特許第6688071号(P6688071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688071
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】電気モータ用ブラシ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20200421BHJP
   H01R 39/18 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H02K13/00 P
   H01R39/18
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-255684(P2015-255684)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2016-127800(P2016-127800A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】201410854724.2
(32)【優先日】2014年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ファ ユン チー
(72)【発明者】
【氏名】シュ ダン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン シュン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ルイ フェン チン
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−171304(JP,A)
【文献】 特開2009−131120(JP,A)
【文献】 特開2010−213569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H01R 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの整流子に摺動電気的接触するように構成されている前端面を備えるブラシ本体であって、前記前端面は、第1の接触面と、第2の接触面とを備え、前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の他の領域よりも早く、前記整流子に接触し、前記各接触面は、それぞれ、前記前端面の異なるコーナー部に配置される、ブラシ本体と、
前記前端面に連結される第1の側面及び第2の側面であって、前記第1の側面及び前記第2の側面は、前記整流子の回転方向の前記ブラシ本体の両側に配置される、第1の側面及び第2の側面と、を備え、
前記前端面は、第1の突出部と、第2の突出部とを備え、前記第1の接触面は、前記第1の突出部に配置され、前記第2の接触面は、前記第2の突出部に配置され、前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、協働してV字形構成を形成し、前記ブラシ本体は、前記第1及び第2の側面に対して平行な縦軸を有する角柱状であり、前記第1の突出部はさらに前記第1の接触面に隣接する第1の面を含み、前記第2の突出部はさらに前記第2の接触面に隣接する第2の面を含み、前記第1の側面又は前記第2の側面に垂直な断面に対する前記第1又は第2の接触面の傾斜角度は、それぞれ、前記第1又は第2の面の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする電気モータ用ブラシ。
【請求項2】
前記前端面は4つのコーナー部を有する実質的に長方形であり、前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、それぞれ、前記前端面の第1の対角線の両側に配置され、前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の第2の対角線の両端に配置されることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項3】
前記第1の突出部の突出高さ及び前記第2の突出部の突出高さは、前記第1の対角線から遠ざかる方向に徐々に大きくなり、前記第1の対角線に対する前記第1の突出部及び前記第2の突出部の前記突出高さの各勾配は、実質的に同じであることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項4】
前記前端面は4つのコーナー部を有する実質的に長方形であり、前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、前記前端面の中心線の両側に配置され、前記中心線は、前記第1及び第2の側面の中間に、前記各側面に対して平行に設けられることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項5】
前記第1の突出部の突出高さ及び前記第2の突出部の突出高さは、前記中心線から遠ざかる方向に徐々に大きくなり、前記中心線に対する前記第1の突出部及び前記第2の突出部の前記突出高さの各勾配は、実質的に同じであることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項6】
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、各々、接触線において前記整流子に接触し、前記ブラシの軸方向の高さに対する前記接触線の長さの比率は、20%〜90%であることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項7】
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、各々、接触線において前記整流子に接触し、前記ブラシの軸方向の高さに対する前記接触線の長さの比率は、40%〜80%であることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項8】
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、各々、接触線において前記整流子に接触し、前記接触線は、前記ブラシの軸方向の高さの実質的に半分の長さを有することを特徴とする、請求項4に記載のブラシ。
【請求項9】
前記前端面は4つのコーナー部を有する実質的に長方形であり、前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の中心点に関して対称であることを特徴とする、請求項に記載のブラシ。
【請求項10】
前記ブラシ本体の前記縦軸に対して垂直である前記第1の突出部及び第2の突出部の各断面は、それぞれ、前記第1の接触面及び前記第2の接触面の突出方向に徐々に小さくなる面積を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項11】
ブラシを有するブラシギアを含むステータと、
前記ステータに回転可能に組み付けられるロータであって、前記ロータは、軸と、前記軸に固定される整流子及びロータコアと、前記ロータコアの周りに巻き付けられ、前記整流子のセグメントに電気的に接続されるロータ巻線とを備える、ロータと、を備え、
各ブラシは、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のブラシであることを特徴とするモータ。
【請求項12】
モータと、
前記モータに組み付けられるギアボックスと、
前記ギアボックスに収容され、前記モータによって駆動される歯車列と、を備え、
前記モータは、請求項11に記載のモータであることを特徴とする歯車モータアセンブリ。
【請求項13】
前記歯車列は、前記モータの軸に設けられるウォームと、前記ギアボックスに配置され、前記ウォームと噛合されるウォームホイールとを含むことを特徴とする、請求項12に記載の歯車モータアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]
本発明は、電気モータに関し、特に、電気モータ用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]
ブラシDC(直流)モータは、電気ブラシ(本書では、ブラシと呼称する)を採用して、整流子と協働して、モータの電源回路の連続導通及び電流の整流を実現する。従来のブラシの前端面は、初期状態時、平面である。しかしながら、整流子は円筒状であり、新たに組み付けられたブラシと整流子との接触は、一般に、線接触であり、これは不安定である。その結果、整流子の回転時、ブラシの不規則な振動が発生するので、機械的雑音や火花が生じる。更に、整流子の回転時、1つのブラシによって、隣接する整流子のセグメントが短絡すると、モータの電流は大きく変動するので、リプル電流が生じる。従来技術では、リプル電流を用いて、モータのロータの回転速度を測定することが開発され、これにより、磁気センサ及び磁石リングを無くすことによって、速度センサのコストを低減する。しかしながら、ブラシと整流子との不安定な接触によって、リプル電流の不規則性が増大するので、リプル電流を用いる回転速度の測定の測定値が不正確だったり、測定が完全に失敗してしまう。これは、特に、多くの用途において正確な位置の特定が必要なので、歯車モータアセンブリ(モータアクチュエータ又はアクチュエータともいう)に関係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0004]
したがって、上記の問題を解決することができる電気モータ用ブラシ及び歯車モータアセンブリが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005]
したがって、本発明は、その一態様において、電気モータ用ブラシを提供するものである。このブラシは、モータの整流子に摺動電気的接触するように構成されている前端面を備えるブラシ本体であって、前記前端面は、第1の接触面と、第2の接触面とを備え、前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の他の領域よりも早く、前記整流子に接触し、前記各接触面は、それぞれ、前記前端面の直径方向に互いに正対するコーナー部に配置される、ブラシ本体と、前記前端面に連結される第1の側面及び第2の側面であって、前記第1の側面及び前記第2の側面は、前記整流子の回転方向の前記ブラシ本体の両側に配置される、第1の側面及び第2の側面と、を備える。
【0005】
[0006]
前記前端面は、第1の突出部と、第2の突出部とを備え、前記第1の接触面は、前記第1の突出部に配置され、前記第2の接触面は、前記第2の突出部に配置され、前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、協働して、V字形構成を形成することが好ましい。
【0006】
[0007]
前記ブラシ本体は、前記第1及び第2の側面に対して平行な縦軸を有する角柱状であり、前記ブラシ本体の前記縦軸に対して垂直な断面に対する前記第1の突出部の傾斜角度は、前記断面に対する前記第1の接触面の傾斜角度よりも大きいことが好ましい。
【0007】
[0008]
前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、それぞれ、前記前端面の第1の対角線の両側に配置され、前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の第2の対角線の両端に配置されることが好ましい。
【0008】
[0009]
前記第1の突出部の突出高さ及び前記第2の突出部の突出高さは、前記第1の対角線から遠ざかる方向に徐々に大きくなり、前記第1の対角線に対する前記第1の突出部及び前記第2の突出部の前記突出高さの各勾配は、実質的に同じであることが好ましい。
【0009】
[0010]
前記第1の突出部及び前記第2の突出部は、前記前端面の中心線の両側に配置され、前記中心線は、前記第1及び第2の側面の中間に、前記各側面に対して平行に設けられることが好ましい。
【0010】
[0011]
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、各々、接触線に沿って、前記整流子に接触し、前記ブラシの軸方向の高さに対する前記接触線の長さの比率は、20%〜90%であることが好ましい。より好ましくは、この比率は、40%〜80%である。いくつかの実施形態では、前記接触線は、前記ブラシの軸方向の高さの実質的に半分の長さを有する。
【0011】
[0012]
代替例として、前記第1の突出部の突出高さ及び前記第2の突出部の突出高さは、前記中心線から遠ざかる方向に徐々に大きくなり、前記中心線に対する前記第1の突出部及び前記第2の突出部の前記突出高さの各勾配は、実質的に同じである。
【0012】
[0013]
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、角柱形状、角錐台形状、又は楔形状であることが好ましい。
【0013】
[0014]
前記第1の接触面及び前記第2の接触面は、前記前端面の中心点に関して対称であることが好ましい。
【0014】
[0015]
前記第1の接触面及び前記第2の接触面の各断面は、それぞれ、前記第1の接触面及び前記第2の接触面の突出方向に徐々に小さくなる面積を有することが好ましい。
【0015】
[0016]
前記前端面は、前記第1の接触面及び前記第1の側面に隣接する領域において、第1の平坦面を形成し、前記前端面は、前記第2の接触面及び前記第2の側面に隣接する領域において、第2の平坦面を形成し、前記第1の平坦面は、前記第2の平坦面に交差するか、又は、前記第2の平坦面と共面であることが好ましい。
【0016】
[0017]
第2の態様では、本発明は、電気モータを提供するものである。このモータは、ブラシを有するブラシギアを含むステータと、前記ステータに回転可能に組み付けられるロータであって、前記ロータは、軸と、前記軸に固定される整流子及びロータコアと、前記ロータコアの周りに巻き付けられ、前記整流子のセグメントに電気的に接続されるロータ巻線とを備える、ロータと、を備え、各ブラシは、上記のブラシである。
【0017】
[0018]
別の態様では、本発明は、歯車モータアセンブリを提供するものである。この歯車モータアセンブリは、モータと、前記モータに組み付けられるギアボックスと、前記ギアボックスに収容され、前記モータによって駆動される歯車列と、を備え、前記モータは、上記のモータである。
【0018】
[0019]
前記歯車列は、前記モータの軸に設けられるウォームと、前記ギアボックスに配置され、前記ウォームと噛合されるウォームホイールとを含むことが好ましい。
【0019】
[0020]
従来技術と比較して、初期状態では、ブラシと整流子との接触領域の幅が大きくなり、整流時間が長くなるので、電流の整流の規則性が向上し、モータの動作の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態による、モータとギアボックスとを含む歯車モータアセンブリを示す図である。
図2図1のモータの組立分解図である。
図3図2のモータの一部であるエンドキャップの拡大図である。
図4図3のエンドキャップに用いられるブラシを示す図である。
図5図4のブラシの側面図である。
図6】本発明の第2の実施形態によるブラシを示す図である。
図7】別の側面から見た、図6のブラシを示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態によるブラシを示す図である。
図9】別の側面から見た、図8のブラシを示す図である。
図10】本発明の第4の実施形態によるブラシを示す図である。
図11】別の側面から見た、図10のブラシを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0021]
ここで、添付図面の図を参照して、単なる例示として本発明の好ましい実施形態を説明する。図において、複数の図に現れる同一の構造体、要素又は部品は、一般に、それらが現れる全ての図において同じ符号で表記される。図内に示される構成部品及び構造部の寸法は、一般に、便宜のため及び提示の明確さのために選択されたものであり、必ずしも縮尺通りではない。
【0022】
[0033]
図1図3は、本発明の第1の実施形態による、モータ100とギアボックス300とを有する歯車モータアセンブリ11を示す。ギアボックスは、ギアボックスの出力にモータの軸を連結する歯車列を収容する。歯車列は、ウォームギアであるか、又は、ウォームギアを有することが好ましい。ギアボックス300は、モータ100に組み付けられ、モータ100の軸101の出力端には、ウォーム102が設けられる。ウォームギアは、ギアボックス300内に収容され、ウォーム102と噛合される。
【0023】
[0034]
モータ100は、ステータ130と、ステータ130に回転可能に取り付けられるロータ110とを含む。ロータ110は、軸101と、整流子104と、ロータコア106と、ロータ巻線(図示せず)とを含む。整流子104及びロータコア106は、軸101に固定される。ロータ巻線は、ロータコア106の周りに巻き付けられ、整流子104のセグメントに電気的に接続される。ステータ130は、略円筒状のハウジング131と、ハウジング131の内面に組み付けられる複数の永久磁石135と、ハウジング131の開口端に組み付けられるエンドキャップ137とを含む。この実施形態では、エンドキャップ137に、2つのブラシ200を含むブラシギアが設けられる。各ブラシ200は、モータ軸101の半径方向に延在するエンドキャップ137のそれぞれの通路に、摺動可能に設けられる。ブラシ200は、ブラシばね(図示せず)の付勢状態で、整流子104のセグメントに摺動電気的接触して、ロータ巻線に電力を供給するように構成されている。
【0024】
[0035]
図4及び図5は、第1の実施形態によるブラシ200の1つを拡大して示す。ブラシ200は、ブラシ本体と、ブラシ本体に電気的に接続されるシャント線290とを含む。ブラシ本体は、実質的に角柱形状であり、整流子のセグメントに摺動可能に接触するように構成されている前端面210と、前端面210に連結される第1の側面230及び第2の側面250とを含む。第1の側面230及び第2の側面250は、整流子の回転方向の両側に配置される。第1の側面230及び第2の側面250の一方は、整流子の回転方向の整流子の上流に配置され、第1の側面230及び第2の側面250の他方は、整流子の回転方向の整流子の下流に配置される。前端面210と反対側の他方の端面(すなわち、後端面)は、ばねを取り付けるための突出取付部225を形成する。ばねは、力を与えて、ブラシ200を整流子104に押し当てる。シャント線290は、後端面に隣接する位置のブラシ200に接続される。シャント線290の接続位置は、第1の側面230と第2の側面250との間で、後端面に隣接する上側面に配置される。
【0025】
[0036]
前端面210は、第1の接触面212bと、第2の接触面214bとを含む。第1の接触面212bは、第1の突出部212に配置され、第2の接触面214bは、第2の突出部214に配置される。第1の接触面212b及び第2の接触面214bは、前端面210の他の領域よりも前に、整流子104に接触する。第1の突出部212及び第2の突出部214は、それぞれ、第1の側面230及び第2の側面250に連結される。第1の突出部212は、第1の側面230と交差するコーナー位置で最も突出し、第2の突出部214は、第2の側面250と交差するコーナー位置で最も突出して、第1の側面230及び第2の側面250に隣接するブラシ200の前端面210の部分が、最初に整流子104に接触できるようにすることが好ましい。したがって、ブラシ200と整流子104との接触は安定するので、ブラシ200の振動は低減される。2つのコーナー位置は、直径方向に互いに正対するコーナー部であることが理想的である。更に、初期状態では、ブラシ200は、最大幅(第1の側面230と第2の側面250との間の距離)で、整流子104に実質的に接触し、これにより、整流時間が長くなるので、電流の整流及びリプル電流の規則性が向上する。
【0026】
[0037]
この実施形態では、第1の突出部212及び第2の突出部214は、前端面210の第1の対角線L1の両側に配置される。第1の対角線L1の方向に沿って見ると、第1の突出部212及び第2の突出部214は、V字形構成を形成する。第1の突出部212は、第1の対角線L1に隣接する第1の面212aと、第1の対角線L1から離れた第1の接触面212bとを含む。第1の接触面212bは、第1の面212aよりも小さい面積を有する。第1の面212aは、傾斜面であり、第1の対角線L1から第1の側面230及び整流子104に向かって延在することが好ましい。第1の接触面212bは、第1の対角線L1から離れた前端面210の頂点コーナー部に配置される。第1の接触面212bは、傾斜面であり、第1の面212aから第1の側面230及び整流子104に向かって延在することが好ましい。第1の側面230又は第2の側面250に対して垂直な断面に対する第1の接触面212bの傾斜角度は、この断面に対する第1の面212aの傾斜角度よりも小さく、モータ100の雑音を低減するようになっている。
【0027】
[0038]
同様に、第2の突出部214は、第1の対角線L1に隣接する第2の面214aと、第1の対角線L1から離れた第2の接触面214bとを含む。第2の接触面214bは、第2の面214aよりも小さい面積を有する。第2の面214aは、傾斜面であり、第1の対角線L1から第2の側面250及び整流子104に向かって延在することが好ましい。第2の接触面214bは、第1の対角線L1から離れた前端面210の頂点コーナー部に配置される。第2の接触面214bは、傾斜面であり、第2の面214aから第2の側面250及び整流子104に向かって延在することが好ましい。第1の側面230又は第2の側面250に対して垂直な断面に対する第2の接触面214bの傾斜角度は、この断面に対する第2の面214aの傾斜角度よりも小さく、モータ100の雑音を低減するようになっている。
【0028】
[0039]
第1の突出部212の第1の接触面212b及び第2の突出部214の第2の接触面214bは、整流子104の軸方向に互い違いに配置される(図2参照)。すなわち、第1の突出部212と第2の突出部214とを結ぶ線は、整流子104の回転面と交差し、第1の突出部212及び第2の突出部214は、整流子104の回転方向の前端面210の中心線の両側に配置される。第1の接触面212b及び第2の接触面214bは、前端面210の第2の対角線L2の両端に配置されることが好ましい。第1の突出部212は、第2の突出部214と同じ形状を有し、第1の突出部212と整流子のセグメントとの接触面積は、第2の突出部214と整流子のセグメントとの接触面積と可能な限り等しくすることができるので、リプル電流はより安定化する。この実施形態では、第1の側面及び上側面に対して垂直な第1の突出部212及び第2の突出部214の各断面は、三角形又は近似的に三角形であり、この断面は、整流子104に向かう方向に徐々に小さくなる面積を有する。第1の突出部212及び第2の突出部214は、三角錐又は三角錐台の形状である。整流子104に最も近い第1の突出部212及び第2の突出部214の部分は、それぞれ、第2の対角線L2の末端に配置される。すなわち、これらの部分は、それぞれ、第1の接触面212b及び第2の接触面214bに配置される。第1の突出部212及び第2の突出部214は、それぞれ、互いに対向するコーナー部から第1の対角線L1に向かって傾斜する斜面を形成することによって、第1の対角線L1の位置に、内側に凹んだ凹部を形成する。
【0029】
[0040]
第1の側面230は、第2の側面250に対して平行であり、第1の突出部212及び第2の突出部214は、前端面210の中心点に関して対称であり、第1の接触面212b及び第2の接触面214bは、前端面210の中心点に関して対称である。第1の突出部212の突出高さ及び第2の突出部214の突出高さは、第1の対角線L1から遠ざかる方向に大きくなる。第1の対角線L1に対する第1の突出部212及び第2の突出部214の突出高さの各勾配は、同じであることが好ましい。これにより、ブラシ200が摩耗したとき、確実に、第1の突出部212と整流子104との接触面積は、第2の突出部214と整流子104との接触面積と可能な限り等しくすることができる。
【0030】
[0041]
図6及び図7を参照すると、第2の実施形態のブラシ200と第1の実施形態のブラシとの違いは、第1の突出部212及び第2の突出部214は、それぞれ、前端面210の中心線211の両側に配置され、中心線211に沿って見ると、第1の突出部212及び第2の突出部214は、協働して、V字形構成を形成する点である。中心線211は、整流子104の軸方向に対して実質的に平行であり、整流子104の円周方向の前端面210の中間部に位置する。第1の側面230又は第2の側面250に対して垂直な断面に対する第1の突出部212の第1の接触面212bの傾斜角度は、この断面に対する第1の面212aの傾斜角度よりも大きい。
【0031】
[0042]
この実施形態でも、同様に、第1の突出部212の第1の接触面212b及び第2の突出部214の第2の接触面214bは、整流子104の軸方向に互い違いに配置される。第1の突出部212の第1の接触面212b及び第2の突出部214の第2の接触面214bは、それぞれ、ブラシ200の前端面210の互いに対向するコーナー部に配置されることが好ましい。ブラシ200が整流子104に接触すると、第1の突出部212の接触面212b及び第2の突出部214の接触面214bは、最初の接触面を形成する。この実施形態では、第1及び第2の接触面212b,214bは、実質的に台形である。第1及び第2の面212a,214aは、共面であるか又は交差して、V字形をなす平坦面であることが好ましい。
【0032】
[0043]
図8及び図9を参照すると、本発明の第3の実施形態のブラシ200の第1の突出部212及び第2の突出部214も、ブラシの中心線の両側に配置され、これらの突出部は、協働して、V字形構成を形成する。第2の実施形態と第3の実施形態との違いは、第1の突出部212の接触面212b及び第2の突出部214の接触面214bが、矩形状である点である。
【0033】
[0044]
図10及び図11を参照すると、本発明の第4の実施形態のブラシ200の第1の突出部212及び第2の突出部214も、ブラシの中心線の両側に配置され、これらの突出部は、協働して、V字形構成を形成する。第4の実施形態のブラシは、第1の接触面及び第2の接触面が、モータの軸方向の長さが長い点で、第2の実施形態のブラシとは異なる。モータの作動時、ブラシは、第1の接触面及び第2の接触面のそれぞれ2つの接触線で、整流子に接触する。各接触線は、図11に示すY1及びY2で示す。第1及び第2の接触面の接触線Y1,Y2は、等しい長さを有することが好ましい。ブラシの軸方向の高さに対する接触線Y1又はY2の長さの比率は、20%〜90%であり、好ましくは、40%〜80%である。このように、整流子の回転時、ブラシは、整流子に、より安定的に接触するので、モータの雑音は、更に抑制される。この実施形態では、接触線Y1及びY2は、ブラシの軸方向の高さの実質的に半分の長さを有する。
【0034】
[0045]
上記実施形態では、第1の突出部の第1の面及び第2の突出部の第2の面は、両方とも、傾斜面である。しかしながら、第1の面及び第2の面は、平面又は円弧面にすることもできる。
【0035】
[0046]
本出願の説明及び請求項において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「含む(contain)」及び「有する(have)」、並びにその変形形態は、説明する要素又は特徴の存在を規定するために包括的な意味で使用され、追加の要素又は特徴の存在を排除するものではない。
【0036】
[0047]
明確にするために別個の実施形態に関連して説明されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供してもよいものと理解される。逆に、簡潔にするために1つの実施形態に関連して説明されている本発明の種々の特徴を、個別に又はそれらを適当に組み合わせて提供してもよい。
【0037】
[0048]
上記の実施形態は単なる例示であり、請求項に定義する本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0038】
11 歯車モータアセンブリ
100 モータ
101 軸
102 ウォーム
104 整流子
106 ロータコア
110 ロータ
130 ステータ
131 ハウジング
135 永久磁石
137 エンドキャップ
200 ブラシ
210 前端面
211 中心線
212 第1の突出部
212a 第1の面
212b 第1の接触面
214 第2の突出部
214a 第2の面
214b 第2の接触面
225 突出取付部
230 第1の側面
250 第2の側面
290 シャント線
300 ギアボックス
L1 第1の対角線
L2 第2の対角線
Y1,Y2 接触線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11