(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載装置の作動を通常消費電力で作動可能状態とする通常消費電力モードと、前記通常消費電力より小さい消費電力で作動可能にする省消費電力モードとにコントロールユニットで切替制御する車載装置制御方法において、
前記コントロールユニットは、イグニッションON時に前記通常消費電力モードに、イグニッションOFF時には前記省消費電力モードに切換え制御し、
前記車載装置は、マスターシリンダで発生したブレーキ液圧を管路を介してホイルシリンダに供給するブレーキ液の一部を、制動圧発生中に前記管路からリザーバに導くことによって前記ホイルシリンダに供給されるブレーキ液圧を増減させるとともに、前記リザーバに導かれたブレーキ液を電動モータによりマスターシリンダ側に戻すブレーキ装置であって、
前記通常消費電力モードは、前記電動モータの駆動であり、
前記イグニッションOFF時の前記省消費電力モードでは、前記通常消費電力モードの平均モータ電流より小さい平均モータ電流による前記電動モータの駆動により前記リザーバに導かれたブレーキ液を前記電動モータによりマスターシリンダ側に戻すことを特徴とする車載装置制御方法。
【背景技術】
【0002】
車両には、ブレーキ操作に応じて制動するアンチロックブレーキ装置やパーキングブレーキ装置等のブレーキ装置やヘッドライト、ワイパ等の車載装置が搭載される。
【0003】
一般に、これらの車載装置は、イグニッションON時に制御信号を受けて電力が供給されて作動が可能になり、或いは電力が供給されても低消費電力状態として非作動状態に維持しイグニッションONによって作動が可能になる。そしてイグニッションOFFとなると停止信号を受けて作動が終了する。
【0004】
例えば、アンチロックブレーキ装置では、マスターシリンダからホイルシリンダに液圧を供給するブレーキ液圧回路内のブレーキ液を調整する液圧調整手段と、車輪速センサによって検出される車輪速等に基づいて液圧調整手段を制御するコントロールユニットとを有する。コントロールユニットは、車輪速センサによって検出された車輪速を基に加減速度を算出し、液圧調整手段によるブレーキ液圧の増減圧を繰り返すABS制御をすることで制動時における車輪のロック状態の発生を防止する。
【0005】
この種のアンチロックブレーキ装置では、減圧制御時にブレーキ液の一部をリザーバに収容した後、電動モータにより駆動されるポンプでリザーバ内のブレーキ液をマスターシリンダ側に掻き出してブレーキ液圧回路に戻している。このリザーバ内に蓄圧したブレーキ液をポンプによりマスターシリンダ側に掻き出すためには負荷が大きく、電動モータの駆動に大電流を要する。
【0006】
イグニッションOFFした際、エンジンが停止することからオルタネータによる発電が行われず、ABS制御を継続すると電源電圧が低下して電動モータの正規性能が得られなくなることから、イグニッションOFF時にABS制御を禁止している。
【0007】
一方、イグニッションOFF時においても安全上ABS制御が要求され、イグニッションOFF時においてもイグニッションON時と同様のブレーキ操作を可能にする技術がある。例えば、特許文献1では、ABS制御が有効となるブレーキング操作を実行する通常消費電力状態となる動作モードと、ABS制御が非作動となる低消費電力状態となる非作動モードとを有し、イグニッションOFF時に動作モードと非動作モードとに切換え可能に構成される。
【0008】
一方、特許文献2では、電源電圧低下時にあってもABS制御を可能にするために、電源電圧を検出する電源電圧検出手段を備え、電源電圧低下時にホイルシリンダに供給する制動圧を増減する増減圧工程を通常のサイクルに比し緩やかにすることで、ポンプ或いは電動モータにかかる負荷を減少している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1によると、イグニッションOFFの状態においてブレーキ操作により動作モードに切換え可能に構成することで、イグニッションOFF時においてもイグニッションON時と同様のブレーキ操作が行える。
【0011】
しかし、イグニッションOFF時でオルタネータによる発電が行われない状態下においてイグニッションON時と同様の通常消費電力の制御が行われることから、バッテリー電圧が低下してABS制御が継続できなくなるおそれがある。
【0012】
特許文献2によると、ABS装置においてポンプ駆動用の電源電圧を検出する電源電圧検出手段を備え、電源電圧低下時にホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する増減工程を通常サイクルに比し緩やかにすることで、消費電力の減少が得られ、電源電圧低下がある程度抑制される。しかし、制御サイクルを緩やかにすることから、ABS制御による制動効果が低下することが懸念される。
【0013】
かかる点に鑑み、イグニッションOFF時においても、バッテリー電圧消耗が抑制され、かつブレーキ機能が保持されることが望まれる。
【0014】
また、これらは制動装置に限らず、他の車載装置においても同様に、イグニッションOFF時においても消費電力が抑制され、かつ同様の機能が保持されることが好ましい。
【0015】
従って、本発明の目的は、イグニッションOFF時に消費電力が抑制され、かつイグニッションOFF時でも車載装置の機能が保持される車載装置制御
方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成す
る車載装置制御方法は、車載装置の作動を通常消費電力で作動可能状態とする通常消費電力モードと、前記通常消費電力より小さい消費電力で作動可能にする省消費電力モードとにコントロールユニットで切替制御する車載装置制御方法において、前記コントロールユニットは、イグニッションON時に前記通常消費電力モードに、イグニッションOFF時には前記省消費電力モードに切換え制御することを特徴とする。
【0017】
この構成によると、イグニッションON時において、通常消費電力モードで車載装置が作動する。このときエンジンによってオルタネータが駆動されて発電が行われ車載装置の作動が継続しても電源電圧が維持されてバッテリー電圧が保持される。
【0018】
一方、イグニッションOFF時において、通常消費電力モードに対して低く設定された消費電力で車載装置を作動させることで車載装置の機能が保持され、かつ電源電圧の低下が抑制されてバッテリー電圧が保持される。
【0019】
また、前記車載装置は、マスターシリンダで発生したブレーキ液圧を管路を介してホイルシリンダに供給するブレーキ液の一部を、制動圧発生中に前記管路からリザーバに導くことによって前記ホイルシリンダに供給されるブレーキ液圧を増減させるとともに、前記リザーバに導かれたブレーキ液を電動モータによりマスターシリンダ側に戻すブレーキ装置であって、前記通常消費電力モードは前記電動モータの駆動であり、前記省消費電力モードは前記通常消費電力モードの平均モータ電流より小さい平均モータ電流による前記電動モータの駆動であることを特徴とする。
【0020】
この構成は、車載装置がマスターシリンダで発生したブレーキ液圧をホイルシリンダに供給するブレーキ液の一部をリザーバに導くことによってホイルシリンダに供給されるブレーキ液圧を増減させるともに、リザーバのブレーキ液を電動モータによってマスターシリンダ側に戻すブレーキ装置であり、イグニッションON時において通常消費電力モードで電動モータを駆動し、イグニッションOFF時に省消費電力モードで電動モータを駆動することでイグニッションONと時と同様の機能が保持され、かつ電源電圧の低下が抑制されてバッテリー電圧が保持される。
【0021】
また、前記通常消費電力モードは、前記電動モータの間欠的に連続する駆動であり、前記省消費電力モードは、前記通常消費電力モードの間欠より大きな間欠を有して間欠的に連続して回転する前記電動モータの駆動であることを特徴とする。
【0022】
また、前記通常消費電力モードは、前記電動モータの間欠的に連続する駆動であり、前記省消費電力モードは、前記通常消費電力モードの電動モータの回転速度より低回転速度で間欠的に連続して回転する前記電動モータの駆動であることを特徴とする。
【0023】
また、前記通常消費電力モードは、前記電動モータの間欠的に連続する駆動であり、前記省消費電力モードは、前記電動モータの連続駆動であることを特徴とする。
【0024】
また、前記通常消費電力モードは、ブレーキ液圧発生開始からブレーキ液圧発生停止までの電動モータの連続駆動であり、前記省消費電力モードは、ブレーキ液圧発生開始から所定ブレーキ液圧で停止する電動モータの駆動であることを特徴とする。
【0025】
これ
らは、通常消費電力モードおよび省消費電力モードの電動モータの駆動を示すものである。
【0026】
また、前
記車載装置は、ヘッドライト装置であって、通常消費電力モードは、ヘッドライト装置
の通常点灯であり、省消費電力モードは、通常消費電力モードの消費電力より小さい消費電力による点灯であることを特徴とする。
【0027】
また、前
記車載装置は、ワイパ装置であって、通常消費電力モードは、ワイパ装置の通常駆動であり、省消費電力モードは、通常消費電力モードの消費電力より小さい消費電力によるワイパ装置の駆動であることを特徴とする。
【0028】
これらは
、車載装置がヘッドライト装置およびワイパ装置であって、通常消費電力モードおよび省消費電力モードの具体的例を示すものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、イグニッションON時において、通常消費電力による通常消費電力モードで車載装置が作動する一方、イグニッションOFF時にいて省消費電力モードで車載装置を作動させることで、車載装置の機能が保持され、かつ電源電圧の低下が抑制されてバッテリー電圧が保持される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の車載装置制御方法の一実施の形態を車載装置がブレーキ装置である例を
図1乃至
図6を参照して説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態における車載装置制御方法の構成図、
図2はブレーキ装置の説明図である。
【0033】
本実施の形態における車両は、イグニッションON、OFFによって起動および停止する駆動用エンジンが搭載され、エンジンによってオルタネータが駆動される4輪車であって、マスターシリンダから各車輪に配置されるホイルシリンダにブレーキ液圧を供給するブレーキ装置を有する。
【0034】
図1に示すように、車載装置制御方法は、ブレーキ装置10およびブレーキ装置10を作動制御するコントロールユニットECUを備え、イグニッションONおよびOFFを示すイグニッションON、OFF信号、各車輪に配置された車輪速センサVS1、VS2、VS3、VS4から車輪速信号、パーキングスイッチPS等による車両情報に従ってブレーキ装置10を作動制御する。
【0035】
この車載装置制御方法の説明にあたり、予め、ブレーキ装置10の概要を
図2を参照して説明する。
【0036】
図中符号FL、RR、FR、RLはそれぞれ左前輪、右後輪、右前輪、左後輪であって、W/Cは各車輪に配置されるホイルシリンダである。M/CはブレーキペダルPBの踏み込み操作に応答してブレーキ液を圧送するマスターシリンダであり、マスターシリンダM/Cは2系統ブレーキ用タンデムマスターシリンダであって第1マスターシリンダ室M/C1および第2マスターシリンダ室M/C2を有する。VS1、VS2、VS3、VS4は各車輪の車輪速度を検知する車輪速センサ、VSは車速センサである。ECUはブレーキ装置10の作動制御をコントロールユニットである。
【0037】
第1マスターシリンダ室M/C1には第1系統配管11aが接続され、第2マスターシリンダ室M/C2には第2系統配管11bが接続される。第1系統配管11a、第2系統配管11bはブレーキ液圧回路40に接続される。ブレーキ液圧調整回路40は、各ホイルシリンダW/Cに管路L1、L2、L3、L4を介して接続される。
【0038】
第1系統配管11aには、左前輪FLおよび右後輪RRのホイルシリンダW/Cが接続され、第2系統配管11bには右前輪FR、左後輪RLのホイルシリンダW/Cが接続される。
【0039】
また、第1系統配管11a、第2系統配管11bにそれぞれに、プランジャポンプ21aおよびプランジャポンプ21bが設けられ、このプランジャポンプ21a、21bは電動モータ20によって駆動される。マスターシリンダM/Cとプランジャポンプ21a、21bの吸込側とは、配管11aに接続された配管12aと、配管1bに接続された管路12bによって接続される。この各配管12a、12bには、常閉型の電磁弁22a、22bとプランジャポンプ21a、21bが設けられている。また、配管12a、12b上であって電磁弁22a、22bとの間にチェックバルブ23a、23bが設けられ、このチェックバルブ23a、23bは電磁弁22a、22bからプランジャポンプ21a、21b側へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0040】
また、プランジャポンプ21a、21bの吐出側と各ホイルシリンダW/Cは管路13a、13bによって接続される。この管路13a、13bに常開型の電磁弁24FL、24RR、24FR、24RLが設けられる。また、各管路13a、13bの電磁弁24FL、24RR、24FR、24RLとプランジャポンプ21a、21bとの間にチェックバルブ26a、26bが設けられる。この各チェックバルブ26a、26bはプランジャポンプ21a、21bから電磁弁24FL、24RR、24FR、24RL側へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0041】
さらに、各管路13a、13bには、各電磁弁24FL、24RR、24FR、24RLを迂回する管路18FL、18RR、18FR、18RLが設けられ、これら管路にチェックバルブ25FL、25RR、25FR、25RLが設けられる。この各チェックバルブは、各ホイルシリンダW/Cからプランジャポンプ21a、21b側へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0042】
マスターシリンダM/Cと各配管13a、13bとは管路14a、14bによって接続され、管路13a、13bと管路14a、14bとはプランジャポンプ21a、21bと電磁弁24FL、24RR、24FR、24RLとの間において合流する。この管路14a、14bには常開型の電磁弁26a、26bが設けられる。
【0043】
また、各配管14a、14bには、各電磁弁26a、26bを迂回する管路19a、19bが設けられ、この管路にマスターシリンダM/Cから各ホイルシリンダW/C側へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止するチェックバルブ27a、27bが設けられる。
【0044】
プランジャポンプ21a,21bの吸込側にはリザーバ30a、30bが設けられ、このリザーバ30a、30bとプランジャポンプ21a、21bとは管路16a、16bによって接続される。リザーバ30a、30bとプランジャポンプ21a、21bの間にチェックバルブ28a、28bが設けられ、リザーバ30a、30b側からプランジャポンプ21a、21b側へブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。各ホイルシリンダW/Cと管路16a、16bとは管路15a、15bによって接続され、管路16a、16bと管路15a、15bとはチェックバルブ28a、28bとリザーバ21a、21bとの間において合流する。この各管路15a、15bには、それぞれ常閉型の電磁弁29FL、29RR、29FR、29RLが設けられる。
【0045】
各電磁弁はコントロールユニットECUによって作動制御される。コントロールユニットECUは、他のコントロールユニットからの制御信号や、各センサ等の入力信号等に基づいて車輪のロックを回避するアンチロックブレーキ(ABS)制御やパーキングブレーキ制御等のブレーキ制御を行う。
【0046】
そして、コントロールユニットECUは、各車輪速センサVS1〜VS4からの車輪速信号に基づいて制動圧制御信号が出力され各電磁弁22a、22b、電磁弁24FL、24RR、24FR、24RL、電磁弁29FL、29RR、29FR、29RLを開閉制御することによりスリップの状態に応じた制動圧を付与するABS制御を行う。このABS制御は各ホイルシリンダW/Cに供給されるブレーキ液圧の保持、減圧、減圧後の保持増圧からなる公知のABS制御サイクルを繰り返すことによって行われる。減圧時に電磁弁22a、22bを開弁しかつ各電磁弁29FL、29RR、29FR、29RLを開弁して、管路11a、11bに導かれたブレーキ液が各リザーバ30a、3bb内に一時的に圧蓄収容される。
【0047】
このリザーバ30a、30bに収容されたブレーキ液は電動モータ20によって駆動されるプランジャポンプ21a、21bによって電磁弁29FL、29RRまたは電磁弁29FF、29RLの上流側(マスタシリンダM/C側)で管路13a13bに戻される。すなわちプランジャポンプ21a、21bによりリザーバ30a、30bのブレーキ液をマスターシリンダM/C側に掻き出す。
【0048】
このプランジャポンプ21a、21bによるリザーバ30a、30bのブレーキ液の掻き出しは、電動モータ20の駆動音を低減させる目的でABS制御中に一定間隔で間欠的に連続して行われる。このプランジャポンプ21a、21bの駆動には、電動モータ20に作用する負荷が大きく比較的大きな消費電力を要する。
【0049】
このABS制御時における電動モータ20によるプランジャポンプ21a、21bの駆動は、コントロールユニットECUによって通常制御となる通常消費電力モードと、省エネ制御となる電動モータ20の負荷が小さく消費電力が通常消費電力モード比べて小さい省消費電力モードに切り替えられ、この省消費電力モードは第1省消費電力モードと第2省消費電力モードを有し、第2省消費電力モードは、第1省消費電力モードに比べて電動モータ20の負荷が少なく消費電力が小さく設定される。
【0050】
通常制御である通常消費電力モードによる電動モータ20の駆動は、
図3(a)に電力モータ20のモータ電流Aを示すようにABS制御開始と連動して間欠的に連続して駆動する。この通常消費電力モードにおけるモータ電流Aは間欠的に駆動された際の突入電流(始動電流)aが大きく、このときの平均モータ電流Laは比較的高く設定される。
【0051】
第1省エネ制御における第1省消費電力モードによる電動モータ20の駆動は、
図3(b)に電動モータ20のモータ電流Aを示すように通常消費電力モードに対して大きな間隔を有して間欠的に駆動される。このときの各突入電流aは通常消費電力モードに比べて、単位時間あたりの発生回数が少なく平均モータ電流Laが低く設定され、大幅な消費電力が抑制される。
【0052】
第2省消費電力モードによる電動モータ20の駆動は、
図3(c)にモータ電流Aを示すように、通常消費電力モードに対して電動モータ20の回転数、すなわち回転速度を下げて間隔的に連続駆動され、突入電流aの単位時間あたりの発生回数が少なく平均モータ電流Laが通常消費電力モードおよび第1省消費電力モードに対して低く設定され、さらに大幅な消費電力が抑制される。
【0053】
一方、ABS非制御状態においてはコントロールユニットECUから制動圧制御信号が出力されず、各電磁弁29FL、29RR、29FR、29RLがそれぞれ閉弁状態に維持され、かつ電磁弁24FL、24RR、24FR、24RLがそれぞれ開弁状態に保持されることになる。この結果、ブレーキペダルBPの踏込力に応じてマスターシリンダM/Cの第1マスターシリンダ室M/C1、第2マスターシリンダ室M/C2で発生したブレーキ液圧、すなわち制動液圧が管路13a、13b、12a、12b等を介して各車輪FL、RR、FR、RLにおける各ホイルシリンダW/Cに対して供給され、これらの制動液圧に応じた通常のブレーキ制御が行われる。
【0054】
また、コントロールユニットECUは、パーキングスイッチPSからの信号に基づいて
通常とは異なる手段で制動力を発生する緊急ブレーキ制御をすることができる。この緊急ブレーキ制御は、パーキングスイッチPS等が作動した際に、電動モータ20によりプランジャポンプ21a、21bを作動させて、プランジャポンプ21a、21bから管路13a、13bを介して各ホイルシリンダW/Cにブレーキ液圧を供給して行われる。
【0055】
この緊急ブレーキ制御は、パーキングスイッチONによって電動モータ20が起動し、かつパーキングスイッチOFFによって終了する通常制御と、パーキングスイッチONによって起動して予め設定された必要な液圧Paが発生した時点で電動モータ20を停止する省エネ制御に切り替えられる。
【0056】
図4に示す緊急ブレーキ制御処理を表すタイムチャートを参照して具体的に説明する。
【0057】
通常制御においては、パーキングスイッチONにより電動モータ20が起動し、プランジャポンプ21a、21bが作動するとブレーキ液圧Pが次第に上昇し、所定のブレーキ液圧に保持され、パーキングスイッチOFFによって電動モータ20が停止してブレーキ液圧Pが降下する。すなわち、ブレーキ液圧発生開始からブレーキ液圧発生停止までの間に亘って電動モータが連続駆動される。このブレーキ液圧はABS制御等を考慮して十分かつ確実な作動を確保するために緊急ブレーキ制御に必要な液圧Paより高く設定される。
【0058】
一方、省エネ制御においては、パーキングスイッチONによって電動モータ20が起動し、ブレーキ液圧Pが緊急ブレーキ制御に必要な液圧Paが発生した時点で電動モータ20を停止する。すなわち、ブレーキ液圧発生開始から所定ブレーキ液圧に達した時点で駆動停止する。これにより、通常制御に比較して減速度が制限される一方、電動モータ20の駆動時間が大幅に短縮され消費電力が減少する。
【0059】
次に、ブレーキ装置のABS制御における電動モータ20の動作モードの切り替えを、
図5および
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0060】
図5はABS制御時における電動モータ20の駆動モード切替制御を示すフローチャートであり、
図6は省消費電力モードにおける第1省消費電力モードと第2省消費電力モードとの切替制御を示すフローチャートである。
【0061】
ブレーキペダルBPを踏む込み、ブレーキ装置10が制動時にABS制御開始条件が成立すると、ステップS101ではイグニッションON/OFF信号がONかOFFを判断し、イグニッションONの場合は次のステップS102に進み、通常のABS制御が行われる。この通常制御における電動モータ20の駆動は、通常消費電力モードであり、
図3(a)にモータ電流Aを示すようにABS制御開始と連動して間欠的に連続して行われる。このときイグニッションON状態、すなわちエンジンによってオルタネータが駆動されて発電が行われ、ABS制御を継続しても電源電圧、すなわちバッテリー電圧の低下等が回避される。
【0062】
ステップS101でイグニッションOFFの場合は、ステップS103に進み、車両速度が0Km/hより大きいか、0km/hかを判定する。
【0063】
ステップS103で車両速度が0km/hより大きい場合、すなわち、車両が走行状態の場合は、ステップS104に進み、省エネ制御によるABS制御及び緊急ブレーキ制御が選択される。
【0064】
このステップS104における省エネ制御について
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0065】
ステップS201において各車輪速センサVS1〜VS4の車輪速検知およびブレーキ装置10の作動制御等に従って全輪(FL、RR、FL、FR)が保持制御もしきは増圧制御が一定時間経過するか否か判定する。すなわち、全輪が保持制御もしくは増圧制御される際は、車輪スリップが緩和方向に進んでいると推測でき、比較的車輪ロック発生の蓋然性が低い状態であると判断される。
【0066】
ステップS201でYesの場合は、ステップS202に進み、第1省エネ制御によるABS制御が実行される。第1省エネ制御における第1省消費電力モードによる電動モータ20の駆動は、
図3(b)にモータ電流Aを示すように通常消費電力モードに対して大きな間隔をおいて間欠的に駆動され、このときの平均モータ電流Laが通常消費電力モードに対して低く設定され、消費電力が抑制される。
【0067】
このときイグニッションOFF状態、すなわちエンジンが停止してオルタネータの発電が停止した状態でABS制御を継続しても、消費電力が少なく電源電圧、すなわちバッテリー電圧の低下が抑制されてバッテリー上がりが抑制される。この電動モータ20によりプランジャポンプ21a、21bによるリザーバ30a、30b内のブレーキ液の掻き出しは、通常制御の場合に比べリザーバ30a、30b内に貯留されたブレーキ液の単位時間当たりの掻き出し量が減少するが、イグニッションON時のABS制御と同様の機能が維持される。
【0068】
一方、ステップS201でNoの場合は、ステップS203に進み、第2省エネ制御によるABS作動制御が実行される。第2省エネ制御における第2省消費電力モードによる電動モータ20の駆動は、
図3(c)にモータ電流Aを示すように、通常消費電力モードに対して電動モータ20の回転速度を下げて駆動され、このときの平均モータ電流Laが通常消費電力モードおよび第1消費電力モードに対して低く設定され、消費電力が抑制される。
【0069】
このときイグニッションOFF状態、すなわちエンジンが停止してオルタネータの発電が停止した状態でABS制御を継続しても、消費電力が少なく電源電圧の低下が抑制され、バッテリー電圧の低下が抑制される。この電動モータ20によりプランジャポンプ21a、21bによるリザーバ30a、30bの掻き出しは、イグニッションON時の通常制御の場合に比べリザーバ30a、30b内に貯留されたブレーキ液の単位時間当たりの掻き出し量が少なくなるが、イグニッションON時のABS制御と同様の機能が維持される。
【0070】
ステップS103で車両速度が0km/hの場合、すなわち車両が停止状態では、ステップS104に進み、シャットダウンされる。
【0071】
このように、イグニッションON時において、ブレーキペダルBPを踏む込みブレーキ装置10が作動時にABS制御開始条件が成立すると、通常のABS制御が実行され、この通常制御における電動モータ20の駆動は通常消費電力モードであり、このときエンジンによってオルタネータが駆動されて発電が行われ、ABS制御を継続しても電源電圧が維持され、バッテリー電圧の低下が回避される。
【0072】
一方、イグニッションOFF状態にいて、ブレーキペダルPBを踏む込みブレーキ装置10が作動時にABS制御開始条件が成立すると、省エネ制御によるABS制御が実行され、省エネ制御における省消費電力モードによる電動モータ20が駆動される。このときモータ電流が通常消費電力モードに対して低く設定される。このときイグニッションOFF時、すなわちエンジンが停止してオルタネータの発電が停止した状態でABS制御を継続しても、消費電力が少なく電源電圧の低下が抑制されて、いわゆるバッテリー上がりが抑制される。この電動モータ20によりプランジャポンプ21a、21bによるリザーバ30a、30bの掻き出しは、通常制御の場合に比べリザーバ30a、30b内に貯留されたブレーキ液の単位時間あたりの掻き出し量が少なくなるが、ABS制御に影響すれることなく通常のABS制御と同様の機能効果が維持される。また、リザーバ30a、30b内のブレーキ液が増量されることがあるとしても、イグニッションON時における通常の電動モータ20の駆動により掻き出される。
【0073】
なお、上記イグニッションOFFにおけるABS作動制御の際、省消費電力モードの電動モータの駆動を、
図3(b)のように、通常省電力モードに対して大きな間隔をおいて間欠的に駆動して平均電流Laが通常消費電力モードに対して低く設定し、あるいは、同図(c)に示すように、通常消費電力モードに対して電動モータ20の回転速度を下げて駆動することで消費電力を抑制したが、
図3(d)に第3省消費電力モードのモータ電流Aを示すように、電動モータ20を連続駆動することで、消費電力が大きい突入電流aの繰り返しを回避して平均モータ電流を低くさせることもできる。
【0074】
また、緊急ブレーキ制御は、
図4にフローチャートを示すように、イグニッションON状態でパーキングスイッチONにより電動モータ20が起動し、プランジャポンプ21a、21bが作動するとブレーキ液圧Pが次第に上昇し、所定のブレーキ液圧に保持され、パーキングスイッチOFFによって電動モータ20が停止してブレーキ液圧Pが降下する。
【0075】
一方、イグニッションOFF時においては、パーキングスイッチONによって電動モータ20が起動し、ブレーキ液圧Pがアシスト制御に必要な所定液圧Paが発生した時点で電動モータ20を停止する。すなわち通常制御に比較して制動する減速度が制限される一方、電動モータ20の駆動時間が大幅に短縮され消費電力が減少する。
【0076】
上記説明では、車載装置としてブレーキ装置10を例に説明したが、他の車載装置においてもイグニッションOFF時に消費電力が抑制され、かつイグニッションON時の機能を維持するように構成することもできる。例えば、ヘッドライト装置を通常点灯の通常消費電力モードと安全性が確保できる照度範囲で点灯する通常消費電力モードよりも消費電力の小さい省消費電力モードに切換え可能に構成し、イグニッションONにおいては通常消費電力モードにより、イグニッションOFF時には省消費電力モードに切換制御するように構成することができる。また、ワイパ装置において、通常の使用を可能にする通常消費電力モードと、ワイパ速度を抑制して省消費電力化が得られる省消費電力モードに切換制御するように構成し、イグニッションON時においては通常消費電力モードにより、イグニッションOFF時には省消費電力モードに切換制御するように構成することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記説明では電動モータによりプランジャポンプに代えてロータリポンプ等の形式のポンプに適用することも、また、ブレーキ装置、ヘッドライト装置、ワイパ装置に限らず、エアコン、ウインド昇降装置等の他の車載装置に適用することができる。