(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す断面図である。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、トッププレート5と、対向部材移動機構6と、処理液ノズル71とを備える。基板処理装置1の各構成は、ハウジング11の内部に収容される。また、基板処理装置1は、基板回転機構33等の各構成を制御する制御部12をさらに備える。なお、
図2以降の図面では、制御部12の図示を省略する。
【0021】
基板保持部31は、水平状態で基板9を保持する。基板保持部31は、保持ベース部311と、複数のチャック312と、複数の係合部313と、ベース支持部314とを備える。保持ベース部311は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。保持ベース部311は、例えば、比較的高い耐薬品性を有するフッ素樹脂により形成される。基板9は、保持ベース部311の上方に保持ベース部311から離間して配置される。換言すれば、基板保持部31の保持ベース部311は、基板9の下方に配置される。基板保持部31の外径は、基板9の外径よりも大きい。保持ベース部311は、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って、基板9よりも径方向外方に広がる。
【0022】
ベース支持部314は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。保持ベース部311は、ベース支持部314の上方に配置され、ベース支持部314により下方から支持される。保持ベース部311の外径は、ベース支持部314の外径よりも大きい。保持ベース部311は、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って、ベース支持部314よりも径方向外方に広がる。
【0023】
複数のチャック312は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、保持ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。基板保持部31では、複数のチャック312により、基板9の外縁部が支持される。複数の係合部313は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、保持ベース部311の上面の外周部に周方向に配置される。複数の係合部313は、複数のチャック312よりも径方向外側に配置される。
【0024】
基板回転機構33は、回転機構収容部34の内部に収容される。基板回転機構33および回転機構収容部34は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部31と共に回転する。
【0025】
カップ部4は、中心軸J1を中心とする環状の部材であり、基板9および基板保持部31の径方向外側に配置される。カップ部4は、基板9および基板保持部31の周囲の全周に亘って配置され、基板9から周囲に向かって飛散する処理液等を受ける。カップ部4は、第1カップ41と、第2カップ42と、カップ移動機構43と、第1排出ポート44と、第2排出ポート45とを備える。第2カップ42は、第1カップ41の径方向外側に配置される。
【0026】
第1カップ41は、第1カップ側壁部411と、第1カップ庇部412とを有する。第1カップ側壁部411は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。第1カップ庇部412は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、第1カップ側壁部411の上端部から径方向内方に広がる。第2カップ42は、第2カップ側壁部421と、第2カップ庇部422とを有する。第2カップ側壁部421は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、第1カップ側壁部411よりも径方向外側に位置する。第2カップ庇部422は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、第1カップ庇部412よりも上方にて第2カップ側壁部421の上端部から径方向内方に広がる。
【0027】
第1カップ庇部412の内径および第2カップ庇部422の内径は、基板保持部31の保持ベース部311の外径およびトッププレート5の外径よりも僅かに大きい。第1カップ庇部412の下面は、第1カップ庇部412の内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面を含む。また、第2カップ庇部422の下面も、第2カップ庇部422の内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面を含む。
図1に示す例では、第1カップ庇部412の下面は、略全面に亘って、内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面である。また、第2カップ庇部422の下面も、略全面に亘って、内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面である。第1カップ庇部412の上面、および、第2カップ庇部422の上面も同様に、内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面である。
【0028】
カップ移動機構43は、第1カップ41を上下方向に移動することにより、基板9からの処理液等の液体を受けるカップを第1カップ41と第2カップ42との間で切り替える。換言すれば、カップ移動機構43は、第1カップ41を基板保持部31および第2カップ42に対して上下方向に相対移動することにより、基板9からの処理液等を受けるカップを切り替えるカップ切替機構である。カップ部4では、例えば、基板保持部31および第2カップ42が上下方向において固定されており、処理液等を受けるカップを切り替える際には、第1カップ41が第2カップ42に対して上下方向に移動する。
【0029】
第1カップ41にて受けられた処理液等の液体は、第1カップ41の底部に設けられた第1排出ポート44を介してハウジング11の外部へと排出される。第1カップ41内のガスも、第1排出ポート44を介してハウジング11外へと排出される。第2カップ42にて受けられた処理液等の液体は、第2カップ42の底部に設けられた第2排出ポート45を介してハウジング11の外部へと排出される。第2カップ42内のガスも、第2排出ポート45を介してハウジング11外へと排出される。
【0030】
トッププレート5は、平面視において略円形の部材である。トッププレート5は、基板9の上面91に対向する対向部材であり、基板9の上方を遮蔽する遮蔽板である。トッププレート5の外径は、基板9の外径、および、保持ベース部311の外径よりも大きい。トッププレート5は、対向部材本体51と、被保持部52と、複数の係合部53とを備える。対向部材本体51は、例えば、比較的高い耐薬品性を有するフッ素樹脂により形成される。対向部材本体51は、対向部材天蓋部511と、対向部材側壁部512とを備える。対向部材天蓋部511は、基板9の上面91に対向する。対向部材天蓋部511は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状の部材である。対向部材天蓋部511の下面は、基板9の上面91に対向する平面である。
【0031】
図1に示す例では、対向部材天蓋部511の径方向中央部(以下、単に「中央部」ともいう。)には、対向部材開口54が設けられる。対向部材開口54は、例えば、平面視において略円形である。対向部材開口54の直径は、基板9の直径に比べて十分に小さい。対向部材天蓋部511は、中央部に対向部材開口54を有する略円環板状である。対向部材側壁部512は、対向部材天蓋部511の外周部から下方に広がる。対向部材側壁部512は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材である。対向部材側壁部512の外周面は、中心軸J1を中心とする略円筒状の面である。
【0032】
複数の係合部53は、中心軸J1を中心として略等角度間隔にて、対向部材天蓋部511の下面の外周部に周方向に配置される。複数の係合部53は、対向部材側壁部512の径方向内側に配置される。
【0033】
被保持部52は、対向部材本体51の上面に接続される。被保持部52は、対向部材筒部521と、対向部材フランジ部522とを備える。対向部材筒部521は、対向部材本体51の対向部材開口54の周囲から上方に突出する略筒状の部位である。対向部材筒部521は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状である。対向部材フランジ部522は、対向部材筒部521の上端部から径方向外方に環状に広がる。対向部材フランジ部522は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状である。
【0034】
対向部材移動機構6は、対向部材保持部61と、対向部材昇降機構62とを備える。対向部材保持部61は、トッププレート5の被保持部52を保持する。対向部材保持部61は、保持部本体611と、本体支持部612と、フランジ支持部613と、支持部接続部614とを備える。保持部本体611は、例えば、中心軸J1を中心とする略円板状である。保持部本体611は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の上方を覆う。本体支持部612は、略水平に延びる棒状のアームである。本体支持部612の一方の端部は保持部本体611に接続され、他方の端部は対向部材昇降機構62に接続される。
【0035】
保持部本体611の中央部からは処理液ノズル71が下方に突出する。処理液ノズル71は、対向部材筒部521に非接触状態で挿入される。以下の説明では、処理液ノズル71と対向部材筒部521との間の空間を「ノズル間隙56」と呼ぶ。
【0036】
フランジ支持部613は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環板状である。フランジ支持部613は、対向部材フランジ部522の下方に位置する。フランジ支持部613の内径は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外径よりも小さい。フランジ支持部613の外径は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外径よりも大きい。支持部接続部614は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状である。支持部接続部614は、フランジ支持部613と保持部本体611とを対向部材フランジ部522の周囲にて接続する。対向部材保持部61では、保持部本体611は対向部材フランジ部522の上面と上下方向に対向する保持部上部であり、フランジ支持部613は対向部材フランジ部522の下面と上下方向に対向する保持部下部である。
【0037】
図1に示す位置にトッププレート5が位置する状態では、フランジ支持部613は、トッププレート5の対向部材フランジ部522の外周部に下側から接して支持する。換言すれば、対向部材フランジ部522が、対向部材移動機構6の対向部材保持部61により保持される。これにより、トッププレート5が、基板9および基板保持部31の上方にて、対向部材保持部61により吊り下げられる。以下の説明では、
図1に示すトッププレート5の上下方向の位置を「第1の位置」という。トッププレート5は、第1の位置にて、対向部材移動機構6により保持されて基板保持部31から上方に離間する。
【0038】
フランジ支持部613には、トッププレート5の位置ずれ(すなわち、トッププレート5の移動および回転)を制限する移動制限部616が設けられる。
図1に示す例では、移動制限部616は、フランジ支持部613の上面から上方に突出する突起部である。移動制限部616が、対向部材フランジ部522に設けられた孔部に挿入されることにより、トッププレート5の位置ずれが制限される。
【0039】
対向部材昇降機構62は、トッププレート5を対向部材保持部61と共に上下方向に移動させる。
図2は、トッププレート5が
図1に示す第1の位置から下降した状態を示す断面図である。以下の説明では、
図2に示すトッププレート5の上下方向の位置を「第2の位置」という。すなわち、対向部材昇降機構62は、トッププレート5を第1の位置と第2の位置との間で基板保持部31に対して上下方向に相対移動する。第2の位置は、第1の位置よりも下方の位置である。換言すれば、第2の位置は、トッププレート5が第1の位置よりも上下方向において基板保持部31に近接する位置である。
【0040】
トッププレート5が第2の位置に位置する状態では、トッププレート5の複数の係合部53がそれぞれ、基板保持部31の複数の係合部313と係合する。複数の係合部53は、複数の係合部313により下方から支持される。換言すれば、複数の係合部313はトッププレート5を支持する対向部材支持部である。例えば、係合部313は、上下方向に略平行なピンであり、係合部313の上端部が、係合部53の下端部に上向きに形成された凹部に嵌合する。また、トッププレート5の対向部材フランジ部522は、対向部材保持部61のフランジ支持部613から上方に離間する。これにより、トッププレート5は、第2の位置にて、基板保持部31により保持されて対向部材移動機構6から離間する(すなわち、対向部材移動機構6と非接触状態となる。)。
【0041】
トッププレート5が基板保持部31により保持された状態では、トッププレート5の対向部材側壁部512の下端が、基板保持部31の保持ベース部311の上面よりも下方に位置する。このため、対向部材側壁部512の内周面は、基板保持部31の外周面(すなわち、保持ベース部311の外周面)と径方向に対向する。このとき、トッププレート5と基板保持部31との間には、ほぼ密閉状態の処理空間90が形成される。後述するように基板9を回転させて処理液により処理する際には、基板9から飛散した処理液は、対向部材側壁部512の内周面と基板保持部31の外周面との隙間から、処理空間90の外部へと流出し、主として対向部材側壁部512の下端から外方に飛散する。当該飛散した処理液は、第1カップ41または第2カップ42により受け止められる。
図2に示す例では、対向部材側壁部512の下端は、保持ベース部311の外周面の上端よりも下方に位置し、保持ベース部311の外周面の下端よりも上方に位置する。
【0042】
基板保持部31の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離は、周方向のいずれの位置においてもおよそ同じである。以下の説明では、基板保持部31の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離を「保持ギャップ距離D0」という。保持ギャップ距離D0は、例えば、対向部材側壁部512の下端における基板保持部31の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離である。基板保持部31の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間の径方向の距離が上下方向において一定ではない場合、保持ギャップ距離D0は、例えば、当該距離の最小値であってもよい。保持ギャップ距離D0は、例えば、1mm以上3mm以下である。
【0043】
トッププレート5が第2の位置に位置する状態で基板回転機構33が駆動されると、基板保持部31が基板9と共に回転し、トッププレート5も、基板9および基板保持部31と共に中心軸J1を中心として回転する。換言すれば、トッププレート5が第2の位置に位置する状態では、トッププレート5は、基板回転機構33により基板保持部31と共に中心軸J1を中心として回転可能となる。
【0044】
図3は、基板処理装置1におけるガスおよび処理液の供給および排出に係る気液供給部7および気液排出部8を示すブロック図である。気液供給部7は、上述の処理液ノズル71と、処理液供給部72と、ガス供給部73とを備える。処理液供給部72は、基板9の上面91に処理液を供給する。
【0045】
処理液供給部72は、薬液供給部721と、洗浄液供給部722と、置換液供給部723と、温度制御部724とを備える。薬液供給部721、洗浄液供給部722および置換液供給部723はそれぞれ、処理液ノズル71に接続される。薬液供給部721は、処理液ノズル71を介して基板9に薬液(例えば、ポリマー除去液、または、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液)を供給する。洗浄液供給部722は、処理液ノズル71を介して基板9に洗浄液(例えば、純水(DIW:deionized water)または炭酸水)を供給する。温度制御部724は、洗浄液供給部722と処理液ノズル71との間の流路上に設けられ、処理液ノズル71に供給される洗浄液の温度を制御する。置換液供給部723は、処理液ノズル71を介して基板9に置換液(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))を供給する。
【0046】
上述の薬液、洗浄液および置換液は、処理液ノズル71の下端面に設けられた吐出口から、基板9の上面91の径方向中央部に向けて吐出される。処理液ノズル71の下端面には、例えば、薬液、洗浄液および置換液にそれぞれ対応する3つの吐出口が設けられてもよく、薬液、洗浄液および置換液を順次吐出する1つの吐出口が設けられてもよい。以下の説明では、上述の薬液、洗浄液および置換液をまとめて、あるいは、薬液、洗浄液および置換液のうちいずれかを、単に処理液とも呼ぶ。
【0047】
ガス供給部73は、処理液ノズル71に接続され、処理液ノズル71を介してトッププレート5の下面と基板9の上面91との間の空間である処理空間90にガスを供給する。具体的には、ガス供給部73からのガスは、処理液ノズル71の下端面に設けられた噴射口から処理空間90に供給される。また、処理液ノズル71の側面にも噴射口が設けられ、ガス供給部73からのガスは、当該噴射口からもノズル間隙56を介して処理空間90に供給される。ガス供給部73から供給されるガスは、例えば、窒素(N
2)ガス等の不活性ガスである。基板処理装置1では、基板9の処理は、好ましくは処理空間90に処理液ノズル71から不活性ガスが供給されて処理空間90が不活性ガス雰囲気となっている状態で行われる。換言すれば、ガス供給部73から処理空間90に供給されるガスは、処理雰囲気用ガスである。ガス供給部73からは、不活性ガス以外の様々なガスが処理雰囲気用ガスとして供給されてもよい。
【0048】
気液排出部8は、上述の第1排出ポート44および第2排出ポート45と、第1吸引部81と、第2吸引部82とを備える。第1吸引部81は、第1カップ41の底部に配置された第1排出ポート44に接続される。第1吸引部81は、第1排出ポート44を介して第1カップ41内のガスおよび処理液を吸引する。第1吸引部81により吸引されたガスおよび処理液は、図示省略の気液分離部にて分離される。当該気液分離部にて分離された処理液は、廃棄または回収される。第2吸引部82は、第2排出ポート45を介して第2カップ42内のガスおよび処理液を吸引する。第2吸引部82により吸引されたガスおよび処理液は、図示省略の気液分離部にて分離される。当該気液分離部にて分離された処理液は、廃棄または回収される。第1吸引部81および第2吸引部82は、カップ部4に接続され、カップ部4内のガスを吸引してカップ部4外へと排出するガス排出部である。
【0049】
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れの一例について、
図4および
図5を参照しつつ説明する。まず、トッププレート5が
図1に示す第1の位置に位置する状態で、基板9がハウジング11内に搬入され、基板保持部31により保持される(ステップS11)。このとき、トッププレート5は対向部材移動機構6の対向部材保持部61により保持されている。
【0050】
続いて、対向部材昇降機構62により対向部材保持部61が下方へと移動される。これにより、トッププレート5が第1の位置から第2の位置へと下方に移動し、
図2に示すように、トッププレート5が基板保持部31により保持される(ステップS12)。そして、ガス供給部73(
図3参照)から処理液ノズル71を介して、ノズル間隙56および処理空間90に不活性ガス(すなわち、処理雰囲気用ガス)の供給が開始される。
【0051】
次に、基板回転機構33が制御部12(
図1参照)により制御されることにより、基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転が開始される(ステップS13)。処理液ノズル71からの不活性ガスの供給は、ステップS13以降も継続される。そして、処理液供給部72の薬液供給部721が制御部12により制御されることにより、薬液供給部721から処理液ノズル71へと薬液が供給され、第2の位置に位置するトッププレート5の対向部材開口54を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS14)。
【0052】
処理液ノズル71から基板9の中央部に供給された薬液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと拡がり、基板9の上面91全体に付与される。薬液は、遠心力により基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、保持ベース部311の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間を通過して処理空間90から排出される。基板処理装置1では、基板保持部31が回転する際に、トッププレート5も中心軸J1を中心として回転する。このため、トッププレート5の下面に薬液が付着した場合であっても、当該薬液も遠心力により処理空間90から排出される。
【0053】
図6は、基板処理装置1の一部の拡大断面図である。
図6に示すカップ部4では、第1カップ41および第2カップ42が、基板保持部31およびトッププレート5の周囲に配置されている。第1カップ41の第1カップ庇部412は、僅かな間隙を介して第2カップ42の第2カップ庇部422の下面に近接している。第1カップ庇部412の内周縁は、対向部材側壁部512の下端よりも上方に位置する。第1カップ庇部412の内周縁は、対向部材側壁部512の外周面と径方向に対向する。第1カップ庇部412の内周縁と対向部材側壁部512の外周面との間の径方向の距離は、周方向のいずれの位置においてもおよそ同じである。
【0054】
以下の説明では、第1カップ庇部412の内周縁と対向部材側壁部512の外周面との間の径方向の距離を「第1カップギャップ距離D1」という。第1カップギャップ距離D1は、上述の保持ギャップ距離D0よりも大きい。第1カップギャップ距離D1は、例えば、3mm以上6mm以下である。また、以下の説明では、
図2に示す第1カップ41の位置を、「第1処理位置」という。第1カップ41が第1処理位置に位置する状態では、対向部材側壁部512の外周面の下部は、第1カップ側壁部411の内周面と径方向に対向する。また、保持ベース部311の外周面の下部も、第1カップ側壁部411の内周面と径方向に対向する。
【0055】
ステップS14では、第1カップ41が第1処理位置に配置された状態で、回転中の基板9の上面91上に供給された薬液が、上述のように処理空間90から排出され、カップ部4の第1カップ41により受けられる。第1カップ41により受けられた薬液は、第1カップ41の底部に設けられた第1排出ポート44を介してハウジング11の外部へと排出される。基板処理装置1では、薬液が基板9に対して所定時間付与されることにより、薬液による基板9の処理(すなわち、薬液処理)が終了する。なお、薬液の供給(ステップS14)は、基板9の回転開始(ステップS13)よりも前に行われてもよい。この場合、静止状態の基板9の上面91全体に薬液がパドル(液盛り)され、薬液によるパドル処理が行われる。
【0056】
基板9の薬液処理が終了すると、処理液ノズル71からの薬液の供給が停止される。続いて、洗浄液供給部722(
図3参照)が制御部12により制御されることにより、洗浄液供給部722から処理液ノズル71へと洗浄液が供給され、第2の位置に位置するトッププレート5の対向部材開口54を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS15)。
【0057】
処理液ノズル71から基板9の中央部に供給された洗浄液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと拡がり、基板9の上面91全体に付与される。基板9の上面91上に残留している薬液は、洗浄液により洗い流され、基板9上から除去される。洗浄液および洗い流された薬液は、遠心力により基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、保持ベース部311の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間を通過して処理空間90から排出される。また、トッププレート5の下面に洗浄液等が付着した場合、当該洗浄液等も遠心力により処理空間90から排出される。
【0058】
ステップS15では、第1カップ41が第1処理位置に配置された状態で、回転中の基板9の上面91上に供給された洗浄液が、上述のように処理空間90から排出され、カップ部4の第1カップ41により受けられる。第1カップ41により受けられた洗浄液は、第1カップ41の底部に設けられた第1排出ポート44を介してハウジング11の外部へと排出される。基板処理装置1では、洗浄液が基板9に対して所定時間付与されることにより、洗浄液による基板9の処理(すなわち、洗浄処理)が終了する。
【0059】
図5は、ステップS15における洗浄処理の詳細な流れを示す図である。
図5に示すように、基板処理装置1においてステップS14の薬液処理が終了すると、処理液ノズル71から基板9上に所定の前処理温度に調節された洗浄液が供給される(ステップS151)。基板9に供給される洗浄液の温度は、上述の温度制御部724により制御される。前処理温度は、例えば、常温(すなわち、室温に略等しい温度)である。
【0060】
前処理温度の洗浄液が所定時間供給されると、処理液ノズル71から供給される洗浄液の温度が、温度制御部724により所定の処理温度に変更される。処理温度は、前処理温度よりも高い温度であり、かつ、常温よりも高い温度である。基板処理装置1では、処理温度(例えば、約80℃)の洗浄液が基板9の上面91上に所定時間供給されることにより、基板9に対する洗浄処理が行われる(ステップS152)。基板9の上面91の温度は、処理温度の洗浄液との接触により、常温よりも高い温度まで上昇する。
【0061】
処理温度の洗浄液による基板9の洗浄処理が終了すると、処理液ノズル71から供給される洗浄液の温度が、温度制御部724により所定の後処理温度に変更される。後処理温度は、処理温度よりも低温である。後処理温度は、例えば、常温である。後処理温度は、前処理温度と同じでもよく、異なっていてもよい。そして、後処理温度の洗浄液が基板9の上面91上に所定時間供給されることにより、基板9が冷却される(ステップS153)。ステップS151〜S153が行われることにより、前処理温度、処理温度および後処理温度の洗浄液による基板9の洗浄処理が終了する。
【0062】
洗浄液による基板9の処理が終了すると、処理液ノズル71からの洗浄液の供給が停止される。このとき、基板9の上面91上には、洗浄液の薄い液膜が存在している。そして、カップ移動機構43により第1カップ41が下方に移動され、
図7に示すように、
図2に示す第1処理位置よりも下方の第2処理位置に位置する。第1カップ41が第2処理位置に位置する状態では、第1カップ庇部412の内周縁は、対向部材側壁部512の下端よりも下方に位置する。これにより、第2カップ42が、基板保持部31およびトッププレート5と径方向に対向し、基板9からの処理液を受けるカップが、第1カップ41から第2カップ42へと切り替えられる(ステップS16)。
【0063】
図8は、基板処理装置1の一部の拡大断面図である。
図8に示すカップ部4では、第2カップ42が、基板保持部31およびトッププレート5の周囲に配置されている。第2カップ庇部422の内周縁は、対向部材側壁部512の下端よりも上方に位置する。第2カップ庇部422の内周縁は、対向部材側壁部512の外周面と径方向に対向する。第2カップ庇部422の内周縁と対向部材側壁部512の外周面との間の径方向の距離は、周方向のいずれの位置においてもおよそ同じである。
【0064】
以下の説明では、第2カップ庇部422の内周縁と対向部材側壁部512の外周面との間の径方向の距離を「第2カップギャップ距離D2」という。第2カップギャップ距離D2は上述の保持ギャップ距離D0よりも大きい。第2カップギャップ距離D2は、例えば、3mm以上6mm以下である。第2カップギャップ距離D2は、第1カップギャップ距離D1(
図6参照)と同じであってもよく、異なっていてもよい。対向部材側壁部512の外周面の下部は、第2カップ側壁部421の内周面と径方向に対向する。また、保持ベース部311の外周面の下部も、第2カップ側壁部421の内周面と径方向に対向する。
【0065】
上述のように、第1カップ41が第2処理位置へと移動されると、置換液供給部723(
図3参照)が制御部12により制御されることにより、置換液供給部723から処理液ノズル71へと置換液が供給され、第2の位置に位置するトッププレート5の対向部材開口54を介して、回転中の基板9の上面91の中央部に供給される(ステップS17)。
【0066】
処理液ノズル71から基板9の中央部に供給された置換液は、基板9の回転により、基板9の中央部から径方向外方へと拡がり、基板9の上面91全体に付与される。基板9の上面91上に残留している洗浄液は、置換液により径方向外方へと押し出されて基板9上から除去される。これにより、基板9上の洗浄液が置換液に置換される。置換液としてIPAが使用される場合、ステップS17においてIPA置換処理が行われる。置換液は、遠心力により基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、保持ベース部311の外周面と対向部材側壁部512の内周面との間を通過して処理空間90から排出される。また、トッププレート5の下面に置換液等が付着した場合、当該置換液等も遠心力により処理空間90から排出される。
【0067】
ステップS17では、第1カップ41が
図7に示す第2処理位置に配置された状態で、回転中の基板9の上面91上に供給された置換液が、上述のように処理空間90から排出され、カップ部4の第2カップ42により受けられる。第2カップ42により受けられた置換液は、第2カップ42の底部に設けられた第2排出ポート45を介してハウジング11の外部へと排出される。基板処理装置1では、置換液が基板9に対して所定時間付与されることにより、置換液による基板9の処理(すなわち、置換処理)が終了する。
【0068】
置換液による基板9の処理が終了すると、処理液ノズル71からの置換液の供給が停止される。そして、ガス供給部73(
図3参照)により処理液ノズル71の側面からノズル間隙56に向けて噴射される不活性ガスの流量が増大する。また、処理液ノズル71の下端面から処理空間90に向けて噴射される不活性ガスの流量も増大する。さらに、基板回転機構33が制御部12(
図1参照)により制御されることにより、基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転速度が増大する。これにより、基板9の上面91上に残留している置換液が径方向外方へと移動して基板9の外縁から径方向外方へと飛散し、保持ベース部311と対向部材側壁部512との間を通過して処理空間90から排出される。処理空間90から排出された第2処理液等は、カップ部4の第2カップ42により受けられる。基板9の回転が所定の時間だけ継続されることにより、基板9の上面91上から置換液を除去する乾燥処理が行われる(ステップS18)。
【0069】
基板9の乾燥処理が終了すると、基板回転機構33による基板保持部31、基板9およびトッププレート5の回転が停止される(ステップS19)。また、ガス供給部73からノズル間隙56および処理空間90への不活性ガスの供給が停止される。次に、対向部材昇降機構62により対向部材保持部61が上方に移動することにより、トッププレート5が、第2の位置から
図1に示す第1の位置へと上方に移動する(ステップS20)。トッププレート5は、基板保持部31から上方に離間して対向部材保持部61により保持される。その後、基板9がハウジング11から搬出される(ステップS21)。基板処理装置1では、複数の基板9に対して、上述のステップS11〜S21が順次行われ、複数の基板9が順次処理される。
【0070】
以上に説明したように、基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、トッププレート5と、処理液供給部72と、ガス供給部73と、ガス排出部(すなわち、第1吸引部81および第2吸引部82)とを備える。基板保持部31は、基板9よりも外径が大きい円板状である。基板保持部31は、基板9の下方に配置されて水平状態で基板9を保持する。基板回転機構33は、上下方向を向く中心軸J1を中心として基板保持部31を回転する。トッププレート5は、基板9の上面91に対向する対向部材である。処理液供給部72は、基板9の上面91に処理液を供給する。ガス供給部73は、トッププレート5の下面と基板9の上面91との間の空間である処理空間90に処理雰囲気用ガスを供給する。カップ部4は、基板保持部31の周囲に配置されて基板9からの処理液を受ける。ガス排出部は、カップ部4内のガスを吸引してカップ部4外へと排出する。
【0071】
トッププレート5は、対向部材天蓋部511と、対向部材側壁部512とを備える。対向部材天蓋部511は、基板9の上面91に対向する。対向部材側壁部512は、対向部材天蓋部511の外周部から下方に広がる。対向部材側壁部512の外周面は、円筒状である。対向部材側壁部512の内周面は、基板保持部31の外周面と径方向に対向する。
【0072】
カップ部4は、第1カップ41と、第2カップ42と、カップ移動機構43とを備える。第1カップ41は、円筒状の第1カップ側壁部411と、円環板状の第1カップ庇部412とを備える。第1カップ庇部412は、第1カップ側壁部411の上端部から径方向内方に広がる。第2カップ42は、第1カップ41の径方向外側に配置される。第2カップ42は、円筒状の第2カップ側壁部421と、円環板状の第2カップ庇部422とを備える。第2カップ庇部422は、第2カップ側壁部421の上端部から径方向内方に広がる。カップ移動機構43は、第1カップ41を基板保持部31に対して上下方向に相対移動する。
【0073】
第1カップ41が第1処理位置に配置された状態では、第1カップ庇部412の内周縁は、対向部材側壁部512の外周面と径方向に対向する。第1カップ41が第2処理位置に配置された状態では、第1カップ庇部412の内周縁は、対向部材側壁部512の下端よりも下方に位置する。
【0074】
ここで、上述の薬液および洗浄液を「第1処理液」と呼び、置換液を「第2処理液」と呼ぶと、薬液供給部721および洗浄液供給部722は、基板9に第1処理液を供給する第1処理液供給部である。また、置換液供給部723は、基板9に第2処理液を供給する第2処理液供給部である。基板処理装置1では、第1カップ41が上述の第1処理位置に配置された状態で、基板9からの第1処理液(すなわち、回転中の基板9の上面91上に供給された第1処理液)が、第1カップ41により受けられる。また、第1カップ41が上述の第2処理位置に配置された状態で、基板9からの第2処理液(すなわち、回転中の基板9の上面91上に供給された第2処理
液)が、第2カップ42により受けられる。
【0075】
基板処理装置1では、第2カップ庇部422の内周縁は、対向部材側壁部512の外周面と径方向に対向する。これにより、第1カップ41により受けられた第1処理液、および、第2カップ42により受けられた第2処理液が、第2カップ庇部422の内周縁よりも径方向内側から第2カップ庇部422よりも上側へと飛散すること(すなわち、第1処理液および第2処理液がカップ部4よりも上側に飛散すること)を抑制することができる。
【0076】
基板処理装置1では、ハウジング11内のカップ部4よりも上側の空間において、ハウジング11の上部から下方へと向かう気流(いわゆる、ダウンフロー)が形成されている。当該気流は、トッププレート5の対向部材側壁部512と第2カップ42の第2カップ庇部422の内周縁との間からカップ部4内へと流入し、ガス排出部によりカップ部4の底部から吸引されてカップ部4外へと排出される。ここで、仮に、対向部材側壁部512の外周面と第2カップ庇部422の内周縁との間隙が過剰に狭いとすると、当該間隙からカップ部4内へと流入する気流の流速が過剰に大きくなる可能性がある。この状態で、基板9から飛散する第2処理液を第2カップ42にて受けようとすると、第2処理液が当該気流により下方に向かって押し流され、第2カップ42の下方の第2処理位置に位置する第1カップ41内に流入するおそれがある。
【0077】
これに対し、
図8に示す基板処理装置1では、対向部材側壁部512の外周面と第2カップ庇部422の内周縁との間の径方向の距離である第2カップギャップ距離D2は、対向部材側壁部512の内周面と基板保持部31の外周面との間の径方向の距離である保持ギャップ距離D0よりも大きい。このように、対向部材側壁部512の外周面と第2カップ庇部422の内周縁との間隙が過剰に狭くなることを防止することにより、当該間隙からカップ部4内へと流入する気流の流速が過剰に大きくなることを防止することができる。その結果、基板9から飛散する第2処理液を第2カップ42にて受ける際に、第2処理液が当該気流により下方に向かって押し流されることを防止または抑制することができ、第2処理位置に位置する第1カップ41内に第2処理液が流入することを防止または抑制することができる。換言すれば、基板処理装置1では、第1処理液および第2処理液を、第1カップ41および第2カップ42により分別して受けることができる。さらに換言すれば、基板処理装置1では、複数種類の処理液を複数のカップにより分別して受けることができる。
【0078】
また、基板処理装置1では、第2カップ庇部422の下面が、第2カップ庇部422の内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面を含む。これにより、基板9から飛散して第2カップ42の内面に衝突した第2処理液が、上方へと飛散することが抑制され、第2カップ42内において下方へと導かれる。その結果、第2カップ42により受けられた第2処理液がカップ部4よりも上側に飛散することを、より一層抑制することができる。
【0079】
上述のように、基板処理装置1では、対向部材天蓋部511の中央部に対向部材開口54が設けられ、処理液供給部72からの第1処理液(すなわち、薬液および洗浄液)と第2処理液(すなわち、置換液)とが、対向部材開口54を介して基板9の上面91に供給される。ここで、仮に、対向部材側壁部512の外周面と第1カップ庇部412の内周縁との間隙が過剰に狭いと、第1カップ41を第1処理位置から第2処理位置へと下降させる際に、対向部材側壁部512の外周面近傍において比較的大きな圧力低下が生じる可能性がある。そして、当該圧力低下により処理空間90の圧力も低下するため、処理空間90の外部の雰囲気が、例えばノズル間隙56および対向部材開口54を介して処理空間90に流入し、処理空間90の雰囲気が所望の状態から変化する可能性がある。
【0080】
これに対し、
図6に示す基板処理装置1では、対向部材側壁部512の外周面と第1カップ庇部412の内周縁との間の径方向の距離である第1カップギャップ距離D1が、上述の保持ギャップ距離D0よりも大きい。このように、対向部材側壁部512の外周面と第1カップ庇部412の内周縁との間隙が過剰に狭くなることを防止することにより、第1カップ41の上下方向の移動による対向部材側壁部512の外周面近傍における圧力低下、および、処理空間90の圧力低下を防止または抑制することができる。その結果、外部の雰囲気が処理空間90に流入することを防止または抑制し、処理空間90の雰囲気の意図しない変化を防止または抑制することができる。また、第2カップ42と同様に、第1カップ41よりも上側に第1処理液が飛散することを防止または抑制しつつ、対向部材側壁部512の外周面と第1カップ庇部412の内周縁との間隙から第1カップ41内へと流入する気流の流速が過剰に大きくなることを防止することができる。
【0081】
さらに、基板処理装置1では、第1カップ庇部412の下面が、第1カップ庇部412の内周縁から径方向外方に向かうに従って下方に向かう傾斜面を含む。これにより、基板9から飛散して第1カップ41の内面に衝突した第1処理液が、上方へと飛散することが抑制され、第1カップ41内において下方へと導かれる。その結果、第1カップ41により受けられた第1処理液が第1カップ41よりも上側に飛散することを、より一層抑制することができる。
【0082】
上述のように、基板処理装置1では、基板保持部31が回転する際に、トッププレート5も中心軸J1を中心として回転する。これにより、トッププレート5の下面に付着した処理液を、遠心力により径方向外方へと移動して当該下面から除去することができる。換言すれば、トッププレート5への処理液の付着を防止することができる。また、処理空間90に供給された処理雰囲気用ガスを、トッププレート5および基板9の回転により径方向外方へと迅速に拡散させることができる。その結果、処理空間90全体に処理雰囲気用ガスを効率良く拡散し、処理雰囲気用ガスの使用量を低減することができる。
【0083】
さらに、トッププレート5は、基板保持部31により保持され、基板回転機構33により基板保持部31と共に回転される。これにより、トッププレート5を回転するための機構を基板回転機構33とは別に設ける必要がないため、装置構造を簡素化することができる。
【0084】
上述の例では、洗浄液は、第1カップ41により受けられる第1処理液である。基板9に対する洗浄処理が行われる際には、当該洗浄液は、常温よりも高い処理温度にて基板9の上面91上に供給される。これにより、基板9の洗浄処理を効率良く行うことができ、基板9の洗浄処理に要する時間を短縮することができる。
【0085】
また、基板処理装置1では、当該洗浄処理の終了後に、基板回転機構33による基板9の回転により基板9上から液体を除去する乾燥処理が行われ、洗浄処理と乾燥処理との間に、上述の処理温度よりも低温の処理液が基板9の上面91上に供給されることにより、基板9が冷却される。このように、常温よりも高い処理温度の洗浄液による洗浄処理により昇温した基板9を、乾燥処理よりも前に冷却することにより、処理空間90に残留している可能性がある僅かなイオン性物質が、乾燥処理の際に基板9上のデバイス等に悪影響を与えることを防止または抑制することができる。なお、ステップS153において基板9に供給される処理液は、処理温度での洗浄処理(ステップS152)に利用される洗浄液と同じ処理液であってもよく、異なる処理液であってもよい。
【0086】
さらに、基板処理装置1では、常温よりも高い処理温度の洗浄液による洗浄処理(ステップS152)よりも前に、当該処理温度よりも低温の処理液が基板9上に供給される(ステップS151)。これにより、基板9上に残留している薬液を昇温することなく基板9上から洗い流す(すなわち、除去する)ことができる。その結果、基板9上に残留している薬液の反応性が増大することを抑制し、基板9上から薬液を洗い流す際に、薬液の意図しない反応等が生じることを防止または抑制することができる。なお、ステップS151において基板9に供給される処理液は、処理温度での洗浄処理(ステップS152)に利用される洗浄液と同じ処理液であってもよく、異なる処理液であってもよい。
【0087】
上述の基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0088】
基板処理装置1では、基板9の薬液処理、洗浄処理および乾燥処理が行われる際に、トッププレート5は必ずしも基板保持部31に保持される必要はない。例えば、トッププレート5は、基板保持部31から離間して基板9の上方に配置され、基板回転機構33とは独立して設けられた他の回転機構により回転されてもよい。また、基板9の薬液処理、洗浄処理および乾燥処理が行われる際に、トッププレート5は必ずしも回転されなくてもよい。
【0089】
基板処理装置1では、基板9の洗浄処理(ステップS15)において、基板9に供給される処理液の温度変更は必ずしも行われなくてもよい。例えば、洗浄液は、基板9への供給開始から供給停止まで略同じ温度であってもよい。この場合、基板9に供給される洗浄液の温度は、常温よりも高くてもよく、常温以下であってもよい。
【0090】
上述の例では、薬液および洗浄液が第1カップ41により受けられる第1処理液であり、置換液が第2カップ42により受けられる第2処理液であるが、第1処理液および第2処理液は様々に変更されてよい。また、第1処理液の基板9への供給は、第2処理液の基板9への供給よりも後に行われてもよい。
【0091】
例えば、基板処理装置1において基板9に供給される処理液が薬液および洗浄液であり、第1カップ41が第1処理位置に位置する状態で基板9の薬液処理が行われた後、第1カップ41を第2処理位置へと移動して洗浄処理が行われてもよい。この場合、薬液は第1カップ41により受けられる第1処理液であり、洗浄液は第2カップ42により受けられる第2処理液である。あるいは、第1カップ41が第2処理位置に位置する状態で基板9の薬液処理が行われた後、第1カップ41を第1処理位置へと移動して洗浄処理が行われてもよい。この場合、薬液は第2カップ42により受けられる第2処理液であり、洗浄液は第1カップ41により受けられる第1処理液である。いずれの場合であっても、上述と同様に、第2カップ庇部422の内周縁が対向部材側壁部512の外周面と径方向に対向し、第2カップギャップ距離D2が保持ギャップ距離D0よりも大きいことにより、第1処理液および第2処理液がカップ部4よりも上側に飛散することを抑制することができるとともに、複数種類の処理液を複数のカップにより分別して受けることができる。
【0092】
カップ部4は、第1カップ41および第2カップ42に加えて、第1カップ41および第2カップ42と径方向に並ぶ他のカップを備えていてもよい。換言すれば、カップ部4は3以上のカップを備えていてもよい。この場合、上述の第1処理液を受ける第1カップ41は、当該3以上のカップのうち、径方向の最も外側に位置するカップ以外の一のカップであり、第2処理液を受ける第2カップ42は、当該3以上のカップのうち、第1カップよりも径方向外側に位置する一のカップである。
【0093】
第1カップ庇部412の内周縁と対向部材側壁部512の外周面との間の径方向の距離である第1カップギャップ距離D1は、必ずしも保持ギャップ距離D0よりも大きい必要はなく、保持ギャップ距離D0以下であってもよい。
【0094】
カップ部4の第1カップ庇部412の下面は、必ずしも上述の傾斜面を含む必要はなく、例えば、略全面に亘って上下方向に略垂直な平面であってもよい。第2カップ庇部422の下面も同様に、必ずしも上述の傾斜面を含む必要はなく、例えば、略全面に亘って上下方向に略垂直な平面であってもよい。
【0095】
基板処理装置1では、トッププレート5が基板保持部31により保持され、トッププレート5と基板保持部31との間に処理空間90が形成された状態では、トッププレート5の対向部材側壁部512の下端が、基板保持部31の保持ベース部311の上面よりも下方(すなわち、保持ベース部311の外周面の上端よりも下方)に位置する。このため、第1カップ庇部412および第2カップ庇部422の内周縁を、トッププレート5の対向部材側壁部512の下端よりも上方に位置させることで、対向部材側壁部512の下端から飛散する処理液を受けることができる。したがって、第1カップ庇部412および第2カップ庇部422を基板9よりも低い位置に位置させた状態で、対向部材側壁部512の下端から飛散する処理液を受けることができる。その結果、第2カップ42を基板保持部31に対して移動させることなく、基板9を搬出入する機構と基板保持部31との間で基板9の受け渡しを容易に行うことができる。
【0096】
なお、基板処理装置1では、第2カップ42を基板保持部31に対して上下方向に相対移動する第2カップ移動機構が設けられてもよい。この場合、基板9の受け渡し、すなわち、基板保持部31への基板9の搬入および搬出の際には、第1カップ41および第2カップ42を
図1および
図6に示す位置よりも下方に移動させることもできる。これにより、基板9の受け渡しをさらに容易に行うことができる。その結果、基板処理装置1の運用上の自由度を向上することができる。
【0097】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。