(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係るフェアリングは、ロケットの先端に取り付けられるフェアリングであって、ロケットの進行方向に直交する方向へ分離開頭するように構成されている第1フェアリング片及び第2フェアリング片を備え、第1フェアリング片と第2フェアリング片の接合面には、第1分離機構と第2分離機構が配設されていて、第2分離機構は、第1分離機構よりも、作動の同時性が高く、かつ、作動時間が短くなるように構成されている。
【0018】
また、本実施の形態1に係るフェアリングでは、第2分離機構が、前記第1分離機構よりもその配置数が少なくてもよい。
【0019】
また、本実施の形態1に係るフェアリングでは、第2分離機構が、フェアリングの先端部と後端部に配設されていてもよい。
【0020】
本実施の形態1に係るロケットは、上記本実施の形態1に係るフェアリングと、第1分離機構を作動させ、その後、第2分離機構を作動させるように構成されている制御器と、を備える。
【0021】
以下、本実施の形態1に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの一例について、
図1〜
図3Bを参照しながら説明する。
【0022】
[フェアリング及びそれを備えるロケットの構造]
図1は、本実施の形態1に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの概略構成を示す模式図である。
図2Aは、
図1に示すA−A線断面図である。
図2Bは、
図1に示すB−B線断面図である。
図3A及び
図3Bは、
図1に示すフェアリングの開頭機構の概略構成を示す模式図であり、
図3Aは、フェアリングの分離開頭前の状態を示す模式図であり、
図3Bは、フェアリングが分離開頭中の状態を示す模式図である。なお、
図1においては、フェアリングの上下方向を図における上下方向として示している。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態1に係るロケット200は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bを有するフェアリング(本実施の形態1に係るフェアリング)100と、ロケット本体201と、制御器50と、を備えている。フェアリング100は、円筒状の後端部101、円筒状の中間部102、及び頂部が丸みを帯びた円錐状の先端部103を備えていて、搭載アダプタ300に後端部101が結合された状態で、ロケット本体201の先端部に装着されている。
【0024】
また、フェアリング100は、後端部101、中間部102、及び先端部103がこの順で配置されている。すなわち、後端部101が下方に位置し、先端部103が上方に位置するように構成されている。なお、後端部101及び中間部102を直胴部と言う場合がある。
【0025】
搭載アダプタ300は、略錐台(円錐台)状に形成されている。搭載アダプタ300の上底部分には、人工衛星等の宇宙航行体400が接続される航行体側接続部が設けられていて、搭載アダプタ300の下底部分には、ロケット本体201の先端部が接続されるロケット側接続部が設けられている。
【0026】
また、搭載アダプタ300には、後端部101が載置されている。具体的には、例えば、搭載アダプタ300の下部外周部に、外方に突出したツバ部を設け、該ツバ部の上面に後端部101を載置してもよい。
【0027】
また、フェアリング100は、ロケット200の進行方向(図における上下方向)に沿って分割されるように構成されている。具体的には、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bに分離開頭するように構成されている。
【0028】
第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bとの上下方向の分割面が、接合面100cを構成し、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bと搭載アダプタ300との径方向の分割面が、接合面100dを構成する。
【0029】
また、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの接合面100cは、後述する第1分離機構11又は第2分離機構12により結合(連結)されている。さらに、フェアリング100と搭載アダプタ300との接合面100dは、第1分離機構11により結合(連結)されている。
【0030】
第2分離機構12は、第1分離機構11よりも作動の同時性が高く、かつ、作動時間が短くなるように構成されている。ここで、作動の同時性とは、複数の分離機構が同時に作動することをいい、作動の同時性が高いとは、作動を開始するタイミングのずれが小さいことをいう。また、作動時間とは、分離機構が作動を開始してから、作動が終了する(結合を分離する)までの時間をいう。なお、第1分離機構11の作動時間は、例えば、0.02秒以上であってもよく、第2分離機構12の作動時間は、例えば、0.02秒未満であってもよい。
【0031】
また、第2分離機構12は、第1分離機構11よりも、その配置領域が小さい。すなわち、第2分離機構12は、第1分離機構11よりも、配置されている箇所が少ない。換言すると、第2分離機構12は、第1分離機構11よりも、その配置数が少なく、本実施の形態1においては、第2分離機構12は、後端部101と先端部103に配置され、第1分離機構11は、後端部101、中間部102、及び先端部103に配置されている。より詳細には、
図1がロケット200の正面を示す模式図であるとすると、第2分離機構12は、後端部101及び先端部103の正面側と背面側に、それぞれ、1か所ずつ、合計4ヵ所に配置されている。また、第1分離機構11は、第2分離機構12が配置されている箇所以外の箇所に配置されている。
【0032】
ここで、
図2A及び
図2Bを参照しながら、第1分離機構11及び第2分離機構12の構造について、詳細に説明する。
【0033】
図2Aに示すように、第1フェアリング片100a側の端部及び第2フェアリング片100b側の端部には、それぞれ、フランジ103A及びフランジ103Bが形成されている。フランジ103Aは、接合面100cを構成するフランジ面を有していて、当該フランジ面には、貫通孔103Cが設けられている。同様に、フランジ103Bは、接合面100cを構成するフランジ面を有していて、当該フランジ面には、貫通孔103Dが設けられている。
【0034】
第1分離機構11は、ボルト11a、固定部材11b、形状記憶合金から構成されている駆動部材11c、及び加熱部材11dを有していて、ボルト11aが貫通孔103C及び貫通孔103Dを挿通するように配置されている。
【0035】
ボルト11aは、軸部と頭部を有していて、軸部が貫通孔103C及び貫通孔103Dを嵌通するように配置されている。また、軸部の基端部分(頭部に近い側の部分)には、該軸部の切断を容易にするための溝(刻み目)が形成されていて、軸部の先端部には、固定部材11bが固着されている。固定部材11bは、例えば、ナットで構成されていてもよい。
【0036】
また、ボルト11aにおける軸部の周面には、駆動部材11cが巻きつけられている。駆動部材11cは、フランジ103Bのフランジ面と反対側の面(以下、裏面という)と、固定部材11bにおけるフランジ103Bの裏面と対向する主面と、接触するように配置されていて、固定部材11bにより、フランジ103Bのフランジ面側に押圧されている。
【0037】
駆動部材11cは、上述したように、形状記憶合金(例えば、ニッケル−チタン合金等)により構成されていて、所定の温度以上(例えば、100℃以上)になると、ボルト11aの軸心方向に延びるように構成されている。なお、所定の温度とは、ここでは、形状記憶合金が元の形状に変化する温度をいう。
【0038】
駆動部材11cの外周面には、加熱部材11dが巻きつけられている。加熱部材11dは、駆動部材11cを加熱する加熱部と、加熱部により放出される熱を外部に拡散させないようにするための断熱部と、から構成されている。加熱部としては、例えば、シリコンヒータ等の各種のヒータを用いることができる。断熱部としては、例えば、セラミック繊維等を用いることができる。
【0039】
また、加熱部材11dの外方には、加熱部に電力を供給するための配線11eが配置されている。配線11eは、ロケット200内に配置されているバッテリ(図示せず)と加熱部材11dの加熱部とを電気的に接続している。なお、バッテリからの加熱部材11dの加熱部への電力の供給は、制御器50により制御される。
【0040】
また、
図1に示すように、第2分離機構12は、本実施の形態1においては、後端部101と先端部103の上下方向における中央部分に配設されている(
図1参照)。なお、第2分離機構12は、先端部103の頂部近傍に配設されていてもよく、中間部102に配設されていてもよい。
【0041】
図2Bに示すように、第2分離機構12は、本体30、ボルト31、複数のナット片からなる分離ナット32等から構成されていて、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bをボルト31と分離ナット32で締結している。
【0042】
本体30は、筒状に形成されていて、第1フェアリング片100a側の端部(以下、一方の端部)が開放されていて、第2フェアリング片100b側の端部(以下、他方の端部)が閉止されている。本体30の内部空間には、分離ナット32、ピストン33、及び火薬34が収容されている。
【0043】
分離ナット32は、ボルト31の軸部と螺合した状態で、本体30の内周面と嵌合している。また、火薬34は、本体30の他方の端部側に配置されている。火薬34には、制御器50からの制御信号により、火薬34を点火するための導線35が接続されている。
【0044】
ピストン33は、分離ナット32と火薬34の間に配置されている。ピストン33は、火薬34が爆発するときに生じるガスによって、ボルト31を第1フェアリング片100a側に付勢し、その反作用により、本体30が第2フェアリング片100bに移動させるように構成されている。
【0045】
また、
図1に示すように、搭載アダプタ300と後端部101には、ヒンジ部材21及び開頭部材22を有する開頭機構が配設されている。ここで、開頭機構について、
図3A〜
図3Cを参照しながら詳細に説明する。
【0046】
図3A〜
図3Cに示すように、ヒンジ部材21は、接合面100dを跨ぐように、搭載アダプタ300の外周面と後端部101の外周面に取り付けられている。具体的には、ヒンジ部材21は、第1ヒンジ部21aと第2ヒンジ部21bを有していて、搭載アダプタ300の外周面には、第1ヒンジ部21aが取り付けられていて、後端部101の外周面には、第2ヒンジ部21bが取り付けられている。
【0047】
第1ヒンジ部21aには、ヒンジピンが設けられていて、第2ヒンジ部21bには、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bが結合した状態にあるときに、ヒンジピンと嵌合する嵌合部が設けられている(いずれも図示せず)。ヒンジピンは、第1フェアリング片100a又は第2フェアリング片100bが、所定角度まで開頭すると、嵌合部から解放されるように構成されている(特開2000−185699号公報参照)。
【0048】
本実施の形態1においては、一対のヒンジ部材21は、フェアリング100の軸心を挟んで、互いに対向するように、搭載アダプタ300と後端部101に取り付けられていてもよい。換言すると、一対のヒンジ部材21のうち、一方のヒンジ部材21が取り付けられている位置(フェアリング100の軸心を中心とした場合の周方向の位置)を0°とすると、他方のヒンジ部材21が、180°の位置に取り付けられている。なお、以下の説明においては、一方のヒンジ部材21が取り付けられている位置を0°として、他の部材の配置位置を説明する。
【0049】
また、本実施の形態1においては、二組の一対のヒンジ部材21が、搭載アダプタ300と後端部101に取り付けられていてもよい。この場合、対となるヒンジ部材21が、それぞれ、フェアリング100の軸心を挟んで、互いに対向するように取り付けられる。すなわち、一方の一対のヒンジ部材21が、それぞれ、2°と178°の位置に取り付けられ、他方の一対のヒンジ部材21が、それぞれ、−2°と−178°の位置に取り付けられていてもよい。
【0050】
開頭部材22は、ヒンジ部材21と同様に、接合面100dを跨ぐように、搭載アダプタ300の外周面と後端部101の外周面に取り付けられている。具体的には、開頭部材22は、第1固定部22aと、第2固定部22bと、バネ部22cと、を有している。バネ部22cは、その上端部が第2固定部22bにより、搭載アダプタ300に揺動自在に固定されており、その下端部が凹部を有する第1固定部22aと当接し、該凹部を押圧するように配置されている。
【0051】
また、開頭部材22は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bが結合した状態にあるときは、バネ部22cが圧縮した状態で、搭載アダプタ300と後端部101に固定されていて、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bを分離開頭するときに、バネ部22cが伸展するように構成されている。
【0052】
さらに、開頭部材22は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bが所定角度まで開頭すると、バネ部22cの下端部が第1固定部22aから外れて(第1固定部22aとの当接が解放されて)、搭載アダプタ300と後端部101の固定を解放させるように構成されている。
【0053】
本実施の形態1においては、開頭部材22は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの接合面100c近傍に、取り付けられている。具体的には、第1フェアリング片100aの接合面100c近傍に、一対の開頭部材22が、互いに対向するように取り付けられている。より詳細には、例えば、一方の開頭部材22が、88°の位置に取り付けられていて、他方の開頭部材22が、−88°の位置に取り付けられている。同様に、第2フェアリング片100bの接合面近傍には、一対の開頭部材22が互いに対向するように取り付けられている。
【0054】
また、
図1に示すように、後端部101、中間部102、及び先端部103は、それぞれ、ハニカムコアの両面にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)又はアルミ板等を接着したハニカムサンドイッチ構造を有するパネルと、該パネルを締結する締結部材(例えば、ボルトとナット)と、を備えている(いずれも図示せず)。後端部101は、曲面状の複数のパネルを締結部材によって締結することにより、円筒状に形成される。同様に、曲面状の複数のパネルを締結部材によって締結することにより、中間部102は円筒状に形成され、先端部103は略円錐状に形成される。
【0055】
そして、後端部101の上端部に中間部102が載置され、後端部101と中間部102の接合面が、適宜な締結部材により結合(締結)されている。また、中間部102の上端部に先端部103が載置され、中間部102と先端部103の接合面が、適宜な締結部材により結合(締結)されている。
【0056】
なお、本実施の形態1においては、後端部101を円筒状に形成されている態様を採用したが、これに限定されず、後端部101が円錐台状に形成されている態様を採用してもよい。
【0057】
また、
図1に示すように、ロケット本体201は、制御器50を備えている。制御器50は、ロケット200を制御する機器であれば、どのような形態であってもよい。制御器50は、マイクロプロセッサ、CPU等に例示される演算処理部と、各制御動作を実行するためのプログラムを格納した、メモリ等から構成される記憶部を備えている(いずれも図示せず)。そして、制御器50は、演算処理部が、記憶部に格納された所定の制御プログラムを読み出し、これを実行することにより、ロケット200に関する各種の制御を行う。
【0058】
なお、制御器50は、単独の制御器で構成される形態だけでなく、複数の制御器が協働して、ロケット200の制御を実行する制御器群で構成される形態であっても構わない。また、制御器50は、マイクロコントロールで構成されていてもよく、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等によって構成されていてもよい。
【0059】
[フェアリングの分離開頭方法]
次に、本実施の形態1に係るロケット200におけるフェアリング100の分離開頭方法について、
図1〜
図3Cを参照しながら説明する。
【0060】
ロケット200が打ち上げられ、所定の高度(宇宙空間)に到達すると、制御器50が宇宙航行体400をロケット200から分離するように各機器を制御する。具体的には、まず、制御器50は、図示されないバッテリから加熱部材11dの加熱部へ電力を供給させる。
【0061】
これにより、加熱部材11dの加熱部が駆動部材11cを加熱する。駆動部材11cは、当該駆動部材11cの温度が所定の温度(例えば、100℃)以上になると、ボルト11aの軸心方向に延びるように変形し、フランジ103Bの裏面と固定部材11bを押圧する。
【0062】
そして、駆動部材11cの固定部材11bへの押圧により、固定部材11bが固定されているボルト11aの溝部分でボルト11aが切断される。これにより、第1分離機構11による第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの結合が解離される。具体的には、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの接合面100cの結合が解離される。また、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bと搭載アダプタ300との接合面100dの結合が解離される。
【0063】
なお、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの接合面100cは、第2分離機構12により結合されている部分では、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの結合が維持されている。また、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bと搭載アダプタ300との接合面100dについては、ヒンジ部材21により、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bと搭載アダプタ300の結合が維持されている。
【0064】
次に、制御器50は、第2分離機構12の導線35を介して、火薬34に点火して、火薬34を爆発させる。なお、制御器50は、第1分離機構11の作動が完了(結合の分離が完了)してから、第2分離機構12の作動を開始させてもよい。また、制御器50は、第1分離機構11へ作動の開始信号を出力してから所定時間経過後に、第2分離機構12へ作動の開始信号を出力してもよい。この場合、所定時間は、予め実験等により求められ、加熱部材11dの加熱部により、駆動部材11cが上記所定の温度以上になる時間に対して数秒から数十秒遅い時間であってもよい。
【0065】
これにより、第2分離機構12のピストン33がボルト31を第1フェアリング片100a側に付勢し、その反作用により、本体30が第2フェアリング片100b側に移動する。これに伴って、本体30と分離ナット32と嵌合した状態が解除され、分離ナット32が、ナット片に分離し、分離ナット32とボルト31の螺合状態が解放される。
【0066】
そして、ボルト31がピストン33からの付勢力により、第1フェアリング片100a側に移動して、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bとの接合面100cの結合が解離され、フェアリング100は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bに分割される。また、第2分離機構12における火薬34への点火とほぼ同時に、開頭部材22のバネ部22cが伸展する(
図3A及び
図3B参照)。
【0067】
すると、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bは、それぞれ、ヒンジ部材21を中心にして、互いに離れるように開頭する。そして、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bが所定角度まで開頭すると、開頭部材22が搭載アダプタ300から解放され(
図3C参照)、第1ヒンジ部21aと第2ヒンジ部21bが分離する。
【0068】
これにより、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bが、ロケット200から分離される。ついで、制御器50は、宇宙航行体400をロケット200(搭載アダプタ300)から分離させる。
【0069】
このように構成された、本実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、接合面100cと接合面100dに第1分離機構11を配置し、接合面100cに第2分離機構12を配置している。第1分離機構11は、第2分離機構12よりも作動の同時性が低くしているため、その製品コストは、第2分離機構12に比して、低くすることができる。このため、本実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、従来のフェアリングに比して、生産コストを低減することができる。
【0070】
また、本実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、第1分離機構11を作動させ、所定時間経過した後に、第2分離機構12を作動させるように構成されている。このため、第1分離機構11の作動の同時性が低く、複数の第1分離機構11の作動を開始するタイミングがばらついても、第1分離機構11の作動を充分に担保することができる。
【0071】
また、第1分離機構11が作動して、第1分離機構11による結合が解離した後に、作動の同時性が高い第2分離機構12を作動させるため、フェアリング100の横倒れ、又は捩れ運動のような開頭異常が発生することを抑制することができる。
【0072】
[変形例1]
次に、本実施の形態1に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの変形例について、
図4を参照しながら説明する。
【0073】
図4は、本実施の形態1における変形例1のフェアリング及びそれを備えるロケットの概略構成を示す模式図である。なお、
図4においては、フェアリングの上下方向を図における上下方向として示している。
【0074】
図4に示すように、本実施の形態1における変形例1のフェアリング100及びそれを備えるロケット200は、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケットロケット200と基本的構成は同じであるが、第2分離機構12が先端部103の頂部近傍に設けられている点が異なる。
【0075】
より詳細には、第2分離機構12は、先端部103の正面側と背面側に、それぞれ、1か所ずつ、合計2ヵ所に配置されている。なお、第2分離機構12は、先端部103の頂部のみに配置されていてもよい。
【0076】
このように構成された、本変形例1のフェアリング100及びそれを備えるロケット200であっても、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200と同様の作用効果を奏する。
【0077】
また、本変形例1のフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200に比して、第2分離機構12の配置数が少ないため、より生産コストを低減することができる。
【0078】
(実施の形態2)
ところで、本発明者らが、迎角が0degで飛行中のフェアリングにかかる圧力をCFD解析により解析したところ、フェアリングの先端部には、空気力による圧縮荷重が作用することが確認された(
図5参照)。
【0079】
このため、本発明者等は、フェアリングの先端部分では、フェアリング片同士が押さえつけられるので、フェアリング片の接合面を強固に接合(締結)しなくてもよいことを見出し、本実施の形態2に係るフェアリングの構成を想到した。
【0080】
本実施の形態2に係るフェアリングは、当該フェアリングの先端部における第1フェアリング片と第2フェアリング片の接合面に、第1フェアリング片と第2フェアリング片の横ずれを防止するための横ずれ防止機構が配設されている。
【0081】
また、本実施の形態2に係るフェアリングでは、横ずれ防止機構は、第1フェアリング片と第2フェアリング片の接合面に設けられている貫通孔と、該貫通孔に嵌通するように配設されているピン部材と、から構成されていてもよい。
【0082】
以下、本実施の形態2に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの一例について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0083】
[フェアリング及びそれを備えるロケットの構造]
図6は、本実施の形態2に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの概略構成を示す模式図である。
図7は、
図6に示すC−C線断面図である。なお、
図6においては、フェアリングの上下方向を図における上下方向として示している。また、
図6においては、第1分離機構11と横ずれ防止機構13を区別するために、横ずれ防止機構13にハッチングを付している。
【0084】
図6に示すように、本実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200は、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200と基本的構成は同じであるが、フェアリング100の先端部103に横ずれ防止機構13が配設されている点が異なる。
【0085】
ここで、
図7を参照しながら、横ずれ防止機構13の構成について、詳細に説明する。
【0086】
図7に示すように、横ずれ防止機構13は、第1フェアリング片100a及び第2フェアリング片100bの接合面100cに設けられている貫通孔103C、103Dと、ピン部材13aと、から構成されていて、先端部103に配設されている。
【0087】
ピン部材13aは、軸部と頭部を有していて、軸部が貫通孔103C及び貫通孔103Dを嵌挿するように配置されている。なお、ピン部材13aは、軸部が、貫通孔103Cと螺着し、貫通孔103Dのみを嵌挿するように構成されていてもよい。これにより、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの横ずれを防止することができる。
【0088】
ここで、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの横ずれとは、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの分離方向(
図6における左右方向)以外の方向への第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの位置ずれをいう。
【0089】
また、本実施の形態2においては、第2フェアリング片100bの外表面(
図6における上側の表面)には、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの接合面100cを覆うように(より正確には、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの外表面を覆うように)、遮蔽板14が取付け部材15により取り付けられている。
【0090】
これにより、遮蔽板14及び取付け部材15は、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bの分離を妨害することなく、接合面100cをより確実にシール性を確保することができる。
【0091】
なお、本実施の形態2においては、第2フェアリング片100bの外表面に遮蔽板14を取付け部材15に取り付ける形態を採用したが、これに限定されず、第1フェアリング片100aの外表面に遮蔽板14を取付け部材15に取り付ける形態を採用してもよい。
【0092】
また、本実施の形態2においては、先端部103にのみ、横ずれ防止機構13が配設されえている形態を採用したが、これに限定されない。横ずれ防止機構13は、フェアリング100の外表面が外部から圧縮荷重が作用している部分であれば、どのような部分に配設されていてもよい。例えば、ロケット200の打ち上げ時又は飛行時を想定したCFD解析を行い、CFD解析により、フェアリング100に圧縮荷重がかかる部分(圧力係数(Cp)が0以上の部分)に横ずれ防止機構13を配置してもよい。また、横ずれ防止機構13は、先端部103の接合面100cの全領域に亘って配設されていてもよく、接合面100cの所定の領域のみに配設されていてもよい。
【0093】
このように構成された、本実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200と同様の作用効果を奏する。
【0094】
また、本実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、フェアリング100の先端部103においては、第1分離機構11に代えて、横ずれ防止機構13により、第1フェアリング片100aと第2フェアリング片100bを結合している。
【0095】
これにより、本実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200に比して、第1分離機構11の使用する部材数を低減することができる。このため、製造コストをより低減することができる。
【0096】
また、本実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200では、単に横ずれ防止機構13(ピン部材13a)を貫通孔103C及び貫通孔103Dに嵌挿させるだけでよいため、実施の形態1に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200に比して、作業時間をより短縮することができる。
【0097】
[変形例1]
次に、本実施の形態2に係るフェアリング及びそれを備えるロケットの変形例について説明する。
【0098】
本実施の形態2における変形例1のフェアリングは、横ずれ防止機構が、第1フェアリング片の接合面に設けられている溝部と、溝部と嵌合するように第2フェアリング片の接合面に設けられている突起部と、から構成されている。
【0099】
以下、本実施の形態2における変形例1のフェアリング及びそれを備えるロケットの一例について、
図8を参照しながら説明する。
【0100】
[フェアリング及びそれを備えるロケットの構造]
図8は、本実施の形態2におけるフェアリング及びそれを備えるロケットの横ずれ防止機構の概略構成を示す断面図である。
【0101】
図8に示すように、本変形例1のフェアリング100及びそれを備えるロケット200は、実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200と基本的構成は同じであるが、横ずれ防止機構13の構成が異なる。具体的には、横ずれ防止機構13は、フランジ103Aの表面に設けられている溝13bと、フランジ103Bに設けられている突起部13cと、から構成されている。突起部13cは、溝13bに嵌合するように形成されている。
【0102】
このように構成された、本変形例1のフェアリング100及びそれを備えるロケット200であっても、実施の形態2に係るフェアリング100及びそれを備えるロケット200と同様の作用効果奏する。
【0103】
なお、本変形例1においては、フランジ103Aの表面に、1つの溝13bが設けられている形態を採用したが、これに限定されず、2つ以上の溝13bが設けられている形態を採用してもよい。この場合、突起部13cは、溝13bと同じ数だけ設けられていてもよく、溝13bの配置数よりも少ない配置数であってもよい。
【0104】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。