させた状態で、アンカースクリューのねじ込みしようとする予測位置に対応させ、レントゲン映像上で環状に形成したねじ込み方向特定部に対して波状の谷部や山部を目盛りの如く機能させて、歯牙の歯根を避けた歯槽骨の位置にアンカースクリューのねじ込み位置を容易に特定することができる。すなわち、アンカースクリューねじ込み位置について、歯根に干渉しない歯槽骨上の歯ぐき表面における上下左右方向位置の調節範囲面積を可及的大とすることができる。
【0018】
また、ねじ込み方向特定部を環状に形成したことで、X線画像において頬側の歯ぐきに配置した波状のねじ込み位置特定部との位置関係の判別を容易とし、歯根に干渉しない歯槽骨の舌側の歯ぐきに位置させて、アンカースクリューの先端方向を特定することができる。
【0019】
また、ねじ込み位置特定部とねじ込み方向特定部とを連結するU字状連結部は、連結部の両端にそれぞれ設けた方向特定部と位置特定部とが歯根に干渉しない位置の歯槽骨を介して対照となるように位置させつつ、ねじ込み位置特定部とねじ込み方向特定部とが対向する正確な位置で、精密な事前検討に供するためのX線画像の撮影をする際の撮影方向の標識とすることができる。
【0020】
すなわち、本発明に係るX線撮影に使用するねじ込み位置決め具を用れば、隣接した歯間にU字状連結部を跨持させることにより頬側の歯ぐきにアンカースクリューのねじ込み位置特定部を配置し、舌側の歯ぐきにアンカースクリューのねじ込み方向特定部を配置し、予め頬側の歯ぐきに特定したアンカースクリューのねじ込み位置に波状のねじ込み位置特定部の波状谷部を対応位置させ、次いで、X線画像を見ながらアンカースクリューのねじ込み方向をねじ込み方向特定部の位置調整を行いながら確定し、次いで、アンカースクリューをねじ込み位置特定部からねじ込み方向特定部に向ってねじ込むこととしたため、施術前のX線検査ではX線画像上で歯根への接触を避けたアンカースクリューのねじ込み位置と方向の特定を比較的簡単に且つ精密にすることができる。さらに、施術時にはX線検査で植立位置を事前特定したX線画像を参照しながら目視下で歯間に固定された同歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を指標として施術を行うことができ、施術者の経験の多寡に左右されない安定したアンカースクリューねじ込みを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を用いてアンカースクリューを植立した状態を示した説明図である。
図2】歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具の構成を示した説明図である。
図3】歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具の形成過程を示した説明図である。
図4】咬合面視における歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具の跨持状態を示した説明図である。
図5】歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を用いたねじ込み位置の特定工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、アンカースクリューのねじ込み位置と方向を定めるためのターゲットを備え、アンカースクリューのねじ込み位置と方向を精密に特定可能な歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具(以下、単に「位置決め具」ともいう。)を提供するものである。
【0023】
前述のように、従来、アンカースクリューの植立は、施術者の技量に大きく左右されるものであった。
【0024】
アンカースクリューの植立位置をより精密に事前検討する方法としては、様々な歯科矯正施術用の補助器具を用いて行うことも考えられる。例えばX線CTを用いて断層撮影を行い、3D画像または3Dプリンタで歯牙の状態を再現した立体模型で検討したり、通常のX線撮影を用いて多角的に複数回の撮影を行ったり、印象採得による患者の歯型を用いるなどして、施術前の検討をすることが考えられる。
【0025】
しかしながら、X線撮影時点においても精密な検討を可能とする位置へX線の撮像ポイントを設定しなければならず依然として施術者の技量に依存していた。すなわち客観的指標にかけるX線撮影では、やみくもに撮影回数を増加させて患者へ無用な被ばくを強いることとなる。また、印象採得等によって患者の歯牙状態を立体的な模型として再現するにしても、模型の完成までに要する時間や材料費等がかかりすぎて現実的な事前検討の方法とは言えない。さらに、X線CTのように高価な設備を有する歯科医院は限られており、また、X線CTによって術前の事前検討するにしても上述した被ばくリスクが増大する問題がある。
【0026】
そこで本発明者は、一般的な矯正歯科に備えられた歯科矯正施術の補助器具を用いつつも、施術者の経験の多寡に依存することなく、アンカースクリューの植立をより安全に行い、植立の成功率を向上させ、施術後のリスクを回避すべく鋭意検討した。
【0027】
その結果、本発明者は、歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を開発し、同位置決め具を用いて施術前のX線検査にてアンカースクリューのねじ込み位置と方向を精密に事前特定することで、施術時にはX線検査のX線画像とともに目視下で同歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を指標として、より正確な植立施術を可能とすることでかかる問題点が解決されることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0028】
特に、本実施形態に係る位置決め具に特徴的には、基端縁を波状に形成してアンカースクリューのねじ込み位置特定部(以下、単に「位置特定部」ともいう。)とし、先端を環状に形成して位置特定部に対応したアンカースクリューのねじ込み方向特定部(以下、単に「方向特定部」ともいう。)とし、各特定部を隣接する歯間に跨持するU字状連結部で連結した極細金属ワイヤよりなることとしている。
【0029】
位置決め具の素材は、成形性が良好で、且つ、塑性変形後の保形性を有する素材であればよく、樹脂や金属を採用することができる。例えば金属を採用した場合には、鉄、チタン、モリブデン、ニッケル、クロム、又はこれらの素材を組み合わせた合金としてもよい。このうち、鉄とクロムからなるステンレス合金やチタン系合金素材である豊通マテリアル社製のゴムメタル(登録商標)をワイヤ素材として採用すれば、ワイヤ直径を小として優れた強度を保持しつつ良好な成形性と保形性を実現できる。
【0030】
また、樹脂の場合は形成した位置決め具が隣接する歯牙に沿って塑性変形可能な素材であれば良く、その樹脂中に金属粉等を混入させておくことで、X線撮影をした際にX線画像上に位置決め具を明瞭に映し出すことができる。
【0031】
また、素材をステンレスとした場合の極細金属ワイヤの直径は、0.1〜0.7mmの範囲であればよく、好ましくは0.2〜0.4mmの範囲であれば、X線画像上で位置決め具の各特定部の陰影を的確に把握できる。
【0032】
また、位置特定部は、施術者がX線画像を参照した際に、アンカースクリューを螺入可能な部位(歯根を避けつつ螺入可能な部位)を見定めたポイントが、同じくX線画像上に撮影された位置特定部のどの辺りになるのか目測を付けることができる形状であれば良い。この位置特定部の形状は、例えば波形としたり櫛歯状とすることが可能である。
【0033】
例えば波形とした場合、具体的には、歯列の表裏に跨る状態で隣り合う歯牙間に位置決め具を跨設してX線撮影をすると、得られたX線画像上には、患者の歯根間隔や歯槽骨の状態と共に、跨設した位置決め具が写し出されることとなる。
【0034】
そこで施術者は、まず、X線画像の歯根や歯槽骨の状態を参照してアンカースクリューを螺入可能な部位を見定める。
【0035】
また、施術者は、方向特定部についても、X線画像を参照し、歯根に干渉せず、歯槽骨に所望の状態で螺入できる方位にあることを確認する。もし、方向特定部が所望する方位ではない場合は、X線画像を参照しつつ実際に装着されている方向特定部の位置を修正して再度X線撮影を行っても良い。この方向特定部の形状は、例えば三角形としたり多角形とすることが可能である。
【0036】
次に、施術者は、見定めた部位が、X線画像上に映し出された波形の位置特定部の何番目の山(谷)に相当するのかを確認する。
【0037】
そして、実際に患者の口腔内に装着された位置決め具を目視し、何番目の山(谷)など特定した位置を刺入点としてアンカースクリューの先端を当てがい、歯列の表裏双方を確認しつつ方向特定部へ向けて所定の器具を用いて螺入する。
【0038】
このように、本実施形態に係る位置決め具を用いてアンカースクリューの植立を行うことにより、X線画像の情報と実際の患者の歯牙の状態とが、位置決め具により歯根を避けるための方位を反映させた状態でリンクすることとなるため、二次元的に示されたX線画像と実際の三次元的な患者の歯列の状態を交互に参照しつつ施術者の頭の中で次元の違いを補完するという経験や技量が必要となる作業を省力化することができ、施術者の経験の多寡に可及的依存することなく、歯科矯正用アンカースクリューの植立を安定して行なうことができる。
【0039】
また、前述の方向特定部は、歯列の垂直方向においてアンカースクリューを歯槽骨に螺入した際にアンカースクリューの先端の目標点を特定できる形状であればよい。特に、X線画像上で位置特定部と区別するため、位置特定部の形状や大きさと異なる形状や大きさとすることが好ましい。
【0040】
また、これらの位置特定部や方向特定部を環状に形成すれば、X線画像において舌側(歯列裏面側)の方向特定部と頬側(歯列表面側)の位置特定部との陰影が稜線となって表れることでアンカースクリューを植立する正確な位置と方向の関係が把握しやすくなる。
【0041】
また、位置特定部の大きさは、患者の歯牙の歯根に干渉しない歯間の歯槽骨が存在する領域(以下、歯槽骨領域と称す。)をカバーできる範囲で形成されていれば良く、患者の歯槽骨領域には個人差があるため具体的な大きさについては特に限定されることはない。特に、この位置特定部は、歯槽骨内部におけるアンカースクリューの螺入方向を決定づける刺入位置を決定するものであることから、後述するように、初診時の患者の歯牙状態を把握するため歯牙全体の状態が表れたパノラマX線画像で予測した歯槽骨領域(以下、予測歯槽骨領域と称す。)と、施術前の事前検討として撮影した局所的撮影を可能とするデンタルX線画像で患者の個人差が反映された実際の歯槽骨領域と、の乖離をカバーできるように、位置特定部によるアンカースクリューの刺入点の選択範囲を可及的に大きくしておくことが重要である。
【0042】
また前述したように、位置特定部を規則形状、例えば、櫛歯状に形成してもよいし、正弦波状や三角波状に形成することとしてもよい。このように構成することで、アンカースクリューのねじ込み位置として予測歯槽骨領域の歯ぐき表面に位置特定部を対応位置させ、X線画像において舌側の方向特定部に対して頬側の位置特定部の規則形状を歯牙の左右方向において目盛りの如く機能させて、歯間の歯槽骨領域を介した方向特定部との位置関係の把握を容易とすることができる。
【0043】
また、位置特定部を波状に形成した場合には、規則形状の起伏として形成された谷部や山部の形状は特に限定さることはない。特に、谷部の底や山部を角部を無くしたアール状に形成することで、歯牙及び歯ぐきに装着した際に不意の損傷を防ぐことができる。
【0044】
また、谷部や山部の数は一見して視認できる程度であればよく、特に限定されることはない。この谷部や山部は位置特定部の内方や外方に突出して形成することで、X線画像において歯槽骨領域における歯ぐき表面の刺入点の左右方向(歯列左右方向)の位置だけでなく、それぞれの形状位置を指標として歯牙の咬合面から歯牙根尖方向(歯列垂直方向)における相対的な刺入点の高さ位置についても特定を可能としている。すなわち、X線画像上に実際に示された歯槽骨領域について、これらの谷部や山部の位置を基準として歯列左右方向や歯列垂直方向における理想的な刺入点までの相対的な距離が測れればよく、位置特定部の内側だけでなく外側にも刺入点の位置が特定できる。
【0045】
以下、本実施形態に係る歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具、及び、歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を用いたアンカースクリューのねじ込み方法について、その構造や使用方法について触れながらより詳細に説明する。
【0046】
[1.歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具]
まず、アンカースクリューのねじ込み位置の決定に使用する、本実施形態に係る歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具について、図1図3を用いて説明する。図1は、歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具を用いてアンカースクリューが植立された状態を示す頬側から見た説明図である。図2は、歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具の構成を示す説明図であり、図3は歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具の形成過程を示した説明図である。
【0047】
本発明に係る歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具(以下、ガイドワイヤと称す。)は、施術時におけるアンカースクリューの植立位置と植立方向をガイドしてアンカースクリューを用いたインプラント矯正治療施術を補助するものである。図1に示すように、本実施形態に係るガイドワイヤGは、複数の矯正用ブラケットBとそれらを連結する矯正用ワイヤーCが装着された歯列Tにおいて、矯正を施す歯牙T1に矯正力を負荷させるための絶対的固定源となるアンカースクリューSを植立する際に用いるものである。下顎右側の歯列Tの歯牙T1に対して奥歯方向に矯正力をかけるアンカースクリューSは、歯間に跨持装着されたガイドワイヤGによってガイドされて、隣接する歯牙の歯根を避けて、その間にある歯槽骨Eに対して正確に植立されている。なお、アンカースクリューSは、径1.6mm・長さ8mm(Jeil Medical社製 デュアル・トップ・オートスクリュー)のスクリューを用いている。
【0048】
アンカースクリューSのねじ込み位置や方向を事前決定するために用いるガイドワイヤGは、図2に示すように、極細金属ワイヤ1の基端縁を波状に形成してアンカースクリューSのねじ込み位置を特定する位置特定部2と、先端を環状に形成して位置特定部2に対応したアンカースクリューのねじ込み方向を特定する方向特定部3と、位置特定部2と方向特定部3とを両端で連結する連結部4と、により構成されている。
【0049】
すなわち、図3(a)及び(b)に示すように、ガイドワイヤGは、所定長さの単線からなる極細金属ワイヤ1の一端側中途部に舌側に配置させるO状の方向特定部3をねじって形成し、方向特定部3を介して残りの一端側の極細金属ワイヤ1と他端側の極細金属ワイヤ1とを互いにらせん状にねじり合わせて連結部4を撚糸直線状に形成し、他端側の残りの極細金属ワイヤ1で頬側に位置する波状の位置特定部2を形成し、極細金属ワイヤ1他端を連結部4に巻き付けて溶接して形成している。
【0050】
この撚糸直線状の連結部4の径は極細金属ワイヤ1の径よりも約2倍となっているため、後述するように、ガイドワイヤGをU字状に屈曲した場合にはより塑性変形による保形性に優れ、ガイドワイヤGを歯間に跨持させた状態で接着剤で接着固定するする場合には接着剤と連結部4との接触面積を可及的に大として歯間への接着固定を堅実としている。
【0051】
なお、かかる極細金属ワイヤ1は、直系約0.3mmのステンレス線(ロッキーマウンテンモリタ社製リガチャーワイヤー・0.012インチ)を採用しており、良好な成形性且つ保形性と優れた強度を有している。
【0052】
ガイドワイヤGの位置特定部2は、頬側に配置してアンカースクリューSのねじ込み位置の特定、つまり頬側の歯ぐき側面上のアンカースクリューS先端の刺入点を特定する部位として機能し、極細金属ワイヤ1の基端縁を角部を無くした略同振幅の周期的な正弦波状の底辺を有する略三角形状に形成している。すなわち、位置特定部2は、直線状の連結部4の一端に位置特定部2の略三角形の1頂点で連結されており、それぞれ外方拡開気味のアール状に形成した左右斜辺5L、5Rと、連結頂点に対応する略三角形の底辺には所定間隔を隔てて略同一の長さで内方に凹ませて形成した複数の波状谷部6(本実施形態では3つ)と、外方に突出形成した波状山部7(本実施形態では4つ)と、を有している。なお、本実施形態においては、位置特定部2は、斜辺約7〜15mm・高さ約5〜13mm・底辺(波状山部7aから波状山部7dまでの長さ)約6〜15mmの略三角形状として一般的な患者の歯槽骨領域に対応可能な範囲の面積に形成している。
【0053】
位置特定部2に形成した複数の波状谷部6や波状山部7は、アンカースクリューSの植立位置を確定するために歯列左右方向に対して位置目盛りの如く機能し、後述するように、頬側の歯ぐき表面上に予測歯槽骨領域に位置特定部2を対応位置させ、X線画像において舌側の方向特定部3に対応する頬側の位置特定部2の波状谷部6や波状山部7の位置を指標として、アンカースクリューSを植立しようとする歯根の間の歯槽骨の位置の把握を容易としている。
【0054】
また、位置特定部2の左右斜辺5L、5Rは、左右対照位置をそれぞれ内外に屈曲させることで位置特定部2の高さを伸縮自在としている。
【0055】
ここで、アンカースクリューSは、通常、歯牙周囲に存在する歯ぐきのうち歯肉の動かない部分(以下、付着歯肉と称す。)に刺入点を位置させて歯ぐき内部の歯槽骨に植立することが、術後の口内炎予防や痛みを防止するために好ましいが、この付着歯肉の範囲には個人差がある。
【0056】
そこで、位置特定部2の左右斜辺5L、5Rを伸縮自在として波状谷部6や波状山部7の高さ位置、すなわち歯列垂直方向の高さ位置を付着歯肉領域に合わせて調整することにより、個々の患者の歯ぐきの付着歯肉領域に合わせた理想的な刺入点の高さ位置の調整を可能としている。
【0057】
一方で、ガイドワイヤGの方向特定部3は、舌側に配置してアンカースクリューSのねじ込み方向、すなわち歯槽骨にアンカースクリューSの螺入方向を定める目標点を特定する部位として機能し、円環のO状に形成している。すなわち、このO状部の中心をアンカースクリューSの先端の目標点として定めることでアンカースクリューSの螺入方向を特定し、アンカースクリューSの歯根を避けた歯槽骨E内部へのねじ込みを可能としている。なお、本実施形態においては、方向特定部3は、直径約2〜4mmの略真円の環形状とし、位置特定部2の略三角形状面積よりも狭く形成しており、後述するようにX線画像上で示された位置特定部2と方向特定部3との陰影の差異を明確に判別できるようにしている。
【0058】
このように形成された位置特定部2と方向特定部3とを、撚糸直線状の連結部4の両端に軸線上に位置するように連結して、図2及び図3(b)に示す未使用状態のガイドワイヤGが構成されている。より具体的には、位置特定部2と方向特定部3とは、位置特定部2の略三角環状面と方向特定部3のO環状面を面一とし、直線状の連結部4の仮想直線(図2図3(d)一点鎖線で示した軸線)により位置特定部2の略三角形状と方向特定部3のO形状を略二等分するように、連結部4の両端でそれぞれ連結されている。なお、本実施形態では、連結部の長さを約20mmとし、未使用状態のガイドワイヤGの長さを約30mmとなるように形成している。
【0059】
そして、ガイドワイヤGを使用可能な形状とするには、図3(c)に示すように、位置特定部2の略三角環状面と方向特定部3のO状面とが対向するように連結部4を略U字状に屈曲する。つまり、連結部4のうち、方向特定部3側の一端から約10mmの位置にある略中央位置、及び、連結部4と位置特定部2との結合部近傍位置の2箇所で屈曲して、U字状底部に相当する略直線状の直線部8を有した略U字状のガイドワイヤGを形成する。
【0060】
このようにガイドワイヤGを略U字状に屈曲形成することで、位置特定部2と方向特定部3とのそれぞれの面を対向するように位置させ、アンカースクリューSの植立目標とする歯ぐき近傍の歯牙の歯間に跨持可能としている。なお、略U字状に屈曲させた2箇所の角部は、後述するガイドワイヤGの装着工程の際に患者の歯ぐき幅へ合わせることができるように拡開縮小の調節を容易とするするため、丸みをもたせている。
【0061】
[2.歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み方法]
次に、本実施形態に係るガイドワイヤGを用いた歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み方法について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、咬合面視において歯間にガイドワイヤGを装着した状態を示した説明図である。図5右図は、ガイドワイヤGを跨設した状態の下顎歯列を頬側視で示した説明図であり、図5左図は、ガイドワイヤGを跨設した状態のA−A´断面を示した説明図である。また、図5(a)は、歯間にガイドワイヤGを装着固定した状態を示し、図5(b)は、X線撮影状態を示し、図5(c)は、アンカースクリューSをねじ込んだ状態を示している。
【0062】
ここで、本実施形態に係るガイドワイヤGを用いた歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み方法は、大きくアンカースクリューをねじ込むための位置や方向を特定するアンカースクリューのねじ込み角度特定工程と、アンカースクリューをねじ込み位置特定部からねじ込み方向特定部に向ってねじ込むアンカースクリューのねじ込み工程とに分けられる。
【0063】
さらに、アンカースクリューねじ込み角度決定工程は、ガイドワイヤを隣接した歯間にU字状連結部を跨持させることにより頬側の歯ぐきにアンカースクリューのねじ込み位置特定部を配置し、舌側の歯ぐきにアンカースクリューのねじ込み方向特定部を配置し、予め特定したアンカースクリューのねじ込み位置に波状のねじ込み位置特定部の波状谷部を対応位置させるガイドワイヤ装着位置調整工程と、X線画像を見ながらアンカースクリューのねじ込み方向をねじ込み方向特定部の位置調整を行いながらねじ込み位置と方向を確定するアンカースクリュー植立位置確定工程とに分けられる。
【0064】
まず、本実施形態に係るガイドワイヤGを隣接する歯間に跨持固定するガイドワイヤ装着位置調整工程について説明する。図4は、ガイドワイヤGを歯牙間に装着した状態を示した説明図である。
【0065】
ガイドワイヤGの歯牙間への装着は、図4に示すように、U字屈曲したガイドワイヤGのO状の方向特定部3を舌側の歯ぐきに、また、波状の位置特定部2を頬側の歯ぐきに配置するように、隣接した歯牙の歯間にU字状連結部4を跨持させることで行う。
【0066】
この時、ガイドワイヤGのU字状連結部4を、図4の二点鎖線で示すように、歯列Tに対して垂直に位置付けるようにして行う。すなわち、ガイドワイヤGは、U字状連結部4の直線部8が舌側及び頬側の歯間で歯牙の歯冠表面に接触するように配置し、O状の方向特定部3が舌側から、且つ、波状の位置特定部2が頬側から、歯牙の歯間の略真下の歯ぐきに配置するように歯牙の歯間に跨持する。このような状態でガイドワイヤGを設置した歯間の略真下の歯ぐきは、ガイドワイヤGのU字状連結部4を介して位置特定部2と方向特定部3によって挟持された状態となる。
【0067】
そして、この挟持状態の位置付けは、予め特定したアンカースクリューSのねじ込み位置に波状の位置特定部2の波状谷部6を対応位置させることで行う。具体的には、初診時に撮影した上下の歯列T全体のパノラマX線写真またはデンタルX線写真をもとに、歯槽骨Eと歯牙の状態をある程度把握して特定したアンカースクリューSのねじ込み位置や方向とすべき予測歯槽骨領域を介して位置特定部2と方向特定部3とが対向するように歯ぐき表面にそれぞれ位置するようガイドワイヤGの歯間への装着位置を微調整する。
【0068】
次いで、図5(a)に示すように、歯間に跨持した状態のガイドワイヤGのU字状連結部4を接着剤Hを用いて歯牙の歯間に接着固定する。具体的には、舌側においてはガイドワイヤGのU字状連結部4と隣接する歯牙の歯冠表面との対応位置に、頬側においては矯正用ブラケットB同士を連結する矯正用ワイヤーCとU字状連結部4との交点位置に、それぞれ接着剤Hをスポット塗布してLED光重合器で照射硬化し、ガイドワイヤGを歯間に跨持固定する。
【0069】
次いで、前述の如く、頬側に配置した歯ぐき表面のうちアンカースクリューSの適切な刺入する位置である付着歯肉領域にガイドワイヤGの位置特定部2の波状谷部6や波状山部7を位置させるべく、左右斜辺5L、5Rの左右対照となる水平位置を内外に屈曲させることで位置特定部2の波状谷部6や波状山部7の高さを変位調節する。なお、本実施形態では、外方屈曲により位置特定部2の波状谷部6の高さを歯牙の垂直方向に短くして、付着歯肉領域に波状谷部6を対応位置させている。
【0070】
次いで、図4及び図5(b)を参照しながら、X線センサを用いてX線撮影を行いアンカースクリューSを植立する位置を確定するアンカースクリュー植立位置確定工程を説明する。
【0071】
まず、患者にX線センサホルダーを軽く噛んでもらい、X線センサホルダーが動かないように固定した後、X線センサに搭載されたX線管球RをガイドワイヤGのU字状連結部4の直線部8の延長長線上(図4、2点鎖線上)に位置して、撮影目標に対して局所的な画像処理に優れたデンタルX線写真を撮影する。
【0072】
すなわち、歯間に跨持したガイドワイヤGのU字状連結部4の直線部8は、図4に示すように咬合面からみて歯列に対し垂直に位置しているため、図5(b)に示すように、直線部8の延長直線上にX線管球Rを配置してX線撮影を行うことで撮像角度を一定にし、ガイドワイヤGの陰影を的確に捉えて精密な写像を撮影することを可能としている。
【0073】
そして、このような撮像角度により得られたX線画像により、歯間に跨設したガイドワイヤGの位置特定部2や方向特定部3、及び、その間に介在する歯槽骨E領域のそれぞれの対応する位置関係を、より正確な2次元的位置関係に置換して精密なアンカースクリューSの植立位置の事前検討に供することを可能としている。
【0074】
なお、X線画像上、患者の歯根がねじれていたりするなどして実際の歯槽骨E領域から位置特定部2や方向特定部3がずれている場合等、適切なX線の撮像ポイントからずれていると感じた場合には、X線管球Rの位置を微調整して再撮影を行う。すなわち、図5(b)の右図に示すように、X線画像上に表わされた隣接する歯牙の歯根の間の実際の歯槽骨E領域に対する位置特定部2の波状谷部6や波状山部7の陰影や方向特定部3の陰影との位置関係を確認して、適切な撮像ポイントへX線管球Rの位置を補正して再撮影を行う。
【0075】
このようにして得られたX線画像のうち、参考とするX線画像を数枚選び出し、そのX線画像において位置特定部2の複数の波状谷部6や波状山部7のうち歯間の歯槽骨E領域に配置された波状谷部6や波状山部7からアンカースクリューSを刺入したい刺入点の位置(以下、刺入点位置と称す。)、すなわち、ねじ込み位置を検討して特定する。具体的には、後述する方向特定部3により特定されるアンカースクリューSの目標点と対応する位置関係を考慮しつつ、複数の波状谷部6(波状山部7)のうち何番目の波状谷部6(波状山部7)が歯槽骨E領域内において刺入点位置に対応するかを検討し、対応する波状谷部6(波状山部7)を基準位置として刺入点位置までの相対的距離を測ることで刺入点を特定し、刺入点となる印をX線画像上に外科用マーキングペンでマークする。なお、本実施形態では、中央の波状谷部6bが歯槽骨E領域内における刺入点位置に対応している。
【0076】
ここで、前述したように、位置特定部2が隣接する歯牙の一方側に少しずれていたり歯根の形状が湾曲していたり等、実際の歯槽骨E領域から多少外れていたとしても、参考とするX線画像をもとに、位置特定部2を指標として歯槽骨E領域内における刺入点位置の特定が可能である。すなわち、位置特定部2は歯列左右方向や歯列垂直方向に波状谷部6や波状山部7を有して幅広に形成されているため、複数の波状谷部6や波状山部7の何れかが歯槽骨E領域内の刺入点位置、すくなくとも歯槽骨E領域に存在することとなり、これら複数の波状谷部6や波状山部7が目盛りの如く機能してアンカースクリューSの刺入点位置の特定を可能としている。
【0077】
同様にして、X線画像上において、刺入するアンカースクリューSの先端螺入方向を決める方向特定部3のO部により、歯槽骨E領域内におけるアンカースクリューSの先端目標とする目標点の位置(以下、目標点位置と称す。)を特定し、目標点位置となる印を外科用マーキングペンでマークする。なお、X線画像上、方向特定部3のO部が実際の歯槽骨E領域から外れてしまっている場合には、前述した位置特定部2の場合と同様に、位置特定部2によって特定される刺入点位置との位置関係を考慮しつつ、O部の陰影を基準位置として歯槽骨E領域内における目標点位置との相対的な距離を測ることでアンカースクリューSのねじ込み方向を特定することが可能である。
【0078】
次いで、X線画像と歯間に跨設したガイドワイヤGをそれぞれ同一のアンカースクリューSの刺入点位置や目標点位置の判断基準として、歯根を避けるための方位を反映させた状態のX線画像の情報を、実際の患者の口腔内に対して反映させる。すなわち、精密なアンカースクリューSの植立位置としてX線画像上のガイドワイヤGの位置特定部2により特定した刺入点位置や方向特定部3により特定した目標点位置の印を、実際に歯間に装着したガイドワイヤGの位置特定部2や方向特定部3を比較しつつ、これらの相対的位置から頬側及び舌側の歯ぐき表面上の刺入点位置や目標点位置までの距離を測り特定し、外科用マーキングペンを用いて実際のアンカースクリューSの刺入点位置となるマーキングポイントP1及び目標点位置となるマーキングポイントP2をマークする。
【0079】
次いで、アンカースクリューのねじ込み工程では、X線画像上のガイドワイヤGの位置特定部2と方向特定部3の陰影とマークした刺入点位置と目標点位置、及び、実際に歯間に跨設したガイドワイヤGの位置特定部2と方向特定部3と歯ぐきにマークした刺入点位置と目標点位置との相対的な位置関係を比較しつつ、参考したX線画像を撮影した際のX線管球Rの撮影方向で、図5(c)に示すように、麻酔下でアンカースクリューSを頬側の刺入点であるマーキングポイントP1から舌側の目標点であるマーキングポイントP2に向って螺入して植立する。
【0080】
すなわち、歯槽骨E領域をX線画像で参照するとともに、実際の患者の歯槽骨E領域に調整して跨持固定したガイドワイヤGのうち、アンカースクリューSの刺入点位置を波状の位置特定部2で視認し、また、アンカースクリュー刺入目標方向をO状の方向特定部3で視認しつつ、位置特定部2のマーキングポイントP1から方向特定部3のマーキングポイントP2へ向かって手動式および電動式スクリュードライバーにてアンカースクリューSのねじ込みを行う。
【0081】
このようにして本実施形態に係る歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具(ガイドワイヤG)を用いて、施術前に歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置と方向を精密に特定しておくことで、施術者の経験の多寡に依存することなく、図2に示したように、歯牙の歯根を避けて、その間にある歯槽骨Eに対してアンカースクリューSを正確且つ安全に植立することが可能となる。
【0082】
すなわち、本実施形態に係る歯科矯正用アンカースクリューのねじ込み位置決め具(ガイドワイヤG)は、二次元的に示されたX線画像と実際の三次元的な患者の歯列の状態を交互に参照しつつ施術者の頭の中で次元の違いを補完するという予測や経験や技量が必要となる作業を省力化しつつも、精密且つ速やかな施術前検討を可能とし、施術者の経験の多寡に可及的依存することなく、歯科矯正用アンカースクリューの植立を安定して行なうことを可能としている。
【0083】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
G ガイドワイヤ
1 極細金属ワイヤ
2 位置特定部
3 方向特定部
4 連結部
5L 左斜辺
5R 右斜辺
6 波状谷部
7 波状山部
図1
図2
図3
図4
図5