(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688068
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20200421BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20200421BHJP
H02K 1/27 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
H02K1/18 A
H02K21/16 M
H02K1/27 501A
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-253003(P2015-253003)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-127797(P2016-127797A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】201410837269.5
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ビン リー
(72)【発明者】
【氏名】ロン シュン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シャン チュン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ピン ワン
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−112988(JP,A)
【文献】
特表2010−518797(JP,A)
【文献】
特開2007−043842(JP,A)
【文献】
特開2010−213543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/27
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、該ロータの周囲に配置された巻線形ステータ構造とを備えた電気モータであって、前記ステータ構造は、
円筒形の内壁を有するハウジングと、
前記ハウジング内に取り付けられたステータコアと、
前記ステータコアに巻き回されたステータ巻線と、
を含み、前記ステータコアは、円周方向に延びる環状ヨークと、該ヨークから内向きに延びる歯部とを有し、前記ステータコアは、複数の積層体を積み重ねることによって形成され、各積層体は、前記ヨークを形成する環状本体と、前記歯部を形成する複数の歯とを有し、
前記積層体の前記環状本体の外縁上に突出部及び凹部が形成されて、前記ヨークの半径方向外面上にギザギザ形状を形成し、前記突出部は、前記ハウジングの前記内壁と接触し、前記ステータ構造の軸方向において、前記突出部が軸方向に前記凹部に向かって変形し、前記ヨークが、離散的位置において前記ハウジングの前記内壁に接触し、
前記積層体は、複数の第1の積層体と複数の第2の積層体とを含み、各第1の積層体の前記環状本体の外縁に複数の前記凹部が形成され、各第2の積層体の前記環状本体の前記外縁に複数の前記突出部が形成され、前記第1の積層体の凹部は、前記第2の積層体の前記突出部と軸方向において前記第2の積層体と位置合わせされている、
ことを特徴とする電気モータ。
【請求項2】
各積層体の前記本体の外縁に、複数の前記突出部及び複数の前記凹部が形成される、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
各積層体の前記突出部及び前記凹部は、円周方向に交互に分布する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
2つの隣接する積層体のうちの一方の積層体の前記突出部は、2つの隣接する積層体のうちの他方の積層体の前記凹部と位置合わせされる、
請求項2又は3に記載のモータ。
【請求項5】
各第1の積層体の環状本体の外縁に複数の突出部がさらに形成され、各第2の積層体の環状本体の外縁に複数の凹部が形成され、前記第2の積層体の前記凹部もまた、軸方向において前記第1の積層体の前記突出部と位置合わせされている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の積層体が、隣接する2つの第1の積層体間に配置され、又は、少なくとも1つの第1の積層体が、隣接する2つの第2の積層体間に配置されている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
各1対の隣接する第2の積層体間に1つの第1の積層体が配置され、各1対の隣接する第1の積層体間に1つの第2の積層体が配置される、
請求項1又は6に記載のモータ。
【請求項8】
少なくとも1対の隣接する第1の積層体間に複数の前記第2の積層体が配置される、
請求項1又は6に記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータコアに取り付けられたコア絶縁体をさらに備え、前記巻線は、前記コア絶縁体に巻き回され、前記コア絶縁体は、前記巻線を前記ステータコアから電気的に絶縁する、
請求項1から8のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項10】
端子ホルダをさらに備え、該端子ホルダによって端子が支持され、各端子の一端は前記巻線のうちの対応する1つの巻線に接続され、各端子の他端は外部電源に接続するように構成される、
請求項1から9のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項11】
前記突出部及び前記凹部は、前記モータの半径方向における前記歯の位置に対応する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項12】
前記ロータは、シャフトと、該シャフトに固定された永久磁石とを含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項13】
前記永久磁石は、透磁性のロータコアによって前記シャフトに固定された複数の永久磁石を含む、
請求項12に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関し、具体的には、内側ロータ式モータの巻線形ステータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、ロータと呼ばれる可動部と、ステータと呼ばれる静止部とを有する。ロータは、モータによって動かされる負荷に接続される。一般に、ロータは、ステータに対して回転するように構成される。ロータとステータは、電磁相互作用を起こしてロータを動かし、これによって負荷を駆動する。モータは、ロータとステータの位置関係に応じて内側ロータ式と外側ロータ式とに分類される。内側ロータ式モータでは、その名の通りに、ロータがステータの内側に配置される。すなわち、ステータは、ロータのコアの外側周囲に配置される。
【0003】
永久磁石ロータを有する既知の内側ロータ式ブラシレスDCモータでは、ステータが、円筒形の外側ハウジングに取り付けられたステータコアに巻き回されたステータ巻線を有する。ハウジングとステータコアを強く接続するために、コアは、接着剤又は締り嵌めを用いてハウジングに固定することができる。しかしながら、接着剤は、時間と共に劣化することがある。強い締り嵌めを確実にするには、ハウジングを加熱して熱膨張を引き起こし、その後にコアをハウジングに圧入する。これによって強い接続は生じるが、生産が容易でなく、またステータコア及びハウジングのサイズを正確に制御するのは困難であるため、ハウジングの内面に引っ掻き傷が付いてハウジングの内部に剥離物が残り、これがモータの動作に影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ステータコアとハウジングとの間に剥離物が形成される可能性を低下させる改善された構造を有する、内側ロータと巻線形ステータとを備えたタイプの電気モータに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、その1つの態様において、ロータと、ロータの周囲に配置された巻線形ステータ構造とを備えた電気モータであって、ステータ構造が、円筒形の内壁を有するハウジングと、ハウジング内に取り付けられたステータコアと、ステータコアに巻き回されたステータ巻線とを含み、ステータコアが、円周方向に延びる環状ヨークと、該ヨークから内向きに延びる歯部とを有し、ステータコアが、複数の積層体を積み重ねることによって形成され、各積層体が、ヨークを形成する環状本体と、歯部を形成する複数の歯とを有し、積層体の環状本体の外縁上に突出部及び凹部が形成されて、ヨークの半径方向外面上にギザギザ形状を形成し、突出部が、ハウジングの内壁と接触し、ステータ構造の軸方向において、突出部と凹部とが介在し合って突出部が軸方向に変形できるようにすることにより、ヨークが、離散的位置においてハウジングの内壁に接触するようにした、電気モータを提供する。
【0006】
積層体の本体の外縁には、複数の突出部及び複数の凹部が形成されることが好ましい。
【0007】
各積層体の突出部及び凹部は、円周方向に交互に分布することが好ましい。
【0008】
2つの隣接する積層体のうちの一方の積層体の突出部は、2つの隣接する積層体のうちの他方の積層体の凹部と位置合わせされることが好ましい。
【0009】
或いは、積層体は、複数の第1の積層体と複数の第2の積層体とを含み、各第1の積層体の環状本体の外縁に複数の凹部が形成され、各第2の積層体の環状本体の外縁に複数の突出部が形成され、第1の積層体と第2の積層体は介在し合う。
【0010】
積層体は、交互に積み重ねられ、少なくとも1つの第2の積層体が、隣接する2つの第1の積層体の間に配置され、第1の積層体の凹部は、第2の積層体の突出部と軸方向に位置合わせされることが好ましい。
【0011】
各1対の隣接する第2の積層体間に1つの第1の積層体が配置され、各1対の隣接する第1の積層体間に1つの第2の積層体が配置されることが好ましい。
【0012】
或いは、少なくとも1対の隣接する第1の積層体間に複数の第2の積層体が配置される。
【0013】
ステータコアにはコア絶縁体が取り付けられ、巻線は、コア絶縁体に巻き回され、コア絶縁体は、巻線をステータコアから電気的に絶縁することが好ましい。
【0014】
端子ホルダによって端子が支持され、各端子の一端は巻線のうちの対応する1つの巻線に接続され、各端子の他端は外部電源に接続するように構成されることが好ましい。
【0015】
突出部及び凹部は、モータの半径方向における歯の位置に対応することが好ましい。
【0016】
ロータは、シャフトと、シャフトに固定された永久磁石とを含むことが好ましい。
【0017】
永久磁石は、透磁性のロータコアによってシャフトに固定された複数の永久磁石を含むことが好ましい。
【0018】
従来のステータ構造と比べ、ステータコアのヨーク部の外周上に突出部及び凹部が形成される。突出部及び凹部は、ステータコアの軸方向に交互に配置される。突出部は、ステータコアをハウジング本体内に組み立てる際に凹部内に変形し、これによってハウジング本体に引っ掻き傷を付けるのを避ける。先行技術の組み立て方法で用いられる高温加熱ステップは不要であり、接着剤を用いてステータコアをハウジングに固定することも避けられる。従って、製造工程を短縮することができ、このため素早いモータの組み立てを実現することができる。
【0019】
以下、添付図面の図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明する。図では、複数の図に出現する同一の構造、要素又は部品には、一般にこれらが出現する全ての図において同じ参照番号を付している。一般に、図に示す構成要素及び特徴部の寸法は、表現の便宜上明瞭にするために選択したものであり、必ずしも縮尺通りではない。以下、各図を列挙する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による電気モータを示す図である。
【
図4】
図1のモータのステータの部分的分解図である。
【
図5】
図4のステータのステータコアの正面図である。
【
図8】ハウジングに挿入されたステータの正面図である。
【
図9】別の実施形態によるステータの部分的分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜
図8に、本発明の第1の例示的な実施形態によるステータ構造を組み込んだ電気モータを示す。図示のモータは、内側ロータ式BLDCモータであり、ステータ構造30及びロータ50を含む。ステータ構造は、ハウジング10に取り付けられた巻線形ステータ31を含む。ステータ31は、積層ステータコア35と、ステータコアの歯に巻き回されたステータ巻線37とを含む。ロータは永久磁石ロータであり、シャフト52と、シャフトに固定(接着剤の使用を避けるために締り嵌めとすることが好ましい)されたロータコア53と、ロータコアに取り付けられた1又はそれ以上の永久磁石54とを有する。この実施形態では、4つの磁石と、磁石の軸端を覆う2つのロータキャップ55とが存在し、ロータコアは、磁石によって生じる磁界の磁路と、磁石をシャフト52に接続する手段とを提供するように複数の電気鋼積層体を積み重ねることによって作製された積層コアである。ロータは、ステータコアがロータコアを取り囲むようにしてステータ構造に回転自在に取り付けられる。この実施形態では、ロータが、ハウジングによって支持される軸受16内に軸支される。
【0022】
後述するように、ステータコアは、ステータがハウジングに対して回転しないことを確実にするように締り嵌めによってハウジングに取り付けられる。
【0023】
ハウジング10は、ハウジング本体12と、ハウジング本体12に接続されたエンドキャップ14とを含む。ハウジング本体12は、開放端及び閉鎖端を有する円筒形である。エンドカバー14は、開放端を閉じる。エンドキャップ14の中心は、軸方向外向きに突出して、軸受16の一方を支持する軸受ボス15を形成する。ハウジング本体の閉鎖端にも、他方の軸受16を支持する同様の軸受ボス13が形成される。この実施形態では、2つのボス13、15及び軸受穴の構造、形状及びサイズが同じであるが、他の実施形態では、これらが異なっていてもよい。2つの軸受16は、同じものであっても、又は異なるものであってもよく、玉軸受、セラミック軸受及び油軸受などとすることができる。この実施形態では、2つの軸受16がいずれも玉軸受である。
【0024】
シャフト52の一端は、負荷に係合するためにハウジングを貫通して延び、この例ではエンドキャップ14を貫通する。負荷への係合方法の例として、シャフトの端部に取り付けられたピニオン56を示す。代替例として、磁石54をシャフト52に直接固定することもできると理解されたい。
【0025】
ステータコア35は、所定の空隙を挟んで磁石に直面するように、ロータ50の磁石54の位置に対応する軸方向位置においてハウジング本体12内に固定される。
図3に示すように、ステータ31の一端には、ステータ巻線に電気的に接続された複数の端子33を支持する端子ホルダ32が取り付けられる。これらの端子は、エンドキャップを通過して外部電源に接続される。ステータコア35は、電気鋼又はシリコン鋼などの透磁性材料で作製された複数の積層体34を積み重ねることによって形成される。ステータコア35は、円周方向に延びるヨーク部と、ヨーク部から内向きに延びる歯部とを含む。ステータコア35の歯部の周囲には、コア絶縁体36としても知られている絶縁フレームを取り付けて巻線37をステータコア35から絶縁する。従って、巻線は、巻線の端部を端子に接続するようにも誘導するコア絶縁体36上に直接巻かれる。
【0026】
図4及び
図5に示すように、積層体34は、同じ構造を有する。各積層体34は、ほぼ環状の本体38と、本体38の内縁から半径方向内向きに延びる複数の歯39とを含む。積み重ねた積層体34の環状本体38は、ステータコア35のヨーク部を形成し、積層体34の歯39は、ステータコア35の歯部を形成する。コア絶縁フレーム36は、ステータコア35の歯部、及びヨーク部の内縁を覆う。巻線37は、短絡を避けるようにステータコア35から巻線を電気的に絶縁するコア絶縁体36に巻き回される。通電時には、ステータ構造30の巻線37が、ロータ50の磁石54と相互作用してロータ50を回転させる磁場を発生する。ロータ50は、ピニオン56を駆動し、この結果、ピニオン56に接続された負荷を動かす。
【0027】
各積層体34の本体38の外縁は、歯39と半径方向に対応する位置において内向きに窪んで凹部381を形成し、又は外向きに突出して突出部382を形成する。この実施形態では、突出部382と凹部381が各積層体34の円周方向に交互に配置され、突出部382の半径方向外端は、各積層体34の本体38の外周面をわずかに越えて突出する。すなわち、突出部382の外端面が位置する円の直径は、各積層体34の本体38の外縁が位置する円の直径よりもわずかに大きい。本体38には、各突出部382の2つの側面が本体38から分離されて各突出部382の半径方向長さが増すように、各突出部382の円周方向両側に切り込み383が形成される。従って、各突出部382は、モータの軸方向に圧迫又は加圧されるような外部干渉を受けた際に容易に変形することができる。
【0028】
図5〜
図8に示すように、積層体34をモータの軸方向に積み重ねる際には、隣接する次の積層体34を前の積層体34に対して予め設定された角度だけ回転させ、組み立てられた2つの隣接する積層体34の一方における突出部382が、組み立てられた2つの積層体34の他方における凹部381と位置合わせされるようにする。この予め設定される角度は、歯39の数によって決定され、2つの隣接する歯39間の円弧角に等しい。
【0029】
この実施形態では、各積層体34の歯39の数が6であるため、2つの隣接する歯39間の円弧は円の6分の1を占め、すなわち組み立て中の隣接する積層体34の回転角は60度である。他の実施形態では、組み立て中の積層体34の回転角が、歯39の数の変化によって変化することができる。例えば、歯39の数が8である場合、回転角は円の8分の1、すなわち45度に一致するはずである。また、突出部382と凹部381は、各積層体34の外縁に交互に分布する。従って、積層体34の組み立て後には、3つの隣接する積層体34のうちの外側の2つの積層体34が完全に重なり、外側の2つの積層体34の凹部381と突出部382とが同じ位置に存在し、3つの隣接する積層体34のうちの中央の積層体34の凹部381が外側の2つの積層体34の突出部382と位置合わせされ、中央の積層体34の突出部382が外側の2つの積層体34の凹部381と位置合わせされる。すなわち、ステータ構造30の軸方向では、凹部381と突出部382とを交互に分布させ、隣接する突出部382が間隔を置いて配置されるようにし、各突出部382の軸方向における上側と下側を凹部381にして、突出部382が変形できるための空間を提供する。
【0030】
本発明によって提供するステータ構造30の積層体34を積み重ねてステータコア35を形成した後には、わずかに突出する突出部382及び窪んだ凹部381が、ステータコア35のヨーク部の半径方向外縁に配置される。ステータ構造30の軸方向では、突出部382と凹部381とが交互に配置され、2つの隣接する突出部382が1つの凹部381によって分離され、突出部382と凹部381は、ステータコア35の外周面にギザギザ状の構造を形成する。本発明の各積層体34は、従来の内側ロータ式モータのステータ構造に比べて環状本体38の外径をわずかに小さくなるように設計して、公差の存在下であっても環状本体38とハウジング本体12が干渉を生じないことを確実にできる一方で、各突出部382のサイズをわずかに大きくなるように設計することができる。
【0031】
各突出部382は突出構造であり、対応する突出部382の軸方向両側には凹部381が配置されるので、
図8に示すようにステータ31をハウジング本体12に挿入した場合、たとえ突出部382のサイズがわずかに大きいことに起因して突出部382とハウジング本体12が互いに干渉し合っても、ハウジング本体12による加圧時に、突出部382が凹部381内に容易に変形することができる。従って、ステータ31をハウジング本体12にうまく挿入することができる。
【0032】
本体の外周面がハウジング本体と直接干渉する従来のシリコン鋼板に比べ、本発明によって提供するステータ31をハウジング本体12に取り付けた後には、ヨーク部が突出部382の位置においてハウジング本体12の内壁に接触するとともに、凹部381の位置においてハウジング本体12から分離されることにより、ステータコア35のヨーク部は、離散的位置においてハウジング本体12の内壁に接触するようになる。突出部382とハウジング本体12との間の接触面積は、各積層体34の本体38の外周面の面積よりもはるかに小さく、突出部382の両側の凹部381は、変形のための空間を提供する。従って、ステータ31をハウジング本体12内に取り付ける最中、すなわち組み立て中に突出部382がハウジング本体12に引っ掻き傷を付けず、これらの間の干渉に起因するステータコア35及びハウジング本体12の損傷が避けられる。ステータ31をハウジング本体12内に取り付けた後、突出部382は、ハウジング本体12との干渉によって弾性変形し、これによって対応する反力がハウジング本体12に加わることにより、ステータコア35がハウジング本体12内に締り嵌めされるようになる。先行技術の組み立て法で用いられるような高温加熱ステップは不要であり、接着剤の使用も避けられる。従って、製造工程を短縮することができ、信頼性の高いモータの組み立てを実現することができる。
【0033】
図9に、ステータ構造30aの別の実施形態を示す。この実施形態では、ステータ構造30aのステータコアが、複数の第1の積層体34aと複数の第2の積層体34bとを交互に積み重ねることによって形成され、他の構成部品は第1の実施形態と同様に構築される。各第1の積層体34aの環状本体38aの外縁は、各歯39aに対応する位置に凹部381を有し、各第2の積層体34bの本体38bの外縁は、各歯39bに対応する位置に突出部382を有する。第1の積層体34aと第2の積層体34bとを交互に積み重ねると、歯39aと歯39bが互いに位置合わせされる。
図10及び
図11に示すように、第1の積層体34aと第2の積層体34bを軸方向に積み重ねた後には、第1の積層体34aの凹部381と第2の積層体34bの突出部382とが交互に配置され、第1の実施形態のものと同じギザギザ形状を形成する。組み立てた第1の積層体34a及び第2の積層体34bをハウジング本体12に挿入すると、第1の積層体34aの突出部382は、引っ掻き傷を付けるのを避けるように第2の積層体34bの凹部381内に変形する。他の実施形態では、2つの隣接する第2の積層体34b間に2又はそれ以上の第1の積層体34aを配置することができ、すなわち各突出部382の両側に2又はそれ以上の凹部381を配置し、これによってギザギザ状を形成するとともに、第2の積層体34bの突出部382の同様な変形によってハウジング本体12に引っ掻き傷を付けるのを避けることができる。2つの隣接する第1の積層体34a間に2又はそれ以上の第2の積層体34bを配置することもできると理解されたい。
【0034】
好適な電気モータの例としてBLDCモータを用いて本発明を説明したが、本発明は、例えば同期モータ及びスイッチ付きリラクタンスモータなどの、巻線形ステータを有する他のモータタイプにも適用可能である。
【0035】
本出願の明細書及び特許請求の範囲では、記述する項目又は特徴の存在を明示する一方でさらなる項目又は特徴の存在を排除しないように、「備える、含む、有する(comprise、include、contain及びhave)」という動詞、並びにその派生形の各々を包括的な意味で使用している。
【0036】
明確化のために別個の実施形態の文脈で説明した本発明のいくつかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできると理解されたい。これとは逆に、簡潔さを期すために単一の実施形態の文脈で説明した本発明の様々な特徴を別個に、又はいずれかの好適な下位の組み合わせで提供することもできる。
【0037】
上述した実施形態はほんの一例にすぎず、当業者には、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0038】
12 ハウジング本体
36 コア絶縁体
37 巻線
38 本体
381 凹部
382 突出部