(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載カメラや監視カメラの用途では、夜間でも使用可能なようにFナンバーが小さいことが求められる。また、広い画角を有し、かつ、結像領域中心部だけでなく結像領域周縁部まで良好な画像を取得可能なことも望まれている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレンズ系は、車載カメラや監視カメラに用いるにはFナンバーが小さいとは言えず、残存収差も多いため結像領域周縁部まで高い解像力を得ることができない。特許文献2、3に記載の6枚構成のレンズ系は、色収差、コマ収差の補正が不足しており、結像領域周縁部まで高い解像力を得ることができない。特許文献4〜6に記載の撮像レンズは、近年の要望に応えるにはさらなる広角化が望まれる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、Fナンバーが小さく、広角で、コンパクトに構成され、結像領域中心部から結像領域周縁部まで良好な画像を取得可能な撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像レンズは、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズと、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズと、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズと、両凸形状で正の屈折力を有する第4レンズと、両凸形状で正の屈折力を有する第5レンズと、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズとから実質的になり、下記条件式(1)を満足することを特徴とする。
R3/f<0 (1)
ただし、
R3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
f:全系の焦点距離
【0008】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(1−1)を満足することが好ましい。
−300<R3/f<−2 (1−1)
【0009】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
−2.1<f1/f<−1.3 (2)
−2.0<f1/f<−1.4 (2−1)
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0010】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3−1)を満足することがより好ましい。
−3.5<R4/f<−2.0 (3)
−3.2<R4/f<−2.2 (3−1)
ただし、
R4:第2レンズの像側の面の曲率半径
f:全系の焦点距離
【0011】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
−5<f12/f<−2 (4)
−4.7<f12/f<−2.3 (4−1)
ただし、
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f:全系の焦点距離
【0012】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
0.9<f45/f<1.3 (5)
0.9<f45/f<1.2 (5−1)
ただし、
f45:第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f:全系の焦点距離
【0013】
本発明の撮像レンズにおいては、条件式(5)を満足した上で下記条件式(6)を満足することが好ましく、条件式(5)を満足した上で下記条件式(6−1)を満足することがより好ましい。
1.5<f4/f<3.0 (6)
1.6<f4/f<2.6 (6−1)
ただし、
f4:第4レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0014】
本発明の撮像レンズにおいては、条件式(5)を満足した上で下記条件式(7)を満足することが好ましく、条件式(5)を満足した上で下記条件式(7−1)を満足することがより好ましい。
1.4<f5/f<2.2 (7)
1.45<f5/f<2.1 (7−1)
ただし、
f5:第5レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0015】
本発明の撮像レンズにおいては、第4レンズおよび第5レンズの少なくとも一方の材料が下記条件式(8)を満足することが好ましい。
dN/dT<0 (8)
ただし、
dN/dT:上記材料の波長632.8nmに関する屈折率の温度20〜40℃での相対温度係数
【0016】
本発明の撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えたものである。
【0017】
なお、上記の「〜から実質的になり」の「実質的に」は、構成要素として挙げたもの以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、絞りやカバーガラスやフィルタ等のレンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル、手ぶれ補正機構等の機構部分、等が本発明の撮像レンズに含まれていてもよいことを意図するものである。
【0018】
なお、上記の本発明の撮像レンズにおけるレンズの屈折力の符号、面形状、曲率半径は、非球面が含まれているものについては近軸領域で考えるものとする。なお、曲率半径の符号は、物体側に凸面を向けた面形状のものを正とし、像側に凸面を向けた面形状のものを負とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、6枚構成のレンズ系において、パワー配列および各レンズの形状を好適に設定し、所定の条件式を満足するように構成しているため、Fナンバーが小さく、広角で、コンパクトに構成され、結像領域中心部から結像領域周縁部まで良好な画像を取得可能な撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撮像レンズの構成と光路を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例2の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施例3の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施例4の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施例5の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施例6の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施例7の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施例8の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施例9の撮像レンズの構成を示す断面図である。
【
図11】左から順に、本発明の実施例1の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図12】左から順に、本発明の実施例2の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図13】左から順に、本発明の実施例3の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図14】左から順に、本発明の実施例4の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図15】左から順に、本発明の実施例5の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図16】左から順に、本発明の実施例6の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図17】左から順に、本発明の実施例7の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図18】左から順に、本発明の実施例8の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図19】左から順に、本発明の実施例9の撮像レンズの球面収差図、非点収差図、歪曲収差図、倍率色収差図である。
【
図20】本発明の実施例1の撮像レンズの横収差図である。
【
図21】本発明の実施例2の撮像レンズの横収差図である。
【
図22】本発明の実施例3の撮像レンズの横収差図である。
【
図23】本発明の実施例4の撮像レンズの横収差図である。
【
図24】本発明の実施例5の撮像レンズの横収差図である。
【
図25】本発明の実施例6の撮像レンズの横収差図である。
【
図26】本発明の実施例7の撮像レンズの横収差図である。
【
図27】本発明の実施例8の撮像レンズの横収差図である。
【
図28】本発明の実施例9の撮像レンズの横収差図である。
【
図29】本発明の実施形態に係る車載用の撮像装置の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る撮像レンズ1の構成と光路を示す断面図である。
図1に示す構成例は、後述する本発明の実施例1に係る撮像レンズに対応している。
図1では、左側が物体側、右側が像側であり、光路は軸上光束2、最大画角の軸外光束3について示している。
【0022】
撮像レンズ1は、光軸Zに沿って物体側から像側へ向かって順に、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第1レンズL1と、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する第2レンズL2と、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する第3レンズL3と、両凸形状で正の屈折力を有する第4レンズL4と、両凸形状で正の屈折力を有する第5レンズL5と、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第6レンズL6との実質的に6枚のレンズからなる。
【0023】
最も物体側のレンズである第1レンズL1を負レンズとすることで広角化が容易となる。また、第1レンズL1の像側の面を凹面とすることでより広角化が容易となる。第2レンズL2を像側に凸面を向けた正レンズとすることで負の歪曲収差の発生を抑制しながら各画角の収差を良好に補正することができる。また、第3レンズL3から第6レンズL6までを上述した構成とすることで、これら4枚のレンズが対称性の良い構成となり、良好な収差補正を効果的に行うことが可能となる。
【0024】
第1レンズL1から第6レンズL6までを上述したレンズ構成とすることにより、Fナンバーが小さいレンズ系での広角化、例えば全画角が100度以上となる広角化においても歪曲収差と倍率色収差の発生を極力抑えることができ、結像領域中心部から結像領域周縁部まで高い解像力を持つレンズ系を得ることが可能となる。
【0025】
この撮像レンズ1は、下記条件式(1)を満足するように構成されている。
R3/f<0 (1)
ただし、
R3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
f:全系の焦点距離
【0026】
条件式(1)の上限以上とならないようにすることで、第2レンズL2を像側に凸面を向けた正メニスカスレンズとすることができ、高次収差の発生を抑制しながら物体側から第2レンズL2の物体側の面へ入射した光線を光軸Zから離れる方向に大きく屈折させることができるため、大きな負の歪曲収差の発生を抑制することができる。これにより、Fナンバーが小さく広角のレンズ系においても、結像領域中心部から結像領域周縁部まで良好な光学性能を実現することに有利となる。
【0027】
さらに下記条件式(1−1)を満足することが好ましい。
−300<R3/f<−2 (1−1)
条件式(1−1)の下限以下とならないようにすることで、物体側から第2レンズL2の物体側の面へ入射した光線と、この入射光線がこの面と交わる点におけるこの面の法線とがなす角度が小さくなりすぎるのを防ぐことができるので、良好な歪曲収差の補正が可能となる。条件式(1−1)の上限以上とならないようにすることで、上記角度が大きくなりすぎるのを防ぐことができるので、高次収差の発生を抑制することができ、特に周辺光束においてコマ収差のフレア成分を抑制できるため画面全域に渡り良好な収差補正が可能となる。
【0028】
また、撮像レンズ1は、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
−2.1<f1/f<−1.3 (2)
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0029】
条件式(2)の下限以下とならないようにすることで、負の屈折力が弱くなり過ぎるのを抑えることができるため広角化の達成が容易となる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることで、広角化を達成するとともに、大きな負の球面収差を発生することを防ぐことができるので良好な収差補正が可能となる。条件式(2)に関する効果を高めるためには下記条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
−2.0<f1/f<−1.4 (2−1)
【0030】
また、撮像レンズ1は、下記条件式(3)を満足することが好ましい。
−3.5<R4/f<−2.0 (3)
ただし、
R4:第2レンズの像側の面の曲率半径
f:全系の焦点距離
【0031】
条件式(3)は、第2レンズL2の物体側の面にて光軸Zから離れる方向に屈折させた光線を光軸方向に屈折させ、第3レンズL3から第6レンズL6にかけて良好な収差補正を行うための条件式である。条件式(3)を満足することで、高次収差を発生させることなく第3レンズL3の中心付近に各光束の主光線を戻すことができるため、開口絞りStを像面Simから離れた位置に設置できる。これにより、各画角の光線を分離して開口絞りStより像側のレンズで収差補正ができるため、高い撮像性能を得ることができる。条件式(3)に関する効果を高めるためには下記条件式(3−1)を満足することがより好ましい。
−3.2<R4/f<−2.2 (3−1)
【0032】
なお、開口絞りStは、第2レンズL2の物体側の面から第3レンズL3の像側の面までの間に配置されていることが好ましい。このようにした場合は、上述の収差補正をより良好に行うことが可能となる。さらに、軸外光束の主光線の像面Simへの入射角を抑えることができるため、結像領域周縁部の光量改善が可能となる。
図1では、開口絞りStが、第2レンズL2の像側の面と第3レンズL3の物体側の面との間に配置された例を示している。ただし、
図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸上の位置を示すものである。
【0033】
また、撮像レンズ1は、下記条件式(4)を満足することが好ましい。
−5<f12/f<−2 (4)
ただし、
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f:全系の焦点距離
【0034】
条件式(4)の下限以下とならないようにすることで、第1レンズL1の負の屈折力が弱くなりすぎるのを抑えて適度な値をとることができるため、広角化が容易となる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることで、第2レンズL2の正の屈折力を適度に保つことができ、高次収差の発生を抑制しながら負の大きな歪曲収差が発生するのを防ぐことができる。条件式(4)に関する効果を高めるためには下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
−4.7<f12/f<−2.3 (4−1)
【0035】
また、撮像レンズ1は、下記条件式(5)を満足することが好ましい。
0.9<f45/f<1.3 (5)
ただし、
f45:第4レンズと第5レンズの合成焦点距離
f:全系の焦点距離
【0036】
条件式(5)は第4レンズL4と第5レンズL5の合成屈折力を適切に保つための条件式である。条件式(5)の下限以下とならないようにすることで、この合成屈折力が強くなりすぎるのを防ぐことができ、高次収差の発生を抑えることができる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることで、正の屈折力が弱くなりすぎるのを抑制することができ、第4レンズL4より物体側のレンズ群で発生した負の球面収差を良好に補正することができる。条件式(5)に関する効果を高めるためには下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
0.9<f45/f<1.2 (5−1)
【0037】
また、撮像レンズ1は、条件式(5)とともに下記条件式(6)を満足することが好ましい。
1.5<f4/f<3.0 (6)
ただし、
f4:第4レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0038】
条件式(6)は、広角化のため第4レンズL4より物体側のレンズ群で発生した負の球面収差を良好に補正し収束させるために第4レンズL4に要求される条件式である。条件式(6)の下限以下とならないようにすることで、正の屈折力が強くなりすぎるのを抑制することができ、第4レンズL4の物体側と像側のレンズ面の曲率半径の絶対値が小さくなるのを防ぐことができるため、高次収差の発生を抑えることができる。条件式(6)の上限以上とならないようにすることで、正の屈折力が弱くなりすぎるのを抑制することができ、第4レンズL4より物体側のレンズ群で発生した負の球面収差を良好に補正することができる。また、第4レンズL4と第5レンズL5は各々がある程度一定の屈折力を持つことが必要である。そのため、条件式(6)の上限以上とならないようにすることで、第4レンズL4の正の屈折力が弱くなりすぎるのを防ぎ、第5レンズL5の屈折力が強くなりすぎることを防ぐことができ、良好な収差補正が可能となる。条件式(6)に関する効果を高めるためには下記条件式(6−1)を満足することがより好ましい。
1.6<f4/f<2.6 (6−1)
【0039】
また、撮像レンズ1は、条件式(5)とともに下記条件式(7)を満足することが好ましい。
1.4<f5/f<2.2 (7)
ただし、
f5:第5レンズの焦点距離
f:全系の焦点距離
【0040】
条件式(7)は、広角化のため第4レンズL4より物体側のレンズ群で発生した負の球面収差を良好に補正し収束させるために第5レンズL5に要求される条件式である。条件式(7)の下限以下とならないようにすることで、正の屈折力が強くなりすぎるのを抑制することができ、第5レンズL5の物体側と像側のレンズ面の曲率半径の絶対値が小さくなるのを防ぐことができるため、高次収差の発生を抑えることができる。条件式(7)の上限以上とならないようにすることで、正の屈折力が弱くなりすぎるのを抑制することができ、第4レンズL4より物体側のレンズ群で発生した負の球面収差を良好に補正することができる。また、第4レンズL4と第5レンズL5は各々がある程度一定の屈折力を持つことが必要である。そのため、条件式(7)の上限以上とならないようにすることで、第5レンズL5の正の屈折力が弱くなりすぎるのを防ぎ、第4レンズL4の屈折力が強くなりすぎることを防ぐことができ、良好な収差補正が可能となる。条件式(7)に関する効果を高めるためには下記条件式(7−1)を満足することがより好ましい。
1.45<f5/f<2.1 (7−1)
【0041】
以上のことから、条件式(5)とともに条件式(6)および条件式(7)を満足することがさらにより好ましい。
【0042】
また、第4レンズL4および第5レンズL5の少なくとも一方の材料が下記条件式(8)を満足することが好ましい。
dN/dT<0 (8)
ただし、
dN/dT:上記材料の波長632.8nmに関する屈折率の温度20〜40℃での相対温度係数
【0043】
条件式(8)を満足する材料を用いることにより、温度上昇の際に焦点位置がレンズに近づく方向に大きく移動することを抑制することができ、また、温度下降の際に焦点位置がレンズから離れる方向に大きく移動することを抑制することができる。そのため、温度変化に伴う、筐体の伸縮およびレンズ系の焦点位置の変化による結像面位置の移動量を小さくすることができるので、温度変化による解像力の低下を抑えることができる。車載カメラ、監視カメラ、携帯端末用カメラ等では、高い耐候性を有し寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲での使用が要求されることがあるため、条件式(8)に係る構成を有する場合は有利となる。
【0044】
また、撮像レンズ1は、各レンズの間に周辺光量比が実用上問題のない範囲で周辺光線の一部を遮断する絞り等の部材を配置してもよい。周辺光線とは、光軸外の物点からの光線のうち、光学系の入射瞳の周辺部分を通る光線のことである。このように周辺光線を遮断する部材を配置することにより、結像領域周縁部の画質を向上させることができる。また、この部材でゴーストを発生させる光を遮断することにより、ゴーストを低減することが可能となる。
図1では光軸上に中心がある円形の開口部を有し周辺光線の一部を遮光する第1遮光部材4、第2遮光部材5をそれぞれ第2レンズL2と第3レンズL3の間、第3レンズL3と第4レンズL4の間に配置した例を示している。なお、
図1に示す第1遮光部材4、第2遮光部材5は必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸上の位置を示すものである。
【0045】
また、撮像レンズ1が厳しい環境において使用される場合には、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コートを施すようにしてもよい。
【0046】
また、この撮像レンズ1を撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、レンズ系と像面Simの間にカバーガラス、プリズム、赤外線カットフィルタやローパスフィルタなどの各種フィルタを配置してもよい。なお、これらの各種フィルタをレンズ系と像面Simとの間に配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよいし、いずれかのレンズのレンズ面に各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0047】
条件式に関する構成も含め、以上述べた好ましい構成や可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。例えば、上記構成を適宜採用することにより、Fナンバーが小さく、広角で、コンパクトに構成され、結像領域中心部から結像領域周縁部まで良好な画像を取得可能な撮像レンズ1を実現することが可能である。なお、ここでいうFナンバーが小さいとは、Fナンバーが2.3以下のことを意味し、ここでいう広角とは全画角が100度以上のことを意味する。
【0048】
次に、本発明の撮像レンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の撮像レンズの断面図を
図2に示す。実施例1の撮像レンズは、第1レンズL1〜第6レンズL6の6枚のレンズから実質的に構成される。
図2では、左側を物体側、右側を像側としており、開口絞りSt、上述した第1遮光部材4、第2遮光部材5も示している。なお、
図2に示す開口絞りSt、第1遮光部材4、第2遮光部材5は必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸上の位置を示すものである。
【0049】
実施例1の撮像レンズの基本レンズデータを表1に、非球面係数を表2に示す。表1のSiの欄には最も物体側の構成要素の物体側の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するように構成要素の面に面番号を付した場合のi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄にはi番目の面とi+1番目の面との光軸上の面間隔を示し、Ndjの欄には最も物体側の構成要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の構成要素のd線(波長587.6nm)に関する屈折率を示し、νdjの欄にはj番目の構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0050】
ここで、曲率半径の符号は、物体側に凸面を向けた面形状のものを正とし、像側に凸面を向けた面形状のものを負としている。表1には開口絞りStも合わせて示しており、表1では開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。Diの最下欄の値は表中の最も像側の面と像面Simとの間隔である。第1遮光部材4、第2遮光部材5に関するデータは表19に他の実施例のものとまとめて示す。
【0051】
表1の枠外上部には、全系の焦点距離f、空気換算長でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ωをd線基準で示す。
【0052】
表1では、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表2に、実施例1の各非球面の非球面係数を示す。表2の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10
−n」を意味する。非球面係数は、下式で表される非球面式における各係数KA、Am(m=4、6、8、10、12、14)の値である。
【0053】
【数1】
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率
KA、Am(m=4、6、8、10、12、14):非球面係数
【0054】
以下に示す各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmmを用いているが、光学系は比例拡大または比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0057】
図11、
図20に、実施例1の撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態における各収差図を示す。
図11では、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差(倍率の色収差)を示す。球面収差図では、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)、F線(波長486.1nm)に関する収差をそれぞれ実線、長破線、短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向、タンジェンシャル方向のd線に関する収差をそれぞれ実線、短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、F線に関する収差をそれぞれ長破線、短破線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0058】
図20では、各半画角ωについて、左列にタンジェンシャル方向の横収差図を、右列にサジタル方向の横収差図を示す。これら横収差図ではd線に関する収差を示す。なお、
図11、
図20の各収差図は、表19に示す第1遮光部材4、第2遮光部材5が配置された状態におけるものである。
【0059】
上記の実施例1の説明で述べた各データの記号、意味、記載方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても同様であるため、以下では重複説明を省略する。
【0060】
[実施例2]
実施例2の撮像レンズの断面図を
図3に示す。実施例2の撮像レンズの基本レンズデータを表3に、非球面係数を表4に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図12、
図21に示す。
【0063】
[実施例3]
実施例3の撮像レンズの断面図を
図4に示す。実施例3の撮像レンズの基本レンズデータを表5に、非球面係数を表6に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図13、
図22に示す。
【0066】
[実施例4]
実施例4の撮像レンズの断面図を
図5に示す。実施例4の撮像レンズの基本レンズデータを表7に、非球面係数を表8に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図14、
図23に示す。
【0069】
[実施例5]
実施例5の撮像レンズの断面図を
図6に示す。実施例5の撮像レンズの基本レンズデータを表9に、非球面係数を表10に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図15、
図24に示す。
【0072】
[実施例6]
実施例6の撮像レンズの断面図を
図7に示す。実施例6の撮像レンズの基本レンズデータを表11に、非球面係数を表12に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図16、
図25に示す。
【0075】
[実施例7]
実施例7の撮像レンズの断面図を
図8に示す。実施例7の撮像レンズの基本レンズデータを表13に、非球面係数を表14に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図17、
図26に示す。
【0078】
[実施例8]
実施例8の撮像レンズの断面図を
図9に示す。実施例8の撮像レンズの基本レンズデータを表15に、非球面係数を表16に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図18、
図27に示す。
【0081】
[実施例9]
実施例9の撮像レンズの断面図を
図10に示す。実施例9の撮像レンズの基本レンズデータを表17に、非球面係数を表18に、無限遠物体に合焦した状態での各収差図を
図19、
図28に示す。
【0084】
表19に実施例1〜9の第1遮光部材4、第2遮光部材5の光軸上の位置と開口部の直径を示す。位置は、基準とした面から像側へ向かう方向を正符号としている。表19の数値の単位はmmである。
【0086】
表20に、実施例1〜9の撮像レンズの全系の焦点距離f、第1レンズL1〜第6レンズL6それぞれの焦点距離f1〜f6、条件式に関連する値、条件式(1)〜(8)の対応値を示す。表20の最も左欄の(1)〜(8)は条件式の番号である。表20の条件式(8)に係る欄以外の数値はd線を基準とするものである。表20のdN/dT(L4)、dN/dT(L5)はそれぞれ第4レンズL4、第5レンズL5の材料の波長632.8nmに関する屈折率の温度20〜40℃での相対温度係数であり、この相対温度係数が負になるもののみ数値を示している。表20のdN/dT(L4)、dN/dT(L5)の欄の数値の単位は×10
−6/℃であり、この欄の括弧内の/より前に材料、/より後にその材料の製造会社を示す。なお、表20では株式会社オハラをOHARA、HOYA株式会社をHOYAと表記している。
【0088】
以上のデータからわかるように、実施例1〜9の撮像レンズは、レンズ枚数が6枚でありコンパクトに構成され、最大全画角が120°〜130°の範囲にあり広角化を達成しており、Fナンバーが2.2〜2.3の範囲にあり小さなFナンバーを有し、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を達成している。
【0089】
図29に使用例として、自動車100に本実施形態の撮像レンズを備えた撮像装置を搭載した様子を示す。
図23において、自動車100は、その助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラ101と、自動車100の後側の死角範囲を撮像するための車外カメラ102と、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラ103とを備えている。車外カメラ101と車外カメラ102と車内カメラ103とは、撮像装置であり、本発明の実施形態による撮像レンズと、撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えている。本実施形態の車載カメラ(車外カメラ101、102および車内カメラ103)は本発明の撮像レンズを備えているため、低照度の条件下でも撮像可能で、広い画角を有し、結像領域中心部から結像領域周縁部まで良好な画像を取得することができる。
【0090】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0091】
また、条件式(8)を満足し光学材料として使用可能な材料は、上記実施例で示した3種に限定されず、例えばオハラ社のS−PHM52、S−FPM2やHOYA社のFCD1、成都光明社のH−ZPK2等を用いて性能最適化を行うことができる。また、M−PCD4はHOYA社のガラスモールド用の光学ガラスであるが、同社研磨用の光学ガラスPCD4を用いてもおよそ同等の効果が得られる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係る撮像装置についても、車載カメラに限定されず、携帯端末用カメラ、監視カメラ、デジタルカメラ等、種々の態様とすることができる。